説明

ガスセンサーユニットおよびガス濃度測定装置

【課題】 特定位置をリアルタイムに連続測定可能で、信頼できる測定値が得られる直接的な方法を用いて、土壌内を浸透する水分によるセンサーへの影響を抑制して継続した土壌中のガス成分の濃度測定を行うガス濃度測定センサーおよびその測定装置を提供する。
【解決手段】 電気式センサーと、電気式センサーを収納する壁面が通気性を有するユニット筐体と、その電気式センサーからの信号を外部に伝達する信号線と、ユニット筐体の外壁面に取り付けられた親水性ガス透過膜とから構成されることを特徴とするセンサーユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
土壌中の二酸化炭素(CO)ガス濃度を直接測定する手法に関するもので、土壌中のガス濃度を土壌中に直接埋設して測定する特殊なガス透過膜を備える超小型センサーを用いたガスセンサーユニット等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化の原因に化石燃料の燃焼に伴う人為的な大気中の二酸化炭素(CO)濃度の上昇が大きくなってきている。一方、元来二酸化炭素(CO)は地球誕生から環境の変遷に大きく関与し、地球規模に炭素循環を形成し、その地球上での二酸化炭素(CO)の自然発生は、植物の根や土壌中の小動物の呼吸、そして微生物分解などによる酸素(O)消費により生じ、その発生量は人為的な発生量よりは十分に大きく、またその量も大気中の二酸化炭素(CO)量の数倍程度が存在しているといわれている。
このような二酸化炭素(CO)を取り巻く環境の中、地球温暖化対策を考える上において、二酸化炭素(CO)の循環・収支・存在量を様々のスケールで評価することが重要である。
【0003】
現在、農業分野などで行われている土壌中の二酸化炭素(CO)の測定は、図7(符号30)に示す細管37を地中に挿入して、二酸化炭素(CO:白抜き矢印)を吸引、分析する吸引法(例えば、特許文献1、2参照)、あるいは図8(符号40)に示す地表面をチャンバー43により覆い、そのフラックス(白抜き矢印)を測定するチャンバー法(例えば、特許文献3、4参照)を用いて行われている。
図7、8において、31、41はガスセンサー、32、42ガス分析装置、33、43はチャンバー、34、44は信号線、35は流量計、Pは吸引ポンプ、36、46は排気管、37はガス採取管、38は保護管、47は大気吸引口である。
しかし、いずれも土壌中の二酸化炭素(CO)ガスを直接測定するものではなく、ガスを採取した後にガス分析を行う間接的な手法であって、土壌中のガス濃度を直接測定するものではない。そのため、測定に際して測定箇所の場を乱さずにリアルタイムで測定することは困難であった。
【0004】
一方、直接的にガス濃度を測定する手法としては、汚染土の調査、清浄処理を行うなかで、土壌中の揮発性有機化合物(例えば、トリクロロエチレンやテトラクロロエチレンなどのVolatile Organic Compounds:VOC)を検出する土壌ガスセンサーの例が特許文献5に記載されている。
【0005】
この土壌ガスセンサーや湿度センサーは、そのセンサー部が気中に露出されているもので、さらに二酸化炭素(CO)、炭化水素(CH)、酸素(O)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)、アンモニア(NH)、オゾン(O)、VOCなどのガスセンサーは、いずれも測定対象のガス成分との直接接触が必要であり、センサー部に電気回路を用いていることから水分との直接接触を生じると故障しやすいという問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−184105号公報
【特許文献2】特開2006−346578号公報
【特許文献3】特許第3968728号公報
【特許文献4】特開2008−203124号公報
【特許文献5】特開2009−41996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2に提案される吸引法や特許文献3、4で提案されているチャンバー法では、二酸化炭素(CO)ガスを始めとする土壌内の各種ガスの濃度測定においては、下記問題点があげられている。
(1)挿入した地点周辺のガスを吸引することから、特定位置のガス濃度を正確に測定できない。〔吸引法〕
(2)ガスを吸引する方法であるため、特定位置での連続測定はできない。〔吸引法〕
(3)測定効率が低く、自動測定が困難である。[吸引法]
(4)表層のガス濃度の測定からでは、地中内部のガス濃度の推定は困難である。〔チャンバー法〕
(5)地表面をチャンバーで覆うことから、その環境条件(気圧、風、湿度、温度など)が、自然環境条件とは異なっているために、測定値の信頼性が十分でないことが予想される。[チャンバー法]
【0008】
さらに、電気回路によるセンサー部を有するガスセンサーや湿度センサーでは、測定対象のガス成分との直接接触が必要であり、したがって水分(水滴、結露、水蒸気など)との直接接触が避けられず、水分による電気回路の短絡、錆などの不具合を生じる可能性が極めて大きい。そのため、その利用には保護措置が必要となり、屋外で湿度センサーを使用する場合では百葉箱や多段式雨除け傘などの装置を設け、その中で計測保護措置が採られている。
しかしながら、このような保護措置は土壌中では困難であることから、土壌中のような被測定物(ガス成分)と水分(主に水蒸気)が混在する環境において、その環境に含まれるガス成分を測定するセンサー装置が望まれていた。
【0009】
そこで、本発明では特定位置をリアルタイムに連続測定可能で、信頼できる測定値が得られる直接的な方法を用いて、土壌内を浸透する水分によるセンサーへの影響を抑制して継続した土壌中のガス成分の濃度測定を行うガス濃度測定用のセンサーユニットと、そのセンサーユニットとを用いたガス濃度測定装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の発明は、電気式センサーと、その電気式センサーからの信号を外部に伝達する信号線と、電気式センサーを覆う親水性ガス透過膜とから構成されることを特徴とするセンサーユニットである。
【0011】
本発明の第2の発明は、電気式センサーと、壁面が通気性を有する前記電気式センサーを収納するユニット筐体と、その電気式センサーからの信号を外部に伝達する信号線と、ユニット筐体の外壁面に取り付けられる親水性ガス透過膜とから構成されることを特徴とするセンサーユニットである。
【0012】
本発明の第3の発明は、第2の発明において、親水性ガス透過膜の外側に膜保護体を設けたことを特徴とするセンサーユニットである。
【0013】
本発明の第4の発明は、第2、第3の発明においてユニット筐体内に電気式センサーを覆うように通気性保護体を設けたことを特徴とするセンサーユニットである。
【0014】
本発明の第5の発明は、第2から第4の発明において、ユニット筐体の底部に排水管を備え、その排水管により排出されるユニット筐体内の貯留水を溜める集水貯留部を設けたことを特徴とするセンサーユニットである。
【0015】
本発明の第6の発明は、第1の発明から第5の発明におけるガスセンサーが、直接接触して被測定物の濃度を測定するセンサーであることを特徴とするセンサーユニットである。
【0016】
本発明の第7の発明は、第1〜第6の発明のセンサーユニットを複数個、直列に配して地中に装入されるセンサー体と、そのセンサー体のセンサーユニットからの信号を外部に伝達する信号線と、信号線の他端側に接続されるデータ収集部を備えることを特徴とするガス濃度測定装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、測定に要する手間、時間を大幅に短縮することを可能とし、かつ多数の同時測定や大気濃度との連続測定もでき、大幅なコストダウンを可能とする。
さらに、土壌中での直接測定であるため、信頼性の高いデータを得られる。
また、土壌中を含めた湿気の多い環境(穀物内部、養生施設、コンクリート内部など)における各種ガス濃度のリアルタイム測定を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による土壌中のガス濃度測定法を説明する図で、(a)は全体図、(b)は最下部のセンサーユニット1の拡大模式図である。
【図2】ガス濃度測定用センサーユニットの第1の実施形態を示す図で、(a)一部切欠き外観図、(b)はa−a断面図である。
【図3】センサーユニットの他の実施形態を示す図で、(a)一部切欠き外観図、(b)はb−b断面図である。
【図4】実施例2で使用する本発明に係る二酸化炭素濃度測定用の試験装置を示す概略図である。
【図5】土壌中の二酸化炭素濃度の経時変化を測定した図である。
【図6】240時間経過後の大気、地表面および地中の二酸化炭素濃度を示す図である。
【図7】吸引法によるガス濃度測定の説明図である。
【図8】チャンバー法によるガス濃度測定の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のガス濃度測定用のユニットセンサーは、心臓部に赤外線方式などの電気回路を有するガスセンサーを、周辺土壌間隙水の侵入を防止して測定ガスのみを通過させる特殊なガス透過膜で覆うもので、土壌中(ただし、地下水面より上部の不飽和帯を対象とするものである)の間隙中のガス濃度を直接、且つリアルタイムに測定することを可能とするものである。
【0020】
さらに、通気性を有するユニット筐体内にガスセンサーを配置し、そのユニット筐体外周をガス透過膜で覆い、その膜表面を地中での小石や木の根等による膜の破損を防ぐために金網等の膜保護体で覆い、また、ガス透過膜内に別の原因(例えば、ユニット筐体のジョイント部からの漏水など)により水分が侵入することを想定して、内部にメッシュ状の保護容器を取り付ける。更に、万が一に備え、その漏水は、ユニット筐体底部の排出管を通じて、ユニット筐体下部に設置された集水貯留部に導かれ、マイクロポンプにより地上に排水される構造となっている。
【0021】
本発明におけるガス透過膜には、水分と親和性を有する親水性をもつ多孔膜(以下、「親水性多孔膜」と称す。)を用いる。
一般にガス透過膜として知られる多孔膜は、基材にフッ素系樹脂などの疎水性樹脂を用いて多孔膜化したものが利用されているが、この疎水性の多孔膜では、雨滴のような粒径の大きなものは透過しないが、水蒸気のような粒径0.04μm〜0.3nm(水分子の大きさ)と小さいものは透過させてしまうという問題点があり、透過した先において水蒸気から凝結核(1.0μm程度)以上の大きさに成長して水滴となり、センサーの電気回路に付着して短絡させたり、錆や腐食を起こさせたりしてガスセンサーを故障させてしまう。
【0022】
一方、本発明における親水性多孔膜であるガス透過膜は、この水蒸気の透過を抑制して水分付着によるガスセンサーの故障を防ぐ役割を担うものである。
以下に、本発明で用いる親水性多孔膜のガス透過膜としての性質を説明する。
水を通さず、気体のみを透過させる微細多孔膜は、多孔膜の孔の平均直径が水の大きさより小さく、気体のサイズより大きければ、どんな材質の物でも適合して使用可能で、代表的な気体のサイズは、酸素は0.0004μm、二酸化炭素(CO)は0.00033μm、水分子は0.0003μm、水蒸気は0.04μm程度である。
ところで、自然界の雨水のうち、いわゆる霧雨の雨滴は約100μm、しとしと雨では数百μm、通常の雨では1000μmオーダーのサイズであり、したがって、雨滴の大きさと水の凝結核の大きさを考慮すると多孔膜の孔の平均直径(以下、孔径と称する場合もある)が1.0μm以下の範囲にあれば、ガスセンサーや湿度センサーに対して、水(水滴、雨滴など)を通さない機能を果たすことは可能と考えられる。
【0023】
しかし、気体のうち水蒸気は多孔膜を通過し、内部にある基材、部品、機器などに接触して結露などの現象で水分子となり、錆や腐食の原因となって、機器などの作動に悪影響を及ぼす場合がある。
そのため、水蒸気の透過を阻止する多孔膜が要求されるが、一般に知られている孔の平均直径が0.1〜1.0μm程度の多孔膜は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリオレフィンなどの疎水性樹脂膜であり、これら疎水性の多孔膜では水蒸気の通過を阻止することはできない。なぜなら、これらの疎水性の多孔膜では孔径を小さくしても水蒸気の凝縮現象が起こらないために、水蒸気は通過してしまうからである。
【0024】
ところで、凝縮とは気体の温度を下げたりしたときに、その気体が液化する現象で、水蒸気の冷却による霧、雲、露などの発生として知られる。さらに、シリカゲルなどの親水性の多孔質の細孔内部に存在する水蒸気は、外部にある水蒸気に比べて液体になりやすく、このような現象が毛管凝縮と呼ばれ、細孔内にて水分子同士の引力より細孔の壁面と水分子との引き合う力が強い時に現れる現象である。
【0025】
この毛管凝縮は曲がった界面の圧力差(dP)で生じ、その現象を数式で表すと、界面形状が球面の一部で水と固体の接触角がθのときに、下記式(1)で表される。なお、接触角θは水滴を固体の上に落した時の水玉と固体のなす角。この接触角θが大きいもの程濡れないものとなり、PTFEは丸い水滴状になり、その接触角θは114度に達する。
【0026】
【数1】

【0027】
次に、毛細管内側に多分子層吸着が起こると、毛細管内側に薄い液相が形成されて毛細管の管内径(r)は小さくなる。その場合の毛細管の圧力差は式(2)に示される。
【0028】
【数2】

【0029】
この式(2)において、毛細管が真っ直ぐな場合にはrは無限大となり、式(2)は下記式(3)に近似される。
【0030】
【数3】

【0031】
膜材質が疎水性多孔膜の代表であるPTFEの場合、θ=114°で、式(3)は下記式(4)となり、圧力差(dP)は負となって、水蒸気は水へ凝縮しないで通過することとなる。
【0032】
【数4】

【0033】
一方、本発明で使用するガス透過膜は、親水性を備える多孔膜で、水との接触角はほぼ0度に近く、近似的にはcos=1となる。したがって圧力差dPは、下記式(5)で表される。
【0034】
【数5】

【0035】
さらに、多孔膜の孔の平均孔径が0.1μm以下であり、強い毛管凝縮を生じ易く、水蒸気(水蒸気の粒径は0.3nm〜0.04μmと言われている。)は、このガス透過膜が親水性を有することから、膜表面および膜内部(孔内部)で水分子及び水蒸気が凝結して水蒸気の状態から少なくとも凝結核以上の水の大きさに成長することによって水蒸気の通過を阻止するものである。このときの水の大きさは、凝結核の1.0μm以上となることから、平均孔径が0.1μmの親水性の膜を水蒸気は通過しない。また、完全な水滴の状態であれば、式(5)に示される表面張力が作用して水分の状態では容易には通過しないことは明らかである。
【0036】
表1に、本発明の実施例に用いたガス透過膜と他のガス透過膜の特性を示す。
なお、本発明のセンサーユニットに用いるガス透過膜は、表1の実施例1のものに限らず、親水性を有し、平均孔径が1μmより小さい多孔膜、より望ましくは0.1μm以下の平均孔径の多孔膜である。
【0037】
【表1】

【0038】
以下、添付図面に基づいて、本発明のガス濃度測定センサーおよび測定装置について詳細に説明する。
【実施例】
【0039】
本発明のガス濃度測定装置によるガス測定時の様子を図1のガス濃度測定図に示す。図1において、3はガス測定装置、1は本発明のガスセンサーユニット、4はセンサー体、5はガスセンサー、6は信号線、6aはユニット吊架用ケーブル、18はデータ収集部、15は排水管、17は漏水20を排出するマイクロポンプ、20はセンサーユニット内部に溜まった漏水である。
図1では、5基のセンサーユニット1を、垂直に所定間隔で設けたセンサー体4を測定地点の穴内に装入して地面内の各位置におけるCO濃度をガスセンサー5により計測し、信号線6を通してデータ収集部18に送り、記録している。
【0040】
図2は、センサーユニットの実施形態の一例を示す(a)外観図、および(b)断面図である。図2において、1はセンサーユニット、5は赤外線COガスセンサー、6は信号線、6aはセンサー吊架用ケーブル、10はガス透過膜、11はユニット筐体、11aはユニット筐体の通気孔、12は透過膜保護用の膜保護体、13はユニット蓋、14は集水貯留部、15は排水管、20は漏水のための貯留水である。
【0041】
ガスセンサー5は、通気孔11aなどを介して通気性を有するユニット筐体11の内部に置かれている。図2では、上部より信号線6を備えたユニット吊架用ケーブル6aによりユニット筐体11内に吊り下げられて設置されている。
このガスセンサー5は、被測定物に合わせたセンサーを用いる。
【0042】
ユニット筐体11の外周には、図2(b)の断面図で示されるようにユニット筐体11側から順番にガス透過膜10、透過膜保護用の膜保護体12が設けられ、ガスセンサー5を被覆する形となっている。さらに、ユニット筐体11内には、ガスセンサー5を覆う形で内部保護体16を設けても良い。
【0043】
また、ユニット筐体11の底部には漏水20の貯留部と、ユニット筐体11の底部に取り外し可能に固定される集水貯留部14へ、溜まった漏水を導出する排水管15が設けられている。さらに、図示していないが、外部への貯留水の排出を行うマイクロポンプを集水貯留部14の集水部に設けてあっても良い(図1に記載の符号17のマイクロポンプ)。
【0044】
図3は、センサーユニットの他の実施形態の例を示す外観図(a)、および断面図(b)である。
この実施形態では、図2の実施形態のようなガスセンサー5を保護するユニット筐体(図2の符号11)を持たずに、ガスセンサー5をガス透過膜10で覆い、その周囲に透過膜保護用の膜保護体12を装備した形態のセンサーユニット2である。
【実施例1】
【0045】
表1の実施例1に示す材質のガス透過膜を用いて、図2の二酸化炭素測定用のセンサーユニット1を作製した。このセンサーユニット1に対して恒温槽を用いた耐湿試験を行い、耐湿試験中のCO濃度測定と試験終了後、センサーユニット1内のガスセンサー5の濡れ具合の状態を観察した。
耐湿試験は、温度20℃、湿度95%の環境雰囲気中に10日間(240時間)放置の条件で行った。
耐湿試験中、終了までCO濃度を測定していた場合を「○」、途中で測定値が異常を示した場合を「×」とした。また、センサーの濡れ具合は、乾いている場合には「○」とし、明らかに濡れている場合を「×」として判定した。
【0046】
(比較例1)
ガス透過膜を表1の比較例1に示すものとした以外は、実施例1と同様に耐湿試験を行った。その結果を表2に示す。
【0047】
(比較例2)
ガス透過膜を表1の比較例2に示すものとした以外は、実施例1と同様に耐湿試験を行った。その結果を表2に示す。
【0048】
(比較例3)
ガス透過膜を表1の比較例3に示すものとした以外は、実施例1と同様に耐湿試験を行った。その結果を表2に示す。
【0049】
【表2】

【0050】
表2から明らかなように、親水性のガス透過膜を用いた実施例1では、試験期間中確実にCO測定が行われていた。さらに、終了後のガスセンサーには水滴による濡れは観察されなかった。
一方、比較例1〜3は、疎水性のガス透過膜を用いた結果、耐湿試験途中でCO測定が異常を示し、ガスセンサーは水滴で濡れた状態であった。
【実施例2】
【0051】
図4は、大気中、地表面および地中の二酸化炭素(CO)濃度を、所定高度、所定深さごとにリアルタイムに測定する試験装置の概要を示すシステム図である。土壌中のCO濃度の測定に本発明のセンサーユニットを使用している。
大気中の二酸化炭素(CO)濃度は、5mから40mの高さに5m間隔でバルーンに吊り下げられた赤外線COセンサー(符号A5〜A40にて表記)で測定し、地表面から0.3m(A30で表記)、0.6m(A60)、0.9m(A90)の高さの二酸化炭素(CO)濃度は、百葉箱の架台の各位置に設けたCOセンサーによって測定した。
【0052】
地中の二酸化炭素(CO)濃度は、本発明のセンサーユニットを用いて、深さ0.2mから0.2m間隔で1mの深さまでの位置(G20〜G100で表記)で測定した。合わせて土壌水分計を用いて同じ深さの土壌水分量(M20〜M100で表記)を測定した。
この試験装置を用いて10日間(240時間)、二酸化炭素(CO)濃度を測定した。この測定結果を図5、図6に示す。
【0053】
図5は、地中の二酸化炭素(CO)濃度の連続した経時変化を捉えた結果を示すものである。
地中の深さごとの二酸化炭素濃度が系列的に測定できていることがわかる。また、地中の二酸化炭素濃度は測定開始からある程度の時間が経過した後でなくては正確な値を測定できないことも示されており、従来の吸引法あるいはチェンバー法による測定では得られ難い結果を本発明では得られることが示されている。
この測定期間中において、ガスセンサーは正常に機能していることがわかる。なお、測定期間中の地中の体積含水率は10〜30%の範囲にあった。
【0054】
図6は、図4の測定システムを用いた10日間の測定における10日目(測定開始から240時間後)の地中1m(G100)から大気高度40m(A40)までの二酸化炭素濃度(CO濃度)をプロットしたものである。
【0055】
図6からは、大気中の二酸化炭素濃度の変動がほとんどないのに対し、地中の二酸化炭素濃度は地中1mまでに大きく変動している様子を明らかにしている。また、その濃度も大気中の二酸化炭素濃度に対して10〜100倍の高い濃度であることを明らかにしている。
以上のように本発明によれば、土壌中などのような水分が多く存在する環境における二酸化炭素などの各種気体の濃度を長時間にわたり、リアルタイムで測定することを可能とするものである。
【符号の説明】
【0056】
1、2 センサーユニット
3 ガス濃度測定装置
4 センサー体
5 ガスセンサー
6 信号線
6a ユニット吊架用ケーブル
10 ガス透過膜
11 ユニット筐体
11a ユニット筐体の通気孔
12 膜保護体
13 ユニット蓋
14 集水貯留部
15 排水管
16 内部保護体
17 マイクロポンプ
18 データ収集部
20 漏水(貯留水)

30 吸引法
40 チャンバー法
31、41 ガスセンサー
32、42 ガス分析装置
33、43 チャンバー
34、44 信号線
35 流量計
36、46 ガス排出管
37 ガス採取管
38 保護管
47 大気吸入口
P 吸引ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気式センサーと、前記電気式センサーからの信号を外部に伝達する信号線と、前記電気式センサーを覆う親水性ガス透過膜とから構成されることを特徴とするセンサーユニット。
【請求項2】
電気式センサーと、壁面が通気性を有する前記電気式センサーを収納するユニット筐体と、前記電気式センサーからの信号を外部に伝達する信号線と、前記ユニット筐体の外壁面に取り付けられる親水性ガス透過膜とから構成されるセンサーユニット。
【請求項3】
前記親水性ガス透過膜の外側に膜保護体を設けたことを特徴とする請求項2に記載のセンサーユニット。
【請求項4】
前記ユニット筐体内に前記電気式センサーを覆うように通気性保護体を設けたことを特徴とする請求項2または3に記載のセンサーユニット。
【請求項5】
前記ユニット筐体の底部に排水管を備え、前記排水管により排出される前記ユニット筐体内の貯留水を集める集水貯留部を設けたことを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載のセンサーユニット。
【請求項6】
前記電気式センサーが、被測定物の気体と直接接触して前記被測定物の濃度を測定するセンサーであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のセンサーユニット。
【請求項7】
請求項1から6に記載のセンサーユニットを複数個、直列に配して地中に装入されるセンサー体と、
前記センサー体のセンサーユニットからの信号を外部に伝達する信号線と、
前記信号線の他端側に接続されるデータ収集部、
を備えることを特徴とするガス濃度測定センサー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−32294(P2012−32294A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172634(P2010−172634)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(802000031)財団法人北九州産業学術推進機構 (187)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【出願人】(392002561)株式会社ウイジン (1)
【Fターム(参考)】