説明

クロック供給システム、クロック供給装置、網同期クロック管理装置、およびコンピュータプログラム

【課題】ネットワーク内の或る局においてクロックの周波数変動(周波数精度の劣化)が生じた場合において、当該局のみならず、その下位局など、階層的にクロックの周波数精度の劣化が生じる場合に、網全体を見渡し、より少ない局でのクロック従属元の切替を行う。
【解決手段】クロック供給システム1において、クロック供給装置21は、入力クロックおよび出力クロックの周波数精度を計測し、周波数精度が劣化した場合に、警報として網同期クロック管理装置100に送信する。網同期クロック管理装置100は、クロック供給装置21から警報を受信した場合に、当該警報発出局の上位局と、当該警報発出局の下位局群と、における警報出力の状況を検出し、所定の規則に従い、クロック従属元を切り替えるべき局を判定し、この局にクロック従属元の切替信号(制御信号)を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク(従属同期方式の網)内の或る局おいてクロックの周波数変動(周波数精度劣化、すなわち設定された周波数からの差分の誤差周波数が予め設定した閾値より大きくなる状態)が生じた場合において、当該局のみならず、その下位局と、さらにその下位局など、階層的にクロックの周波数精度の劣化が生じる場合に、より少ない局での異常解析、クロック従属元の切替を行うことができる、クロック供給システム、クロック供給装置、網同期クロック管理装置、およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在のわが国の通信網はネットワーク内の各ノード及び各装置の動作クロックを一致させる網同期方式として従属同期方式を採用している。従属同期方式では、図14に示すように最上位のノード内のクロック供給装置(クロック供給装置については後述する)から出力されるマスタクロック(Primary Reference Clock)を起点とし、上位ノードから伝送路(クロックパス)を介して下位ノードにクロックが分配される。各ノードに分配されたクロックは、図15に示すように、伝送路14および伝送装置12を経由して、ノード11内に設置されているクロック供給装置21Bにより受信される。クロック供給装置21Bは、受信したクロックに同期したクロックを生成し、ノード11内の各装置(伝送装置12および交換機13等)に分配し、そのクロックが、更に下位ノードに伝送路(クロックパス)14を介して分配される。
【0003】
図16に示すように、クロック供給装置21Bは、N系クロック受信部22、E系クロック受信部23、入力断監視部24、入力切替部25、発振器部26、分配部27で構成される。クロック従属元は、図14,15,16に示したとおり、N/E冗長構成をとっており、通常はN系(通常系)のクロックパスから分配されているクロックに従属している。そして、クロック供給装置21Bは、入力監視部24によりN系クロック入力断を検出した場合、切替信号を入力切替部25に送信し、そのクロック供給元をE系(予備系)に切り替えさせる。しかし、クロック供給装置21BがN系クロック入力に従属しているとき、N系クロック入力断ではなく、クロック周波数精度の劣化を伴うような異常がN系クロックパスに発生した場合、E系には切り替わらない。そのためクロック供給装置21Bは周波数精度が劣化したクロックに従属し続けてしまう。このような問題を解決する手段として、従来技術のクロック供給装置に示されるクロック周波数精度監視方法がある(特許文献1を参照)。
【0004】
これは図17に示すように、クロック供給装置21B内の発振器部26から出力される制御データを周波数制御データ監視部28でモニタすることにより、出力周波数精度を監視する技術である。ただし、図17に示す例では、図16に記載されていた入力断監視部24は省略して示している。前述の特許文献1の実施例には、10,000秒間のMTIE(Maximum Time Interval Error)に閾値10μsecを課したケースが挙げられている。
【0005】
この特許文献1の実施例では、10,000秒のスライディングウィンドウ(スライド間隔:100sec)を設定し、その10,000秒間、100秒間隔で周波数制御データを収集したものを周波数に換算し、「f(n×Δt)」とする。ただし「0≦n≦100、Δt=100秒」である。基準値の周波数換算値fからの偏差「Δf/f」から、時刻n×Δtで次式に定義されるTIE(Time Interval Error)が得られる。
【0006】
【数1】

【0007】
前述の10,000秒間で、101個の「TIE:TIE(0), TIE(Δt), …, TIE(99×Δt), TIE(100×Δt)」が得られる。この101個のTIEの最大値と最小値の差「MTIE」に閾値10μsecを課し、それを超過すれば、警報「EMERGENCY」を発出(出力)し、入力クロック従属元をN系からE系に切り替える。これによりクロック周波数精度が劣化した入力への従属を回避できる。基準値は5,000,000秒のスライディングウインドウ(スライド間隔:100秒)でモニタされた制御データ50,000個を平均することにより得られる。
【0008】
またGpS(Global Positioning System)信号を基準としてクロック供給装置の入力クロック及び出力クロックの周波数精度を計測する方法も従来技術としてあり、これを前記特許文献1の例と組み合わせることにより、図18に示すクロック供給装置21Cの構成とすることもできる。
【0009】
出力クロックについては、前述の特許文献1と同様にして周波数精度を監視し、入力クロックについては、GpS受信機30から送信される高精度の基準周波数fとクロック入力の周波数fを100秒間隔で比較し、f(n×Δt)とする。ただし「0≦n≦100、Δt=100秒」である。そして、基準値の周波数換算値fからの偏差「Δf/f」から、前記特許文献1の例と同様に、10,000秒のスライディングウィンドウ(スライド間隔:100sec)を設定し、この10,000秒間で得た101個の「TIE;TIE(0),TIE(Δt),・・・,TIE(99×Δt),TIE(100×Δt)」の最大値と最小値の差「MTIE」に、閾値10μsecを課し、それを超過すれば、警報「EMERGENCY」を発出する。
【0010】
この方法をN系、E系各クロック入力に適用する。すなわち、N系入力MTIE計測部31とE系入力MTIE計測部32を設け、N系、E系各クロック入力の周波数精度を、前記特許文献1の例と同様の精度で監視することができる。そして、N系、E系各クロック入力の警報「EMERGENCY」を前述の周波数制御データ監視部28に入力し、周波数制御データ監視部28は出力クロックに関する警報「EMERGENCY」を受信したとき、入力クロックの警報を確認し、図26に示す表1の論理に従って、切替信号を入力切替部25に送信する。つまり、周波数制御データ監視部28はクロック従属元を切り替える際、事前に切替先の周波数精度の正常性を確認することができる。ただし、図26に示す表1中の「自走」とは入力切替部25はスイッチをN系クロック入力、E系クロック入力いずれの接点にも接続しない状態を指す。
【0011】
この、図26に示す表1において、「状態1」は、周波数制御データ監視部28から、出力クロックのEMERGENCY信号が発出され、N系MTIE計測部31からN系入力クロックのEMERGENCY信号が発出され、E系MTIE計測部32からE系入力クロックのEMERGENCY信号が発出された状態を示している。この「状態1」の場合は、N系およびE系とも入力クロックが劣化しているので、「自走」とする。
【0012】
「状態2」は、周波数制御データ監視部28から、出力クロックのEMERGENCY信号が発出され、N系MTIE計測部31からN系入力クロックのEMERGENCY信号が発出され、E系MTIE計測部32からE系入力クロックのEMERGENCY信号が発出されない状態を示している。この「状態1」の場合は、N系の入力クロックが劣化していると判断し、クロック入力の従属元として、E系へ切替を行う。
【0013】
「状態3」は、周波数制御データ監視部28から、出力クロックのEMERGENCY信号が発出され、N系MTIE計測部31からN系入力クロックのEMERGENCY信号が発出されず、E系MTIE計測部32からE系入力クロックのEMERGENCY信号が発出された状態を示している。この「状態3」の場合は、N系入力クロックの劣化具合がEMERGENCY信号が発出される閾値よりも僅かに下にであることが想定されるため、N系およびE系とも入力クロックが劣化しているので、「自走」とする。
【0014】
「状態4」は、周波数制御データ監視部28から、出力クロックのEMERGENCY信号が発出され、N系MTIE計測部31からN系入力クロックのEMERGENCY信号が発出されず、E系MTIE計測部32からE系入力クロックのEMERGENCY信号が発出されない状態を示している。この「状態4」の場合は、クロック入力の従属元として、E系へ切替を行う。
【0015】
なお、図18に示す例では、GpSからの信号を基準としてN系入力クロック、E系入力クロックの周波数精度を監視し、出力については、制御データを利用したが、図19に示すように、周波数制御データ監視部28に代えて出力MTIE計測部33を設置し、N系入力クロック、E系入力クロック、出力クロック全ての監視についてGpSからの信号を基準とすることもできる。
【0016】
ここで、図18に示す構成のクロック供給装置21Cの効果について説明するため、或る局Aに対してN系入力クロックに、正常クロック周波数fに対して周波数偏差「Δf/f=1.0×10−8」の変動が与えられたケースを考える。スイライディングウィンドウのスライド間隔が100秒なので、各動作は100秒単位である。
【0017】
図20に前記周波数偏差が与えられた時刻を0とした制御データのMTIE(単位:nsec)の変化を示す。時刻1,200秒で、周波数制御データ監視部28は局Aの制御データのMTIEが閾値10μsecとなったことを検出し、制御データの警報「EMERGENCY」を発出し、E系入力クロックは正常なのでクロック従属元をE系に切り替えるよう切替信号を入力切替部25に送信し、入力切替部25はクロック従属元をE系に切り替える。時刻10,400秒に周波数制御データ監視部28はMTIEが閾値10μsec未満に回復したことを検出し、制御データの警報「EMERGENCY」は解除される。このようにして、N系入力クロックが劣化したことを検出して、クロック従属元をN系クロックからE系クロックに切り替えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特許第3370258号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
ところで、図21に示すように、局Aに局B1,B2,B3がそれぞれ従属し、局C1,C2,C3は局B1,B2,B3にそれぞれ従属している構成で、局Aに対して先ほどと同様にN系に正常クロック周波数fに対して周波数偏差「Δf/f=1.0×10−8」の変動が与えられたケースを考える。スイライディングウィンドウのスライド間隔が100秒なので、各動作は100秒単位である。
【0020】
図22に各局の周波数制御データ監視部28から出力される制御データのMTIE(単位:nsec)の変化を示す。時刻1,200秒に、局Aの周波数制御データ監視部28は制御データのMTIEが閾値10μsecとなったことを検出し、制御データの警報「EMERGENCY」を発出する。
【0021】
この場合、E系入力クロックは正常なのでクロック従属元をE系に切り替えるよう切替信号を入力切替部25に送信し、入力切替部25はクロック従属元をE系に切り替える。しかし、局Aの出力がすぐに回復する訳ではないので、下位局B1,B2,B3のMTIEは時刻1,500秒で閾値10μsecとなり、クロック従属元はE系に切り替わる。局B1,B2,B3の出力もすぐに回復する訳ではないので、下位局C1,C2,C3のMTIEは時刻1,700秒で閾値10μsecとなり、クロック従属元はE系に切り替わる。つまり図23に示すように、クロック従属元のE系への切り替えは局A、その下位局B1,B2,B3及びその下位局C1,C2,C3で実施される。
【0022】
このように、ある局Aに周波数変動が与えられた場合、局Aのみでなく、その下位に属する局でもクロック入力元をN系からE系に変更するケースが有る。この場合、クロック入力元を変更した各局で、異常調査等の保守対応がなされる。網的に見れば、そもそもの原因である局Aでのみ従属元の切替、クロック従属元の異常調査等の保守対応をすればよいのであるが、従来技術では、上位局、下位局でのMTIEに関する情報及びそれらを網的に考慮したクロック従属元切替アルゴリズムは無いので、網全体を見渡しての網異常対処は不可能である。また仮に局AのN系入力が根本の原因であることが判明し解決したとしても、局Aのみでなく、下位局B1,B2,B3及びその下位局C1,C2,C3でもクロック入力元をE系からN系に切り戻す必要が有る。切り戻しは手動であり、下位局及びその下位局が本例のように3局ずつではなく、多数の場合、その作業を速やかに実施することは困難である。
【0023】
また、別の例として、同じく図21に示す構成で局AにN系に正常クロック周波数fに対して周波数偏差「Δf/f=9.9×10−10」の変動が与えられたケース、即ち、10,000秒でのMTIEが9.9μsec程度に維持される程度の周波数偏差が入力されたケースを考える。
【0024】
ITU(International Telecommunication Union)の勧告G.823,G.824,G.825によると、ネットワーク内で許容される10,000秒でのMTIEとして1μsec程度が規定されているので、局Aから下位局B1,B2,B3までのクロックパスに10,000秒で1μsecのMTIEが加算されることが有り得る。ここでは、局B1,B2,B3のN系に正常クロック周波数fに対して周波数偏差「Δf/f=1.09×10−9」の変動が与えられたとする。
【0025】
図24に時刻8,000秒から12,000秒までの各局の制御データのMTIE(単位:nsec)の変化を示す。局Aの制御データのMTIEは閾値10μsec未満が維持される。時刻9,600秒で下位局B1,B2,B3の周波数制御データ監視部28はMTIEが閾値10μsecとなったことを検出し、制御データの警報「EMERGENCY」を発出し、E系入力クロックは正常なのでクロック従属元をE系に切り替えるよう切替信号を入力切替部25に送信し、入力切替部25はクロック従属元をE系に切り替える。
【0026】
この場合、局B1,B2,B3の出力は、すぐに回復する訳ではないので、下位局C1,C2,C3のMTIEは時刻9,800秒で閾値10μsecとなり、クロック従属元はE系に切り替わる。つまり、図25に示すように、下位局B1,B2,B3及びその下位局C1,C2,C3でクロック入力元がN系からE系に切り替えられ、各局で異常調査等の保守対応がなされる。網的に見れば、そもそもの原因である局Aで従属元の切替、クロック従属元の異常調査等の保守対応をすればよいのであるが、従来技術では、網全体を見渡しての網異常対処は不可能である。
【0027】
以上説明したように、ある局Aに周波数変動が与えられた場合、この局Aのみでなく、その下位に属する局(さらには、その下位に属する局)でもクロック入力元をN系からE系に変更するケースが有る。また、局Aに周波数変動が与えられたにも係らず、局Aはクロック入力元としてN系をそのまま維持し、下位に属する局(さらには、その下位に属する局)においてクロック入力元をN系からE系に変更するケースが有る。これらケースについては、網的に見れば、そもそもの原因である局Aで従属元の切替、クロック従属元の異常調査等の保守対応をすればよいのであるが、従来技術では、網全体を見渡しての網異常対処は不可能であった。
【0028】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、ネットワーク内の或る局においてクロックの周波数変動(周波数精度の劣化)が生じる場合において、当該局のみならず、その下位局、さらにその下位局など、階層的に周波数精度の劣化が生じる場合に、各局個別にクロック従属元の切替、異常解析を行うのではなく、網全体を見渡し、より少ない局での異常解析、クロック従属元の切替(または切戻)を行うことができる、クロック供給システム、クロック供給装置、網同期クロック管理装置、およびコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明は、ネットワーク内の各局に設置されると共に、ネットワーク側から伝送路を介して通常系であるN系または予備系であるE系の入力クロックを受信し、該入力クロックに同期した出力クロックを生成して前記伝送路に出力するクロック供給装置と、前記ネットワーク内の各局のクロック供給装置から、入力クロックおよび出力クロックの周波数精度の劣化情報を警報として前記ネットワークを介して受信する網同期クロック管理装置とで構成されるクロック供給システムであって、前記各局内のクロック供給装置は、前記入力クロックおよび出力クロックの予め設定された周波数からの誤差を計測すると共に、前記誤差が所定の閾値範囲を超えた場合に、警報を出力し前記網同期クロック管理装置に送信する周波数精度計測部と、前記網同期クロック管理装置からクロック従属元の切替えを指示する制御信号を受信し、出力クロックを生成するためのクロック従属元をN系入力クロックからE系入力クロックへ、またはE系入力クロックからN系入力クロックに、さらには自走状態へと使用するクロックを切り替える入力切替部と、を備え、前記網同期クロック管理装置は、ネットワーク内での各局のクロック同期の従属関係における上位、下位の関係を記憶するデータベースと、前記ネットワーク内の各局のクロック供給装置から送信される前記警報を受信する警報収集部と、前記警報収集部によりネットワーク内の任意の局から前記警報を受信した場合に、前記データベースを参照し、警報を出力した局である警報発出局の上位局と、当該警報発出局の下位局群とにおける警報の出力状態を検出し、所定の規則に従いクロック従属元を切り替えるべき局を判定する評定部と、前記評定部における判定結果に応じて、クロック従属元を切り替えるべき局に対してクロック従属元の切替信号を制御信号として出力する制御部とを備えることを特徴とする。
【0030】
また、本発明のクロック供給システムは、前記網同期クロック管理装置内の評定部は、 前記警報収集部により、ネットワーク内の任意の局から前記警報を受信した場合に、警報を出力した局である警報発出局の上位局と、当該警報発出局の下位局群と、当該警報発出局の上位局に従属する下位局群とにおける警報の出力状況を検出し、所定の規則に従いクロック従属元を切り替えるべき局を判定することを特徴とする。
【0031】
また、本発明のクロック供給システムは、前記クロック供給装置内の入力切替部は、前記網同期クロック管理装置から出力される制御信号に応じて、クロック従属元をN系からE系に切り替える機能と、クロック従属元をE系からN系に切り替える機能と、クロック従属元をN系従属から自走状態に切り替える機能と、クロック従属元をE系従属から自走状態に切り替える機能と、クロック従属元を自走状態からN系に切り戻す機能と、クロック従属元を自走状態からE系に切り戻す機能と、を備えることを特徴とする。
【0032】
また、本発明のクロック供給システムは、前記網同期クロック管理装置内には、所定の時間を計数し前記警報が継続して出力されていることを判定するための第1のタイマを有し、前記評定部は、前記ネットワーク内の任意の局で警報が発生した場合に、警報を出力した局である警報発出局の上位局からの警報の出力がないこと検出して、当該警報発出局に対し前記第1のタイマの計数動作を開始させる機能と、前記警報発出局の上位局及び下位局群から前記警報の出力が検出されない状態において、前記第1のタイマの計数値が予め設定した設定値と一致した場合に、前記警報発生局に対してクロック従属元の変更を要求する制御信号を前記制御部を介して出力する機能と、前記警報発出局の上位局からの警報の出力が検出されず、かつ当該警報発出局の下位局群のいずれかの局からの警報の出力が検出される状態において、前記第1のタイマの計数値が予め設定した設定値と一致した場合に、前記警報発出局のクロック従属元の変更を要求する制御信号を前記制御部を介して出力する機能と、を備えることを特徴とする。
【0033】
また、本発明のクロック供給システムは、前記網同期クロック管理装置内には、前記第1のタイマよりも短い時間を計数する第2のタイマをさらに備え、前記評定部は、前記ネットワーク内の任意の局で警報が発生した場合に、警報を出力した局である警報発出局に対して前記第1のタイマの計数動作を開始させる機能と、前記第1のタイマの計数動作中であって、かつ前記警報発出局の上位局及び下位局群からの警報の出力が検出されない状態において、前記第1のタイマが予め設定した計数値に到達した場合に、前記警報発出局のクロック従属元の変更を要求する制御信号を前記制御部を介して出力する機能と、前記第1のタイマの計数動作中であって、かつ前記警報発出局の上位局からの警報の出力が検出されず、かつ前記警報発出局の下位局群のいずれかの局からの警報の出力が検出される状態において、前記第2のタイマを動作させると共に、前記第2のタイマの動作中に前記第1のタイマが予め設定した計数値に到達した場合、または、前記第1のタイマの動作中に前記第2が予め設定した計数値に到達した場合に、前記警報発出局のクロック従属元の変更を要求する制御信号を前記制御部を介して出力する機能と、を備えることを特徴とする。
【0034】
また、本発明のクロック供給システムは、前記評定部は、前記警報発出局に加えて、該警報発出局の上位局に従属する下位局群のいずれかの局に警報を出力する局がある場合には、該警報発出局の上位局に対しクロック従属元の変更を要求する制御信号を前記制御部を介して出力する機能を、さらに備えることを特徴とする。
【0035】
また、本発明のクロック供給システムは、前記網同期クロック管理装置内の前記評定部がクロック従属元を切り替えるべき局を判定する際、警報発出局から警報を受信した場合に、当該警報発出局を初期状態である状態1−1から、当該警報発出局と、当該警報発出局の上位局および下位局群と、当該警報発出局の上位局に従属する下位局群とを認識する状態である状態2−1に遷移させ、前記状態2−1において、当該警報発出局の上位局から警報が出力されていないことを検出した場合に、当該警報発出局に対し前記第1のタイマの計数を開始させる状態2−2に遷移させ、前記状態2−2において、前記第1のタイマの作動中に、上位局からの警報の出力が検出されず、かつ当該警報発出局の下位局群のいずれかの局からの警報の出力が検出される場合に、当該警報発出局を状態2−2から状態3−1に遷移させ、前記状態2−2において、当該警報発出局の上位局および下位局群からの警報が出力されない状態において、前記第1のタイマが予め設定した計数値に到達した場合に、当該警報発出局を前記状態2−2から状態4−1に遷移させ、前記状態3−1において、第2のタイマの計数動作を開始させ、前記警報発出局の上位局からの警報が出力が検出されず、かつ当該警報発出局の下位局群のいずれかの局からの警報の出力が検出される状態において、前記第2のタイマの計数動作中に前記第1のタイマが予め設定した計数値に到達した場合、または、前記第1のタイマの計数動作中に、前記第2のタイマが予め設定した計数値に到達した場合に、当該警報発出局を状態3−1から状態4−1に遷移させ、前記状態4−1において、前記第1のタイマおよび第2のタイマの動作を停止させると共に、前記警報発出局に対してクロック従属元の切替信号を前記制御部を介して出力すると共に、該状態4−1において、当該警報発出局からの警報の出力が行われなくなったことを検出した場合に、当該警報発出局を、状態4−1から状態5−1に遷移させ、前記状態5−1において、前記第1のタイマの計数動作を開始させ、該第1のタイマが予め設定した計数値に到達した時、または該第1のタイマの計数動作中に前記警報発出局の下位局群からの警報の出力がなくなったことを検出した時に、当該警報発出局を、状態5−1から前記初期状態1−1に遷移させる、ことを特徴とする。
【0036】
また、本発明のクロック供給システムは、前記警報発出局に加えて、当該警報発出局の上位局に従属する下位局群に警報を出力する局がある場合において、前記評定部が、当該警報発出局を含む前記上位局に従属する下位局群の1つが最初に前記状態5−1となった場合に、最初に前記状態5−1になった局に対する前記第1のタイマの計数動作中に、当該警報発出局を含む他の下位局群の中に前記状態4−1または状態5−1に存在する局があるとき、当該警報発出局の上位局に対してクロック従属元を切り替える制御信号を前記制御部を介して出力することを特徴とする。
【0037】
また、本発明のクロック供給装置は、ネットワーク内の各局に設置されると共に、ネットワーク側から伝送路を介して通常系であるN系または予備系であるE系の入力クロックを切り替えて受信し、該入力クロックに同期した出力クロックを生成して前記伝送路に出力するクロック供給装置と、前記ネットワーク内の各局のクロック供給装置から、入力クロックおよび出力クロックの周波数精度の劣化の情報を警報として前記ネットワークを介して受信し、警報を出力する局がある場合に、当該警報発出局の上位局および下位局群と、前記上位局に従属する下位局群とにおける警報の出力状況を検出し、所定の規則に従いクロック従属元を切り替えるべき局を判定する網同期クロック管理装置とで構成されるクロック供給システムにおける前記クロック供給装置であって、前記入力クロックおよび出力クロックの予め設定された周波数からの誤差を計測すると共に、前記誤差が所定の閾値範囲を超えた場合に、警報を出力し前記網同期クロック管理装置に送信する周波数精度計測部と、前記網同期クロック管理装置からクロック従属元の切替えを指示する制御信号を受信し、出力クロックを生成するためのクロック従属元をN系入力クロックからE系入力クロックへ、またはE系入力クロックからN系入力クロックに、さらには自走状態へと切り替える入力切替部と、を備えることを特徴とする。
【0038】
また、本発明の網同期クロック管理装置は、ネットワーク内の各局に設置されると共に、ネットワーク側から伝送路を介して通常系であるN系または予備系であるE系の入力クロックを切り替えて受信し、該入力クロックに同期した出力クロックを生成して前記伝送路に出力すると共に、前記入力クロックおよび出力クロックの周波数精度を計測し、前記周波数精度が劣化した場合に、周波数精度の劣化情報を警報として出力するクロック供給装置と、前記ネットワーク内の各局のクロック供給装置から前記警報をネットワークを介して受信する網同期クロック管理装置とで構成されるクロック供給システムにおける前記網同期クロック管理装置であって、ネットワーク内の各局の上位、下位のクロック同期の従属関係を記憶するデータベースと、前記ネットワーク内の各局のクロック供給装置から送信される警報を受信して収集する警報収集部と、前記警報収集部によりネットワーク内の任意の局から前記警報を受信した場合に、前記データベースを参照し、警報を出力した局である警報発出局の上位局と下位局群と、前記上位局に従属する下位局群とにおける警報の出力状況を検出し、所定の規則に従いクロック従属元を切り替えるべき局を判定する評定部と、前記評定部における判定結果に応じて、クロック従属元を切り替えるべき局に対してクロック従属元の切替信号を制御信号として出力する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0039】
また、本発明のコンピュータプログラムは、ネットワーク内の各局に設置されると共に、ネットワーク側から伝送路を介して通常系であるN系または予備系であるE系の入力クロックを切り替えて受信し、該入力クロックに同期した出力クロックを生成して前記伝送路に出力するクロック供給装置と、前記ネットワーク内の各局のクロック供給装置から、入力クロックおよび出力クロックの周波数精度の劣化の情報を警報として前記ネットワークを介して受信し、警報を出力する局がある場合に、当該警報発出局の上位局および下位局群と、前記上位局に従属する下位局群とにおける警報の出力状況を検出し、所定の規則に従いクロック従属元を切り替えるべき局を判定する網同期クロック管理装置とで構成されるクロック供給システムにおける前記クロック供給装置内のコンピュータに、前記入力クロックおよび出力クロックの測定された周波数と、予め設定された周波数との誤差が、所定の閾値範囲を超えた場合に、警報を出力し前記網同期クロック管理装置に送信する周波数精度計測手順と、前記網同期クロック管理装置からクロック従属元の切替えを指示する制御信号を受信し、出力クロックを生成するためのクロック従属元をN系入力クロックからE系入力クロックへ、またはE系入力クロックからN系入力クロックに、さらには自走状態へと切り替える入力切替手順と、を実行させるためのプログラムである。
【0040】
また、本発明のコンピュータプログラムは、ネットワーク内の各局に設置されると共に、ネットワーク側から伝送路を介して通常系であるN系または予備系であるE系の入力クロックを切り替えて受信し、該入力クロックに同期した出力クロックを生成して前記伝送路に出力すると共に、前記入力クロックおよび出力クロックの測定された周波数と、予め設定された周波数との誤差が、所定の閾値範囲を超えた場合に、警報を出力するクロック供給装置と、前記ネットワーク内の各局のクロック供給装置から前記警報をネットワークを介して受信する網同期クロック管理装置とで構成されるクロック供給システムにおける前記網同期クロック管理装置内のコンピュータに、ネットワーク内での各局のクロック同期の従属関係における上位、下位の関係をデータベースに記憶させる手順と、前記ネットワーク内の各局のクロック供給装置から送信される警報をする警報収集手順と、前記警報収集手順によりネットワーク内の任意の局から前記警報を受信した場合に、上記データベースを参照し、警報を出力した局である警報発出局の上位局と下位局群と、前記上位局に従属する下位局群とにおける警報の出力状況を検出し、所定の規則に従いクロック従属元を切り替えるべき局を判定する評定手順と、前記評定手順による判定結果に応じて、クロック従属元を切り替えるべき局に対してクロック従属元の切替信号を制御信号として出力する制御手順と、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0041】
本発明のクロック供給システムにおいては、ネットワーク内の各局のクロック供給装置は、入力クロックおよび出力クロックの周波数精度を計測し、周波数精度が劣化した場合に、警報として網同期クロック管理装置に送信する。網同期クロック管理装置は、ネットワーク内の任意の局から警報を受信した場合に、当該警報発出局の上位局と、当該警報発出局の下位局群と、における警報の発出状態を検出し、所定の規則に従いクロック従属元を切り替えるべき局を判定し、この局にクロック従属元の切替信号(制御信号)を出力する。クロック供給装置は、網同期クロック管理装置から送信される切替信号により、クロック従属元をN系入力クロックからE系入力クロックへ、またはE系入力クロックからN系入力クロックに、さらには自走状態へと切り替える。
これにより、ネットワーク内の或る局においてクロックの周波数変動(周波数精度の劣化)が生じた場合において、その局のみならず、その下位局と、さらにその下位局など、階層的に周波数精度の劣化が生じる場合に、各局個別にクロック従属元の切替、異常解析を行うのではなく、網全体を見渡し、より少ない局での異常解析、クロック従属元の切替えまたは切戻しを行うことができる。
【0042】
また、本発明のクロック供給システムにおいては、網同期クロック管理装置内の評定部は、ネットワーク内の任意の局から警報を受信した場合に、警報を発出した局である警報発出局の上位局と、下位局群と、当該警報発出局の上位局に従属する下位局群とにおける警報の発出状態を検出し、所定の規則に従いクロック従属元を切り替えるべき局を判定する。
これにより、クロックの周波数精度劣化のそもそもの原因である上位局から警報が発出されず、その下位の局から警報が発出される場合において、そもそもの原因である上位局におけるクロック従属元の切り替えを行うことができる。
【0043】
また、本発明のクロック供給システムにおいては、クロック供給装置は、網同期クロック管理装置から出力される制御信号(切替信号)に応じて、クロック従属元をN系からE系への切り替えと、E系からN系への切り替えと、N系から自走状態への切り替えと、E系から自走状態への切り替え、自走状態からN系への切り戻し、自走状態からE系への切り戻しとを、行えるように構成される。
これにより、クロック従属元を切り替えるべきと判定された局において、N系またはE系のクロックの受信状態に応じて、クロック従属元を切り替えることができる。
【0044】
また、本発明のクロック供給システムにおいては、網同期クロック管理装置内には、警報が継続して出力されていることを判定するためのタイマを有し、評定部は、ネットワーク内の任意の局で警報が発生した場合に、当該警報発出局の上位局で警報の発出がないこと検出して、当該警報発出局に対してタイマの計数動作を開始させ、当該警報発出局の上位局及び下位局群からの警報の発出が検出されずにタイマが予め設定した計数値に到達した場合に、当該警報発生局に対してクロック従属元の変更を要求する制御信号を出力する。また、当該警報発出局の上位局からの警報が検出されず、当該警報発出局の下位局群からの警報の発出が検出された場合に、タイマが予め設定した計数値に到達した後に、当該警報発出局のクロック供給元の変更を要求する制御信号を出力する。
これにより、警報発出局、当該警報発出局の上位局、および当該警報発出局の下位局群における警報発出状態をタイマにより確実に検出した後に、当該警報発出局におけるクロック従属元の切り替えを行うことができる。
【0045】
また、本発明のクロック供給システムにおいては、網同期クロック管理装置は、所定の時間を計数する第1のタイマと、第1のタイマよりも短い時間を計数する第2のタイマとを備え、警報発出局に対し第1のタイマを動作させ、第1のタイマの動作中であって、かつ当該警報発出局の上位局及び下位局群からの警報の発出が検出されない状態において、第1のタイマが予め設定した計数値に到達した後に当該警報発出局のクロック従属元の変更を要求する制御信号を出力する。また、第1のタイマの動作中であって、かつ当該警報発出局の上位局からの警報の発出が検出されず、下位局群のいずれかの局からの警報の発出が検出された状態において、第2のタイマを動作させると共に、第2のタイマの計数動作中に第1のタイマが予め設定した計数値に到達した場合、または、第1のタイマの計数動作中に第2のタイマが予め設定した計数値に到達した場合に、当該警報発出局のクロック従属元の変更を要求する制御信号を出力する。
これにより、警報発出局、当該警報発出局の上位局、および当該警報発出局の下位局群における警報発出状態をタイマにより確実に検出した後に、当該警報発出局におけるクロック従属元の切り替えを行うことができる。
【0046】
また、本発明のクロック供給システムにおいては、網同期クロック管理装置の評定部は、警報発出局の上位局に従属する下位局群のいずれかの局に警報を発出する局がある場合には、当該警報発出局の上位局に対しクロック従属元の変更を要求する制御信号を出力する。
これにより、周波数精度劣化のそもそもの原因である上位局から警報が発出されず、その下位の局から警報が発出される場合において、そもそもの原因である上位局におけるクロック従属元の切り替えを行うことができる。
【0047】
また、本発明のクロック供給システムにおいては、網同期クロック管理装置の評定部は、クロック従属元を切り替えるべき局を判定する評定アルゴリズムとして、警報発出局から警報を受信した場合に、当該警報発出局を初期状態1−1から状態2−1に遷移させると共に、以後、当該警報発出局の上位局および下位局群の警報の発出状況に応じて、当該警報発出局を状態2−2、状態3−1、状態4−1へと遷移させ、状態4−1において当該警報発出局に対してクロック従属元の切替信号を出力する。
これにより、警報発出局から警報を受信した場合に、当該警報発出局の上位局および下位局群の警報の発出状況を判定しながら、当該警報発出局に対してクロック従属元の切替信号を出力することができる。
【0048】
また、本発明のクロック供給システムにおいて、網同期クロック管理装置の評定部は、警報発出局に加えて、当該警報発出局の上位局に従属する下位局群に警報を発出する局がある場合において、当該警報発出局を含む下位局群の1つが最初に状態5−1となった場合に、最初に前記状態5−1になった局に対する第1のタイマの計数動作中に、当該警報発出局を含む他の下位局群に状態4−1または状態5−1に存在する局があるときは、当該警報発出局の上位局に対しクロック従属元を切り替える制御信号を出力する。
これにより、クロックの周波数精度の劣化のそもそもの原因である局から警報が発出されず、その下位の局から警報が発出される場合において、そもそもの原因である局におけるクロック従属元の切り替えを行うことができる。
【0049】
また、本発明のクロック供給装置においては、ネットワーク内の各局のクロック供給装置は、入力クロックおよび出力クロックの周波数精度を計測し、周波数精度が劣化した場合に、警報として網同期クロック管理装置に送信する。また、クロック供給装置は、網同期クロック管理装置から送信される制御信号(切替信号)により、クロック従属元をN系入力クロックからE系入力クロックへ、またはE系入力クロックからN系入力クロックに、さらには自走状態へと切り替える。
これにより、ネットワーク内の或る局においてクロックの周波数変動(周波数精度の劣化)が生じた場合において、その局のみならず、その下位局と、さらにその下位局など、階層的にクロックの周波数精度の劣化が生じる場合に、各局個別にクロック従属元の切替、異常解析を行うのではなく、網全体を見渡し、より少ない局での異常解析、クロック従属元の切替または切戻を行うことができる。
【0050】
また、本発明の網同期クロック管理装置は、ネットワーク内の任意の局から警報を受信した場合に、当該警報発出局の上位局および下位局群と、当該警報発出局の上位局に従属する下位局群とにおける警報の発出状況を検出し、所定の規則に従いクロック従属元を切り替えるべき局を判定し、この局にクロック従属元の切替信号(制御信号)を出力する。クロック供給装置は、網同期クロック管理装置から送信される切替信号により、クロック従属元をN系入力クロックからE系入力クロックへ、またはE系入力クロックからN系入力クロックに、さらには自走状態へと切り替える。
これにより、ネットワーク内の或る局においてクロックの周波数変動(周波数精度の劣化)が生じた場合において、その局のみならず、その下位局と、さらにその下位局など、階層的にクロックの周波数精度の劣化が生じる場合に、各局個別にクロック従属元の切替、異常解析を行うのではなく、網全体を見渡し、より少ない局での異常解析、クロック従属元の切替または切戻を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態に係るクロック供給システムの第1の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るクロック供給システムの第2の構成を示す図である。
【図3】網同期クロック管理装置の構成を示す図である。
【図4】クロック階層番号の定義の例を示す図である。
【図5】階層「n」の各局の呼称の定義の例を示す図である。
【図6】上位局と下位局との階層番号の対応を示す図である。
【図7】網同期クロック管理装置における評定アルゴリズムを示す図である。
【図8】網同期クロック管理装置における評定アルゴリズムの変形例を示す図である。
【図9】本発明による評定アルゴリズムを使用する第1の具体例(前半)を説明するための図である。
【図10】第1の具体例(後半)を説明するための図である。
【図11】本発明における従属元切替対象局の第1の例を示す図である。
【図12】本発明による評定アルゴリズムを使用する第2の具体例を説明するための図である。
【図13】本発明における従属元切替対象局の第2の例を示す図である。
【図14】網同期方式による網同期について説明するための図である。
【図15】従来のネットワーク内のノード(局)の構成例を示す図である。
【図16】従来のクロック供給装置の構成例を示す図である。
【図17】従来の周波数制御データ監視部付きクロック供給装置の構成を示す図である。
【図18】従来のMTIE計測部及び周波数制御データ監視部付きクロック供給装置の構成を示す図である。
【図19】N系及びE系入力MTIE計測部及び出力MTIE計測部付きクロック供給装置の構成を示す図である。
【図20】局Aの入力点に周波数変動が発生する場合のMTIEの出力例を示す図である。
【図21】局Aと局B,B2,B3と局C1,C2,C3との階層関係を示す図である。
【図22】局Aの入力点に周波数変動が発生する場合の局Aと局B1,B2,B3と局C1,C2,C3におけるMTIEの出力例を示す図である。
【図23】従属元切替対象局の第1の例を示す図である。
【図24】局Aの入力点にワンダによる周波数変動が発生する場合の局B1,B2,B3と局C1,C2,C3におけるMTIEの出力例を示す図である。
【図25】従属元切替対象局の第2の例を示す図である。
【図26】N系クロック従属時の周波数制御データ監視部から出力される切替信号の送信論理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0053】
[本発明のクロック供給システムの構成の説明]
図1は、本発明の実施の形態に係る第1のクロック供給システム1の構成を示す図である。図1に示すクロック供給システム1は、クロック供給装置21と網同期クロック管理装置100とで構成される。
【0054】
図1に示すクロック供給装置21の構成は、図18に示すクロック供給装置21Cと同様に、N系クロック受信部22、E系クロック受信部23、入力切替部25、発振器部26、分配部27、N系入力MTIE計測部31、E系入力MTIE計測部32、および周波数制御データ監視部28で構成される。このため、同一の構成部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。なお、入力断監視部24(図16を参照)については、図18と同様に、省略して示されている。
【0055】
クロック供給装置21内のN系入力MTIE計測部31、E系入力MTIE計測部32、および周波数制御データ監視部28から発出される各MTIE警報はネットワーク(DCN網)41を通じて、網同期クロック管理装置100に送信される。また、入力切替部25はネットワーク41を通じて、網同期クロック管理装置100からの制御信号(クロック従属元切り替え信号)を受信する。
【0056】
図1に示すクロック供給装置21では、図18に示すクロック供給装置21Cと異なり、周波数制御データ監視部28は入力切替部25への切替信号を出力しない。入力切替部25は、クロック従属元を、網同期クロック管理装置100からの制御信号に応じて、N系従属、E系従属、自走状態を選択する。N系入力MTIE計測部31、E系入力MTIE計測部32、周波数制御データ監視部28は前述の特許文献1の従来技術と同様の方法で、10,000秒間でのMTIEを算出し、閾値10μsecを超過した場合、MTIE警報EMERGENCY(以下単に、「MTIE警報」または「警報」とも呼ぶ)を発出し、閾値内の場合はMTIE警報の発出を停止する。
【0057】
なお、図2は、本発明の第2のクロック供給システム2の構成を示す図である。図2に示すクロック供給システム2が、図1に示すクロック供給システム1と構成上異なるのは、図1に示すクロック供給装置21に代えて、図2に示すクロック供給装置21Aを使用する点である。他の構成は図1に示すクロック供給システム1と同様である。
【0058】
図2に示すクロック供給装置21Aは、図19に示すクロック供給装置21Dと同様に、周波数制御データ監視部28に代えて、出力MTIE計測部33を使用している。すなわち、N系入力クロック、E系入力クロック、出力クロック全ての監視についてGpSからの信号を基準とする例である。
【0059】
また、図3は、本発明のクロック供給システムにおける網同期クロック管理装置100の構成を示す図である。図3に示すように、網同期クロック管理装置100は、各局のクロック供給装置21から出力されるMTIE警報を収集し各局におけるMTIE警報の発出を検出する警報収集部101を備えている。
【0060】
また、網同期クロック管理装置100は、クロック従属元の切替を行うべき局を所定の規則(評定アルゴリズム)に従い判定する評定部102と、1000秒の時間を計測し警報発出局から出力されるMTIE警報の継続時間を判定するためのタイマ1000と、200秒の時間を計測し警報発出局の下位局群から出力されMTIE警報の継続時間を判定するためのタイマ200とを有している。
【0061】
さらに、網同期クロック管理装置100は、クロック従属元の切替を行うべき局に制御信号(切替信号)を送信する制御部103と、ネットワーク内の各局の上位、下位関係(クロック同期の従属関係)を記憶するデータベース104を備えている。また、このデータベース104には、ネットワーク内の各局(クロック供給装置21)において行われた、クロック従属元の切替えおよび切戻しの履歴情報が保存されている。
【0062】
なお、クロック供給装置21,21A、および網同期クロック管理装置100には、周辺機器として端末(図示せず)が接続され、この端末には入力装置、表示装置等(いずれも表示せず)が接続されている。そして、クロック供給装置21おいて、クロック従属元の切替えが行われる際には、網同期クロック管理装置100の制御部103からクロック供給装置21の端末に、その旨が通知され表示される。また、クロック供給装置21の端末は、網同期クロック管理装置100内の制御部103を通して、データベース104に保存されたクロック従属元の切替えおよび切戻しの履歴情報を受信して表示する機能を備えている。
【0063】
また、図1に示すクロック供給システム1において、前述のクロック供給装置内の周波数精度計測部はN系MTIE計測部31、E系MTIE計測部32、および周波数制御データ監視部28が相当する。また、入力切替部は入力切替部25が相当する。また、前述の警報収集部は、図3に示す網同期クロック管理装置100内の警報収集部101が相当し、前述の制御部は、制御部103が相当する。また、前述の警報は、MTIE警報が相当する。上記周波数精度計測部は、予め設定されている周波数を中心とした周波数の+及び−側の誤差範囲を超えた場合、周波数精度が劣化したとする。
【0064】
そして、図1に示すクロック供給システム1および図3に示す網同期クロック管理装置100に示すように、クロック供給システム1は、ネットワーク内の各局に設置されると共に、ネットワーク側から伝送路を介して通常系であるN系または予備系であるE系の入力クロックを受信し、該入力クロックに同期した出力クロックを生成して伝送路に出力するクロック供給装置21と、ネットワーク内の各局のクロック供給装置21から、入力クロックおよび出力クロックの周波数精度の劣化情報をMTIE警報としてネットワークを介して受信する網同期クロック管理装置100とで構成されるクロック供給システムであって、各局内のクロック供給装置21は、入力クロックおよび出力クロックの周波数精度を計測すると共に、周波数精度が所定の閾値よりも劣化した場合に、MTIE警報を発出し網同期クロック管理装置100に送信する周波数精度計測部(N系MTIE計測部31,E系MTIE計測部32,および周波数制御データ監視部28)と、網同期クロック管理装置100からクロック従属元の切替えを指示する制御信号を受信し、出力クロックを生成するためのクロック従属元をN系入力クロックからE系入力クロックへ、またはE系入力クロックからN系入力クロックに、さらには自走状態へと切り替える入力切替部25と、を備え、網同期クロック管理装置100は、ネットワーク内の各局の上位、下位のクロック同期の従属関係を記憶するデータベース104と、ネットワーク内の各局のクロック供給装置21から送信されるMTIE警報を受信して収集する警報収集部101と、警報収集部101によりネットワーク内の任意の局から警報を受信した場合に、データベース104を参照し、警報を発出した局である警報発出局の上位局と、当該警報発出局の下位局群とにおける警報の発出状態を検出し、所定の規則に従いクロック従属元を切り替えるべき局を判定する評定部102と、評定部102における判定結果に応じて、クロック従属元を切り替えるべき局に対してクロック従属元の切替信号を制御信号として出力する制御部103と、を備える。
これにより、ネットワーク内の或る局においてクロックの周波数変動(周波数精度の劣化)が生じた場合において、当該局のみならず、その下位局、さらにその下位局など、階層的にクロックの周波数精度の劣化が生じる場合に、各局個別にクロック従属元の切替、異常解析を行うのではなく、網全体を見渡し、より少ない局での異常解析、クロック従属元の切替(または切戻)を行うことができる。
【0065】
また、網同期クロック管理装置100内の評定部102は、警報収集部101により、ネットワーク内の任意の局から警報を受信した場合に、警報を発出した局である警報発出局の上位局と、当該警報発出局の下位局群と、当該警報発出局の上位局に従属する下位局群とにおける警報の発出状況を検出し、所定の規則に従いクロック従属元を切り替えるべき局を判定する。
これにより、クロックの周波数精度劣化のそもそもの原因である上位局から警報が発出されず、その下位の局から警報が発出される場合において、そもそもの原因である上位局におけるクロック従属元の切り替えを行うことができる。
【0066】
[本発明のクロック供給システムの動作の説明]
先ず、以下の説明において使用される用語について、予め定義または説明をしておく。
図4に示すように、従属同期方式を採用している網同期の階層にクロック階層としての番号をつける。nは、0及び自然数である。階層「0」はマスタクロックを設置している最上位局を表す。
【0067】
また、図5は各局の呼称について説明する図である。クロック階層「n」にk局存在する場合、それらの局を「局(n,s),局(n,s),・・・,局(n,s)」と表記する。「局(n,s),局(n,s),・・・,局(n,s)」の中で説明上、特定の局を表す場合、例えば局(n,s)に注目したい場合、その局を局(n,p)と表記する。pの添え字nは階層番号を表す。
【0068】
クロック上位局、下位局の表現として、局(n,p)にクロックを供給している上位局を局(n−1,pn−1(p))と表記し、局(n,p)がクロックを供給している下位局群を局(n+1,sn+1(p)),(i=1,2,3・・・)と表記し、局(n,p)のクロック上位局(n−1,pn−1(p))がクロックを供給している下位局群を局(n,s(pn−1(p))),(i=1,2,3・・・)と表記する。
【0069】
図6は、「i=1,2,3」の場合について説明したものであり、前記局(n,p)は上位局(n−1,pn−1(p))の下位局群(n,s(pn−1(p)))の「i=2」の局であるケースである。
【0070】
これら上位局、下位局、下位局群が指定されるタイミングは局(n,p)が、後述する図7に示す状態1−1から状態2−1に変化した時刻tである。つまり、局(n−1,pn−1(p))とは局(n,p)が状態1−1から状態2−1に変化した時刻tで局(n,p)が現用として従属している局である。
【0071】
また、局(n+1,sn+1(p)),(i=1,2,3・・・)とは、局(n,p)が状態1−1から状態2−1に変化した時刻tで、局(n,p)が供給するクロックを現用系従属元としている下位局群である。また、局(n,s(pn−1(p))),(i=1,2,3・・・)とは局(n,p)が状態1−1から状態2−1に変化した時刻tで、局(n,p)のクロック上位局(n−1,pn−1(p))から供給されるクロックを現用系従属元としている下位局群である。これらの上位局下位局の関係は次に状態1−1から状態2−1に遷移する時点まで保持される。ただし、状態1−1、状態2−1等についての説明は後述する。
【0072】
局(n,p)からの制御データMTIE警報の受信を論理「1」とし、正常すなわちMTIE警報を受信していない状態を論理「0」として、評定部102における局(n,p)の制御データMTIE警報の監視結果を次式で表す。
【0073】
【数2】

【0074】
また局(n,p)が自走状態にあるとき、評定部102においては局(n,p)の状態を「FREERUN(p)=1」と認識し、自走状態ではないとき、つまり上位局に従属している場合、論理「0」と認識する。
【0075】
次にタイマについて説明する。タイマは、予め設定された設定値としての満了時間1000秒のタイマ1000と、予め設定された設定値としての満了時間200秒のタイマ200とがある。「Timer1000ACT(p)」は局(n,p)にてタイマ1000の動作を表し、論理「1」がタイマ動作中(計数動作中)、論理「0」がタイマ停止中を表す。「Timer200ACT(p)」は局(n,p)にてタイマ200の動作を表し、論理「1」がタイマ動作中(計数動作中)、論理「0」がタイマ停止中を表す。
【0076】
また、本資料では計算式を簡略化するため以下の記法を定義する。
【0077】
【数3】

【0078】
また、データベース104には、網上の任意の局(n,p)に対して、その上位局情報局(n−1,pn−1(p))及び下位局群情報局(n+1,sn+1(p)),(i=1,2,3・・・)の情報が登録されている。
【0079】
評定部102は、或る局(n,p)から制御データMTIE警報を受信した場合、その上位局(n−1,pn−1(p))及び下位局群(n+1,sn+1(p)),(i=1,2,3・・・)からの制御データMTIE警報の受信状況と合わせて、その局(n,p)のクロック供給装置21でクロック従属元を変更するか否かを評定(判定)する。そして、クロック供給元を変更する必要があると判定した場合、評定部102は制御部103に、その局(n,p)のクロック供給装置21のクロック従属元を変更するよう切替要求信号(制御信号)を送信する。
【0080】
制御部103は評定部102から、切替要求信号を受信すると、データベース104における登録情報に基づき、その局(n,p)に該当する局に対して、制御信号を送信する。また、制御部103は評定部102からの切替要求信号とは別に保守者の手動による操作で任意の局に対して、制御信号を送信することができる。
【0081】
以下、前述の定義、および説明した用語を用いて、網同期クロック管理装置100の動作を或る局(n,p)について説明する。ただし本明細書では論理式「1+1」はブール代数に従うのではなく、算術和に従う。即ち「1+1=1」ではなく「1+1=2」である。これは「A+B=1」となるのは「A=1,B=0」または「A=0,B=1」のみであることを意味する。
【0082】
[評定部102における評定アルゴリズムの説明]
図7は、本発明のクロック供給システムを構成する網同期クロック管理装置100の評定部102における評定アルゴリズムを示す図である。図7において、四角枠は、動作状態を状態番号により識別して示したものである。状態番号で識別される各四角枠内において、「<n,P>」は、前述した以下の式を表している。
【0083】
【数4】

【0084】
また、「T_1000_n」は、「Timer1000ACT(P)」の状態を表し、「T_1000_n ON(START&COUNTING)」は「Timer1000ACT(P)=1」を、「T_1000_n OFF」は「Timer1000ACT(P)=0」を表す。「T_200_n」は、「Timer200ACT(P)」の状態を表し、「T_200_n ON(START&COUNTING)」、「Timer200ACT(P)=1」を、「T_200_n OFF」は、「Timer200ACT(P)=0」を表す。
【0085】
また、図中、矢印上の符号S1〜S8及びS11は、後述する遷移条件を表し、S9およびS10は上位局(n−1,pn−1(p))におけるクロック従属元の切り替え条件を示し、符号「+」「×」は、それぞれ論理和「OR」、論理積「AND」を表す。
【0086】
図7を参照して、評定部102における局(n,p)の初期状態は、図7に示す状態1−1であり、Flag(0,0)で次式が成立している。すなわち、局(n,p)からの制御データMTIE警報を受信せず、また、タイマ1000およびタイマ200が停止状態にある状態である。
【0087】
【数5】

【0088】
ある時刻t=tで、評定部102は局(n,p)からの制御データMTIE警報を受信すると、制御データMTIE警報を受信したことを示す以下の式(1)が成立したことを遷移条件S2として、局(n,p)の状態を状態1−1から状態2−1に遷移させる。
【0089】
【数6】

【0090】
また、このとき、局(n,p)に対する上位局(n−1,pn−1(p))、下位局群(n+1,sn+1(p)),(i=1,2,3・・・)が決定され、かつ局(n,p)の上位局(n−1,pn−1(p))に対する下位局群(n,s(pn−1(p))),(i=1,2,3・・・)が決定される。そして、上位局(n−1,pn−1(p))の制御データMTIE警報の発出状況、タイマ1000の動作状況及びクロック従属状況がそれぞれ検出される。
【0091】
なお、式(1)の判定は、局(n,p)と、局(n,p)の上位局(n−1,pn−1(p))と、上位局に従属する下位局群(n,s(pn−1(p)))と,(i=1,2,3・・・)、局(n,p)に対する下位局(n+1,sn+1(p)),(i=1,2,3・・・)に対しても行われ、式(1)が成立する場合は、そのぞれの局を状態1−1から状態2−1へ遷移させる。すなわち、複数の局に対する評定処理が同時並行的に行われる。
【0092】
そして、評定部102は状態2−1として認識している局(n,p)で、以下に示す式(2)または式(3)が成立した場合を遷移条件S3として、局(n,p)に対するフラグをFlag(0,0)からFlag(0,1)と変化させ、状態2−1から状態2−2に遷移させる。
【0093】
【数7】

【0094】
すなわち、上位局(n−1,pn−1(p))が正常であり、この上位局に対するタイマ1000が作動していない場合、または、上位局(n−1,pn−1(p))が異常であり、かつ自走状態にある場合に、局(n,p)を状態2−1から状態2−2に遷移させる。
【0095】
状態2−2に遷移させると、評定部102は局(n,p)に対して、タイマ1000をスタートさせ、上位局(n−1,pn−1(p))と下位局群(n+1,sn+1(p)),(i=1,2,3・・・)における制御データMTIE警報の発出状況を検出する。評定部102はタイマ1000動作中に、状態2−2として認識している局(n,p)で式(4)が成立した場合、これを遷移条件S5として、状態2−2から状態3−1に遷移させ、タイマ1000の動作を継続させたまま、局(n,p)に対してタイマ200を動作させる。
【0096】
【数8】

【0097】
すなわち、タイマ1000の作動中に、上位局(n−1,pn−1(p))が正常であり、かつ局(n,p)に対する下位局群(n+1,sn+1(p)),(i=1,2,3・・・)の内の少なくとも1つの局が制御データMTIE警報を発出する場合は、これを遷移条件S5として、状態2−2から状態3−1に遷移させる。
【0098】
また、評定部102は、状態2−2として認識している局(n,p)でタイマ1000が満了した場合(予め設定した設定値とタイマ1000の計数値とが一致した場合)に、以下の式(5)成立していれば、これを遷移条件S7とし、局(n,p)に対するフラグをFlag(0,1)からFlag(1,0)と変化させ、状態2−2から状態4−1に遷移させる。
【0099】
【数9】

【0100】
すなわち、タイマ1000が満了した場合に、上位局(n−1,pn−1(p))および下位局群(n+1,sn+1(p)),(i=1,2,3・・・)が正常な場合は、これを遷移条件S7として、局(n,p)を状態2−2から状態4−1に遷移させる。
【0101】
また、評定部102は、状態3−1として認識している局(n,p)でタイマ200動作中にタイマ1000が満了した場合、前記式(4)が成立していれば、これを遷移条件S7とし、タイマ200を停止し、局(n,p)に対するフラグをFlag(0,1)からFlag(1,0)と変化させ、状態3−1から状態4−1に遷移させる。
【0102】
すなわち、タイマ200の動作中にタイマ1000が満了した場合に、上位局(n−1,pn−1(p))が正常であり、かつ局(n,p)に対する下位局群(n+1,sn+1(p)),(i=1,2,3・・・)の内の少なくとも1つの局が制御データMTIE警報を発出する場合は、これを遷移条件S7として、局(n,p)を状態3−1から状態4−1に遷移させる。
【0103】
また、評定部102は、状態3−1として認識している局(n,p)でタイマ1000の動作中にタイマ200が満了した場合(予め設定した設定値とタイマ200の計数値とが一致した場合)、前記式(4)が成立していれば、これを遷移条件S8として、タイマ1000を停止し、局(n,p)に対するフラグをFlag(0,1)からFlag(1,0)と変化させ、状態3−1から状態4−1に遷移させる。
【0104】
すなわち、タイマ1000の動作中にタイマ200が満了した場合に、上位局(n−1,pn−1(p))が正常であり、かつ局(n,p)に対する下位局群(n+1,sn+1(p)),(i=1,2,3・・・)の内の少なくとも1つの局が制御データMTIE警報を発出する場合は、これを遷移条件S8として、状態3−1から状態4−1に遷移させる。
【0105】
また、評定部102は状態2−1、2−2または3−1として認識している局(n,p)で以下に示す式(6)が成立した場合(局(n,p)が正常)、これを遷移条件S1とし、その状態から状態1−1に遷移させる。
【0106】
【数10】

【0107】
評定部102は状態2−2または3−1として認識している局(n,p)で以下に示す式(7)が成立した場合、これを遷移条件S4として、その状態から状態2−1に遷移させる。
【0108】
【数11】

【0109】
すなわち、状態2−2または状態3−1においてタイマ1000の動作中に、上位局(n−1,pn−1(p))から制御データMTIE警報が発出され、かつ上位局(n−1,pn−1(p))が自走状態でない場合は、これを遷移条件S4として、状態2−1に遷移する。
【0110】
評定部102は、状態3−1として認識している局(n,p)でタイマ200動作中に、式(8)が成立すれば、これを遷移条件S6として、タイマ200を停止し、状態3−1から状態2−2に遷移させる。
【0111】
【数12】

【0112】
すなわち、タイマ200動作中に、下位局群(n+1,sn+1(p)),(i=1,2,3・・・)から制御データMTIE警報を発出されなくなった場合は、これを遷移条件S6として、状態3−1から状態2−2に遷移させる。
【0113】
評定部102は局(n,p)を状態4−1に遷移させたことを記憶し、通知要求信号を制御部103に発出する。制御部103はデータベース104の登録情報に基づき局(n,p) に該当する局の端末に対して、そのクロック従属元変更の必要性が生じたことを通知し表示する制御信号を発出する。
【0114】
評定部102は状態4−1として認識している局(n,p)からE系入力MTIE警報を受信していなければ、E系入力は正常と判断し、局(n,p)に対し、そのクロック従属元をN系からE系に切り替えるよう切替要求信号を制御部103に発出する。
【0115】
制御部103は、データベース104の登録情報に基づき局(n,p)に該当する局に対して、そのクロック従属元をN系からE系に切り替えるよう制御信号を発出し、局(n,p)に該当する局の端末に対して、そのクロック従属元が変更されたことを通知し表示する制御信号を発出する。
【0116】
評定部102は状態4−1として認識している局(n,p) からE系入力MTIE警報を受信していれば、局(n,p)に対し、自走状態に切り替えるよう切替要求信号を制御部103に発出する。制御部103はデータベースの登録情報に基づき局(n,p)に該当する局に対して、自走状態に切り替えるよう制御信号を発出し、局(n,p)に該当する局の端末に対して、そのクロック従属元が変更されたことを通知し表示する制御信号を発出する。
【0117】
評定部102は状態4−1として認識している局(n,p)で、前述の式(6)が成立したとき、これを遷移条件S1として、局(n,p)に対するフラグをFlag(1,0)からFlag(1,1)と変化させ、タイマ1000をスタートさせ、状態4−1から状態5−1に遷移させ、局(n,p)のクロック上位局である局(n−1,pn−1(p))のクロック下位局群(n,s(pn−1(p))),(i=1,2,3・・・)のフラグを確認する。
【0118】
評定部102は局(n,p)を状態5−1に遷移させたことを記憶し、通知要求信号を制御部103に発出する。制御部103はデータベース104の登録情報に基づき局(n,p)に該当する局の端末に対して、その周波数劣化回復を通知し表示する制御信号を発出する。
【0119】
評定部102は状態5−1として認識している局(n,p)で、遷移条件S7(タイマ1000満了)または遷移条件S11(式(9))が成立すれば、局(n,p) に対するフラグをFlag(1,1)からFlag(0,0)と変化させ、タイマ1000を停止し状態5−1から状態1−1に遷移させる。
【0120】
【数13】

【0121】
すなわち、遷移条件S7としてタイマ1000が満了するか、または、遷移条件S11(式(9))として、局(n,p)からのMTIE警報が発出されない状態において、タイマ1000の計数動作中に下位局群(n+1,sn+1(p)),(i=1,2,3・・・)からのMTIE警報の発出が検出されなくなった場合に、状態5−1から状態1−1に遷移させる。
【0122】
このように、評定部102は状態5−1として認識している局(n,p) で、前述の遷移条件S7またはS11が成立した場合に、局(n,p)に対するフラグをFlag(1,1)からFlag(0,0)と変化させ、状態5−1から状態1−1に遷移させる。
【0123】
また、前述の局群(n,s(pn−1(p))),(i=1,2,3・・・)中、i=mの局(n,sm(pn−1(p)))が最初に状態5−1となったとする。評定部102は局(n,sm(pn−1(p)))のタイマ1000の動作中にクロック下位局群(n,s(pn−1(p)))に状態4−1または状態5−1である局が局(n,sm(pn−1(p)))を含めて複数存在するとき、これを上位局における切替条件S9またはS10として、局(n−1,pn−1(p))からE系入力MTIE警報を受信していなければ、局(n−1,pn−1(p))に対し、そのクロック従属元をN系からE系に切り替えるよう切替要求信号を制御部103に発出する。
【0124】
この場合に、切替条件S10は、自局以外の局群(n,s(pn−1(p))),(i=1,2,3・・・)中、少なくとも1局が状態4−1、状態5−1のいずれかにいる場合を示し、切替条件S9は、自局以外の局群(n,s(pn−1(pn))),(i=1,2,3・・・)中、少なくとも1局が状態5−1にいる場合を示している。
【0125】
また、制御部103はデータベース104の登録情報に基づき局(n−1,pn−1(p))に該当する局に対して、そのクロック従属元をN系からE系に切り替えるよう制御信号を発出し、局(n−1,pn−1(p))に該当する局の端末に対して、そのクロック従属元が変更されたことを通知し表示する制御信号を発出する。
【0126】
評定部102は局(n−1,pn−1(p))からE系入力MTIE警報を受信していれば、局(n−1,pn−1(p))に対し、自走状態に切り替えるよう切替要求信号を制御部103に発出し、制御部103はデータベースの登録情報に基づき局(n−1,pn−1(p))に該当する局に対して、自走状態に切り替えるよう制御信号を発出し、局(n−1,pn−1(p))に該当する局の端末に対して、そのクロック従属元が変更されたことを通知し表示する制御信号を発出する。
【0127】
以上説明した評定アルゴリズムにより、或る局の入力点のクロックの周波数変動(周波数精度の劣化)が生じた場合において、その局のみでなく、その下位局と、さらにその下位局など、クロックの周波数精度の劣化が階層的に派生する場合に、各局個別にクロック従属元の切替、異常解析を行うのではなく、網全体を見渡し、より少ない局での異常解析、クロック従属元の切替(または切戻)及び根本原因の同定が可能となる。
【0128】
なお、図8は、図7に示す評定アルゴリズムの変形例を示す図である。図8に示す評定アルゴリズムが、図7に示す評定アルゴリズムと異なるのは、図7に示す評定アルゴリズム中の「切替条件S9,S10を基に上位局(n−1,pn−1(p))においてクロック従属元を切替える処理」の部分を省略した点であり、他は図7に示す評定アルゴリズムと同様である。このため、同一の状態には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0129】
この図8に示す評定アルゴリズムでは、異常発生の根本の原因となる局自身から制御データMTIE警報が出力される場合に、この局を判別してクロック入力元をE系からN系に切り替えることができる。しかし、さらに上位の局が根本原因の場合(上位局からMTIE警報が出力されない)には、当該上位局におけるクロック入力元の切り替えを行えないが、その分、評定部102における処理が簡略化される。
【0130】
[本発明の評定アルゴリズムを使用する場合の第1の具体例の説明]
次に、図1に示すクロック供給システム1において、前述の評定アルゴリズムを用いてクロック従属元を切り替える場合の、第1の具体的な例について説明する。
【0131】
第1の具体的な例として、図21に示す構成で局Aに対して時刻0にN系に正常クロック周波数fに対して周波数偏差「Δf/f=1.0×10−8」の変動が与えられたケースを考える。ただし、局Aの上位局は正常なクロック周波数に従属しているとし、局A、B1、B2、B3、C1、C2、C3各局のE系クロック入力周波数は正常とする。
【0132】
図9に時刻0から時刻4,000秒までの各局のMTIEを示す。周波数制御データ監視部28は、時刻1,200秒に局Aの制御データのMTIEが閾値10μsecとなったことを検出し、制御データMTIE警報を網同期クロック管理装置100に送信する。局Aから発出される制御データMTIE警報をネットワーク経由で網同期クロック管理装置100が受信し、評定部102における局Aの状態は状態2−1に遷移する。
【0133】
時刻1,200秒の時点では下位局B1,B2,B3のMTIEは閾値10μsec未満であるため、評定部102は局Aを状態2−1から状態2−2に遷移させ、タイマ1000を動作させる。
【0134】
局Aでのタイマ1000動作中である時刻1,400秒で下位局B1,B2,B3の制御データのMTIEは閾値10μsecとなり、局B1,B2,B3から制御データMTIE警報を受信する。評定部102は局Aのタイマ1000を維持したまま、局Aを状態2−2から状態3−1に遷移させタイマ200を起動する。
【0135】
評定部102は局B1,B2,B3を状態1−1から状態2−1に遷移させる。このとき、局AからのMTIE警報を受信しているので、評定部102は局B1,B2,B3を状態2−2には遷移させず、状態2−1を維持する。
【0136】
時刻1,600秒で局Aに対するタイマ200が満了し、評定部102は局Aに対するタイマ1000を停止し、局Aを状態3−1から状態4−1に遷移させる。また、このとき評定部102は通知要求信号を制御部103に送信し、制御部103は局Aの端末に、局Aにてクロック従属元切替の必要性が生じたことを通知する。
【0137】
評定部102は局Aを状態4−1に遷移させると、局AのE系入力MTIE警報を受信していないので、局Aに対するクロック従属元切替要求信号を制御部103に発出し、制御部103は局Aに制御信号を送信し、クロック従属元をN系からE系に切り替える。このとき、制御部103は局Aの端末に、局Aにてクロック従属元切替が発生したことを通知する。
【0138】
同時刻1,600秒で局C1,C2,C3の制御データのMTIEは閾値10μsecとなり、評定部102は局C1,C2,C3を状態1−1から状態2−1に遷移させる。このとき、局B1,B2,B3からのMTIE警報をそれぞれ受信しているので、評定部102は局C1,C2,C3を状態2−2には遷移させず、状態2−1を維持する。
【0139】
図10に時刻8,000秒から時刻12,000秒までの各局のMTIE(単位:nsec)を示す。
【0140】
時刻10,900秒に、正常なE系クロックに従属していた局Aからの制御データMTIE警報の発出が停止され、評定部102は局Aを状態4−1から状態5−1に遷移させ、タイマ1000を起動する。
【0141】
このとき評定部102は通知要求信号を制御部103に送信し、制御部103は局Aの端末に、局Aにて周波数劣化が回復したことを通知する。局Aに対するタイマ1000動作中の時刻11,100秒に下位局B1,B2,B3からの制御データMTIE警報の発出が停止され、評定部102は局Aのタイマ1000を停止し、局Aを状態5−1から状態1−1に遷移させ、同時に局B1,B2,B3を状態2−1から状態1−1に遷移させ、局C1,C2,C3を状態2−1から状態2−2に遷移させ、タイマ1000を起動させる。局C1,C2,C3に対するタイマ1000動作中の時刻11,200秒に局C1,C2,C3からの制御データMTIE警報の発出が停止され、評定部102は局C1,C2,C3のタイマ1000を停止し、局C1,C2,C3を状態2−2から状態1−1に遷移させる。
【0142】
図11に示すように、本発明によりクロック従属元をN系からE系に切り替えるのは局Aのみとなる。従来技術(図23を参照)と異なり、局B1,B2,B3、C1、C2、C3での切り替えは不要である。保守者は制御部103から端末に表示されたクロック従属元切替履歴から局Aにてクロック従属元切替が発生するような周波数精度劣化が発生したことを知り、異常箇所の解析及び復旧を行う。局Aで異常箇所の解析及び復旧が終了し、クロック従属元をN系に切り戻す際は、網同期クロック管理装置100から局Aに対して保守者は手動で制御信号を送信しN系へ切り戻す。切り戻し作業は局Aに対してのみであるので、迅速な切り戻し作業が可能である。
【0143】
[本発明の評定アルゴリズムを使用する場合の第2の具体例の説明]
次に同じく図21に示す構成で局Aに時刻0でN系に正常クロック周波数fに対して周波数偏差「Δf/f=9.9×10−10」の変動が与えられたケース、即ち、10,000秒でのMTIEが9.9μsec程度に維持される程度の周波数偏差が入力され、クロックパス上で10,000秒でのMTIEとして1μsec程度の変動が加算され、局B1,B2,B3のN系に正常クロック周波数f0に対して周波数偏差「Δf/f0=1.09×10−9」の変動(ワンダ)が与えられたケースを考える。ただし、局Aの上位局は正常なクロック周波数に従属しているとし、局A、B1、B2、B3、C1、C2、C3各局のE系クロック入力周波数は正常とする。
【0144】
図12に時刻8,000秒から時刻13,000秒までの各局のMTIEを示す。局Aの制御データのMTIEは閾値10μsec未満が維持されている。
【0145】
時刻9,600秒で下位局B1,B2,B3の制御データのMTIEは閾値10μsecとなり、評定部102は局B1,B2,B3から制御データMTIE警報を受信し、局B1,B2,B3を状態1−1から状態2−1に遷移させる。このとき、局Aは状態1−1にいるので、評定部102は局B1,B2,B3を状態2−1から状態2−2に遷移させ、タイマ1000を起動する。
【0146】
そして、局B1,B2,B3に対するタイマ1000の動作中である時刻9,800秒で局C1,C2,C3の制御データのMTIEは閾値10μsecとなり、評定部102は局C1,C2,C3から制御データMTIE警報を受信し、局B1,B2,B3に対するタイマ1000を維持したまま、局B1,B2,B3を状態2−2から状態3−1に遷移させ、タイマ200を起動し、局C1,C2,C3を状態1−1から状態2−1に遷移させる。このとき、局B1,B2,B3からのMTIE警報をそれぞれ受信しているので、評定部102は局C1,C2,C3を状態2−2には遷移させず、状態2−1を維持する。
【0147】
時刻10,000秒で局B1,B2,B3に対するタイマ200が満了し、評定部102は局B1,B2,B3に対するタイマ1000を停止し、局B1,B2,B3を状態3−1から状態4−1に遷移させる。また、このとき評定部102は通知要求信号を制御部103に送信し、制御部103は局B1,B2,B3の端末に、局B1,B2,B3にてクロック従属元切替の必要性が生じたことを通知する。
【0148】
評定部102は局B1,B2,B3を状態4−1に遷移させると、局B1,B2,B3のE系入力MTIE警報を受信していないので、局B1,B2,B3に対するクロック従属元切替要求信号を制御部103に発出し、制御部103は局B1,B2,B3に制御信号を送信し、クロック従属元をN系からE系に切り替える。このとき、制御部103は局B1,B2,B3の端末に、局B1,B2,B3にてクロック従属元切替が発生したことを通知する。
【0149】
時刻11,100秒に、正常なE系クロックに従属していた局B1,B2,B3からの制御データMTIE警報の発出が停止され、評定部102は局B1,B2,B3を状態4−1から状態5−1に遷移させ、タイマ1000を起動する。
【0150】
評定部102は局B1,B2,B3の1局を最初に状態5−1に遷移させる際、他の2局が状態4−1にいることから、局Aに対するクロック従属元切替要求信号を制御部103に発出する。制御部103は局Aに制御信号を送信し、クロック従属元をN系からE系に切り替える。このとき、制御部103は局Aの端末に、局Aにてクロック従属元切替が発生したことを通知する。
【0151】
局B1,B2,B3に対するタイマ1000動作中の時刻11,300秒に下位局C1,C2,C3からの制御データMTIE警報の発出が停止され、評定部102は局B1,B2,B3のタイマ1000を停止し、局B1,B2,B3を状態5−1から状態1−1に遷移させ、同時に局C1,C2,C3を状態2−1から状態1−1に遷移させる。
【0152】
図13に示すように、本発明によりクロック従属元をN系からE系に切り替えるのは異常の根本的原因である局Aと、その下位局B1,B2,B3のみとなる。従来技術(図25を参照)に示す場合と異なり、局C1,C2,C3での切り替えは不要である。局Aでのクロック従属元切替が制御データMTIE警報が発出されていなかった状況で発生したことから、保守者は異常の根本原因が局Aに有ると判断することができ速やかな異常箇所の解析及び復旧が可能となる。クロック従属元をN系に切り戻す際は、先ほどと同様に網同期クロック管理装置100から局A、B1、B2、B3に対して保守者は手動で制御信号を送信しN系へ切り戻す。切り戻し作業は局A、B1、B2、B3に対してのみであるので、迅速な切り戻し作業が可能である。
【0153】
以上説明したように、本発明により、或る局Aの入力点の周波数変動が局Aのみでなく、その下位局B1,B2,B3と、その下位局C1,C2,C3のクロック供給装置におけるクロックの周波数精度を閾値よりも劣化させた場合、各局個別にクロック従属元の切替え、異常解析を行うのではなく、網全体を見渡しての対応が可能となり、より少ない局での異常解析、クロック従属元の切替(または切戻)及び根本原因の同定が可能となる。
【0154】
また、或る局Aに周波数変動が与えられたにも係らず、局Aはクロック入力元としてN系をそのまま維持し、下位局B1,B2,B3(さらには、その下位局C1,C2,C3)のクロック供給装置においてクロック周波数精度が閾値よりも劣化するような場合においても、そもそもの原因である局Aでのクロック従属元の切替、クロック従属元の異常調査等の保守対応が可能になる。
【0155】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、上述のクロック供給装置21,21A、および網同期クロック管理装置100は、内部にコンピュータシステムを有している。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0156】
そして、上述した処理に関する一連の処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。
【0157】
すなわち、クロック供給装置21,21A、および網同期クロック管理装置100における、各処理は、CPU等の中央演算処理装置がROMやRAM等の主記憶装置に上記プログラムを読み出して、情報の加工、演算処理を実行することにより、実現されるものである。
【0158】
ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。なお、クロック供給装置21,21A、および網同期クロック管理装置100内の各処理部は専用のハードウェアにより実現されるものであってもよい。
【0159】
また、クロック供給装置21,21Aは、および網同期クロック管理装置100には、周辺機器として端末が接続され、この端末には入力装置、表示装置等(いずれも表示せず)が接続されているものとする。ここで、入力装置としては、キーボード、マウス等の入力デバイスのことをいう。表示装置とは、CRT(Cathode Ray Tube)や液晶表示装置等のことをいう。
【0160】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
【0161】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明のクロック供給システム、クロック供給装置、および網同期クロック管理装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0162】
1,2 クロック供給システム
11 ノード
12 伝送装置
13 交換機
14 伝送路
21,21A,21B,21C,21D クロック供給装置
22 N系クロック受信部
23 E系クロック受信部
24 入力断監視部
25 入力切替部
26 発振器部
27 分配部
28 周波数制御データ監視部
30 受信機
31 N系MTIE計測部
32 E系MTIE計測部
33 出力MTIE計測部
41 ネットワーク
100 網同期クロック管理装置
101 警報収集部
102 評定部
103 制御部
104 データベース
200 200秒タイマ
1000 1000秒タイマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワーク内の各局に設置されると共に、ネットワーク側から伝送路を介して通常系であるN系または予備系であるE系の入力クロックを受信し、該入力クロックに同期した出力クロックを生成して前記伝送路に出力するクロック供給装置と、前記ネットワーク内の各局のクロック供給装置から、入力クロックおよび出力クロックの周波数精度の劣化情報を警報として前記ネットワークを介して受信する網同期クロック管理装置とで構成されるクロック供給システムであって、
前記各局内のクロック供給装置は、
前記入力クロックおよび出力クロックの予め設定された周波数からの誤差を計測すると共に、前記誤差が所定の閾値範囲を超えた場合に、警報を出力し前記網同期クロック管理装置に送信する周波数精度計測部と、
前記網同期クロック管理装置からクロック従属元の切替えを指示する制御信号を受信し、出力クロックを生成するためのクロック従属元をN系入力クロックからE系入力クロックへ、またはE系入力クロックからN系入力クロックに、さらには自走状態へと使用するクロックを切り替える入力切替部と、
を備え、
前記網同期クロック管理装置は、
ネットワーク内での各局のクロック同期の従属関係における上位、下位の関係を記憶するデータベースと、
前記ネットワーク内の各局のクロック供給装置から送信される前記警報を受信する警報収集部と、
前記警報収集部によりネットワーク内の任意の局から前記警報を受信した場合に、前記データベースを参照し、警報を出力した局である警報発出局の上位局と、当該警報発出局の下位局群とにおける警報の出力状態を検出し、所定の規則に従いクロック従属元を切り替えるべき局を判定する評定部と、
前記評定部における判定結果に応じて、クロック従属元を切り替えるべき局に対してクロック従属元の切替信号を制御信号として出力する制御部と、
を備えることを特徴とするクロック供給システム。
【請求項2】
前記網同期クロック管理装置内の評定部は、
前記警報収集部により、ネットワーク内の任意の局から前記警報を受信した場合に、
警報を出力した局である警報発出局の上位局と、当該警報発出局の下位局群と、当該警報発出局の上位局に従属する下位局群とにおける警報の出力状況を検出し、所定の規則に従いクロック従属元を切り替えるべき局を判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載のクロック供給システム。
【請求項3】
前記クロック供給装置内の入力切替部は、前記網同期クロック管理装置から出力される制御信号に応じて、
クロック従属元をN系からE系に切り替える機能と、
クロック従属元をE系からN系に切り替える機能と、
クロック従属元をN系従属から自走状態に切り替える機能と、
クロック従属元をE系従属から自走状態に切り替える機能と、
クロック従属元を自走状態からN系に切り戻す機能と、
クロック従属元を自走状態からE系に切り戻す機能と、
を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のクロック供給システム。
【請求項4】
前記網同期クロック管理装置内には、所定の時間を計数し前記警報が継続して出力されていることを判定するための第1のタイマを有し、
前記評定部は、
前記ネットワーク内の任意の局で警報が発生した場合に、警報を出力した局である警報発出局の上位局からの警報の出力がないこと検出して、当該警報発出局に対し前記第1のタイマの計数動作を開始させる機能と、
前記警報発出局の上位局及び下位局群から前記警報の出力が検出されない状態において、前記第1のタイマの計数値が予め設定した設定値と一致した場合に、前記警報発生局に対してクロック従属元の変更を要求する制御信号を前記制御部を介して出力する機能と、
前記警報発出局の上位局からの警報の出力が検出されず、かつ当該警報発出局の下位局群のいずれかの局からの警報の出力が検出される状態において、前記第1のタイマの計数値が予め設定した設定値と一致した場合に、前記警報発出局のクロック従属元の変更を要求する制御信号を前記制御部を介して出力する機能と、
を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のクロック供給システム。
【請求項5】
前記網同期クロック管理装置内には、前記第1のタイマよりも短い時間を計数する第2のタイマをさらに備え、
前記評定部は、
前記ネットワーク内の任意の局で警報が発生した場合に、警報を出力した局である警報発出局に対して前記第1のタイマの計数動作を開始させる機能と、
前記第1のタイマの計数動作中であって、かつ前記警報発出局の上位局及び下位局群からの警報の出力が検出されない状態において、前記第1のタイマの計測動作が満了した場合に、前記警報発出局のクロック従属元の変更を要求する制御信号を前記制御部を介して出力する機能と、
前記第1のタイマの計数動作中であって、かつ前記警報発出局の上位局からの警報の出力が検出されず、かつ前記警報発出局の下位局群のいずれかの局からの警報の出力が検出される状態において、前記第2のタイマを動作させると共に、前記第2のタイマの動作中に前記第1のタイマが予め設定した計数値に到達した場合、または、前記第1のタイマの動作中に前記第2が予め設定した計数値に到達した場合に、前記警報発出局のクロック従属元の変更を要求する制御信号を前記制御部を介して出力する機能と、
を備えることを特徴とする請求項4に記載のクロック供給システム。
【請求項6】
前記評定部は、
前記警報発出局に加えて、該警報発出局の上位局に従属する下位局群のいずれかの局に警報を出力する局がある場合には、該警報発出局の上位局に対しクロック従属元の変更を要求する制御信号を前記制御部を介して出力する機能を、
さらに備えることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のクロック供給システム。
【請求項7】
前記網同期クロック管理装置内の前記評定部がクロック従属元を切り替えるべき局を判定する際、
警報発出局から警報を受信した場合に、当該警報発出局を初期状態である状態1−1から、当該警報発出局と、当該警報発出局の上位局および下位局群と、当該警報発出局の上位局に従属する下位局群とを認識する状態である状態2−1に遷移させ、
前記状態2−1において、当該警報発出局の上位局から警報が出力されていないことを検出した場合に、当該警報発出局に対し前記第1のタイマの計数を開始させる状態2−2に遷移させ、
前記状態2−2において、前記第1のタイマの作動中に、上位局からの警報の出力が検出されず、かつ当該警報発出局の下位局群のいずれかの局からの警報の出力が検出される場合に、当該警報発出局を状態2−2から状態3−1に遷移させ、
前記状態2−2において、当該警報発出局の上位局および下位局群からの警報が出力されない状態において、前記第1のタイマが予め設定した計数値に到達した場合に、当該警報発出局を前記状態2−2から状態4−1に遷移させ、
前記状態3−1において、第2のタイマの計数動作を開始させ、前記警報発出局の上位局からの警報が出力が検出されず、かつ当該警報発出局の下位局群のいずれかの局からの警報の出力が検出される状態において、前記第2のタイマの計数動作中に前記第1のタイマが予め設定した計数値に到達した場合、または、前記第1のタイマの計数動作中に、前記第2のタイマが予め設定した計数値に到達した場合に、当該警報発出局を状態3−1から状態4−1に遷移させ、
前記状態4−1において、前記第1のタイマおよび第2のタイマの動作を停止させると共に、前記警報発出局に対してクロック従属元の切替信号を前記制御部を介して出力すると共に、該状態4−1において、当該警報発出局からの警報の出力が行われなくなったことを検出した場合に、当該警報発出局を、状態4−1から状態5−1に遷移させ、
前記状態5−1において、前記第1のタイマの計数動作を開始させ、該第1のタイマが予め設定した計数値に到達した時、または該第1のタイマの計数動作中に前記警報発出局の下位局群からの警報の出力がなくなったことを検出した時に、当該警報発出局を、状態5−1から前記初期状態1−1に遷移させる、
ことを特徴とする請求項5に記載のクロック供給システム。
【請求項8】
前記警報発出局に加えて、当該警報発出局の上位局に従属する下位局群に警報を出力する局がある場合において、
前記評定部が、当該警報発出局を含む前記上位局に従属する下位局群の1つが最初に前記状態5−1となった場合に、最初に前記状態5−1になった局に対する前記第1のタイマの計数動作中に、当該警報発出局を含む他の下位局群の中に前記状態4−1または状態5−1に存在する局があるとき、当該警報発出局の上位局に対してクロック従属元を切り替える制御信号を前記制御部を介して出力する
ことを特徴とする請求項7に記載のクロック供給システム。
【請求項9】
ネットワーク内の各局に設置されると共に、ネットワーク側から伝送路を介して通常系であるN系または予備系であるE系の入力クロックを切り替えて受信し、該入力クロックに同期した出力クロックを生成して前記伝送路に出力するクロック供給装置と、前記ネットワーク内の各局のクロック供給装置から、入力クロックおよび出力クロックの周波数精度の劣化の情報を警報として前記ネットワークを介して受信し、警報を出力する局がある場合に、当該警報発出局の上位局および下位局群と、前記上位局に従属する下位局群とにおける警報の出力状況を検出し、所定の規則に従いクロック従属元を切り替えるべき局を判定する網同期クロック管理装置とで構成されるクロック供給システムにおける前記クロック供給装置であって、
前記入力クロックおよび出力クロックの予め設定された周波数からの誤差を計測すると共に、前記誤差が所定の閾値範囲を超えた場合に、警報を出力し前記網同期クロック管理装置に送信する周波数精度計測部と、
前記網同期クロック管理装置からクロック従属元の切替えを指示する制御信号を受信し、出力クロックを生成するためのクロック従属元をN系入力クロックからE系入力クロックへ、またはE系入力クロックからN系入力クロックに、さらには自走状態へと切り替える入力切替部と、
を備えることを特徴とするクロック供給装置。
【請求項10】
ネットワーク内の各局に設置されると共に、ネットワーク側から伝送路を介して通常系であるN系または予備系であるE系の入力クロックを切り替えて受信し、該入力クロックに同期した出力クロックを生成して前記伝送路に出力すると共に、前記入力クロックおよび出力クロックの周波数精度を計測し、前記周波数精度が劣化した場合に、周波数精度の劣化情報を警報として出力するクロック供給装置と、前記ネットワーク内の各局のクロック供給装置から前記警報をネットワークを介して受信する網同期クロック管理装置とで構成されるクロック供給システムにおける前記網同期クロック管理装置であって、
ネットワーク内での各局のクロック同期の従属関係における上位、下位の関係を記憶するデータベースと、
前記ネットワーク内の各局のクロック供給装置から送信される警報を受信する警報収集部と、
前記警報収集部によりネットワーク内の任意の局から前記警報を受信した場合に、前記データベースを参照し、警報を出力した局である警報発出局の上位局と下位局群と、前記上位局に従属する下位局群とにおける警報の出力状況を検出し、所定の規則に従いクロック従属元を切り替えるべき局を判定する評定部と、
前記評定部における判定結果に応じて、クロック従属元を切り替えるべき局に対してクロック従属元の切替信号を制御信号として出力する制御部と、
を備えることを特徴とする網同期クロック管理装置。
【請求項11】
ネットワーク内の各局に設置されると共に、ネットワーク側から伝送路を介して通常系であるN系または予備系であるE系の入力クロックを切り替えて受信し、該入力クロックに同期した出力クロックを生成して前記伝送路に出力するクロック供給装置と、前記ネットワーク内の各局のクロック供給装置から、入力クロックおよび出力クロックの周波数精度の劣化の情報を警報として前記ネットワークを介して受信し、警報を出力する局がある場合に、当該警報発出局の上位局および下位局群と、前記上位局に従属する下位局群とにおける警報の出力状況を検出し、所定の規則に従いクロック従属元を切り替えるべき局を判定する網同期クロック管理装置とで構成されるクロック供給システムにおける前記クロック供給装置内のコンピュータに、
前記入力クロックおよび出力クロックの測定された周波数と、予め設定された周波数との誤差が、所定の閾値範囲を超えた場合に、警報を出力し前記網同期クロック管理装置に送信する周波数精度計測手順と、
前記網同期クロック管理装置からクロック従属元の切替えを指示する制御信号を受信し、出力クロックを生成するためのクロック従属元をN系入力クロックからE系入力クロックへ、またはE系入力クロックからN系入力クロックに、さらには自走状態へと切り替える入力切替手順と、
を実行させるためのプログラム。
【請求項12】
ネットワーク内の各局に設置されると共に、ネットワーク側から伝送路を介して通常系であるN系または予備系であるE系の入力クロックを切り替えて受信し、該入力クロックに同期した出力クロックを生成して前記伝送路に出力すると共に、前記入力クロックおよび出力クロックの測定された周波数と、予め設定された周波数との誤差が、所定の閾値範囲を超えた場合に、警報を出力するクロック供給装置と、前記ネットワーク内の各局のクロック供給装置から前記警報をネットワークを介して受信する網同期クロック管理装置とで構成されるクロック供給システムにおける前記網同期クロック管理装置内のコンピュータに、
ネットワーク内での各局のクロック同期の従属関係における上位、下位の関係をデータベースに記憶させる手順と、
前記ネットワーク内の各局のクロック供給装置から送信される警報をする警報収集手順と、
前記警報収集手順によりネットワーク内の任意の局から前記警報を受信した場合に、上記データベースを参照し、警報を出力した局である警報発出局の上位局と下位局群と、前記上位局に従属する下位局群とにおける警報の出力状況を検出し、所定の規則に従いクロック従属元を切り替えるべき局を判定する評定手順と、
前記評定手順による判定結果に応じて、クロック従属元を切り替えるべき局に対してクロック従属元の切替信号を制御信号として出力する制御手順と、
を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2010−288084(P2010−288084A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−140386(P2009−140386)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(000102739)エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社 (265)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】