説明

クライミングクレーン用単位マストの吊り上げ装置

【課題】単位マストへの着脱が容易で、効率的に吊り上げ作業ができ、また高所作業の危険性が少ない単位マストの吊り上げ装置を提供する。
【解決手段】吊り上げ装置1の本体2は、これに紐体17,18で接続された結合部材3で単位マスト43の接続板46に接続される。本体2は、接続板46を受け入れる一対の四角筒状の接続部4と、これらを連結する連結杆5とを具備する。接続部4は、接続板46のボルト孔に対応する挿通孔を具備する。連結杆5は、ホイストのフックを掛ける吊り環7を具備する。結合部材3は、挿通孔を貫通する結合ピン8と、それの突出部に嵌め込まれる抜け止めリング9とを具備する。結合ピン8は、円錐部と、係合溝とを具備する。抜け止めリング9は、リング本体と、常時先端部が内周側へ突出して結合ピン8の係合溝に係合するように付勢されたプランジャとを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
鉄塔を建設用のせり上げ式クライミングクレーンのマストに新たな単位マストを接続する際に用いられる吊り上げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄塔を建設するために、建築中の鉄塔の中心にせり上げ式のクライミングクレーンが設けられる。クレーン本体は、複数の単位マストを上下方向に接続してなる、せり上げ接続式のマストで支持される。マストは、建設工事の進行に応じて地上のせり上げ装置で順次せり上げられ、下方へ新たな単位マストが継ぎ足され、上方へ伸ばされる。せり上げ装置は、鉄塔の基礎部に支持され、鉄塔の中心部にマストを囲むように設けられる。既設のマストは、クレーン本体と共に、せり上げ装置のウインチまたは油圧シリンダによりせり上げられ、側方から新たな単位マストが移動台に載せられて搬入され、既設マストの下方に配置される。単位マストは、鉄骨を直方体状に枠組みしてなり、上端の四隅に接続板が突設される。この接続板と、その上の既設マストの下端部とがボルトで結合される(例えば特許文献1,図4参照)。単位マストを接続する際には、鉄塔の側方に置かれた単位マストをホイストで吊り上げて、移動台に載せる必要がある。従来は、吊り上げ治具を単位マストの接続板にボルトで接続し、これにホイストのフックを掛けて吊り上げている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−324972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の単位マストの吊り上げ方法における治具の接続、取り外し作業は、高所で行われる危険な作業で、ボルト、ナットの着脱に手間が掛かるし、部材の落下にも配慮しなければならず、非効率的なものであるという課題がある。
したがって、この出願に係る発明は、単位マストへの着脱が容易で、効率的に吊り上げ作業を進めることができ、また高所作業の危険性を大幅に減らすことができる単位マストの吊り上げ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下添付図面の符号を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記課題を解決するための、この出願に係る発明の吊り上げ装置1は、単位マスト43の上端の四隅に突設される接続板46のうち対角上の2つに接続される本体2と、本体2と単位マスト43の接続板46とを接続する結合部材3とを具備する。結合部材3は、本体2に紐体17,18で接続される。吊り上げ装置1の本体2は、単位マスト43の接続板46のうち対角上の2つを受け入れ可能な一対の四角筒状の接続部4と、これら2つの接続部4間を連結する連結杆5とを具備する。接続部4は、単位マスト43の接続板46のボルト孔48に対応する対向一対の挿通孔6を具備する。連結杆5は、中央に、ホイストのフックを掛ける吊り環7を具備する。結合部材3は、接続部4の一対の挿通孔6を抜き差し自在に貫通して反対側へ突出する突出部13を有する結合ピン8と、この結合ピン8の突出部13に着脱自在に嵌め込まれる抜け止めリング9とを具備する。結合ピン8と抜け止めリング9は、それぞれ本体2に紐体17,18で接続される。結合ピン8は、先端部に形成された円錐部14と、突出部の外周の一部に形成された係合溝15とを具備する。抜け止めリング9は、結合ピン8の外周に嵌め込まれるリング本体19と、このリング本体19に半径方向に移動自在に設けられ、常時先端部がリング本体19の内周側へ突出して結合ピン8の係合溝15に係合するように付勢されたプランジャ20とを具備する。
【発明の効果】
【0006】
この出願に係る発明の装置によれば、単位マストへの着脱が容易で、部材を落下させる心配なく、効率的に吊り上げ作業を進めることができ、また高所作業の危険性を大幅に減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る吊り上げ装置の単位マストへの装着状態の平面図である。
【図2】図1の吊り上げ装置の正面図である。
【図3】図1の吊り上げ装置の使用状態の斜視図である。
【図4】図1の吊り上げ装置の使用状態の説明図である。
【図5】図1の吊り上げ装置の一部の平面図である。
【図6】図1の吊り上げ装置における結合ピンの正面図である。
【図7】図6におけるVII―VII断面図である。
【図8】図1の吊り上げ装置における抜け止めリングの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。
図4は吊り上げ装置1の使用状態を示す説明図である。41は、クライミングクレーンのマストで、建築中の鉄塔の中心に設けられる。42は、せり上げ装置で、鉄塔の基礎部に支持され、マスト41を囲むように設けられる。マスト41は、複数の単位マスト43を上下方向に接続してなる。マスト41は、建設工事の進行に応じてせり上げ装置42で順次せり上げられ、下方へ新たな単位マスト43が継ぎ足され、上方へ伸ばされる。既設のマスト41は、図示しない上端のクレーン本体と共に、せり上げ装置42のウインチまたは油圧シリンダによりせり上げられる。新たな単位マスト43が、側方からホイスト44で吊り上げられ、移動台45に載せられ、せり上げられた既設マスト41の下方へ搬入される。単位マスト43は、鉄骨を直方体状に枠組みしてなり、上端の四隅に接続板46が突設される。この接続板46と、既設マスト41の下端部とが、ボルトで結合される。
【0009】
図1ないし図3に示すように、単位マスト43の吊り上げ装置1は、本体2と、結合部材3とを具備する。本体2は、単位マスト43の上端の四隅に突設される接続板46のうち対角上の2つに接続される。結合部材3は、本体2と単位マストの接続板46とを接続する。
【0010】
吊り上げ装置の本体2は、単位マストの接続板46のうち対角上の2つを受け入れ可能な一対の四角筒状の接続部4と、これら2つの接続部4,4間を連結する連結杆5とを具備する。接続部4は、単位マスト43の接続板46のボルト孔48に対応する対向一対の挿通孔6を具備する。連結杆5は、中央に、ホイスト44のフック47を掛ける吊り環7を具備する。
【0011】
結合部材3は、結合ピン8と抜け止めリング9とを具備し、いずれも紐体17,18で本体2に接続される。
【0012】
図5ないし図7に示すように、結合ピン8は、軸部10の基端側に、取っ手11付きの頭部12を備える。軸部10は、接続部4の一対の挿通孔6を抜き差し自在に貫通して反対側へ突出する突出部13と、先端部に形成された円錐部14と、突出部13の外周の一部に形成された係合溝15とを具備する。係合溝15は、互いに平行で平坦な底面16を持つように、突出部13の外周の対向部に一対形成される。
【0013】
抜け止めリング9は、結合ピン8の突出部13に着脱自在に嵌め込まれる。抜け止めリング9は、図8に示すように、結合ピン8の外周に嵌め込まれるリング本体19と、このリング本体19の外周に突設されるシリンダ21と、このシリンダ21に受容され、リング本体19を半径方向に貫通して軸方向に移動自在に設けられるプランジャ20とを具備する。
【0014】
シリンダ21は取っ手を兼ね、紐体18で本体2に接続される。プランジャ20は、常時先端部がリング本体19の内周側へ突出するように、内装ばねによって付勢される。したがって、リング本体19を結合ピン8の先端から嵌め込むとき、プランジャ20の先端部は、結合ピン8の円錐部14に押されて没入し、円周面上にあっても没入したまま摺動し、係合溝15に対応する相対回転位置で、係合溝15内に突出して、その底面16に当接する。プランジャ20が、係合溝15内に突出て係合した状態で、結合ピン8は、本体の接続部4から抜け止めされる。プランジャ20の先端はほぼ球面状であるため、係合状態からリング本体19を相対回転させると、図6に示すように、係合溝15の底面16から円周面へと摺動して、この位置で結合ピン8から抜き取り可能となる。
【0015】
単位マスト43をホイスト44で吊り上げる場合には、せり上げ装置42の側方に転倒して置かれた単位マスト43の接続板46に、ホイスト44に吊られている吊り上げ装置1を装着する。吊り上げ装置1の接続部4を単位マスト43の接続板46に嵌め込み、結合ピン8を挿通孔6、ボルト孔48に貫通させる。挿通孔6から突出した結合ピン8の先端部に、抜け止めリング9を嵌め込み、プランジャ20の先端が係合溝15内に落ち込む係合位置まで回転させることによって、結合ピン8を抜け止めして装着作業が完了する。その後、単位マスト43は、ホイスト44で吊り上げられ、移動台45上に配置される。作業員が単位マスト43上に上り、吊り上げ装置1を取り外す。抜け止めリング9を90°回転させて、プランジャ20と係合溝15との係合を外し、これを結合ピン8から抜き取った後、結合ピン8を本体の接続部4から抜き取り、さらに接続部4を接続板46から抜き取る。吊り上げ装置1の装着、取り外し作業は、結合ピン8と抜け止めリング9の着脱により、簡易迅速に行える。結合ピン8と抜け止めリング9は紐体17,18で本体2に結合されているから作業中に落下させるおそれはない。
【符号の説明】
【0016】
1 吊り上げ装置
2 本体
3 結合部材
4 接続部
5 連結杆
6 挿通孔
7 吊り環
8 結合ピン
9 抜け止めリング
10 軸部
11 取っ手
12 頭部
13 突出部
14 円錐部
15 係合溝
16 底面
17 紐体
18 紐体
19 リング本体
20 プランジャ
21 シリンダ
41 マスト
42 せり上げ装置
43 単位マスト
44 ホイスト
45 移動台
46 接続板
47 フック
48 ボルト孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設される鉄塔の中心に、クレーン本体を支持するために設置されるせり上げ式のマストに、鉄骨を直方体状に枠組みしてなる単位マストを接続する際に、当該単位マストをホイストで吊り上げるための装置であって、
単位マストの上端の四隅に突設される接続板のうち対角上の2つを受け入れ可能な一対の四角筒状の接続部と、これら2つの接続部材間を連結する連結杆とを有する本体と、
前記本体に紐体で接続され、本体の2つの接続部を前記単位マストの各接続板に結合する結合部材とを具備し、
前記本体の連結杆は、中央に、ホイストのフックを掛ける吊り環を具備し、
前記本体の接続部は、前記単位マストの接続板のボルト孔に対応する対向一対の挿通孔を具備し、
前記結合部材は、前記本体に紐体で接続され前記接続部の一対の挿通孔を抜き差し自在に貫通して反対側へ突出する突出部を有する結合ピンと、同様に本体に紐体で接続され結合ピンの突出部に着脱自在に嵌め込まれる抜け止めリングとを具備し、
前記結合ピンは、先端部に形成された円錐部と、前記突出部の外周の一部に形成された係合溝を具備し、
前記抜け止めリングは、前記結合ピンの外周に嵌め込まれるリング本体と、このリング本体に半径方向に移動自在に設けられ常時先端部がリング本体の内周側へ突出して結合ピンの係合溝に係合するように付勢されたプランジャとを具備することを特徴とするクライミングクレーン用単位マストの吊り上げ装置。
【請求項2】
前記結合ピンの係合溝は、互いに平行で平坦な底面を持つように、当該結合ピンの対向部に一対形成され、
前記抜け止めリングのプランジャは、先端が前記結合ピンの円周面上を摺動しうるように前記リング本体内へ没入し、先端が係合溝の底面に当接しうるようにリング本体から突出して結合ピンを抜け止めすることを特徴とするクライミングクレーン用単位マストの吊り上げ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−37610(P2011−37610A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188855(P2009−188855)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(505268677)株式会社九建 (11)
【出願人】(000001890)三和テッキ株式会社 (134)
【Fターム(参考)】