説明

ガラス板梱包体のガラス板押え装置

【課題】ガラス板梱包体に対するガラス板積載作業性、及びガラス板取出作業性を向上させることができるガラス板梱包体のガラス板押え装置を提供する。
【解決手段】本発明のガラス板押え装置10によれば、ガラス板積載装置によるガラス板梱包体へのガラス板の積載作業が終了すると、レバー70によってカム68を押え方向に回動する。これにより、カム68のカム面72とカム40のカム面48とによる送り作用によって押え板38が、カム40を介してガラス板Gの端面G1に向けて進出移動し、押え板38がガラス板Gの端面G1に当接する。これによって、ガラス板梱包体12に積載されたガラス板Gの端面G1を押さえることができ、ガラス板の側方移動を規制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板梱包体のガラス板押え装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ用ガラス、プラズマディスプレイ用ガラス等のフラットパネルディスプレイに用いられるガラス板の大型化のニーズが高まっている。従来、このような大型のガラス板を輸送する梱包体として、特許文献1に開示されたガラス板梱包体が知られている。
【0003】
このガラス板梱包体は、ガラス板が載置される底受け部材と、ガラス板の主面が受けられる背受け部材と、前記底受け部材に載置されるとともに前記背受け部材にその主面が受けられたガラス板の端面に当接されてガラス板の側方移動(横ずれともいう)を規制するガラス板押え装置(側方押え装置)とを備えている。
【0004】
ガラス板は、ガラス板製造工場において、ガラス板積載装置の吸着部に吸着保持されてガラス板梱包体に1枚ずつ合紙を介して積載された後、ガラス板製造工場からディスプレイ組立工場にトラック等の輸送手段によって輸送される。この輸送中にガラス板がガラス板梱包体に対して横ずれしないように前記ガラス板押え装置によってガラス板の側方移動を規制している。
【0005】
特許文献1に開示されたガラス板押え装置は、水平方向駆動部と上下方向駆動部とから構成される。
【0006】
前記水平方向駆動部は押え板、及び第1のロッドを備えており、第1のロッドは、水平方向に移動自在に支持される。また、前記第1のロッドの先端部は、前記押え板の裏面側に固定され、押え板の正面側には、クッション材が貼着され、このクッション材がガラス板の端面に当接される。更に、前記第1のロッドの基端部には、略45度の傾斜角度を持つテーパ面が備えられている。
【0007】
前記上下方向駆動部はレバー、及び第2のロッドを備えており、前記レバーはリンクを介して前記第2のロッドに連結される。また、前記第2のロッドは、上下方向に移動自在に支持されるとともに、その下端部には、前記第1のロッドの前記テーパ面と面接触する略45度の傾斜角度を持つテーパ面が備えられている。
【0008】
特許文献1のガラス板押え装置によれば、前記レバーを回動すると、前記第2のロッドが下方に移動していき、前述したテーパ面同士の送り作用によって第1のロッドがガラス板の端面に向けて水平方向に移動され、前記押え部材がガラス板の端面に当接する。これによって、ガラス板の側方移動を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−111399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1のガラス板押え装置は、鉛直方向に配置された機高の高い上下方向駆動部が、ガラス板梱包体に積載されるガラス板の近傍に設置されている。このため、ガラス板積載装置によるガラス板梱包体へのガラス板積載時に、ガラス板積載装置が前記上下方向駆動部に干渉するという懸念、及びガラス板取出装置によるガラス板梱包体からのガラス板取出時に、ガラス板取出装置が前記上下方向駆動部に干渉するという懸念があった。すなわち、特許文献1のガラス板押え装置は、ガラス板梱包体に対するガラス板積載作業、及びガラス板取出作業に影響を与えるという問題があった。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ガラス板梱包体に対するガラス板の積載作業性、及びガラス板の取出作業性を向上させることができるガラス板梱包体のガラス板押え装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記目的を達成するために、ガラス板梱包体に積載されたガラス板の端面に当接されてガラス板の側方移動を規制するガラス板押え装置において、前記ガラス板の端面に対向して配置され該端面に対して進退移動自在に設けられるとともに、ガラス板の端面に当接される押え部材、及び該押え部材に一端が連結されて他端に第1のカム面が備えられた第1のカムを有する直進移動部と、前記第1のカムと同軸上に配置されて軸心を中心に回動自在に取り付けられ、一端に前記第1のカムの前記第1のカム面に面接触される第2のカム面が備えられた第2のカム、及び該第2のカムの他端に設けられた回動操作部材を有する回動駆動部と、を備え、前記回動駆動部の前記回動操作部材によって前記第2のカムを回動させることにより、前記第2のカム面と前記第1のカム面とによる送り作用によって前記押え部材を、前記第1のカムを介して前記ガラス板の端面に対し進退移動させることを特徴とするガラス板梱包体のガラス板押え装置を提供する。
【0013】
本発明のガラス板押え装置は、第1のカムと該第1のカムを駆動する第2のカムとがガラス板の端面から外側に、かつ該端面に対して対向する方向に突出した、機高の低い構成物である。よって、本発明のガラス板押え装置は、ガラス板梱包体へのガラス板積載時に、ガラス板積載装置がガラス板押え装置に干渉するという懸念はなくなり、また、ガラス板梱包体からのガラス板取出時に、ガラス板取出装置がガラス板押え装置に干渉するという懸念もなくなる。したがって、本発明のガラス板押え装置によれば、ガラス板梱包体に対するガラス板の積載作業性、及びガラス板の取出作業性が向上する。
【0014】
本発明のガラス板押え装置によれば、ガラス板積載装置によるガラス板梱包体へのガラス板の積載作業が終了すると、回動駆動部材の回動操作部材によって第2のカムを押え方向に回動する。これにより、第2のカムの第2のカム面と第1のカムの第1のカム面とによる送り作用によって押え部材が、第1のカムを介してガラス板の端面に向けて進出移動し、押え部材がガラス板の端面に当接する。これによって、ガラス板梱包体に積載されたガラス板の端面を押さえることができ、ガラス板の側方移動を規制できる。また、ガラス板取出装置によってガラス板梱包体からガラス板を取り出す場合には、回動操作部材によって第2のカムを解除方向に回動する。これにより、ガラス板の端面に対する押え部材の押圧力が解除されるので、ガラス板梱包体からガラス板を取り出すことができる。
【0015】
本発明の前記第1のカム面及び前記第2のカム面は、前記第2のカムの回動範囲内において、互いのカム面同士が面接触するように三次元曲面を有することが好ましい。
【0016】
本発明によれば、第2のカムの回動範囲において、第2のカム面は第1のカム面と常に面接触した状態で動作するので、押え部材が円滑に進退移動する。また、カム面同士が線接触することに起因するカム面のかじりを防止することができるので、カム面の損傷も防止できる。なお、三次元曲面を備えた第1のカム面、及び第2のカム面は、カムの軸線に対して軸線を傾斜させた研削砥石で研削することにより形成することができ、その製造方法は公知である。
【0017】
本発明の前記第1のカム面及び前記第2のカム面は、前記第2のカムに対して前記第1のカムが最も離れた位置において、前記第1のカムの進退移動を規制する規制面を有することが好ましい。
【0018】
本発明によれば、第2のカムに対して第1のカムが最も離れた位置である、押え部材がガラス板の端面を押圧する位置において、第1のカム面と第2のカム面とは、それらのカム面(リフト部)の端部(カムトップ部)にそれぞれ備えられた規制面を介して当接されるので、第1のカムの進退移動が規制されて押え部材の移動が規制される。すなわち、前記規制面同士の当接によって押え部材の移動をロックすることができる。本発明では、押え部材の移動をロックする手段を第1のカム面、第2のカム面に備えたので、他のロック機構を別に設けるものと比較して、部品点数を大幅に削減できる。なお、回動操作部材を解除方向に回動操作すると、第1のカムと第2のカムとは、前記規制面同士の当接が解除されるので、ガラス板の端面に対する押え部材の押圧力を解除できる。
【0019】
本発明の前記直進移動部は、前記押え部材を前記ガラス板の端面から該端面に対向する方向に退避させる方向に付勢する付勢部材を有することが好ましい。
【0020】
本発明によれば、回動操作部材の回動操作によって、ガラス板の端面に対する押え部材の押圧力を解除すると、押え部材は付勢部材の付勢力によってガラス板の端面から該端面に対向する方向に退避していく。つまり、付勢部材の付勢力は、押え部材から第1のカム、第1のカム面、第2のカム面、及び第2のカムに伝達している。この状態で回動操作部材を解除方向に回動していくと、第1のカム面と第2のカム面とが前記付勢力によって押圧当接されているため、第1のカム面と第2のカム面とによる送り作用によって、押え部材がガラス板の端面から退避していく。すなわち、本発明によれば、付勢部材を備えることによって、押え部材をガラス板の端面から十分に退避させることができるので、ガラス板梱包体からのガラス板の取り出し作業を確実に行うことができる。
【0021】
本発明の前記直進移動部の前記押え部材は、ナットと該ナットが螺合されたねじ棒とを介して前記第1のカム部に連結されていることが好ましい。
【0022】
本発明によれば、トルクレンチを用いてナットを回動し、ねじ棒に対してナットをガラス板の端面に向けて微小量移動させることにより、ナットによって押え部材をガラス板の端面に押圧当接させ、その時のトルクが、ガラス板を確実に押さえることができるトルクになるまでトルクレンチでナットを回動する。すなわち、本発明によれば、トルクレンチによるトルクを管理することによって、ガラス板を確実に押さえることができる。
【0023】
なお、ガラス板の端面に当接される前記押え部材の正面側には、クッション材が設けられることが好ましい。輸送中の振動に起因してガラス板が横ずれしようとした際に、その横ずれはクッション材によって吸収されるため、ガラス板の縁部の損傷を防止できる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように本発明のガラス板梱包体のガラス板押え装置によれば、ガラス板梱包体に対するガラス板の積載作業性、及びガラス板の取出作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施の形態のガラス板押え装置が設けられた縦積み型のガラス板梱包体の全体斜視図
【図2】図1に示したガラス板押え装置の構成を示した縦断面図
【図3】図2に示したガラス板押え装置の要部構成を示した斜視図
【図4】図2及び図3に示したガラス板押え装置の直進移動部の構成を示した斜視図
【図5】図2及び図3に示した2台のカムのカム面の形状を示した斜視図
【図6A】実施の形態のガラス板押え装置の動作説明図
【図6B】実施の形態のガラス板押え装置の動作説明図
【図6C】実施の形態のガラス板押え装置の動作説明図
【図7】実施の形態のガラス板押え装置が設けられた平積み型のガラス板梱包体の全体斜視図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面に従って本発明に係るガラス板梱包体のガラス板押え装置の好ましい実施の形態について説明する。
【0027】
図1は、実施の形態のガラス板押え装置10が設けられた縦積み型のガラス板梱包体12の全体斜視図である。
【0028】
同図に示すガラス板梱包体12は、基台となる台座14の上面に備えられた搭載面16上に、ガラス板Gを載置する底受け板(底受け部材)18が搭載面16に対して傾斜して設けられている。ガラス板梱包体12の支柱20、20…は底受け板18の主面(ガラス板Gを載置する面)に対して90°〜100°、特に好ましくは約95°となるように搭載面16上に複数本(図1では3本)立設され、この支柱20、20…にガラス板Gの主面を受ける背受け板(背受け部材)22が立て掛けられて固定される。底受け板18及び背受け板22には、ガラス板Gを載置した際のガラス板Gとの接触による損傷を防止するため、ゴムや硬質の発泡性樹脂等のクッション材(不図示)が設けられている。
【0029】
台座14の搭載面16の後部には壁24が立設され、この壁24に支柱20、20…が支持されている。また、台座14の前面にはフォークリフトの爪(不図示)が挿抜される開口部26、26…が備えられている。
【0030】
底受け板18は、搭載面16と底受け板18との間に配置された三角形状の底片28、28…を介して搭載面16上に傾斜して載置される。また、底受け板18の主面は、ガラス板Gを差込むための溝等が形成されない実質的に平坦なものであるが、ガラス板Gを、合紙(不図示)を挟んで載置できるものであれば、波状や粗面状であってもよい。底受け板18は、その主面が台座14の搭載面16に対して好ましくは5°〜25°、より好ましくは10°〜20°、特に好ましくは約18°に傾斜して配置される。これにより、ガラス板積載装置によるガラス板梱包体12へのガラス板積載時に、ガラス板Gの位置決め作業が容易になる。また、各ガラス板G、G…の主面は自重によって背受け板22側のガラス板Gの主面に接するので、各ガラス板G、G…の主面間に無駄な隙間が生じることはない。更に、載置するガラス板Gの安定化を図ることができ、ガラス板Gの前方(図1の矢印Xの方向)へのずれや崩壊を防止し、併せて傷や割れの防止も図ることができる。
【0031】
実施の形態のガラス板押え装置10は、底受け板18と背受け板22との側部連結部付近のガラス板Gを左右方向(図1の矢印Xに直交する矢印Yの方向)から挟み込むように、台座14の搭載面16に2台設置される。
【0032】
図2は、ガラス板押え装置10の構成を示した縦断面図であり、図3はガラス板押え装置10の要部構成を示した斜視図であり、図4は図2及び図3に示したガラス板押え装置10の直進移動部34の構成を示した斜視図である。なお、2台のガラス板押え装置10、10は同一構成なので、ここでは図1の右側に配置されたガラス板押え装置10の構成のみ説明し、左側に配置されたガラス板押え装置10についてはその説明を省略する。また、図2、図3には、ガラス板押え装置10の内部構造を明示するために、ガラス板押え装置10の本体ケーシング30(図1参照)の天板32を取り外した図が示されている。
【0033】
実施の形態のガラス板押え装置10は図2、図3に示すように、直進移動部34と回動駆動部36とから構成される。
【0034】
直進移動部34は押え板(押え部材)38、及びカム(第1のカム)40を備えており、押え板38及びカム40は、ナット42が螺合されたねじ棒44を介して連結されている。カム40は略角柱状に構成される。カム40の押え板38に対向する一端面46は、カム40の軸心Aに対して直交した平坦な面であるが、カム40の他端面には、図4の如くカム面(第1のカム面)48が備えられている。
【0035】
また、カム40は、図3の如く軸心Aが水平(矢印Yの方向)になるように角筒状のガイド管50に収納される。更に、カム40は、カム40の外表面がガイド管50の内壁面に摺接されることによって、ガイド管50に対し軸心Aを中心とした回動が規制された状態で水平方向のみ移動自在となっている。ガイド管50は、ガラス板押え装置10の本体ケーシング30(図1参照)に固定されており、本体ケーシング30は、図2の如くボルト52によって台座14の搭載面16に着脱自在に固定されている。
【0036】
図5は、図2及び図3に示した2台のカム40、68のカム面48、72の形状を示した斜視図である。なお、図5は、それぞれのカム40、68の形状を明示するため、軸心Aを曲げて描いている。図4及び図5に示すように、ねじ棒44の一端部は、カム40の軸心Aと同軸上に開口されたねじ孔54に螺合され、ねじ孔54の出口に備えられたナット56に螺合されることによりカム40に固定される。一方でねじ棒44の他端部は、押え板38の裏面(カム40側の面)に固定されたジョイント部58の貫通孔(不図示)に挿通されている。これにより、押え板38は、ねじ棒44に対して水平方向(図2の矢印Yの方向)に移動自在に連結され、また、ねじ棒44に対するナット42の位置を調整することによって、カム40に対する押え板38の離間距離が微調整されるようになっている。
【0037】
押え板38は長方形状の板材であり、長辺部が水平方向を向いた状態でねじ棒44の他端部に装着される。また、押え板38のガラス板Gの端面G1に対向する正面には、ゴム又は硬質の発泡性樹脂製のクッション材60が取り付けられている。このクッション材60がガラス板Gの端面G1に当接される。なお、クッション材60は必須ではないが、クッション材60によって、底受け板18上に積載されたガラス板Gの微小な横ずれを吸収できる、及びガラス板Gの端面G1と押え板38との当接によるガラス板Gの破損を防止できるという利点があるので、押え板38にクッション材60を設けることが好ましい。
【0038】
なお、ガラス板Gが合紙を介してガラス板梱包体12に積層され、且つ合紙の両側がガラス板Gの両端からはみ出している形態では、押え板38は、はみ出している合紙を介してガラス板Gの端面G1を押さえる。この場合、はみ出している合紙がクッションの機能を備える。なお、クッション機能を備えさせるためには、クッション材60又は合紙の少なくとも一方があればよい。
【0039】
また、図3に示すように、押え板38は、ねじ棒44を挟んで水平方向に配置された一対のスプリング(付勢部材)62、62によってガラス板Gの端面G1に対し、水平方向に退避する方向に付勢されている。スプリング62は、一端部が押え板38の裏面に備えられた係止部64に係止され、他端部がガイド管50の側方に突設されたピン66に係止されている。なお、スプリング62は必須ではないが、スプリング62によって、直進移動部34をガラス板Gの端面G1から端面G1に対し、退避した位置に自動で移動させることができるので、直進移動部34にスプリング62を設けることが好ましい。
【0040】
回動駆動部36は、カム(第2のカム)68、及びレバー(回動操作部材)70を備えている。カム68は、カム40と同軸上に配置されてカム40の軸心Aを中心に回動するように本体ケーシング30に軸支されている。また、カム68は、略円柱状に構成されてガイド管50に収納されており、カム40のカム面48に対向する端面には、カム面(第2のカム面)72が備えられている。
【0041】
図5に示すようにカム40のカム面48及びカム68のカム面72は、後述するカム68の回動範囲(略180°)内において、互いのカム面48、72同士が面接触するように三次元曲面となっている。また、カム面48、72同士は、図3に示したスプリング62の付勢力によって常に押圧当接されている状態が保持されている。この状態でカム68を矢印Rのように回動させると、カム68がカム面72、48を介してカム40をガラス板Gの端面G1に対し水平方向に進退駆動させるため、ねじ棒44を介してカム40に連結されている押え板38は、ガラス板Gの端面G1に対し進退移動する。つまり、カム面48、72による送り作用によって押え板38が、カム40を介してガラス板Gの端面G1に対し進退移動する。
【0042】
レバー70は、手動による回動操作によってカム68を回動させる部材であり、図2に示すように、カム68の軸心Aに対して直交方向に延設されている。図6A〜図6Cは、実施の形態のガラス板押え装置10の動作説明図である。このレバー70の回動操作範囲は、図6A、図6B、図6Cに示すように、搭載面16に対して0°〜180°に設定されているが、カム40、68の形状及びカム面48、72の形状によって適宜設定される。
【0043】
なお、ガラス板Gの積載時及び取出時において、ガラス板Gがレバー70に当接しないようにするため、レバー70の回動操作範囲の開始位置(図6A)及び終了位置(図6C)におけるレバー70の搭載面16からの高さ(H2:図6A参照)は、レバー70を除いたガラス板押え装置10の最大高さ(H1:図6A参照)以下であることが好ましい。したがって、レバー70の回動操作範囲の開始角度及び終了角度は、前記高さH2となる角度であることが好ましい。なお、図6Aでは、押え板38の高さが最大高さH1となっているが、押え板38の高さに限定されず、ガラス板押え装置10を構成する、押え板38以外の部材の高さであってもよい。
【0044】
また、カム面48、72には図2、図5及び図6Cの如く、カム68に対してカム40が最も離れた位置において、つまり、レバー70が180°回動操作された位置において、カム40の進退移動を規制する規制面49、73が備えられている。規制面49、73は、カム面48、72の先端(端部)に備えられるとともに、軸心Aに対して略直交した平坦な面である。規制面49、73同士が当接した際には、図3のスプリング62の付勢力によって、カム40、68が規制面49、73を介して互いに押圧するため、前記当接した状態が保持される。これにより、カム40の進退移動が規制されるので、押え板38の移動がロックされる。なお、規制面49、73の形状は平坦な面に限定されず、規制面49、73同士が当接した状態を保持できれば、球状や波状などの曲面でもよい。
【0045】
次に、前記の如く構成されたガラス板押え装置10の特徴及び作用について説明する。
【0046】
実施の形態のガラス板押え装置10は、カム40と、カム40を水平方向に直進駆動させるカム68とが、ガラス板Gの端面G1から外側に水平方向に突出した、機高の低い構造物であることを構造上の特徴としている。
【0047】
よって、実施の形態のガラス板押え装置10は、ガラス板梱包体12へのガラス板積載時に、ガラス板積載装置(不図示)がガラス板押え装置10に干渉するという懸念はなくなり、また、ガラス板梱包体12からのガラス板取出時に、ガラス板取出装置(不図示)がガラス板押え装置に干渉するという懸念もなくなる。したがって、実施の形態のガラス板押え装置10によれば、ガラス板梱包体12に対するガラス板Gの積載作業性、及びガラス板Gの取出作業性が向上する。
【0048】
次に、ガラス板押え装置10の作用について説明する。
【0049】
まず、回動操作開始位置である図6Aで示した水平位置にレバー70を回動させて、押え板38をガラス板Gの積載位置から十分に退避させておく。この状態で前述したガラス板積載装置によるガラス板梱包体12へのガラス板Gの積載作業を行う。そして、ガラス板Gの積載作業が終了すると、図6Aで示した水平位置(0°)にあるレバー70を180°回動操作する。
【0050】
レバー70が回動すると、レバー70と一体のカム68が図6Bの如く、カム40をガラス板Gの端面G1に向けて水平方向に直進駆動させる方向に回動する。これにより、カム68のカム面72とカム40のカム面48とによる送り作用によって押え板38が、カム40を介してガラス板Gの端面G1に向けて進出移動していく。そして、レバー70が図6Cの如く180°回動すると、押え板38がガラス板Gの端面G1に当接する。これによって、ガラス板梱包体12に積載されたガラス板Gの端面G1を押さえることができ、ガラス板Gの側方移動を規制できる。
【0051】
また、前述したガラス板取出装置によってガラス板梱包体12からガラス板Gを取り出す場合には、レバー70によってカム68を先とは逆の解除方向に回動する。これにより、ガラス板Gの端面G1に対する押え板38の押圧力が解除されるので、ガラス板梱包体12からガラス板Gを取り出すことができる。
【0052】
実施の形態のガラス板押え装置10のカム面48、72は三次元曲面で構成されているので、カム68の回動範囲において、カム面72はカム面48と常に面接触した状態で動作する。これにより、押え板38が円滑に進退移動する。また、カム面48、72同士が線接触することに起因するカム面48、72のかじり(galling)を防止することができるので、カム面48、72の損傷も防止できる。
【0053】
更に、実施の形態のガラス板押え装置10によれば、レバー70が180°回動操作された図6Cの状態において、押え板38の移動をロックする規制面49、73をカム面48、72に設けたので、他のロック機構を別に設けたものと比較して、部品点数を大幅に削減できる。
【0054】
また、図6Cの位置からレバー70を解除方向に回動操作すると、カム40とカム68とは、規制面49、73同士の当接が解除されるので、ガラス板Gの端面G1に対する押え板38の押圧力を解除できる。このとき、押え板38はスプリング62の付勢力によってガラス板Gの端面G1から退避していく。つまり、スプリング62の付勢力は、押え板38からカム40、カム面48、カム面72、及びカム68に伝達している。この状態でレバー70を解除方向に回動していくと、カム面48とカム面72とが前記付勢力によって押圧当接されているため、カム面48とカム面72とによる送り作用によって、押え板38がガラス板Gの端面G1から退避していく。すなわち、スプリング62を備えることによって、図6Aの如く押え板38をガラス板Gの端面G1から十分に退避させることができるので、ガラス板梱包体12からのガラス板Gの取出作業を確実に行うことができる。
【0055】
なお、実施の形態のガラス板押え装置10によれば、図6Cに示した端面押え状態において、作業者は、不図示のトルクレンチを用いてナット42を回動し、ねじ棒44に対してナット42をガラス板Gの端面G1に向けて微小量移動させることにより、ナット42によって押え板38をガラス板Gの端面G1に押圧当接させる。そして、その時にトルクレンチで計測されているトルクが、ガラス板Gを破損させずに確実に押さえることができるトルクになるまでトルクレンチでナット42を回動する。すなわち、実施の形態のガラス板押え装置10によれば、トルクレンチによるトルクを管理することによって、ガラス板12を確実に押さえることができる。
【0056】
図7は、実施の形態のガラス板押え装置10が設けられた平積み型のガラス板梱包体80の全体斜視図である。
【0057】
ガラス板梱包体80には、複数枚の矩形状ガラス板(不図示)が略水平に、かつガラス板相互間にガラス板よりも大面積で矩形状の合紙82を介して積層されて積載される。
【0058】
ガラス板梱包体80は、平面視矩形状の受台84、載置板86、及び受皿88、及び受皿88の辺部に各2台配置されたガラス板押え装置10、10…を主として構成される。また、載置板86の四隅部には、パレット積層部材であるガイド部材90、90…が立設されているので、ガラス板梱包体80を縦方向に複数段積層して運搬する場合に有利である。
【0059】
受台84の全側面には、フォークリフト(図示せず)のフォークが挿入されるフォークリフト用開口部92が受台84の一側面につき2箇所形成されている。これにより、ガラス板梱包体80に対して受台84の縦横側面のいずれの方向からもフォークリフトのフォークが挿入でき、効率のよい運搬作業が可能となる。
【0060】
載置板86は、不図示の振動吸収部材、及び傾斜角度設定部材等を介して受台84に搭載され、この載置板86に受皿88が固定されている。
【0061】
ガラス板押え装置10は、受皿88の4辺の側面に所定の間隔をもって例えば2台ずつ配置されて受皿88に着脱自在に固定されている。ガラス板押え装置10の押え板38によって、ガラス板(不図示)の縁部からはみ出している合紙82がガラス板の端面に押圧され、これによって積層されたガラス板の側方移動が規制される。
【0062】
なお、本実施例では、受皿88の各側面に2台のガラス板押え装置10、10を配置するとしたが、これに限定されるものではない。
【0063】
また、ガラス板押え装置10の押え板38は、ガラス板の縁部からはみ出して下側に垂れ下がった合紙82をガラス板の端面に押圧するが、このとき、合紙82の端部の重なり合った部分が押え板38によって押圧されるため、押え板38がガラス板の端面に直接接触することはなく、合紙82の柔軟性によりガラス板を保護しながらガラス板の端面を確実に押圧する。
【符号の説明】
【0064】
10…ガラス板押え装置、12…ガラス板梱包体、14…台座、16…搭載面、18…底受け板、20…支柱、22…背受け板、24…壁、26…開口部、28…底片、30…本体ケーシング、32…天板、34…直進移動部、36…回動駆動部、38…押え板、40…カム、42…ナット、44…ねじ棒、46…一端面、48…カム面、49…規制面、50…ガイド管、52…ボルト、54…ねじ孔、56…ナット、58…ジョイント部、60…クッション材、62…スプリング、64…係止部、66…ピン、68…カム、70…レバー、72…カム面、73…規制面、80…ガラス板梱包体、82…合紙、84…受台、86…載置板、88…受皿、90…ガイド部材、92…フォークリフト用開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板梱包体に積載されたガラス板の端面に当接されてガラス板の側方移動を規制するガラス板押え装置において、
前記ガラス板の端面に対向して配置され該端面に対して進退移動自在に設けられるとともに、ガラス板の端面に当接される押え部材、及び該押え部材に一端が連結されて他端に第1のカム面が備えられた第1のカムを有する直進移動部と、
前記第1のカムと同軸上に配置されて軸心を中心に回動自在に取り付けられ、一端に前記第1のカムの前記第1のカム面に面接触される第2のカム面が備えられた第2のカム、及び該第2のカムの他端に設けられた回動操作部材を有する回動駆動部と、
を備え、前記回動駆動部の前記回動操作部材によって前記第2のカムを回動させることにより、前記第2のカム面と前記第1のカム面とによる送り作用によって前記押え部材を、前記第1のカムを介して前記ガラス板の端面に対し進退移動させることを特徴とするガラス板梱包体のガラス板押え装置。
【請求項2】
前記第1のカム面及び前記第2のカム面は、前記第2のカムの回動範囲内において、互いのカム面同士が面接触するように三次元曲面を有する請求項1に記載のガラス板梱包体のガラス板押え装置。
【請求項3】
前記第1のカム面及び前記第2のカム面は、前記第2のカムに対して前記第1のカムが最も離れた位置において、前記第1のカムの進退移動を規制する規制面を有する請求項1、又は2に記載のガラス板梱包体のガラス板押え装置。
【請求項4】
前記直進移動部は、前記押え部材を前記ガラス板の端面から該端面に対向する方向に退避させる方向に付勢する付勢部材を有する請求項1、2、又は3に記載のガラス板梱包体のガラス板押え装置。
【請求項5】
前記直進移動部の前記押え部材は、ナットと該ナットが螺合されたねじ棒とを介して前記第1のカムに連結されている請求項1から4のいずれか1項に記載のガラス板梱包体のガラス板押え装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−107686(P2013−107686A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255198(P2011−255198)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】