説明

ガススプリング装置

【課題】本発明はシリンダ本体と回動部材との間のがたつきを防止することを課題とする。
【解決手段】ガススプリング装置10は、シリンダ機構20と、回動位置復帰機構30とを有する。シリンダ機構20のピストンロッド24の下端は、椅子12の脚部13に固定される。また、シリンダ本体22の上端は、座部14を支持するブラケット16に固定される。回動位置復帰機構30は、離席状態になると座部14の向きを所定の向き(基準位置)に自動的に復帰させる機構であり、案内部材70、回動部材80、回転規制機構90、ばね部材100等から大略構成されている。回転規制機構90は、シリンダ本体22の回動を規制してシリンダ本体22と回動部材80との間のがたつきを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガススプリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、座部の高さ位置を調整可能とする椅子には、座部を昇降可能に支持するガススプリング装置が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種のガススプリング装置は、レバー操作によりシリンダ機構のピストン及びピストンロッドを摺動させて椅子の高さ調整を行えると共に、座部を回動可能に支持している。
【0004】
また、ガススプリング装置は、例えばシリンダ機構のシリンダ本体が椅子の脚部に対して回動自在に支持され、且つシリンダ本体より軸方向に突出するピストンロッドが脚部に固定されている。さらに、ガススプリング装置には、座部に作用していた荷重(体重)が無くなると、座部を基準位置(正面を向いた位置)に復帰させる回動位置復帰機構(「オートリターン機構」とも呼ばれている)が設けられている。
【0005】
回動位置復帰機構は、支持筒体の内部に固定された案内部材と、シリンダ本体の回動に応じて回動する回動部材と、軸方向のみ移動可能な昇降部材と、昇降部材の第1の傾斜面と回動部材の第2の傾斜面とが対面状態で当接するように昇降部材を軸方向に付勢するばね部材とより構成されている。そして、ガススプリング装置は、着席状態で座部の向きを周方向に回動させて離席状態になると、昇降部材の第1の傾斜面と回動部材の第2の傾斜面とが互いに対面するように回動部材が軸回りに回動することで所定の向きとなる基準位置に復帰する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−122633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記ガススプリング装置では、シリンダ本体の外周と回動部材の内周との嵌合部分の横断面形状が非円形状に形成され、シリンダ本体と回動部材とが相互に嵌合して一体的に回動するように構成されており、且つ当該シリンダ本体の外周との回動部材の内周との間には、組立てを可能とするための隙間が形成されている。この隙間は、周方向のがたつきの原因になる。そのため、ガススプリング装置は、着席状態で高さ調整をした後、離席状態に切り替わると、回動位置復帰機構の作用により座部が離席時の基準位置を向くように周方向に回動するが、その際上記隙間により座部が基準位置から若干ずれた周方向位置で停止することがあるという問題があった。
【0008】
また、複数の椅子が一列に並んでいる場合は、各椅子によって座部の向きにばらつきが生じ、回動位置復帰機構を有するガススプリング装置を用いているのに、座部の向きが同一方向に揃わないという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は上記事情に鑑み、上記課題を解決したガススプリング装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は以下のような手段を有する。
【0011】
本発明は、内部が中空とされた支持筒体と、
該支持筒体の内部に挿入され、一端側が前記支持筒体の軸方向へ外部に突出し、他端側が前記支持筒体に固定されたシリンダ機構と、
前記支持筒体と前記シリンダ機構のシリンダ本体との間に設けられ、前記シリンダ本体の前記支持筒体に対する回動に対して基準位置に復帰させる回動位置復帰機構と、を備え、
前記シリンダ本体の一端側に座部が取り付けられる椅子用のガススプリング装置において、
前記シリンダ本体外周に軸方向に延びる平行な2つの平面部を設け、
前記回動位置復帰機構は、
前記支持筒体の内部に回動不可状態に固定され、前記シリンダ本体が回動可能に貫通する軸受け部と軸方向の一側に第1の傾斜面とが形成された案内部材と、
前記案内部材の前記第1の傾斜面に摺接する第2の傾斜面が形成され、前記シリンダ本体と共に回動し、且つ前記シリンダ本体に対して軸方向に移動可能に設けられた回動部材と、
前記回動部材の内周には、一端が前記回動部材の軸と平行な軸を中心に回動可能に支持され、他端が前記平面部の軸方向に延びる中心線よりずれた位置に当接する規制部材を前記回動部材中心軸に対し点対称に設け、前記規制部材を円周方向に付勢する付勢手段とからなる回転規制機構と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、回動部材の内周には、一端が回動部材の軸と平行な軸を中心に回動可能に支持され、他端が平面部の軸方向に延びる中心線よりずれた位置に当接する規制部材を回動部材中心軸に対し点対称に設け、規制部材を円周方向に付勢する付勢手段とからなる回転規制機構を有するため、シリンダ本体と回動部材との間のがたつきを無くして座部を基準位置に正確に停止させることができ、複数の椅子が並んでいる場合でも、各椅子の座部を同じ方向に揃えた位置に回動復帰させられる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明によるガススプリング装置の一実施例が適用された椅子を示す図である。
【図2】ガススプリング装置の縦断面図である。
【図3A】案内部材の縦断面図である。
【図3B】図3A中A−A線に沿う縦断面図である。
【図4A】回動部材の横断面図である。
【図4B】図4A中B−B線に沿う縦断面図である。
【図4C】図4A中C−C線に沿う縦断面図である。
【図5】シリンダ本体と回動部材との嵌合状態を示す横断面図である。
【図6】シリンダ本体と回動部材との間のがたつきを無くした状態に保持する回転規制機構を拡大して示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
〔ガススプリング装置の構成〕
図1は本発明によるガススプリング装置の一実施例が適用された椅子を示す図である。図2はガススプリング装置の縦断面図である。図1及び図2に示されるように、ガススプリング装置10は、シリンダ機構20と、回動位置復帰機構30とを有する。シリンダ機構20は、所定圧力のガスが封入されたシリンダ本体22と、シリンダ本体22の内部を摺動するピストンに結合されたピストンロッド24とを有する。本実施の形態では、ピストンロッド24の下端は、椅子12の脚部13に固定される。また、シリンダ本体22の上端は、座部14を支持するブラケット16に固定されている。
【0015】
シリンダ本体22の外周側に設けられた支持筒体40は、底部開口が底板50に閉塞された有底円筒状に形成されている。
【0016】
支持筒体40の内周とシリンダ本体22の外周との間に形成された筒状空間には、座部14の回動方向の向きを基準位置に復帰させる回動位置復帰機構30が設けられている。回動位置復帰機構30は、人が立ちあがった離席状態になると座部14の向きを所定の向き(正面を向いた基準位置)に自動的に復帰させる機構であり、案内部材70、回動部材80、回転規制機構90、ばね部材100等から大略構成されている。
【0017】
案内部材70は、支持筒体40の内周側にかしめ等により固定されており、シリンダ本体22が貫通する軸受孔71を有し、軸受孔71によりシリンダ本体22の摺動方向及び回動方向に案内する。また、案内部材70の内周側には、シリンダ本体22の外周に嵌合する回動部材80が収容される凹部74が設けられている。
【0018】
回転規制機構90は、後述するように回動部材80の内周側に設けられ、シリンダ本体22の回動を規制してシリンダ本体22と回動部材80との間のがたつきを防止する。
【0019】
従って、回動部材80は、回転規制機構90によりシリンダ本体22に対し回動方向の相対変位が規制されているため、シリンダ本体22と一体的に回動するように保持され、シリンダ本体22を軸方向にのみ移動可能に支持している。さらに、回動部材80の上端には、案内部材70の第1の傾斜面(カム面)72に当接、離間する第2の傾斜面(カム面)82が形成されている。
【0020】
ばね部材100は、下端が支持筒体40にかしめ加工により固定されたばね受け110に当接し、上端が回動部材80の底部に当接するスラスト軸受120を上方に押圧している。ばね部材100は、回動部材80を上方に付勢しており、回動部材80と案内部材70との傾斜面同士を対面状態に当接するように付勢している。
【0021】
このように、回動部材80は、ばね部材100のばね力により、スラスト軸受120を介して上方に押圧されるため、案内部材70の第1の傾斜面72に対して第2の傾斜面82を押圧させることで周方向に回動し、両傾斜面が対面する位置で停止する。よって、回動位置復帰機構30は、ばね部材100のばね力がスラスト軸受120を介して押圧される回動部材80と支持筒体40に固定された案内部材70とが協働して座部14を基準位置に復帰させるように構成されている。
〔シリンダ機構20の構成〕
ここで、シリンダ機構20の構成について説明する。シリンダ本体22の上端開口には、プランジャ140が摺動可能に突出している。このプランジャ140は、例えば、操作レバー150の外部操作により下方に押圧操作させると、シリンダ本体22の内部に降下して高さ調整を可能とする。
【0022】
また、シリンダ本体22の内側には、ピストンが摺動するシリンダ室が形成されている。また、シリンダ本体22の下端には、ピストンロッド24が軸方向に突出しており、ピストンロッド24の下端は支持筒体40の底板50に固定されている。
【0023】
さらに、シリンダ本体22の外周には、一対の第1の平面部28が接線方向に形成されている。また、各第1の平面部28は、外周に180度の間隔で設けられ、且つシリンダ本体22が軸方向に摺動する長さ(ピストンストロークに相当する長さ)に形成されている。
【0024】
離席状態で上記操作レバー150によってプランジャ140が押圧されてシリンダ本体22の内部に形成されたガス流通路を開放したときは、シリンダ本体22の上室と下室との間が連通状態に切り替わり、ピストンが上面と下面との受圧面積の差によりガス圧によって押し下げられる。これにより、ピストンロッド24がシリンダ本体22の下方に押し出され、座部14の高さ位置を上昇させることが可能になる。
【0025】
また、着席状態で上記操作レバー150によってプランジャ140が押圧されてシリンダ本体22の内部に形成されたガス流通路を開放したときは、着席の荷重によりピストンロッド24がシリンダ本体22内に押し戻され、座部14の高さ位置を降下させることが可能になる。
〔回動位置復帰機構30の各部の構成〕
図3Aは案内部材70の縦断面図である。図3Bは図3A中A−A線に沿う縦断面図である。図3A及び図3Bに示されるように、案内部材70は、円筒形状に形成されており、シリンダ本体22は貫通する軸受孔71と、回動部材80の第2の傾斜面82が摺接する第1の傾斜面72と、支持筒体40に固定される外周面73と、回動部材80が収納される凹部74とを有する。
【0026】
図4Aは回動部材80の横断面図である。図4Bは図4A中B−B線に沿う縦断面図である。図4Cは図4A中C−C線に沿う縦断面図である。図4A乃至図4Cに示されるように、回動部材80は、案内部材70の凹部74とシリンダ本体22との間に配される円筒状部材であり、上部に第2の傾斜面82が形成されている。
【0027】
さらに、回動部材80は、案内部材70の凹部74に対向する外周面84と、シリンダ本体22が挿通される挿通孔86と、シリンダ本体22の外周に形成された第1の平面部28に対向する一対の第2の平面部88とを有する。一対の第2の平面部88は、回転部材80の中心軸に対し点対称に設けられている。
【0028】
また、図4Aに示されるように、各第2の平面部88の外側には、回転規制機構90が設けられている。各第2の平面部88は、シリンダ本体22の外周面の接線方向に形成され、且つ軸方向に延在形成されている。さらに、各第2の平面部88に隣接する回動部材80の内部には、回転規制機構90を収納する収納凹部89が設けられている。この収納凹部89は、上方からみると第2の平面部88に対して所定角度θ分傾いて設けられている。また、収納凹部89は、後述する規制部材160を収納する第1の収納部89aと、付勢部材170を収納する第2の収納部89bとを有する。
【0029】
図5はシリンダ本体22と回動部材80との嵌合状態を示す横断面図である。図5に示されるように、回転規制機構90は、シリンダ本体22と回動部材80との間のがたつきを防止する機構であり、シリンダ本体22の第1の平面部28に対して軸線の中心より所定距離ずれた位置に当接して第1の平面部28の変位を規制する規制部材160と、規制部材160を円周方向に付勢して回動部材80とシリンダ本体22とのがたつきの無い状態に保持する付勢部材170とを有する。
【0030】
規制部材160は、樹脂材により成型された板状部材であり、第1の平面部28に当接する側端部162を有する。側端部162は、第1の平面部28との摺動抵抗を緩和するように曲面を有する半円形状(R形状)とされている。また、規制部材160は、例えば耐久性に優れた繊維チタン酸カリウム繊維を配合した複合材料などにより成型されており、シリンダ本体22との摺動抵抗により摩耗しにくい材質によって成型されている。
【0031】
付勢部材170は、ウレタンゴム又は耐摩耗性や荷重性に優れた高機能ウレタン(例えば硬度93)よりなる弾性体であり、規制部材160の側端部162がシリンダ本体22の第1の平面部28をがたつきのない状態に押圧するように設けられている。
【0032】
図6はシリンダ本体22と回動部材80との間のがたつきを無くした状態に保持する回転規制機構90を拡大して示す横断面図である。図6に示されるように、回転規制機構90の付勢部材170は、規制部材160が第1の平面部28に当接する際、半径方向の圧縮荷重を受けて弾性変形すると共に、材質自体の反発力により規制部材160の側端部162をシリンダ本体22の第1の平面部28の一側(左側)に押圧する。これにより、シリンダ本体22の外周が周方向に回動して、第1の平面部28の他側(右側)が第2の平面部88に当接する。
【0033】
第2の平面部88には、収納凹部89に連通する開口88aが設けられている。従って、規制部材160は、付勢部材170の弾性により内側に押圧されているため、側端部162が第2の平面部88の開口88aより内側に突出し、第2の平面部88に対向するシリンダ本体22の第1の平面部28に当接する。
【0034】
このように、シリンダ本体22の外周に形成された第1の平面部28は、一側(左側)に規制部材160の側端部162が当接し、他側(右側)に第2の平面部88が当接するため、シリンダ本体22と回動部材80との間は、がたつきのない状態に保持される。従って、シリンダ本体22の回動位置が回転規制機構90により所定位置に保持されているため、シリンダ本体22の上端に固定された座部14は、離席状態のとき、回動位置復帰機構30の復帰動作によりに所定の基準位置を向くように動作する。よって、複数の椅子12が並んでいる場合は、各椅子12の座部14が離席状態のとき、各座部14がそれぞれ基準位置に復帰して同一方向を向くように動作する。
【0035】
また、座部14を昇降させる際は、シリンダ本体22の第1の平面部28が規制部材160を図6中矢印で示す方向に押し出すため、付勢部材170が圧縮されて規制部材160の側端部162が収納部89側(外側)に退避する。これにより、シリンダ本体22の上端に設けられた座部14の昇降動作がスムーズに行える。
【0036】
尚、規制部材160の形状は、上記のものに限らない。上記回転規制機構90の変形例としては、例えば規制部材160を、第2の平面部88と平行な背面部と、背面部の片側端部より水平方向に突出する突出部とからなるL字状に形成し、一側(左側)に突出する突出部を第2の平面部88の開口88aより内側に突出させて第1の平面部28の一側(左側)に当接する構成として良い。この変形例では、規制部材160を第2の平面部88に対して傾斜させる必要がない。
【符号の説明】
【0037】
10 ガススプリング装置
12 椅子
13 脚部
14 座部
16 ブラケット
20 シリンダ機構
22 シリンダ本体
24 ピストンロッド
26 外周
28 第1の平面部
30 回動位置復帰機構
40 支持筒体
50 底板
70 案内部材
71 軸受孔
72 第1の傾斜面(カム面)
73 外周面
74 凹部
80 回動部材
82 第2の傾斜面(カム面)
84 外周面
86 挿通孔
88 第2の平面部
88a 開口
89 収納凹部
89a 第1の収納部
89b 第2の収納部
90 回転規制機構
100 ばね部材
110 ばね受け
120 スラスト軸受
140 プランジャ
150 操作レバー
160 規制部材
162 側端部
170 付勢部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が中空とされた支持筒体と、
該支持筒体の内部に挿入され、一端側が前記支持筒体の軸方向へ外部に突出し、他端側が前記支持筒体に固定されたシリンダ機構と、
前記支持筒体と前記シリンダ機構のシリンダ本体との間に設けられ、前記シリンダ本体の前記支持筒体に対する回動に対して基準位置に復帰させる回動位置復帰機構と、を備え、
前記シリンダ本体の一端側に座部が取り付けられる椅子用のガススプリング装置において、
前記シリンダ本体外周に軸方向に延びる平行な2つの平面部を設け、
前記回動位置復帰機構は、
前記支持筒体の内部に回動不可状態に固定され、前記シリンダ本体が回動可能に貫通する軸受け部と軸方向の一側に第1の傾斜面とが形成された案内部材と、
前記案内部材の前記第1の傾斜面に摺接する第2の傾斜面が形成され、前記シリンダ本体と共に回動し、且つ前記シリンダ本体に対して軸方向に移動可能に設けられた回動部材と、
前記回動部材の内周には、一端が前記回動部材の軸と平行な軸を中心に回動可能に支持され、他端が前記平面部の軸方向に延びる中心線よりずれた位置に当接する規制部材を前記回動部材中心軸に対し点対称に設け、前記規制部材を円周方向に付勢する付勢手段とからなる回転規制機構と、
を備えることを特徴とするガススプリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−50201(P2013−50201A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189968(P2011−189968)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】