説明

クロノグラフ機能付電子時計

【課題】 複雑な構成のクロノグラフ機構であっても、電子時計の肉厚をほとんど大きくすることのなく組み込むことが可能なクロノグラフ機能付電子時計を提供する。
【解決手段】 駆動体の駆動をクロノグラフ輪列を介してクロノグラフ車に伝達し、クロノグラフ指針を運針させるクロノグラフ機能付電子時計において、前記クロノグラフ車を回転させるクロノグラフ輪列を中央に配置し、前記クロノグラフ指針の機能に関わる各種レバー類を前記クロノグラフ輪列の一方の側に配置し、二次電池を、前記クロノグラフ輪列の他方の側に配置した。特に、前記クロノグラフ輪列を、二次電池を収容する二次電池収容部とほぼ同じ断面高さの範囲内に収容するとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロノグラフ機能を有する電子時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多機能時計の一つとしては、クロノグラフ機能付電子時計がある。このような時計は、例えば時、分、秒のクロノグラフ指針を有しており、時計に設けられているスタート/ストップボタンによりスタート、ストップ操作を行うことで計時を行なう。そして、時計に設けられているリセットボタンによりリセット操作を行うことで、クロノグラフ指針を帰零位置に復針させる。
【0003】
このような時計のスタート、ストップ、及びリセット操作の作動機構としては、作動カムが多く用いられており、前記作動カムの回転位置に応じてクロノグラフ機能のスタート、ストップ、及びリセットが制御されている。また、スタート/ストップの電気的切替機構は、作動カムの回転位置に応じて作動するスイッチレバーを特別に設け、前記スイッチレバーに設けられたスイッチ部を、回路基板上のパターンと接触または切り離すことで電気的切替を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
リセット操作は、機械的帰零機構においては主として復針レバーに設けられているハンマー部を、クロノグラフ指針に設けられているハートカム部に押圧することで行われる。
この場合、復針解除時には、前記ハンマー部と前記ハートカム部が分離することで摩擦力が生じ、クロノグラフ輪列のバックラッシ分だけクロノグラフ指針フレが起こることが知られている。これを防止するためには、通常クロノグラフ輪列にブレーキ部を設けている(例えば、特許文献2参照)。また、電池を動力源とする電子時計の場合は、復針の衝撃による発生トルクがロータの位相ずれを引き起こすことが知られており、この点からしてもクロノグラフ輪列にブレーキ部を設けるという対策が採られている。
【0005】
【特許文献1】特許第3446604号公報 (図面の図5参照)
【特許文献2】特開2000−147167号公報 (図面の図7及び図8参照)
【特許文献3】特許第3266917号(図面の図5及び図6参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1の例えば図5や、特許文献2の図7及び図8、特許文献3の図5及び図6を見るとわかるように、クロノグラフ指針を運針させるためのクロノグラフ輪列は、ムーブメントの一つの階層のほぼ全領域を利用して配置されている。
そのため、クロノグラフ機構が複雑になるほど、それに伴って、電子時計の内部にクロノグラフ輪列専用の層を設けなければならず、その分、電子時計の肉厚が厚くなるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、複雑な構成のクロノグラフ機構であっても、電子時計の肉厚をほとんど大きくすることのなく組み込むことが可能なクロノグラフ機能付電子時計の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、駆動体の駆動をクロノグラフ輪列を介してクロノグラフ車に伝達し、クロノグラフ指針を運針させるクロノグラフ機能付電子時計において、前記クロノグラフ車を回転させるクロノグラフ輪列を中央に配置し、前記クロノグラフ指針の機能に関わる各種レバー類を前記クロノグラフ輪列の一方の側に配置し、二次電池を、前記クロノグラフ輪列の他方の側に配置した構成としてある。
前記各種レバー類には、前記クロノグラフ指針を零復帰させる零復帰用レバー及び前記クロノグラフ車にブレーキをかけるブレーキレバーを含ませることができる。
このように構成することで、複雑な構成のクロノグラフ輪列及びレバー類を二次電池を含む層内に配置することが可能になり、クロノグラフ機能付電子時計の肉厚を薄くすることができる。
【0009】
本発明では、特に、前記各種レバー類を、機能に応じて複数層に分けて配置し、かつ、最上層の前記各種レバー類が前記クロノグラフ輪列の上面と同じ高さ位置になるように配置することで、クロノグラフ輪列層の厚みを最小にすることができる。
なお、クロノグラフ輪列及びレバー類を、二次電池の収容部分とほぼ同じ厚さの層内に収容するために、前記クロノグラフ輪列を、二次電池を収容する二次電池収容部とほぼ同じ断面高さの範囲内に収容するのが好ましい。
【0010】
さらに、時刻を示す指針を運針させる時刻表示輪列と前記クロノグラフ輪列とを積層状に配置するとともに、前記時刻表示輪列を配置した層と前記クロノグラフ輪列を配置した層との間に中受けを設け、前記時刻表示輪列を構成する各種車類の回転軸の一方をこの中受けに支持させるとともに、前記クロノグラフ輪列を構成する各種車類の回転軸の一方及び/又は前記クロノグラフ輪列の前記各種レバー類の回転軸の一方を前記中受けに支持させるようにしてもよい。
このようにすることで、クロノグラフにかかわるレバー類の回転軸の一方を時計の地板に設ける必要がなくなり、時刻表示輪列や時刻表示輪列に係る時計の裏周り部品の配置が自由に設定できるため、効率の良い配置を行なうことが可能となり、時刻表示輪列部を薄くすることができる。
【0011】
この場合、前記回路基板を前記クロノグラフ輪列を設けた層内に配置し、前記層内で前記各種レバー類との断面における高さ位置を異ならせて、コンデンサー、IC、トランジスタその他の電子部品を前記回路基板に実装するとよい。
このように、各種電子部品を実装した回路基板をクロノグラフ輪列を設けた層内に配置することで、クロノグラフ機能付電子時計の肉厚をさらに薄くすることが可能になる。
なお、クロノグラフ輪列を設けた層内に回路基板を配置する場合は、前記クロノグラフ輪列を構成する各種車類の回転軸及び/又は前記各種レバー類の回転軸の一端を、前記回路基板を挿通させて前記中受けに支持させるようにするとよい。
【0012】
また、前記クロノグラフ輪列を単一のクロノグラフ輪列受に取り付けるようにしてもよい。この場合は、裏蓋側に配置されるマーク板のほぼ中央に、前記クロノグラフ輪列受を取り付ける取り付け部を切り欠き形成し、この取付部にクロノグラフ輪列を取り付けたクロノグラフ輪列受を取り付け、前記クロノグラフ輪列の一方の側の前記マーク板状に、前記各種レバー類を配置するようにするとよい。
このようにすることで、クロノグラフ輪列の組み立てが容易になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、複雑な構成のクロノグラフ機構を、今までの電子時計のムーブメントの肉厚をほとんど大きくすることなく組み込むことのできるクロノグラフ機能付電子時計を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、図1及び図2を参照しながら、本発明が適用されるクロノグラフ機能付電子時計の一例を説明する。
図1は、本発明が適用されるクロノグラフ機能付電子時計の一例にかかり、当該電子時計の外観を示す平面図、図2は、図1のクロノグラフ機能付電子時計の回路ブロック図である。
【0015】
図1に示すように、クロノグラフ機能付電子時計1(以下、電子時計1と記載する)には、その中心に時刻表示を行なう時針2a、分針2bが配置され、中央下方には秒針2cが配置されている。
また、この電子時計1の中央左側(図1の紙面左側)には、時クロノグラフ指針3aが配置され、同右側には分クロノグラフ指針3bが配置されている。さらに、時針2a及び分針2bと同じ電子時計1の中心には、1/5秒クロノグラフ秒針3cと、アラームの時刻設定を行うアラーム針(目安針)4bが配置されている。このアラーム針4bは、アラームリューズ7dにより設定されたアラーム設定時刻を表示している。符号4cは、アラームリューズ7dを操作することによりON/OFF切り替えられるアラームの設定を表示するアラームON/OFF表示針である。
【0016】
また、電子時計1の中央上方には、二次電池の充電量を表示する充電量表示指針4aが配置されている。
日付けを表示する日板5は、文字盤6に開口された日窓6aにより一部を透過することで日付けを表示している。
なお、図1において符号101は、クロノグラフ機能のスタート、ストップを操作するスタート/ストップボタン、符号102は、クロノグラフ機能のリセットを行うリセットボタンである。
【0017】
図2は、この電子時計1の回路ブロック図である。
電子時計1は、ソーラーセル等からなる発電手段348,この発電手段348による発電の有無を検出する発電検出手段345,発電手段348からの発電エネルギーを充電する二次電池344及びこの二次電池344の出力電圧を検出する電圧検出手段343から構成される電源装置34と、発振器318及び分周回路319からなる基準信号発生手段31と、時間の計測を行う時間計測手段32と、RAM330,ROM331及び制御装置(CPU)332からなる制御手段33と、時分秒を表示する時刻表示部351、クロノグラフ秒,クロノグラフ分,クロノグラフ時を表示するクロノグラフ表示部352及び二次電池344の充電量を表示する充電量表示部353からなる表示手段35と、クロノグラフ機能のスタート、ストップを操作するスタート/ストップボタン101と連動する操作スイッチ367、クロノグラフ機能のリセットを行うリセットボタン102と連動する操作スイッチ368、アラームリューズ7dと連動するアラーム時刻設定用の操作スイッチ369、及びアラームON/OFF設定用の操作スイッチ370を有する外部入力手段36とから構成される。
【0018】
図3は、本発明の電子時計の構成を説明する主要部の部分断面図である。
なお、以下の説明において「上」というときには図3の紙面上方を指すものとし、「下」というときには同下方を指すものとする。
図3に示すように、この実施形態の電子時計1には、裏蓋側(上側)から順に、クロノグラフ輪列を受けるクロノグラフ輪列受20,中受け11,地板12の順に配置されている。
【0019】
そして、クロノグラフ輪列受20と中受け11との間に、図略の分クロノグラフ指針(図1の符号3b参照)を取り付ける分クロノグラフ車111,図略の1/5秒クロノグラフ秒針(同符号3c参照)を取り付ける1/5秒クロノグラフ車121,図略の時クロノグラフ指針(同符号3a参照)を取り付ける時クロノグラフ車131を回転させるためのクロノグラフ輪列100と、回路基板90とが設けられている。
また、中受け11と地板12との間に、図略の時針(同符号2a参照)を取り付ける時針車231及び図略の分針(同符号2b参照)を取り付ける分針車211を回転させるための時刻表示輪列200が設けられている。
【0020】
図4は、クロノグラフ輪列受20を含む層を裏蓋側から見た平面図である。
図示するように、マーク板10のほぼ中央に、この電子時計1を横断する方向に切り欠き部10aが形成され、この切り欠き部10aに、クロノグラフ輪列100を受けるクロノグラフ輪列受20が配置されている。
【0021】
図4においてクロノグラフ輪列受20の右側には、二次電池344を収容する円形状の二次電池収容部40が形成され、この二次電池収容部40に収容された二次電池344を押さえるための二次電池押さえ344aが、マーク板10に取り付けられている。なお、図4において、符号7aは巻真,7bはアラーム巻真で、巻真7aの先端にリューズ7c(図1参照)が、アラーム巻真7bの先端にアラームリューズ7d(図1参照)が取り付けられる。
クロノグラフ輪列100を構成する各種車類の回転軸の一端及びクロノグラフ輪列100に関係する各種レバー類の回転軸の一端は、クロノグラフ輪列受20及びマーク板10によって支持される。
【0022】
図5は、クロノグラフ輪列100を設けた層と同一の層内に配置される回路基板90にかかり、回路基板90を裏蓋側から見た平面図である。なお、図5においては、回路基板90及びこの回路基板90に実装される電子部品を実線で示し、それ以外は仮想線(二点鎖線)で示している。
この回路基板90は、マーク板10に面する上面が電子部品の実装面として形成され、この実装面にICチップ91,コンデンサ92,トランジスタ93,抵抗94,アラーム昇圧コイル95等の各種電子部品が実装される(以下、これら電子部品が実装された部分を「回路ブロック層90′」と記載することがある)。
【0023】
図3及び後述するように、クロノグラフ輪列100を構成する各種車類及びこのクロノグラフ輪列100に関係する各種レバー類は、クロノグラフ輪列受20と中受け11との間で三層構造をなしている。そして、この実施形態では、中受け11を、二次電池344を収容する二次電池収容部40(図3中仮想線で示す)の底部とほぼ同じ高さ位置に配置している。このようにすることで、クロノグラフ輪列100を構成する各種車類及びこのクロノグラフ輪列100に関係する各種レバー類が、二次電池344とほぼ同じ断面幅の中に収容されることになり、電子時計1の薄肉化に有利である。
【0024】
図3に示すように、回路基板90は、これら各種車類及び各種レバー類の下層(最も中受け11寄りの層)に相当する高さ位置に配置され、前記下層から中層にかけて回路ブロック層が形成される。そのため、回路基板90のほぼ中央には、図5に示すように、電子時計1を横断する方向に複数の孔90a,90b及び切り欠き部90cが形成されていて、クロノグラフ輪列100の下層に配置される各種車類やレバー類と回路基板90とが干渉しないようにしている。
【0025】
回路基板90の図5の右下部分は、二次電池344を収容するために円弧状に切り欠かれ、さらに、水晶振動子96aや時刻表示輪列駆動コイル96b、クロノグラフ輪列駆動コイル96c、充電量表示輪列駆動コイル96d等の駆動体を収容するための孔や切り欠きの他、後述するクロノグラフ輪列100の各種レバー類の回転軸が挿通する孔、クロノグラフ輪列100を構成する各種車類の回転軸が挿通する孔が形成されている。
【0026】
なお、図5に示す符号174、175、176、177、178、179は、後述のクロノグラフ輪列に関係する各種レバー類の回転軸であり、符号174は伝えレバー155の回転軸、符号175は復針レバー(1)156の回転軸、符号176は復針レバー(2)157の回転軸、符号177は復針伝えレバー165の回転軸、符号178は規制レバー159の回転軸、符号179はクロノグラフ停止レバー(2)162の回転軸である。これら回転軸174、175、176、177、178、179は、回路基板90の前記孔を挿通して、その一端が中受け11によって支持される。
【0027】
図6は、クロノグラフ輪列100及びこれに関連する各種レバー類の配置を裏蓋側から見た平面図で、前記の配置をクロノグラフ輪列受20及びマーク板10(図4参照)を取り払った状態で示している。回路基板90は、上記したようにクロノグラフ輪列100の下層部分に配置されている。
クロノグラフ輪列100は、クロノグラフロータ100aの回転を1/5秒クロノグラフ車121に伝達するための1/5秒クロノグラフ輪列121Aと、クロノグラフロータ100aの回転を、1/5秒クロノグラフ輪列121Aの1/5秒クロノグラフ中間車(2)121b及び1/5秒クロノグラフ中間車(1)121aを介して時クロノグラフ車131に伝達する時クロノグラフ輪列131Aと、クロノグラフロータ100aの回転を、1/5秒クロノグラフ輪列121Aの1/5秒クロノグラフ中間車(2)121bを介して分クロノグラフ車111に伝達する分クロノグラフ輪列111Aとを有している。
【0028】
時クロノグラフ輪列131Aは、時クロノグラフ車131側から順に配置された、時クロノグラフ中間車(1)131a,時クロノグラフ中間車(2)131b,時クロノグラフ中間車(3)131c及び時クロノグラフ中間車(4)131dから構成され、分クロノグラフ輪列111Aは、分クロノグラフ車111側から順に配置された分クロノグラフ中間車(1)111a,分クロノグラフ中間車(2)111b及び分クロノグラフ中間車(3)111cから構成される。また、1/5秒クロノグラフ輪列121Aは、1/5秒クロノグラフ車121側から順にクロノグラフロータ100aまで配置された1/5秒クロノグラフ中間車(1)121aと1/5秒クロノグラフ中間車(2)121bから構成される。
クロノグラフ輪列100は、これら各中間車111a〜131d及び各クロノグラフ車111,121,131をクロノグラフ輪列受20に沿ってマーク板10のほぼ中央に略直線状に配置してなっている。
【0029】
クロノグラフ輪列100の図6中の左側には、クロノグラフ輪列100に関連する各種レバー類のうち、伝えレバー155,復針レバー(1)156、復針レバー(2)157、規制レバー159、クロノグラフ停止レバー(2)162、復針伝えレバー165等が配置されている。また、前記各種レバー類のうちの一部はクロノグラフ輪列100の右側にも配置されるが、この実施形態の電子時計ではクロノグラフ停止レバー(1)154のみである。
【0030】
これら各種レバー類は、クロノグラフ輪列100の図6中の上端に配置され、スタートストップボタン101(図1参照)を操作することによって回転される作動カム140の回転や、リセットボタン102(図1参照)の操作によって動作される。
以下、この実施形態の電子時計におけるクロノグラフ機構の構成を、図7〜図11を参照しながら説明する。
図7は、クロノグラフ機構の構成を説明する平面図、図8は、図7の主要部の概略構成を示す断面図、図9はクロノグラフ機構の作用を説明する図で、クロノグラフのスタート操作後の状態を示す図、図10はクロノグラフ機構の作用を説明する図で、クロノグラフのストップ時の作動状態を示す図、図11はクロノグラフ機構の作用を説明する図で、クロノグラフのリセット時の作動を示す図である。
【0031】
図7に示すように、この実施形態のクロノグラフ機能付電子時計におけるクロノグラフのスタート/ストップ及びリセットは、作動カム140の回転により、その回転位置に応じてスタート/ストップ及びリセットが機械的に行われる構成である。
図8に示すように、作動カム140は、異なる平面形状の2種類のカムを積層し、円筒状の複合カムとして構成されていて、機能ごとに三つの層(図8の下から順に作動カム下層141、作動カム中層142、作動カム上層143とする)に分けられている。
【0032】
作動カム下層141の側面には、一定ピッチの歯141aが14枚設けられ、作動カム中層142の側面には、歯141aと位相をずらして、一定ピッチの歯142aが7枚設けられ、同じく作動カム上層143の側面には歯142aと同一形状同一ピッチの歯143aが歯142aと同一の位相で7枚設けられている。
なお、本実施例では作動カム140を平面形状が異なる2種類のカムによって2つの階層となるように積層したが、3種類のカムによって3つの階層となるように構成しても良いことは明らかである。
【0033】
図7において、符号101は、クロノグラフ機構の作動及び停止を操作するスタート/ストップボタンである。このスタート/ストップボタン101の図中下方には、発停操作を作動カム140に伝達するための発停レバー152が配置されている。この発停レバー152は、スタート/ストップボタン101の作動軸心から偏心した位置に設けられた回転軸171を中心に回転自在で、スタート/ストップボタン101の押下(押下方向を図中矢印Aで示す)により発停レバー152が図中時計回り方向に一定角度回転する。
【0034】
そして、この発停レバー152の下端に形成された係合部152aが、図7及び図8に示すように作動カム下層141の歯141aと係合するようになっていて、スタート/ストップボタン101を押し下げ、発停レバー152が図中時計回り方向に回転することで、係合部152aと歯141aとが係合し、作動カム140を歯141aの一ピッチ分だけ時計回り方向に間欠的に回転させる。この実施形態では、歯141aは14枚設けられているから、スタート/ストップボタン101の一回の押し下げにより、作動カム140は360°/14だけ回転することになる。
【0035】
なお、作動カム下層141の歯141aと歯141aの間には、作動カムジャンパー151の先端が係合していて、作動カム下層141の静止時の回転位相の位置決めを行っている。すなわち、この作動カムジャンパー151と作動カム下層141の歯141aとが係合することで、作動カム140の間欠的な回転は、正確に歯141aの一ピッチ分に規制されるわけである。また、発停レバー152には、発停レバー152を初期位置に戻す戻しばね153が設けられていて、スタート/ストップボタン101を元の位置に戻すことで、発停レバー152が戻しばね153の作用により反時計回り方向に回転し、初期位置に復帰する。
【0036】
[中間歯車のブレーキ機構]
作動カム上層143には、クロノグラフ輪列の一部を停止させるブレーキ機構を構成するクロノグラフ停止レバー(1)154の一端が係合している。このクロノグラフ停止レバー(1)154は、回転軸172によって回転自在な本体の周囲に、クロノグラフ輪列を電気的に制御する制御部が実装される回路基板90上に形成された接点302と接触し、前記制御部にスタート信号を送る電気接点レバー部154aと、作動カム上層143の歯143aと当接するレバー部154bと、前記本体を常時反時計回り方向に付勢するばね部154cと、クロノグラフ輪列の一部である1/5秒クロノグラフ中間車(2)121bに当接してブレーキをかける板ばね状のブレーキ部154dとが一体に形成されている。
【0037】
スタート/ストップボタン101を押下する前の初期状態では、図7に示すようにレバー部154bが作動カム上層143の歯143aの頂部に当接していて、ブレーキ部154dが1/5秒クロノグラフ中間車(2)121bに押し付けられ、1/5秒クロノグラフ中間車(2)121bの回転を規制している。また、電気接点レバー部154aが、回路基板90上の接点302から離間していて、電気的に非導通状態になっている。
【0038】
クロノグラフをスタートさせるためにスタート/ストップボタン101を一回押すと、作動カム140は作動カム下層141の歯141a一ピッチ分だけ回転するので、レバー部154bは作動カム上層143の歯143aと歯143aの間に位置することになり、ばね部154cの作用によってクロノグラフ停止レバー(1)154が回転軸172を中心に反時計回り方向に回転する。これにより、ブレーキ部154dが1/5秒クロノグラフ中間車(2)121bから離間して回転の規制を解除するとともに、電気接点レバー部154aが、回路基板90上の接点302に接触して、1/5秒クロノグラフ指針3c(図1参照)を作動させるためのステップモータの操作スイッチ367(図2参照)をONにし、これを図2に示す制御装置332が検出して、時間計測手段32に信号E1を出力する。時間計測手段32は、この信号E1に基づき、分周回路319からの分周信号BSを入力信号として、例えば0.1秒毎にタイムアップ信号UP1を制御装置332に向けて出力する。これにより、クロノグラフ輪列駆動コイル96c(図5参照)が通電されて、クロノグラフ輪列100の駆動が開始される。
【0039】
[クロノグラフ車のブレーキ機構]
この実施形態では、クロノグラフ指針を運針させるとき以外に1/5秒クロノグラフ車121及び分クロノグラフ車111にブレーキをかけるブレーキ機構が設けられている。
このブレーキ機構は、図7に示すように、回転軸179を中心として回転自在なクロノグラフ停止レバー(2)162と、スタート/ストップボタン101の押下動作による作動カム140の回転をクロノグラフ停止レバー(2)162に伝達して回転させる切替レバー160とから概略構成される。
【0040】
クロノグラフ停止レバー(2)162は、1/5秒クロノグラフ車121の規制車(1)163に当接し、この規制車(1)163を介して1/5秒クロノグラフ車121にブレーキをかける板ばね状の押圧部162bと、分クロノグラフ車111の規制車(2)164に当接し、この規制車(2)164を介して分クロノグラフ車111にブレーキをかける板ばね状の押圧部162cを有している。
【0041】
クロノグラフ指針を運針させないときには、押圧部162b,162cはそれぞれ規制車(1)163,規制車(2)164に当接していて、1/5秒クロノグラフ車121及び分クロノグラフ車111にブレーキをかけているが、スタート/ストップボタン101を一回押してクロノグラフ指針の運針を開始させると、クロノグラフ停止レバー(2)162が回転軸179を中心に反時計回り方向に回転して押圧部162b,162cがそれぞれ規制車(1)163,規制車(2)164から離間し、ブレーキを解除する。
【0042】
上記したクロノグラフ停止レバー(2)162の回転も、先に説明した1/5秒クロノグラフ中間車(2)121bにおけるクロノグラフ停止レバー(1)154と同様に、作動カム140によって行われる。
すなわち、作動カム中層142の歯142aと当接する先端部160aを有し、回転軸179を中心に回転する切替レバー160が設けられている。この切替レバー160は、切り替えレバー戻しばね161によって常時時計回り方向に付勢されている。この切替レバー160とクロノグラフ停止レバー(2)162とは、クロノグラフ停止レバー(2)162に形成された連結アーム162aを介して係合していて、回転軸179を中心とする切替レバー160の回転にともなってクロノグラフ停止レバー(2)162が同方向に回転するようになっている。
【0043】
このように、クロノグラフ停止レバー(2)162は先に説明したクロノグラフ停止レバー(1)154と同様に、作動カム140によって回転させられるが、クロノグラフ停止レバー(2)162がクロノグラフ停止レバー(1)154と異なる点は、クロノグラフ停止レバー(1)154のレバー部154bが初期状態では歯143aの頂部に当接していて、スタート/ストップボタン101を押し下げることでレバー部154bが歯143a,143aの間に落ち込み、クロノグラフ停止レバー(1)154を反時計回り方向に回転させるのに対し、クロノグラフ停止レバー(2)162では、切替レバー160の先端部160aが初期状態では歯143a,143aの間に落ち込んでいて、スタート/ストップボタン101を押すことで先端部160aが歯143aと当接しつつ反時計回り方向に押し上げられながら回転される点である。
【0044】
[復針機構]
次に、クロノグラフ指針をリセットする復針機構について説明する。
他端部に後述する復針レバー(1)156と当接して、この復針レバー(1)156を回転させる押圧部155bを有する伝えレバー155が、一端が中受け11(図3参照)によって支持された回転軸174を軸として回転自在に支持されている。この伝えレバー155は、スタート/ストップボタン101を押し下げることによる作動カム上層143の間欠回転に伴って、歯143aに押されて反時計回り方向に回転する。
【0045】
復針機構の主構成要素である復針レバー(1)156は、伝えレバー155と同一の高さ位置に配置されていて、一端部に伝えレバー155の押圧部155bと当接する押圧部156aを有し、他端部に復針レバーを初期位置に復帰させる復針レバー戻しばね158と当接する押圧部156bを有し、さらに押圧部156aと押圧部156bとの間には、後述する規制レバー159と係合する係合突起156cを有している。
【0046】
また、他端部にはピン156dが設けられており、時クロノグラフ用の復針レバー(2)157の長穴部157aに挿入されている。さらに、分クロノグラフのハートカム112を帰零するための板ばね状のハンマー部156e、1/5秒クロノグラフのハートカム122を帰零するための板ばね状のハンマー部156fを有しており、一端が中受け11(図3参照)によって支持された回転軸175を軸として反時計回り方向に回転することで、1/5秒クロノグラフ秒針3c及び分クロノグラフ指針3b(図1参照)を帰零させる。
【0047】
時クロノグラフ帰零用の復針レバー(2)157の長穴部157aには復針レバー(1)156のピン156dが挿入・係止されていて、復針レバー(1)156の回転を復針レバー(2)157に伝達して、一端が中受け11(図3参照)によって支持された回転軸176を中心に、復針レバー(2)157を回転させることができるようになっている。
復針レバー(2)157の先端には、時クロノグラフ車131のハートカム132を帰零するためのハンマー部157bが設けられていて、回転軸176を軸として時計回り方向に回転してハンマー部157bがハートカム132に押し付けられることで、時クロノグラフ指針3a(図1参照)を帰零させる。
【0048】
符号159は、スタート/ストップボタン101を押して復針レバー(1)156を時計回り方向に回転させ、ハンマー部156fを1/5秒クロノグラフハートカム122から離間し、ハンマー部156eを分クロノグラフハートカム112から離間し、復針レバー(2)157のハンマー部157bも時クロノグラフハートカム132から離間させたときに、この状態を保持させるための規制レバーである。
この規制レバー159は、回転軸178を中心に回転自在で、復針レバー(1)156の係合突起156cと係合するフック状の係合部159bを一端に有している。
【0049】
クロノグラフ指針の運針を開始させる前の初期状態においては、係合突起156cと係合部159bとは図7に示すように非係合状態であるが、運針を開始させる際に復針レバー(1)156を時計回り方向に回転させると、係合突起156cが規制レバー159を時計回り方向に押し回しながら係合部159bと係合する。これによって、復針レバー(1)156の反時計回り方向の回転、つまり復帰が規制されるわけである。
【0050】
この規制の解除は、リセットボタン102を押すことによって行うことができる。
リセットボタン102を押し下げると、このリセットボタン102の下端に当接する復針伝えレバー165が回転軸177を中心に反時計回り方向に回転し、その一端が規制レバー159の他端を押し下げる。これにより、規制レバー159が回転軸178を中心に時計回り方向に回転し、係合部159bと係合突起156cとの係合が解除される。そのため、復針レバー(1)156が復帰用の復針レバー戻しばね158の付勢力によって反時計回り方向に回転し、ハンマー部156fが1/5秒クロノグラフハートカム122に押し付けられ、ハンマー部156eが分クロノグラフハートカム112に押し付けられ、復針レバー(2)157のハンマー部157bが時クロノグラフハートカム132に押し付けられ1/5秒クロノグラフ秒針3c、分クロノグラフ指針3b、及び時クロノグラフ指針3aを零復帰させる。
【0051】
[安全機構]
ところで、この実施形態の電子時計では、スタート/ストップボタン101を押してクロノグラフ指針の運針を開始させた後は、リセットボタン102を誤って押してもリセット機能が働かないように、安全機構を設けている。
この実施形態では、切替レバー160の端部にはストッパ160bを突設形成している。また、復針伝えレバー165には、ストッパ160bと当接する当接部165aを突設形成している。初期状態において、ストッパ160bは図7に示すように当接部165a及び復針伝えレバー165と干渉しない位置に退避しているが、クロノグラフ指針の運針が開始される際に切替レバー160が反時計回り方向に回転すると、ストッパ160bが当接部165aに当接する位置まで移動して、復針伝えレバー165の反時計回り方向の回動を規制する。
【0052】
なお、この実施形態では、切替レバー160の端部には、ストッパ160bと離間した位置に突起160cを形成していて、この突起160cとストッパ160bとの間の溝部分に連結アーム162aの先端が係合することで、切替レバー160の回転がクロノグラフ停止レバー(2)162に伝達されるようになっている。
上記のような構成によるクロノグラフのスタート/ストップの作動機構の動作例を、クロノグラフ機能非作動時、スタート時、ストップ時、リスタート時に分けて、図7〜図11を参照しながら説明する。
【0053】
[クロノグラフのストップ状態(初期状態)]
図7に示す状態が、クロノグラフのストップ状態(初期状態)である。この状態では、クロノグラフ停止レバー(1)154の検出レバー部154bは作動カム140の作動カム上層143の歯143aの頂部と当接していて、電気接点レバー部154aは回路基板90上の接点302とは接触しておらず、クロノグラフ用のステップモータの駆動はオフの状態である。また、ブレーキ部154dが1/5秒クロノグラフ中間車(2)121bに押し付けられていて、ブレーキをかけている。
復針レバー(1)156のハンマー部156eは、復針レバー戻しばね158の付勢力により、反時計回り方向に分クロノグラフハートカム112を、ハンマー部156fは1/5秒クロノグラフハートカム122を、復針レバー(2)157のハンマー部157dが時クロノグラフハートカム132を押圧している。
【0054】
伝えレバー155は、伝えレバー155の押圧部155b及び復針レバー(1)156の押圧部156aを介してから時計回り方向に回転力が付与されている。このとき、先端部155aは作動カム上層143の二つの歯143a,143aの間に位置している。
また、クロノグラフ停止レバー(2)162の押圧部162bは規制車(1)163を介して1/5秒クロノグラフ車121にブレーキをかけ、押圧部162cは規制車(2)164を介して分クロノグラフ車111にブレーキをかけている。
【0055】
前記クロノグラフ停止レバー(2)162の回転も、先に説明した1/5秒クロノグラフ中間車(2)121bにおけるクロノグラフ停止レバー(1)154と同様に、作動カム140によって行われる。
すなわち、作動カム中層142の歯142aと当接する先端部160aを有し、回転軸179を中心に回転する切替レバー160が設けられている。この切替レバー160は、切り替えレバー戻しばね161によって常時時計回り方向に付勢されている。この切替レバー160とクロノグラフ停止レバー(2)162とは、クロノグラフ停止レバー(2)162に形成された連結アーム162aを介して係合していて、回転軸179を中心とする切替レバー160の回転にともなってクロノグラフ停止レバー(2)162が同方向に回転するようになっている。
【0056】
[クロノグラフのスタート操作]
上記の状態からクロノグラフ機能をスタートすべく、操作者がスタート/ストップボタン101を矢印Aの方向に押し下げると、発停レバー152が回転軸171を中心に時計回り方向に回転するとともに、作動カム下層部141の歯141aを押して、作動カム140を時計回り方向に一定角度回転させる。このときの回転角度は、歯141a,141aの一ピッチ分(360°/14)で、作動カム140は、作動カムジャンパー151(図7及び図8参照)によって正確に一ピッチ分だけ回転して位置決めされる。
【0057】
図9は、クロノグラフのスタート操作後の状態を示す図である。図9に示すように、レバー部154bは作動カム上層143の歯143aと歯143aの間に移動し、ばね154cの作用によってクロノグラフ停止レバー(1)154は図中反時計回り方向に回転する。そのため、1/5秒クロノグラフ中間車(2)121bの回転を規制しているブレーキ部154dが1/5秒クロノグラフ中間車(2)121bから離間し、1/5秒クロノグラフ中間車(2)121bの回転を可能にするとともに、電気接点レバー部154aが、回路基板90上の接点302に接触して、図2に示す操作スイッチ367がONとなる。これを制御装置332が検出して、図2に示す時間計測手段32に信号E1を出力して、経過時間の時間計測を開始すると共に、クロノグラフ輪列駆動コイル96c(図5参照)への通電によって、1/5秒、分、時の各クロノグラフ輪列111A、121A、131A(図6参照)が回転され、クロノグラフの1/5秒クロノグラフ指針3c、分クロノグラフ指針3b、時クロノグラフ指針3a(いずれも図1参照)の運針が開始される。
【0058】
一方、切替レバー160は作動カム上層143の回転にともなって反時計回り方向に回転する。この反時計回り方向の回転にともない、クロノグラフ停止レバー(2)162が反時計回り方向に回転して、押圧部162bによる規制車(1)163及び1/5秒クロノグラフ車121のブレーキが解除される。また、押圧部162cによる規制車(2)164及び分クロノグラフ車111にブレーキが解除される。
さらに、伝えレバー155の先端の押圧部155bが、押圧部156aを介して復針レバー(1)156を時計回り方向に押し回し、分クロノグラフのハートカム112及び1/5秒クロノグラフのハートカム122の帰零状態を解除する。
【0059】
またさらに、復針レバー(1)156の時計回り方向に回転により、係合突起156cが規制レバー159の係合部159bと係合することで、復針レバー(1)156の復帰(反時計回り方向の回転)が規制される。また、復針レバー(2)157は反時計回り方向へ回転して、時クロノグラフのハートカム132の帰零状態を解除する。
さらに、切替レバー160が反時計回りに回転することで、ストッパ160bが復針伝えレバー165の当接部165aの下方に移動し、復針伝えレバー165の回転を規制して、リセットボタン102が押し下げられないようにする。
【0060】
上述した一連の作動において、スタート時に操作者は押下力を、スタート/ストップボタン101、発停レバー152、作動カム140、伝えレバー155、復針レバー(1)156を経て、復針レバー戻しばね158に伝達しなければならない。従って、これらの部材間における伝達効率の低下は、負荷となって操作者の指押力に加わる。そこで、本発明のように、伝えレバー155と復針レバー(1)156の断面高さを同一にすれば、力伝達における両部材のひねりが抑えられ、伝えレバー155と回転軸174の摩擦力、復針レバー(1)156と回転軸175の摩擦力、伝えレバー押圧部155bと復針レバー押圧部156a間の伝達効率の低下を抑えられる。
従って、操作者の指押カが効率よく復針レバー戻しばね158に伝達され、結果として適切な指押力を操作者に提供できることになる。
【0061】
[クロノグラフのストップ操作]
図10はクロノグラフ機能のストップ時の状態を示す。
クロノグラフ指針の運針中に操作者がスタート/ストップボタン101を押すと、発停レバー152が作動カム下層141を一ピッチ分だけ時計回り方向に回転させる。
これにより、伝えレバー155の先端部155aが歯143aと歯143aの間に落ち込む。なお、このとき、伝えレバー155の押圧部155bが復針レバー(1)156の押圧部156aから離間することで無負荷となり、伝えレバー155は全体として自由状態になる。
【0062】
また、切替レバー160は作動カム140の回転に伴って時計回り方向に回転し、切り替えレバー戻しばね161によって押圧部160aが押圧され、作動カム中層142の歯142aと歯142aの間に落ち込み、時計回り方向に回転する。これにより、クロノグラフ停止レバー(2)162も時計回り方向に回転し押圧部162bは規制車(1)163を介して1/5秒クロノグラフ車121にブレーキをかけ、押圧部162cは規制車(2)164を介して、分クロノグラフ車111にブレーキをかける。
【0063】
また、クロノグラフ停止レバー(1)154のレバー部154bは、作動カム上層部143の歯143aによって押し上げられ、クロノグラフ停止レバー(1)154を時計回り方向に回転させる。これにより、ブレーキ部154dは、1/5秒クロノグラフ中間車(2)121bと当接してブレーキをかける。また、電気接点レバー部154aは回路基板90上の接点302から離れて図2に示す操作スイッチ367がOFFとなり、スタート信号が遮断される。この結果、クロノグラフ輪列駆動用コイル96c(図5参照)への通電が遮断されて、前記1/5秒、分、時の各クロノグラフ輪列111A、121A、131Aの回転が停止し、1/5秒クロノグラフ秒針3c、分クロノグラフ指針3b、時クロノグラフ指針3a(図1参照)も停止する。
【0064】
[クロノグラフのリスタート操作]
この状態から、再びスタートの状態に移行する場合は、あらかじめ復針レバー(1)156が規制レバー159によって規制されていることを除けば、図7のスタート状態と同じである。
【0065】
[クロノグラフのリセット操作]
図11に示すように、図10のストップ状態で操作者によってリセットボタン102が押されると、復針伝えレバー165が反時計回り方向に回転する。規制レバー押圧部165bは、規制レバー159を時計回り方向に回転させ、規制レバー159の係合部159bと復針レバー(1)156の係合突起156cとの係合状態が解除される。
【0066】
従って、復針レバー(1)156は、復針レバー戻しばね158の付勢カによって、反時計回り方向に回転し、ハンマー部156fは1/5秒クロノグラフハートカム122を帰零し、ハンマー部156eは分クロノグラフハートカム112を帰零し、復針レバー(2)157のハンマー部157bは時クロノグラフハートカム132を帰零する。以上の結果、クロノグラフの1/5秒クロノグラフ秒針3c、分クロノグラフ指針3b及び時クロノグラフ指針3a(図1参照)は、経過時間の「0」を示す位置に強制的に移動することになり、図7の状態に戻る。
【0067】
[回路基板における電子部品の実装]
図3及び図8に示すように、回路基板90はクロノグラフ輪列受20及びマーク板10と中受け11との間に設けられる。回路基板90の高さ位置は、作動カム下層141とほぼ同じである。ICチップ91、コンデンサ92,トランジスタ93,抵抗94,アラーム昇圧コイル95の電子部品が実装されてなる回路ブロック層90′は、回路基板90の上面(マーク板10側の面)に構成されている。
【0068】
この実施形態においては、前記した回路ブロック層90′がクロノグラフ輪列100に関する各種レバー類と干渉しないように、ICチップ91、コンデンサ92,トランジスタ93,抵抗94,アラーム昇圧コイル95等の電子部品を位置決めして実装する必要がある。
【0069】
ここで、クロノグラフ輪列100に関するレバー類は、先に説明したように、切替レバー160、切り替えレバー戻しばね161,クロノグラフ停止レバー(2)162,復針レバー伝えレバー165,作動カムジャンパー151,クロノグラフ停止レバー(1)154等が回路基板90と同じ下層か回路ブロック層90′と同じ中層に配置される。そのため、これらについては、孔90a,90bや切り欠き部90cを利用して回路基板90及び回路ブロック層90′と干渉しないようにする。
【0070】
一方、復針レバー(1)156,復針レバー(2)157,復針レバー戻しばね158,規制レバー159等は、回路ブロック層90′よりも上の層に配置される。そこで、例えば、図8及び図6に示すように、ICチップ91やアラーム昇圧コイル95,コンデンサ92,トランジスタ93等の電子部品を、これら復針レバー(1)156や復針レバー戻しばね158等、最上層に位置するレバー類の下に集約して配置するようにすることで、電子部品と各種レバー類との干渉を防止することができ、かつ、これら電子部品を配置するための層を改めて確保する必要がなくなって、電子時計の薄肉化において非常に有利である。
【0071】
[時刻表示輪列200]
時刻表示輪列200は、図3に示すように、クロノグラフ輪列100を構成する各種車類の回転軸や、クロノグラフ輪列100に関係する各種レバー類の回転軸の一方が支持される中受け11と、地板12との間に配置される。
この実施形態では、中受け11にクロノグラフにかかわる各種車類やレバー類の回転軸の一方を支持させることで、クロノグラフ輪列100に関わる各種レバー類や各種車類の回転軸の一方を地板に支持させる必要を無くしているため、時刻表示輪列や時刻表示輪列に係る時計の裏周り部品の配置が自由に設定できるようになり、効率の良い配置を行なうことが可能となって、時刻表示輪列200を配置する層を薄くすることができ、有利である。
【0072】
図12は、中受け11とともに時刻表示輪列200を構成する各種の車類やレバー類の回転軸を軸支する地板12と、この地板12に配置した時刻表示輪列200とを、裏蓋側から見た平面図である。
この時刻表示輪列200には、秒針車221,分針車211、図略の時針車231(図3参照),日の裏車241の他,時刻ロータ200aの駆動をこれら車類に伝える各種車類(日回し車202,三番車203,四番車204,五番車205、日の裏中間車(1)241a,日の裏中間車(2)241b)が含まれる。また、地板12には、この他、アラーム修正車261等のアラーム機構に関連する各種部材(アラーム裏押さえ(1)257,アラームおしどり258,アラーム裏押さえ(2)259等)や、時刻表示輪列200に関連する各種部材(裏物押さえ251,おしどり252,裏押さえ253,五番停止レバー254,かんぬき256)が取り付けられる。
【0073】
なお、アラーム時刻の設定は、図1に示すアラームリューズ7dを一段引き出した状態で回転させ、アラーム巻真7bの回転に連動して回転するアラーム修正車261等を回転させることで行う。そして、これにより図1に示すアラーム針4bを回転させ、設定したいアラーム時刻に合わせるようになっている。また、アラームのON/OFFの設定の切り替えは、図1のアラームリューズ7dを押し込むことによりアラームON/OFF表示針4cを回転させることで行う。図1に示すように、アラームのON/OFFの設定の状態は、アラームON/OFF表示針4cの指し示す位置によって、一目でわかるようになっている。
【0074】
この実施形態において時刻表示輪列200の図面右方には、二次電池344の充電量を指針表示するための充電量表示輪列300が設けられている。この充電量表示輪列300は、図略の充電量表示指針(図1の符号4a参照)が取り付けられた充電量表示車301と、充電量ロータ300aの駆動を充電量表示車301に伝達するための二つの中間車301a,301bとから構成されている。
【0075】
充電量を指針表示するに当り、まず、図2に示すソーラセル等の発電手段348で発電されて二次電池344に充電された充電電圧を、電圧検出手段343により検出する。制御装置332は、電圧検出手段343により検出された電圧レベルに応じて、図1に示す充電量表示指針4aの指示位置を決定し、現在位置と指示位置との差分の駆動パルスを制御装置332から充電量表示輪列駆動コイル96d(図5参照)に与える。これにより、充電量ロータ300aが回転し、二つの中間車301a,301bを介して充電量表示車301を回転させ、充電量表示指針4aによって現在の充電状態を表示できるようにしている。
【0076】
このように、充電量表示指針4aによって常に現在の充電状態を表示することができるようにすることで、ソーラセル等の発電手段348で発電が行われ二次電池344に充電されるこの実施形態のような電子時計1においては、充電状態が悪いとき、例えば、ソーラセル等の発電手段348による発電量の小さい環境下で二次電池344の充電量も十分でないときに、クロノグラフ機能の使用を控えるように操作者に促すことができる、という利点がある。
【0077】
図12において符号113は地板12に設けられた分クロノグラフ車111の軸受、符号133は地板12に設けられた時クロノグラフ車131の軸受で、クロノグラフ輪列100によって回転される分クロノグラフ車111は、中受け11から日の裏中間車241aの近傍に配置された軸受113を通過して地板12を挿通し、1/5秒クロノグラフ車121は、中受け11から分針車211の中心を通って地板12を挿通し、時クロノグラフ車131は、中受け11から日回し中間車202の近傍に配置された軸受133を通って地板12を挿通している。そして、地板12の下方に配置されたソーラーセル348(図3参照)を挿通して図略の文字盤(図1の符号6参照)から突出する。
【0078】
以上のように地板12側に時刻表示輪列駆動コイル96bを含むステップモータと、時刻表示輪列200および時刻表示輪列200に関連する各種部材、クロノグラフ輪列駆動コイル96c、充電量表示輪列駆動コイル96dを含むステップモータと、充電量表示輪列300、及びアラーム機構に関連する各種部材が、同一の平面内で重ならないように配置することで、地板12から中受け11までの高さを低くすることが可能になる。
【0079】
本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記の説明に限定されるものではない。
例えば、上記の説明では、クロノグラフ輪列100を構成する各種車類及びこのクロノグラフ輪列100に関係する各種レバー類は、クロノグラフ輪列受20と中受け11との間で三層構造をなしているものとして説明したが、二層又は四層以上としてもよい。
【0080】
また、上記の説明では、クロノグラフ輪列100を、二次電池344を収容する二次電池収容部40とほぼ同じ断面高さの範囲内に収容するものとして説明したが、必ずしも同じ断面高さとしなくてもよい。
さらに、上記の実施形態では、クロノグラフ輪列100を含む層内に回路基板90を配置しているが、回路基板90を別の層内に配置するようにすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明のクロノグラフ機能付電子時計の一実施形態にかかり、電子時計の構成を説明する平面図である。
【図2】図1のクロノグラフ機能付電子時計の回路ブロック図である。
【図3】図1のクロノグラフ機能付電子時計の構成を説明する主要部の部分断面図である。
【図4】クロノグラフ輪列受を含む層を裏蓋側から見た平面図である。
【図5】クロノグラフ輪列を設けた層内に配置される回路基板にかかり、回路基板を裏蓋側から見た平面図である。
【図6】クロノグラフ輪列及びこれに関連する各種レバー類をクロノグラフ輪列受及びマーク板に配置した状態を裏蓋側から見た平面図である。
【図7】クロノグラフ機構の構成を説明する平面図である。
【図8】図7の主要部の概略構成を示す断面図である。
【図9】クロノグラフ機構の作用を説明する図で、クロノグラフのスタート操作後の状態を示す図である。
【図10】クロノグラフ機構の作用を説明する図で、クロノグラフのストップ時の作動状態を示す図である。
【図11】クロノグラフ機構の作用を説明する図で、クロノグラフのリセット時の作動を示す図である。
【図12】中受けとともに時刻表示輪列を構成する各種の車類やレバー類の回転軸を軸支する地板と、この地板に配置した時刻表示輪列とを、裏蓋側から見た平面図である。
【符号の説明】
【0082】
10 マーク板
10a 切り欠き部
11 中受け
12 地板
20 クロノグラフ輪列受
40 二次電池収容部
90 回路基板
100 クロノグラフ輪列
101 スタートストップボタン
102 リセットボタン
111 分クロノグラフ車
112 分クロノグラフハートカム
121 1/5秒クロノグラフ車
122 1/5秒クロノグラフのハートカム
121b 1/5秒クロノグラフ中間車(2)
132 時クロノグラフのハートカム
140 作動カム
151 作動カムジャンパー
152 発停レバー
154 クロノグラフ停止レバー(1)
155 伝えレバー
156 復針レバー(1)
157 復針レバー(2)
159 規制レバー
160 切替レバー
162 クロノグラフ停止レバー(2)
200 時刻表示輪列
344 二次電池
344a 二次電池押さえ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動体の駆動をクロノグラフ輪列を介してクロノグラフ車に伝達し、クロノグラフ指針を運針させるクロノグラフ機能付電子時計において、
前記クロノグラフ車を回転させるクロノグラフ輪列を中央に配置し、
前記クロノグラフ指針の機能に関わる各種レバー類を前記クロノグラフ輪列の一方の側に配置し、
二次電池を、前記クロノグラフ輪列の他方の側に配置したこと、
を特徴とするクロノグラフ機能付電子時計。
【請求項2】
前記各種レバー類には、前記クロノグラフ指針を零復帰させる零復帰用レバー及び前記クロノグラフ車にブレーキをかけるブレーキレバーが含まれることを特徴とする請求項1に記載のクロノグラフ機能付電子時計。
【請求項3】
前記各種レバー類を、機能に応じて複数層に分けて配置し、かつ、最上層の前記各種レバー類が前記クロノグラフ輪列の上面と同じ高さ位置になるように配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載のクロノグラフ機能付電子時計。
【請求項4】
前記クロノグラフ輪列を、二次電池を収容する二次電池収容部とほぼ同じ断面高さの範囲内に収容したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のクロノグラフ機能付電子時計。
【請求項5】
時刻を示す指針を運針させる時刻表示輪列と前記クロノグラフ輪列とを積層状に配置するとともに、
前記時刻表示輪列を配置した層と前記クロノグラフ輪列を配置した層との間に中受けを設け、
前記時刻表示輪列を構成する各種車類の回転軸の一方をこの中受けに支持させるとともに、前記クロノグラフ輪列を構成する各種車類の回転軸の一方及び/又は前記クロノグラフ輪列の前記各種レバー類の回転軸の一方を前記中受けに支持させたこと、
を特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のクロノグラフ機能付電子時計。
【請求項6】
前記回路基板を前記クロノグラフ輪列を設けた層内に配置し、前記層内で前記各種レバー類との断面における高さ位置を異ならせて、コンデンサー、IC、トランジスタその他の電子部品を前記回路基板に実装したことを特徴とする請求項5に記載のクロノグラフ機能付電子時計。
【請求項7】
前記クロノグラフ輪列を単一のクロノグラフ輪列受に取り付けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のクロノグラフ機能付電子時計。
【請求項8】
裏蓋側に配置されるマーク板のほぼ中央に、前記クロノグラフ輪列受を取り付ける取り付け部を切り欠き形成し、この取付部にクロノグラフ輪列を取り付けたクロノグラフ輪列受を取り付け、前記クロノグラフ輪列の一方の側の前記マーク板上に、前記各種レバー類を配置したことを特徴とする請求項7に記載のクロノグラフ機能付電子時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−90769(P2006−90769A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−274485(P2004−274485)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(000001960)シチズン時計株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】