説明

ケーブル監視装置

【課題】ケーブルの状態を検出可能であって、ケーブル内に挿通されている電線等の引っ張り又は弛みによる破損を効果的に防止することができるケーブル監視装置を提供する。
【解決手段】一端が動力ケーブル2に連結されたワイヤー3、3と、ワイヤー3、3に対して常に所定の引っ張り力を付与し、ワイヤー3、3を弛みのない状態で維持する引っ張り力負荷シリンダ5と、ワイヤー3、3の他端が連結される固定端シリンダ7とを備える。また、固定端シリンダ7の近傍に、引っ張り監視近接スイッチ8を取り付け、ワイヤー3、3に対して特定値以上の引っ張り力がかかった際には、その旨を引っ張り監視近接スイッチ8にて検出可能とする。さらに、引っ張り力負荷シリンダ5の近傍に、弛み監視近接スイッチ6を取り付け、ワイヤー3、3に特定量以上の弛みが生じた際には、その旨を弛み監視近接スイッチ6により検出可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえばマシニングセンタの主軸へ導かれる動力ケーブルの引っ掛かり等を検出可能なケーブル監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、たとえば門形マシニングセンタのクロスレールに設置される主軸装置内には、主軸へ導かれる動力ケーブルを、主軸の旋回動作に応じて送り出したり引き上げたりするためのケーブル送り装置が設けられている(たとえば、特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開平10−145954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなケーブル送り装置においては、動力ケーブルが送り出し又は引き上げ時に引っ掛かる等することがある。しかしながら、従来のケーブル送り装置では、動力ケーブルの状態を検出する機構を備えていないため、動力ケーブルが引っ掛かり状態にあったとしても、送り出し又は引き上げ動作を通常通りに行おうとする。したがって、動力ケーブルに無理な引っ張り力がかかり、動力ケーブル内の電線が破損してしまうといった事態が生じていた。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題を解決すべく、動力ケーブル等のケーブルの状態を検出可能であって、ケーブル内に挿通されている電線等の引っ張り又は弛みによる破損を効果的に防止することができるケーブル監視装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、ケーブルが掛けられた移動部材を、送り出し位置と巻き取り位置との間で移動させることによって前記ケーブルの送り動作を行うケーブル送り装置において前記ケーブルの引っ張り及び/又は弛みを監視するためのケーブル監視装置であって、一端が前記ケーブルに連結され、前記移動部材の移動に伴って前記ケーブルとともに送り動作が行われる送り部材と、該送り部材に所定の引っ張り力を付与する付勢手段と、前記送り部材の他端が固定される弾性手段とを備えているとともに、前記付勢手段の伸縮状態を検出することにより前記送り部材に生じる弛みを検出可能な第一検出手段、及び/又は、前記弾性手段の伸縮状態を検出することにより前記送り部材にかかる引っ張りを検出可能な第二検出手段を備え、前記送り部材の引っ張り/弛みを検出することで、前記ケーブルの引っ張り及び/又は弛みの監視を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ケーブルに、該ケーブルの送り動作とともに送り動作が行われる送り部材を設けるとともに、送り部材が連結される付勢手段及び/又は弾性手段の伸縮状態を検出する検出手段を備えており、ケーブルが何かに引っ掛かる等して送り部材に引っ張りや弛みが生じた際に、該事態を検出可能としている。したがって、ケーブルに引っ掛かりが生じたまま、ケーブルの送り動作を続行してしまい、たとえばケーブル内に挿通されている電線が破損してしまうといった事態を防止することができる。
また、ケーブルの引っ張り/弛み検出機構を、送り部材に連結される付勢手段及び/又は弾性手段と、付勢手段及び/又は弾性手段の伸縮状態を検出可能な検出手段(たとえば、近接スイッチ等)とから構成している。したがって、上記検出機構を比較的安価に構成することができるとともに、既に工場内等に設置されているマシニングセンタ等に対して後付することができ、汎用性に富む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態となるケーブル監視装置について、図面を基に説明する。
図1は、本実施形態のケーブル監視装置1が設置される門形マシニングセンタ30の一部外観を示した斜視説明図である。また、図2は、ケーブル監視装置1を正面側から模式的に示した説明図であり、図3は、ケーブル監視装置1を右側から模式的に示した説明図である。
【0009】
門形マシニングセンタ30は、クロスレール31に主軸装置32をY軸方向でスライド可能に設置してなるものである。主軸装置32の下端部には、Z軸方向へ垂直移動可能な主軸ラム33が設けられており、該主軸ラム33を介して工具Tを保持するアタッチメント34が着脱自在に取り付けられている。該アタッチメント34は、図示しない制御装置による制御のもと、主軸35に保持した工具TをY軸に平行なB軸周り及びZ軸に平行なC軸周りに旋回させることにより、任意の加工姿勢で割出可能に構成されている。
【0010】
また、アタッチメント34における主軸35等を動作させるべく、アタッチメント34の各種部材と外部電源とを電気的に接続する必要がある。そこで、アタッチメント34へは、電線等を内蔵した動力ケーブル2が引かれており、主軸装置32側の動力ケーブル2aとアタッチメント34側の動力ケーブル2bとを、たとえば特許文献1に開示されているようなコネクタ36a、36bを有する結合機構にて結合している。
【0011】
上述したように動力ケーブル2が導かれたアタッチメント34をB軸周りやC軸周りで旋回させると、該旋回動作に伴って(特に、C軸周りでの旋回時に)、動力ケーブル2が下方へ引き下げられたり上方へ持ち上げられたりする。そこで、アタッチメント34の旋回動作に伴って動力ケーブル2を下方へ送り出したり上方へ引き上げたり(以下、略して送り出しと称す)すべく、主軸装置32側には、動力ケーブル2の送り出しを行うとともに、後述の如くして動力ケーブル2の引っ張り/弛み状態を検出するケーブル監視装置(ケーブル送り装置を含む)1が設けられている。
【0012】
ここで、ケーブル監視装置1について、図2及び図3をもとに説明する。
ケーブル監視装置1は、動力ケーブル2を送り出すべく、コネクタ36aに接続された金属製のワイヤー(送り部材)3、3を備えており、該ワイヤー3、3を送り出したり引き上げたりすることによって、間接的に動力ケーブル2の送り出しを可能としている。該ワイヤー3、3は、複数のプーリー4、4・・を介して、昇降する移動ドラム(移動部材)10に掛けられた後、該移動ドラム10の下方にあるバネ等の弾性体を有する固定端シリンダ(弾性手段)7に連結されている。さらに、ワイヤー3、3に対しては、移動ドラム10とコネクタ36aとの間において、プーリー4をワイヤー3の引っ張り方向へ付勢する引っ張り力負荷シリンダ(付勢手段)5により常に所定の引っ張り力が付与されており、弛みのない状態となっている。
【0013】
また、固定端シリンダ7の近傍には、引っ張り監視近接スイッチ(第二検出手段)8が取り付けられており、ワイヤー3、3に対して特定値以上の引っ張り力がかかり、固定端シリンダ7のシリンダがエンド端まで動作した際に、その旨を引っ張り監視近接スイッチ8にて検出可能としている。
さらに、引っ張り力負荷シリンダ5の近傍には、弛み監視近接スイッチ(第一検出手段)6が取り付けられており、動力ケーブル2が引っ掛かる等してワイヤー3、3に特定量以上の弛みが生じ、引っ張り力負荷シリンダ5のシリンダがエンド端まで動作した際に、その旨を弛み監視近接スイッチ6により検出可能としている。
尚、弛み監視近接スイッチ6及び引っ張り監視近接スイッチ8は、上記図示しない制御装置に接続されており、ワイヤー3、3の引っ張り/弛みは制御装置にて検出される。
【0014】
一方、動力ケーブル2は、コネクタ36aから複数のプーリー20、20を介して移動ドラム10に掛けられた後、外部電源へと導かれている。該動力ケーブル2は、移動ドラム10よりも下方位置、且つ、外部側(コネクタ36aとは逆側)にて、固定部材(図示せず)により固定されている。また、9は、動力ケーブル2を移動ドラム10へと案内するための固定ドラムである。
【0015】
そして、上述の如きワイヤー3、3や動力ケーブル2が掛けられる移動ドラム10は、以下に記載するような昇降装置11にて昇降する。
昇降装置11は、垂直方向に設けられたボールネジ12と、該ボールネジ12に沿って昇降するスライダ13と、ボールネジ12を回転駆動させる駆動装置14とからなる。スライダ13には、移動ドラム10が取り付けられており、上記制御装置による制御のもと、アタッチメント34の旋回動作に伴ってスライダ13を移動ドラム10と共に昇降可能としている。
【0016】
以上のようなケーブル監視装置1による動力ケーブル2の送り出し動作及び監視動作について説明する。
まず、アタッチメント34をC軸マイナス方向へ旋回させる等、動力ケーブル2をアタッチメント34側へ送り出す必要がある場合には、昇降装置11にて移動ドラム10を下方へ移動させ、ワイヤー3、3をアタッチメント34側へ送り出すことによって、動力ケーブル2を送り出す。この過程において、動力ケーブル2が何かに引っ掛かると、ワイヤー3、3ばかりが送り出されることになり、ワイヤー3、3に弛みが生じる。そして、ワイヤー3、3に生じた弛みが特定量以上となると、引っ張り力負荷シリンダ5のシリンダがエンド端まで動作するため、引っ張り監視近接スイッチ8により、ワイヤー3、3に弛みが生じている、すなわち動力ケーブル2に引っ掛かりが生じている旨が検出される。このようにして動力ケーブル2の引っ掛かりが検出されると、制御装置は、昇降装置11の昇降動作を停止させる。
【0017】
一方、アタッチメント34をC軸プラス方向へ旋回させる等、動力ケーブル2を引き上げる必要がある場合には、昇降装置11にて移動ドラム10を上方へ移動させ、ワイヤー3、3を引き上げることにより、動力ケーブル2を引っ張り上げる。この過程において、動力ケーブル2が何かに引っ掛かると、それ以上ワイヤー3、3を引き上げることができなくなるため、ワイヤー3、3に特定値以上の引っ張り力がかかる。すると、固定端シリンダ7においてシリンダがエンド端まで動作するため、弛み監視近接スイッチ6により、ワイヤー3、3が引っ張り状態にある、すなわち動力ケーブル2に引っ掛かりが生じている旨が検出される。このようにして動力ケーブル2の引っ掛かりが検出された場合にも、制御装置は、昇降装置11の昇降動作を停止させる。
【0018】
以上のようなケーブル監視装置1によれば、ワイヤー3、3を送り出すことにより動力ケーブル2の送り出しを行うように構成しているとともに、ワイヤー3、3が連結される固定端シリンダ7の近傍に引っ張り監視近接スイッチ8を取り付けており、動力ケーブル2が何かに引っ掛かる等してワイヤー3、3に弛みが生じた事態を検出した際に、昇降装置11の昇降動作、すなわちワイヤー3、3の送り出し動作を停止するようになっている。また、ワイヤー3、3に対して常に所定の引っ張り力を付与する引っ張り力負荷シリンダ5の近傍に弛み監視近接スイッチ6を取り付けており、動力ケーブル2が何かに引っ掛かる等してワイヤー3、3に特定値以上の引っ張り力がかかった事態を検出した際にも、昇降装置11の昇降動作、すなわちワイヤー3、3の送り出し動作を停止するようになっている。したがって、動力ケーブル2に引っ掛かりが生じたまま、アタッチメント34の旋回動作を続行してしまい、動力ケーブル2内にて電線が破損してしまうといった事態を確実に防止することができる。
【0019】
また、ケーブル監視装置1によれば、動力ケーブル2の引っ張り/弛み検出機構を、ワイヤー3、3に連結された各シリンダ装置(引っ張り力負荷シリンダ5及び固定端シリンダ7)と、各シリンダ装置におけるシリンダのエンド端近傍に取り付けられた近接スイッチ(弛み監視近接スイッチ6及び引っ張り監視近接スイッチ8)とから構成している。したがって、上記検出機構を比較的安価に構成することができるとともに、既に工場内等に設置されている門形マシニングセンタ等に対して後付することができ、汎用性に富む。
【0020】
なお、本発明のケーブル監視装置に係る構成は、上記実施の形態に記載した態様に何ら限定されるものではなく、付勢手段、弾性手段、各検出手段、送り部材、及び昇降装置等に係る構成等を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0021】
たとえば、上記実施形態では、送り部材の引っ張り/弛みを検出する検出手段として近接スイッチを採用しており、近接スイッチにて送り部材の引っ張り/弛みが検出された場合に、昇降装置の昇降動作を停止するような構成としているが、たとえば一のシリンダ装置に複数の位置検出スイッチA、Bを設け、シリンダ端部の位置を検出可能に構成するとともに、シリンダ端部が位置検出スイッチAと位置検出スイッチBの間にある場合には、送り部材に引っ張り/弛みが生じている可能性がある旨を作業者等に報知するにとどまり、位置検出スイッチBを超えると昇降装置を停止させるといった構成とすることも可能である。このような構成を採用したとしても、動力ケーブル内における電線の破損といった事態を防止することができる上、報知によって昇降装置が停止する前に引っ掛かり等を解除することができれば、一々昇降装置を停止させることなく対処することができ、加工効率を向上させることができる。
尚、報知態様としては、各工作機械にランプ等を設けて、そのランプを点灯/点滅させるようにしてもよいし、制御装置のモニターにて表示したり、スピーカにて報知する等、各種態様が考えられる。また、上記実施形態のケーブル監視装置に報知手段を設け、昇降装置を停止させた旨を報知させることも当然可能である。
【0022】
また、送り部材として、金属製のワイヤー以外の部材を採用することは当然可能であるし、ケーブル監視装置を門形マシニングセンタ以外の工作機械に適用することも当然可能である。さらに、付勢手段や弾性手段も、上記実施形態に記載のシリンダ装置に何ら限定されることはなく、適宜変更可能である。
加えて、動力ケーブルの送り動作に係る制御装置と、動力ケーブルの状態監視に係る制御装置とを別個に設けるような構成としても何ら問題はない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】ケーブル監視装置が設置される門形マシニングセンタの一部外観を示した斜視説明図である。
【図2】ケーブル監視装置を正面側から模式的に示した説明図である。
【図3】ケーブル監視装置を右側から模式的に示した説明図である。
【符号の説明】
【0024】
1・・ケーブル監視装置、2、2a、2b・・動力ケーブル、3・・ワイヤー、5・・引っ張り力負荷シリンダ、6・・弛み監視近接スイッチ、7・・固定端シリンダ、8・・引っ張り監視近接スイッチ、10・・移動ドラム、11・・昇降装置、34・・アタッチメント。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルが掛けられた移動部材を、送り出し位置と巻き取り位置との間で移動させることによって前記ケーブルの送り動作を行うケーブル送り装置において前記ケーブルの引っ張り及び/又は弛みを監視するためのケーブル監視装置であって、
一端が前記ケーブルに連結され、前記移動部材の移動に伴って前記ケーブルとともに送り動作が行われる送り部材と、該送り部材に所定の引っ張り力を付与する付勢手段と、前記送り部材の他端が固定される弾性手段とを備えているとともに、
前記付勢手段の伸縮状態を検出することにより前記送り部材に生じる弛みを検出可能な第一検出手段、及び/又は、前記弾性手段の伸縮状態を検出することにより前記送り部材にかかる引っ張りを検出可能な第二検出手段を備え、
前記送り部材の引っ張り/弛みを検出することで、前記ケーブルの引っ張り及び/又は弛みの監視を行うケーブル監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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