説明

カルシウム含有粉体の処理方法及び装置

この発明に係るカルシウム含有粉体の処理方法においては、カルシウム含有粉体を水に溶解する際に二水石膏、塩素バイパスダスト及び硫酸、炭酸ガスのうち少なくとも一つを添加してカルシウムを析出させ、その後、固液分離をして水洗する。カルシウムが析出された溶解液を真空濾過することにより固液分離がなされてケークが得られ、真空濾過の際に生じた排気がこのケーク上に戻される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
この発明は、カルシウム含有粉体の処理方法及び装置に係り、特に焼却飛灰等のカルシウム含有粉体を水洗処理する方法及び装置に関する。
【背景技術】
近年、焼却飛灰等の廃棄物のセメント原料化等によるリサイクルが推進されているが、廃棄物の処理量の増加に伴い、セメントキルンに持ち込まれる塩素等の揮発成分の量も増加し、セメント製造設備におけるプレヒータの閉塞等の問題を引き起こす原因となっている。そのため、焼却飛灰等から予め塩素成分等を除去した後、セメント原料として利用している。この際、水溶性塩素化合物の水に溶けやすい性質を利用し、焼却飛灰等と水とを混合して塩素を溶出させた後、ベルトフィルタ等の水洗設備を用いて焼却飛灰に含まれる水溶性塩素化合物を水洗除去した後、セメント原料として利用している。
しかしながら、焼却飛灰にはカルシウムを多く含有するものがあり、水洗時にカルシウムが水に溶解して水洗設備内にスケールが発生して成長することがあった。このスケールを放置すると、焼却飛灰の水洗脱塩処理効率の低下を招き、水洗設備の運転障害を引き起こす虞があった。特に、近年、ダイオキシン対策として、都市ごみ等を焼却する焼却炉に消石灰を多く投入しているため、炭酸カルシウムのスケールが発生しやすく、スケールによる障害防止の対応策が望まれている。
【発明の開示】
この発明はこのような問題点を解消するためになされたもので、スケールの成長を抑制して焼却飛灰等のカルシウム含有粉体の水洗脱塩を効率よく行うことができる方法及び装置を提供することを目的とする。
この発明に係る第1のカルシウム含有粉体の処理方法は、カルシウム含有粉体を水に溶解した後に固液分離をして水洗する方法において、カルシウム含有粉体の水への溶解時に二水石膏の結晶、塩素バイパスダスト及び硫酸、炭酸ガスのうち少なくとも一つを添加してカルシウムを析出させる方法である。
なお、二水石膏の結晶及び塩素バイパスダストのいずれかと水とを強制混合した後、この混合液にカルシウム含有粉体を混合することができる。また、二水石膏の結晶及び塩素バイパスダストのいずれかと水とカルシウム含有粉体とを同時に強制混合することもできる。
さらに、カルシウムが析出された溶解液を真空濾過することにより固液分離してケークを得ると共に真空濾過の際に生じた排気をケーク上に戻して循環させることが好ましい。
この発明に係る第2のカルシウム含有粉体の処理方法は、カルシウム含有粉体を水に溶解した後に固液分離をして水洗する方法において、水洗排水と散気手段により微細化された炭酸ガスとをガス吸収反応槽にて向流で反応させて水洗排水中の重金属類を析出させた後、ガス吸収反応槽と一体に形成された脱気槽にて水洗排水から脱気する方法である。
なお、散気手段が弾性を有し、炭酸ガスの吹き込みを断続することにより散気手段の詰まりを除去するようにすることができる。
また、この発明に係る第1のカルシウム含有粉体の処理装置は、カルシウム含有粉体を水に溶解した後に固液分離をして水洗する装置において、カルシウム含有粉体を水と混合して溶解させる混合槽と、混合槽に二水石膏の結晶、塩素バイパスダスト及び硫酸、炭酸ガスのうち少なくとも一つを供給する供給手段とを備えたものである。
なお、供給手段としては、二水石膏の結晶及び塩素バイパスダストのいずれかと水とを強制混合する強制混合手段、あるいは二水石膏の結晶及び塩素バイパスダストのいずれかと水とカルシウム含有粉体とを同時に強制混合する強制混合手段と、強制混合手段で強制混合された混合液を混合槽に供給するポンプとを含むものを用いることができる。
また、混合槽で得られた溶解液を真空濾過することにより固液分離してケークを得る真空濾過装置と、真空濾過装置から発生する排気を真空濾過装置内のケーク上に戻して循環させる循環手段とをさらに備えることが好ましい。
この発明に係る第2のカルシウム含有粉体の処理装置は、カルシウム含有粉体を水に溶解した後に固液分離をして水洗する装置において、炭酸ガスを微細化して吹き込むための散気手段を有し且つ水洗排水と炭酸ガスを向流で反応させて水洗排水中の重金属類を析出させるガス吸収反応槽と、ガス吸収反応槽の内部と連通するようにガス吸収反応槽と一体に形成されると共にガス吸収反応槽を通った水洗排水から脱気を行う脱気槽とを備えたものである。
なお、散気手段が弾性を有し、散気手段からの炭酸ガスの吹き込みを断続することにより散気手段の詰まりを除去する吹き込み制御手段を備えることもできる。この場合、散気手段として、ゴム製の散気板あるいはゴム製の散気管を有するものを使用することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
図1は、この発明の実施の形態に係るカルシウム含有粉体の処理方法の流れを概略的に示すフロー図、
図2は、変形例におけるカルシウム含有粉体の溶解方法を示す図、
図3は、他の変形例におけるカルシウム含有粉体の溶解方法を示す図、
図4は、実施の形態で用いられたガス吸収反応・脱気槽を示す断面図、
図5は、散気板を示す断面図、
図6は、散気管を示す断面図、
図7は、スケール除去装置を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1にこの発明の実施の形態に係る焼却飛灰の処理方法の流れを概略的に示す。混合槽1に、焼却飛灰を収容するタンク2と、塩素バイパスダストを収容するタンク3と、二水石膏を収容するタンク4が接続されると共に、ポンプ5を介して硫酸タンク6が接続されている。
また、混合槽1には、スラリーポンプ1aを介して真空濾過装置としてベルトフィルタ7が接続されている。ベルトフィルタ7は、大別して、水封式の真空ポンプ8と、気液分離槽9及び10と、真空トレイ11及び12と、真空トレイ11及び12の上方に配置され且つ複数の開口部を有するグリッド13と、グリッド13の上方を走行する無端ベルト状の濾布14と、グリッド13及び濾布14を囲視するカーテン部15と、濾布14の上にスラリーSを供給するための供給トレイ16と、スラリーSを洗浄するための液体Lを供給する洗浄水トレイ17とを備えている。
真空トレイ11及び12は、気液分離槽9及び10を介して真空ポンプ8に連通している。真空トレイ11及び12は、上方が開口する箱状に形成され、レール18上に複数配置されたローラ19を介して図示しない駆動手段により、レール18上を濾布14の走行方向に沿って往復移動することができる。
グリッド13は、真空トレイ11及び12の上方に設けられ、樹脂、金属等で形成された板状部材に複数の開口部を穿設したものである。
濾布14は、グリッド13の上方を走行する無端状のベルトとして形成され、複数のローラ20によって支持されて矢印方向に回転する。濾布14の濾過部以外の部分において濾布14を洗浄するため、高圧水等を噴射する噴射ノズル21が配置されている。
真空ポンプ8の出口配管22は、カーテン部15に接続され、真空ポンプ8の排気がカーテン部15内に戻されるように構成されている。
カーテン部15は、グリッド13及び濾布14の上方を囲むことによって、系外からの大気の侵入を防止している。
気液分離槽9及び10は、それぞれ真空トレイ11及び12と真空ポンプ8との間に配置され、気液分離槽9は、供給トレイ16を介してグリッド13の上に供給されたスラリーSから分離した液体と気体との気液分離を行い、気液分離槽10は、洗浄水によって洗浄されたスラリーSから分離した液体と気体との気液分離を行う。
さらに、気液分離槽10にガス吸収反応・脱気槽23が接続されている。
次に、この実施の形態に係る焼却飛灰の処理方法について説明する。まず、タンク2からの飛灰と水が混合槽1に供給されると共にタンク4から二水石膏を混合槽1に添加し、これらを混合撹拌する。これにより、二水石膏を種結晶として、そのまわりにカルシウム分が析出して付着成長したスラリーSが形成される。このとき、焼却飛灰と水との重量比を例えば1:5とし、種結晶へのカルシウム分の付着、成長を促進するため、二水石膏の添加量を混合槽1内の水の重量の0.1〜10%、水の温度を20〜60℃とすることが好ましい。
種結晶にカルシウム分をより効果的に付着、成長させるため、水、焼却飛灰及び二水石膏は、混合槽1において、10分〜2時間にわたって緩速撹拌を行いながら貯留することが好ましく、より好ましくは30分〜1時間の緩速撹拝を行う。
このように、焼却飛灰の水への溶解時に二水石膏を添加してカルシウムを析出させるので、固液分離する際にベルトフィルタ7のグリッド13が目詰まりする等の不具合を最小限に抑えると共に混合槽1等におけるスケールトラブルを解消することができる。
なお、混合槽1に二水石膏を添加する際には、例えば、エプロンフィーダ等を用いて少量ずつ添加するのは困難であるため、焼却飛灰を溶解する水とは異なる水に予め二水石膏を分散させてからスラリーとしてスラリーポンプを用いて混合槽1に添加することもできる。
その後、ベルトフィルタ7濾布14を矢印で示す方向に回転させると共に真空ポンプ8を運転し、真空トレイ11および12の真空度を高くした状態で、スラリーポンプ1aにより混合槽1から供給トレイ16を介してベルトフィルタ7の濾布14の上にスラリーSを供給する。グリッド13を介して真空トレイ11にスラリーSから液体が分離され、真空吸引によってカーテン部15内から導かれた気体と共に気液分離槽9に導かれて気液分離される。気液分離槽9で分離された液体すなわち母濾液は系外に排出され、気体は真空ポンプ8を介してカーテン部15に戻される。
また、濾過部以外の部分において濾布14は噴射ノズル21から噴射される高圧水によって洗浄されるが、このときの洗浄済みの液体Lが洗浄水トレイ17から濾過部の濾布14の上に供給される。これにより、濾布14上のスラリーSは、液体Lによって洗浄され、真空濾過される。この際、真空トレイ11及び12を濾布14の走行方向に沿って往復移動させることによって、濾過効率が向上する。真空吸引によって、グリッド13を介して真空トレイ12にスラリーSから液体が分離され、脱塩ケークCが得られる。また、スラリーSから分離した液体は、カーテン部15内に存在した気体と共に気液分離槽10に導かれて気液分離される。気液分難槽10で分離された液体すなわち溶解水はガス吸収反応・脱気槽23に排出され、気体は真空ポンプ8を介してカーテン部15に戻される。
上述のように、真空ポンプ8の排気をカーテン部15に戻して真空濾過に供しているため、真空濾過に使用される気体中の炭酸ガスの量が低下し、炭酸カルシウムのスケールの発生を抑制し、安定運転を継続することができる。
なお、カーテン部15によってグリッド13及び濾布14を完全に囲むことは困難であるため、カーテン部15からリークした気体の分だけ系外から気体を補充することとなるが、この際、炭酸ガスの含有量を減少させた気体を補充することが好ましい。
さらに、上記実施の形態においては、真空ポンプ8の排気をカーテン部15に戻すことによって、炭酸ガスの含有率を低減していたが、カーテン部15の排気の循環系統に炭酸ガス除去装置を配置するとさらに好適である。
また、真空トレイ11及び12の往復移動に伴い、真空トレイ11及び12の箱状の開口部がカーテン部15によって囲まれる範囲から外れた状態で真空ポンプ8を継続して運転すると、炭酸ガスを含む大気を吸引する場合がある。そのような場合には、真空トレイ11及び12に真空ポンプ8の排気を導入するように構成し、大気そのものを極力吸引しないようにすることが好ましい。
真空濾過装置としてベルトフィルタ7を用いたが、フィルタプレス、遠心分離機等の他の形式の固液分離装置を使用することもできる。
なお、混合槽1に二水石膏を供給するにあたって、二水石膏と水とを強制混合するか、水、二水石膏及び焼却飛灰を強制混合することが好ましい。これによって、カルシウム成分の析出量をさらに増加させることができる。
二水石膏と水とを強制混合するには、図2に示すように、二水石膏と水とをミキシングポンプ24で混合し、ホースポンプ25及びスタティック型ミキサー26を介して混合槽1に供給する方法がある。ここで、スタティック型ミキサー26は、2kg/cm程度の高圧で供給された二水石膏と水とを内部に植設された多数の突起物を介して強制的に混合撹拌する装置である。
また、水、二水石膏及び焼却飛灰を強制混合するにあたっては、図3に示すように、水、二水石膏及び焼却飛灰を撹拌槽27内で混合し、ホースポンプ25及びスタティック型ミキサー26を介して混合槽1に供給する方法がある。
二水石膏の代わりに、タンク3から塩素バイパスダストを混合槽1に供給しても、塩素バイパスダストが核となり、そのまわりにカルシウム分が析出して付着成長したスラリーSが形成される。同様に、二水石膏あるいは塩素バイパスダストの代わりに、ポンプ5を駆動して硫酸タンク6から硫酸を混合槽1に供給しても、カルシウム分が析出したスラリーSが形成される。従って、ベルトフィルタ7のグリッド13の目詰まりや混合槽1等におけるスケールトラブルを解消することができる。さらに、硫酸の代わりに炭酸ガスを混合槽1に供給することにより、カルシウム分が析出したスラリーSを形成することもできる。
また、二水石膏、塩素バイパスダスト及び硫酸、炭酸ガスを含む排ガス等のうちの複数を混合槽1に供給してもよい。
次に、本発明に係るカルシウム含有ダストの処理方法の実験例について説明する。
塩素バイパスダストを水洗処理するにあたって、図1の混合槽1に二水石膏を種結晶として、混合槽1に貯留する水に対して、0.5%または1.0%添加し、ベルトフィルタ7を用いて固液分離を行ったところ、約3ヶ月間運転を継続することができた。これは、従来のように種結晶を用いなかった場合には、12時間程度でベルトフィルタのグリッドの目詰まりによって運転を継続することができなかったのに比較して大幅な改善である。また、混合槽1においても、従来は付着性の高いスケールが成長していたのに対し、種結晶を添加した場合には、1mmにも達しないスケールが付着するに留まり、混合槽1の底部に沈降している粒子についても、微細ではあるが付着性はほとんどなかった。
ここで、塩素バイパスダストと焼却飛灰の混合物(塩素バイパスダストの重量割合25%)に二水石膏を添加した場合と、添加しなかった場合とで、ベルトフィルタのグリッドの重量増加を比較すると次のようになった。

これから明らかなように、3日間運転した後のグリッドの重量増加は、種結晶となる二水石膏を添加した場合には、添加しなかった場合に比較して1/4程度となり、従来よりも4倍の長時間運転が可能となる。
また、種結晶を添加することによって付着性が低下したことに伴い、脱塩ケークの濾過性も向上した。ベルトフィルタの濾過面積は、ケークの水の切れの良さ、空気の切れの良さ等で決定されるが、以下の表に示すように、混合槽1の温度を55℃として、種結晶を添加した場合には、添加しない場合に比較して約25%も濾過面積を低減することができた。

次に、スタティック型ミキサー26による強制混合に関する実験例について説明する。
塩素バイパスダストと水とをスラリー化するにあたって、スタティック型ミキサー26によって強制混合する場合としない場合、さらに、種結晶を添加する場合としない場合で、スラリーを撹拌した後に濾過した際の透過分の浮遊粒子状物質の濃度を比較したところ以下の表のような結果が得られた。なお、実験にあたって、温度50℃の水を用い、スラリーを30分撹撹拌した後に濾過を行った。

この表より明らかなように、スタティック型ミキサー26によって強制混合を行った場合、及び種結晶を添加した場合には、いずれも実施しない場合に比較して、濾布を通過した浮遊粒状物質の量が減少しているため、溶解していたカルシウムが種結晶上に付着、成長したものと推定される。さらに、強制混合及び種結晶の添加の両方を行った場合には、いずれも実施しない場合に比較して濾布を通過した浮遊粒状物質の量が1/10以下になり、大量のカルシウムが種結晶上に付着、成長したものと推定される。
ここで、ガス吸収反応・脱気槽23の構造を図4に示す。このガス吸収反応・脱気槽23は、大別して、気液分難槽10で分離された液体L1と下方から供給されるガスGとを向流で反応させる反応槽31と、反応槽31から排出された液体L2から脱気させる脱気槽32とを備える。
反応槽31は底部が開口した角柱状に形成され、上部に液体L1を供給するための給水管33及びガスGの排気管34が接続されると共に、下部にはガスGを供給する給気管35と、給気管35から供給されたガスGの気泡径を0.5〜3mmに微細化するためのゴム製の散気板36とが配置されている。散気板36は、ゴム板に多数の細かい刻みが入れられたものであり、ガスGが供給されると、ガスGの圧力によりゴムが伸びて多数の刻みからガスGを吹き込むものである。なお、散気板36の代わりに多孔板を設けることもできる。さらに、反応槽31の給水管33の出口に、給水管33からの液体L1を反応槽31内に効率よく分散させるための液分散板37が配置されている。また、反応槽31の内部には、液体L1及びガスGの上下方向の流れを整流するための格子状の整流板38が配置されている。
脱気槽32は、上部が角柱状に、下部が角円錐状に形成され、脱気槽32の内部は反応槽31の下部と連通している。また、脱気槽32の上部は大気に開放され、上部に脱気された液体L2を排出する排水口39が形成され、下部に沈殿物(スラッジ)を排出するスラッジ排出口40が形成されている。また、脱気槽32には、凝集剤Cを添加するための図示しない添加装置と、脱気槽32内を撹拌するための撹拌機41と、脱気槽32内の液体のpH値を測定するためのpH計42とが設けられている。
また、反応槽31の給気管35には、ブロア等からなる吹き込み制御装置43を介して図示しないセメント焼成用キルンに接続されている。
図1に示される気液分難槽10から給水管33を介して反応槽31に供給される液体L1は、Ca2+、SO2−、Mg2+等の金属イオンを含んでいる。一方、反応槽31には、図示しないセメント焼成用キルンから吹き込み制御装置43を介して多量の炭酸ガスを含むガスGが吹き込まれる。ガスGは、反応槽31の下部の給気管35から散気板36を経て、その気泡径が0.5〜3mmに微細化されて吹き込まれ、反応槽31内で液体L1と向流に接触し、液体L1中のCa2+、SO2−、Mg2+等のイオンが中和されてCaCO、CaSO、MgCO等となる。
ここで、散気板36によって、ガスGの気泡径が微細化されているため、反応槽31の内面へのスケールの付着が大幅に減少すると共に、反応効率が向上し、ガス量の変動に伴う反応効率の変化が小さくなり、ガス量の変動に伴うpH制御が容易となる。さらに、液体L1中の微粒子や生成した固相の排出が容易となる。また、液分散板37及び整流板38によっても、反応効率が向上し、ガス量の変動に伴う反応効率の変化がさらに小さくなる等の効果を奏する。
反応槽31における反応が終了した後のガスGは、排気管34を介して大気に排出される。一方、ガスGとの反応が完了した液体L2は、脱気槽32の内部に導入されて脱気されると共に、不溶化により発生した前記金属炭酸塩が図示しない添加装置から添加された凝集剤Cによって凝集する。脱気槽32内の液体L2は、撹拌機41によって撹拌され、反応が促進される。また、pH計42によって脱気槽32内の液体L2のpH値が監視され、pH値が一定に維持されるようにpH計42の出力に基づいて吹き込み制御装置43により反応槽31へのガスGの供給量が制御される。
脱気槽32において金属炭酸塩が凝集した液体L2は、排水口39を介して図示しない沈降槽等に供給され、沈降槽において沈降した金属炭酸塩が系外に除去される。また、脱気槽32で発生した沈殿物Tは、スラッジ排出口40を介してポンプ等により抜き出される。
反応槽31内の液体L1と脱気槽32内の液体L2の比重差によって、反応槽31の液面が脱気槽32の液面より高い状態で平衡し、気液分難槽10からの液体L1の供給量が多少変動しても、排水口39からのオーバーフローの量が多少変動するだけで済み、従来のようなレベル制御は不要となる。
ここで、散気板36は、弾性を有するゴムから形成されているため、図5に示されるように、ガスGが吹き込まれないときには、平面形状を呈しているが、ガスGが吹き込まれると、散気板36はガスGの圧力により外方へ向かって凸状に膨らみ湾曲する。そこで、吹き込み制御装置43によりガスGの供給/停止を断続すると、散気板36の形状が変化し、これにより散気板36の表面に付着したスケールを除去することができる。すなわち、散気板36の詰まりを解消することが可能となる。
また、散気板36の代わりに、図6に示されるように、弾性を有するゴムから形成された散気管44を使用することもできる。散気管44は、散気板36と同様に、ゴム管に多数の細かい刻みが入れられたものであり、ガスGが供給されると、ガスGの圧力によりゴムが鎖線で示されるように伸びて、多数の刻みからガスGを吹き込むものである。このような散気管44を用いると共に吹き込み制御装置43によりガスGの供給/停止を断続しても、散気管44の形状の変化に起因して散気管44の表面に付着したスケールを除去することができ、散気管44の詰まりを解消することが可能となる。
さらに、図7に示されるように、ゴム製の散気管44の近傍に押し上げ部材45を上下動自在に配設し、定期的に押し上げ部材45を上昇させることにより散気管44の中央部を押し上げて変形させるようにしても、散気管44の表面に付着したスケールを除去することができる。
以上説明したように、この発明によれば、焼却飛灰や塩素バイパスダスト等のカルシウムを含有する粉体を水洗処理するにあたって、水洗設備内へのスケールの発生・成長を抑制することができ、スケールによる障害を効果的に防止することが可能となる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウム含有粉体を水に溶解した後に固液分離をして水洗する方法において、
カルシウム含有粉体の水への溶解時に二水石膏の結晶、塩素バイパスダスト及び硫酸、炭酸ガスのうち少なくとも一つを添加してカルシウムを析出させることを特徴とするカルシウム含有粉体の処理方法。
【請求項2】
二水石膏の結晶及び塩素バイパスダストのいずれかと水とを強制混合した後、この混合液にカルシウム含有粉体を混合する請求項1に記載のカルシウム含有粉体の処理方法。
【請求項3】
二水石膏の結晶及び塩素バイパスダストのいずれかと水とカルシウム含有粉体とを同時に強制混合する請求項1に記載のカルシウム含有粉体の処理方法。
【請求項4】
カルシウムが析出された溶解液を真空濾過することにより固液分離してケークを得ると共に真空濾過の際に生じた排気を前記ケーク上に戻して循環させる請求項1に記載のカルシウム含有粉体の処理方法。
【請求項5】
カルシウム含有粉体を水に溶解した後に固液分離をして水洗する方法において、
水洗排水と散気手段により微細化された炭酸ガスとをガス吸収反応槽にて向流で反応させて水洗排水中の重金属類を析出させた後、ガス吸収反応槽と一体に形成された脱気槽にて水洗排水から脱気する
することを特徴とするカルシウム含有粉体の処理方法。
【請求項6】
散気手段は弾性を有し、
炭酸ガスの吹き込みを断続することにより散気手段の詰まりを除去する請求項5に記載のカルシウム含有粉体の処理方法。
【請求項7】
カルシウム含有粉体を水に溶解した後に固液分離をして水洗する装置において、
カルシウム含有粉体を水と混合して溶解させる混合槽と、
前記混合槽に二水石膏の結晶、塩素バイパスダスト及び硫酸、炭酸ガスのうち少なくとも一つを供給する供給手段と
を備えたことを特徴とするカルシウム含有粉体の処理装置。
【請求項8】
前記供給手段は、
二水石膏の結晶及び塩素バイパスダストのいずれかと水とを強制混合する強制混合手段と、
前記強制混合手段で強制混合された混合液を前記混合槽に供給するポンプと
を含む請求項7に記載のカルシウム含有粉体の処理装置。
【請求項9】
前記供給手段は、
二水石膏の結晶及び塩素バイパスダストのいずれかと水とカルシウム含有粉体とを同時に強制混合する強制混合手段と、
前記強制混合手段で強制混合された混合液を前記混合槽に供給するポンプと
を含む請求項7に記載のカルシウム含有粉体の処理装置。
【請求項10】
前記混合槽で得られた溶解液を真空濾過することにより固液分離してケークを得る真空濾過装置と、
前記真空濾過装置から発生する排気を前記真空濾過装置内の前記ケーク上に戻して循環させる循環手段と
をさらに備えた請求項7に記載のカルシウム含有粉体の処理装置。
【請求項11】
カルシウム含有粉体を水に溶解した後に固液分離をして水洗する装置において、
炭酸ガスを微細化して吹き込むための散気手段を有し且つ水洗排水と炭酸ガスを向流で反応させて水洗排水中の重金属類を析出させるガス吸収反応槽と、
前記ガス吸収反応槽の内部と連通するように前記ガス吸収反応槽と一体に形成されると共に前記ガス吸収反応槽を通った水洗排水から脱気を行う脱気槽と
を備えたことを特徴とするカルシウム含有粉体の処理装置。
【請求項12】
前記散気手段は弾性を有し、
前記散気手段からの炭酸ガスの吹き込みを断続することにより前記散気手段の詰まりを除去する吹き込み制御手段を備えた請求項11に記載のカルシウム含有粉体の処理装置。
【請求項13】
前記散気手段は、ゴム製の散気板を有する請求項12に記載のカルシウム含有粉体の処理装置。
【請求項14】
前記散気手段は、ゴム製の散気管を有する請求項12に記載のカルシウム含有粉体の処理装置。

【国際公開番号】WO2004/030839
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【発行日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−500083(P2005−500083)
【国際出願番号】PCT/JP2003/011932
【国際出願日】平成15年9月18日(2003.9.18)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】