説明

キャビネット

【課題】背板部の強度が高く、機器取付板や取付金具等を使用する必要がない上、美観にも優れたキャビネットを提供する。
【解決手段】背板部2の左右両側縁に、折り曲げ加工によって背板部2よりも更に後方へ突出する凸条部Aを設けるとともに、左板部3及び右板部4の上下縁を凸条部Aよりも更に上方又は下方へ延設して第一フランジ部Bとし、当該第一フランジ部Bを凸条部A側へ折り曲げて凸条部Aに溶接する一方、背板部2の上下縁を凸条部Aよりも更に上方又は下方へ突出させて第二フランジ部Cとし、当該第二フランジ部Cを後方へ折り曲げて左右の凸条部A、A間を閉塞した状態で凸条部A、Aに溶接した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に電気機器を搭載するためのキャビネットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、各種電気機器を内部に搭載可能なキャビネットとしては、たとえば特許文献1に開示されているようなものが知られている。ここで、従来のキャビネットについて、図5をもとに説明する。図5は、従来のキャビネットの背板51を示しており、(a)は、電気機器60が搭載された状態を示す斜視説明図であり、(b)は、当該背板51の断面説明図である。
キャビネットは、背板51、一対の側板、天板、底板、及び前扉を組み付けてなるもので、背板51へは、ネジ52、52により電力量計等の電気機器60を取付可能となっている。当該背板51は、金属製の板状部材であって、電気機器60を取り付けた際に撓んだり変形したりしないように、上下縁が前方へ、左右側縁が後方へ夫々折り曲げられて、強度の向上が図られている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−145914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の背板51では、取り付ける電気機器の数や種類、大きさによっては強度不足となり、専用の機器取付板や取付金具を用いなければならないこともあった。したがって、電気機器の取付作業が煩雑となるし、全体重量が増すことによりキャビネットの設置作業が困難になるといった問題もある。また、背板51の強度を向上させるべく、背板51の厚みを厚くしたとしても、全体重量が増すといった問題が生じる。さらに、背板51の後方空間が上下方向へ開放されているため、キャビネットの設置後にも背板51から後方へ突出したネジ52、52が使用者に見えてしまい(前扉を開放した際等)、美観に劣るといった問題もある。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、背板部の強度が高く、機器取付板や取付金具等を使用する必要がない上、美観にも優れたキャビネットを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、背板部の左右両側を前方へ折り曲げて夫々左板部又は右板部としたキャビネット本体と、当該キャビネット本体の上面を閉塞する天板と、前記キャビネット本体の下面を閉塞する底板と、前記キャビネット本体の前面開口を開閉するための前扉とからなり、少なくとも前記背板部の内面側に電気機器を搭載可能なキャビネットであって、前記背板部の左右両側縁に、折り曲げ加工によって前記背板部よりも更に後方へ突出する凸条部を設けるとともに、前記左板部及び前記右板部の上下縁を前記凸条部よりも更に上方又は下方へ延設して第一フランジ部とし、当該第一フランジ部を前記凸条部側へ折り曲げて前記凸条部に固着する一方、前記背板部の上下縁を前記凸条部よりも更に上方又は下方へ突出させて第二フランジ部とし、当該第二フランジ部を後方へ折り曲げて左右の凸条部間を閉塞した状態で前記凸条部に固着したことを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1の記載の発明において、第一フランジ部及び/又は第二フランジ部に、底板又は天板を固定するための固着部を設けたことを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、右板部に右側開口を開設し、当該右側開口の周縁部に機器取付孔を設ける一方、前記右側開口を開閉するための右扉を、前扉とは独立に開閉動作可能に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、背板部の左右両側縁に、折り曲げ加工によって背板部よりも更に後方へ突出する凸条部を設けるとともに、左板部及び右板部の上下縁を凸条部よりも更に上方又は下方へ延設して第一フランジ部とし、当該第一フランジ部を凸条部側へ折り曲げて凸条部に固着する一方、背板部の上下縁を凸条部よりも更に上方又は下方へ突出させて第二フランジ部とし、当該第二フランジ部を後方へ折り曲げて左右の凸条部間を閉塞した状態で凸条部に固着している。したがって、背板部の強度を向上させることができ、各種電気機器を直接ネジ止め等により当該背板部へ取り付けたとしても、背板部が変形したりしない。また、専用の機器取付板や取付金具等を用いる必要がないため、電気機器の取付作業を容易に行うことができるし、キャビネット全体の重量を軽量化することができ、キャビネットの設置作業にかかる手間等も削減することができる。
さらに、キャビネット本体を上述の如く構成しているため、機器取付用ネジが突出する背板部後方の空間は、左右一対の凸条部と上下の第二フランジ部とによりその上下左右が囲われることになる。したがって、キャビネットの壁面等への設置状態において、機器取付用ネジを使用者等から隠すことができ、キャビネットの美観を向上することができる。
加えて、折り曲げ加工により左板部及び右板部を形成しているため、背板へ左板と右板とをそれぞれ組み付けるような従来のキャビネットと比較すると、キャビネットの組み付け作業の簡素化をも図ることができるし、部品点数を削減することができるため部品の管理等も容易となる。
また、請求項2に記載の発明によれば、第一フランジ部及び/又は第二フランジ部に、底板又は天板を固定するための固着部を設けているため、強度の向上を図るための第一フランジ部及び/又は第二フランジ部に、天板又は底板の固着部としての機能をもたせた合理的な構成とすることができる。
さらに、請求項3に記載の発明によれば、右板部に右側開口を開設し、当該右側開口の周縁部に機器取付孔を設ける一方、前記右側開口を開閉するための右扉を、前扉とは独立に開閉動作可能に設けいる。したがって、操作したい電気機器のキャビネット内部における取付位置や、キャビネットの設置環境に応じて、右扉のみを開閉することで対応することができ、使い勝手が良い。また、機器取付孔を利用してラックマウントタイプの電気機器を設置することもできるため、そのようなラックマウントタイプの電気機器を設置する際に、専用の柱部材等を設置する必要がなく、部材点数の削減、キャビネット内の設置スペースの有効利用等を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態となるキャビネットについて、図面をもとに説明する。
【0009】
図1(a)は、キャビネット1を正面側から示した説明図であり、図1(b)は、キャビネット1を底面側から示した説明図である。図2は、キャビネット本体1aを正面側から示した説明図である。図3(a)は、キャビネット本体1aを右側方から示した説明図であり、図3(b)は、キャビネット本体1aを底面側から示した説明図である。また、図4は、キャビネット本体1aに折り曲げ加工を施す様子を示した部分説明図である。
キャビネット1は、背板部2、左板部3、及び右板部4を一体的に有するキャビネット本体1aと、当該キャビネット本体1aに組み付けられ、キャビネット本体1aの上面又は下面を閉塞する天板及び底板5と、キャビネット本体1aの右板部4に開設された右側開口4aを開閉する右扉6と、キャビネット本体1aの前面開口を開閉する前扉7とからなる。
【0010】
キャビネット本体1aは、金属製の板状部材に折り曲げ加工を施すことにより、背板部2、左板部3、及び右板部4を成形してなるもので、平板状の背板部2や左板部3の内面は、電力量計等の各種電気機器を直接ネジ止め等により取付可能な機器取付面となっている。背板部2の左右両側縁には、後方へ突出する凸条部Aが折り曲げ加工により形成された後、前方へ折り返されており、当該折り返し部が左板部3及び右板部4となっている。また、左板部3及び右板部4の上下縁は、凸条部Aよりも上方又は下方へ延設されて第一フランジ部Bが形成されており、第一フランジ部Bには、天板又は底板5をネジ止めするためのネジ孔(固着部)8、8が設けられている。そして、該第一フランジ部Bは、凸条部A側(すなわち、キャビネット本体1a内側)へ折り曲げられ、凸条部Aの上縁又は下縁に溶接されている。尚、凸条部Aは、ネジ(電気機器をネジ止めするためのネジ)の背板部2後方への突出量よりも更に後方へ突出するように形成されており、キャビネット本体1aを壁面等に設置する際、ネジと壁面とが接触したりしないようになっている。また、第一フランジ部Bの上方又は下方への延設量は、凸条部Aの左右幅と略同程度となっている。
【0011】
さらに、背板部2の上下縁も、左板部3及び右板部4と同様、凸条部Aよりも上方又は下方へ延設されて第二フランジ部Cが形成されている。第二フランジ部Cの上下方向への延設量は、凸条部Aの後方への突出量と略同程度となっており、該第二フランジ部Cは、後方へ折り曲げられ、左右の凸条部A、A間を閉塞した状態で凸条部A、Aの上縁又は下縁に溶接されている。したがって、背板部2の後方空間は、左右の凸条部A、A、及び上下の第二フランジ部C、Cによりその上下左右を囲まれることになり、壁面等への設置状態において、背板部2から後方へ突出するネジを使用者等の視界から遮蔽可能となっている。尚、第二フランジ部Cの左右方向略中央にも、天板又は底板5をネジ止めするためのネジ孔(固着部)8が設けられている。
加えて、右板部4には、その略全面にわたって右側開口4aが開設されており(つまり、右板部4は枠状体となっている)、当該右側開口4aを介しても、キャビネット1内の電気機器の操作やキャビネット1内への電気機器の設置等が可能となっている。また、右板部4の上部及び下部のフランジ部には、電気機器を取り付けるための取付用ネジ孔(機器取付孔)9、9・・が設けられており、当該取付用ネジ孔9、9・・を利用することにより、ラックマウントタイプの電気機器を設置することができる。
【0012】
一方、天板及び底板5も金属製の板状部材であり、上記キャビネット本体1aの第一フランジ部A、Aへネジ止め等により固着される。また、右側開口4aを開閉するための右扉6が、キャビネット本体1aの右側面後縁を軸として片開き可能に軸着されているとともに、キャビネット本体1aの前面開口を開閉する前扉7が、キャビネット本体1aの前面左縁を軸として片開き可能に軸着されている。尚、右扉6と前扉7とは夫々独立して片開き動作可能に取り付けられている。
【0013】
以上のように構成されたキャビネット1によれば、背板部2の左右両側に折り曲げ加工により後方へ突出する凸条部A、Aを形成するとともに、該凸条部A、Aから前方へ延設されてなる左板部3及び右板部4の上下縁に、凸条部A、Aよりも更に上方又は下方へ突出する第一フランジ部B、Bを設け、該第一フランジ部B、Bを凸条部A側へ折り曲げて、凸条部Aの上縁又は下縁に溶接している。また、背板部2の上下縁にも第二フランジ部C、Cを延設し、該第二フランジ部Cを後方へ折り曲げて凸条部Aの上縁又は下縁に溶接している。したがって、背板部2の強度を向上させることができ、各種電気機器を直接ネジ止め等により当該背板部2へ取り付けたとしても、背板部2が変形したりしない。また、専用の機器取付板や取付金具等を用いる必要がないため、電気機器の取付作業を容易に行うことができるし、キャビネット1全体の重量を軽量化することができ、キャビネット1の設置作業にかかる手間等も削減することができる。
【0014】
また、キャビネット本体1aを上述の如く構成しているため、機器取付用ネジが突出する背板部2後方の空間は、一対の凸条部A、Aと上下の第二フランジ部C、Cとによりその上下左右が囲われることになる。したがって、キャビネット1の壁面等への設置状態において、機器取付用ネジを使用者等から隠すことができ、キャビネット1の美観を向上することができる。
さらに、折り曲げ加工により左板部3及び右板部4を形成している(すなわち、左板部3及び右板部4と背板部2とが一体的に形成されている)ため、背板へ左板と右板とをそれぞれ組み付けるような従来のキャビネットと比較すると、キャビネットの組み付け作業の簡素化をも図ることができるし、部品点数を削減することができるため部品の管理等も容易となる。
【0015】
さらにまた、第一フランジ部B及び第二フランジ部Cに、天板又は底板5を取り付けるためのネジ孔8、8・・を設けているため、強度の向上を図るための第一フランジ部B及び第二フランジ部Cに、天板又は底板6の固着部としての機能をもたせた合理的な構成とすることができる。
加えて、前扉7とは独立して片開き動作可能な右扉6を備えているため、操作したい電気機器のキャビネット1内部における取付位置や、キャビネット1の設置環境(前扉7の開放が困難である場合等)に応じて、右扉6のみを開閉することで対応することができ、使い勝手が良い。また、右板部4の上部及び下部のフランジ部に、電気機器を取り付けるための取付用ネジ孔9、9・・を設けており、当該取付用ネジ孔9、9・・を利用して、ラックマウントタイプの電気機器を設置可能としている。したがって、ラックマウントタイプの電気機器を設置する際には、専用の柱部材等を設置する必要がなく、部材点数の削減、キャビネット1内の設置スペースの有効利用等を図ることができる。
【0016】
なお、本発明のキャビネットに係る構成は、上記実施の形態に記載した態様に何ら限定されるものではなく、キャビネット本体や扉の有無等に係る構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で必要に応じて適宜変更することができる。
【0017】
たとえば、上記実施形態に記載のキャビネットでは、右板部に右側開口を開設し、右扉により右側開口を開閉するような構成としているが、右板部を右側開口のないタイプの板状部とし、右扉も設けないように構成してもよい。
また、天板や底板を、ネジ止めではなく、第一フランジ部B、Bや第二フランジ部Cへの溶接によりキャビネット本体と固着するように構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は、キャビネットを正面側から示した説明図であり、(b)は、キャビネットを底面側から示した説明図である。
【図2】キャビネット本体を正面側から示した説明図である。
【図3】(a)は、キャビネット本体を右側方から示した説明図であり、(b)は、キャビネット本体を底面側から示した説明図である。
【図4】キャビネット本体に折り曲げ加工を施す様子を示した部分説明図である。
【図5】従来のキャビネットの背板を示しており、(a)は、電気機器が搭載された状態を示す斜視説明図、(b)は、当該背板の断面説明図である。
【符号の説明】
【0019】
1・・キャビネット、1a・・キャビネット本体、2・・背板部、3・・左板部、4・・右板部、4a・・右側開口、5・・底板、6・・右扉、7・・前扉、8・・ネジ孔、9・・取付用ネジ孔、A・・凸条部、B・・第一フランジ部、C・・第二フランジ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背板部の左右両側を前方へ折り曲げて夫々左板部又は右板部としたキャビネット本体と、当該キャビネット本体の上面を閉塞する天板と、前記キャビネット本体の下面を閉塞する底板と、前記キャビネット本体の前面開口を開閉するための前扉とからなり、少なくとも前記背板部の内面側に電気機器を搭載可能なキャビネットであって、
前記背板部の左右両側縁に、折り曲げ加工によって前記背板部よりも更に後方へ突出する凸条部を設けるとともに、
前記左板部及び前記右板部の上下縁を前記凸条部よりも更に上方又は下方へ延設して第一フランジ部とし、当該第一フランジ部を前記凸条部側へ折り曲げて前記凸条部に固着する一方、
前記背板部の上下縁を前記凸条部よりも更に上方又は下方へ突出させて第二フランジ部とし、当該第二フランジ部を後方へ折り曲げて左右の凸条部間を閉塞した状態で前記凸条部に固着したことを特徴とするキャビネット。
【請求項2】
第一フランジ部及び/又は第二フランジ部に、底板又は天板を固定するための固着部を設けたことを特徴とする請求項1に記載のキャビネット。
【請求項3】
右板部に右側開口を開設し、当該右側開口の周縁部に機器取付孔を設ける一方、前記右側開口を開閉するための右扉を、前扉とは独立に開閉動作可能に設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のキャビネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−263139(P2008−263139A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106302(P2007−106302)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(000124591)河村電器産業株式会社 (857)
【Fターム(参考)】