説明

ガス処理装置

【課題】 充填率のばらつきがあっても、除害剤の早期終点に対応する。
【解決手段】 本体2の上端部2bにガス導入口4が設けられ、下端部2cにガス導出口6が設けられている。本体内2に粒子状の除害剤12、14が収容され、ガス導入口4を介して本体2内に導入された除害前ガスに除害剤12、14を通過させて除害後ガスとしてガス導出口6から導出する。本体2内のガス導入口4側に、除害剤12のガス導入口4側の面の全面を覆うように板状体28を設け、その板状体28の特定の領域に、除害前ガスを除害剤12側に通過させるように窓30を形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体製造装置からの排ガスのような有害ガスを無害に処理して排出するガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程において薄膜を形成する手段として化学的気相成長法があり、半導体製造工程において薄膜を除去する手段としてドライエッチングがある。これら工法では、反応炉の中に所定のガスを導入し、そのガスを外部エネルギーにより活性な状態にすることでこれら薄膜加工を行っている。加工に使用された活性なガスは反応生成物として反応炉から排気管へ排出され、また未反応ガスはそのままの状態で反応炉から排気管へ排出される。これら工法に使用するガスには、環境及び人体に有毒なガスが多く、排気管から排出される反応生成物や未反応ガスは有害物である。これらの有害物を大気にそのまま流出させないように、半導体製造装置の後段にガス処理装置、例えば除害装置が設置されている。
【0003】
除害装置には、様々な方式のものが存在するが、乾式のものは、初期投資も少なく、メンテナンスが容易で、更に接地面積も少ないので、一般に広く普及している。乾式の除害装置は、筒状の容器内に吸着剤または反応剤である除害剤を充填し、容器の上部から反応生成物或いは未反応ガスが導入され、除害筒内部で反応生成物や未反応ガスが除害剤と反応を起こし、有害成分を規定濃度以下にして、大気に放出する。除害剤は、粒子状のものが多い。粒子状の除害剤を除害筒内に設置する場合、除害剤の充填密度や充填高さにばらつきが生じることがあり、これらに起因して、反応生成物や未反応ガスが除害剤を通過する際に、除害剤中の抵抗の少ない領域を優先的に通過することで、除害剤内に局所的なガス通路が形成され、そのガス通路付近の除害機能が急激に劣化し、未反応な除害剤の領域が残っているにも拘わらず、早期に除害剤が除害の終点を迎えることになる。
【0004】
この早期の除害の終点に対応するために、例えば特許文献1に開示されているような技術が提案されている。特許文献1の技術では、本体内にガスが流れる流路を形成し、流路の下流側に除害剤を支持する支持板を設けている。支持板は、流路の中央側において上流側に凸となる形状に選択され、この支持板上に上流側の面が、流路の中心軸に対して垂直になるように除害剤を積層している。この技術によれば、除害剤の充填厚みを故意に周辺部だけ厚くして、本体の壁の存在によってこの周辺部では粒子の充填率が一律にならない壁効果によって生じる偏流を低減させようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−272083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の技術では、壁効果による偏流を低減させることはできるが、本体内全体に対する充填率のばらつきや、一律に充填していてもガス処理装置を運搬している間に受ける振動によって発生する充填率のばらつきには対応することができない。
【0007】
本発明は、充填率のばらつきがあっても、除害剤の早期終点に対応することができるガス処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様のガス処理装置は、内部が中空の本体を有し、この本体の一端部にガス導入口が設けられ、他端部にガス導出口が設けられている。この本体内に粒子状の除害剤が収容され、前記ガス導入口を介して前記本体内に導入された除害前ガスを通過させて除害後ガスとして前記ガス導出口から導出する。除害剤は、筒状の本体の長さ方向に直交する面をほぼ埋めた状態で、筒状の本体の長さ方向に所定の長さにわたって収容されることが望ましい。前記本体内の前記ガス導入口側の前記除害剤面の特定の領域に前記除害前ガスを偏流させる偏流手段が設けられている。
【0009】
このように構成されたガス処理装置では、除害剤の特定の領域に除害前ガスを偏流させることができるので、その特定の領域を、ガス通路が形成されにくい除害剤の部分とすることによって、除害剤がほぼ均一に終点を向かえるようにすることができる。
【0010】
前記偏流手段は、前記除害剤の前記ガス導入口側の面の全面を覆うように設けた板状体と、その板状体の特定の領域に、前記除害前ガスを前記除害剤側に通過させるように形成された窓とを、具備するものとすることができる。窓は、1つだけ設けることもできるし、複数設けることもできる。
【0011】
このように偏流手段を構成すると、比較的簡単に偏流手段を作成することができる。
【0012】
更に、前記板状体は、前記本体の前記一端部と前記他端部のそれぞれ中心を繋ぐ中心軸の回りに回転自在に配置することができる。回転自在には、上記中心軸に沿って回転軸を設けることによってもできるし、板状体の周縁部を回転自在に軸受け等によって支持することによってもできる。
【0013】
このように構成することによって、偏流手段の窓の位置を任意に変更することができるので、除害前ガスを除害剤の所望の位置に偏流させることができる。なお、この場合、窓は、上記中心軸から外方に向かって放射状に設けることが望ましい。
【0014】
更に、前記板状体を前記中心軸の回りに回転させる駆動手段を設けることができる。駆動手段は、前記本体の外部に設けた磁力発生手段によって前記板状体を回転させるものとすることもできるし、前記本体の内部に設けた気体圧作動するアクチュエータによって前記板状体を回転させるものとすることもできる。
【0015】
このように構成すると、板状体を回転させることができるので、除害前ガスを除害剤の全域に均一に通過させることができる。更に、上記のような磁力や気体圧による駆動手段を使用すると、電気モータを本体内またはその近辺に配置する必要が無く、電気モータによって発生する火花によるガスの爆発等が生じることがなく、安全性を高めることができる。
【0016】
前記本体内に、前記ガス導入口から前記ガス導出口側へ、複数の前記除害剤が積層されるものとすることができる。この場合、前記除害剤のうち選択されたものの前記ガス導入口側に前記偏流手段が設けられている。全ての除害剤に対して偏流手段を設けることもできるし、1つだけの除害剤に偏流手段を設けることもできるし、複数の除害剤のうち複数であるが全数ではなく除害剤に偏流手段を設けることもできる。
【0017】
このように構成すると、例えば除害前ガスに応じて複数種類の除害剤を設置した場合でも、各除害剤の充填のばらつきにより早期終点が生じやすいものに対して偏流手段を設けることにより、そのような除害剤に対して早期終点が生じることを防止できる。
【0018】
前記除害前ガスは、半導体製造装置の排ガスとすることができる。この場合、半導体製造工程において発生する有害な反応生成物や未反応ガスを安全なガスに変換して、大気中に排出することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、偏流手段を設けたことにより、充填率のばらつきがあっても、除害剤を長期にわたって使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態のガス処理装置の縦断面図である。
【図2】図1のガス処理装置の横断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態のガス処理装置の横断面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態のガス処理装置の縦断面図である。
【図5】本発明の各実施形態で使用する偏流手段の第1の変形例の平面図である。
【図6】本発明の各実施形態で使用する偏流手段の第2の変形例の平面図である。
【図7】本発明の各実施形態で使用する偏流手段の第3の変形例の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の第1の実施形態のガス処理装置は、例えば半導体製造装置から排出される除害前ガス、例えば有害な反応生成物や未反応ガスを、除害後ガスに無害化して排出するもので、いわゆる乾式の除害装置である。
【0022】
このガス処理装置は、図1に示すように本体2を有している。本体2は、内部が空洞の円筒状の胴部2aの上下を上端部2b及び下端部2cによって閉じた構造である。本体2の一端部、例えば上端部2bの中央に、除害前ガスを導入するガス導入口4が形成されている。本体2の他端部、例えば下端部2cの中央に、除害後ガスを導出するガス導出口6を有している。
【0023】
本体2内は、その上下方向に複数段、例えば2段に、上下方向に間隔をおいて配置された仕切板8、10によって仕切られている。仕切板8、10は、その周縁部が胴部2aの内周面に接しており、その内部をガスが通過するように、また、後述する除害剤12、14が通過しないように構成されたパンチメタルまたはメッシュ構造の金属板である。
【0024】
上側の仕切板8から上側に除害剤12が充填され、仕切板8によって支持されている。除害剤12は、仕切板8の全面に位置し、所定の高さまで収容されている。同様に、下側の仕切板10と上側の仕切板8との間の空間全域に除害剤14が充填され、下側の仕切板10によって支持されている。除害剤12、14は、それぞれ異なる種類のものであって、粒子状、例えばビーズ状にそれぞれが構成されている。ビーズ状であるので、除害剤12、14の充填密度や充填高さに、ばらつきが生じることがある。
【0025】
除害剤12の上面と上端部2bとの間には空間16があり、この空間16において、胴部2aの内周面には、除害剤12の上面に接するように円板18が形成されている。この円板18は、その中央に開口20を有し、この開口20の周縁部全域から上方に向かって支持筒22が形成されている。この支持筒22の上端には、ベアリング24を介して偏流手段26の板状体28が、胴部2aの上下方向の中心軸を回転中心として回転自在に支持されている。板状体28は、その外周縁が支持筒22よりも外方に突出している。また、板状体28の下面は、支持筒22の上端よりも下方に位置し、ベアリング24は、板状体28の下面から内側に埋め込まれた状態で形成されている。
【0026】
板状体28には、上下方向に貫通した窓30が形成されている。この窓30は、例えば矩形で、複数、例えば図2に示すように、3つが、胴部2aの中心から放射状に等角度に形成されている。板状体28の周縁部が支持筒22よりも外方に位置し、板状体28の下面は支持筒22よりも下方に位置し、ベアリング24が板状体28の下面に埋め込まれた状態で形成されているので、空間16にガス導入口4を介して導入された除害前ガスは、窓30を介してのみ除害剤12へ到達する。即ち、除害前ガスは、偏流する。
【0027】
板状体28の外周面には、磁界発生体、例えば永久磁石31が設けられている。この永久磁石31は、複数、例えば2個が、所定角度間隔、例えば180度間隔に設けられている。これら永久磁石31と対応する胴部2aの外部に、磁界発生体、例えば永久磁石32が設けられている。この永久磁石32は、永久磁石31との間で吸引力を発生するように構成されており、図示していないが、胴部2aの上下方向の中心軸の回りに回転するように構成されている。この永久磁石31が円板28に対する駆動手段として機能する。この駆動には、本体2内に電気駆動される部品を必要としない。従って、爆発等の問題が生じることがない。
【0028】
なお、下側の仕切板10と本体2の下端部2bとの間にも、空間34が形成されている。
【0029】
このように構成されたガス処理装置では、ガス導入口4から除害前ガスが本体2内に導入されると、除害前ガスは、空間16に供給され、窓30を介してのみ除害剤12に供給される。このとき、永久磁石32を回転させることによって、板状体28を回転させることによって、窓30が除害剤12の上面上を回転していくことになり、除害剤12の全面に満遍なく除害前ガスが供給される。従って、除害剤12の充填率にばらつきがあっても、除害剤12全体を除害前ガスが通過し、特定の領域のみを除害前ガスが通過することなく、除害剤12の特定の位置にガスが流れる流路は形成されず、早期終点が生じることを防止できる。なお、除害剤12を通過した除外前ガスは、仕切板8を介して除害剤14に供給され、ここで更に除害されて、仕切板10から空間34に到達し、除外後ガスとして、ガス導出口6から排出される。
【0030】
第2の実施形態のガス処理装置を図3に示す。この実施形態のガス処理装置は、駆動手段の構成が異なる以外、第1の実施形態と同様に構成されている。第1の実施形態の構成要素と同一部分には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0031】
この実施形態のガス処理装置では、板状体28の外周面に、所定角度ごとに受圧手段、例えば羽根36を有している。これら羽根36は、その受圧面36aが円板28の半径方向に沿うように形成されている。本体2内には、駆動手段としての気体圧発生手段、例えばベローズ38が設けられている。このベローズ38は、板状体28が、胴部2aの上下方向の中心軸の回りに回転する際に、各羽根36が描く軌跡の一カ所において、そのカ所に到達する各羽根36の受圧面36aにエアー駆動によるベローズ38のピストン38aの運動の力を受けるように配置されている。従って、ベローズ38にエアーを供給することによって、ピストン38aが前進し、板状体28が回転する。ベローズ38を使用することによって、本体2内に駆動手段を設けているにも拘わらず、電気部品を使用する必要がない。よって、爆発等の問題が発生することがない。
【0032】
第3の実施形態を図4に示す。この実施形態のガス処理装置は、3種類の除害剤12、14、40(図4ではハッチング省略)が本体2の上下方向に沿って仕切板8、10、42(図4ではハッチング省略)によって支持積層され、各除外剤12、14、40に対して偏流手段を設けたものである。偏流手段の構成は、第1の実施形態のものと同一である。
【0033】
上記の各実施形態では、窓30は矩形のものを3個設けたが、これに限ったものではなく、任意の数とすることもできるし、その角度間隔も任意に変更することができる。例えば図5に示すように矩形の窓30を90度間隔に4個設けることもできる。また、矩形の窓30に限ったものではなく、図6、図7に示すように涙滴型の窓30aを設けることもできる。図6、図7では、180度の間隔に2個の窓30aを示したが、その数は任意に変更できるし、その角度間隔も任意に変更できる。涙滴型の場合、その膨大部を図6に示すように板状体28の外周側に配置することもできるし、図7に示すように中心側に配置することもできる。
【0034】
なお、上記の各実施形態では、偏流手段の板状体26を常時回転させる場合を示したが、これに限ったものではなく、例えば除害前ガスを偏流させる必要のある除害剤の位置が、例えば経験上判明しているような場合には、その位置の上方に窓30が位置するように板状体28を回転させておいて、その状態で板状体28を固定して使用することもできる。このような場合、例えば第1の実施形態の磁石32を手動で移動させるようにすることもできる。
【0035】
第1の実施形態では、本体2内に永久磁石31を設置したが、これに代えて、本体2の永久磁石32によって磁化される被磁化部材を設けることもできる。また、永久磁石32に代えて電磁石を使用することもできる。
【0036】
第2の実施形態では、エアーを使用してベローズを駆動させたが、気体圧を有する気体であれば種々のものを使用することができ、例えば不活性ガスのアルゴンガスや窒素ガスを使用することもできる。
【0037】
第3の実施形態では、複数の除害剤の全てに対して偏流手段を設けたが、各除害剤のうち早期終点が生じやすい除害剤に偏流手段を設けることもできる。例えば上段と下段の除害剤のみに偏流手段を設けることもできるし、上段と中段、中段と下段の除害剤に対してのみ偏流手段を設けることできるし、上段のみ、中段のみ、下段のみの除害剤に対してのみ偏流手段を設けることもできる。
【符号の説明】
【0038】
2 本体部
4 ガス導入口
6 ガス導出口
2b 上端部(一端部)
2c 下端部(他端部)
8 10 仕切板
12 14 除害剤
28 板状体(偏流手段)
30 窓(偏流手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部にガス導入口を有し、他端部にガス導出口を有する内部が中空の本体と、
この本体内に収容され、前記ガス導入口を介して前記本体内に導入された除害前ガスを通過させて除害後ガスとして前記ガス導出口から導出する粒子状の除害剤と、
前記本体内の前記ガス導入口側の前記除害剤面の特定の領域に前記除害前ガスを偏流させる偏流手段とを、
具備するガス処理装置。
【請求項2】
請求項1記載のガス処理装置において、前記偏流手段は、前記除害剤の前記ガス導入口側の面の全面を覆うように設けた板状体と、その板状体の特定の領域に、前記除害前ガスを前記除害剤側に通過させるように形成された窓とを、具備するガス処理装置。
【請求項3】
請求項2記載のガス処理装置において、前記板状体は、前記本体の前記一端部と前記他端部のそれぞれ中心を繋ぐ中心軸の回りに回転自在に配置されているガス処理装置。
【請求項4】
請求項3記載のガス処理装置において、前記板状体を前記中心軸の回りに回転させる駆動手段が設けられているガス処理装置。
【請求項5】
請求項4記載のガス処理装置において、前記駆動手段が、前記本体の外部に設けた磁力発生手段によって前記板状体を回転させるガス処理装置。
【請求項6】
請求項4記載のガス処理装置において、前記駆動手段が、前記本体の内部に設けた気体圧作動するアクチュエータによって前記板状体を回転させるガス処理装置。
【請求項7】
請求項1乃至5いずれか記載のガス処理装置において、前記本体内に、前記ガス導入口から前記ガス導出口側へ、複数の前記除害剤が積層され、前記各除害剤のうち選択されたものの前記ガス導入口側に前記偏流手段が設けられているガス処理装置。
【請求項8】
請求項1乃至7いずれか記載のガス処理装置において、前記除害前ガスは、半導体製造装置の排ガスであるガス処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−67788(P2011−67788A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222481(P2009−222481)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000144393)株式会社三社電機製作所 (95)
【Fターム(参考)】