説明

キチン結晶化度測定装置

【課題】キチンの結晶化度をリアルタイムで測定できるキチン結晶化度測定装置を提供する。特に、オンラインで高速測定して粉砕装置や搬送装置にフィードバックすることができるキチン結晶化度測定装置を提供する。
【解決手段】キチン粉末試料2に近赤外光を照射する光源ランプ11と、試料から入射する近赤外光の光量を検出する赤外光センサ12と、事前に生成した検量線を記録する記憶装置16と、検出結果と検量線に基づいてキチンの結晶化度を算定する演算装置17,18とを備え、赤外光センサ12の検出結果に基づいて近赤外スペクトルを求め、近赤外スペクトルの2次微分を求めて変換スペクトルとし、変換スペクトルの所定の波長範囲における強度を検量線と比較してキチンの結晶化度を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キチンの結晶化度を測定する装置、特に結晶化度を低下させて反応性を向上させるためキチンを微粉砕する工程でキチンの結晶化度をオンラインで測定してフィードバックするための測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
キチンは、エビ、カニなどの甲殻類、昆虫類の外骨格、甲皮、および軟体動物、節足動物などの骨格成分を構成する多糖類である。地球上で年間数百億トンという膨大な量が生物によって生産されており、残された未利用バイオマス資源の一つである。キチンは、N−アセチルグルコサミンの直鎖重合体で、セルロースと類似の構造を有し、セルロースにおける2位の水酸基がキチンではアセトアミド基になっている。分子間あるいは分子内で形成される強固な水素結合により、明確なガラス転移点や融点を示さず、化学反応性が弱く、加熱により分解する。生物資源由来の物質であり、枯渇の恐れがなく、生物分解性であり、安全性が高いことから、医薬、化粧品、肥料など様々な分野で今後の応用が期待されている。また、生体において容易に分解し、比較的高い強度と柔軟性を持つことから、既に手術用縫合糸に利用されている。
【0003】
キチンの利用は、加水分解してN−アセチルグルコサミンにすることにより拡げることができる。N−アセチルグルコサミンを製造するための酵素分解の前処理として、チキンの非晶質化を行うことにより、効率の向上を図っている。従来、キチンの非晶質化は、酸分解法など、酸・アルカリ等の薬品を使用して結晶化度を下げる方法が主流であった。しかしながら、化学的処理による場合は、濃塩酸や濃アルカリ、有機溶剤などを用いるので、工業的に生産すると環境に与える負荷が大きいという問題があった。このため、化学的方法によらず、メカノケミカル粉砕によりカニ殻などのキチンの結晶化度や粒子径を低下させる方法が開発されている。
【0004】
特許文献1には、複数個の粉砕媒体ボールと粉体とを収納した処理容器の回転により粉体を微粒子化する高速粉体反応装置を用いて、キチン原料を微粉砕し、適度の結晶化度になったキチンに対して酵素を作用させて加水分解する、メカノケミカル粉砕手段が開示されている。酸分解法から粉砕法に切り替えたことにより、酸・アルカリ溶液や有機溶媒の使用量を低減し環境負荷を低減することができ、キチンの利用効率に優れたキチン分解物の製造方法を提供することができた。
【0005】
開示発明で使われるキチンの結晶化度測定方法では、高速粉体反応装置により微粉砕したキチンの粉末を、X線回折装置にかけCu−Kα線を用いた回折角−散乱強度プロット図形(XRDパターン)を取得する。図14は、微粉砕の程度の異なるキチンについて得られたXRDパターンの例である。キチンの結晶化度は、この図形に基づき求めたキチン質の第1ピークの散乱強度Aと2θ=16度の位置における散乱強度Bの差をAで割って規格化した値から知ることができる。
【0006】
高速粉体反応装置を用いた微粉砕の程度とキチンの結晶化度の関係を調べた1例を、図15の表に示す。図16は、図15に表された結果を図示したものである。これらの結果から、結晶化度が微粉砕の程度が大きくなるにつれて減少する傾向を有することが確認された。なお、表やグラフにおける平均粒子径(D50、メジアン径)は、メタノールを分散媒として、レーザ回折・散乱法の原理による粒度分布測定装置(米国マイクロトラック社製X−100)を用いて測定したもので、微粉砕の程度が大きくなるにつれて減少する傾向を示している。
【0007】
このように、微粉砕処理を施すことでキチンの平均粒子径を減少させることができるばかりでなく、キチン質の結晶性を破壊することもできることが明らかとなった。キチンの結晶化度が低い方が反応性が高いので、キチン分解酵素キチナーゼによる酵素的加水分解を行った場合の単糖(N−アセチルグルコサミン)や2糖(キトビオース)の収率(糖化率)は、微粉砕の程度が高く結晶化度が低いほど高くなる。図17は、種々の条件において測定したキチンの結晶化度と糖化率の関係を例示するグラフである。いずれの場合も、結晶化度が低下するほど糖化率が高くなることを示し、その相関係数は高い。したがって、キチンを微粉砕して所定の結晶化度にしてから酵素的加水分解を行うメカノケミカル破砕手段は、高い収率でキチン分解物を得ることができ、キチンの有効活用を可能にする。
【0008】
ところが、特許文献1に開示された方法でキチン分解物を製造する場合、キチンを微粉砕して所定の結晶化度にする工程では、あらかじめ実験により求めた高速粉体反応装置の運転条件と粉砕後のキチンの結晶化度との関係に基づいて、高速粉体反応装置の回転数と回転時間を設定してキチンを粉砕することにより、所望の結晶化度を達成する。しかし、実際のキチンの結晶化度は、原料キチンの状態が変化したり粉砕装置の働きが変化したりすると、製造工程中にも変化して所期の値にならない場合がある。そこで、正確な工程管理のために、キチンの結晶化度を常時把握している必要がある。
【0009】
キチンの結晶化度は、キチンの粉末をサンプルしてX線回折装置にかけて回折角−散乱強度プロット図形を取得し、この図形に基づき所定の式を用いて算出することにより確認することになる。したがって、粉体キチンの結晶化度を知るためには所定の時間が必要であるため、連続生産を行う場合にも、変動する結晶化度をリアルタイムで把握して所定の値になるように高速粉体反応装置をフィードバック制御することはできなかった。
また、X線回折装置を使用する方法は、キチン粉末の結晶化度を精度良く計測することができるが、計測に時間を要し、測定対象もごく微量の粉末であるため、生産工程中で使う場合は抜き取り検査に利用する他なかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−212025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明の目的は、キチンの結晶化度をリアルタイムで測定できる測定装置を提供することであり、特に、オンラインで高速測定して粉砕装置や搬送装置にフィードバックすることができるキチン結晶化度測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明に係るキチン結晶化度測定装置は、試料に近赤外光を照射する光源ランプと、試料から入射する近赤外光の光量を検出する赤外光センサと、事前に生成した検量線を記録する記憶装置と、検出結果と検量線に基づいてキチンの結晶化度を算定する演算装置とを備え、近赤外センサの検出結果に基づいて近赤外スペクトルを求め、近赤外スペクトルに所定の変換処理を施して変換スペクトルとし、所定の複数の波長範囲における変換スペクトルの特性値を検量線と比較してキチンの結晶化度を推定する。
【0013】
変換スペクトルは、多数回測定して得られた近赤外スペクトルに対してMSC(multiplicative scatter correction)処理、規格化処理、2次微分処理などを施して得たものであることが好ましい。検量線は、キチンからの近赤外光反射強度に基づいて生成した変換スペクトルがキチンの結晶化度と相関する2以上の波長領域についてそれぞれあらかじめ作成したものである。2000nmから2200nmの領域における変換スペクトルに基づいて、特に、2050nm、2070nm、2095nm、2120nm、2160nm近傍にピーク値が出現する領域の特性値に基づいて、測定および演算をすることが好ましい。特性値は、その領域内におけるピーク値や、所定の波長幅を持った所定の波長域における出力積分値などであってもよい。なお、測定部における試料の厚さによって出力が変化する場合があり、測定時における粉末試料の厚さは決められた値にすることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係るキチン結晶化度測定装置を組み込んだキチン粉末供給装置は、粉砕機と搬送コンベヤと層厚設定ロールと選別機と排出コンベヤとを備える。粉砕機から供給されるキチン粉末は、層厚設定ロールにより所定の厚さに制御されて、搬送コンベヤにより本発明の測定装置の測定位置に運ばれ、キチン結晶化度測定装置により結晶化度が測定される。そして、結晶化度測定結果に基づいて、測定値が設定した結晶化度以下でない場合は、選別器を用いて、そのキチン粉末を再度粉砕機に戻し、測定値が設定値以下である場合にはキチン粉末を製品として提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るキチン結晶化度測定装置によれば、キチン結晶化度の差を際だたせる変数変換を施して得られる変換スペクトルを利用することにより、検量線を用いて簡便にキチン結晶化度の変化を検知することができる。また、本発明に係るキチン結晶化度測定装置は、キチン結晶化度を高速で測定することができるので、オンライン測定してキチン粉末供給装置にフィードバックして所望の結晶化度を有するキチン粉末を供給することができる。特に、測定位置をたとえば2050nm、2070nm、2090nm、2120nm、2150nmなど、高い相関関係を有する領域に限定した場合は、結晶化度と変換スペクトルとの関連が明瞭であり、しかも演算量が激減し極めて高速な測定が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の1実施形態に係るキチン結晶化度測定装置の例を説明するブロック図である。
【図2】本実施形態における9つの異なるキチン粉末試料について重ねて示した近赤外スペクトル図である。
【図3】本実施形態における近赤外スペクトルに変換処理を施して得た変換スペクトル図である。
【図4】本実施形態のキチン結晶化度測定装置の測定原理を説明する変換スペクトル図である。
【図5】本実施形態における検量線を示す概念図である。
【図6】本実施形態のキチン結晶化度測定装置を使ったキチン粉末選別装置のブロック図である。
【図7】本実施形態のキチン結晶化度測定装置を適用したキチン粉末製造プラントのブロック図である。
【図8】本実施形態のキチン粉末製造設備における操作手順のメインフローを示すフロー図である。
【図9】本実施形態の操作手順における検量線作成サブルーチンを示すフロー図である。
【図10】本実施形態の操作手順におけるキチン結晶化度測定サブルーチンを示すフロー図である。
【図11】本実施形態の操作手順の結晶化度判定後のサブルーチンを示すフロー図である。
【図12】本実施形態の検量線作成に使う標準試料を製造する高速粉体反応装置の原理図である。
【図13】本実施形態のキチン結晶化度測定装置を使った別のキチン粉末選別装置のブロック図である。
【図14】微粉砕の程度の異なるキチンについて得られたXRDパターンの例である。
【図15】高速粉体反応装置を用いた微粉砕の程度とキチンの結晶化度の関係の例を示す表である。
【図16】図15の表を図示したグラフである。
【図17】種々の条件において測定したキチンの結晶化度と糖化率の関係を例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るキチン結晶化度測定装置の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。
図1は本発明に係るキチン結晶化度測定装置の例を説明するブロック図である。図1に示した、本発明の1実施形態に係るキチン結晶化度測定装置の構成を示すブロック図を参照すると、本実施形態のキチン結晶化度測定装置1は、光源ランプ11と、赤外光センサ12と、スキャナ13と、スペクトル変換器14と、選択器15と、検量線記憶装置16と、判読器17と、結晶化度推定器18と、出力器19とを含んで構成される。なお、赤外光センサ12は、入力光路にモノクロメータやポリクロメータなどの分光器20を備えて、入射光の波長を走査させることができる。スキャナ13と、スペクトル変換器14と、選択器15と、検量線記憶装置16と、判読器17と、結晶化度推定器18は、それぞれ独立的にあるいは複合的に電子回路で構成することができるが、それぞれの機能を電子計算機のソフトウエア演算手段および記憶装置によって達成するようにすることもできる。
【0018】
光源ランプ11は、キチン粉末試料2上の赤外光センサの側方から近赤外光を照射する。赤外光センサ12は、試料2で散乱される近赤外光を入射して光強度を検出する。スキャナ13は、赤外光センサ12の測定出力について数10回波長走査して波長ごとの光強度を抽出して近赤外スペクトルを生成する。スペクトル変換器14は、スキャナ13で得られた数10個の近赤外スペクトルに対して、規格化処理と、MSC(multiplicative scatter correction)処理と、2次微分処理を施して平均化し、変換スペクトルを生成する。なお、スキャナ13でデータを平均化することもでき、近赤外スペクトルが平均化されている場合は、スペクトル変換器14における平均化は不要になる。
【0019】
MSC処理は、スペクトルを平行移動及び回転させて特定のスペクトルに合わせ込む前処理方法で、測定スペクトル内に生じる光の散乱などの乗算的因子や加算的因子を除去するものである。変換スペクトルは、MSC処理によって散乱光の光路長の相違を補償した近赤外スペクトルについて2次微分処理したものである。近赤外スペクトルは結晶化度が大きい試料ほど物質の特性が明瞭に表れスペクトル変化率が大きくなるため、2次微分して得られた変換スペクトルは、結晶化度が大きい試料ほど変化が大きくなる傾向がある。特に、2000nmから2200nmの領域は、アミドの伸縮振動に由来する部分であり、また試料の厚みによらず安定的に結晶化度を反映する領域である。
【0020】
選択器15は、結晶化度の算定に使用する所定の波長範囲における変換スペクトルの特性値を読み取って出力する。検量線記憶装置16は、あらかじめ測定して得た検量線を格納する。判読器17は、所定の波長範囲における変換スペクトルの特性値を検量線に当てはめて、算定用の波長範囲ごとに結晶化度推定値を読み取る。結晶化度推定に用いる変換スペクトルの特性値は、所定の波長範囲のピーク値や出力の積算値などである。結晶化度推定器18は、いくつかの波長範囲における結晶化度推定値を平均化してキチン粉末試料の結晶化度を推定する。出力器19は、結晶化度の推定結果を出力する。なお、出力器19は、キチン粉末試料が所望の結晶化度になっているかなど、結晶化度の閾値と比較した結果を出力しても良い。
【0021】
次に、図2から図5を用いて、本実施形態に係るキチン結晶化度測定装置の測定原理について説明する。本発明のキチン結晶化度測定装置1では、赤外光センサ12により近赤外スペクトルを取得して、これを変換処理して特定の特性値が読み取れる変換スペクトルに変成し、特定する波長領域における特性値を検知し、あらかじめ求めておいた検量線に合わせて結晶化度を推定する。
【0022】
図2は9つの異なるキチン粉末試料測定結果を重ねて示した近赤外スペクトル図である。図2は、微粉砕機の回転数と処理時間を変化させて得た、結晶化度の異なる3種類のキチン粉末試料を、それぞれ1,2,3mm厚にして試料台に載せて拡散反射測定した、合わせて9ケースについて、得られた生の近赤外スペクトルを一緒に表示したものである。キチン粉末試料の結晶化度は、XRDパターンに基づいて計測した結果から、84.0%、74.4%、64.3%と評価されたものである。生の近赤外スペクトルは、相互でスペクトル強度の絶対値は異なるにしても、パターンは酷似しており、結晶化度の差に対応する偏差を見出すことは困難である。
【0023】
図3は、1つの近赤外スペクトルについて変換処理を施して得た変換スペクトル図である。近赤外スペクトルの変換処理は、1つの試料について波長走査を繰り返すことにより得られた数10個の近赤外スペクトルに対して、規格化処理と、MSC処理と、2次微分処理を施して平均化するものである。規格化処理は、同じ試料について取得するスペクトルはレベルが変動しても基本的な形状は変化しないと考えられることから、スペクトルの最大値を基準として形状を表す処理で、スペクトルの形状を比較するために良く用いられる手法である。
【0024】
MSC処理は、スペクトルの形状を変化させる乗算的散乱因子とスペクトルのレベルを変化させる加算的散乱因子を最小二乗法により推定して除去するもので、試料の粒度が変化する場合にこれを補正する場合などに効果がある。2次微分処理は、スペクトル形状の変化率を算定する処理である。なお、2次微分を施した変換スペクトルは、元の近赤外スペクトル図と直感的なずれを生じるので、全体に−1を掛けることにより、変換スペクトルに表れるピークが元の近赤外スペクトルの上向きのピークに対応して上に凸になるようにしている。こうした変換処理を施して得られる変換スペクトルは、数10個のスペクトルについて平均値を取ることによって、試料ごとに十分安定な指標となる。
【0025】
図4は、キチン結晶化度測定装置の測定原理を説明する変換スペクトル図である。図は、結晶化度の異なる9個の試料について、変換スペクトルを重ねて表示したものである。キチン粉末試料の結晶化度は、X線回折装置で求めたXRDパターンに基づいて計測した結果から、それぞれ、90.9%、84.0%、74.4%、71.1%、64.3%、41.9%、35.7%と評価されている。近赤外スペクトルは、結晶化度が大きい試料ほどキチンの特性が明瞭に表れ、変化率が大きくなるので、変換スペクトルは結晶化度が大きい試料ほど変化が激しくなる傾向がある。図4においても、2050nm、2070nm、2095nm、2120nm、2160nmの近傍にある上向きあるいは下向きピークで、結晶化度の順序に対応するピーク値が得られることが示されている。
【0026】
そこで、結晶化度の知れている複数の標準試料について変換スペクトルを生成し、各試料についてこれらの特徴領域におけるピークの特性値を算定して、ピーク特性値と結晶化度の関係を示す検量線を作成して利用することにより、任意の試料について結晶化度を推定することができる。
【0027】
図5は、図4の測定例に基づいて作成した検量線の例を示す検量線の概念図である。図は、横軸に結晶化度、縦軸に任意目盛で変換スペクトル特性値をプロットしたものである。図5では、図4中に顕著な2050nm、2070nm、2095nm、2120nm付近のピークについて、各試料の特性を表わす特性値としてピーク値を使って、各領域における特性値と結晶化度の関係を示す検量線を生成している。なお、特に、2000nmから2200nmの領域は、アミドの伸縮振動に由来する部分であって、キチン粉末の特性値として安定的なピークを示すので、結晶化度との対応を判定する領域として採用することが好ましい。なお、特性値として、特定波長を挟んだ所定波長幅における変換スペクトルの積算値などを使っても、比較的安定した指標を得ることができる。
【0028】
図5の検量線では、2050nm近傍と2095nm近傍のピーク値は結晶化度が大きくなるにつれて大きくなり、2070nmと2120nmのピーク値は結晶化度が大きくなるにつれて小さくなる。そこで、結晶化度を知りたい試料を試料台に載せて測定して変換スペクトルを取得し、それぞれの波長領域についてピーク値を読み取ってそれぞれの波長領域の検量線上にプロットし、対応する結晶化度を得て、それらを平均すると、より信頼性の高い結晶化度推定値となる。図5に参考として記入されたサンプルでは、結晶化度が60.3%であることが分かる。
【0029】
なお、本実施形態のキチン結晶化度測定装置では、キチン粉末試料の層厚が厚いと結晶化度を正しく判定することができない場合がある。光の浸透する深さが波長によって異なるため、層厚が過大であると散乱光分布に偏差が生じるためと考えられる。たとえば、上記試料を使った試験では、2095nm付近のピークから結晶化度を判定する場合は、試料の層厚が1mm、2mm、3mmのいずれでも、結晶化度の順序が変換スペクトル出力に反映されて判定可能であったが、1737nm付近のピークでは、層厚1mm以外では、結晶化度の判定が不能になる場合があった。また、2120nm付近のピークでは、層厚1mmおよび2mmで結晶化度順序に相応する変換スペクトルを得ることができたが、層厚3mmでは混然として結晶化度の判定が不能であった。
【0030】
一般に、キチン結晶化度は、2000nmから2200nmの領域では、層厚1〜3mmで判定可能であるが、2000nm以下の領域では層厚1mmより厚くては判定ができない場合が生じる。このように、2000nmから2200nmの領域は、試料の厚みによらず安定的に結晶化度を反映する領域である。
オンラインによる測定は、測定装置の試料台に代えて試料搬送コンベヤを据えて、所定の層厚で試料を測定位置に連続的に供給しながら測定する。そこで、生産されたキチン粉末を全量計測する場合には、層厚を厚くするほど測定の効率が高くなる。したがって、測定効率の面からも、波長2000nmから2200nmの領域における特徴的特性を有するピークを使って、キチン結晶化度を推定することが好ましい。2000nmから2200nmの波長範囲における特徴的領域では、層厚を1.5mmから2.5mmの間に設定することができる。
【0031】
なお、同じピーク領域であっても、層厚が異なると同じ結晶化度のキチン粉体試料でもピーク特性値が異なることが観測されている。したがって、層厚ごとに検量線が必要になる。そこで層厚ごとに検量線を生成しておいて、対象試料を測定したときの層厚と同じ層厚の検量線を選択して使うことにより、結晶化度を推定するようにすることが好ましい。
【0032】
図6は、本実施形態のキチン結晶化度測定装置をオンライン計測装置に使用し、結晶化度に基づいてキチン粉末を選別する選別装置のブロック図である。
キチン粉末選別装置3は、本実施形態のキチン結晶化度測定装置1と、制御盤21と、振動フィーダ22と、搬送コンベヤ23と、層厚設定ロール24と、選別機25と、製品用の製品コンベヤ26と未達品用の未達品コンベヤ27とを含んでなる。キチン結晶化度測定装置1は、図1などで説明した測定装置1である。
【0033】
キチン結晶化度測定装置1の試料台に代えて、搬送コンベヤ23の表面が測定位置を通過するように配置されていて、搬送コンベヤ23上のキチン粉末試料が移動しながら、赤外光を放射する光源ランプ11に斜め方向から照らされて、散乱光を放出し、この散乱光をキチン結晶化度測定器1に入射させる。搬送コンベヤ23には微粉砕されたキチン粉末が振動フィーダ22により供給される。なお、搬送コンベヤ23の入口端には層厚設定ロール24が設置されていて、搬送コンベヤ23上のキチン粉体の層厚を測定のために設定される厚さに保持する。
【0034】
キチン結晶化度測定装置1は、入射した散乱光に基づいて、近赤外スペクトルを生成し、所定の演算処理を施して変換スペクトルを得ると、内蔵の検量線に当てはめて結晶化度を推定して、推定値を制御盤21に伝送する。制御盤21は、入力した推定値を目標とする結晶化度と比較して、キチン粉末の結晶化度が有る値より小さければ製品、大きければ未達品と判定し、判定結果に基づいて選別機25を駆動する。選別機25は、制御盤21に制御され、搬送コンベヤ23から落下してくるキチン粉末を、結晶化度に従って製品コンベヤ26と未達品コンベヤ27のいずれかに切り替えて供給する。なお、キチン結晶化度測定装置1にキチン粉体からの散乱光が入射した時刻と、キチン粉体が選別機25に到達する時刻の間には多少の時間差があるので、制御盤21の制御回路はこの時間差の補償も行わなければならない。
【0035】
キチン結晶化度測定装置1は、結晶化度の設定値を記憶していて、製品と未達品との判定をも行い、合否情報のみを制御盤21に伝達するようにしても良い。また、赤外光センサから出力される散乱光情報を直接制御盤21に伝達して、その後の計測器としての処理を制御盤21に委ねることもできる。
【0036】
本実施形態のキチン粉末選別装置3によれば、振動フィーダ22で加工済みのキチン粉末を供給すると、層厚設定ロール24により所定の層厚に調整されたキチン粉末が連続的にキチン結晶化度測定装置1の散乱光入射口の下に搬送される。キチン結晶化度測定装置1と制御盤21により、キチン粉末が散乱する近赤外光に基づいて、近赤外スペクトルを生成し、さらに変換スペクトルを生成して、所定の波長領域における特性値を算定して、検量線に当てはめて結晶化度を推定する。
【0037】
推定した結晶化度について閾値と比較して、キチン粉末が製品品質を満たすか否かを判定し、判定結果が合格であれば選別機25を製品コンベヤ26側に切り替えて落下してくるキチン粉末を製品タンクに排出する。また、判定結果が不合格であれば、未達品コンベヤ27側に落として、排出させる。このようにして、本実施形態のキチン粉末選別装置3は、キチン粉末の結晶化度をオンラインで測定して、結晶化度に従って分別して排出することができる。
【0038】
次に、図面を用いて、本実施形態のキチン結晶化度測定装置を使用したキチン粉末製造設備を説明する。図7は、本実施形態のキチン結晶化度測定装置を使用したキチン粉末選別装置を適用した、本実施形態に係るキチン粉末製造設備の1例を示すブロック図である。
キチン粉末製造設備4は、キチン粉末を粉砕して、結晶化度を推定し、目標とする結晶化度以下になったキチン粉末を回収し、目標結晶化度以上のキチン粉末は再処理する設備である。キチン粉末製造設備4は、後工程で酵素糖化によりキチン粉末から高い収量でN−アセチルグルコサミンを生産することを保障するために、平均粒子径D50が40μmまでのキチン粉末について、結晶化度を精度良く、かつ工業的生産量に対応する速度で計測判定する。
【0039】
キチン粉末製造設備4は、原料前処理部位5と微粉砕・非晶質化判定部位6と製品回収部位7とを含んで構成される。
原料前処理部位5には、原料タンク31とフィーダ32と粗粉砕機33が含まれる。原料タンク31に受け入れられるキチンは、たとえばカニキチンで、ほぼ5mm程度のサイズを有する比較的粗大なキチン原料である。フィーダ32は、原料タンク31内の原料を適宜なペースで引き出し、粗粉砕機33に供給する。粗粉砕機33では、原料キチンを平均径D50がほぼ500μm程度になるように粗粉砕して、微粉砕・非晶質化判定部位6に搬出する。
【0040】
微粉砕・非晶質化判定部位6は、粗粉タンク34とフィーダ35とブロワ36と粉砕機37とサンプラー38と切替弁39とキチン結晶化度測定装置1と冷却機40とを含んで構成される。キチン結晶化度測定装置1とサンプラー38と切替弁39とで、先に説明したキチン粉末選別装置3と同じ機能をオンラインで達成する構成となる。
【0041】
原料前処理部位5の粗粉砕機33から供給されるキチン粉末は、キチン粉末の流れに対する緩衝容器となる粗粉タンク34に受け入れられる。粗粉タンク34にはブロワ36が接続されていて、このブロワ36が、微粉砕・非晶質化判定部位6内で循環するキチン粉末の流路内にキチン粉末流を維持する機能を果たす。粗粉タンク34内のキチン粉末はフィーダ35により定量引き出しされて粉砕機37に供給される。粉砕機37は微小粉体をさらに微細に粉砕して、キチン粉末選別装置3に供給する。キチン粉末選別装置3は、サンプラー38で一部のキチン粉末流をキチン結晶化度測定装置1に分岐して供給し、キチン粉末流の大部分を切替弁39に通過させる。
【0042】
キチン結晶化度測定装置1は、キチン粉末の結晶化度を推定し、キチン粉末製品として設定された結晶化度と比較して、結晶化度が設定値より低下して製品品質が達成されている場合は、測定された部分が切替弁39の位置に来たところを見計らって、製品回収部位7へ排出する方向に粉末流路を切り替える。一方、結晶化度が設定値より低下していない場合は、測定された部分が切替弁39の位置に来たところを見計らって、粗粉タンク34に戻る帰還路の方に粉末流路を切り替える。粗粉タンク34へ帰還する流路の途中には、冷却機40が設置されていて、粉砕機37などで発生した熱を除去して、再度粉砕されても品質低下が生じないようにしている。
【0043】
製品回収部位7は、気流分級機41と粗目製品タンク42と微粉コレクタ43と細目製品タンク44とブロワ45とを含んで構成される。微粉砕・非晶質化判定部位6から受け入れた製品品質を備えるキチン粉末はブロワ45で引かれて気流分級機41に流入し、軽い粉体を微粉コレクタ43の方に分離して、気流分級機41の機内で落下した成分を粗目製品タンク42に収納する。また、微粉コレクタ43に供給された微粉成分は極めて細かい不純物をブロワ45で吸い出して、機内で落下する微粉成分を細目製品タンク44に収納する。これら製品タンク42,44に収納されたキチン粉末製品は、適宜取り出して需要者に供給される。
【0044】
図8は本実施形態のキチン粉末製造設備におけるキチン結晶化度測定装置を中心とした操作手順のメインフローを説明するフロー図、図9から図11はキチン結晶化度測定装置に係る操作手順のサブルーチンを示すフロー図である。
キチン粉末製造設備4の操業をする前に、キチン結晶化度測定装置1の準備をする必要がある。キチン結晶化度測定装置1の準備には、検量線の作成と(S1)、測定準備(S2)が含まれる。検量線作成は、結晶化度の知れた複数のサンプルについて測定結果と結晶化度の関係を見出す作業である。
【0045】
初めに、適当なサンプルを作成する(S11)。引用文献1に記載の方法は、検量線を作成するために利用できる。すなわち、キチン破片を適宜の微粉砕機にかけて、粉砕度の異なる複数のキチン粉末試料とする。たとえば、図12に原理図で示すような、コンバージミルの原理を利用した高速粉体反応装置を使って、粉砕度を調整した試料を得ることができる。
【0046】
この高速粉体反応装置は、高速回転する円筒形粉砕用容器61の内壁とクリアランス67をあけて空間に固定したガイドベーン62を備えたもので、内部に粉砕する材料65と粉砕用ボール63を一緒に入れて粉砕用容器61を回転させると、クリアランス67を通過した粉砕する材料65は粉砕用容器61の壁に付着して材料粉体層64を形成し、粉砕用ボール63と粉砕する材料65の一部はガイドベーン62によって運動方向を変えられ、衝突部66に向かって、壁の材料粉体層64に激突して材料を破砕する。粉砕用容器61の回転数と処理時間を変化させることにより、破砕程度の異なる粉体試料を得ることができる。
【0047】
こうして得られたキチン粉体試料は、X線回折装置を用いて結晶化度を精度良く測定する(S12)。たとえば、キチン材料を500rpm、700rpm、800rpmの回転数を選んで、30分、60分、120分など異なる時間処理することで、結晶化度が未粉砕試料の90.9%と粉砕試料で84.0%から35.7%の範囲で異なるキチン粉末標準試料を作成することができた。なお、これら粉砕した粉体試料の平均粒度D50は、30.5μmから16.4μmの範囲にあった。
【0048】
次に、これらキチン粉末標準試料をキチン結晶化度測定装置1で測定して、近赤外スペクトルを取得する。標準試料は、層厚をたとえば1mm、2mm、3mmなど測定したい試料について設定する層厚と同じ値に特定して、赤外光センサの出力について30回など数10回の波長走査を行って、近赤外スペクトルを生成する。さらに、近赤外スペクトルに規格化処理とMSC処理と2次微分処理とを施して変換し、変換スペクトルを得る(S14)。
【0049】
これらの操作を各標準試料について行い、得られた変換スペクトルを重ねて表示することにより、ピークの大きさ、高さ、あるいは面積など、標準試料ごとのピークの特性値が結晶化度の高さの順に並ぶピークを探す(S15)。このようなピーク領域が複数見出されたら、ピーク領域の特性値を標準試料ごとに算定して、図5に例示したような特性値と結晶化度の相関が明らかになる検量線を作成して、キチン結晶化度測定装置1の記憶装置に格納する(S16)。
【0050】
その後、キチン結晶化度測定装置1の検量線に適合する試料層厚を実現するため、サンプラー38から引き出すキチン粉体を搬送するコンベヤの層厚設定ロール24の高さを設定する(S21)。また、検量線を作成した波長領域のうち、たとえば3カ所あるいは5カ所など、実際の結晶化度推定に利用する複数の波長領域を指定する(S22)。これらの準備が整えば、キチン結晶化度測定装置1はキチン粉末製造設備4で破砕されたキチン粉末の結晶化度を推定することができる(S3)。
【0051】
キチン結晶化度測定装置1による測定は、測定対象となるキチン粉末をサンプラー38で引き出し、振動フィーダ22などでキチン結晶化度測定装置1の搬送コンベヤ23に供給することで開始される(S31)。搬送コンベヤ23は、被測定キチン粉末をキチン結晶化度測定装置1の測定位置に搬送する(S32)。光源ランプ11から赤外光を照射され、散乱光が赤外光センサに入射する。このとき、キチン結晶化度測定装置1は、2000nmから2200nmなど、特徴的な領域を含む所定の波長範囲内で波長走査をたとえば30回など、数10回繰り返して、キチン粉末の近赤外スペクトルを取得する(S33)。
【0052】
次いで、近赤外スペクトルについて、検量線を作成するときに行ったと同じ変換処理を施して、変換スペクトルを生成する(S34)。さらに、変換スペクトルについて、使用する複数の検量線と同じ波長領域のピークの特性値、たとえばピーク値、所定波長幅内のピーク波形積算値など、を算定して、各検量線に当てはめて検量線ごとに結晶化度を推定する(S35)。複数の結晶化度推定値を平均化することにより、被測定キチン粉末試料についての信頼性を高めた結晶化度推定値を得る(S36)。
【0053】
次に、得られた結晶化度推定値を、あらかじめ設定された目標値と比較して、製品としての結晶化度品質を有するか否かを判定する(S4)。結晶化度目標値は、製品としてのキチン粉末が有すべき最大結晶化度である。結晶化度が設定値を超えていて粉砕不足の場合は、再度粉砕機に掛けて微粒化する(S5)。より具体的には、選別機25を駆動して搬送コンベヤ23のキチン粉末を未達品コンベヤ27に供給する(S51)。未達品コンベヤ27は、キチン粉末を冷却機40を通して冷却し、粗粉タンク34に戻す(S52)。粗粉タンク34のキチン粉末はフィーダ35により定量的に粉砕機37に供給され、繰り返し粉砕される(S53)。粉砕機37で微粉砕されたキチン粉末は、粉砕機37から排出され、一部がサンプラー38で抽出されて、キチン結晶化度測定装置1において結晶化度を測定する(S3)。
【0054】
一方、結晶化度が目標値より低くなっているときは、製品タンクに収納して製品として出荷できるので(S6)、選別機25を駆動して搬送コンベヤ23のキチン粉末を製品コンベヤ26に供給する方に切り替える(S61)。キチン粉末は、製品コンベヤ26で気流分級機41に送られる(S62)。気流分級機41により粗いキチン粉末と細かいキチン粉末に分離し(S63)、粗いキチン粉末を粗目製品タンク42に送り(S64)、細かいキチン粉末を微粉コレクタ43に送る。微粉コレクタ43では、製品として使用できる大きさの細目製品を細目製品タンク44に送って貯蔵する(S65)。
【0055】
本実施形態のキチン粉末製造設備4は、オンライン計測によってキチン粉末の近赤外吸収スペクトルを測定して短時間で結晶化度を推定し、目標とする結晶化度以下になっていないキチン粉末は、粉砕機37に戻して再粉砕し、結晶化度が目標値以下になったキチン粉末を製品として回収する。本実施形態のキチン粉末製造設備4は、確実に結晶化度の低い製品キチン粉末を製造して提供することができる。
【0056】
図13は、本実施形態の第2の実施態様におけるキチン粉末選別装置8を示すブロック図である。図6に示した実施態様における装置3と異なる点は、近赤外スペクトルを監視して異常ピークを検出する機能と、金属検出器51と、異物排出コンベヤ52とを備えて、キチン粉末中に含まれる異物を検出して分離することができるようにした点である。これ以外は、図6のキチン粉末選別装置3と異なる点はない。
【0057】
金属検出器51は、たとえば搬送コンベヤ23の排出端近くに設置され、異物金属を検出したときには、公知の手段を用いて、異物近傍の粉体を異物排出コンベヤ52上に移動させる。また、近赤外スペクトルの異常ピークを発見したときも、何らかの異物が含まれていることになるので、異物部分が搬送コンベヤ23の排出端位置に来るタイミングを計って、同様に異物近傍の粉体を異物排出コンベヤ52上に移動させる。
本実施態様のキチン粉末選別装置8は、キチン粉末製造工程においてキチン粉体の全量が搬送コンベヤ23により搬送されるシステムとして利用する場合に、異物排除をするために有効である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のキチン結晶化度測定装置は、生物資源由来の物質で枯渇の恐れがなく生物分解性で安全性が高いキチンを、医薬、化粧品、肥料など様々な分野で応用する上で、N−アセチルグルコサミンを製造するための酵素分解の前処理として、キチンの非晶質化を定量的に行うことにより、効率の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 キチン結晶化度測定装置
2 キチン粉末試料
3 キチン粉末選別装置
4 キチン粉末製造設備
5 原料前処理部位
6 微粉砕・非晶質化判定部位
7 製品回収部位
11 光源ランプ
12 赤外光センサ
13 スキャナ
14 スペクトル変換器
15 選別器
16 検量線記憶装置
17 判読器
18 結晶化度推定器
19 出力器
20 分光器
21 制御盤
22 振動フィーダ
23 搬送コンベヤ
24 層厚設定ロール
25 選別機
26 製品コンベヤ
27 未達品コンベヤ
31 原料タンク
32 フィーダ
33 粗粉砕機
34 粗粉タンク
35 フィーダ
36 ブロワ
37 粉砕機
38 サンプラー
39 切替弁
40 冷却機
41 気流分級機
42 製品タンク(粗目)
43 微粉コレクタ
44 製品タンク(細目)
45 ブロワ
51 金属検出器
52 異物排出コンベヤ
61 粉砕用容器
62 ガイドベーン
63 粉砕用ボール
64 材料粉体層
65 粉砕する材料
66 衝突部
67 クリアランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の測定位置におけるキチン粉体試料に近赤外光を照射する光源ランプと、
該試料から入射する近赤外光の光量を検出する近赤外センサと、
事前に生成した近赤外光光量と試料の結晶化度を関連づける検量線を記録する記憶装置と、
前記近赤外センサの検出結果と前記検量線とに基づいてキチンの結晶化度を算定する演算装置とを備え、
前記近赤外センサの検出結果に基づいて近赤外スペクトルを求め、該近赤外スペクトルに変換処理を施して変換スペクトルとし、複数の波長領域において前記変換スペクトルの特性値を前記検量線と比較して前記キチンの結晶化度を推定する、
キチン結晶化度測定装置。
【請求項2】
前記変換処理は、MSC(multiplicative scatter correction)処理と2次微分処理と規格化処理を含む、請求項1記載のキチン結晶化度測定装置。
【請求項3】
前記複数の波長領域は、2000nmから2200nmの近赤外光範囲にある、請求項1または2記載のキチン結晶化度測定装置。
【請求項4】
前記複数の波長領域は、2050nm、2070nm、2095nm、2120nm、2160nmの波長を含む波長領域から選択される、請求項1から3のいずれか1項記載のキチン結晶化度測定装置。
【請求項5】
前記検量線は、結晶化度の異なる複数のキチン粉体試料の前記波長領域における前記変換スペクトルの特性値と、前記複数のキチン粉体試料の別途測定した結晶化度と、に基づいて生成したものである、請求項1から4のいずれか1項記載のキチン結晶化度測定装置。
【請求項6】
前記キチン粉体試料は1mmから3mmの範囲内であらかじめ定めた厚みに整えて前記測定位置にセットされる、請求項1から5のいずれか1項記載のキチン結晶化度測定装置。
【請求項7】
キチンを微粉砕する粉砕機と、
該粉砕機から供給されるキチン粉末を搬送する搬送コンベヤと、
該搬送コンベヤ上の前記キチン粉末の厚さを予め定めた設定値に保持する層厚設定ロールと、
請求項1から6のいずれか1項記載のキチン結晶化度測定装置と、
該キチン結晶化度測定装置の測定結果に基づいて前記キチン粉末の搬送先を選択する選別器と、
前記キチン粉末を製品として排出する排出コンベヤとを備え、
前記粉砕機から供給される前記キチン粉末が、
前記層厚設定ロールにより所定の厚さに制御されて、前記搬送コンベヤにより前記キチン結晶化度測定装置の測定位置に運ばれ、該キチン結晶化度測定装置により結晶化度が測定されて、該結晶化度測定結果に基づいて、結晶化度測定値が設定した結晶化度以下でない場合は、前記選別器を用いて該キチン粉末を再度前記粉砕機に戻し、結晶化度測定値が設定値以下である場合には前記排出コンベヤに該キチン粉末を供給して製品として搬出する、
キチン粉末供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−190746(P2010−190746A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−35741(P2009−35741)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度 生物系特定産業技術研究センター「イノベーション創出基礎的研究推進事業」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【出願人】(503245465)株式会社アーステクニカ (54)
【Fターム(参考)】