説明

ギヤードモータ

【課題】 ギヤードモータからの振動が装置側へ伝達されにくく、装置からノイズの発生を抑制できるギヤードモータを提供すること。
【解決手段】 本形態のギヤードモータ1では、モータ部4が固定されたプレート2であって、このプレート2に固定されるとともに複数の歯車51、52の各歯車支軸81、82の出力側端部を各々、保持する複数の第3の支軸保持穴351、352が形成されたケース部材3に、装置側への取り付け部31、32が形成されている。すなわち、モータ部4とケース部材3とは、それぞれがプレート2に固定され直接接触してはいない。そのため、モータ部4からの振動は、直接ケース部材3に伝達されず、一旦、プレート2に伝達され、このプレート2を介して間接的にケース部材3に伝達されるので、モータ部4からの振動が装置側へ伝達されにくくなり装置からのノイズの発生を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ部の回転が輪列を介して出力されるギヤードモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ギヤードモータは、一般に、モータ部と、モータ部の出力軸の回転を減速させる歯車列と、この歯車列およびモータ部を収容するケースとから成り、モータ部のロータからの回転が歯車列を介して出力されるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭62−290332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このようなギヤードモータでは、ケースにギヤードモータを装置側へ固定するための取り付け部が形成されているため、モータからの振動が直接、装置側に伝達されてしまい、装置からノイズが発生するという問題点がある。
【0004】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、ギヤードモータからの振動が装置側へ伝達されにくく、装置からノイズの発生を抑制できるギヤードモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明では、 ロータがロータ支軸に回転可能に支持されたモータ部と、出力軸と、前記ロータに構成されている歯車の回転を前記出力軸に形成されている最終歯車まで伝達する輪列とを有するギヤードモータにおいて、前記モータ部のモータ軸線方向のうち、前記ロータから前記輪列に回転出力される側を出力側とし、他方側を反出力側としたとき、前記モータ部のステータの出力側端面が固定されたプレートを備え、当該プレートには、前記ステータの固定部分に対して出力側で対向する位置まで延設されて前記ロータ支軸の出力側を保持する第1の支軸保持穴を備えたロータ支軸受け部が形成されているとともに、前記輪列を構成する複数の歯車を各々、回転可能に支持する複数の歯車支軸の反出力側端部を各々、保持する複数の第2の支軸保持穴が形成されていることを特徴とする。
【0006】
本発明において、前記プレートは樹脂によって形成されていることが好ましい。このように構成すると、モータ部からの振動が樹脂製プレートによって緩衝されるため、より一層、装置側へ伝達しにくくなり、装置からのノイズを抑制することができる。
【0007】
本発明において、前記ケース部材には、前記複数の歯車支軸の出力側端部を各々、保持する複数の支軸保持穴が形成されている構成を採用することができる。このように構成すると、複数の歯車支軸の出力側端部はケース部材によって位置保持されるので、それら歯車支軸相互の位置精度が高いという利点がある。
【0008】
本発明において、前記プレートには、モータ軸線方向の一方側に前記ステータの出力側端面が固定されている構成を採用することができる。この場合、前記プレートには、前記ステータの固定部分に対して出力側で対向する位置まで延設されて前記ロータが回転可能に支持されたロータ支軸の出力側端部を保持する支軸保持穴が形成されたロータ支軸受け部が形成されていることが好ましい。このように構成すると、ロータ支軸受け部をプレートに形成するとともに、輪列を構成する複数の歯車の各歯車支軸の反出力側端部を支持する支軸保持穴をプレートに形成しているため、ロータ支軸受け部と、歯車支軸の一方の端部とをプレート上で保持することができる。従って、プレート上でモータ部、ロータおよび輪列の相互の位置関係を規定することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、モータ部が固定されたプレートであって、このプレートに固定されるとともにプレートとの間に複数の歯車が配置された空間を区画形成するケース部材に、装置側への取り付け部が形成されている。すなわち、モータ部とケース部材とは、それぞれがプレートに固定されており直接接触していない。そのため、モータ部からの振動は、直接ケース部材に伝達されず、一旦、プレートに伝達され、このプレートを介して間接的にケース部材に伝達されるので、モータ部からの振動が装置側へ伝達されにくくなり、その結果、装置からのノイズの発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図面を参照して、本発明を適用したギヤードモータを説明する。なお、以下の説明において、モータ部のモータ軸線方向において回転が出力される側を「出力側」とし、その反対側を「反出力側」と表現する。
【0011】
[実施の形態1]
(全体構成)
図1(a)、(b)は各々、本発明の実施の形態1に係るギャードモータの斜視図およびその分解斜視図である。図2(a)、(b)は各々、図1に示すギヤードモータの一部を切り欠いて示す平面図、およびその輪列などをA−A'線に沿って展開して示す説明図である。なお、図1(b)および図2(a)、(b)では、出力軸の図示を省略してある。
【0012】
図1(a)、(b)および図2(a)、(b)に示すように、本形態のギヤードモータ1は、モータ部4から出力された回転を、ハウジング10から突出する出力軸9から出力するモータである。ハウジング10は、プレート2と、このプレート2に対向するケース部材3とを備えており、ハウジング10から外にリード線19が引き出されている。プレート2とケース部材3とは、ケース部材3の外周縁からプレート2側に突出したフック38が、プレート2の側面に形成された係合突起28に係合することにより固定され、ケース部材3には、ギヤードモータ1が搭載される装置としてのモータ機器側へ取り付ける取り付け部31、32が形成されている。
【0013】
本形態のギヤードモータ1において、モータ部4は、円筒状のステータ40と、ステータ40の内側にロータマグネット44を備えたロータ46と、このロータ46を回転可能に支持するロータ支軸48とを備えている。ステータ40の出力側端面41は、プレート2の反出力側の面に対して複数の加締部分12で固定されている。
【0014】
ステータ40の反出力側端面には、スポット溶接などの方法でロータ支軸支持板42が固定され、ロータ支軸48の反出力側端部は、ロータ支軸支持板42の貫通穴に嵌って保持されている。また、モータ部4は、金属製の薄板からなるモータカバー43で側面および反出力側端面が覆われており、ロータ支軸支持板42のさらに反出力側に位置するモータカバー43の底面部にロータ支軸48の反出力側端部が当接している。
【0015】
これに対して、ステータ40の出力側において、プレート2とケース部材3により形成される空間にはギヤード部13が配置されている。また、本実施の形態では、プレート2には、途中に折れ曲がり部分をもって出力側に突出したロータ支軸受け部24が形成されており、ロータ支軸受け部24は、プレート2におけるモータ部4の固定部分21に対向している。ここで、ロータ支軸受け部24には、ロータ支軸48の出力側端部を保持する第1の支軸保持穴248が形成されている。なお、ロータ46は、外周面に外歯47が形成された歯車付きロータとして形成されている。
【0016】
出力軸9は、最終歯車6においてモータ軸線方向に貫通する段付きの貫通穴60の途中位置まで挿入されており、最終歯車6と一体に回転可能である。すなわち、貫通穴60は、出力軸9が挿入される部分(嵌合穴7)の断面が略正六角形に形成されている一方、出力軸9の断面も略正六角形である。
【0017】
但し、本形態では、出力軸9の断面形状は正六角形に近いのに対して、嵌合穴7の角部71は、角部71を挟む両側部分72の仮想延長線が交差する位置よりも外側に稜線に沿って凹んでいる。このため、出力軸9を嵌合穴7に容易に嵌めることができる。また、角部71に力が集中することがないので、出力軸9に変形や破損が発生するのを防止できる。さらに、手間をかけて角部71に切削加工を施す必要がない。
【0018】
このように構成したギヤードモータ1において、ロータ46と最終歯車6とは、1番車51および2番車52を備えた輪列5からなる減速歯車機構によって機構的に接続されている。1番車51は、ロータ支軸受け部24の隙間から露出するロータ46の外歯47に噛み合う大径外歯歯車と、この大径外歯歯車よりも出力側に形成された小径外歯歯車とを備えており、第1の歯車支軸81に回転可能に支持されている。2番車52は、1番車51の小径外歯歯車に噛み合う大径外歯歯車と、この大径外歯歯車よりも反出力側に形成された小径外歯歯車とを備えており、第2の歯車支軸82に回転可能に支持されている。また、2番車52の小径外歯歯車は、最終歯車6の外歯と噛み合っている。
なお、本実施の形態では、ギヤード部13は、ロータ46の外歯47、輪列5及び最終歯車6から構成されている。
【0019】
ここで、1番車51および2番車52の歯車支軸81、82は、各々の反出力側端部がプレート2に形成された第2の支軸保持穴251、252に各々保持されている。すなわち、プレート2には、ステータ40と略重なる位置に、1番車51の歯車支軸81の反出力側端部を支持する第2の支軸保持穴251が形成され、その側方には、2番車52の歯車支軸82の反出力側端部を支持する第2の支軸保持穴252が形成されている。
【0020】
また、1番車51および2番車52の歯車支軸81、82の出力側端部は、ケース部材3に形成された第3の支軸保持穴351、352に各々保持されている。
【0021】
最終歯車6は、それ自身の両端部が回転軸61、62になっており、反出力側の回転軸62は、プレート2に形成された回転軸支持穴262に回転可能に支持され、出力側の回転軸61は、ケース部材3に形成された回転軸支持穴362に回転可能に支持されている。
【0022】
このようにしてロータ46の外歯47、輪列5、および最終歯車6は略一直線上に並んでいる。ここで、ロータ46の外歯47と1番車51との噛み合い部分、1番車51と2番車52との噛み合い部分、および2番車52と最終歯車6との噛み合い部分は各々、モータ軸線方向における形成位置(プレート2からみたときの高さ位置)が互いに相違しているが、第2の支軸保持穴251、252は、プレート2上の略同一の高さ位置に形成され、第3の支軸保持穴351、352は、ケース部材3上の略同一の高さ位置に形成されている。
【0023】
プレート2は樹脂成形品からなり、回転軸支持穴262、第1の支軸保持穴248、および第2の支軸保持穴251、252は、プレート2を樹脂成形時に同時形成されたものである。また、ケース部材3も樹脂成形品からなり、回転軸支持穴362および第3の支軸保持穴351、352は、ケース部材3を樹脂成形時に同時形成されたものである。それ故、プレート2では、回転軸支持穴262、第1の支軸保持穴248、および第2の支軸保持穴251、252は互いの位置精度が高く、ケース部材3でも、回転軸支持穴362および第3の支軸保持穴351、352は互いの位置精度が高い。
【0024】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のギヤードモータ1では、モータ部4が固定されたプレート2であって、このプレート2に固定されるとともに複数の歯車51、52の各歯車支軸81、82の出力側端部を各々、保持する複数の第3の支軸保持穴351、352が形成されたケース部材3に、装置側への取り付け部31、32が形成されている。すなわち、モータ部4とケース部材3とは、それぞれがプレート2に固定され直接接触してはいない。そのため、モータ部4からの振動は、直接ケース部材3に伝達されず、一旦、プレート2に伝達され、このプレート2を介して間接的にケース部材3に伝達されるので、モータ部4からの振動が装置側へ伝達されにくくなり、その結果、装置からのノイズの発生を抑制することができる。
【0025】
また、本形態において、プレート2は樹脂によって形成されているので、モータ部4からの振動が樹脂製のプレート2によって緩衝されるため、より一層、装置側へ伝達されにくくなり、装置からのノイズを抑制することができる。
【0026】
さらに、本形態において、ケース部材3には、歯車支軸81、82の出力側端部を各々、保持する複数の第3の支軸保持穴351、352が形成されているため、歯車支軸81、82の出力側端部はケース部材3によって位置保持される。従って、ケース部材3上においても、歯車支軸81、82相互の位置精度が高い。しかも、ケース部材3には、最終歯車6の出力側の回転軸61を支持する回転軸支持穴362も形成されているので、歯車支軸81、82および回転軸61相互の位置精度が高い。
【0027】
さらにまた、本形態では、モータ部4のステータ40の出力側端面41がプレート2に固定されているが、プレート2には、ステータ40の固定部分21に対して出力側で対向する位置までロータ支軸受け部24が延設されている。このため、ロータ支軸48の出力側端部を支持する第1の支軸保持穴248をプレート2のロータ支軸受け部24に形成するとともに、歯車51、52の各歯車支軸81、82の反出力側端部を支持する第2の支軸保持穴251、252、および最終歯車6の反出力側の回転軸62を支持する回転軸支持穴262をプレート2に形成することができる。
【0028】
従って、ロータ支軸48および歯車支軸81、82のいずれの支軸についても一方の端部をプレート2上で保持することができ、かつ、最終歯車6の反出力側の回転軸62をプレート2上で保持することができるので、プレート2上でモータ部4、ロータ46、輪列5および出力軸9の相互の位置関係を規定することができる。それ故、プレート2を形成する際、第1の支軸保持穴248、第2の支軸保持穴251、252、および回転軸軸穴262相互の位置精度を高めておけば、支軸48、81、82および回転軸62相互の位置関係については、プレート2とケース部材3との位置精度の影響などを直接、受けることがなく、高い位置精度を得ることができる。すなわち、プレート2上でモータ部4、ロータ46、輪列5および最終歯車6の相互の位置関係を規定することができるため、プレート2とケース部材3との位置精度が多少低くても、支軸48、81、82および回転軸62相互の位置関係については、高い位置精度を得ることができる。よって、歯車相互の芯位置精度を向上することができるので、ギヤードモータ1の品質を向上することができる。
【0029】
[実施の形態2]
(全体構成)
図3(a)、(b)、(c)は各々、本発明の実施の形態2に係るギャードモータを出力側からみて平面図、側面図、および反出力側からみた底面図である。図4(a)、(b)は各々、図3に示すギヤードモータの横断面図、およびその輪列などを展開して示す説明図である。なお、本形態のギヤードモータは、基本的な構成が実施の形態1と同様であるため、共通する機能を担っている部分には同一の符号を付して説明する。
【0030】
図3(a)、(b)、(c)および図4(a)、(b)に示すように、本形態のギヤードモータ1も、実施の形態1と同様、モータ部4から出力された回転を、ハウジング10から突出する出力軸9から出力するモータである。ハウジング10は、プレート2と、このプレート2に対向するケース部材3とを備えており、プレート2の反出力側の面には底板49が固定されている。底板49、プレート2は、相対向する2つの角部分でボルト15により連結されている。また、プレート2とケース部材3とは、ケース部材3の外周縁からプレート2側に突出したフック38が、プレート2の側面に形成された係合突起28に係合することにより固定され、ケース部材3には、ギヤードモータ1が搭載される装置としてのモータ機器側へ取り付ける取り付け部31、32が形成されている。なお、ハウジング10から外にはリード線19が引き出されている。
【0031】
本形態のギヤードモータ1において、モータ部4は、円筒状のステータ40と、ステータ40の内側にロータマグネット44を備えたロータ46と、このロータ46を回転可能に支持するロータ支軸48とを備えている。ステータ40の出力側端面41は、底板49を介してプレート2の反出力側の面に固定されている。
【0032】
ステータ40の反出力側端面には、スポット溶接などの方法でモータカバー451が固定されている一方、ロータ支軸48の反出力側端部にはロータ46に圧入された筒状部材452が付勢状態で当接してロータ46の振動を抑制している。また、モータカバー451に形成された穴453にロータ支軸48の反出力側端部が嵌められている。
【0033】
これに対して、ステータ40の出力側において、プレート2とケース部材3により形成される空間にはギヤード部13が配置されている。また、本実施の形態では、プレート2には、途中に折れ曲がり部分をもって出力側に突出したロータ支軸受け部24が形成されており、ロータ支軸受け部24は、プレート2におけるモータ部4の固定部分21に対向している。ここで、ロータ支軸受け部24には、ロータ支軸48の出力側端部を保持する第1の支軸保持穴248が形成されている。なお、ロータ46は、外周面に外歯47が形成された歯車付きロータとして形成されている。
【0034】
出力軸9にはそれ自身の外周面に最終歯車6が形成されており、ロータ46と最終歯車6とは、1番車51および2番車52を備えた輪列5からなる減速歯車機構によって機構的に接続されている。1番車51は、ロータ支軸受け部24の隙間から露出するロータ46の外歯47に噛み合う大径外歯歯車と、この大径外歯歯車よりも出力側に形成された小径外歯歯車とを備えており、第1の歯車支軸81に回転可能に支持されている。2番車52は、1番車51の小径外歯歯車に噛み合う大径外歯歯車と、この大径外歯歯車よりも出力側に形成された小径外歯歯車とを備えており、第2の歯車支軸82に回転可能に支持されている。また、2番車52の小径外歯歯車は、最終歯車6の外歯と噛み合っている。
なお、この第2の実施の形態においても、ギヤード部13は、ロータ46の外歯47、輪列5及び最終歯車6から構成されている。
【0035】
このように構成した輪列5において、1番車51および2番車52の歯車支軸81、82は、各々の反出力側端部がプレート2に形成された第2の支軸保持穴251、252に各々保持されている。すなわち、プレート2には、ステータ40と略重なる位置に、1番車51の歯車支軸81の反出力側端部を支持する第2の支軸保持穴251が形成され、その側方には、2番車52の歯車支軸82の反出力側端部を支持する第2の支軸保持穴252が形成されている。
【0036】
また、1番車51および2番車52の歯車支軸81、82の出力側端部は、ケース部材3に形成された第3の支軸保持穴351、352に各々保持されている。
【0037】
さらに、出力軸9は、それ自身が回転軸になっており、反出力側端部から突出する軸部92は、プレート2に形成された回転軸支持穴292に回転可能に支持され、出力軸9の長さ方向における中央部分は、ケース部材3に形成された回転軸支持穴390に回転可能に支持されている。
【0038】
このように構成したギヤードモータ1において、ロータ46の外歯47と1番車51との噛み合い部分、1番車51と2番車52との噛み合い部分、および2番車52と最終歯車6との噛み合い部分は、図4(b)から分かるように、モータ軸線方向において相違する高さ位置にあり、それに対応して、第2の支軸保持穴251、252は、プレート2上の異なる高さ位置に形成されている。すなわち、本形態では、ロータ46の外歯47と1番車51との噛み合い部分、1番車51と2番車52との噛み合い部分、および2番車52と最終歯車6との噛み合い部分を比較すると、プレート2からみたときの高さ位置は、モータ部4から最終歯車6に向かうに伴ってプレート2に対して、より出力側の場所(より高い場所)に位置しており、それに対応して、本形態では、2つの第2の支軸保持穴251、252は、モータ部4から最終歯車6に向かうに伴ってプレート2上の、より出力側の場所(より高い場所)に形成されている。しかも、第2の支軸保持穴251、252は、図4(a)から分かるように、第2の支軸保持穴251、252は、プレート2の中心位置の周りで周方向に配置され、モータ部4、1番車51、2番車52および最終歯車6は、プレート2の中心位置に渦巻き状に積み上げられた構成になっている。
【0039】
ここで、プレート2は樹脂成形品からなり、回転軸支持穴292、第1の支軸保持穴248、および第2の支軸保持穴251、252は、プレート2を樹脂成形時に同時形成されたものである。また、ケース部材3も樹脂成形品からなり、回転軸支持穴390および第3の支軸保持穴351、352は、ケース部材3を樹脂成形時に同時形成されたものである。それ故、プレート2では、回転軸支持穴292、第1の支軸保持穴248、および第2の支軸保持穴251、252は互いの位置精度が高く、ケース部材3でも、回転軸支持穴390および第3の支軸保持穴351、352は互いの位置精度が高い。
【0040】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のギヤードモータ1では、モータ部4が固定されたプレート2であって、このプレート2に固定されるとともに複数の歯車51、52の各歯車支軸81、82の出力側端部を各々、保持する複数の第3の支軸保持穴351、352が形成されたケース部材3に、装置側への取り付け部31、32が形成されている。すなわち、モータ部4とケース部材3とは、それぞれがプレート2に固定され直接接触してはいない。そのため、モータ部4からの振動は、直接ケース部材3に伝達されず、一旦、プレート2に伝達され、このプレート2を介して間接的にケース部材3に伝達されるので、モータ部4からの振動が装置側へ伝達されにくくなり、その結果、装置からのノイズの発生を抑制することができる。
【0041】
また、本形態において、プレート2は樹脂によって形成されているので、モータ部4からの振動が樹脂製のプレート2によって緩衝されるため、より一層、装置側へ伝達されにくくなり、装置からのノイズを抑制することができる。
【0042】
さらに、本形態において、ケース部材3には、歯車支軸81、82の出力側端部を各々、保持する複数の第3の支軸保持穴351、352が形成されているため、歯車支軸81、82の出力側端部は全てケース部材3によって位置保持される。従って、ケース部材3上においても、歯車支軸81、82相互の位置精度が高い。しかも、ケース部材3には、最終歯車6の出力側の回転軸(出力軸9)を支持する回転軸支持穴390が形成されているので、歯車支軸81、82および回転軸(出力軸9)相互の位置精度が高い。
【0043】
さらにまた、本形態では、モータ部4のステータ40の出力側端面41がプレート2に固定されているが、プレート2には、ステータ40の固定部分21に対して出力側で対向する位置までロータ支軸受け部24が延設されている。このため、ロータ支軸48の出力側端部を支持する第1の支軸保持穴248をプレート2のロータ支軸受け部24に形成するとともに、歯車51、52の各歯車支軸81、82の反出力側端部を支持する第2の支軸保持穴251、252、および最終歯車6の反出力側の軸部92を支持する回転軸支持穴292をプレート2に形成することができる。
【0044】
従って、ロータ支軸48および歯車支軸81、82のいずれの支軸についても一方の端部をプレート2上で保持することができ、かつ、最終歯車6の反出力側の軸部92をプレート2上で保持することができるので、プレート2上でモータ部4、ロータ46、輪列5および出力軸9の相互の位置関係を規定することができる。それ故、プレート2を形成する際、第1の支軸保持穴248、第2の支軸保持穴251、252、および回転軸軸穴262相互の位置精度を高めておけば、支軸48、81、82および軸部92相互の位置関係については、プレート2とケース部材3との位置精度の影響などを直接、受けることがなく、高い位置精度を得ることができる。すなわち、プレート2上でモータ部4、ロータ46、輪列5および最終歯車6の相互の位置関係を規定することができるため、プレート2とケース部材3との位置精度が多少低くても、支軸48、81、82および軸部92相互の位置関係については、高い位置精度を得ることができる。よって、歯車相互の芯位置精度を向上することができるので、ギヤードモータ1の品質を向上することができる。
【0045】
[その他の実施の形態]
なお、上記形態は、本発明の好適な実施の形態の例であるが、これに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において変形実施可能である。例えば、上記形態では、プレート2は樹脂によって形成されているが、必ずしも樹脂に限定されるものではなく、硬質ゴム、各種金属等により形成してもよい。
【0046】
また、上記形態では、ケース部材3には、歯車支軸81、82の出力側端部を各々、保持する複数の第3の支軸保持穴351、352が形成されているが、歯車支軸81、82の出力側端部を各々、保持する部材をケース部材3とは別に形成して、ケース部材3に固定するようにしてもよい。
【0047】
さらに、上記形態では、プレート2およびケース部材3はいずれも樹脂成形品からなるため、第1の支軸保持穴248、第2の支軸保持穴251、252、および第3の支軸保持穴351、352などをプレート2やケース部材3を樹脂成形時に同時形成したが、プレート2あるいはケース部材3が金属板からなる場合、この金属板に対する深絞り加工により、支軸保持穴などを同時形成すればよい。
【0048】
さらにまた、上記形態では、プレート2には、ステータ40の固定部分21に対して出力側で対向する位置までロータ支軸受け部24が延設され、ロータ支軸受け部24にロータ支軸48の出力側端部を支持する第1の支軸保持穴248が形成され、ロータ46が回転可能に支持されているが、ロータ46自身に形成された被軸受け面を受けてロータ46が回転可能に支持される軸受け部をプレート2に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】(a)、(b)は各々、本発明の実施の形態1に係るギャードモータの斜視図およびその分解斜視図である。
【図2】(a)、(b)は各々、図1に示すギヤードモータの一部を切り欠いて示す平面図、およびその輪列などをA−A'線に沿って展開して示す説明図である。
【図3】(a)、(b)、(c)は各々、本発明の実施の形態2に係るギャードモータを出力側からみて平面図、側面図、および反出力側からみた底面図である。
【図4】(a)、(b)は各々、図3に示すギヤードモータの横断面図、およびその輪列などを展開して示す説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1 ギヤードモータ
2 プレート
3 ケース部材
4 モータ部
5 輪列
6 最終歯車
9 出力軸
13 ギヤード部
24 ロータ支軸受け部
40 ステータ
46 ロータ
47 外歯(歯車)
48 ロータ支軸
51 1番車
52 2番車
81、82 歯車支軸
248 第1の支軸保持穴
251、252 第2の支軸保持穴
351、352 第3の支軸保持穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータおよびステータを備えたモータ部と、出力軸と、前記ロータに構成されている歯車の回転を前記出力軸に伝達する輪列とを有するギヤードモータにおいて、
モータ軸線方向の一方側に前記モータ部が固定されるとともに他方側に前記輪列を構成する複数の歯車が各々、回転可能に支持されたギヤード部が構成されたプレートを有し、
モータ軸線方向のうち、前記ロータから前記輪列に回転出力される側を出力側とし、他方側を反出力側としたとき、
前記ギヤード部は、前記複数の歯車を各々、回転可能に支持する複数の歯車支軸の反出力側端部を各々、保持する複数の支軸保持穴が形成された前記プレートと、該プレートに固定されるとともに該プレートとの間に前記複数の歯車が配置された空間を区画形成するケース部材とを有し、該ケース部材に装置側への取り付け部を有することを特徴とするギヤードモータ。
【請求項2】
請求項1において、前記プレートは樹脂によって形成されていることを特徴とするギヤードモータ。
【請求項3】
請求項1または2において、前記ケース部材には、前記複数の歯車支軸の出力側端部を各々、保持する複数の支軸保持穴が形成されていることを特徴とするギヤードモータ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記プレートには、モータ軸線方向の一方側に前記ステータの出力側端面が固定されていることを特徴とするギヤードモータ。
【請求項5】
請求項4において、前記プレートには、前記ステータの固定部分に対して出力側で対向する位置まで延設されて前記ロータが回転可能に支持されたロータ支軸の出力側端部を保持する支軸保持穴が形成されたロータ支軸受け部が形成されていることを特徴とるギヤードモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−151385(P2007−151385A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−285898(P2006−285898)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】