説明

コアビット

【課題】研磨剤の供給装置が不要であり、またシャフトに研磨剤供給用のスイベルジョイントを設けなくてもよく、目詰まり等により回転速度が低下したときの所要時に研磨剤を供給することができるコアビットを提供する。
【解決手段】コアビット21は上端にコアドリルのシャフトに取外し可能に取着される連結部23を備えると共に、下端にダイヤモンド砥粒のチップよりなる刃先部24を備え、連結部23の周りの底壁25には該底壁25を上下に貫通する研磨剤の供給孔26を形成する。ゴム又は樹脂製の弾性材よりなる環状のバンド27は下側部をコアビット上端部に装着し、上側部を底壁25より突出させ、該突出部と供給部外周側の底壁上面とで貯留部28を形成し、研磨剤29を貯留する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアドリルを用いてコンクリート等の被削材へ穿孔する方法において、切れ味が低下したとき、穿孔箇所に研磨剤を供給することができるようにしたコアビットに関する。
なお、本明細書において、上下及び上下方向とは、コアドリルを構成するコアビットを縦向きにして使用したとき、コアビットの刃先部及びその向く方向を下及び下方向とし、これとは反対側を上及び上方向とする。
【背景技術】
【0002】
コアドリルは一般に図1に示すように、コンクリート等の被削材1上に固定される取付台2より立上がる支柱3と、該支柱3に支柱3に沿って移動可能に取付けられるヘッド4と、支柱3に添設のラック5及び該ラック5に噛合する図示しないピニオンよりなるピニオン・ラック機構(ピニオンの回転はモータによって行われるものと、図1に示すようにハンドル6の回転操作により手動で行われるものがある)よりなるヘッド4の送り装置と、ヘッド4に回転自在に軸支され、減速機付きモータ7よりなる駆動装置によって回転駆動されるシャフト8と、連結部9により前記シャフト8に捩じ込んだ取外し可能に取付けられ、先端にダイヤモンド砥粒で形成されるチップ11よりなる刃先部を備えたカップ状のコアビット12よりなり、被削材1への穿孔は取付台2を被削材1に取付けたのち、コアビット12を降下させて刃先部を被削材1に当ててコアビット12を回転駆動しながら送り装置で送って被削材1へ切り込みを入れることにより行われる。
【0003】
被削材1への切り込み時には、通常、刃先部の冷却と切粉の排出のため環状溝13に冷却水が供給されるか、或いは圧縮空気源よりエアが供給され、前者は湿式、後者は乾式と称される。
【0004】
前述の湿式及び乾式のいずれのタイプのものにおいても、刃先部のチップが目詰まりし、これにより穿孔途中で切れ止むことがある。この問題を解消し、穿孔時の切れ味を維持するために穿孔溝内にアルミナ等の研磨剤を供給して刃先部のドレッシング作用を促すことが行われ、研磨剤の供給方法には、穿孔開始から終了まで研磨剤を連続して供給するものと、研磨剤の供給を間欠的に行うものとがある。特許文献1には、研磨剤の供給をタイマーにより設定された一定時間間欠的に行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−104522号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述する従来の研磨剤の供給方法では、研磨剤の供給装置が別に必要であり、またコアドリルのシャフトは研磨剤導入用のスイベルジョイントを設けねばならず、コアドリルを含む全体の装置の構造が複雑である。
【0007】
本発明は、研磨剤の供給装置が不要であり、またシャフトに研磨剤供給用のスイベルジョイントを設けなくてもよく、目詰まり等により回転速度が低下したときの所要時に研磨剤を供給することができるコアビットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係わる発明は、モータにより回転駆動されるコアドリルのシャフトに取外し可能に取着される連結部を上端に備え、ダイヤモンド砥粒のチップよりなる刃先部を下端に備えたカップ状のコアビットを有し、該コアビットを縦向きにした状態で被削材を穿孔する際に用いるコアドリルの前記コアビットであって、前記連結部の周りの底壁には、該底壁を上下に貫通する、少なくとも一つの研磨剤の供給孔が形成されると共に、該供給孔より外周側の底壁上には刃先部を構成するチップに使用されるダイヤモンド砥粒の外径の1/3以下の粒径の研磨剤が貯留される貯留部が設けられることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係わる発明は、請求項1に係わる発明の前記貯留部が下側部をコアビット上端部に挿入して装着され、上側部を前記底壁より上方に突出させたゴムまたは樹脂製の弾性材よりなるエンドレスな環状のバンドと、供給孔より外周側の底壁上面により構成されることを特徴とし、
請求項3に係わる発明は、請求項2に係わる発明において、環状のバンドは、コアビット上端部に挿入される下側部の径方向のサイズが小であり、底壁より突出する上側部の径方向のサイズが大である段付状をなすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係わる発明によると、コアビットが回転する穿孔時においては、研磨剤は遠心力の作用により外周側に追いやられて貯留部に拘束され、供給孔を通してコアビット内に供給されることはないが、目詰まり等によりコアビットの回転速度が低下すると、遠心力が低下し、貯留部内の研磨剤が供給孔を通してコアビット内にこぼれ落ちるようになる。こぼれ落ちる量はコアビットの回転数が低下し、遠心力が小さくなる程多くなる。本発明は以上のように、コアビットの底壁に研磨剤の供給孔を形成し、貯留部を設けるだけであるから、従来のような研磨剤の供給装置が必要でなく、またシャフトに研磨剤を導入するスイベルジョイントを設ける必要もないこと、穿孔中、コアビットの回転数が低下したとき、回転数の低下量に応じた量の研磨剤が供給できること等の効果を有する。なお、本発明に係るコアビットは乾式のコアドリルにも、湿式のコアドリルにも使用可能である。
【0011】
請求項2に係わる発明によると、環状のバンドの下側部をコアビット上端部に挿入して装着するだけで、貯留部を容易に形成することができる。
【0012】
請求項3に係わる発明によると、供給孔より外周側の底壁上面の面積が0であるか、小さくても貯留部のスペースを十分に大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】コアドリルの正面図。
【図2】本発明に係わるコアビットの研磨剤供給態様を示す断面図。
【図3】本発明に係わる別のコアビットの研磨剤供給態様を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態のコアビットについて図面により説明する。
図2は、被削材1穿孔時の本発明に係わるコアビット21を示すもので、該コアビット21は図1に示すコアビット12と同様、図示しないコアドリルのシャフト8に取外し可能に取着される連結部23を上端に備え、ダイヤモンド砥粒のチップよりなる刃先部24を下端に備えたカップ状をなしている。そして連結部23の外周側の底壁25には、該底壁25を上下に貫通する研磨剤の供給孔26が好ましくは図示するように複数形成され、これら複数の供給孔26は、より好ましくは同一円周上に周方向に等間隔で形成されている。
【0015】
図中、27は、ゴム又は樹脂製の弾力材よりなる環状のバンドで、円形にしたときの内径はコアビット21の外径と同一か、該外径より若干小さくなっており、コアビット上端部に装着する際には、バンド下側部を径方向に若干押し拡げた状態で装着する。装着状態でバンド27は上側部が底壁25より上方に突出し、該突出部分と、供給孔26より外周側の底壁上面により貯留部28が形成され、該貯留部28に刃先部を構成するチップに使用されるダイヤモンド砥粒の外径の1/3以下の粒径の例えばアルミナよりなる研磨剤29が貯留されるようになっている。
【0016】
本実施形態のコアビットによると、穿孔中、目詰まり等によりコアビットの回転速度が低下すると、遠心力の低下により貯留部内の研磨剤29が図示するように供給孔26を通してコアビット内にこぼれ落ちるようになる。
なお、本実施形態のコアビット21は、乾式のコアドリルにも、湿式のコアドリルにも使用可能である。
【0017】
図3は、図2に示すバンド27に代え、下側部31aの径方向のサイズが小であり、上側部31bの径方向のサイズが大である段付状の環状のバンド31を用い、該バンド31の下側部31aをコアビット32の上側部に装着した例を示すもので、貯留スペースの大なる貯留部23がバンド31と供給孔26外周側のコアビット底壁の上面とで形成され、該貯留部32に前述する研磨剤29と同じ研磨剤29が貯留されるようになっている。
【0018】
本実施形態のコアビット3によると、図示するように供給孔26の外周側の底壁25にスペース上の余裕がなくても、貯留部33を充分に広く取ることができる。貯留部33に貯留された研磨剤29は、前記実施形態と同様、コアビット32の回転数の低下により供給孔34を通してコアビット内にこぼれ落ちるようになる。
【符号の説明】
【0019】
1・・被削材
8・・シャフト
21、32・・コアビット
23・・連結部
24・・刃先部
25・・底壁
26、34・・供給孔
27、31・・環状のバンド
28、33・・貯留部
29・・研磨剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータにより回転駆動されるコアドリルのシャフトに取外し可能に取着される連結部を上端に備え、ダイヤモンド砥粒のチップよりなる刃先部を下端に備えたカップ状のコアビットを有し、該コアビットを縦向きにした状態で被削材を穿孔する際に用いるコアドリルの前記コアビットであって、前記連結部の周りの底壁には、該底壁を上下に貫通する、少なくとも一つの研磨剤の供給孔が形成されると共に、該供給孔より外周側の底壁上には刃先部を構成するチップに使用されるダイヤモンド砥粒の外径の1/3以下の粒径の研磨剤が貯留される貯留部が設けられることを特徴とするコアビット。
【請求項2】
前記貯留部が下側部をコアビット上端部に挿入して装着され、上側部を前記底壁より上方に突出させたゴムまたは樹脂製の弾性材よりなるエンドレスな環状のバンドと、供給孔より外周側の底壁上面により構成されることを特徴とする請求項1記載のコアビット。
【請求項3】
前記環状のバンドは、コアビット上端部に挿入される下側部の径方向のサイズが小であり、底壁より突出する上側部の径方向のサイズが大である段付状をなすことを特徴とする請求項2記載のコアビット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−111164(P2012−111164A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263159(P2010−263159)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000165424)株式会社コンセック (30)
【Fターム(参考)】