説明

ゲート

【課題】送電線を放流水にさらされることなく引き出すこと。
【解決手段】この発明は、水力発電機11に接続されている送電線22を、支持装置8を経由して水路1内から水路1外に引き出す中空状の送電線引き出し部材12を備える。この結果、この発明は、支持装置8の中空状の支持軸をトルクチューブ12と兼用の中空状の送電線引き出し部材12として使用することにより、別個の部材を使用せずに、送電線22を支持装置8を経由して水路1内から水路1外に放流水にさらされることなく引き出すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水力発電機を備える回転ヒンジ式のゲート(水門)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水力発電機を備えるゲートは、上下方向に可動する形式のゲートについては従来からある(たとえば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4)。かかるゲートは、水路を開閉する扉体に水力発電機を設けるものであって、放流されるだけであった位置エネルギーを持っている水を有効利用して発電するものである。
【0003】
かかるゲートにおいては上下方向に可動するゲート以外の回転ヒンジ式のゲートにも水力発電が可能とするものである。
【0004】
かかるゲートにおいては河川の通水阻害物にならないように水力発電機をコンパクトに配置しなければならない。
【0005】
かかるゲートにおいては水力発電機のメンテナンスができることが重要である。
【0006】
かかるゲートにおいては、水力発電機に接続されている送電線(電力線)を水路内から水路外に放流水にさらされることなく引き出すことが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−13838号公報
【特許文献2】特開2005−351246号公報
【特許文献3】特開2006−22611号公報
【特許文献4】特開2007−205212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明が解決しようとする課題は、回転ヒンジ式のゲートにも水力発電が可能とすることにある。
【0009】
この発明が解決しようとする課題は、河川の通水阻害物にならないように水力発電機をコンパクトに配置することにある。
【0010】
この発明が解決しようとする課題は、送電線を放流水にさらされることなく引き出すことにある。
【0011】
この発明が解決しようとする課題は、水力発電機を経由して放流される水を土木構造物に影響を与えることなく放流することにある。
【0012】
この発明が解決しようとする課題は、水力発電機のメンテナンスが可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明(請求項1にかかる発明)は、水路を開閉する扉体と、扉体を開閉するために支持する支持装置と、扉体を開閉させる開閉装置と、扉体に設けられていて水路の上流側の水を水路の下流側に放流する発電用導水管と、発電用導水管の途中に設けられていて発電用導水管中の流水により発電する水力発電機と、水力発電機に接続されている送電線を、支持装置を経由して水路内から水路外に引き出す中空状の送電線引き出し部材を備える、ことを特徴とする。
【0014】
この発明(請求項2にかかる発明)は、発電用導水管の水力発電機よりも上流側には流水を止めることができる仕切り弁が設けられている、ことを特徴とする。
【0015】
この発明(請求項3にかかる発明)は、発電用導水管の取水口が扉体に水路の上流側に向けられて設けられていて、発電用導水管の放流口が水路の下流側の壁に向けられて設けられている、ことを特徴とする。
【0016】
この発明(請求項4にかかる発明)は、取水口には、水力発電機への流水中の物が進入するのを防止するスクリーンが設けられている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
この発明(請求項1にかかる発明)のゲートは、前記の発明が解決しようとする課題により、水路の上流側の水が発電用導水管中を通って水路の下流側に放流されると、その発電用導水管中の流水により水力発電機が発電する。このように、この発明(請求項1にかかる発明)のゲートは、放流されるだけであった位置エネルギーを持っている水を有効利用して発電することができる。
【0018】
特に、この発明(請求項1にかかる発明)のゲートは、中空状の送電線引き出し部材により、水力発電機に接続されている送電線を、支持装置を経由して水路内から水路外に放流水にさらされることなく引き出すことができる。すなわち、この発明(請求項1にかかる発明)のゲートは、支持装置の中空状の支持軸を中空状の送電線引き出し部材として使用することにより、別個の部材を使用せずに、送電線を支持装置を経由して水路内から水路外に放流水にさらされることなく引き出すことができる。
【0019】
また、この発明(請求項1にかかる発明)のゲートは、扉体と水力発電機とが共に昇降する昇降式のゲート(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4の一部)のように、水力発電機に接続されている送電線を扉体および水力発電機の昇降に伴って巻き取ったり巻き戻したりする装置が不要であり、その分、部品点数を軽減することができ製造コストを安価にすることができる。
【0020】
さらに、この発明(請求項1にかかる発明)のゲートは、水路の上流側の水を水路の下流側に放流する発電用導水管が扉体に設けられているので、扉体の回転による河川の水の流量調整に対して、発電用導水管を通る水の流量調整を行うことができる。これにより、水の流量調整(流量制御)の幅が広くなる。
【0021】
この発明(請求項2にかかる発明)のゲートは、発電用導水管の水力発電機よりも上流側に仕切り弁を設けているので、この仕切り弁で発電用導水管の流水を止めることにより、仕切り弁よりも下流側の部品特に水力発電機のメンテナンスを行うことができ、水力発電機の耐久性を向上させることができる。
【0022】
この発明(請求項3にかかる発明)のゲートは、発電用導水管の取水口を扉体に水路の上流側に向けて設けているので、扉体に止水部材(止水板、止水蓋、止水フランジ、閉止フランジ)を着脱可能に取り付けて取水口を塞ぐことにより、発電用導水管および水力発電機のメンテナンスを行うことができ、発電用流水路および水力発電機の耐久性を向上させることができる。
【0023】
また、この発明(請求項3にかかる発明)のゲートは、発電用導水管の放流口を水路の下流側の壁に向けているので、水路の下流側の壁を戸当りとすることにより、戸当りの水の減勢作用で、放流口から放流される水の勢いを減衰させることができ、その分、水路の下流側の構築物への水の浸食作用を抑制することができる。
【0024】
この発明(請求項4にかかる発明)のゲートは、水力発電機への流水中の物が進入するのを防止するスクリーンを取水口に設けているので、スクリーンにより流水中の物が水力発電機に進入するのを防止することができ、その分、水力発電機や発電用導水管の耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、この発明にかかるゲートの実施例1を示す横断面(水平断面)説明図であって、ゲート(扉体)が起立している状態を示す図5におけるI−I線断面説明図である。
【図2】図2は、同じく、ゲート(扉体)が起立している状態を示す図5におけるII−II線断面説明図である。
【図3】図3は、同じく、ゲート(扉体)が起立している状態を示す図1におけるIII−III線断面説明図である。
【図4】図4は、同じく、ゲート(扉体)が起立している状態を示す図1におけるIV−IV線断面説明図である。
【図5】図5は、同じく、ゲート(扉体)が起立している状態を示す図1におけるV−V線断面説明図である。
【図6】図6は、同じく、ゲート(扉体)が倒伏している状態を示す図1におけるV−V線断面説明図である。
【図7】図7は、この発明にかかるゲートの実施例2を示す縦断面(垂直断面)説明図であって、ゲート(扉体)が起立している状態を示す図5に対応する縦断面説明図である。
【図8】図8は、同じく、ゲート(扉体)が倒伏している状態を示す図6に対応する縦断面説明図である。
【図9】図9は、この発明にかかるゲートの実施例3を示す一部斜視説明図である。
【図10】図10は、この発明にかかるゲートの実施例4を示す一部斜視説明図である。
【図11】図11は、この発明にかかるゲートの実施例5を示す一部斜視説明図である。
【図12】図12は、この発明にかかるゲートの実施例6を示す一部斜視説明図である。
【図13】図13は、この発明にかかるゲートの実施例7を示す一部斜視説明図である。
【図14】図14は、この発明にかかるゲートの実施例8を示す一部斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明にかかるゲートの実施例のうちの8例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0027】
図1〜図6は、この発明にかかるゲートの実施例1を示す。以下、この実施例1におけるゲートの構成について説明する。
【0028】
図において、符号「1」は水路である。前記水路1は、左右両側の側壁2と、河床3と、から構成されていて、断面凹形状をなす。前記水路1中には、水4が図中の実線矢印方向に流れている。なお、図5において、符号「5」は、ゲートにより堰き止められている水の表面(水面)を示す。
【0029】
図において、符号「6」は、実施例1におけるゲートであって、起伏ゲート(トルクチューブ式起伏ゲート)である。前記起伏ゲート6は、回転ヒンジ式のゲートの1つの形式である。前記起伏ゲート6は、扉体(ゲート)7と、支持装置8と、開閉装置9と、2本の発電用導水管10と、2台の水力発電機11と、中空状の送電線引き出し部材12と、を備えるものである。
【0030】
前記扉体7は、回転して前記水路1を開閉するものである。前記扉体7は、前記水路1を横断方向において遮断するスキンプレート13を備えている。前記スキンプレート13は、平板をなす。前記スキンプレート13には、主桁、補助桁、端縦桁、その他の構成部品などが設けられている。前記スキンプレート13の基端(前記起伏ゲート6(前記扉体7)が起立状態のとき下端となる端)には、トルクチューブ(トルク軸、支軸)12が設けられている。前記トルクチューブ12は、中空状をなし、中空状の前記送電線引き出し部材12と兼用するものである。
【0031】
前記支持装置8は、前記扉体7を水平軸(前記水路1を横断する方向の水平軸)14回りに回転可能に支持するものである。前記支持装置8は、支持軸すなわち前記送電線引き出し部材12と兼用の前記トルクチューブ12と、前記送電線引き出し部材12と兼用の前記トルクチューブ12の両端を前記水平軸14回りに回転可能に支持する軸受と、から構成されている。前記支持装置8の支持軸は、前記送電線引き出し部材12と兼用の前記トルクチューブ12であるから、中空状である。前記水平軸14は、この例では、前記送電線引き出し部材12と兼用の前記トルクチューブ12の中心軸線である。前記支持装置8の軸受は、前記水路1の左右両側の前記側壁2の外側の機械室などの操作室15内に設けられている。
【0032】
前記開閉装置9は、前記扉体7を前記水平軸14回りに回転させるものである。前記開閉装置9は、油圧シリンダから構成されている。前記開閉装置9は、油圧シリンダのピストンロッドをトルクアームやピンなどを介して前記送電線引き出し部材12と兼用の前記トルクチューブ12の一端に連結されている。前記開閉装置9は、前記2つの操作室15のうちの1つの前記操作室15内に発電制御盤16と共に設けられている。前記発電制御盤16内には、図示されていない制御盤、制御装置、インバーター、ダミーロード、バッテリーなどが設けられている。なお、前記開閉装置9としては、前記の油圧シリンダのほかに、たとえば、油圧モータやその他の駆動装置であっても良い。
【0033】
前記2本の発電用導水管10は、配管からなる。前記2本の発電用導水管10は、前記扉体7の背面側すなわち下流側(前記水路1において、水4が前記扉体7により堰き止められる側と反対側、すなわち、水4が前記扉体7により堰き止められていない側)に横方向(水平方向)に設けられている。前記2本の発電用導水管10の両端には、取水口17と放流口18とがそれぞれ設けられている。
【0034】
前記2本の発電用導水管10の前記取水口17は、前記扉体7の前記スキンプレート13の中央に前記水路1の上流側(前記水路1において、水4が前記扉体7により堰き止められる側)に向けられて設けられている。前記2本の発電用導水管10の前記放流口18は、前記水路1の下流側の側壁2に向けられて設けられている。前記発電用導水管10は、前記水路1の上流側の水4を前記取水口17から取り入れて前記放流口18から前記水路1の下流側に放出するものである(図中の実線矢印を参照)。
【0035】
前記2台の水力発電機11は、横軸プロペラ水車式水力発電機であって、前記2本の発電用導水管10の途中(前記取水口17と前記放流口18との間)にそれぞれ設けられている。前記水力発電機11は、前記発電用導水管10内を前記取水口17から前記放流口18に横方向に流れる水4が通過することにより発電するものである。前記水力発電機11は、前記扉体7の前記スキンプレート13の前記水路1の下流側に架台(台座)20を介して着脱可能に取り付けられている。前記水力発電機11は、水4がない前記水路1の下流側に配置されている。
【0036】
前記2本の発電用導水管10の前記取水口17には、前記2台の水力発電機11への流水中の物が進入するのを防止するスクリーン19がそれぞれ設けられている。前記2本の発電用導水管10の前記2台の水力発電機11よりも上流側には、流水を止めることができる仕切り弁21がそれぞれ設けられている。
【0037】
前記2台の水力発電機11には、送電線22がそれぞれ接続されている。前記送電線22は、前記水力発電機11から前記トルクチューブ12と兼用の中空状の前記送電線引き出し部材12中に水密に配線されている。前記送電線22は、前記トルクチューブ12と兼用の中空状の前記送電線引き出し部材12中から前記支持装置8を経由して前記水路1内から前記水路1外に引き出されている。前記送電線22は、前記発電制御盤16に接続されていて、さらに、前記発電制御盤16から外部にと配線されている。
【0038】
前記水路1の前記側壁2および前記河床3と前記扉体7との間、前記水路1の前記側壁2と前記トルクチューブ12兼用の中空状の前記送電線引き出し部材12との間、その他水密性が必要な箇所などには、水密ゴムなどの水密部材(図示せず)が設けられている。
【0039】
この実施例1におけるゲートは、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0040】
図5に示すように、起伏ゲート6の扉体7が起立状態にあるときには、水路1中の水4は、扉体7により堰き止められている。このとき、扉体7に堰き止められている水4の一部は、扉体7の2個の取水口17から2本の発電用導水管10中にそれぞれ取り入れられる。その水4は、2本の発電用導水管10中の2個の仕切り弁19および2台の水力発電機11を通って、2本の発電用導水管10の2個の放流口17から水路1の下流側の側壁2に向けて放出される。
【0041】
水4が2台の水力発電機11内部を通過する際に、2台の水力発電機11のプロペラを回転させ、これにより、2台の水力発電機11が発電する。2台の水力発電機11で発生した電力(電気)は、送電線22により発電制御盤16の電気設備、もしくは、発電制御盤16の電気設備およびその他の電気設備に送られ、発電制御盤16の電気設備の電源の全部、もしくは、発電制御盤16の電気設備の電源の一部およびその他の電気設備の電源として利用される。
【0042】
開閉装置9を駆動させると、起伏ゲート6の中空状の送電線引き出し部材12と兼用のトルクチューブ12が回転して、図5に示す起立状態にある起伏ゲート6の扉体7が、図6に示すように、倒伏して倒伏状態となる。すると、河川の水4が水門1の上流側から水門1の下流側に放流される。このように、起伏ゲート6において、河川の水4の流量を調整することができ、また、洪水を防止することができる。このとき、河川の水4の一部が起伏ゲート6の取水口17に取り込まれて発電用導水管10および仕切り弁21および水力発電機11を通って放流口18から放流される。このために、起伏ゲート6の扉体7の倒伏による水4の流量調整に対して、発電用導水管10を通る水4の流量調整を行うことができるので、水4の流量調整(流量制御)の幅が広くなる。これにより、河川の水4の流量調整を細やかに精度良く行うことができる。なお、扉体7が倒伏状態であっても、水4が取水口17に取り込まれれば、水力発電機11による発電作用は行われる。
【0043】
仕切り弁21を操作すると、発電用導水管10中の水4の流れが水力発電機11の上流側の仕切り弁21で止まる。これにより、水力発電機11を起伏ゲート6の扉体7および発電用導水管10から取り外して、水力発電機11のメンテナンスを行うことができる。なお、水力発電機11のメンテナンスは、水力発電機11を起伏ゲート6の扉体7および発電用導水管10から取り外さずに行うこともできる。
【0044】
また、図3中の二点鎖線に示すように、起伏ゲート6の扉体7のスキンプレート13に止水部材(止水板、止水蓋、止水フランジ、閉止フランジ)37を着脱可能に取り付ける。すると、取水口17が塞がれて、水4の発電用導水管10中および水力発電機11中への流れが止められる。これにより、発電用導水管10および水力発電機11のメンテナンスを行うことができる。
【0045】
この実施例1におけるゲートは、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0046】
この実施例1におけるゲートは、トルクチューブ12と兼用の中空状の送電線引き出し部材12により、水力発電機11に接続されている送電線22を、支持装置8を経由して水路1内から水路1外に放流水にさらされることなく引き出すことができる。すなわち、この実施例1におけるゲートは、支持装置8の中空状の支持軸をトルクチューブ12と兼用の中空状の送電線引き出し部材12として使用することにより、別個の部材を使用せずに、送電線22を支持装置8を経由して水路1内から水路1外に放流水にさらされることなく引き出すことができる。
【0047】
特に、この実施例1におけるゲートは、扉体と水力発電機とが共に昇降する昇降式のゲート(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4の一部)のように、水力発電機に接続されている送電線を扉体および水力発電機の昇降に伴って巻き取ったり巻き戻したりする装置が不要であり、その分、部品点数を軽減することができ製造コストを安価にすることができる。
【0048】
この実施例1におけるゲートは、発電用導水管10の水力発電機11よりも上流側に仕切り弁21を設けているので、この仕切り弁21で発電用導水管10の流水を止めることにより、仕切り弁21よりも下流側の部品特に水力発電機11のメンテナンスを行うことができ、水力発電機11の耐久性を向上させることができる。特に、この実施例1におけるゲートは、起伏ゲート6の扉体7の背面側すなわち水路1の下流側に水力発電機11を設けているので、水力発電機11は、水4の中に没することがない。この結果、水力発電機11のメンテナンスを簡単に行うことができる。
【0049】
この実施例1におけるゲートは、発電用導水管10の取水口17を扉体7のスキンプレート13に水路1の上流側に向けて設けているので、扉体7のスキンプレート13に止水部材(止水板、止水蓋、止水フランジ、閉止フランジ)37を着脱可能に取り付けて取水口17を塞ぐことにより、発電用導水管10および水力発電機11のメンテナンスを行うことができ、発電用流水路10および水力発電機11の耐久性を向上させることができる。
【0050】
また、この実施例1におけるゲートは、発電用導水管10の放流口18を水路1の下流側の側壁2に向けているので、水路1の下流側の側壁2を戸当りとすることにより、戸当りの水の減勢作用で、放流口18から放流される水4の勢いを減衰させることができ、その分、水路1の下流側の構築物への水の浸食作用を抑制することができる。
【0051】
この実施例1におけるゲートは、水力発電機11への流水中の物が進入するのを防止するスクリーン19を取水口17に設けているので、スクリーン19により流水中の物が水力発電機11に進入するのを防止することができ、その分、水力発電機11や発電用導水管10の耐久性を向上させることができる。
【0052】
なお、この実施例1においては、2本の発電用導水管10と2台の水力発電機11を使用するものである。ところが、この発明においては、1本の発電用導水管10と1台の水力発電機11を、または、3本以上の発電用導水管10と3台以上の水力発電機11を使用するものであっても良い。
【実施例2】
【0053】
図7、図8は、この発明にかかるゲートの実施例2を示す。以下、この実施例2におけるゲートについて説明する。図中、図1〜図6と同符号は、同一のものを示す。
【0054】
この実施例2におけるゲートは、取水口17を扉体7のスキンプレート13の上部に設け、水力発電機11として縦軸プロペラ水車式水力発電機を使用するものである。その他の構成は、前記の実施例1におけるゲートと同様である。
【0055】
この実施例2におけるゲートは、以上のごとき構成からなるので、前記の実施例1におけるゲートとほぼ同様の作用効果を達成することができる。特に、この実施例2におけるゲートは、水力発電機11として縦軸プロペラ水車式水力発電機を使用するものであるから、前記の実施例1におけるゲートの水力発電機11として横軸プロペラ水車式水力発電機を使用するものと比較して、扉体7の下流側からの水力発電機11の突出量が小さい。このために、この実施例2におけるゲートは、前記の実施例1におけるゲートと比較して、水門1の下流側の河床3の深さを浅くすることができ、その分、水門1の設計や工事が容易となる。
【実施例3】
【0056】
図9は、この発明にかかるゲートの実施例3を示す。以下、この実施例3におけるゲートについて説明する。図中、図1〜図8と同符号は、同一のものを示す。
【0057】
この実施例3におけるゲートは、ラジアルゲート23である。ラジアルゲート23は、円弧形状をなす扉体(スキンプレート)24を支持装置(図示せず)および開閉装置(図示せず)を介して水平軸14回りに回転可能に支持するものである。支持装置の支持軸を中空状の送電線引き出し部材12と兼用とする。その他の構成は、前記の実施例1、2におけるゲートと同様である。ラジアルゲート23は、扉体24が図9に示す状態にあるときには水路1を閉じていて、扉体24を図9中の実線矢印方向に回転させることにより、水路1を開くものである。
【0058】
この実施例3におけるゲートは、以上のごとき構成からなるので、前記の実施例1、2におけるゲートとほぼ同様の作用効果を達成することができる。なお、この実施例3におけるゲートは、前記のラジアルゲート23以外に、高圧ラジアルゲート、引っ張りラジアルゲートにも適用することができる。
【実施例4】
【0059】
図10は、この発明にかかるゲートの実施例4を示す。以下、この実施例4におけるゲートについて説明する。図中、図1〜図9と同符号は、同一のものを示す。
【0060】
この実施例4におけるゲートは、ドラムゲート25である。ドラムゲート25は、ドラム形状をなす扉体26を支持装置(図示せず)および開閉装置(図示せず)を介して水平軸14回りに回転可能に支持するものである。支持装置の支持軸を中空状の送電線引き出し部材12と兼用とする。その他の構成は、前記の実施例1〜3におけるゲートと同様である。ドラムゲート25は、扉体26が図10に示す状態にあるときには水路1を閉じていて、扉体26を図10中の実線矢印方向に回転させることにより、水路1を開くものである。
【0061】
この実施例4におけるゲートは、以上のごとき構成からなるので、前記の実施例1〜3におけるゲートとほぼ同様の作用効果を達成することができる。
【実施例5】
【0062】
図11は、この発明にかかるゲートの実施例5を示す。以下、この実施例5におけるゲートについて説明する。図中、図1〜図10と同符号は、同一のものを示す。
【0063】
この実施例5におけるゲートは、セクタゲート27である。セクタゲート27は、2枚の4分の1円形形状をなす扉体28を支持装置(図示せず)および開閉装置(図示せず)を介して垂直軸29回りに回転可能に支持するものである。支持装置の支持軸を中空状の送電線引き出し部材12と兼用とする。その他の構成は、前記の実施例1〜4におけるゲートと同様である。セクタゲート27は、2枚の扉体28が図11に示す状態にあるときには水路1を閉じていて、2枚の扉体28を図11中の実線矢印方向にそれぞれ回転させることにより、水路1を開くものである。
【0064】
この実施例5におけるゲートは、以上のごとき構成からなるので、前記の実施例1〜4におけるゲートとほぼ同様の作用効果を達成することができる。
【実施例6】
【0065】
図12は、この発明にかかるゲートの実施例6を示す。以下、この実施例6におけるゲートについて説明する。図中、図1〜図11と同符号は、同一のものを示す。
【0066】
この実施例6におけるゲートは、ライジングセクタゲート30である。ライジングセクタゲート30は、断面扇形状をなす中空状の扉体31を円形の端部円盤32および支持装置(図示せず)および開閉装置(図示せず)を介して水平軸14回りに回転可能に支持するものである。支持装置の支持軸を中空状の送電線引き出し部材12と兼用とする。その他の構成は、前記の実施例1〜5におけるゲートと同様である。ライジングセクタゲート30は、扉体31が図12に示す状態にあるときには水路1を閉じていて、扉体31を図12中の実線矢印方向に回転させることにより、水路1を開くものである。
【0067】
この実施例6におけるゲートは、以上のごとき構成からなるので、前記の実施例1〜5におけるゲートとほぼ同様の作用効果を達成することができる。
【実施例7】
【0068】
図13は、この発明にかかるゲートの実施例7を示す。以下、この実施例7におけるゲートについて説明する。図中、図1〜図12と同符号は、同一のものを示す。
【0069】
この実施例7におけるゲートは、スイングゲート33である。スイングゲート33は、平板形状をなす扉体34を支持装置(図示せず)および開閉装置(図示せず)を介して垂直軸29回りに回転可能に支持するものである。支持装置の支持軸を中空状の送電線引き出し部材12と兼用とする。その他の構成は、前記の実施例1〜6におけるゲートと同様である。スイングゲート33は、扉体34が図13に示す状態にあるときには水路1を閉じていて、扉体34を図13中の実線矢印方向に回転させることにより、水路1を開くものである。
【0070】
この実施例7におけるゲートは、以上のごとき構成からなるので、前記の実施例1〜6におけるゲートとほぼ同様の作用効果を達成することができる。なお、この実施例7におけるゲートは、前記のスイングゲート33以外に、平板形状の扉体を2枚使用するマイタゲートにも適用することができる。
【実施例8】
【0071】
図14は、この発明にかかるゲートの実施例8を示す。以下、この実施例8におけるゲートについて説明する。図中、図1〜図13と同符号は、同一のものを示す。
【0072】
この実施例8におけるゲートは、バイザゲート35である。バイザゲート35は、半円筒形状もしくはアーチ形状をなす扉体36を支持装置(図示せず)および開閉装置(図示せず)を介して水平軸14回りに回転可能に支持するものである。支持装置の支持軸を中空状の送電線引き出し部材12と兼用とする。その他の構成は、前記の実施例1〜7におけるゲートと同様である。バイザゲート35は、扉体36が図14に示す状態にあるときには水路1を閉じていて、扉体36を図14中の実線矢印方向に回転させることにより、水路1を開くものである。
【0073】
この実施例8におけるゲートは、以上のごとき構成からなるので、前記の実施例1〜7におけるゲートとほぼ同様の作用効果を達成することができる。
【0074】
なお、この発明にかかるゲートは、河川に使用されるゲートであって、小電力(たとえば、10kw以下の電力)を発電するのに適しているゲート、すなわち、水力発電機を備える回転ヒンジ式のゲート(水門)である。
【0075】
また、前記の実施例においては、仕切り弁21を設けるものである。ところが、この発明においては、仕切り弁21を設けなくても良い。
【0076】
さらに、前記の実施例においては、放流口18を水路1の下流側の側壁2に向けて設けるものである。ところが、この発明においては、放流口18を水路1の下流側の側壁2に向けずに、任意の方向に向けて設けるものでも良い。
【0077】
さらにまた、前記の実施例においては、取水口17にスクリーン19を設けるものである。ところが、この発明においては、取水口17にスクリーン19を設けなくても良い。
【符号の説明】
【0078】
1 水路
2 側壁
3 河床
4 水
5 水の表面(水面)
6 起伏ゲート
7 扉体
8 支持装置
9 開閉装置
10 発電用導水管
11 水力発電機
12 送電線引き出し部材(トルクチューブ)
13 スキンプレート
14 水平軸
15 操作室
16 発電制御盤
17 取水口
18 放流口
19 スクリーン
20 架台
21 仕切り弁
22 送電線
23 ラジアルゲート
24 扉体(スキンプレート)
25 ドラムゲート
26 扉体
27 セクタゲート
28 扉体
29 垂直軸
30 ライジングセクタゲート
31 扉体
32 端部円盤
33 スイングゲート
34 扉体
35 バイザゲート
36 扉体
37 止水部材(止水板、止水蓋、止水フランジ、閉止フランジ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水力発電機を備える回転ヒンジ式のゲートにおいて、
回転して水路を開閉する扉体と、
前記扉体を回転軸回りに回転可能に支持する支持装置と、
前記扉体を回転軸回りに回転させる開閉装置と、
前記扉体に設けられていて、前記水路の上流側の水を前記水路の下流側に放流する発電用導水管と、
前記発電用導水管の途中に設けられていて、前記発電用導水管中の流水により発電する水力発電機と、
前記水力発電機に接続されている送電線を、前記支持装置を経由して前記水路内から前記水路外に引き出す中空状の送電線引き出し部材と、
を備えることを特徴とするゲート。
【請求項2】
前記発電用導水管の前記水力発電機よりも上流側には、流水を止めることができる仕切り弁が設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載のゲート。
【請求項3】
前記発電用導水管には、取水口と放流口とが設けられていて、
前記取水口は、前記扉体に前記水路の上流側に向けられて設けられていて、
前記放流口は、前記水路の下流側の壁に向けられて設けられている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のゲート。
【請求項4】
前記取水口には、前記水力発電機への流水中の物が進入するのを防止するスクリーンが設けられている、ことを特徴とする請求項3に記載のゲート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−202410(P2011−202410A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70843(P2010−70843)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(506122246)三菱重工鉄構エンジニアリング株式会社 (111)
【Fターム(参考)】