ガス分析用ガラス試験片、その製造方法、およびそれを用いたガラス中のガス分析方法
【課題】高確率でガラス中の泡を開放することができ、効率のよいガラス中のガス分析が可能となるガス分析用ガラス試験片を提供する。
【解決手段】本発明によるガス分析用ガラス試験片10は、泡3を内包し、泡3を形成するガスを分析するためのガス分析用ガラス試験片であって、泡3の近傍まで、泡3に向かう先端部が断面V字型をなす切り込み2が、少なくとも1つ形成されたガス分析用ガラス試験片である。
【解決手段】本発明によるガス分析用ガラス試験片10は、泡3を内包し、泡3を形成するガスを分析するためのガス分析用ガラス試験片であって、泡3の近傍まで、泡3に向かう先端部が断面V字型をなす切り込み2が、少なくとも1つ形成されたガス分析用ガラス試験片である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス物品に含まれる泡を形成するガスを分析するために用いるガス分析用ガラス試験片、およびその製造方法に関する。さらに、そのガス分析用ガラス試験片を用いたガラス中のガス分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス製品には、その製造過程で生じたガスが泡として残留する場合がある。泡が残留したガラス製品は、その用途や泡の大きさによっては、不良品となる場合がある。このような泡を減らすために、その泡を構成するガスを分析して、その成分を知り、ガラス製造工程における泡の発生原因を特定し、対策を立てることが一般に行われている。
【0003】
このような分析では、ガラス製品から泡を含んだガス分析用ガラス試験片を切り出し、この試験片を破壊して泡中のガスを取り出し、このガスをガスクロマトグラフや質量分析計のような分析装置にて分析する方法が一般的である。
【0004】
このような泡分析方法の例は、Feileらによる文献、特開平9−189647号公報および実用新案登録第2574714号公報で開示されている。
【0005】
Feileらによる文献では、ガラス中の泡分析方法一般について開示されている。
【0006】
また、特開平9−189647号公報および実用新案登録第2574714号公報では、複数の試料置き台を設けた破壊装置に、破壊のための加工を施した試料を設置し、ニードルやスクリュー等を利用して超高真空下で試料を押圧・破壊して、泡中のガスを分析する方法が開示されている。
【非特許文献1】R. Feile, A. Gotz, F. W. Kramer, :“Analysis of the Composition and Structure of Glass and Glass Ceramics”, ed. H. Bach and D. Krause, (Springer-Verlag, 1999) pp.451-460
【特許文献1】特開平9−189647号公報
【特許文献2】実用新案登録第2574714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような分析を行なうための試験片の調製方法が、Feileらによる文献や特開平9−189647号公報にも提示されている。これらによると、ガラス板から泡を含んだガラス片を切り出し、泡ができるだけサンプル表面に近い位置となるように研磨した後、図11に示すように、平面視でH字型状になるように加工し、これをガス分析用試験片とするのが一般的であった。この方法では、H字の横棒に相当する部分に泡103が位置するように、ガラス試料に溝102を切り込んで、H字型状のガラス試験片101としている。試験片の横棒の部分をニードル104で押圧することによって、試験片を破壊し、泡中のガスを開放する。この開放されたガスをガス分析装置に導入することによって、その圧力、組成や量を測定することができる。
【0008】
この場合、ニードル104の押圧によって試験片を容易に破壊する必要がある。試験片が厚すぎると、ニードルの押圧では容易に破壊することができない。さらに、泡中のガスを開放しやすくするために、ガラス試験片101の表面近傍に泡103が位置することが望ましい。
【0009】
ところで、泡の発生する位置は板厚方向で任意なので、ガラス試験片の表面近傍に泡が位置するとは限らない。泡が板厚方向の中央部付近に発生した場合は、ガラス試験片101の表面を研磨する必要がある。この研磨工程は、厚み方向における泡の位置を確認しながら行う必要がある。
【0010】
また、ガス分析装置における超高真空容器は、その大きさに制限のある場合が多い。厚いガラス板の場合、例え、ガラス試験片の表面近傍に泡が位置していたとしても、超高真空容器中へ試験片を挿入するために、試験片の裏面を研磨する必要がある。つまり、従来のH字型状の加工方式では、ガス分析用試験片の加工に多大な時間と手間とを要していた。
【0011】
また、特開平9−189647号公報等に示されたガス分析用試験片では、溝の泡に向かう先端の形状が平坦である。溝を正確に加工したとしても、先端の形状が平坦であるので、試験片を破壊したときに発生する亀裂の開始位置や、亀裂の伸長する方向が定まりにくい。その結果、泡が微小である場合、試料破壊時に、目的の泡の中のガスを開放することができない場合が多くなる。その結果、目的のガス分析ができず、貴重な試料を数多く無駄にしてしまうこともあった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、泡を内包し、泡を形成するガスを分析するためのガス分析用ガラス試験片であって、泡の近傍まで、泡に向かう先端部が断面V字型をなす切り込みが、少なくとも1つ形成されたガス分析用ガラス試験片を提供する。
【0013】
また、本発明は、ガラス試料に含まれる泡を開放して、泡を形成するガスを分析するためのガス分析用ガラス試験片の製造方法であって、ガラス試料に、泡の近傍まで、泡に向かう先端部が断面V字型をなす切り込みを少なくとも1つ形成する工程を含むガス分析用ガラス試験片の製造方法を提供する。
【0014】
さらに、本発明は、本発明による上記ガス分析用ガラス試験片、または本発明による上記方法により得たガス分析用ガラス試験片において、切り込みの先端を起点とする亀裂を泡にまで伸長させ、前記泡を開放して前記泡を形成するガスを取り出し、当該ガスを分析するガラス中のガス分析方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、泡の発生位置や板厚に拘わらず、ガラス試験片の表面を精密に研磨する必要がないので、従来のH字型状加工方式よりもガラス試験片の加工に際して時間と手間とを低減でき、短時間で数多くのガラス試験片を効率よく製造することができる。また、切り込みの泡に向かう断面V字型先端部が、泡の近傍になるように加工したので、V字の先端を起点として亀裂を伸長させることによって、高い確率で泡中のガスを取り出すことができる。したがって、従来技術に比べて、含まれる泡がたとえ小さくても、効率のよいガラス中のガス分析が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以降の説明においては、同一の部材に同一の符号を付して、重複する説明を省略する場合がある。
【0017】
本発明によるガラス試験片の断面形状を図1に示す。図1(a)は、泡3の近傍まで1つの切り込み2を形成したガラス試験片10の断面図である。図1(b)のガラス試験片20のように、2つの切り込み2,2を、泡3を挟んで対向した位置に2つ形成してもよい。ガラス試験片10や20には、泡3が含まれており、泡3の近傍まで、先端部が断面V字型をなす切り込み2が形成されている。
【0018】
第1に、ガラス試験片10の製造方法の一例を、図2および図3A〜図3Eを参照して以下に説明する。
【0019】
まず、泡を含むガラス物品から、分析すべき泡3を含む部分を適当な大きさに切り出して、加工前ガラス試料11を得る。後に精密に加工するので、この段階ではある程度の大きさで加工前ガラス試料11を切り出しておくことが好ましい。この切り出しは、図2(a)に示すように、泡3が加工前ガラス試料11内の片側に寄った位置になるように、行うのが好ましい。これは、後の加工工程での取り扱いやすさや、加工前ガラス試料11を加工装置に固定することを考慮してのことである。
【0020】
次に、図2(b)に示すように、泡3のある位置が把握できるように泡位置マーク6をつけておくことが好ましい。マーキングには、油性インクペンやガラスペン等を使用することができる。
【0021】
例えば、フロート法によるガラス板の製造では、熔融したガラスを一方向に引き延ばし、連続したガラスリボンを適宜切断して行われる。このため、ガラス板中に発生した泡も引き延ばされて、楕円球状となる場合が多い。そこで、ガス分析時に泡を確実に破壊して、ガスの開放の確率を高めるために、泡の長径と直交する方向から亀裂を伸長させることが望ましい。そこで、加工前ガラス試料11の切り出しは、図2(b)のように、泡3の長径方向が加工前ガラス試料11の短辺方向と平行になるようにするのが好ましい。
【0022】
次に、切り出した加工前ガラス試料11を加工する。加工手順の一例を図3A〜図3Eに示す。
【0023】
まず、切り出した加工前ガラス試料11の上方から顕微鏡等を使って泡3の位置を把握する。後の分析のために、この段階で泡3の長径、短径の測長を行なってもよく、また泡3自体の画像を残しておくとよい。その場合には、位置合わせのための観察光学系に、測長機能や写真撮影機能が付いたものを用いるとよい。
【0024】
まず、加工機械に回転テーブルを組み込み、図3Aに示すように、回転テーブル上に位置合わせ用のXYステージ41を設置して、そのステージ上に、加工前ガラス試料11を試料ホルダー42で固定する。回転テーブルの中心43を基準点とし、加工前ガラス試料11中の泡3がこの基準点と一致するように、XYステージ41を動かして調整する。図3Aにおける符号46,47は、それぞれXYステージ41のX線,Y線である。
【0025】
なお、泡3は大きさを持っており、上述した泡3の位置合わせで、これを考慮する場合について、その一例を詳細に説明する。まず、上述の観察光学系の視野中心が、回転テーブルの中心43に一致するようにする。この視野中心に泡3が来るように、上述のXYステージ41を動かして調整する。さらに、観察光学系のピントを泡3の最大の輪郭に合わせ、最終的に、泡3の輪郭とXYステージ41のX線46とが接するように、泡3の位置を微調整するとよい。この位置を基準として、加工前ガラス試料11を所定の寸法に切断したり、先端部が断面V字型をなす切り込みを入れたりするとよい。
【0026】
次に、図3Bに示すように、回転テーブルを時計回りに90度回転させ、固定されたガラス試料11の自由端部において、泡3から所定の距離だけ離れた位置にX線46に平行である第1切断線12を入れて、不要な部分を切り落とす。泡3から第1切断線12の位置までの距離は、泡3の大きさに応じて調整することが好ましい。こうして形成した切断面が基準面となる。
【0027】
次に、図3Cに示すように、回転テーブルを反時計回りに90度回転させ、図3Aの位置関係に戻し、泡3から所定の距離だけ離れた両側に、切断面13側からY線47に平行である第1切り込み線14,14を入れる。
【0028】
さらに、泡3に向かってY線47に沿って第2切り込み線15を入れ、先端部が断面V字型をなす切り込み(以下、「V字型の切り込み」という場合がある)を形成する。ここで、V字型の切り込みは、所定の断面において先端部が実質的にV字の形状をしている切り込みを指す。例えば、V字型の切り込みを繰り返し形成することで切断刃が磨耗し、先端部の形状が丸みを帯びてくる場合がある。この場合でも、切り込みの先端部に応力が集中して、亀裂の発生源とできる形状が保持されている限り、実質的にV字型の形状とみなす。
【0029】
このとき、V字型の切り込みの先端が、泡から所定の距離だけ離れた位置になるようにする。V字型の切り込み先端と泡との距離は、泡の大きさに応じて調整することが好ましい。なお、ここでいう距離とは、V字型の切り込み先端と泡との最短距離のことである。
【0030】
最後に、図3Dに示すように、回転テーブルを時計回りに90度回転させる。先端部が断面V字型をなす切り込み2が形成されたガラス試料16に、X線46に平行である第2切断線17を入れて、図3Eに示したガス分析用ガラス試験片10を得る。このとき、第2切断線17を入れる位置は、切断面13側からXYステージ41に向かって所定の距離だけ離れた位置とする。切断面13から第2切断線17までの距離は、泡3の大きさに応じて調整することが好ましい。このとき、ガラス試験片10となる加工後ガラス試料を完全に切り落としてしまってもよい。しかし、取り扱いやすさを考えて一部分が付いた状態で残しておき、分析装置に設置する直前に折り取ってガラス試験片10を得る方法をとってもよい。なお、この方法によると、ガラス試験片10には角(つの)が残ることがあるが、角が残った形状も、全体として直方体である限り、本明細書においては、実質的に直方体とみなす。得られたガラス試験片10の断面図を図4に示す。
【0031】
第2に、図1(b)に示したガラス試験片20の製造方法の一例を、図2や図5、図6を参照して以下に説明する。上述した図2と同様に、まず、泡3を含むガラス物品から、分析すべき泡3を含む部分を適当な大きさに切り出して加工前ガラス試料21を得る(図5参照)。なお、このガラス試験片20を製造する場合、図1(a)に示したガラス試験片10の製造の場合とは異なり、泡3の短径方向が加工前ガラス試料21の短辺方向と平行になるようにするのが好ましい。
【0032】
加工前ガラス試料21の固定については、この場合、回転テーブルの中心を基準点とし、加工前ガラス試料21中の泡3の中心がこの基準点と一致するようにするとよい。まず、第1切断線22にて、基準となる切断面を形成する。さらに、適宜、位置合わせと回転テーブルの回転とを行いながら、図5に示した第1切り込み線24,24、第2切り込み線25,25を入れる。最後に第2切断線27を入れて、図6に示すガラス試験片20を得る。なお、第1切り込み線24と第2切り込み線25とは、その形成順序を問わない。
【0033】
図6に示すように、ガラス試験片20では、泡3が試験片のほぼ中央に位置し、泡3を挟んで対向するようにV字型の切り込み2,2を形成している。
【0034】
また、図4と図6における、V字型の切り込み2の先端と該先端に最も近い泡3の内壁との距離f1,f2は、0.01〜1mmとすることが好ましい。これは、V字型の切り込み2の先端から伸長する亀裂を確実に泡3に到達させることと、V字型の切り込み2を形成した後のガラス試験片10や20の強度や取り扱いやすさとを、考慮してのことである。
【0035】
その後の作業を正確かつ容易に行うことを考慮すると、ガラス試験片10や20の外形は、実質的に直方体または円柱であることが好ましい。なお、試験片の外形を円柱に切り出すためには、ガラス用のコアドリルなどを用いるとよい。
【0036】
上記加工工程には、位置合わせ等を行うことができる観察光学系や回転テーブルを備えたスライサー、ダイシングソーなどを用いることができる。
【0037】
なお、加工工程は上記の順に限られない。例えば、図3Aに示す工程の前に、V字型の切り込み2を形成してもよい。つまり、加工前ガラス試料11を所定形状に切断する前に、V字型の切り込み2を形成してもよい。
【0038】
次に、上記工程で得たガラス試験片10から泡3中のガスを開放し、当該ガスを分析する方法の例を図7および図8を参照して説明する。
【0039】
まず、図7(a)に示すように、上記工程で得たガラス試験片10の一部P1を治具51に片持ち式で固定する。このとき、治具51がガラス試験片10の泡3を含む部位を保持しないように、ガラス試験片10の一部P1を固定する。治具51は、ガラス試験片10を片持ち式に保持できる限りにおいては、材質・形状等を限定されない。
【0040】
ガラス物品中の残存泡の分析を、ガスクロマトグラフや質量分析計のような分析装置を用いて行なう場合、通常、治具51は超高真空に保持可能な容器内に設置されている。ガラス試験片10の一部P1を治具51に片持ち式で固定した後、容器内を超高真空にする。
【0041】
この状態で、治具51で固定した一部P1の反対側の一部P2の上面を、押し込み棒52でV字型の切り込み2が入っている方向に押圧する。そうすると、V字型の切り込み2の先端部に応力が集中し、先端を起点として亀裂53が伸長し、この亀裂53が泡3に到達する。これによって、泡3中のガスが開放される。このときのガラス試験片10の断面図を図7(b)に示す。図に示したように、ガラス試験片10は、V字型の切り込み2の先端を起点として完全に破断されてもよい。
【0042】
泡を開放するためには、上記のように、ガラス試験片の切り込みを挟んだ2つの部分をそれぞれP1、P2としたときに、P1を固定して、P2に荷重を加え、V字型の切り込み先端を起点として亀裂を伸長させるとよい。
【0043】
図8に示すように、治具や押し込み棒を持つようなガラス試験片破断装置を内包した真空容器31とガス分析装置32を接続しておき、真空ポンプ33で真空容器31内を超高真空にした状態で泡中のガスを開放すると、開放されたガスがガス分析装置32に送り込まれ、その組成や含有量を分析することができる。図7(a)の例では1つの治具に1つのガラス試験片10を固定した例を示したが、あらかじめ複数のガラス試験片を固定でき、ガラス試験片を自動交換しながら、順番に破断できるような治具を使用することも可能である。
【0044】
ガラス試験片の破断によって新たに生成される表面は、物理的・化学的に活性を帯びている。そのため、泡内から開放されたガスが、ガラス試験片の新たに生成された表面に吸着して、分析結果に影響を及ぼす場合がある。したがって、破断によって新たに生成されるガラス試験片の表面の面積は、できるだけ小さい方がよい。
【0045】
従来のH字加工では、分析しようとする泡径が0.1〜0.2mm以下になってくると、泡中のガスを開放できる確率が極端に落ちていた。実際に、H字型加工方式で20個の泡(泡径は0.1〜0.4mmに分布)の分析を試みたところ、うち10個が失敗に終わったという例もある。これはH字の溝の角の部分が亀裂の起点となり、発生した亀裂が泡とは全く関係のない方向へ伸長したためである。このことからも、意図する場所に亀裂を発生させ、伸長させるためには、応力が集中する部分を意図的に作るV字型の切り込みが好ましい。
【0046】
実際に、V字型の切り込みを形成したガラス試験片を片持ち式に固定し、保持側とV字型の切り込みを挟んで反対側に、荷重を加えて破断させた断面を写真撮影し、亀裂の伸長角度を測定した。図9にその概念図を示す。図9は、V字型の切り込み2の先端部が断面V字型をなし、V字型の切り込み2の先端Pと泡3との最短距離fが現れるように設定した断面を表している。
【0047】
図9において、a1,a2はそれぞれ、V字型の切り込み2の先端Pから泡3に引いた2本の第1接線,第2接線である。b1は、発生する亀裂の伸長方向を示す亀裂伸長線である。cは、V字型のなす角の2等分線を、泡3の方向に延長した線である。
【0048】
ここで、第1接線a1と第2接線a2のなす角を角度A1とする。また、線cを対称軸とする、亀裂伸長線b1の対象線をb2とし、亀裂伸長線b1と対象線b2のなす角を、角度B1とする。角度B1は、亀裂伸長線b1と線cとなす角度の2倍の角度であり、亀裂が伸長する可能性のある範囲を表すものである。
【0049】
また、角度A2は、第1接線a1と線cとのなす角であり、角度A3は、第2接線a2と線cとのなす角である。角度B2は、亀裂伸長線b1と線cとのなす角であり、角度B3は、亀裂伸長線b1の対象線b2と線cとのなす角である。
【0050】
ここで、角度A1を角度B1以上(A1≧B1)となるようにすれば、亀裂が伸長する可能性のある範囲内に、必ず泡3が存在することになる。この角度A1は、V字型の切り込み先端Pと泡3との最短距離fによって決まる。適切な角度A1を定めるためには、亀裂の伸長角度である角度B2の分散度合いを知る必要がある。
【0051】
そこで、実際に77個のサンプルを破断し、角度B2の分布を測定した。その結果を表1に示す。
【0052】
(表1)
―――――――――――――――――――――――――――
亀裂の伸長角度B2 個数 比率(%)
0°以上 5°未満 29 37.7
5°以上10°未満 27 35.1
10°以上15°未満 9 11.7
15°以上20°未満 7 9.1
20°以上25°未満 3 3.9
25°以上30°未満 2 2.6
―――――――――――――――――――――――――――
合 計 77 100.0
―――――――――――――――――――――――――――
【0053】
表1から分かるように、すべてのサンプルにおいて、亀裂の伸長角度の範囲が30°未満となった。この結果から、角度A2,A3がともに30°以上であれば、100%の確率で泡3中のガスを開放できることになる。したがって、角度A2,A3がともに30°以上となるようにV字型の切り込み2を形成することが好ましい。
【0054】
なお、以上の検討から、切り込みの中心線(V字型のなす角の2等分線を、泡の方向に延長した線c)上に泡の中心が存在していると、好ましいことが分かる。加工に際しては、図3Aの説明で詳しく述べたように、泡の位置を回転テーブルの中心に一致させることが重要である。
【0055】
ここで、図10に種々の泡径(図9のg)に対する、V字型の切り込み先端Pと泡3との最短距離(図9のf)と角度A1との関係を示す。なお、泡3は球状と仮定した。A1=A2+A3である。図10より、V字型の切り込み先端Pと泡3との最短距離fを50μmに設定すれば、泡径gが100μm以上の泡は、ほぼ100%の確率で泡中のガスを開放できることが分かる。同様に、fを100μmにすれば、泡径gが200μm以上の泡は、ほぼ100%の確率で泡中のガスを開放できることが分かる。
【0056】
さらに、最短距離fは、泡3の大きさgと角度A1との関係から導き出される泡中のガスを開放できる確率と、ガラス試験片における加工の容易さと取り扱いやすさとを勘案して決めるとよい。通常の精度を有するスライサーやダイシングソーであれば、最短距離fは容易に100μm程度とすることができる。
【0057】
最短距離fについて、泡3中のガスを開放できる確率からいうと、対象とする泡3の大きさによって異なるが、500μm以下が好ましく、240μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましく、50μm以下とするのが最も好ましい。試験片における加工の容易さと取り扱いやすさからいうと、10μm以上が必要であり、20μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい。
【0058】
上述の内容は、泡3を球状と仮定している。実際の泡は、上述のように引き延ばされている場合が多い。泡の大きさにもよるが、V字型の切り込み2を泡3の長径と直交するように形成すれば、最短距離fが500μmを超えるような場合でも、良好なガスの開放確率を確保することができる。
【0059】
このように、取扱い等を考慮しながら、最短距離をできるだけ小さくすることによって、本発明では、従来のH字型の加工と比較して大きく泡の分析効率を上げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明により、ガラス物品中の泡のガス分析用ガラス試験片を、効率よく製造することが可能となる。また前記ガラス試験片を用いて泡中のガスを分析する際、高確率で泡中のガスを取り出すことができるので、貴重な試料を有効に利用することができ、得られたデータを解析することで、ガラス物品の泡品質向上に役立てることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明によるガス分析用ガラス試験片の断面図である。
【図2】加工前ガラス試料の斜視図および上面図である。
【図3A】加工前ガラス試料の加工方法の一例における最初の工程を示す図である。
【図3B】図3Aに続く工程を示す図である。
【図3C】図3Bに続く工程を示す図である。
【図3D】図3Cに続く工程を示す図である。
【図3E】図3A〜図3Dの工程を経て得られたガラス試験片を示す図である。
【図4】V字型の切り込みが1つのみ形成されたガラス試験片の断面図である。
【図5】ガラス試験片にV字型の切り込みを2つ形成する工程を説明する概念図である。
【図6】V字型の切り込みが、泡を挟んで対向した位置に2つ形成されたガラス試験片の断面図である。
【図7】ガラス試験片の破断方法の一例を示す図である。
【図8】ガス分析方法を示す図である。
【図9】V字型の切り込みと泡の幾何学的な配置と、亀裂の伸長角度の範囲との関係を説明する概念図である。
【図10】種々の泡の直径gに対する、最短距離fと角度A1との関係を示した図である。
【図11】従来のガス分析用ガラス試験片の形状(H字型状)を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
10:V字型の切り込みが一つのみ形成されたガス分析用ガラス試験片
11:加工前ガラス試料
12:第1切断線
13:切断面
14:第1切り込み線
15:第2切り込み線
16:加工中のガラス試料
17:第2切断線
20:V字型の切り込みが2つ形成されたガス分析用ガラス試験片
21:加工前ガラス試料
22:第1切断線
24:第1切り込み線
25:第2切り込み線
27:第2切断線
2:V字型の切り込み
3:泡
6:泡位置マーク
31:真空容器
32:ガス分析装置
33:真空ポンプ
41:XYステージ
42:試料ホルダー
43:回転ステージ中心
46:XYステージのX線
47:XYステージのY線
51:ガラス試験片固定治具
52:押し込み棒
53:亀裂
101:従来のガラス試験片
102:切り込み
103:泡
104:ニードル
a1:V字型の切り込みの先端から泡に引いた第1接線
a2:V字型の切り込みの先端から泡に引いた第2接線
b1:亀裂伸長線
b2:亀裂伸長線の対象線
c:V字型のなす角の二等分線を泡の方向に延長した線
f,f1,f2:切り込みの先端と泡との最短距離
g:泡径
P:V字型の切り込みの先端
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス物品に含まれる泡を形成するガスを分析するために用いるガス分析用ガラス試験片、およびその製造方法に関する。さらに、そのガス分析用ガラス試験片を用いたガラス中のガス分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス製品には、その製造過程で生じたガスが泡として残留する場合がある。泡が残留したガラス製品は、その用途や泡の大きさによっては、不良品となる場合がある。このような泡を減らすために、その泡を構成するガスを分析して、その成分を知り、ガラス製造工程における泡の発生原因を特定し、対策を立てることが一般に行われている。
【0003】
このような分析では、ガラス製品から泡を含んだガス分析用ガラス試験片を切り出し、この試験片を破壊して泡中のガスを取り出し、このガスをガスクロマトグラフや質量分析計のような分析装置にて分析する方法が一般的である。
【0004】
このような泡分析方法の例は、Feileらによる文献、特開平9−189647号公報および実用新案登録第2574714号公報で開示されている。
【0005】
Feileらによる文献では、ガラス中の泡分析方法一般について開示されている。
【0006】
また、特開平9−189647号公報および実用新案登録第2574714号公報では、複数の試料置き台を設けた破壊装置に、破壊のための加工を施した試料を設置し、ニードルやスクリュー等を利用して超高真空下で試料を押圧・破壊して、泡中のガスを分析する方法が開示されている。
【非特許文献1】R. Feile, A. Gotz, F. W. Kramer, :“Analysis of the Composition and Structure of Glass and Glass Ceramics”, ed. H. Bach and D. Krause, (Springer-Verlag, 1999) pp.451-460
【特許文献1】特開平9−189647号公報
【特許文献2】実用新案登録第2574714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような分析を行なうための試験片の調製方法が、Feileらによる文献や特開平9−189647号公報にも提示されている。これらによると、ガラス板から泡を含んだガラス片を切り出し、泡ができるだけサンプル表面に近い位置となるように研磨した後、図11に示すように、平面視でH字型状になるように加工し、これをガス分析用試験片とするのが一般的であった。この方法では、H字の横棒に相当する部分に泡103が位置するように、ガラス試料に溝102を切り込んで、H字型状のガラス試験片101としている。試験片の横棒の部分をニードル104で押圧することによって、試験片を破壊し、泡中のガスを開放する。この開放されたガスをガス分析装置に導入することによって、その圧力、組成や量を測定することができる。
【0008】
この場合、ニードル104の押圧によって試験片を容易に破壊する必要がある。試験片が厚すぎると、ニードルの押圧では容易に破壊することができない。さらに、泡中のガスを開放しやすくするために、ガラス試験片101の表面近傍に泡103が位置することが望ましい。
【0009】
ところで、泡の発生する位置は板厚方向で任意なので、ガラス試験片の表面近傍に泡が位置するとは限らない。泡が板厚方向の中央部付近に発生した場合は、ガラス試験片101の表面を研磨する必要がある。この研磨工程は、厚み方向における泡の位置を確認しながら行う必要がある。
【0010】
また、ガス分析装置における超高真空容器は、その大きさに制限のある場合が多い。厚いガラス板の場合、例え、ガラス試験片の表面近傍に泡が位置していたとしても、超高真空容器中へ試験片を挿入するために、試験片の裏面を研磨する必要がある。つまり、従来のH字型状の加工方式では、ガス分析用試験片の加工に多大な時間と手間とを要していた。
【0011】
また、特開平9−189647号公報等に示されたガス分析用試験片では、溝の泡に向かう先端の形状が平坦である。溝を正確に加工したとしても、先端の形状が平坦であるので、試験片を破壊したときに発生する亀裂の開始位置や、亀裂の伸長する方向が定まりにくい。その結果、泡が微小である場合、試料破壊時に、目的の泡の中のガスを開放することができない場合が多くなる。その結果、目的のガス分析ができず、貴重な試料を数多く無駄にしてしまうこともあった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、泡を内包し、泡を形成するガスを分析するためのガス分析用ガラス試験片であって、泡の近傍まで、泡に向かう先端部が断面V字型をなす切り込みが、少なくとも1つ形成されたガス分析用ガラス試験片を提供する。
【0013】
また、本発明は、ガラス試料に含まれる泡を開放して、泡を形成するガスを分析するためのガス分析用ガラス試験片の製造方法であって、ガラス試料に、泡の近傍まで、泡に向かう先端部が断面V字型をなす切り込みを少なくとも1つ形成する工程を含むガス分析用ガラス試験片の製造方法を提供する。
【0014】
さらに、本発明は、本発明による上記ガス分析用ガラス試験片、または本発明による上記方法により得たガス分析用ガラス試験片において、切り込みの先端を起点とする亀裂を泡にまで伸長させ、前記泡を開放して前記泡を形成するガスを取り出し、当該ガスを分析するガラス中のガス分析方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、泡の発生位置や板厚に拘わらず、ガラス試験片の表面を精密に研磨する必要がないので、従来のH字型状加工方式よりもガラス試験片の加工に際して時間と手間とを低減でき、短時間で数多くのガラス試験片を効率よく製造することができる。また、切り込みの泡に向かう断面V字型先端部が、泡の近傍になるように加工したので、V字の先端を起点として亀裂を伸長させることによって、高い確率で泡中のガスを取り出すことができる。したがって、従来技術に比べて、含まれる泡がたとえ小さくても、効率のよいガラス中のガス分析が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以降の説明においては、同一の部材に同一の符号を付して、重複する説明を省略する場合がある。
【0017】
本発明によるガラス試験片の断面形状を図1に示す。図1(a)は、泡3の近傍まで1つの切り込み2を形成したガラス試験片10の断面図である。図1(b)のガラス試験片20のように、2つの切り込み2,2を、泡3を挟んで対向した位置に2つ形成してもよい。ガラス試験片10や20には、泡3が含まれており、泡3の近傍まで、先端部が断面V字型をなす切り込み2が形成されている。
【0018】
第1に、ガラス試験片10の製造方法の一例を、図2および図3A〜図3Eを参照して以下に説明する。
【0019】
まず、泡を含むガラス物品から、分析すべき泡3を含む部分を適当な大きさに切り出して、加工前ガラス試料11を得る。後に精密に加工するので、この段階ではある程度の大きさで加工前ガラス試料11を切り出しておくことが好ましい。この切り出しは、図2(a)に示すように、泡3が加工前ガラス試料11内の片側に寄った位置になるように、行うのが好ましい。これは、後の加工工程での取り扱いやすさや、加工前ガラス試料11を加工装置に固定することを考慮してのことである。
【0020】
次に、図2(b)に示すように、泡3のある位置が把握できるように泡位置マーク6をつけておくことが好ましい。マーキングには、油性インクペンやガラスペン等を使用することができる。
【0021】
例えば、フロート法によるガラス板の製造では、熔融したガラスを一方向に引き延ばし、連続したガラスリボンを適宜切断して行われる。このため、ガラス板中に発生した泡も引き延ばされて、楕円球状となる場合が多い。そこで、ガス分析時に泡を確実に破壊して、ガスの開放の確率を高めるために、泡の長径と直交する方向から亀裂を伸長させることが望ましい。そこで、加工前ガラス試料11の切り出しは、図2(b)のように、泡3の長径方向が加工前ガラス試料11の短辺方向と平行になるようにするのが好ましい。
【0022】
次に、切り出した加工前ガラス試料11を加工する。加工手順の一例を図3A〜図3Eに示す。
【0023】
まず、切り出した加工前ガラス試料11の上方から顕微鏡等を使って泡3の位置を把握する。後の分析のために、この段階で泡3の長径、短径の測長を行なってもよく、また泡3自体の画像を残しておくとよい。その場合には、位置合わせのための観察光学系に、測長機能や写真撮影機能が付いたものを用いるとよい。
【0024】
まず、加工機械に回転テーブルを組み込み、図3Aに示すように、回転テーブル上に位置合わせ用のXYステージ41を設置して、そのステージ上に、加工前ガラス試料11を試料ホルダー42で固定する。回転テーブルの中心43を基準点とし、加工前ガラス試料11中の泡3がこの基準点と一致するように、XYステージ41を動かして調整する。図3Aにおける符号46,47は、それぞれXYステージ41のX線,Y線である。
【0025】
なお、泡3は大きさを持っており、上述した泡3の位置合わせで、これを考慮する場合について、その一例を詳細に説明する。まず、上述の観察光学系の視野中心が、回転テーブルの中心43に一致するようにする。この視野中心に泡3が来るように、上述のXYステージ41を動かして調整する。さらに、観察光学系のピントを泡3の最大の輪郭に合わせ、最終的に、泡3の輪郭とXYステージ41のX線46とが接するように、泡3の位置を微調整するとよい。この位置を基準として、加工前ガラス試料11を所定の寸法に切断したり、先端部が断面V字型をなす切り込みを入れたりするとよい。
【0026】
次に、図3Bに示すように、回転テーブルを時計回りに90度回転させ、固定されたガラス試料11の自由端部において、泡3から所定の距離だけ離れた位置にX線46に平行である第1切断線12を入れて、不要な部分を切り落とす。泡3から第1切断線12の位置までの距離は、泡3の大きさに応じて調整することが好ましい。こうして形成した切断面が基準面となる。
【0027】
次に、図3Cに示すように、回転テーブルを反時計回りに90度回転させ、図3Aの位置関係に戻し、泡3から所定の距離だけ離れた両側に、切断面13側からY線47に平行である第1切り込み線14,14を入れる。
【0028】
さらに、泡3に向かってY線47に沿って第2切り込み線15を入れ、先端部が断面V字型をなす切り込み(以下、「V字型の切り込み」という場合がある)を形成する。ここで、V字型の切り込みは、所定の断面において先端部が実質的にV字の形状をしている切り込みを指す。例えば、V字型の切り込みを繰り返し形成することで切断刃が磨耗し、先端部の形状が丸みを帯びてくる場合がある。この場合でも、切り込みの先端部に応力が集中して、亀裂の発生源とできる形状が保持されている限り、実質的にV字型の形状とみなす。
【0029】
このとき、V字型の切り込みの先端が、泡から所定の距離だけ離れた位置になるようにする。V字型の切り込み先端と泡との距離は、泡の大きさに応じて調整することが好ましい。なお、ここでいう距離とは、V字型の切り込み先端と泡との最短距離のことである。
【0030】
最後に、図3Dに示すように、回転テーブルを時計回りに90度回転させる。先端部が断面V字型をなす切り込み2が形成されたガラス試料16に、X線46に平行である第2切断線17を入れて、図3Eに示したガス分析用ガラス試験片10を得る。このとき、第2切断線17を入れる位置は、切断面13側からXYステージ41に向かって所定の距離だけ離れた位置とする。切断面13から第2切断線17までの距離は、泡3の大きさに応じて調整することが好ましい。このとき、ガラス試験片10となる加工後ガラス試料を完全に切り落としてしまってもよい。しかし、取り扱いやすさを考えて一部分が付いた状態で残しておき、分析装置に設置する直前に折り取ってガラス試験片10を得る方法をとってもよい。なお、この方法によると、ガラス試験片10には角(つの)が残ることがあるが、角が残った形状も、全体として直方体である限り、本明細書においては、実質的に直方体とみなす。得られたガラス試験片10の断面図を図4に示す。
【0031】
第2に、図1(b)に示したガラス試験片20の製造方法の一例を、図2や図5、図6を参照して以下に説明する。上述した図2と同様に、まず、泡3を含むガラス物品から、分析すべき泡3を含む部分を適当な大きさに切り出して加工前ガラス試料21を得る(図5参照)。なお、このガラス試験片20を製造する場合、図1(a)に示したガラス試験片10の製造の場合とは異なり、泡3の短径方向が加工前ガラス試料21の短辺方向と平行になるようにするのが好ましい。
【0032】
加工前ガラス試料21の固定については、この場合、回転テーブルの中心を基準点とし、加工前ガラス試料21中の泡3の中心がこの基準点と一致するようにするとよい。まず、第1切断線22にて、基準となる切断面を形成する。さらに、適宜、位置合わせと回転テーブルの回転とを行いながら、図5に示した第1切り込み線24,24、第2切り込み線25,25を入れる。最後に第2切断線27を入れて、図6に示すガラス試験片20を得る。なお、第1切り込み線24と第2切り込み線25とは、その形成順序を問わない。
【0033】
図6に示すように、ガラス試験片20では、泡3が試験片のほぼ中央に位置し、泡3を挟んで対向するようにV字型の切り込み2,2を形成している。
【0034】
また、図4と図6における、V字型の切り込み2の先端と該先端に最も近い泡3の内壁との距離f1,f2は、0.01〜1mmとすることが好ましい。これは、V字型の切り込み2の先端から伸長する亀裂を確実に泡3に到達させることと、V字型の切り込み2を形成した後のガラス試験片10や20の強度や取り扱いやすさとを、考慮してのことである。
【0035】
その後の作業を正確かつ容易に行うことを考慮すると、ガラス試験片10や20の外形は、実質的に直方体または円柱であることが好ましい。なお、試験片の外形を円柱に切り出すためには、ガラス用のコアドリルなどを用いるとよい。
【0036】
上記加工工程には、位置合わせ等を行うことができる観察光学系や回転テーブルを備えたスライサー、ダイシングソーなどを用いることができる。
【0037】
なお、加工工程は上記の順に限られない。例えば、図3Aに示す工程の前に、V字型の切り込み2を形成してもよい。つまり、加工前ガラス試料11を所定形状に切断する前に、V字型の切り込み2を形成してもよい。
【0038】
次に、上記工程で得たガラス試験片10から泡3中のガスを開放し、当該ガスを分析する方法の例を図7および図8を参照して説明する。
【0039】
まず、図7(a)に示すように、上記工程で得たガラス試験片10の一部P1を治具51に片持ち式で固定する。このとき、治具51がガラス試験片10の泡3を含む部位を保持しないように、ガラス試験片10の一部P1を固定する。治具51は、ガラス試験片10を片持ち式に保持できる限りにおいては、材質・形状等を限定されない。
【0040】
ガラス物品中の残存泡の分析を、ガスクロマトグラフや質量分析計のような分析装置を用いて行なう場合、通常、治具51は超高真空に保持可能な容器内に設置されている。ガラス試験片10の一部P1を治具51に片持ち式で固定した後、容器内を超高真空にする。
【0041】
この状態で、治具51で固定した一部P1の反対側の一部P2の上面を、押し込み棒52でV字型の切り込み2が入っている方向に押圧する。そうすると、V字型の切り込み2の先端部に応力が集中し、先端を起点として亀裂53が伸長し、この亀裂53が泡3に到達する。これによって、泡3中のガスが開放される。このときのガラス試験片10の断面図を図7(b)に示す。図に示したように、ガラス試験片10は、V字型の切り込み2の先端を起点として完全に破断されてもよい。
【0042】
泡を開放するためには、上記のように、ガラス試験片の切り込みを挟んだ2つの部分をそれぞれP1、P2としたときに、P1を固定して、P2に荷重を加え、V字型の切り込み先端を起点として亀裂を伸長させるとよい。
【0043】
図8に示すように、治具や押し込み棒を持つようなガラス試験片破断装置を内包した真空容器31とガス分析装置32を接続しておき、真空ポンプ33で真空容器31内を超高真空にした状態で泡中のガスを開放すると、開放されたガスがガス分析装置32に送り込まれ、その組成や含有量を分析することができる。図7(a)の例では1つの治具に1つのガラス試験片10を固定した例を示したが、あらかじめ複数のガラス試験片を固定でき、ガラス試験片を自動交換しながら、順番に破断できるような治具を使用することも可能である。
【0044】
ガラス試験片の破断によって新たに生成される表面は、物理的・化学的に活性を帯びている。そのため、泡内から開放されたガスが、ガラス試験片の新たに生成された表面に吸着して、分析結果に影響を及ぼす場合がある。したがって、破断によって新たに生成されるガラス試験片の表面の面積は、できるだけ小さい方がよい。
【0045】
従来のH字加工では、分析しようとする泡径が0.1〜0.2mm以下になってくると、泡中のガスを開放できる確率が極端に落ちていた。実際に、H字型加工方式で20個の泡(泡径は0.1〜0.4mmに分布)の分析を試みたところ、うち10個が失敗に終わったという例もある。これはH字の溝の角の部分が亀裂の起点となり、発生した亀裂が泡とは全く関係のない方向へ伸長したためである。このことからも、意図する場所に亀裂を発生させ、伸長させるためには、応力が集中する部分を意図的に作るV字型の切り込みが好ましい。
【0046】
実際に、V字型の切り込みを形成したガラス試験片を片持ち式に固定し、保持側とV字型の切り込みを挟んで反対側に、荷重を加えて破断させた断面を写真撮影し、亀裂の伸長角度を測定した。図9にその概念図を示す。図9は、V字型の切り込み2の先端部が断面V字型をなし、V字型の切り込み2の先端Pと泡3との最短距離fが現れるように設定した断面を表している。
【0047】
図9において、a1,a2はそれぞれ、V字型の切り込み2の先端Pから泡3に引いた2本の第1接線,第2接線である。b1は、発生する亀裂の伸長方向を示す亀裂伸長線である。cは、V字型のなす角の2等分線を、泡3の方向に延長した線である。
【0048】
ここで、第1接線a1と第2接線a2のなす角を角度A1とする。また、線cを対称軸とする、亀裂伸長線b1の対象線をb2とし、亀裂伸長線b1と対象線b2のなす角を、角度B1とする。角度B1は、亀裂伸長線b1と線cとなす角度の2倍の角度であり、亀裂が伸長する可能性のある範囲を表すものである。
【0049】
また、角度A2は、第1接線a1と線cとのなす角であり、角度A3は、第2接線a2と線cとのなす角である。角度B2は、亀裂伸長線b1と線cとのなす角であり、角度B3は、亀裂伸長線b1の対象線b2と線cとのなす角である。
【0050】
ここで、角度A1を角度B1以上(A1≧B1)となるようにすれば、亀裂が伸長する可能性のある範囲内に、必ず泡3が存在することになる。この角度A1は、V字型の切り込み先端Pと泡3との最短距離fによって決まる。適切な角度A1を定めるためには、亀裂の伸長角度である角度B2の分散度合いを知る必要がある。
【0051】
そこで、実際に77個のサンプルを破断し、角度B2の分布を測定した。その結果を表1に示す。
【0052】
(表1)
―――――――――――――――――――――――――――
亀裂の伸長角度B2 個数 比率(%)
0°以上 5°未満 29 37.7
5°以上10°未満 27 35.1
10°以上15°未満 9 11.7
15°以上20°未満 7 9.1
20°以上25°未満 3 3.9
25°以上30°未満 2 2.6
―――――――――――――――――――――――――――
合 計 77 100.0
―――――――――――――――――――――――――――
【0053】
表1から分かるように、すべてのサンプルにおいて、亀裂の伸長角度の範囲が30°未満となった。この結果から、角度A2,A3がともに30°以上であれば、100%の確率で泡3中のガスを開放できることになる。したがって、角度A2,A3がともに30°以上となるようにV字型の切り込み2を形成することが好ましい。
【0054】
なお、以上の検討から、切り込みの中心線(V字型のなす角の2等分線を、泡の方向に延長した線c)上に泡の中心が存在していると、好ましいことが分かる。加工に際しては、図3Aの説明で詳しく述べたように、泡の位置を回転テーブルの中心に一致させることが重要である。
【0055】
ここで、図10に種々の泡径(図9のg)に対する、V字型の切り込み先端Pと泡3との最短距離(図9のf)と角度A1との関係を示す。なお、泡3は球状と仮定した。A1=A2+A3である。図10より、V字型の切り込み先端Pと泡3との最短距離fを50μmに設定すれば、泡径gが100μm以上の泡は、ほぼ100%の確率で泡中のガスを開放できることが分かる。同様に、fを100μmにすれば、泡径gが200μm以上の泡は、ほぼ100%の確率で泡中のガスを開放できることが分かる。
【0056】
さらに、最短距離fは、泡3の大きさgと角度A1との関係から導き出される泡中のガスを開放できる確率と、ガラス試験片における加工の容易さと取り扱いやすさとを勘案して決めるとよい。通常の精度を有するスライサーやダイシングソーであれば、最短距離fは容易に100μm程度とすることができる。
【0057】
最短距離fについて、泡3中のガスを開放できる確率からいうと、対象とする泡3の大きさによって異なるが、500μm以下が好ましく、240μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましく、50μm以下とするのが最も好ましい。試験片における加工の容易さと取り扱いやすさからいうと、10μm以上が必要であり、20μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい。
【0058】
上述の内容は、泡3を球状と仮定している。実際の泡は、上述のように引き延ばされている場合が多い。泡の大きさにもよるが、V字型の切り込み2を泡3の長径と直交するように形成すれば、最短距離fが500μmを超えるような場合でも、良好なガスの開放確率を確保することができる。
【0059】
このように、取扱い等を考慮しながら、最短距離をできるだけ小さくすることによって、本発明では、従来のH字型の加工と比較して大きく泡の分析効率を上げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明により、ガラス物品中の泡のガス分析用ガラス試験片を、効率よく製造することが可能となる。また前記ガラス試験片を用いて泡中のガスを分析する際、高確率で泡中のガスを取り出すことができるので、貴重な試料を有効に利用することができ、得られたデータを解析することで、ガラス物品の泡品質向上に役立てることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明によるガス分析用ガラス試験片の断面図である。
【図2】加工前ガラス試料の斜視図および上面図である。
【図3A】加工前ガラス試料の加工方法の一例における最初の工程を示す図である。
【図3B】図3Aに続く工程を示す図である。
【図3C】図3Bに続く工程を示す図である。
【図3D】図3Cに続く工程を示す図である。
【図3E】図3A〜図3Dの工程を経て得られたガラス試験片を示す図である。
【図4】V字型の切り込みが1つのみ形成されたガラス試験片の断面図である。
【図5】ガラス試験片にV字型の切り込みを2つ形成する工程を説明する概念図である。
【図6】V字型の切り込みが、泡を挟んで対向した位置に2つ形成されたガラス試験片の断面図である。
【図7】ガラス試験片の破断方法の一例を示す図である。
【図8】ガス分析方法を示す図である。
【図9】V字型の切り込みと泡の幾何学的な配置と、亀裂の伸長角度の範囲との関係を説明する概念図である。
【図10】種々の泡の直径gに対する、最短距離fと角度A1との関係を示した図である。
【図11】従来のガス分析用ガラス試験片の形状(H字型状)を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
10:V字型の切り込みが一つのみ形成されたガス分析用ガラス試験片
11:加工前ガラス試料
12:第1切断線
13:切断面
14:第1切り込み線
15:第2切り込み線
16:加工中のガラス試料
17:第2切断線
20:V字型の切り込みが2つ形成されたガス分析用ガラス試験片
21:加工前ガラス試料
22:第1切断線
24:第1切り込み線
25:第2切り込み線
27:第2切断線
2:V字型の切り込み
3:泡
6:泡位置マーク
31:真空容器
32:ガス分析装置
33:真空ポンプ
41:XYステージ
42:試料ホルダー
43:回転ステージ中心
46:XYステージのX線
47:XYステージのY線
51:ガラス試験片固定治具
52:押し込み棒
53:亀裂
101:従来のガラス試験片
102:切り込み
103:泡
104:ニードル
a1:V字型の切り込みの先端から泡に引いた第1接線
a2:V字型の切り込みの先端から泡に引いた第2接線
b1:亀裂伸長線
b2:亀裂伸長線の対象線
c:V字型のなす角の二等分線を泡の方向に延長した線
f,f1,f2:切り込みの先端と泡との最短距離
g:泡径
P:V字型の切り込みの先端
【特許請求の範囲】
【請求項1】
泡を内包し、前記泡を形成するガスを分析するためのガス分析用ガラス試験片であって、
前記泡の近傍まで、前記泡に向かう先端部が断面V字型をなす切り込みが、少なくとも1つ形成されたガス分析用ガラス試験片。
【請求項2】
前記切り込みが1つのみ形成された請求項1に記載のガス分析用ガラス試験片。
【請求項3】
前記切り込みが、前記泡を挟んで対向した位置に2つ形成された請求項1に記載のガス分析用ガラス試験片。
【請求項4】
前記切り込みの先端と、前記泡との距離が、0.01〜1mmである請求項1〜3のいずれか1項に記載のガス分析用ガラス試験片。
【請求項5】
外形が、実質的に直方体または円柱であるガラス試料に前記切り込みが形成された請求項1〜4のいずれか1項に記載のガス分析用ガラス試験片。
【請求項6】
前記切り込みの先端と前記泡との最短距離が現れる断面にて、前記先端から前記泡に引いた2本の接線を想定し、前記断面における前記V字型がなす角の2等分線の延長線を前記泡の方向へ引いたとき、
前記延長線が前記2本の接線の間に存在し、前記2本の接線が前記延長線となすそれぞれの角度がともに30°以上となるように、前記切り込みが形成された請求項1〜5のいずれか1項に記載のガス分析用ガラス試験片。
【請求項7】
ガラス試料に含まれる泡を開放して、前記泡を形成するガスを分析するためのガス分析用ガラス試験片の製造方法であって、
前記ガラス試料に、前記泡の近傍まで、前記泡に向かう先端部が断面V字型をなす切り込みを少なくとも1つ形成する工程を含むガス分析用ガラス試験片の製造方法。
【請求項8】
前記切り込みを1つのみ形成する請求項7に記載のガス分析用ガラス試験片の製造方法。
【請求項9】
前記切り込みを、前記泡を挟んで対向した位置に2つ形成する請求項7に記載のガス分析用ガラス試験片の製造方法。
【請求項10】
前記切り込みの先端と、前記泡との距離が、0.01〜1mmとなるように、前記切り込みを形成する請求項7〜9のいずれか1項に記載のガス分析用ガラス試験片の製造方法。
【請求項11】
泡を含むガラス物品中の分析すべき泡を特定し、前記ガラス物品から前記分析すべき泡を含む前記ガラス試料を切り出す工程をさらに含む請求項7〜10のいずれか1項に記載のガス分析用ガラス試験片の製造方法。
【請求項12】
前記ガラス試料の外形が実質的に直方体または円柱となるように前記ガラス試料を切り出す請求項11に記載のガス分析用ガラス試験片の製造方法。
【請求項13】
前記切り込みの先端と前記泡との最短距離が現れる断面にて、前記先端から前記泡に引いた2本の接線を想定し、前記断面における前記V字型がなす角の2等分線の延長線を前記泡の方向へ引いたとき、
前記延長線が前記2本の接線の間に存在し、前記2本の接線が前記延長線となすそれぞれの角度がともに30°以上となるように、前記最短距離を設定して前記切り込みを形成する請求項7〜12のいずれか1項に記載のガス分析用ガラス試験片の製造方法。
【請求項14】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のガス分析用ガラス試験片、または請求項7〜13のいずれか1項に記載の方法により得たガス分析用ガラス試験片において、
前記切り込みの先端を起点とする亀裂を前記泡にまで伸長させ、前記泡を開放して前記泡を形成するガスを取り出し、当該ガスを分析するガラス中のガス分析方法。
【請求項15】
前記ガラス試験片の前記切り込みを挟んだ2つの部分をそれぞれP1、P2と定義したときに、前記P1を固定して前記P2に荷重を加え、前記先端を起点とする亀裂を伸長させる請求項14に記載のガス分析方法。
【請求項1】
泡を内包し、前記泡を形成するガスを分析するためのガス分析用ガラス試験片であって、
前記泡の近傍まで、前記泡に向かう先端部が断面V字型をなす切り込みが、少なくとも1つ形成されたガス分析用ガラス試験片。
【請求項2】
前記切り込みが1つのみ形成された請求項1に記載のガス分析用ガラス試験片。
【請求項3】
前記切り込みが、前記泡を挟んで対向した位置に2つ形成された請求項1に記載のガス分析用ガラス試験片。
【請求項4】
前記切り込みの先端と、前記泡との距離が、0.01〜1mmである請求項1〜3のいずれか1項に記載のガス分析用ガラス試験片。
【請求項5】
外形が、実質的に直方体または円柱であるガラス試料に前記切り込みが形成された請求項1〜4のいずれか1項に記載のガス分析用ガラス試験片。
【請求項6】
前記切り込みの先端と前記泡との最短距離が現れる断面にて、前記先端から前記泡に引いた2本の接線を想定し、前記断面における前記V字型がなす角の2等分線の延長線を前記泡の方向へ引いたとき、
前記延長線が前記2本の接線の間に存在し、前記2本の接線が前記延長線となすそれぞれの角度がともに30°以上となるように、前記切り込みが形成された請求項1〜5のいずれか1項に記載のガス分析用ガラス試験片。
【請求項7】
ガラス試料に含まれる泡を開放して、前記泡を形成するガスを分析するためのガス分析用ガラス試験片の製造方法であって、
前記ガラス試料に、前記泡の近傍まで、前記泡に向かう先端部が断面V字型をなす切り込みを少なくとも1つ形成する工程を含むガス分析用ガラス試験片の製造方法。
【請求項8】
前記切り込みを1つのみ形成する請求項7に記載のガス分析用ガラス試験片の製造方法。
【請求項9】
前記切り込みを、前記泡を挟んで対向した位置に2つ形成する請求項7に記載のガス分析用ガラス試験片の製造方法。
【請求項10】
前記切り込みの先端と、前記泡との距離が、0.01〜1mmとなるように、前記切り込みを形成する請求項7〜9のいずれか1項に記載のガス分析用ガラス試験片の製造方法。
【請求項11】
泡を含むガラス物品中の分析すべき泡を特定し、前記ガラス物品から前記分析すべき泡を含む前記ガラス試料を切り出す工程をさらに含む請求項7〜10のいずれか1項に記載のガス分析用ガラス試験片の製造方法。
【請求項12】
前記ガラス試料の外形が実質的に直方体または円柱となるように前記ガラス試料を切り出す請求項11に記載のガス分析用ガラス試験片の製造方法。
【請求項13】
前記切り込みの先端と前記泡との最短距離が現れる断面にて、前記先端から前記泡に引いた2本の接線を想定し、前記断面における前記V字型がなす角の2等分線の延長線を前記泡の方向へ引いたとき、
前記延長線が前記2本の接線の間に存在し、前記2本の接線が前記延長線となすそれぞれの角度がともに30°以上となるように、前記最短距離を設定して前記切り込みを形成する請求項7〜12のいずれか1項に記載のガス分析用ガラス試験片の製造方法。
【請求項14】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のガス分析用ガラス試験片、または請求項7〜13のいずれか1項に記載の方法により得たガス分析用ガラス試験片において、
前記切り込みの先端を起点とする亀裂を前記泡にまで伸長させ、前記泡を開放して前記泡を形成するガスを取り出し、当該ガスを分析するガラス中のガス分析方法。
【請求項15】
前記ガラス試験片の前記切り込みを挟んだ2つの部分をそれぞれP1、P2と定義したときに、前記P1を固定して前記P2に荷重を加え、前記先端を起点とする亀裂を伸長させる請求項14に記載のガス分析方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−240216(P2007−240216A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−60105(P2006−60105)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【出願人】(594171274)日本板硝子テクノリサーチ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【出願人】(594171274)日本板硝子テクノリサーチ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]