ガスセンサ
【課題】樹脂からなるコネクタ部の形状の自由度を高めるとともに形状の精度を高め、成形の容易化を図ることができるガスセンサを提供する。
【解決手段】特定ガス成分の濃度を測定するセンサ素子12と、センサ素子12を内部に収納するハウジング13と、ハウジング13に取り付けられる樹脂から形成された基体部21と、を少なくとも備えるガスセンサ1であって、基体部21は、少なくとも、基体部21におけるハウジング13側の部分であり、ハウジング13と一体に成形される第1基体部22と、第1基体部22とは別に成形され、基体部21におけるハウジング13と反対側の部分であり、センサ素子12と電気的に接続される複数の端子26が、センサ素子12の挿入方向に対して交差する方向に延びて内部に配置されたコネクタ部23cを有する第2基体部23と、から構成されていることを特徴とする。
【解決手段】特定ガス成分の濃度を測定するセンサ素子12と、センサ素子12を内部に収納するハウジング13と、ハウジング13に取り付けられる樹脂から形成された基体部21と、を少なくとも備えるガスセンサ1であって、基体部21は、少なくとも、基体部21におけるハウジング13側の部分であり、ハウジング13と一体に成形される第1基体部22と、第1基体部22とは別に成形され、基体部21におけるハウジング13と反対側の部分であり、センサ素子12と電気的に接続される複数の端子26が、センサ素子12の挿入方向に対して交差する方向に延びて内部に配置されたコネクタ部23cを有する第2基体部23と、から構成されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検出ガスの濃度を測定するセンサ素子を備えるガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関においては、消費燃料の低減を図るためや、排気ガスの浄化を図るために、燃焼室に送り込まれる空気(酸素)と燃料との割合である空燃比を調節する制御が一般的になっている。この空燃比を制御するために、吸気ガスに含まれる酸素の割合や、排気ガスに含まれる酸素の割合を測定するガスセンサの測定信号が用いられている。
【0003】
上述のガスセンサは、酸素の濃度を測定するセンサ素子と、センサ素子の周囲を覆う保護カバーと、センサ素子を保持する主体金具と、センサ素子の測定信号を外部に出力する複数の端子を備える基体部と、が主に設けられている。従来、基体部は金属製の薄板を複数枚組み付けて作成されていたが、組み付けが面倒であり、手間がかかるという問題があった。
【0004】
この問題を解決するために、樹脂からなる基体部を主体金具などと一体にインサート成形する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このように基体部を樹脂で主体金具などと一体に形成することにより、複数の金属製の薄板を複数枚組み付けるという手間を簡略化することができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−132779号公報
【特許文献2】特開2011−145270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたガスセンサは、ガスセンサの長手方向と、基体部における端子の長手方向(言い換えると、外部の配線を抜き差しする方向)とが同一方向に並んで配置された構成を有している。そのため、ガスセンサの基体部に、外部から配線を接続する場合、内燃機関の周囲の配置空間の制約が厳しいと、配線を基体部に接続できないという問題があった。
【0007】
この問題を解決するために、ガスセンサの長手方向と、基体部における端子の長手方向とを、交叉して配置する構成のガスセンサも提案されている。
しかしながら、このような構成を有する基体部は、特許文献1に記載された基体部と比較して複雑な構成を有するため、基体部をインサート成形する際に用いられる金型の形状が複雑化しやすいという問題があった。また、保護カバーに設けられた流通孔の位置と、端子の長手方向とが取りうる相対的な位置範囲が、ガスセンサの形状による制限を受けやすいという問題があった。その他にも、樹脂からなる基体部をインサート成形する場合、成形後に発生する樹脂の収縮などによる基体部の変形を防止するために、基体部が取りうる形状に制限があるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、樹脂からなるコネクタ部の形状の自由度を高めるとともに形状の精度を高め、成形の容易化を図ることができるガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明のガスセンサは、内燃機関に設けられた流路内を流れるガスに含まれる特定ガス成分の濃度を測定するセンサ素子と、該センサ素子を内部に収納すると共に前記流路内に差し込まれるハウジングと、該ハウジングに取り付けられると共に前記流路の外側に配置される基体部と、を備えるガスセンサであって、前記基体部は、前記基体部における前記ハウジング側の部分である第1基体部と、前記第1基体部とは別に成形され、前記基体部における前記ハウジングと反対側の部分であり、前記センサ素子と電気的に接続される複数の端子が、前記センサ素子の挿入方向に対して交差する方向に延びて内部に配置されたコネクタ部を有する第2基体部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明のガスセンサによれば、基体部は、ハウジング側の部分である第1基体部と、コネクタ部を備える形状の第2基体部と、を備えて構成されている。このように構成することで、基体部の形状の自由度が高くなる。
【0011】
具体的には、第1基体部を成形する際に、第1基体部の形状に制約を与えるのは、主にハウジングの形状となる。基体部を分割することなく一体に成形する場合には、主にハウジングの形状と、複数の端子の配置位置および配置方向とが制約となるのと比較して、第1基体部を成形する際の制約が少なくなり形状の自由度が高くなる。また、第2基体部を成形する際にも同様に、第2基体部の形状に制約を与えるのは、主に複数の端子の配置位置および配置方向となり、基体部を分割することなく一体に成形する場合と比較して、制約が少なくなり形状の自由度が高くなる。
【0012】
さらに、基体部を分割することなく一体に成形する場合と比較して、第1基体部や第2基体部を簡素な形状、特に、軸対称や線対称な形状にし易くなる。そのため、成形後に発生する材料の収縮により、第1基体部や第2基体部に発生する変形を抑制しやすくなる。
【0013】
第1基体部や第2基体部を、比較的、簡素な形状にし易くなるため、第1基体部や第2基体部を成形する際に用いられる金型の形状も、同様に簡素な形状とすることができる。そのため、金型の製造コスト低減を図ると共に金型の長寿命化を図ることができ、ひいてはガスセンサの製造コストの低減を図ることができる。
【0014】
上記発明において、第2基体部は樹脂で成形されてなる構成を採ることができる。
このような構成を採ることで、第2基体部を樹脂成形する際に用いられる金型を簡素な形状とすることができ、金型の製造コスト低減を図ると共に金型の長寿命化を図ることができ、ひいてはガスセンサの製造コストの低減を図ることができる。
【0015】
上記発明において前記第2基体部には、前記センサ素子および前記複数の端子を電気的に接続する中継部を収納する貫通孔が設けられ、前記複数の端子は、前記中継部側の端部において連結部により一体に繋がれた状態で、前記中継部側の端部を前記貫通孔の内部に突出させた状態で前記第2基体部と一体に成形され、その後、前記貫通孔の側面から内部に向かって突出する前記複数の端子における前記連結部を切り落とすことにより、前記複数の端子は前記第2基体部の内部に配置されることが望ましい。
【0016】
このように、複数の端子における中継部側の端部を、貫通孔の側面から内部に向かって突出させることにより、複数の端子の間の配置精度の悪化を抑制しやすくなる。具体的には、連結部により一体となった複数の端子を金型の内部に配置するだけでよいため、複数の端子を一つずつ金型の内部に配置する場合と比較して、端子の配置精度の悪化を抑制しやすく、かつ端子の配置に要する手間を省略することができる。
【0017】
また、複数の端子における中継部側の端部および連結部は、第2基体部における貫通孔の内部に向かって突出しているため、連結部を端子から切り離しやすい。つまり、連結部を端子から切り離す一対の切断具を、貫通孔の一方および他方の開口から侵入させることができるため、一方が塞がれた穴の内部に向かって連結部が突出している場合と比較して、一対の切断具で連結部および端子の間を挟み、切断することが容易である。
【0018】
なお、複数の端子における中継部とは反対側の端部は、コネクタ部の内部に突出して配置され、外部の配線に電気的に接続可能とされている。
上記発明において前記第1基体部には、前記ハウジング側の部分であって、前記ハウジングが延びる方向に延びる下側部と、前記第2基体部側の部分であって、前記複数の端子が延びる方向に沿って延びる板状の上側部と、が設けられ、前記上側部における前記ハウジング側の面には凹部が形成されていることが望ましい。
【0019】
このように、第1基体部の上側部に凹部を形成することにより、基体部の形状の精度を悪化させることなく、第1基体部を形成する際に用いられる材料の量を削減することができる。同時にガスセンサの軽量化を図ることができる。つまり、第1基体部には、軸対称性または面対称性を大きく崩すコネクタ部が設けられていないため、成形後の材料の収縮による変形が発生しにくい。特に、基体部のコネクタ部と配置が重なる位置に凹部を設けても、第1基体部としては変形が発生しにくいため、容易に凹部を設けることができる。
【0020】
上記発明においては、前記ハウジングには、前記ハウジングの外周から径方向外側に向かって延びる板状のフランジ部が、さらに設けられ、前記第1基体部は、前記フランジ部を割り面とする第1金型および第2金型により、前記ハウジングおよび前記フランジ部と一体に成形されていることが望ましい。
【0021】
このようにフランジ部が設けられている場合には、フランジ部を割り面とする第1金型および第2金型により、第1基体部はハウジングおよびフランジ部と一体に成形される。このように金型の割り面の配置位置が制限される場合に、基体部を分割することなく一体に成形する場合と比較すると、本発明のガスセンサでは、フランジ部と一体に成形される第1基体部にコネクタ部が設けられていないため、金型の形状を簡素化することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のガスセンサによれば、基体部を、ハウジング側の部分である第1基体部と、コネクタ部を備える形状の第2基体部と、を備えて構成することで、基体部の形状の自由度を高くすることができる。また、基体部を分割することなく一体に成形する場合と比較して、第1基体部や第2基体部を簡素な形状にできるため、成形後に発生する材料の収縮により、第1基体部や第2基体部に発生する変形を抑制することができる。さらに、第1基体部や第2基体部を成形する際に用いられる金型の形状も、同様に簡素な形状とすることができるため、金型の製造コスト低減を図ると共に金型の長寿命化を図ることができ、ひいてはガスセンサの成形の容易化を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る酸素センサの概略構成を説明する断面視図である。
【図2】図1の下部基体部の構成を説明する部分断面図である。
【図3】図1の上部基体部の構成を説明する部分断面図である。
【図4】図1の酸素センサの組立工程を説明する斜視図である。
【図5】図2の下部基体部をインサート成形する金型を説明する断面視図である。
【図6】図3の上部基体部のインサート成形する金型を説明する断面視図である。
【図7】図6の連結部により一体とされた複数の端子の構成を説明する模式図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る酸素センサの概略構成を説明する断面視図である。
【図9】図8の下部基体部の構成を説明する部分断面図である。
【図10】図8の酸素センサの組立工程を説明する斜視図である。
【図11】図8の下部基体部のインサート成形を説明する断面視図である。
【図12】従来の酸素センサに係る基体部のインサート成形を説明する断面視図である。
【図13】本発明の第3の実施形態における酸素センサの概略構成を表した断面視図である。
【図14】図13の酸素センサの組み立て工程のうち工程Aから工程Dを表した説明図である。
【図15】図13の酸素センサの組み立て工程のうち工程Eから工程Gを表した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態に係る酸素センサ1ついて図1から図7を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る酸素センサ1の概略構成を説明する断面視図である。
【0025】
本実施形態の酸素センサ(ガスセンサ)1は、自動車等の車両の動力源となるエンジン(内燃機関)に適用されるものであり、より具体的には、エンジンに吸入されるガスに含まれる特定ガス成分としての酸素の濃度を測定するものである。酸素センサ1には、図1に示すように、センサ素子12を含む素子アセンブリ11と、基体部21と、から主に構成されている。
【0026】
素子アセンブリ11は、その大半が吸入配管(流路)に差し込まれるものであり、吸入ガスの酸素濃度を測定するセンサ素子12が内部に収納されたものである。素子アセンブリ11には、図1に示すように、センサ素子12と、センサ素子12の内部に収納すると共にセンサ素子12を保持する主体金具(ハウジング)13、外部プロテクタ(ハウジング)14、セラミックリング15a、第1滑石リング15b、第2滑石リング15cおよびスリーブ15dと、から主に構成されている。
【0027】
センサ素子12は、吸入配管を流れる吸入ガスにおける酸素濃度を測定する測定部である。センサ素子12は、主に、ポンプセルと、中空の測定室を有する絶縁層と、起電力セルと、補強板と、後述するヒータ31とを順に積層して構成されるものである。
【0028】
ポンプセルは、酸素イオン伝導性固体電解質体である部分安定化ジルコニア(ZrO2 )により形成され、その表面と裏面のそれぞれに主として白金で形成された多孔質電極が設けられている。起電力セルは、ポンプセルと同じく酸素イオン伝導性固体電解質体である部分安定化ジルコニア(ZrO2 )により形成されたものである。起電力セルの表面と裏面のそれぞれには、主として白金で形成された多孔質電極が設けられている。
【0029】
ポンプセルに設けられた一対の多孔質電極のうちの一つと、起電力セルに設けられた一対の多孔質電極のうちの一つは、測定室に面するように配置され、互いに同電位に導通されるとともに、センサ素子12の後端側表面に形成される1つの電極取出部に接続されている。ポンプセルにおける測定室と反対側に配置された多孔質電極、および、起電力セルにおける測定室と反対側に配置された多孔質電極は、センサ素子12の後端側表面に形成された2つの電極取出部にそれぞれ接続されている。
【0030】
補強板は、起電力セルの測定室と反対側に配置された多孔質電極を閉塞しつつ、多孔質電極の内部に基準酸素室を形成するように、起電力セルに積層されたものである。ポンプセルと起電力セルとの間には、上述したように、測定室が形成された絶縁層が介在している。この測定室は、絶縁層に別途配置された多孔質拡散層を介して外部のガス雰囲気、つまり吸入配管の内部を流れる吸入ガスと連通されている。
【0031】
センサ素子12における先端(図1の下端)には、酸素濃度に応じた電流が流れる検出部12aが構成され、後端(図1の上端)には、上記の3つの電極端子部や、ヒータ31に電力を供給する2つの端子部が設けられている。センサ素子12は、起電力セルに発生する起電力(電極間電圧)が一定になるように、酸素ポンプセルに流れる電流の流れ方向及び大きさが制御されている。なお、酸素ポンプセルのうち、多孔質電極が配置される部位が上記の検出部12aに相当する。
【0032】
ヒータ31は、補強板に積層され、ポンプセル、起電力セル、補強板と共に一体化されているものである。ヒータ31は、導体からなるヒータ抵抗を一対のアルミナシートで挟み込んで形成されたものであり、ヒータ31の一端が直流電源(例えば、電圧が12Vのバッテリ)に接続され、他端がヒータ制御回路(図示せず)に接続されている。ヒータ制御回路を駆動させることによりヒータ31が発熱すると、ポンプセル及び起電力セルの温度が上昇して活性化し、センサ素子12によるガス検出(酸素濃度検出)が可能となる。
【0033】
主体金具13は、外部プロテクタ14と比較して肉厚の筒状に形成され、内部にセラミックリング15a、第1滑石リング15b、第2滑石リング15c、スリーブ15dおよびセンサ素子12などが収納される金属、例えばステンレス鋼から形成されたものである。
【0034】
主体金具13における先端側(図1の下側)は、中央と比較して外径を小さく形成され、この部分に外部プロテクタ14が取り付けられている。その一方で、主体金具13における後端側(図1の上側)も、中央と比較して外形を小さく形成され、この部分の外周面に環状に延びる溝部13aが設けられている(図2参照)。溝部13aは、後述する下部基体部22を主体金具13と一体にインサート成形する際に、下部基体部22を構成する樹脂が内部に流入するものである。
【0035】
外部プロテクタ14は、一端が閉じられた円筒状に形成された金属部材であり、内部にセンサ素子12の検出部12aを収納し、検出部12aを保護するものである。外部プロテクタ14は、円筒の開口部に主体金具13の先端側の端部が差し込まれた状態で、主体金具13に溶接固定されている。
【0036】
外部プロテクタ14の円周面には、ガス導入孔14aが設けられている。ガス導入孔14aは、吸入配管を流れる吸入ガスを外部プロテクタ14の内部に導き、センサ素子12の検出部12aの周囲に吸入ガスを導くものである。本実施形態においてガス導入孔14aは、外部プロテクタ14の円筒形状のおける中心軸方向(図1の上下方向)に延びる長方形状に形成された貫通孔である。ガス導入孔14aは、酸素センサ1を配置する際に、吸入配管内部のガス流れの下流に向かって開口するように配置されている。
【0037】
セラミックリング15aは、アルミナ(Al2O3)を用いて円筒状に形成された部材であり、内部にセンサ素子12が挿通されたものである。第1滑石リング15bおよび第2滑石リング15cは、滑石粉末を圧縮して円筒状に固めた部材であり、内部にセンサ素子12が挿通されたものである。
【0038】
セラミックリング15a、第1滑石リング15b及び第2滑石リング15cは、センサ素子12の先端から後端に向かって、セラミックリング15a、第1滑石リング15b及び第2滑石リング15cが順に並んで配置されている。さらに、セラミックリング15aおよび第1滑石リング15bの全体と、第2滑石リング15cの下端は、一端が閉じられた円筒状に形成された金属カップ15eの内部に収納されている。金属カップ15eは、主体金具13の内周面と、セラミックリング15aおよび第1滑石リング15bの外周面との間に配置されている。なお、金属カップ15eにおける閉じられた端部には、センサ素子12が挿通される貫通孔が形成されている。
【0039】
スリーブ15dは、第2滑石リング15cの後端側に配置された円筒状に形成された部材であり、主体金具13と共に、セラミックリング15a、第1滑石リング15bおよび第2滑石リング15cをセンサ素子12の先端に向かって押し付けるものである。スリーブ15dの後端(図2の上端)と主体金具13との間には、円環状のパッキン15fが配置されている。パッキン15fは、主体金具13の後端を径方向内側に向けて変形させて加締めた際に、スリーブ15dに偏荷重がかかるのを防止するものである。
【0040】
次に、本実施形態の酸素センサ1の特徴部である基体部21について説明する。
基体部21は、吸入配管の外側に配置されるものであり、金属などの他の材料と比較して成形性が良好な樹脂により形成されたものである。基体部21は、図1に示すように、下部基体部(第1基体部)22と、上部基体部(第2基体部)23と、蓋部24と、から主に構成されている。基体部21の内部には、後述する複数の端子26と、センサ素子12との導通を図るセパレータ(中継部)25が、配置されている。本実施の形態では、下部基体部22および上部基体部23はポリフェニレンサルファイド樹脂から成形されている例に適用して説明する。
【0041】
下部基体部22および上部基体部23は、個別にインサート成形される部品であり、両者は、組み合わされることにより基体部21を構成するものである。
下部基体部22は、基体部21における主体金具13やセンサ素子12に近い側の部分(図1の下側の部分)を構成するものであり、主体金具13と一体にインサート成形される部品である。図2の下部基体部22の構成を説明する部分断面図に示すように、下部基体部22における下側部22Lは、主体金具13の中央と同程度の外形を有する円柱状に形成され、上側部22Uは、下側部22Lよりも径方向外側に突出する板状に形成されている。
【0042】
下部基体部22の上側部22Uには、組合せ溝22aと、セパレータ穴22bと、肉盗み部(凹部)22cと、が主に設けられている。
組合せ溝22aは、上側部22Uの上面、言い換えると上部基体部23と接触する面に形成された凹部であり、下部基体部22と上部基体部23とが組み合わせられる際に、上部基体部23に設けられた組合せ突起23bと嵌め合わされるものである。さらに、組合せ溝22aは、セパレータ穴22bの周囲を切れ目なく囲んで形成された環状の溝であり、組合せ突起23bと嵌め合わせて溶接することにより、セパレータ25が配置される空間への水などの侵入を防止するものでもある。
【0043】
セパレータ穴22bは、上側部22Uの上面から主体金具13に向かって凹む穴であり、上部基体部23の貫通孔23aおよび蓋部24と共にセパレータ25が配置される空間を形成するものである。セパレータ穴22bの底部には、主体金具13の上端や、スリーブ15dの上端が露出し、さらに、センサ素子12の後端がセパレータ穴22bの底部から、セパレータ穴22bの内部に向かって突出している。
【0044】
肉盗み部22cは、上側部22Uの下面に設けられた凹部であり、下部基体部22に用いられる樹脂の量を削減するため、酸素センサ1の軽量化を図るために設けられたものである。本実施形態では、肉盗み部22cは、下側部22Lを環状に囲う環状の溝として形成された例に適用して説明する。なお、肉盗み部22cは、環状の溝として形成されるものに限定されることなく、分割された円弧状の溝であったり、その他種々の形状に形成された凹みであったりしてもよく、特に限定するものではない。
【0045】
下部基体部22における下側部22Lと上側部22Uとの境目である段差には、図1に示すように、吸入配管および酸素センサ1の間の気密を保持するOリング16が設けられている。
【0046】
Oリング16は、ゴム等の弾性を有する樹脂を用いてリング状に形成された部材であり、断面が円状に形成されたものである。Oリング16の内周端は下部基体部22の下側部22Lと接触し、上端は下部基体部22の上側部22Uと接触している。また、Oリング16の外周端は、吸入配管に設けられた酸素センサ1が挿入される貫通孔の内周面と接触するものである。
【0047】
上部基体部23は、基体部21における主体金具13やセンサ素子12から遠い部分(図1の上側の部分)を構成するものであり、酸素センサ1の挿入方向(図1の上下方向)に対して交差する方向、より好ましくは直交する方向(図1の左右方向)に延びて配置される部品である。上部基体部23には、図3の上部基体部23の構成を説明する部分断面図に示すように、貫通孔23aと、組合せ突起23bと、コネクタ部23cと、が主に設けられている。
【0048】
貫通孔23aは、上部基体部23における下部基体部22と対向する部分に形成された、酸素センサ1の挿入方向、言い換えると、センサ素子12が延びる方向に貫通する孔である。貫通孔23aの側面のうち、コネクタ部23cと隣接する部分には、側面から貫通孔23aの内部に向かって突出する棚部23dが設けられている。棚部23dの上面には、後述する複数の端子26が配置されている。
【0049】
組合せ突起23bは、上部基体部23における下部基体部22と対向する面に形成された突出形状であり、貫通孔23aの周囲を環状に囲む畝状の部材である。上部基体部23における下部基体部22と対向する部分、言い換えると、貫通孔23aおよび組合せ突起23bが設けられた部分は、コネクタ部23cが設けられた部分と比較すると、酸素センサ1の挿入方向の寸法、言い換えると上部基体部23の厚さが薄くなっている。
【0050】
コネクタ部23cは、センサ素子12の測定信号を酸素センサ1の外部に配置された制御部(図示せず)に出力する接続部であると共に、ヒータ31に供給される電力が入力される接続部でもある。コネクタ部23cには、セパレータ25を介してセンサ素子12やヒータ31と電気的に接続される複数の端子26と、複数の端子26の周囲を覆って延びる筒状部23eと、が主に設けられている。
【0051】
複数の端子26は、導電性の高い金属から形成された棒状、例えば平板の棒状に形成された部材であり、酸素センサ1の挿入方向に対して交差する方向、より好ましくは直交する方向(図1の左右方向)に延びて配置され、かつ、一方の端部が貫通孔23aの内部に突出し、他方の端部が筒状部23eの内部に突出して配置されたものである。さらに、複数の端子26は、互いに平行に延びると共に、所定の間隔をあけて一列に並んで配置されている。
【0052】
本実施形態では、センサ素子12の3つの電極端子部、および、ヒータ31の2つの端子部のそれぞれに端子26が配置され、つまり5つの端子26が配置され、これらの端子26がクランク状に折り曲げられた例に適用して説明する。
【0053】
筒状部23eは、内部に配置された複数の端子26と平行に延びる筒状の部分であり、制御部とつながる外部コネクタが内部に差し込まれる部分である。さらに、筒状部23eは、内部に差し込まれた外部コネクタを保持して、意図しないタイミングで外れないようにするものでもある。
【0054】
蓋部24は板状に形成された部品であり、上部基体部23の上面であって、貫通孔23aが形成された領域に配置されるものである。蓋部24は、センサ素子12の後端や、セパレータ25が配置される空間を閉じた空間にするものであり、この空間に水などの侵入を防止するものである。
【0055】
なお、センサ素子12の後端やセパレータ25が配置される空間は、上述のように、蓋部24によって閉じて水などの侵入を防止してもよいし、蓋部24を用いる代わりに、空間を樹脂で埋める樹脂ポッティング等の方法で水などの侵入を防止してもよく、特にその方法を限定するものではない。
【0056】
セパレータ(中継部)25は、図1に示すように、絶縁性を有するセラミックスから形成された円筒状の部品である。セパレータ25の内部には、センサ素子12との導通を図るための5本の導通部材25aが配置され、センサ素子12の後端部が挿入される。センサ素子12の後端部がセパレータ25の内部に差し込まれると、センサ素子12の5つの電極端子部と5本の導通部材25aとが、それぞれ導電可能に接触する。また、5本の導通部材25aは、コネクタ部23cの5つの端子26と電気的に接続可能とされている。
【0057】
ここで、図4の酸素センサ1の組立工程を説明する斜視図を参照しながら、酸素センサ1の組立工程の概略を説明する。
まず、図4(a)に示すように、センサ素子12、主体金具13、外部プロテクタ14、セラミックリング15a、第1滑石リング15b、第2滑石リング15c、及びスリーブ15dから構成される素子アセンブリ11が準備される(図1参照)。
【0058】
そして素子アセンブリ11に対して、図4(b)に示すように、下部基体部22のインサート成形が行われる。インサート成形は、図5の下部基体部22のインサート成形を説明する断面視図に示すように、第1下部用金型41および第2下部用金型42を用いて行われる。第1下部用金型41には、素子アセンブリ11、下部基体部22の下側部22Lおよび上側部22Uの下面、側面に対応する凹状の形状が形成されている。第2下部用金型42には、下部基体部22の上側部22Uの上面に対応する凹凸の形状が形成されている。より具体的には、組合せ溝22aや、セパレータ穴22bなどに対応する凹凸が形成されている。なお、図5における第1下部用金型41および第2下部用金型42の右横に記載された矢印は、第1下部用金型41および第2下部用金型42の割り面を示すものである。
【0059】
さらに、上述の下部基体部22をインサート成形する工程と並行して、または、別に上部基体部23をインサート成形が行われる。図6の上部基体部23のインサート成形を説明する断面視図に示すように、第1上部用金型51、第2上部用金型52および第3上部用金型53を用いて行われる。第1上部用金型51には、貫通孔23aの下側半分や、組合せ突起23bや、コネクタ部23cの下面に対応する凹凸の形状が形成されている。第2上部用金型52には、貫通孔23aの上側半分や、コネクタ部23cの上面に対応する凹凸の形状が形成されている。第3上部用金型53には、コネクタ部23cの内部形状に対応する凹凸の形状が形成されている。
【0060】
なお、図6における第1上部用金型51および第2上部用金型52の右横に記載された矢印は、第1上部用金型51および第2上部用金型52の割り面を示すものであり、第1上部用金型51および第3上部用金型53の下側に記載された矢印は、第1上部用金型51および第3上部用金型53の割り面、および、第2上部用金型52および第3上部用金型53の割り面を示すものである。
【0061】
また、上部基体部23をインサート成形する際には、図6および図7に示すように、第1上部用金型51、第2上部用金型52、および、第3上部用金型53の内部に、連結部26aにより一体とされた複数の端子26が、所定の位置に配置される。
【0062】
連結部26aは、図7に示すように、複数の端子26における貫通孔23a側の端部に、端子26に対して直交する方向に延びた形状を有する部材である。複数の端子26は、連結部26aとつながることにより、一体となっている。この連結部26aは、上部基体部23のインサート成形が終了した後に、貫通孔23aの一方および他方の開口から進入する切断具によって、切断面において切断されて端子26から切り離される。
【0063】
上述のように下部基体部22および上部基体部23のインサート成形が完了すると、図4(c)および図4(d)に示すように、下部基体部22の上に、上部基体部23が重ね合わされる。この時、組合せ溝22aと組合せ突起23bとが嵌め合わされ(図1参照)、その後、下部基体部22と上部基体部23とは、溶着されて一体化されて基体部21となる。溶着方法としては、レーザを利用した溶着や、超音波を利用した溶着や、加熱による溶着など、公知の方法を用いることができ、特に限定するものではない。
【0064】
下部基体部22と上部基体部23とが一体化されると、図4(e)および図4(f)に示すように、セパレータ25が貫通孔23aおよびセパレータ穴22bにより形成された空間に配置される。このとき、セパレータ25の内部にセンサ素子12の後端部が挿入され、センサ素子12の5つの電極端子部と5本の導通部材25aとが、それぞれ電気的に接続される。同時に、5本の導通部材25aが、それぞれコネクタ部23cの5つの端子26と電気的に接続される(図1参照)。
【0065】
そして、図4(f)および図4(g)に示すように、貫通孔23aの上側の開口に蓋部24が配置され、セパレータ25が配置される空間が密閉される。以上により、酸素センサ1の組立が完了する。
【0066】
上記の構成によれば、基体部21は、主体金具13を含む素子アセンブリ11と一体に樹脂をインサート成形した下部基体部22と、コネクタ部23cを備える形状に樹脂をインサート成形した上部基体部23と、から少なくとも構成されている。このようにすることで、樹脂からなる基体部21の形状の自由度を高くすることができる。
【0067】
具体的には、下部基体部22を樹脂でインサート成形する際に、下部基体部22の形状に制約を与えるのは、主に素子アセンブリ11の形状となる。基体部21を分割することなく一体に成形する場合には、主に素子アセンブリ11の形状と、複数の端子26の配置位置および配置方向とが制約となるのと比較して、下部基体部22をインサート成形する際の制約が少なくなり形状の自由度が高くなる。また、上部基体部23を樹脂で成形する際にも同様に、上部基体部23の形状に制約を与えるのは、主に複数の端子26の配置位置および配置方向となり、基体部21を分割することなく一体にインサート成形する場合と比較して、制約が少なくなり形状の自由度が高くなる。
【0068】
さらに、下部基体部22と、上部基体部23とを別々にインサート成形した後に、下部基体部22および上部基体部23を一体にする際に、下部基体部22に対する上部基体部23の周方向の向き(コネクタ部23cの向き)、を所定の向きに設定することができる。つまり、下部基体部22や素子アセンブリ11等の形状に関わらず、コネクタ部23cの向きを自由に設定することができる。
【0069】
さらに、基体部21を分割することなく一体にインサート成形する場合と比較して、下部基体部22や上部基体部23を簡素な形状、特に、軸対称や線対称な形状とすることができる。そのため、インサート成形後に発生する樹脂の収縮による、下部基体部22や上部基体部23に発生する変形を抑制しやすくなる。
【0070】
下部基体部22や上部基体部23を、比較的、簡素な形状とすることができるため、下部基体部22や上部基体部23をインサート成形する際に用いられる金型の形状も、同様に簡素な形状とすることができる。そのため、金型の製造コスト低減を図ると共に金型の長寿命化を図ることができ、ひいては酸素センサ1の製造コストの低減を図ることができる。
【0071】
また、複数の端子26におけるセパレータ25側の端部を、貫通孔23aの側面から内部に向かって突出させることにより、端子26同士の間の配置精度の悪化を抑制しやすくなる。具体的には、連結部26aにより一体となった複数の端子26を第1上部用金型51、第2上部用金型52および第3上部用金型53の内部に配置するだけでよいため、複数の端子26を一つずつ第1上部用金型51、第2上部用金型52および第3上部用金型53の内部に配置する場合と比較して、複数の端子26の配置精度の悪化を抑制しやすく、かつ複数の端子26の配置に要する手間を省略することができる。
【0072】
また、複数の端子26におけるセパレータ25側の端部および連結部26aは、上部基体部23における貫通孔23aの内部に向かって突出しているため、貫通孔23aを端子26から切り離しやすい。つまり、連結部26aを端子26から切り離す一対の切断具を、貫通孔23aの一方および他方の開口から進入させることができるため、一方が塞がれた穴の内部に向かって連結部26aが突出している場合と比較して、一対の切断具で連結部26aおよび端子26の間を挟み、切断することが容易である。
【0073】
下部基体部22の上側部22Uに肉盗み部22cを形成することにより、基体部21の形状の精度を悪化させることなく、下部基体部22を形成する際に用いられる樹脂の量を削減することができる。同時に酸素センサ1の軽量化を図ることができる。つまり、下部基体部22には、軸対称性または面対称性を大きく崩すコネクタ部23cが設けられていないため、成形後の樹脂の収縮による変形が発生しにくい。特に、コネクタ部23cと配置が重なる位置に肉盗み部22cを設けても、下部基体部22としては変形が発生しにくいため、容易に肉盗み部22cを設けることができる。
【0074】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について図8から図12を参照して説明する。
本実施形態の酸素センサの基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、フランジ部が設けられている点が異なっている。よって、本実施形態においては、図8および図12を用いてフランジ部によって第1の実施形態と相違する点についてのみを説明し、第1の実施形態と同様に部分の説明を省略する。図8は、本実施形態に係る酸素センサ101の概略構成を説明する断面視図である。
【0075】
本実施形態の酸素センサ101には、図8に示すように、フランジ部117を含む素子アセンブリ11と、下部基体部(第1基体部)122を含む基体部21と、から主に構成されている。
【0076】
フランジ部117は、酸素センサ101を吸入配管に固定する際に用いられる金属性の部品である。フランジ部117には、円筒状に形成されて主体金具13側の端部が主体金具13に固定される筒部117aと、筒部117aにおける基体部21側の端部から、酸素センサ1の挿入方向(図8の上下方向)に対して交差する方向、より好ましくは直交する方向(図8の左右方向)に延びる一対の板状のフランジ片117bと、が主に設けられている。
【0077】
なお、図8においてフランジ部117は、ガス導入孔14aが設けられている方向にフランジ片117bが延びるように配置された状態で記載されているが、フランジ片117bが延びる方向は、図8に記載された方向に限定されるものではなく、自由に設定することができる。例えば、フランジ片117bの延びる方向が90°回転した状態、言い換えると、ガス導入孔14aが設けられている方向に対して、直交する方向にフランジ片117bが延びていても良い。
【0078】
図9の下部基体部122の構成を説明する部分断面図に示すように、下部基体部122における下側部122Lは、主体金具13の外周と、フランジ部117の筒部117aの内周と、の間の空間を埋める円筒状に形成されている。上側部122Uは、フランジ部117のフランジ片117b上であって、下側部122Lよりも径方向外側に突出する板状に形成されている。
【0079】
ここで、図10の酸素センサ101の組立工程を説明する斜視図を参照しながら、酸素センサ101の組立工程の概略を説明する。
まず、図10(a)に示すように、センサ素子12、主体金具13、外部プロテクタ14、セラミックリング15a、第1滑石リング15b、第2滑石リング15c、スリーブ15dおよびフランジ部117から構成される素子アセンブリ11が準備される(図8参照)。なお、フランジ部117を主体金具13に固定する際には、溶接などの公知の固定方法を用いることができる。
【0080】
そして素子アセンブリ11に対して、図10(b)に示すように、下部基体部122のインサート成形が行われる。インサート成形は、図11の下部基体部122のインサート成形を説明する断面視図に示すように、第1下部用金型141および第2下部用金型142を用いて行われる。第1下部用金型141には、素子アセンブリ11に対応する凹状の形状が形成されている。第2下部用金型142には、下部基体部122の上側部22Uの側面や上面に対応する凹凸の形状が形成されている。より具体的には、組合せ溝22aや、セパレータ穴22bなどに対応する凹凸が形成されている。
【0081】
なお、図11における第1下部用金型141および第2下部用金型142の右横に記載された矢印は、第1下部用金型141および第2下部用金型142の割り面を示すものである。つまり、第1下部用金型141および第2下部用金型142の割り面は、フランジ部117のフランジ片117bと一致するように配置されている。
【0082】
以後の上部基体部23のインサート成形や、下部基体部122および上部基体部23の重ね合わせ等の酸素センサ101の組立工程は、第1の実施形態の組立工程と同様であるため、図10(c)から図10(g)までに組立工程内容を示し、その説明を省略する。
【0083】
上記の構成によれば、フランジ部117のフランジ片117bを割り面とする第1下部用金型141および第2下部用金型142により、下部基体部122はフランジ部117を含む素子アセンブリ11と一体にインサート成形される。このように金型の割り面の配置位置が制限される場合に、基体部21を分割することなく一体に成形する場合(図12参照)と比較すると、本実施形態の酸素センサ101では、フランジ部117を含む素子アセンブリ11と一体に成形される下部基体部122にコネクタ部23cが設けられていないため、金型の形状を簡素化することができる。
【0084】
ここで、図12における基体部21を分割することなく一体に成形する場合の金型について説明すると、インサート成形は、第1金型241、第2金型242および第3金型243を用いて行われる。第1金型241には、素子アセンブリ11やコネクタ部23cの下面に対応する凹状の形状が形成されている。第2金型242には、基体部21の上側部の側面や上面やコネクタ部23cの上面に対応する凹凸の形状が形成されている。第3金型243には、コネクタ部23cの内部形状に対応する凹凸の形状が形成されている。
【0085】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について図13から図15を参照して説明する。
本実施形態の酸素センサの基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態と比べて、少なくとも第1基体部が金属製である点で異なっている。よって、本実施形態においては、図13から図15を用いて第1の実施形態と相違する点についてのみを説明し、第1の実施形態と同様に部分の説明を省略する。
【0086】
図13は、本実施形態における酸素センサ301の概略構成を表した断面視図であり、図14および図15は、酸素センサ301の組み立て工程を表した説明図である。
本実施形態の酸素センサ301は、図13に示すように、取付部材317を含む素子アセンブリ311と、下部基体部(第1基体部)322を含む基体部321と、を主に備えて構成されている。
【0087】
素子アセンブリ311は、センサ素子12と、センサ素子12の内部に収納すると共にセンサ素子12を保持する主体金具(ハウジング)313、セラミックリング15a、第1滑石リング15b、第2滑石リング15c、スリーブ15d、金属カップ15e、パッキン15f、外部プロテクタ342、内部プロテクタ343、取付部材317、を主に備えて構成されている。
【0088】
素子アセンブリ311のうち、取付部材317は、酸素センサ301を吸入配管に固定する際に用いられる金属性の部品である。取付部材317は、主体金具313を内部に配置可能な筒形状であり、その先端側端部が主体金具313に対して溶接により固定される。取付部材317は、その外周面に溝部318(図15の工程F参照)を備えており、溝部318には環状パッキン319が配置される。また、取付部材317は、自身の後端側で径方向外側に延伸した部位に取り付け孔が形成されており、この取り付け孔は、酸素センサ301をセンサ取付箇所(吸入配管など)にボルトなどを用いたネジ止め等で取り付けるために備えられている。
【0089】
外部プロテクタ342および内部プロテクタ343は、複数の孔部を有する金属製(例えば、ステンレスなど)の部材であり、センサ素子12の突出部分を覆うように、主体金具313の先端側(図13における下方)外周に溶接等によって取り付けられている。
【0090】
基体部321は、吸入配管の外側に配置されるものであり、図13に示すように、下部基体部(第1基体部)322と、上部基体部(第2基体部)323と、蓋部324と、を主に備えて構成される。基体部321の内部には、後述する複数の金属端子364と、センサ素子12との導通を図るセパレータ(中継部)325と、セパレータ325を支持する筒状の支持部材327と、が配置されている。なお、支持部材327は、その内部に筒状部材327aを備えており、弾性変形により筒状部材327aの内径寸法が変化することで、セパレータ325を支持部材327の内部に保持するよう構成されている。
【0091】
本実施形態は、下部基体部322および蓋部324が金属材料(SUS304など)で形成され、上部基体部323がポリフェニレンサルファイド樹脂から成形されている例に適用したものである。
【0092】
下部基体部322は、基体部321における主体金具313やセンサ素子12に近い側の部分(図13の下側の部分)を構成するものであり、ステンレス(SUS304など)で形成されている。図14の工程Bに示すように、下部基体部322における下側部322Lは、主体金具313の後端側部分(図14における上側)を収容可能な円筒状に形成され、下部基体部322における上側部322Uは、上部基体部323の一部を収容可能な形状に形成されている。
【0093】
上部基体部323は、基体部321における主体金具313やセンサ素子12から遠い部分(図13の上側の部分)を構成するものであり、酸素センサ301の挿入方向(図13の上下方向)に対して交差する方向、より好ましくは直交する方向(図13の左右方向)に延びて配置される部品である。上部基体部323は、図14の工程Cに示すように、322に支持される外側部材361と、外側部材361の内部に収容されるコネクタ部材362と、を主に備えて構成されている。
【0094】
外側部材361は、貫通孔361aと、コネクタ収容部361bと、Oリング配置部361cと、を備えている。
貫通孔361aは、上部基体部323における下部基体部322と対向する部分に形成された、酸素センサ1の挿入方向、言い換えると、センサ素子12が延びる方向に貫通する孔である。
【0095】
コネクタ収容部361bは、コネクタ部材362を収容するための空間であり、貫通孔361aに連通している。
Oリング配置部361cは、Oリング363を配置するための溝であり、外側部材361の先端側および後端側にそれぞれ形成されている。Oリング363は、ゴム等の弾性を有する樹脂を用いてリング状に形成された部材であり、断面が円状に形成されたものである。Oリング363は、Oリング配置部361cに配置されることで、上部基体部323(外側部材361)と下部基体部322との間の気密性を高めると共に、上部基体部323(外側部材361)と蓋部324との間の気密性を高める。
【0096】
コネクタ部材362は、センサ素子12の測定信号を酸素センサ1の外部に配置された制御部(図示せず)に出力する接続部であると共に、ヒータ31に供給される電力が入力される接続部でもある。コネクタ部材362は、複数の導通部材326に接続される複数の金属端子364と、複数の金属端子364の周囲を覆って延びる筒状部362aと、を主に備えて構成されている。
【0097】
コネクタ部材362が外側部材361のコネクタ収容部361bに配置されることで、上部基体部323が形成される。
上部基体部323の一部が下部基体部322の上側部322Uの内部に配置されることで、複数の金属端子364がそれぞれ複数の導通部材326に電気的に接続される。なお、複数の導通部材326は、セパレータ325の内部に配置されてセンサ素子12やヒータ31と電気的に接続されている。これにより、複数の金属端子364がセンサ素子12やヒータ31と電気的に接続される。
【0098】
図15の工程Eに示すように、蓋部324は、上部基体部323の上面の一部を覆う上面部324aと、上部基体部323の側面の一部を覆う側面部324bと、を主に備えて構成される。側面部324bは、上部基体部323を挿通可能な大きさの開口部324cを備えている。
【0099】
蓋部324は、上面部324aで貫通孔361aを覆うことで、センサ素子12の後端や、セパレータ325が配置される空間を閉じた空間にするものであり、この空間に水などの侵入を防止するものである。
【0100】
ここで、図14および図15の酸素センサ301の組立工程を示した説明図を参照しながら、酸素センサ301の組立工程の概略を説明する。
まず、図14の工程Aに示すように、センサ素子12、主体金具313、セラミックリング15a、第1滑石リング15b、第2滑石リング15c、スリーブ15d、金属カップ15e、パッキン15f、外部プロテクタ342および内部プロテクタ343、を主に備えて構成される素子アセンブリ311が準備される。
【0101】
この素子アセンブリ311に対して、セパレータ325および複数の導通部材326を収容する支持部材327が組み付けられて、支持部材327と素子アセンブリ311(詳細には、主体金具313)とが溶接により固定される。これにより、複数の導通部材326がセンサ素子12やヒータ31と電気的に接続される。なお、支持部材327は、その内部に筒状部材327aを備えており、弾性変形により筒状部材327aの内径寸法が変化することで、セパレータ325を支持部材327の内部に保持するよう構成されている。
【0102】
次に、図14の工程Bに示すように、支持部材327が固定された素子アセンブリ311に対して、下部基体部322が組み付けられて、下部基体部322と素子アセンブリ311(詳細には、主体金具313)とが溶接により固定される。
【0103】
次に、図14の工程Cに示すように、コネクタ部材362が外側部材361のコネクタ収容部361bに配置されることで、上部基体部323が形成される。
そして、下部基体部322が固定された素子アセンブリ311に対して、上部基体部323が組み付けられる。このとき、Oリング363がOリング配置部361cに配置されることで、下部基体部322と上部基体部323との間にOリング363が配置される。
【0104】
これにより、図14の工程Dに示すように、上部基体部323の一部が下部基体部322の上側部322Uの内部に配置されるとともに、複数の金属端子364がそれぞれ複数の導通部材326に電気的に接続される。
【0105】
次に、図15の工程Eに示すように、下部基体部322が固定されると共に上部基体部323が組み付けられた素子アセンブリ311に対して、蓋部324を組み付ける。このとき、Oリング363がOリング配置部361cに配置されることで、蓋部324と上部基体部323との間にOリング363が配置される。
【0106】
これにより、蓋部324の上面部324aによって貫通孔361aが覆われ、センサ素子12の後端やセパレータ325が配置される空間が閉じた空間となり、この空間に水などの侵入が防止される。また、蓋部324は下部基体部322に組み付けられた後で径方向から加締められて固定される。
【0107】
次に、図15の工程Fに示すように、蓋部324が組み付けられた素子アセンブリ311に対して、取付部材317を組み付ける。このとき、素子アセンブリ311の先端側(図15の下側)に、取付部材317を組み付けた上で、溶接により両者を固定する。
【0108】
これにより、図15の工程Gに示すように、酸素センサ301が完成する。
このように構成される酸素センサ301は、下部基体部322が金属製(ステンレス)の部材であるため、樹脂製の部材に比べて、耐熱性に優れたものとなり高温環境での使用が可能となる。
【0109】
なお、本実施形態においては、センサ素子12が特許請求の範囲におけるセンサ素子の一例に相当し、主体金具313(ハウジング313)がハウジングの一例に相当する。基体部321が基体部の一例に相当し、下部基体部322(第1基体部322)が第1基体部の一例に相当し、上部基体部323(第2基体部323)が第2基体部の一例に相当する。複数の金属端子364が複数の端子の一例に相当し、コネクタ部材362がコネクタ部の一例に相当し、貫通孔361aが貫通孔の一例に相当し、セパレータ325(中継部)および導通部材326が中継部の一例に相当する。
【0110】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0111】
例えば、下部基体部322を金属材料で形成する場合には、その材料はSUS304に限られることはなく、他の金属材料で形成しても良い。耐腐食性や耐熱性に優れた金属材料を用いて下部基体部を形成することで、ガスセンサ(酸素センサ)としての耐腐食性や耐熱性を向上できる。
【符号の説明】
【0112】
1,101,301…酸素センサ(ガスセンサ)、12…センサ素子、13,313…主体金具(ハウジング)、14…外部プロテクタ(ハウジング)、21,321…基体部、22,122,322…下部基体部(第1基体部)、22c…肉盗み部(凹部)、22U…上側部、22L,122L…下側部、23,323…上部基体部(第2基体部)、23a,361a…貫通孔、26…複数の端子、25,325…セパレータ(中継部)、26a…連結部、117…フランジ部、141…第1下部用金型、142…第2下部用金型
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検出ガスの濃度を測定するセンサ素子を備えるガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関においては、消費燃料の低減を図るためや、排気ガスの浄化を図るために、燃焼室に送り込まれる空気(酸素)と燃料との割合である空燃比を調節する制御が一般的になっている。この空燃比を制御するために、吸気ガスに含まれる酸素の割合や、排気ガスに含まれる酸素の割合を測定するガスセンサの測定信号が用いられている。
【0003】
上述のガスセンサは、酸素の濃度を測定するセンサ素子と、センサ素子の周囲を覆う保護カバーと、センサ素子を保持する主体金具と、センサ素子の測定信号を外部に出力する複数の端子を備える基体部と、が主に設けられている。従来、基体部は金属製の薄板を複数枚組み付けて作成されていたが、組み付けが面倒であり、手間がかかるという問題があった。
【0004】
この問題を解決するために、樹脂からなる基体部を主体金具などと一体にインサート成形する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このように基体部を樹脂で主体金具などと一体に形成することにより、複数の金属製の薄板を複数枚組み付けるという手間を簡略化することができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−132779号公報
【特許文献2】特開2011−145270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたガスセンサは、ガスセンサの長手方向と、基体部における端子の長手方向(言い換えると、外部の配線を抜き差しする方向)とが同一方向に並んで配置された構成を有している。そのため、ガスセンサの基体部に、外部から配線を接続する場合、内燃機関の周囲の配置空間の制約が厳しいと、配線を基体部に接続できないという問題があった。
【0007】
この問題を解決するために、ガスセンサの長手方向と、基体部における端子の長手方向とを、交叉して配置する構成のガスセンサも提案されている。
しかしながら、このような構成を有する基体部は、特許文献1に記載された基体部と比較して複雑な構成を有するため、基体部をインサート成形する際に用いられる金型の形状が複雑化しやすいという問題があった。また、保護カバーに設けられた流通孔の位置と、端子の長手方向とが取りうる相対的な位置範囲が、ガスセンサの形状による制限を受けやすいという問題があった。その他にも、樹脂からなる基体部をインサート成形する場合、成形後に発生する樹脂の収縮などによる基体部の変形を防止するために、基体部が取りうる形状に制限があるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、樹脂からなるコネクタ部の形状の自由度を高めるとともに形状の精度を高め、成形の容易化を図ることができるガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明のガスセンサは、内燃機関に設けられた流路内を流れるガスに含まれる特定ガス成分の濃度を測定するセンサ素子と、該センサ素子を内部に収納すると共に前記流路内に差し込まれるハウジングと、該ハウジングに取り付けられると共に前記流路の外側に配置される基体部と、を備えるガスセンサであって、前記基体部は、前記基体部における前記ハウジング側の部分である第1基体部と、前記第1基体部とは別に成形され、前記基体部における前記ハウジングと反対側の部分であり、前記センサ素子と電気的に接続される複数の端子が、前記センサ素子の挿入方向に対して交差する方向に延びて内部に配置されたコネクタ部を有する第2基体部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明のガスセンサによれば、基体部は、ハウジング側の部分である第1基体部と、コネクタ部を備える形状の第2基体部と、を備えて構成されている。このように構成することで、基体部の形状の自由度が高くなる。
【0011】
具体的には、第1基体部を成形する際に、第1基体部の形状に制約を与えるのは、主にハウジングの形状となる。基体部を分割することなく一体に成形する場合には、主にハウジングの形状と、複数の端子の配置位置および配置方向とが制約となるのと比較して、第1基体部を成形する際の制約が少なくなり形状の自由度が高くなる。また、第2基体部を成形する際にも同様に、第2基体部の形状に制約を与えるのは、主に複数の端子の配置位置および配置方向となり、基体部を分割することなく一体に成形する場合と比較して、制約が少なくなり形状の自由度が高くなる。
【0012】
さらに、基体部を分割することなく一体に成形する場合と比較して、第1基体部や第2基体部を簡素な形状、特に、軸対称や線対称な形状にし易くなる。そのため、成形後に発生する材料の収縮により、第1基体部や第2基体部に発生する変形を抑制しやすくなる。
【0013】
第1基体部や第2基体部を、比較的、簡素な形状にし易くなるため、第1基体部や第2基体部を成形する際に用いられる金型の形状も、同様に簡素な形状とすることができる。そのため、金型の製造コスト低減を図ると共に金型の長寿命化を図ることができ、ひいてはガスセンサの製造コストの低減を図ることができる。
【0014】
上記発明において、第2基体部は樹脂で成形されてなる構成を採ることができる。
このような構成を採ることで、第2基体部を樹脂成形する際に用いられる金型を簡素な形状とすることができ、金型の製造コスト低減を図ると共に金型の長寿命化を図ることができ、ひいてはガスセンサの製造コストの低減を図ることができる。
【0015】
上記発明において前記第2基体部には、前記センサ素子および前記複数の端子を電気的に接続する中継部を収納する貫通孔が設けられ、前記複数の端子は、前記中継部側の端部において連結部により一体に繋がれた状態で、前記中継部側の端部を前記貫通孔の内部に突出させた状態で前記第2基体部と一体に成形され、その後、前記貫通孔の側面から内部に向かって突出する前記複数の端子における前記連結部を切り落とすことにより、前記複数の端子は前記第2基体部の内部に配置されることが望ましい。
【0016】
このように、複数の端子における中継部側の端部を、貫通孔の側面から内部に向かって突出させることにより、複数の端子の間の配置精度の悪化を抑制しやすくなる。具体的には、連結部により一体となった複数の端子を金型の内部に配置するだけでよいため、複数の端子を一つずつ金型の内部に配置する場合と比較して、端子の配置精度の悪化を抑制しやすく、かつ端子の配置に要する手間を省略することができる。
【0017】
また、複数の端子における中継部側の端部および連結部は、第2基体部における貫通孔の内部に向かって突出しているため、連結部を端子から切り離しやすい。つまり、連結部を端子から切り離す一対の切断具を、貫通孔の一方および他方の開口から侵入させることができるため、一方が塞がれた穴の内部に向かって連結部が突出している場合と比較して、一対の切断具で連結部および端子の間を挟み、切断することが容易である。
【0018】
なお、複数の端子における中継部とは反対側の端部は、コネクタ部の内部に突出して配置され、外部の配線に電気的に接続可能とされている。
上記発明において前記第1基体部には、前記ハウジング側の部分であって、前記ハウジングが延びる方向に延びる下側部と、前記第2基体部側の部分であって、前記複数の端子が延びる方向に沿って延びる板状の上側部と、が設けられ、前記上側部における前記ハウジング側の面には凹部が形成されていることが望ましい。
【0019】
このように、第1基体部の上側部に凹部を形成することにより、基体部の形状の精度を悪化させることなく、第1基体部を形成する際に用いられる材料の量を削減することができる。同時にガスセンサの軽量化を図ることができる。つまり、第1基体部には、軸対称性または面対称性を大きく崩すコネクタ部が設けられていないため、成形後の材料の収縮による変形が発生しにくい。特に、基体部のコネクタ部と配置が重なる位置に凹部を設けても、第1基体部としては変形が発生しにくいため、容易に凹部を設けることができる。
【0020】
上記発明においては、前記ハウジングには、前記ハウジングの外周から径方向外側に向かって延びる板状のフランジ部が、さらに設けられ、前記第1基体部は、前記フランジ部を割り面とする第1金型および第2金型により、前記ハウジングおよび前記フランジ部と一体に成形されていることが望ましい。
【0021】
このようにフランジ部が設けられている場合には、フランジ部を割り面とする第1金型および第2金型により、第1基体部はハウジングおよびフランジ部と一体に成形される。このように金型の割り面の配置位置が制限される場合に、基体部を分割することなく一体に成形する場合と比較すると、本発明のガスセンサでは、フランジ部と一体に成形される第1基体部にコネクタ部が設けられていないため、金型の形状を簡素化することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のガスセンサによれば、基体部を、ハウジング側の部分である第1基体部と、コネクタ部を備える形状の第2基体部と、を備えて構成することで、基体部の形状の自由度を高くすることができる。また、基体部を分割することなく一体に成形する場合と比較して、第1基体部や第2基体部を簡素な形状にできるため、成形後に発生する材料の収縮により、第1基体部や第2基体部に発生する変形を抑制することができる。さらに、第1基体部や第2基体部を成形する際に用いられる金型の形状も、同様に簡素な形状とすることができるため、金型の製造コスト低減を図ると共に金型の長寿命化を図ることができ、ひいてはガスセンサの成形の容易化を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る酸素センサの概略構成を説明する断面視図である。
【図2】図1の下部基体部の構成を説明する部分断面図である。
【図3】図1の上部基体部の構成を説明する部分断面図である。
【図4】図1の酸素センサの組立工程を説明する斜視図である。
【図5】図2の下部基体部をインサート成形する金型を説明する断面視図である。
【図6】図3の上部基体部のインサート成形する金型を説明する断面視図である。
【図7】図6の連結部により一体とされた複数の端子の構成を説明する模式図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る酸素センサの概略構成を説明する断面視図である。
【図9】図8の下部基体部の構成を説明する部分断面図である。
【図10】図8の酸素センサの組立工程を説明する斜視図である。
【図11】図8の下部基体部のインサート成形を説明する断面視図である。
【図12】従来の酸素センサに係る基体部のインサート成形を説明する断面視図である。
【図13】本発明の第3の実施形態における酸素センサの概略構成を表した断面視図である。
【図14】図13の酸素センサの組み立て工程のうち工程Aから工程Dを表した説明図である。
【図15】図13の酸素センサの組み立て工程のうち工程Eから工程Gを表した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態に係る酸素センサ1ついて図1から図7を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る酸素センサ1の概略構成を説明する断面視図である。
【0025】
本実施形態の酸素センサ(ガスセンサ)1は、自動車等の車両の動力源となるエンジン(内燃機関)に適用されるものであり、より具体的には、エンジンに吸入されるガスに含まれる特定ガス成分としての酸素の濃度を測定するものである。酸素センサ1には、図1に示すように、センサ素子12を含む素子アセンブリ11と、基体部21と、から主に構成されている。
【0026】
素子アセンブリ11は、その大半が吸入配管(流路)に差し込まれるものであり、吸入ガスの酸素濃度を測定するセンサ素子12が内部に収納されたものである。素子アセンブリ11には、図1に示すように、センサ素子12と、センサ素子12の内部に収納すると共にセンサ素子12を保持する主体金具(ハウジング)13、外部プロテクタ(ハウジング)14、セラミックリング15a、第1滑石リング15b、第2滑石リング15cおよびスリーブ15dと、から主に構成されている。
【0027】
センサ素子12は、吸入配管を流れる吸入ガスにおける酸素濃度を測定する測定部である。センサ素子12は、主に、ポンプセルと、中空の測定室を有する絶縁層と、起電力セルと、補強板と、後述するヒータ31とを順に積層して構成されるものである。
【0028】
ポンプセルは、酸素イオン伝導性固体電解質体である部分安定化ジルコニア(ZrO2 )により形成され、その表面と裏面のそれぞれに主として白金で形成された多孔質電極が設けられている。起電力セルは、ポンプセルと同じく酸素イオン伝導性固体電解質体である部分安定化ジルコニア(ZrO2 )により形成されたものである。起電力セルの表面と裏面のそれぞれには、主として白金で形成された多孔質電極が設けられている。
【0029】
ポンプセルに設けられた一対の多孔質電極のうちの一つと、起電力セルに設けられた一対の多孔質電極のうちの一つは、測定室に面するように配置され、互いに同電位に導通されるとともに、センサ素子12の後端側表面に形成される1つの電極取出部に接続されている。ポンプセルにおける測定室と反対側に配置された多孔質電極、および、起電力セルにおける測定室と反対側に配置された多孔質電極は、センサ素子12の後端側表面に形成された2つの電極取出部にそれぞれ接続されている。
【0030】
補強板は、起電力セルの測定室と反対側に配置された多孔質電極を閉塞しつつ、多孔質電極の内部に基準酸素室を形成するように、起電力セルに積層されたものである。ポンプセルと起電力セルとの間には、上述したように、測定室が形成された絶縁層が介在している。この測定室は、絶縁層に別途配置された多孔質拡散層を介して外部のガス雰囲気、つまり吸入配管の内部を流れる吸入ガスと連通されている。
【0031】
センサ素子12における先端(図1の下端)には、酸素濃度に応じた電流が流れる検出部12aが構成され、後端(図1の上端)には、上記の3つの電極端子部や、ヒータ31に電力を供給する2つの端子部が設けられている。センサ素子12は、起電力セルに発生する起電力(電極間電圧)が一定になるように、酸素ポンプセルに流れる電流の流れ方向及び大きさが制御されている。なお、酸素ポンプセルのうち、多孔質電極が配置される部位が上記の検出部12aに相当する。
【0032】
ヒータ31は、補強板に積層され、ポンプセル、起電力セル、補強板と共に一体化されているものである。ヒータ31は、導体からなるヒータ抵抗を一対のアルミナシートで挟み込んで形成されたものであり、ヒータ31の一端が直流電源(例えば、電圧が12Vのバッテリ)に接続され、他端がヒータ制御回路(図示せず)に接続されている。ヒータ制御回路を駆動させることによりヒータ31が発熱すると、ポンプセル及び起電力セルの温度が上昇して活性化し、センサ素子12によるガス検出(酸素濃度検出)が可能となる。
【0033】
主体金具13は、外部プロテクタ14と比較して肉厚の筒状に形成され、内部にセラミックリング15a、第1滑石リング15b、第2滑石リング15c、スリーブ15dおよびセンサ素子12などが収納される金属、例えばステンレス鋼から形成されたものである。
【0034】
主体金具13における先端側(図1の下側)は、中央と比較して外径を小さく形成され、この部分に外部プロテクタ14が取り付けられている。その一方で、主体金具13における後端側(図1の上側)も、中央と比較して外形を小さく形成され、この部分の外周面に環状に延びる溝部13aが設けられている(図2参照)。溝部13aは、後述する下部基体部22を主体金具13と一体にインサート成形する際に、下部基体部22を構成する樹脂が内部に流入するものである。
【0035】
外部プロテクタ14は、一端が閉じられた円筒状に形成された金属部材であり、内部にセンサ素子12の検出部12aを収納し、検出部12aを保護するものである。外部プロテクタ14は、円筒の開口部に主体金具13の先端側の端部が差し込まれた状態で、主体金具13に溶接固定されている。
【0036】
外部プロテクタ14の円周面には、ガス導入孔14aが設けられている。ガス導入孔14aは、吸入配管を流れる吸入ガスを外部プロテクタ14の内部に導き、センサ素子12の検出部12aの周囲に吸入ガスを導くものである。本実施形態においてガス導入孔14aは、外部プロテクタ14の円筒形状のおける中心軸方向(図1の上下方向)に延びる長方形状に形成された貫通孔である。ガス導入孔14aは、酸素センサ1を配置する際に、吸入配管内部のガス流れの下流に向かって開口するように配置されている。
【0037】
セラミックリング15aは、アルミナ(Al2O3)を用いて円筒状に形成された部材であり、内部にセンサ素子12が挿通されたものである。第1滑石リング15bおよび第2滑石リング15cは、滑石粉末を圧縮して円筒状に固めた部材であり、内部にセンサ素子12が挿通されたものである。
【0038】
セラミックリング15a、第1滑石リング15b及び第2滑石リング15cは、センサ素子12の先端から後端に向かって、セラミックリング15a、第1滑石リング15b及び第2滑石リング15cが順に並んで配置されている。さらに、セラミックリング15aおよび第1滑石リング15bの全体と、第2滑石リング15cの下端は、一端が閉じられた円筒状に形成された金属カップ15eの内部に収納されている。金属カップ15eは、主体金具13の内周面と、セラミックリング15aおよび第1滑石リング15bの外周面との間に配置されている。なお、金属カップ15eにおける閉じられた端部には、センサ素子12が挿通される貫通孔が形成されている。
【0039】
スリーブ15dは、第2滑石リング15cの後端側に配置された円筒状に形成された部材であり、主体金具13と共に、セラミックリング15a、第1滑石リング15bおよび第2滑石リング15cをセンサ素子12の先端に向かって押し付けるものである。スリーブ15dの後端(図2の上端)と主体金具13との間には、円環状のパッキン15fが配置されている。パッキン15fは、主体金具13の後端を径方向内側に向けて変形させて加締めた際に、スリーブ15dに偏荷重がかかるのを防止するものである。
【0040】
次に、本実施形態の酸素センサ1の特徴部である基体部21について説明する。
基体部21は、吸入配管の外側に配置されるものであり、金属などの他の材料と比較して成形性が良好な樹脂により形成されたものである。基体部21は、図1に示すように、下部基体部(第1基体部)22と、上部基体部(第2基体部)23と、蓋部24と、から主に構成されている。基体部21の内部には、後述する複数の端子26と、センサ素子12との導通を図るセパレータ(中継部)25が、配置されている。本実施の形態では、下部基体部22および上部基体部23はポリフェニレンサルファイド樹脂から成形されている例に適用して説明する。
【0041】
下部基体部22および上部基体部23は、個別にインサート成形される部品であり、両者は、組み合わされることにより基体部21を構成するものである。
下部基体部22は、基体部21における主体金具13やセンサ素子12に近い側の部分(図1の下側の部分)を構成するものであり、主体金具13と一体にインサート成形される部品である。図2の下部基体部22の構成を説明する部分断面図に示すように、下部基体部22における下側部22Lは、主体金具13の中央と同程度の外形を有する円柱状に形成され、上側部22Uは、下側部22Lよりも径方向外側に突出する板状に形成されている。
【0042】
下部基体部22の上側部22Uには、組合せ溝22aと、セパレータ穴22bと、肉盗み部(凹部)22cと、が主に設けられている。
組合せ溝22aは、上側部22Uの上面、言い換えると上部基体部23と接触する面に形成された凹部であり、下部基体部22と上部基体部23とが組み合わせられる際に、上部基体部23に設けられた組合せ突起23bと嵌め合わされるものである。さらに、組合せ溝22aは、セパレータ穴22bの周囲を切れ目なく囲んで形成された環状の溝であり、組合せ突起23bと嵌め合わせて溶接することにより、セパレータ25が配置される空間への水などの侵入を防止するものでもある。
【0043】
セパレータ穴22bは、上側部22Uの上面から主体金具13に向かって凹む穴であり、上部基体部23の貫通孔23aおよび蓋部24と共にセパレータ25が配置される空間を形成するものである。セパレータ穴22bの底部には、主体金具13の上端や、スリーブ15dの上端が露出し、さらに、センサ素子12の後端がセパレータ穴22bの底部から、セパレータ穴22bの内部に向かって突出している。
【0044】
肉盗み部22cは、上側部22Uの下面に設けられた凹部であり、下部基体部22に用いられる樹脂の量を削減するため、酸素センサ1の軽量化を図るために設けられたものである。本実施形態では、肉盗み部22cは、下側部22Lを環状に囲う環状の溝として形成された例に適用して説明する。なお、肉盗み部22cは、環状の溝として形成されるものに限定されることなく、分割された円弧状の溝であったり、その他種々の形状に形成された凹みであったりしてもよく、特に限定するものではない。
【0045】
下部基体部22における下側部22Lと上側部22Uとの境目である段差には、図1に示すように、吸入配管および酸素センサ1の間の気密を保持するOリング16が設けられている。
【0046】
Oリング16は、ゴム等の弾性を有する樹脂を用いてリング状に形成された部材であり、断面が円状に形成されたものである。Oリング16の内周端は下部基体部22の下側部22Lと接触し、上端は下部基体部22の上側部22Uと接触している。また、Oリング16の外周端は、吸入配管に設けられた酸素センサ1が挿入される貫通孔の内周面と接触するものである。
【0047】
上部基体部23は、基体部21における主体金具13やセンサ素子12から遠い部分(図1の上側の部分)を構成するものであり、酸素センサ1の挿入方向(図1の上下方向)に対して交差する方向、より好ましくは直交する方向(図1の左右方向)に延びて配置される部品である。上部基体部23には、図3の上部基体部23の構成を説明する部分断面図に示すように、貫通孔23aと、組合せ突起23bと、コネクタ部23cと、が主に設けられている。
【0048】
貫通孔23aは、上部基体部23における下部基体部22と対向する部分に形成された、酸素センサ1の挿入方向、言い換えると、センサ素子12が延びる方向に貫通する孔である。貫通孔23aの側面のうち、コネクタ部23cと隣接する部分には、側面から貫通孔23aの内部に向かって突出する棚部23dが設けられている。棚部23dの上面には、後述する複数の端子26が配置されている。
【0049】
組合せ突起23bは、上部基体部23における下部基体部22と対向する面に形成された突出形状であり、貫通孔23aの周囲を環状に囲む畝状の部材である。上部基体部23における下部基体部22と対向する部分、言い換えると、貫通孔23aおよび組合せ突起23bが設けられた部分は、コネクタ部23cが設けられた部分と比較すると、酸素センサ1の挿入方向の寸法、言い換えると上部基体部23の厚さが薄くなっている。
【0050】
コネクタ部23cは、センサ素子12の測定信号を酸素センサ1の外部に配置された制御部(図示せず)に出力する接続部であると共に、ヒータ31に供給される電力が入力される接続部でもある。コネクタ部23cには、セパレータ25を介してセンサ素子12やヒータ31と電気的に接続される複数の端子26と、複数の端子26の周囲を覆って延びる筒状部23eと、が主に設けられている。
【0051】
複数の端子26は、導電性の高い金属から形成された棒状、例えば平板の棒状に形成された部材であり、酸素センサ1の挿入方向に対して交差する方向、より好ましくは直交する方向(図1の左右方向)に延びて配置され、かつ、一方の端部が貫通孔23aの内部に突出し、他方の端部が筒状部23eの内部に突出して配置されたものである。さらに、複数の端子26は、互いに平行に延びると共に、所定の間隔をあけて一列に並んで配置されている。
【0052】
本実施形態では、センサ素子12の3つの電極端子部、および、ヒータ31の2つの端子部のそれぞれに端子26が配置され、つまり5つの端子26が配置され、これらの端子26がクランク状に折り曲げられた例に適用して説明する。
【0053】
筒状部23eは、内部に配置された複数の端子26と平行に延びる筒状の部分であり、制御部とつながる外部コネクタが内部に差し込まれる部分である。さらに、筒状部23eは、内部に差し込まれた外部コネクタを保持して、意図しないタイミングで外れないようにするものでもある。
【0054】
蓋部24は板状に形成された部品であり、上部基体部23の上面であって、貫通孔23aが形成された領域に配置されるものである。蓋部24は、センサ素子12の後端や、セパレータ25が配置される空間を閉じた空間にするものであり、この空間に水などの侵入を防止するものである。
【0055】
なお、センサ素子12の後端やセパレータ25が配置される空間は、上述のように、蓋部24によって閉じて水などの侵入を防止してもよいし、蓋部24を用いる代わりに、空間を樹脂で埋める樹脂ポッティング等の方法で水などの侵入を防止してもよく、特にその方法を限定するものではない。
【0056】
セパレータ(中継部)25は、図1に示すように、絶縁性を有するセラミックスから形成された円筒状の部品である。セパレータ25の内部には、センサ素子12との導通を図るための5本の導通部材25aが配置され、センサ素子12の後端部が挿入される。センサ素子12の後端部がセパレータ25の内部に差し込まれると、センサ素子12の5つの電極端子部と5本の導通部材25aとが、それぞれ導電可能に接触する。また、5本の導通部材25aは、コネクタ部23cの5つの端子26と電気的に接続可能とされている。
【0057】
ここで、図4の酸素センサ1の組立工程を説明する斜視図を参照しながら、酸素センサ1の組立工程の概略を説明する。
まず、図4(a)に示すように、センサ素子12、主体金具13、外部プロテクタ14、セラミックリング15a、第1滑石リング15b、第2滑石リング15c、及びスリーブ15dから構成される素子アセンブリ11が準備される(図1参照)。
【0058】
そして素子アセンブリ11に対して、図4(b)に示すように、下部基体部22のインサート成形が行われる。インサート成形は、図5の下部基体部22のインサート成形を説明する断面視図に示すように、第1下部用金型41および第2下部用金型42を用いて行われる。第1下部用金型41には、素子アセンブリ11、下部基体部22の下側部22Lおよび上側部22Uの下面、側面に対応する凹状の形状が形成されている。第2下部用金型42には、下部基体部22の上側部22Uの上面に対応する凹凸の形状が形成されている。より具体的には、組合せ溝22aや、セパレータ穴22bなどに対応する凹凸が形成されている。なお、図5における第1下部用金型41および第2下部用金型42の右横に記載された矢印は、第1下部用金型41および第2下部用金型42の割り面を示すものである。
【0059】
さらに、上述の下部基体部22をインサート成形する工程と並行して、または、別に上部基体部23をインサート成形が行われる。図6の上部基体部23のインサート成形を説明する断面視図に示すように、第1上部用金型51、第2上部用金型52および第3上部用金型53を用いて行われる。第1上部用金型51には、貫通孔23aの下側半分や、組合せ突起23bや、コネクタ部23cの下面に対応する凹凸の形状が形成されている。第2上部用金型52には、貫通孔23aの上側半分や、コネクタ部23cの上面に対応する凹凸の形状が形成されている。第3上部用金型53には、コネクタ部23cの内部形状に対応する凹凸の形状が形成されている。
【0060】
なお、図6における第1上部用金型51および第2上部用金型52の右横に記載された矢印は、第1上部用金型51および第2上部用金型52の割り面を示すものであり、第1上部用金型51および第3上部用金型53の下側に記載された矢印は、第1上部用金型51および第3上部用金型53の割り面、および、第2上部用金型52および第3上部用金型53の割り面を示すものである。
【0061】
また、上部基体部23をインサート成形する際には、図6および図7に示すように、第1上部用金型51、第2上部用金型52、および、第3上部用金型53の内部に、連結部26aにより一体とされた複数の端子26が、所定の位置に配置される。
【0062】
連結部26aは、図7に示すように、複数の端子26における貫通孔23a側の端部に、端子26に対して直交する方向に延びた形状を有する部材である。複数の端子26は、連結部26aとつながることにより、一体となっている。この連結部26aは、上部基体部23のインサート成形が終了した後に、貫通孔23aの一方および他方の開口から進入する切断具によって、切断面において切断されて端子26から切り離される。
【0063】
上述のように下部基体部22および上部基体部23のインサート成形が完了すると、図4(c)および図4(d)に示すように、下部基体部22の上に、上部基体部23が重ね合わされる。この時、組合せ溝22aと組合せ突起23bとが嵌め合わされ(図1参照)、その後、下部基体部22と上部基体部23とは、溶着されて一体化されて基体部21となる。溶着方法としては、レーザを利用した溶着や、超音波を利用した溶着や、加熱による溶着など、公知の方法を用いることができ、特に限定するものではない。
【0064】
下部基体部22と上部基体部23とが一体化されると、図4(e)および図4(f)に示すように、セパレータ25が貫通孔23aおよびセパレータ穴22bにより形成された空間に配置される。このとき、セパレータ25の内部にセンサ素子12の後端部が挿入され、センサ素子12の5つの電極端子部と5本の導通部材25aとが、それぞれ電気的に接続される。同時に、5本の導通部材25aが、それぞれコネクタ部23cの5つの端子26と電気的に接続される(図1参照)。
【0065】
そして、図4(f)および図4(g)に示すように、貫通孔23aの上側の開口に蓋部24が配置され、セパレータ25が配置される空間が密閉される。以上により、酸素センサ1の組立が完了する。
【0066】
上記の構成によれば、基体部21は、主体金具13を含む素子アセンブリ11と一体に樹脂をインサート成形した下部基体部22と、コネクタ部23cを備える形状に樹脂をインサート成形した上部基体部23と、から少なくとも構成されている。このようにすることで、樹脂からなる基体部21の形状の自由度を高くすることができる。
【0067】
具体的には、下部基体部22を樹脂でインサート成形する際に、下部基体部22の形状に制約を与えるのは、主に素子アセンブリ11の形状となる。基体部21を分割することなく一体に成形する場合には、主に素子アセンブリ11の形状と、複数の端子26の配置位置および配置方向とが制約となるのと比較して、下部基体部22をインサート成形する際の制約が少なくなり形状の自由度が高くなる。また、上部基体部23を樹脂で成形する際にも同様に、上部基体部23の形状に制約を与えるのは、主に複数の端子26の配置位置および配置方向となり、基体部21を分割することなく一体にインサート成形する場合と比較して、制約が少なくなり形状の自由度が高くなる。
【0068】
さらに、下部基体部22と、上部基体部23とを別々にインサート成形した後に、下部基体部22および上部基体部23を一体にする際に、下部基体部22に対する上部基体部23の周方向の向き(コネクタ部23cの向き)、を所定の向きに設定することができる。つまり、下部基体部22や素子アセンブリ11等の形状に関わらず、コネクタ部23cの向きを自由に設定することができる。
【0069】
さらに、基体部21を分割することなく一体にインサート成形する場合と比較して、下部基体部22や上部基体部23を簡素な形状、特に、軸対称や線対称な形状とすることができる。そのため、インサート成形後に発生する樹脂の収縮による、下部基体部22や上部基体部23に発生する変形を抑制しやすくなる。
【0070】
下部基体部22や上部基体部23を、比較的、簡素な形状とすることができるため、下部基体部22や上部基体部23をインサート成形する際に用いられる金型の形状も、同様に簡素な形状とすることができる。そのため、金型の製造コスト低減を図ると共に金型の長寿命化を図ることができ、ひいては酸素センサ1の製造コストの低減を図ることができる。
【0071】
また、複数の端子26におけるセパレータ25側の端部を、貫通孔23aの側面から内部に向かって突出させることにより、端子26同士の間の配置精度の悪化を抑制しやすくなる。具体的には、連結部26aにより一体となった複数の端子26を第1上部用金型51、第2上部用金型52および第3上部用金型53の内部に配置するだけでよいため、複数の端子26を一つずつ第1上部用金型51、第2上部用金型52および第3上部用金型53の内部に配置する場合と比較して、複数の端子26の配置精度の悪化を抑制しやすく、かつ複数の端子26の配置に要する手間を省略することができる。
【0072】
また、複数の端子26におけるセパレータ25側の端部および連結部26aは、上部基体部23における貫通孔23aの内部に向かって突出しているため、貫通孔23aを端子26から切り離しやすい。つまり、連結部26aを端子26から切り離す一対の切断具を、貫通孔23aの一方および他方の開口から進入させることができるため、一方が塞がれた穴の内部に向かって連結部26aが突出している場合と比較して、一対の切断具で連結部26aおよび端子26の間を挟み、切断することが容易である。
【0073】
下部基体部22の上側部22Uに肉盗み部22cを形成することにより、基体部21の形状の精度を悪化させることなく、下部基体部22を形成する際に用いられる樹脂の量を削減することができる。同時に酸素センサ1の軽量化を図ることができる。つまり、下部基体部22には、軸対称性または面対称性を大きく崩すコネクタ部23cが設けられていないため、成形後の樹脂の収縮による変形が発生しにくい。特に、コネクタ部23cと配置が重なる位置に肉盗み部22cを設けても、下部基体部22としては変形が発生しにくいため、容易に肉盗み部22cを設けることができる。
【0074】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について図8から図12を参照して説明する。
本実施形態の酸素センサの基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、フランジ部が設けられている点が異なっている。よって、本実施形態においては、図8および図12を用いてフランジ部によって第1の実施形態と相違する点についてのみを説明し、第1の実施形態と同様に部分の説明を省略する。図8は、本実施形態に係る酸素センサ101の概略構成を説明する断面視図である。
【0075】
本実施形態の酸素センサ101には、図8に示すように、フランジ部117を含む素子アセンブリ11と、下部基体部(第1基体部)122を含む基体部21と、から主に構成されている。
【0076】
フランジ部117は、酸素センサ101を吸入配管に固定する際に用いられる金属性の部品である。フランジ部117には、円筒状に形成されて主体金具13側の端部が主体金具13に固定される筒部117aと、筒部117aにおける基体部21側の端部から、酸素センサ1の挿入方向(図8の上下方向)に対して交差する方向、より好ましくは直交する方向(図8の左右方向)に延びる一対の板状のフランジ片117bと、が主に設けられている。
【0077】
なお、図8においてフランジ部117は、ガス導入孔14aが設けられている方向にフランジ片117bが延びるように配置された状態で記載されているが、フランジ片117bが延びる方向は、図8に記載された方向に限定されるものではなく、自由に設定することができる。例えば、フランジ片117bの延びる方向が90°回転した状態、言い換えると、ガス導入孔14aが設けられている方向に対して、直交する方向にフランジ片117bが延びていても良い。
【0078】
図9の下部基体部122の構成を説明する部分断面図に示すように、下部基体部122における下側部122Lは、主体金具13の外周と、フランジ部117の筒部117aの内周と、の間の空間を埋める円筒状に形成されている。上側部122Uは、フランジ部117のフランジ片117b上であって、下側部122Lよりも径方向外側に突出する板状に形成されている。
【0079】
ここで、図10の酸素センサ101の組立工程を説明する斜視図を参照しながら、酸素センサ101の組立工程の概略を説明する。
まず、図10(a)に示すように、センサ素子12、主体金具13、外部プロテクタ14、セラミックリング15a、第1滑石リング15b、第2滑石リング15c、スリーブ15dおよびフランジ部117から構成される素子アセンブリ11が準備される(図8参照)。なお、フランジ部117を主体金具13に固定する際には、溶接などの公知の固定方法を用いることができる。
【0080】
そして素子アセンブリ11に対して、図10(b)に示すように、下部基体部122のインサート成形が行われる。インサート成形は、図11の下部基体部122のインサート成形を説明する断面視図に示すように、第1下部用金型141および第2下部用金型142を用いて行われる。第1下部用金型141には、素子アセンブリ11に対応する凹状の形状が形成されている。第2下部用金型142には、下部基体部122の上側部22Uの側面や上面に対応する凹凸の形状が形成されている。より具体的には、組合せ溝22aや、セパレータ穴22bなどに対応する凹凸が形成されている。
【0081】
なお、図11における第1下部用金型141および第2下部用金型142の右横に記載された矢印は、第1下部用金型141および第2下部用金型142の割り面を示すものである。つまり、第1下部用金型141および第2下部用金型142の割り面は、フランジ部117のフランジ片117bと一致するように配置されている。
【0082】
以後の上部基体部23のインサート成形や、下部基体部122および上部基体部23の重ね合わせ等の酸素センサ101の組立工程は、第1の実施形態の組立工程と同様であるため、図10(c)から図10(g)までに組立工程内容を示し、その説明を省略する。
【0083】
上記の構成によれば、フランジ部117のフランジ片117bを割り面とする第1下部用金型141および第2下部用金型142により、下部基体部122はフランジ部117を含む素子アセンブリ11と一体にインサート成形される。このように金型の割り面の配置位置が制限される場合に、基体部21を分割することなく一体に成形する場合(図12参照)と比較すると、本実施形態の酸素センサ101では、フランジ部117を含む素子アセンブリ11と一体に成形される下部基体部122にコネクタ部23cが設けられていないため、金型の形状を簡素化することができる。
【0084】
ここで、図12における基体部21を分割することなく一体に成形する場合の金型について説明すると、インサート成形は、第1金型241、第2金型242および第3金型243を用いて行われる。第1金型241には、素子アセンブリ11やコネクタ部23cの下面に対応する凹状の形状が形成されている。第2金型242には、基体部21の上側部の側面や上面やコネクタ部23cの上面に対応する凹凸の形状が形成されている。第3金型243には、コネクタ部23cの内部形状に対応する凹凸の形状が形成されている。
【0085】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について図13から図15を参照して説明する。
本実施形態の酸素センサの基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態と比べて、少なくとも第1基体部が金属製である点で異なっている。よって、本実施形態においては、図13から図15を用いて第1の実施形態と相違する点についてのみを説明し、第1の実施形態と同様に部分の説明を省略する。
【0086】
図13は、本実施形態における酸素センサ301の概略構成を表した断面視図であり、図14および図15は、酸素センサ301の組み立て工程を表した説明図である。
本実施形態の酸素センサ301は、図13に示すように、取付部材317を含む素子アセンブリ311と、下部基体部(第1基体部)322を含む基体部321と、を主に備えて構成されている。
【0087】
素子アセンブリ311は、センサ素子12と、センサ素子12の内部に収納すると共にセンサ素子12を保持する主体金具(ハウジング)313、セラミックリング15a、第1滑石リング15b、第2滑石リング15c、スリーブ15d、金属カップ15e、パッキン15f、外部プロテクタ342、内部プロテクタ343、取付部材317、を主に備えて構成されている。
【0088】
素子アセンブリ311のうち、取付部材317は、酸素センサ301を吸入配管に固定する際に用いられる金属性の部品である。取付部材317は、主体金具313を内部に配置可能な筒形状であり、その先端側端部が主体金具313に対して溶接により固定される。取付部材317は、その外周面に溝部318(図15の工程F参照)を備えており、溝部318には環状パッキン319が配置される。また、取付部材317は、自身の後端側で径方向外側に延伸した部位に取り付け孔が形成されており、この取り付け孔は、酸素センサ301をセンサ取付箇所(吸入配管など)にボルトなどを用いたネジ止め等で取り付けるために備えられている。
【0089】
外部プロテクタ342および内部プロテクタ343は、複数の孔部を有する金属製(例えば、ステンレスなど)の部材であり、センサ素子12の突出部分を覆うように、主体金具313の先端側(図13における下方)外周に溶接等によって取り付けられている。
【0090】
基体部321は、吸入配管の外側に配置されるものであり、図13に示すように、下部基体部(第1基体部)322と、上部基体部(第2基体部)323と、蓋部324と、を主に備えて構成される。基体部321の内部には、後述する複数の金属端子364と、センサ素子12との導通を図るセパレータ(中継部)325と、セパレータ325を支持する筒状の支持部材327と、が配置されている。なお、支持部材327は、その内部に筒状部材327aを備えており、弾性変形により筒状部材327aの内径寸法が変化することで、セパレータ325を支持部材327の内部に保持するよう構成されている。
【0091】
本実施形態は、下部基体部322および蓋部324が金属材料(SUS304など)で形成され、上部基体部323がポリフェニレンサルファイド樹脂から成形されている例に適用したものである。
【0092】
下部基体部322は、基体部321における主体金具313やセンサ素子12に近い側の部分(図13の下側の部分)を構成するものであり、ステンレス(SUS304など)で形成されている。図14の工程Bに示すように、下部基体部322における下側部322Lは、主体金具313の後端側部分(図14における上側)を収容可能な円筒状に形成され、下部基体部322における上側部322Uは、上部基体部323の一部を収容可能な形状に形成されている。
【0093】
上部基体部323は、基体部321における主体金具313やセンサ素子12から遠い部分(図13の上側の部分)を構成するものであり、酸素センサ301の挿入方向(図13の上下方向)に対して交差する方向、より好ましくは直交する方向(図13の左右方向)に延びて配置される部品である。上部基体部323は、図14の工程Cに示すように、322に支持される外側部材361と、外側部材361の内部に収容されるコネクタ部材362と、を主に備えて構成されている。
【0094】
外側部材361は、貫通孔361aと、コネクタ収容部361bと、Oリング配置部361cと、を備えている。
貫通孔361aは、上部基体部323における下部基体部322と対向する部分に形成された、酸素センサ1の挿入方向、言い換えると、センサ素子12が延びる方向に貫通する孔である。
【0095】
コネクタ収容部361bは、コネクタ部材362を収容するための空間であり、貫通孔361aに連通している。
Oリング配置部361cは、Oリング363を配置するための溝であり、外側部材361の先端側および後端側にそれぞれ形成されている。Oリング363は、ゴム等の弾性を有する樹脂を用いてリング状に形成された部材であり、断面が円状に形成されたものである。Oリング363は、Oリング配置部361cに配置されることで、上部基体部323(外側部材361)と下部基体部322との間の気密性を高めると共に、上部基体部323(外側部材361)と蓋部324との間の気密性を高める。
【0096】
コネクタ部材362は、センサ素子12の測定信号を酸素センサ1の外部に配置された制御部(図示せず)に出力する接続部であると共に、ヒータ31に供給される電力が入力される接続部でもある。コネクタ部材362は、複数の導通部材326に接続される複数の金属端子364と、複数の金属端子364の周囲を覆って延びる筒状部362aと、を主に備えて構成されている。
【0097】
コネクタ部材362が外側部材361のコネクタ収容部361bに配置されることで、上部基体部323が形成される。
上部基体部323の一部が下部基体部322の上側部322Uの内部に配置されることで、複数の金属端子364がそれぞれ複数の導通部材326に電気的に接続される。なお、複数の導通部材326は、セパレータ325の内部に配置されてセンサ素子12やヒータ31と電気的に接続されている。これにより、複数の金属端子364がセンサ素子12やヒータ31と電気的に接続される。
【0098】
図15の工程Eに示すように、蓋部324は、上部基体部323の上面の一部を覆う上面部324aと、上部基体部323の側面の一部を覆う側面部324bと、を主に備えて構成される。側面部324bは、上部基体部323を挿通可能な大きさの開口部324cを備えている。
【0099】
蓋部324は、上面部324aで貫通孔361aを覆うことで、センサ素子12の後端や、セパレータ325が配置される空間を閉じた空間にするものであり、この空間に水などの侵入を防止するものである。
【0100】
ここで、図14および図15の酸素センサ301の組立工程を示した説明図を参照しながら、酸素センサ301の組立工程の概略を説明する。
まず、図14の工程Aに示すように、センサ素子12、主体金具313、セラミックリング15a、第1滑石リング15b、第2滑石リング15c、スリーブ15d、金属カップ15e、パッキン15f、外部プロテクタ342および内部プロテクタ343、を主に備えて構成される素子アセンブリ311が準備される。
【0101】
この素子アセンブリ311に対して、セパレータ325および複数の導通部材326を収容する支持部材327が組み付けられて、支持部材327と素子アセンブリ311(詳細には、主体金具313)とが溶接により固定される。これにより、複数の導通部材326がセンサ素子12やヒータ31と電気的に接続される。なお、支持部材327は、その内部に筒状部材327aを備えており、弾性変形により筒状部材327aの内径寸法が変化することで、セパレータ325を支持部材327の内部に保持するよう構成されている。
【0102】
次に、図14の工程Bに示すように、支持部材327が固定された素子アセンブリ311に対して、下部基体部322が組み付けられて、下部基体部322と素子アセンブリ311(詳細には、主体金具313)とが溶接により固定される。
【0103】
次に、図14の工程Cに示すように、コネクタ部材362が外側部材361のコネクタ収容部361bに配置されることで、上部基体部323が形成される。
そして、下部基体部322が固定された素子アセンブリ311に対して、上部基体部323が組み付けられる。このとき、Oリング363がOリング配置部361cに配置されることで、下部基体部322と上部基体部323との間にOリング363が配置される。
【0104】
これにより、図14の工程Dに示すように、上部基体部323の一部が下部基体部322の上側部322Uの内部に配置されるとともに、複数の金属端子364がそれぞれ複数の導通部材326に電気的に接続される。
【0105】
次に、図15の工程Eに示すように、下部基体部322が固定されると共に上部基体部323が組み付けられた素子アセンブリ311に対して、蓋部324を組み付ける。このとき、Oリング363がOリング配置部361cに配置されることで、蓋部324と上部基体部323との間にOリング363が配置される。
【0106】
これにより、蓋部324の上面部324aによって貫通孔361aが覆われ、センサ素子12の後端やセパレータ325が配置される空間が閉じた空間となり、この空間に水などの侵入が防止される。また、蓋部324は下部基体部322に組み付けられた後で径方向から加締められて固定される。
【0107】
次に、図15の工程Fに示すように、蓋部324が組み付けられた素子アセンブリ311に対して、取付部材317を組み付ける。このとき、素子アセンブリ311の先端側(図15の下側)に、取付部材317を組み付けた上で、溶接により両者を固定する。
【0108】
これにより、図15の工程Gに示すように、酸素センサ301が完成する。
このように構成される酸素センサ301は、下部基体部322が金属製(ステンレス)の部材であるため、樹脂製の部材に比べて、耐熱性に優れたものとなり高温環境での使用が可能となる。
【0109】
なお、本実施形態においては、センサ素子12が特許請求の範囲におけるセンサ素子の一例に相当し、主体金具313(ハウジング313)がハウジングの一例に相当する。基体部321が基体部の一例に相当し、下部基体部322(第1基体部322)が第1基体部の一例に相当し、上部基体部323(第2基体部323)が第2基体部の一例に相当する。複数の金属端子364が複数の端子の一例に相当し、コネクタ部材362がコネクタ部の一例に相当し、貫通孔361aが貫通孔の一例に相当し、セパレータ325(中継部)および導通部材326が中継部の一例に相当する。
【0110】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0111】
例えば、下部基体部322を金属材料で形成する場合には、その材料はSUS304に限られることはなく、他の金属材料で形成しても良い。耐腐食性や耐熱性に優れた金属材料を用いて下部基体部を形成することで、ガスセンサ(酸素センサ)としての耐腐食性や耐熱性を向上できる。
【符号の説明】
【0112】
1,101,301…酸素センサ(ガスセンサ)、12…センサ素子、13,313…主体金具(ハウジング)、14…外部プロテクタ(ハウジング)、21,321…基体部、22,122,322…下部基体部(第1基体部)、22c…肉盗み部(凹部)、22U…上側部、22L,122L…下側部、23,323…上部基体部(第2基体部)、23a,361a…貫通孔、26…複数の端子、25,325…セパレータ(中継部)、26a…連結部、117…フランジ部、141…第1下部用金型、142…第2下部用金型
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に設けられた流路内を流れるガスに含まれる特定ガス成分の濃度を測定するセンサ素子と、該センサ素子を内部に収納すると共に前記流路内に差し込まれるハウジングと、該ハウジングに取り付けられると共に前記流路の外側に配置される基体部と、
を備えるガスセンサであって、
前記基体部は、
前記基体部における前記ハウジング側の部分である第1基体部と、
前記第1基体部とは別に成形され、前記基体部における前記ハウジングと反対側の部分であり、前記センサ素子と電気的に接続される複数の端子が、前記センサ素子の挿入方向に対して交差する方向に延びて内部に配置されたコネクタ部を有する第2基体部と、
を備えることを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
前記第2基体部は、樹脂で成形されてなること、
を特徴とする請求項1記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記第2基体部には、前記センサ素子および前記複数の端子を電気的に接続する中継部を収納する貫通孔が設けられ、
前記複数の端子は、前記中継部側の端部において連結部により一体に繋がれた状態で、前記中継部側の端部を前記貫通孔の内部に突出させた状態で前記第2基体部と一体に成形され、
その後、前記貫通孔の側面から内部に向かって突出する前記複数の端子における前記連結部を切り落とすことにより、前記複数の端子は前記第2基体部の内部に配置されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記第1基体部には、
前記ハウジング側の部分であって、前記ハウジングが延びる方向に延びる下側部と、
前記第2基体部側の部分であって、前記複数の端子が延びる方向に沿って延びる板状の上側部と、が設けられ、
前記上側部における前記ハウジング側の面には凹部が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のガスセンサ。
【請求項5】
前記ハウジングには、前記ハウジングの外周から径方向外側に向かって延びる板状のフランジ部が、さらに設けられ、
前記第1基体部は、前記フランジ部を割り面とする第1金型および第2金型により、前記ハウジングおよび前記フランジ部と一体に成形されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のガスセンサ。
【請求項1】
内燃機関に設けられた流路内を流れるガスに含まれる特定ガス成分の濃度を測定するセンサ素子と、該センサ素子を内部に収納すると共に前記流路内に差し込まれるハウジングと、該ハウジングに取り付けられると共に前記流路の外側に配置される基体部と、
を備えるガスセンサであって、
前記基体部は、
前記基体部における前記ハウジング側の部分である第1基体部と、
前記第1基体部とは別に成形され、前記基体部における前記ハウジングと反対側の部分であり、前記センサ素子と電気的に接続される複数の端子が、前記センサ素子の挿入方向に対して交差する方向に延びて内部に配置されたコネクタ部を有する第2基体部と、
を備えることを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
前記第2基体部は、樹脂で成形されてなること、
を特徴とする請求項1記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記第2基体部には、前記センサ素子および前記複数の端子を電気的に接続する中継部を収納する貫通孔が設けられ、
前記複数の端子は、前記中継部側の端部において連結部により一体に繋がれた状態で、前記中継部側の端部を前記貫通孔の内部に突出させた状態で前記第2基体部と一体に成形され、
その後、前記貫通孔の側面から内部に向かって突出する前記複数の端子における前記連結部を切り落とすことにより、前記複数の端子は前記第2基体部の内部に配置されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記第1基体部には、
前記ハウジング側の部分であって、前記ハウジングが延びる方向に延びる下側部と、
前記第2基体部側の部分であって、前記複数の端子が延びる方向に沿って延びる板状の上側部と、が設けられ、
前記上側部における前記ハウジング側の面には凹部が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のガスセンサ。
【請求項5】
前記ハウジングには、前記ハウジングの外周から径方向外側に向かって延びる板状のフランジ部が、さらに設けられ、
前記第1基体部は、前記フランジ部を割り面とする第1金型および第2金型により、前記ハウジングおよび前記フランジ部と一体に成形されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のガスセンサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−50442(P2013−50442A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−160882(P2012−160882)
【出願日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】
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