説明

クランプテスタ

【課題】表示手段で認識しなくても、他の手段によって大きい電流である事を瞬間的に認識可能とするクランプテスタを提供する。
【解決手段】電線をクランプすることにより、電線の漏れ電流を測定するクランプテスタ30において、漏れ電流を測定する測定手段46と、振動モータ48と、測定手段46によって測定された漏れ電流値と予め設定された閾値とを比較し、測定された漏れ電流値が閾値を超えた場合に、振動モータ46を駆動させるように制御する制御手段50とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線をクランプして電線の漏れ電流を測定できるクランプテスタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電線を接断することなく活線の状態のままで電線の漏れ電流を測定できるクランプテスタが知られている(例えば特許文献1、特許文献2参照)。
クランプテスタは、電線の周囲に発生する磁界を検出する磁界検出部と、磁界検出部によって検出された磁界の強度によって漏れ電流の電流値を測定する電流値測定部と、電流値測定部によって測定された漏れ電流の電流値を表示する表示手段とを備えている。
【0003】
また、クランプテスタは、手で把持する本体部と、本体部の先端にリング状に形成されたクランプ部とを備えている。クランプ部は、リング状の一部が開口して開閉となるように設けられており、本体部には、クランプ部を開閉させるためのレバーが設けられている。
また、測定した電流値を表示する表示手段は、本体表面に設けられている。
【0004】
【特許文献1】特開平6−235735号公報
【特許文献2】特開2000−131343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような従来のクランプテスタでは、測定された結果が表示手段に表示されるだけであり、比較的暗い場所や狭い場所での測定作業となると、測定結果を確認しにくかったりして、確実な測定作業ができにくいという課題があった。
【0006】
特に、漏れ電流を測定する場合には、電流値が大きいと危険性も高くなるおそれもあり、大きい電流値の場合には、視覚により大きい電流値を確認するのではなく、別の方法で電流値が大きいことを作業者に瞬間的に認識させる必要があると考えられる。
【0007】
そこで、本発明は上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは、表示手段で認識しなくても、他の手段によって大きい電流である事を瞬間的に認識可能とするクランプテスタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかるクランプテスタによれば、電線をクランプすることにより、電線の漏れ電流を測定するクランプテスタにおいて、漏れ電流を測定する測定手段と、振動モータと、 測定手段によって測定された漏れ電流値と予め設定された閾値とを比較し、測定された漏れ電流値が閾値を超えた場合に、振動モータを駆動させるように制御する制御手段とを具備することを特徴としている。
この構成を採用することによって、漏れ電流が閾値を超えると振動モータによって振動が生じる。このためクランプテスタを使用している作業者は、瞬間的に漏れ電流が大であることを認識することができる。特に、クランプテスタは作業者が本体を把持して測定を行うので、振動は確実に作業者に認識される。
【0009】
また、測定手段によって測定された漏れ電流値を表示する表示手段が設けられ、前記制御手段における、測定された漏れ電流値と閾値との比較動作を実行して振動モータを制御する比較モードと、測定された漏れ電流値と閾値とを比較せずに単に漏れ電流値を表示手段に表示する通常モードとを切り換える切換手段が設けられていることを特徴としてもよい。
この構成によれば、閾値を超えた場合にそれほど大きな影響が無いような場合には、単に漏れ電流値を測定して表示するだけの通常モードに切り換えて使用することができる。
【0010】
また、前記閾値の値を変更させる変更手段を具備することを特徴としてもよい。これにより、測定現場の相違によって様々な値での漏れ電流値の大きさの認識が可能である。
【0011】
さらに、警告音を出力する警告音出力手段が設けられ、前記制御手段は、測定手段によって測定された漏れ電流値が閾値を超えた場合に、振動モータを駆動させるように制御すると共に、警告音発生装置から警告音を出力させるように制御することを特徴としてもよい。
この構成によれば、振動に加えて音も発生するので、漏れ電流値の大きさを、作業者が確実に認識することができる。
【0012】
また、前記制御手段は、測定手段によって測定された漏れ電流値が閾値を超えた場合に、振動モータを駆動させるように制御すると共に、表示手段に表示されている漏れ電流値が点滅表示されるように制御することを特徴としてもよい。
この構成によれば、振動に加えて視覚においても確認できるので、漏れ電流値の大きさを、作業者が確実に認識することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のクランプテスタによれば、漏れ電流値の大きさを作業者に対して確実に認識させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施例を添付図面に基づいて説明する。
まず、図1〜図3に、本実施形態のクランプテスタの外観構成を示す。
クランプテスタ30は、ほぼ直方体状の本体部31の先端にリング状に構成されたクランプ部32が設けられて構成されている。クランプ部32は中途部で半円状に分割されており、分割されたいずれか一方が本体部31側で回動することで、クランプ部32はC字状に開口する。
本体部31は、作業者が手で把持できる程度の大きさであり、表面に表示部34(特許請求の範囲でいう表示手段)と、表示部34の操作キー36と、モード切換スイッチ38とが配置されている。なお、このモード切換スイッチ38は、電源オン−オフや測定する電流レベルを切り換えるものであり、特許請求の範囲でいう切換手段とは異なるものである。
【0015】
表示部34は、LCDが用いられている。しかし、表示部34の構成としては、特にLCDに限定するものではない。表示部34の操作キー36は、COMPキー39とDHキー40とを有している。これらのキーの機能については後述する。
【0016】
モード切換スイッチ38は、電源スイッチを兼用しているロータリー式のスイッチである。モード切換スイッチ38には、電源オフ、電流mA、電流A、電圧Vの各モードが割り当てられている。モード切換スイッチ38は、平面視円形に形成されており、端面の一部38aが本体部31の側面外方に若干突出するように配置される。このように配置されることで作業者が1本の指で簡単にモード切換スイッチ38を操作することができる。
【0017】
また、本体部31の先端側の側面には、クランプ部32を開閉させるためのレバー42が設けられている。レバー42は、作業者が把持した手で操作できるような位置及び大きさとなるように設けられている。
レバー42を図1の破線矢印方向に操作すると、分割されたクランプ部32のどちらか一方が本体部31側を軸線として回動し、分割した部分が開口する(図1の破線)。こうして電線を活線のままでクランプ部32の円の内側に収納させることができる。
【0018】
本体部31の後端側の端面には、交流電測定用の入力端子44が設けられている。このように、本実施形態のクランプテスタ30で交流電圧を測定する場合には、クランプ部32を用いずに、直接電線を接続させて測定を行う。
【0019】
次に、本実施形態の概略の内部構成について、図4に基づいて説明する。
クランプテスタ30の内部には、漏れ電流を測定する測定手段46と、振動モータ48と、振動モータ48を駆動する振動モータ駆動回路49と、振動モータ駆動回路49に制御信号aを出力して振動モータ48の駆動を制御する制御手段50と、測定手段46で測定された漏れ電流値を表示する表示部51が設けられている。
【0020】
測定手段46は、具体的にはクランプ部32の内部に配置されたヘッドコア53と、ヘッドコア53を通過する磁界によって生じる電流の値を測定する電流測定回路54とから構成される。
ヘッドコア53は、ほぼ半円形に形成されている2つの磁性体コア55と、これらの磁性体コア55の周囲に巻回されたコイル56とを備えている。
ヘッドコア53は、分割されたクランプ部32の双方に配置され、クランプ部32が円形となっている閉塞時には磁気的に結合してリング状のコアとなるものである。
そして、漏れ電流の測定時にクランプ部32の円の内側に活線である電線を配置することで、クランプ部32の円周に沿って電線の漏れ電流に伴う磁界が生じる。ヘッドコア53の磁性体コア55ではこの磁界の磁力線が通過する磁路を形成しており、コイル56には電流が流れる。
この電流は、電流測定回路54に入力され、電流値が測定される。
【0021】
制御手段50は、CPU58と、ROMおよびRAM等から構成される記憶手段59を備えており、記憶手段59内には振動モータ48を駆動するための、電流値の閾値が予め記憶されている。
なお、制御手段50に入力される電流値は、ヘッドコア53の電流の値であり、実際の漏れ電流値とは異なっている。この電流の値は、ヘッドコア53のコイルの巻数に起因するものであるから、制御手段50は、ヘッドコア53の巻数に基づいて、入力されたヘッドコア53の電流値を実際の漏れ電流値に変換する機能を有している。
また、制御手段50に入力される電流値はアナログ値である。制御手段50は、A/Dコンバータ機能を有しており、アナログ値で入力された電流値をデジタル値に変換する。
【0022】
制御手段50は、測定された漏れ電流値と記憶手段59に記憶されている閾値とを比較する比較機能(コンパレータ)を有する。制御手段50の比較機能が比較した結果、測定された漏れ電流値が記憶手段59に記憶されている閾値よりも大きい場合には、振動モータ48を駆動させるために振動モータ駆動回路49に対して駆動信号を出力する。
なお、本実施形態の制御手段50は、測定された漏れ電流値が記憶手段59に記憶されている閾値よりも0.01mA以上大きい場合に、振動モータ48を駆動させるために振動モータ駆動回路49に対して駆動信号を出力するようにしている。
【0023】
ここで、振動モータの構造の一例について説明する(図示せず)。
振動モータは、モータ本体と、モータ本体の回転軸に対して偏心して取り付けられたウェイトとを備えている。振動モータは、振動モータ駆動回路によって駆動電流が入力されると、回転軸を回転させる。すると、モータ本体の回転軸に偏心して取り付けられたウェイトによって振動が発生する。
ただし、振動モータとしてはこのような構造のものに限定されない。
【0024】
なお、振動モータ48の振動は、間欠的に行うように制御するとよい。例えば、1秒振動、1秒振動無しの状態を繰り返し行うようにする。この制御は、制御手段50からの振動モータ駆動回路49への制御信号の出力タイミングの制御により行える。
【0025】
また、モード切換スイッチ38と、表示部34の操作キー36は制御手段50に接続されている。制御手段50は、モード切換スイッチ38からの切換信号に基づいて測定モードを切り換える。
【0026】
また、作業者が操作キー36を操作することにより、記憶手段59に記憶されている閾値の変更ができる。この変更方法について、図5に基づいて説明する。
まず、作業者はモード切換スイッチ38を電流mA測定モードに切り換える。そして、作業者はCOMPキー39を所定時間(例として0.5秒)押し続ける。すると、制御手段50は、表示部34への表示内容を、図5のように設定モードに移行させる。
【0027】
このとき、表示部34に表示されているのが、閾値である。作業者は表示部34に表示されている値を1桁ずつ変更することにより、新たな閾値を設定させることができる。
表示部34において選択されている桁は点滅状態となっている。作業者は、COMPキー39を押すことで選択されている桁の数字を1つずつ繰り上げることができる。作業者は、表示部34で選択されている桁の数字を所望の数字に設定した後、DHキー40を押して選択する桁を隣の桁に移行させる。
こうして全ての桁の設定が完了した後、DHキー40を所定時間(例として1秒)以上押し続けると、設定された数値が閾値として記憶手段59に記憶される。
【0028】
なお、制御手段50には、警告音発生手段であるブザー57が接続されていてもよい。
制御手段50の比較機能が比較した結果、測定された漏れ電流値が記憶手段59に記憶されている閾値よりも大きい場合には、制御手段50はブザー57に出力信号bを出力する。ブザー57は、制御手段50からの出力信号によって警告音を発生させる。また、具体的には、測定された漏れ電流値が記憶手段59に記憶されている閾値よりも0.01mA大きい場合に、制御手段50がブザー57に出力信号bを出力する。
【0029】
このように、測定された漏れ電流値が閾値よりも大きい場合に、振動モータ48で振動を発生させることに加え、ブザー57で警告音も発生させると、作業者に対して漏れ電流が閾値よりも大きいことを確実に認識させることができる。
なお、ブザー57による警告音の発生は、間欠的に行うように制御するとよい。例えば、1秒警告音発生、1秒警告音の発生停止を繰り返し行うようにする。
【0030】
さらに、制御手段50の比較機能が比較した結果、測定された漏れ電流値が記憶手段59に記憶されている閾値よりも大きい場合には、表示部34における漏れ電流の値の表示は点滅させるように制御手段50が制御しても良い。
具体的には、表示部34における漏れ電流値の測定結果の表示を1秒点灯、1秒消灯の繰り返しで表示されるように制御手段50が制御する。
【0031】
なお、操作キー36を操作することで、記憶手段59に記憶されている閾値を確認することができるように設けるとよい。
具体的には、漏れ電流の測定中であれば、COMPキー39を0.5秒押すことにより、制御手段50が表示部34へ記憶手段59内の閾値を出力し、表示部34に表示させる。
【0032】
上述してきたような測定された漏れ電流値と閾値とを比較し、振動を発生させる制御を比較モードとする。そして、測定された漏れ電流値を閾値と比較せずに単に表示部34に表示するだけの制御を通常モードとする。
本実施形態では、この比較モードと通常モードとを切り換える切換手段を備えている。
具体的には、制御手段50のCPUを動作させる制御プログラムとして、比較モードを実行するプログラムと、通常モードを実行するプログラムを記憶させておき、作業者からの指示によりこれらの制御プログラムの実行を切り換えるのである。
【0033】
切換手段としては、具体的にはCOMPキー39を用いている。作業者は、比較モードと通常モードとを切り換える場合には、COMPキー39を所定時間(例えば1秒)押下する。すると制御手段50においては、測定時において今まで実行していた制御プログラムではなく、別の制御プログラムに基づいて測定を実行するようにする。
こうして、作業者は、比較モードと通常モードを容易に切り換えることができ、より快適な漏れ電流の測定作業に従事できる。
【0034】
以上本発明につき好適な実施例を挙げて種々説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明のクランプテスタの平面図である。
【図2】図1のクランプテスタの背面図である。
【図3】図1のクランプテスタの側面図である。
【図4】本発明のクランプテスタの内部構成について説明するブロック図である。
【図5】表示部の表示状態を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0036】
30 クランプテスタ
31 本体部
32 クランプ部
34 表示部
36 操作キー
38 モード切換スイッチ
39 COMPキー
40 DHキー
42 レバー
44 入力端子
46 測定手段
48 振動モータ
49 振動モータ駆動回路
50 制御手段
51 表示部
53 ヘッドコア
54 電流測定回路
55 磁性体コア
56 コイル
57 ブザー
59 記憶手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線をクランプすることにより、電線の漏れ電流を測定するクランプテスタにおいて、
漏れ電流を測定する測定手段と、
振動モータと、
測定手段によって測定された漏れ電流値と予め設定された閾値とを比較し、測定された漏れ電流値が閾値を超えた場合に、振動モータを駆動させるように制御する制御手段とを具備することを特徴とするクランプテスタ。
【請求項2】
測定手段によって測定された漏れ電流値を表示する表示手段が設けられ、
前記制御手段における、測定された漏れ電流値と閾値との比較動作を実行して振動モータを制御する比較モードと、測定された漏れ電流値と閾値とを比較せずに単に漏れ電流値を表示手段に表示する通常モードとを切り換える切換手段が設けられていることを特徴とする請求項1記載のクランプテスタ。
【請求項3】
前記閾値の値を変更させる変更手段を具備することを特徴とする請求項1または請求項2記載のクランプテスタ。
【請求項4】
警告音を出力する警告音出力手段が設けられ、
前記制御手段は、測定手段によって測定された漏れ電流値が閾値を超えた場合に、振動モータを駆動させるように制御すると共に、警告音発生装置から警告音を出力させるように制御することを特徴とする請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項記載のクランプテスタ。
【請求項5】
前記制御手段は、測定手段によって測定された漏れ電流値が閾値を超えた場合に、振動モータを駆動させるように制御すると共に、表示手段に表示されている漏れ電流値が点滅表示されるように制御することを特徴とする請求項2〜請求項4のうちのいずれか1項記載のクランプテスタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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