説明

キノコ培地の殺菌方法及びその殺菌装置

【課題】キノコ培地を殺菌する際の時間を短縮してエネルギー消費を大幅に削減できるキノコ培地の殺菌方法及びその殺菌装置を提供すること。
【解決手段】キノコ菌床栽培用の培地を蒸気によって加熱殺菌するキノコ培地の殺菌装置であって、循環通気路13と、循環通気路13中に設けられ、蒸気を循環させる送風機14と、循環通気路13中に設けられ、蒸気によって加熱殺菌するために、キノコ培地が充填されたキノコ栽培瓶を収納する加熱殺菌釜15と、循環通気路13及び/又は加熱殺菌釜15に接続され、飽和蒸気を供給する蒸気ボイラ11と、循環通気路13中に設けられ、飽和蒸気を過熱して過熱蒸気を生じさせる過熱蒸気発生器12とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、キノコの人工菌床栽培におけるキノコ培地の殺菌方法及びキノコ培地の殺菌装置に関する。菌床栽培の対象となるキノコの種類としては、エノキ、シメジ類、ナメコ、マイタケ、バイリング等がある。
【背景技術】
【0002】
従来から、キノコ培地を生産するには、各材料を混合して水を加え、水分等の調製をした原料を瓶又は袋に詰めた後、蒸気釜に入れて加熱殺菌を行っている。
従来の蒸気釜を用いた加熱殺菌は、時間が長くかかる。これは瓶等の内部まで温度を上げて殺菌する必要があることや、調整された水分についても高温に加熱することを要するためと考えられる。また、冷めた蒸気が排気されており、大量の熱が逃げている。
さらに、その加熱殺菌されたキノコ培地は、種菌接種の適温になるまで冷ますため、例えばクーラー装置によって冷却されている。
これによれば、大量の熱量(エネルギー)を消費することになり、エネルギーコストが嵩んでいた。
【0003】
なお、加熱殺菌の効率を向上させるため、高圧蒸気釜を利用することが提案されている。これによれば、釜内の温度を100℃以上に上げることが可能であり、殺菌時間を短縮できる。従って、従来に比べれば、効率のよいキノコ培地の加熱殺菌を行うことができる。
しかし、これによっても、冷めた蒸気は排気されており、依然として大量の熱量を消費し、殺菌時間の短縮も十分ではなかった。
【0004】
ところで、栽培瓶等を利用してキノコを人工的に栽培する方法は、概略次の工程による。先ず、オガ屑やコーンコブの粉砕物等の草木質材を主体とした培地を栽培瓶内に充填し、加熱殺菌の後、栽培瓶の瓶口にキノコの種菌を接種する。そして、培養室で培養させて培地内に菌糸を蔓延させ、培養後、発生室にて子実体を生長させて栽培瓶の瓶口から外方へ生長したキノコの子実体を収穫する。また、種菌の接種には、キノコ菌の生長を促進するため、液状の種菌を用いることもできる。
【0005】
なお、キノコの人工栽培に関連し、熱風や蒸気を吹き付けて処理する方法として、「茸の菌床栽培の廃培地の再生方法」が開示されている(特許文献1参照)。なお、この方法は原料を乾燥・再生するもので、その乾燥された再生原料を用いる際は、上記のキノコ栽培工程のように瓶詰め後、蒸気釜で加熱殺菌を行っているものと考えられる。
【特許文献1】特開平6−7030号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
キノコ培地の殺菌方法及びその殺菌装置に関して解決しようとする問題点は、キノコ培地を殺菌するために長時間を要して大量のエネルギーを消費し、効率が悪い点にある。
そこで本発明の目的は、処理時間を短縮でき、エネルギー消費を大幅に削減できる効率の良いキノコ培地の殺菌方法及びその殺菌装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明にかかるキノコ培地の殺菌方法の一形態によれば、キノコ菌床栽培用の培地を蒸気によって加熱殺菌するキノコ培地の殺菌方法であって、蒸気ボイラ等によって発生・導入された飽和蒸気を加熱して過熱蒸気を生じさせ、該過熱蒸気をキノコ培地が充填されたキノコ栽培瓶の収納された加熱殺菌釜へ供給すると共に、該加熱殺菌釜及び前記過熱蒸気の発生部が接続された循環通気路によって蒸気を循環させることを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかるキノコ培地の殺菌装置の一形態によれば、キノコ菌床栽培用の培地を蒸気によって加熱殺菌するキノコ培地の殺菌装置であって、循環通気路と、該循環通気路中に設けられ、蒸気を循環させる送風機と、前記循環通気路中に設けられ、蒸気によって加熱殺菌するために前記キノコ培地が充填されたキノコ栽培瓶を収納する加熱殺菌釜と、前記循環通気路及び/又は前記加熱殺菌釜に接続され、飽和蒸気を供給する蒸気ボイラと、前記循環通気路中に設けられ、飽和蒸気を加熱して過熱蒸気を生じさせる過熱蒸気発生器とを具備する
【0009】
また、本発明にかかるキノコ培地の殺菌装置の一形態によれば、前記過熱蒸気発生器が、高周波加熱器であることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかるキノコ培地の殺菌方法及びその殺菌装置によれば、処理時間を短縮でき、エネルギー消費を大幅に削減できるという特別有利な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明にかかるキノコ培地の殺菌装置について最良の形態例を添付図面(図1)に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明にかかるキノコ培地の殺菌装置の形態例を示す説明図である。このキノコ培地の殺菌装置よれば、キノコ菌床栽培用の培地を蒸気によって加熱殺菌するキノコ培地の殺菌方法を実施できる。
このキノコ培地の殺菌方法によれば、蒸気ボイラ等によって発生・導入された飽和蒸気を加熱して過熱蒸気を生じさせ、その過熱蒸気をキノコ培地が充填されたキノコ栽培瓶の収納された加熱殺菌釜へ供給すると共に、その加熱殺菌釜及び過熱蒸気の発生部が接続された循環通気路によって蒸気を循環させる。
【0012】
13は循環通気路である。図1に示すように閉じた通気回路になっており、矢印で示したように蒸気が循環するように各構成要素に接続されている。
14は送風機であり、循環通気路13中に接続され、飽和蒸気や過熱蒸気の蒸気を送って強制循環させるように設けられている。本形態例では、吸気口が後述する加熱殺菌釜15の排気口側に循環通気路13を介して接続されている。この送風機14の接続位置は特に限定されるものではないが、後述する過熱蒸気発生器12の上流に接続されることで、過熱蒸気を効率よく加熱殺菌釜15へ供給できる。
なお、送風機14に頼らず、循環通気路13を介して対流現象によって蒸気を循環させることも可能である。
【0013】
15は加熱殺菌釜であり、循環通気路13中に接続されて設けられ、蒸気によって加熱殺菌するためにキノコ培地が充填されたキノコ栽培瓶70を収納する。この加熱殺菌釜15では、キノコ栽培瓶70が図1に示すようにコンテナに入った状態で何層にも重ねられて多数が収納される。この加熱殺菌釜15は、キノコ栽培瓶70がバッチ式で加熱殺菌される容器室になっている。
【0014】
本形態例では、この加熱殺菌釜15の排気口側に送風機14が循環通気路13を介して接続され、蒸気の入口側に後述する過熱蒸気発生器12が循環通気路13を介して接続されている。
15aは安全弁であり、加熱殺菌釜15内が高圧になった際に、圧力を逃がすように設けられている。また、15bはドレンであり、結露した水の排水口になっている。
【0015】
11は蒸気ボイラであり、循環通気路13及び/又は加熱殺菌釜15に接続され、飽和蒸気を供給する。
本形態例の蒸気ボイラ11は、送風機14の蒸気流の下流側で、後述する過熱蒸気発生器12については上流側にあたる循環通気路13に接続されている。つまり、送風機14と過熱蒸気発生器12との間の循環通気路13に接続されている。これによれば、効率よく過熱蒸気を加熱殺菌釜15に供給することができる。なお、蒸気ボイラ11の接続位置はこれに限定されるものではなく、例えば加熱殺菌釜15へ直接的に接続してもよい。
【0016】
また、11aは開閉調整弁であり、蒸気ボイラ11で発生される飽和蒸気の供給量を調整できるように設けられている。加熱殺菌釜15や循環通気路13に水蒸気が十分に満たされている際には蒸気ボイラ11からの蒸気の供給を遮断し、水蒸気量が減少した際には適宜に開かれる。
【0017】
12は過熱蒸気発生器であり、循環通気路13中に接続されて設けられ、飽和蒸気を加熱して過熱蒸気を生じさせる。
この過熱蒸気発生器12は、例えば高周波加熱器であるとよい。高周波誘導加熱によれば、非接触であるが、急激に効率よく温度を上昇させることができ、インバータによって制御も行い易い利点がある。
なお、加熱方法はこれに限定されず、適宜に被覆された発熱電線や、ガス等の燃焼装置、又はその他の既存技術を適宜利用できるのは勿論である。
【0018】
以上の構成を備えるキノコ培地の殺菌装置によれば、蒸気を循環させて利用するため、エネルギー効率を高めることができる。
また、過熱蒸気発生器12によれば、100℃を超える高温の蒸気を常圧状態で得ることができる。高温の蒸気でキノコ培地の殺菌を行うことができるため、殺菌効率を高め、殺菌時間の短縮を図ることができる。これによっても、エネルギー効率を高め、生産効率を向上させて稼働コストを低減できる。
なお、過熱蒸気の温度は、例えばキノコ栽培瓶70の耐熱温度によって制限されるが、例えば120℃程度まで容易に加熱することができる。
【0019】
そして、常圧状態で稼動できるため、加熱殺菌釜15をはじめとして各構成は高圧に耐える構造を備える必要がなく、設備的にもコストを低減できる。
また、過熱蒸気は、飽和蒸気による場合に比べて結露の発生が少なく、熱伝達の効率がよい。さらに、過熱蒸気は、通常の乾いた熱風に比べて大きな熱量を保持して高い熱伝達性を有し、水蒸気の充満によって酸欠状態で加温ができる。従って、キノコ培地を酸化させずに生のままで、効率よく殺菌できる。さらにまた、結露の発生が少なく、キノコ培地の水分調整が安定的且つ好適になされる。
【0020】
ところで、本形態例の制御については、加熱殺菌釜15に供給される過熱蒸気の温度や湿度と、加熱殺菌釜15から排出される蒸気の温度や湿度を検出することによって行うことができる。設定された条件を満たすように、過熱蒸気発生器12の出力調整や、蒸気ボイラ11の出力調整、または開閉調整弁11aの調整を行えばよい。
【0021】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明にかかるキノコ培地の殺菌装置の形態例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0023】
11 蒸気ボイラ
12 過熱蒸気発生器
13 循環通気路
14 送風機
15 加熱殺菌釜
70 キノコ栽培瓶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キノコ菌床栽培用の培地を蒸気によって加熱殺菌するキノコ培地の殺菌方法であって、
蒸気ボイラ等によって発生・導入された飽和蒸気を加熱して過熱蒸気を生じさせ、該過熱蒸気をキノコ培地が充填されたキノコ栽培瓶の収納された加熱殺菌釜へ供給すると共に、該加熱殺菌釜及び前記過熱蒸気の発生部が接続された循環通気路によって蒸気を循環させることを特徴とするキノコ培地の殺菌方法。
【請求項2】
キノコ菌床栽培用の培地を蒸気によって加熱殺菌するキノコ培地の殺菌装置であって、
循環通気路と、
該循環通気路中に設けられ、蒸気を循環させる送風機と、
前記循環通気路中に設けられ、蒸気によって加熱殺菌するために前記キノコ培地が充填されたキノコ栽培瓶を収納する加熱殺菌釜と、
前記循環通気路及び/又は前記加熱殺菌釜に接続され、飽和蒸気を供給する蒸気ボイラと、
前記循環通気路中に設けられ、飽和蒸気を加熱して過熱蒸気を生じさせる過熱蒸気発生器とを具備することを特徴とするキノコ培地の殺菌装置。
【請求項3】
前記過熱蒸気発生器が、高周波加熱器であることを特徴とする請求項2記載のキノコ培地の殺菌装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−207456(P2009−207456A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−56064(P2008−56064)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(505364717)
【出願人】(506293454)株式会社 きのこ屋 (5)
【Fターム(参考)】