説明

ココア飲料

【課題】低カロリーのココア飲料であっても、呈味、食感などの点で、従来のココア飲料に比べて遜色のないものを提供する。
【解決手段】ココア飲料の原料に、ココアバター含有量の異なる2種類以上のココアパウダーをココアパウダー全体として0.50〜2.5質量%の含有量で配合し、甘味料としてアセスルファムカリウム、スクラロース、及びエリスリトールを、それぞれ特定の割合で配合する。ココアパウダーとしては、ココアバター含有量が22〜24質量%の高脂肪ココアパウダーと、ココアバター含有量が10〜12質量%の低脂肪ココアパウダーとを、2:8〜8:2の質量比で含むことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ココアパウダーを配合してなるココア飲料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ココア飲料は、カカオ豆から調製されるカカオマスや、そのカカオマスからココアバターの一部を除いたココアパウダーを、砂糖等の甘味料、乳原料、香料等とともに水に溶解して調整した飲料であり、飲料缶等の容器に封入して販売されている。ココア飲料は、消費者がココア粉末等を水に溶かす手間をかけることなく、そのまま飲用することができるので、消費者に広く受け入れられている。
【0003】
通常のココア飲料は、原料として、カカオバター含量8〜25質量%程度のココアパウダーを配合して調製される。このココアパウダーは醗酵させたカカオ豆を原料とするものであり、ココア飲料の呈味、食感、ココアの香りの芳醇さ、ココア特有のボディ感などは、主に、このココアパウダーに由来するといってもよい。また、甘味料も、ココア飲料の甘さの後切れや、ボディ感などに影響を与える重要な要素であるが、一般には砂糖(ショ糖)が用いられている。
【0004】
一方で、近年の飲料市場は、スポーツ飲料やコーヒー飲料にみられるように、消費者の健康志向の背景から、甘味料として砂糖(ショ糖)を配合するかわりに高甘味度甘味料、糖アルコールやオリゴ糖などを用いて甘味を付与する、低カロリー化(低糖質化、微糖化などを含む。)が拡がりをみせている。これに関連して、下記特許文献1には、ノンカロリーの特性を維持しながら質感のある良好な甘味質を有し、しかもフレーバーの立ちが早く、フレーバーが強く感じられる甘味組成物として、エリスリトール及び2種類以上の高甘味度甘味料を含有する甘味組成物が記載されている。そして、その高甘味度甘味料はアセスルファムカリウム及びスクラロースの組合せであってもよいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−321114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ココア飲料に関しても低カロリー化の要請はあるが、ココア飲料は、芳醇なカカオの香り、クリームや牛乳のまろやかな口当たり、程よい甘さ、濃厚なコクなどがおいしさの構成要素となっており、低カロリー化と両立することが困難であった。すなわち、スポーツ飲料やコーヒー飲料などでは、それらの飲料のあっさりした飲み口やキレなどと、甘味付与とを両立させることが容易であるが、一方、ココア飲料では、低カロリー化のために高甘味度甘味料、糖アルコールやオリゴ糖などを用いると、ココア飲料に求められる濃厚さが損なわれたり、ココアの香りが不足したり、ココアの呈味が薄っぺらくなったりしてしまうという問題があった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、甘味料を含有してなる低カロリーのココア飲料であっても、呈味、食感などの点で、従来のココア飲料に比べて遜色がなく、芳醇な香りとしっかりとした呈味感のある、低カロリーのココア飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究した結果、ココア飲料の原料に、ココアバター含有量の異なる2種類以上のココアパウダーを配合し、なお且つ、アセスルファムカリウム、スクラロース、及びエリスリトールを特定の割合で含む甘味料を配合することによって、低カロリーであっても、呈味、食感、ココアの香りの芳醇さ、ココア特有のボディ感、ココア飲料の甘さの後切れなどが良好なココア飲料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の1つは、ココアバター含有量の異なる2種類以上のココアパウダーと、アセスルファムカリウム、スクラロース、及びエリスリトールを含む甘味料とを含有し、前記ココアバター含有量の異なる2種類以上のココアパウダーはココアパウダー全体として0.50〜2.5質量%の含有量で配合され、前記アセスルファムカリウム、前記スクラロース、及び前記エリスリトールは、それぞれ0.0060〜0.034質量%、0.002〜0.0113質量%、及び0.2〜5.0質量%の含有量で配合されていることを特徴とするココア飲料を提供する。
【0010】
上記本発明のココア飲料によれば、ココアバター含有量の異なる2種類以上のココアパウダーをココアパウダー全体として0.50〜2.5質量%の含有量で配合しているので、ココアの香りが強く、ココアバター由来の苦味やザラツキが少なく、喉越しが良好なココア飲料となる。更に、アセスルファムカリウム、スクラロース、及びエリスリトールが、それぞれ0.0060〜0.034質量%、0.002〜0.0113質量%、及び0.2〜5.0質量%の含有量で配合されているので、甘さの質、後切れがよく、コクや厚み感があるココア飲料となる。
【0011】
また、本発明のもう1つは、ココアバター含有量の異なる2種類以上のココアパウダーと、アセスルファムカリウム、スクラロース、及びエリスリトールを含む甘味料とを含有し、前記ココアバター含有量の異なる2種類以上のココアパウダーはココアパウダー全体として0.50〜2.5質量%の含有量で配合され、前記甘味料は2.0〜30質量%濃度のショ糖水溶液と同等の甘味度になる量で配合され、該アセスルファムカリウム、該スクラロース、及び該エリスリトールは、それぞれ0.12〜14.41:0.040〜5.20:81.53〜99.84の濃度比で配合されていることを特徴とするココア飲料を提供する。
【0012】
上記本発明のココア飲料によれば、ココアバター含有量の異なる2種類以上のココアパウダーをココアパウダー全体として0.50〜2.5質量%の含有量で配合しているので、ココアの香りが強く、ココアバター由来の苦味やザラツキが少なく、喉越しが良好なココア飲料となる。更に、アセスルファムカリウム、スクラロース、及びエリスリトールを含む甘味料が、2.0〜30質量%濃度のショ糖水溶液と同等の甘味度になる量で配合され、アセスルファムカリウム、スクラロース、及びエリスリトールが、それぞれ0.12〜14.41:0.040〜5.20:81.53〜99.84の濃度比で配合されているので、甘さの質、後切れがよく、コクや厚み感があるココア飲料となる。
【0013】
本発明のココア飲料においては、ココアバター含有量が0.062〜0.54質量%とされていることが好ましい。これによれば、しっかりとしたココア感を付与することができる。
【0014】
本発明のココア飲料においては、前記ココアバター含有量の異なる2種類以上のココアパウダーは、ココアバター含有量が22〜24質量%の高脂肪ココアパウダーと、ココアバター含有量が10〜12質量%の低脂肪ココアパウダーとを、2:8〜8:2の質量比で含むことが好ましい。これによれば、高脂肪ココアパウダーが芳醇な香りを付与し、低脂肪ココアパウダーが呈味感を付与するので、両者の特性がバランスよく生かされたココア飲料となる。
【0015】
本発明のココア飲料においては、飲料100mlあたりのカロリーが20kcal以下とされていることが好ましい。
【0016】
本発明のココア飲料は、加温状態で販売されるものであることが好ましい。これによれば、前記甘味料を用いたことにより、加温状態で保管されても、品質の劣化が少なく、ココア特有のボディ感を有しつつも、すっきりとした後味を有するココア飲料を提供することができる。
【0017】
本発明のココア飲料においては、食塩を0.05〜0.3質量%の含有量で含有することが好ましい。これによれば、甘さをひきたてて、すっきりとした後味にすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のココア飲料によれば、甘味料を含有してなる低カロリーのココア飲料であっても、呈味、食感などの点で、従来のココア飲料に比べて遜色がなく、芳醇な香りとしっかりとした呈味感のある、低カロリーのココア飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明において、ココアパウダーとは、カカオマスから脂肪分であるココアバターの一部を除いて調製されたココアパウダーである。通常、ココアパウダーと称されるのもには、
8〜25質量%程度のココアバターを含有するものが多いが、本発明におけるココアパウダーのココアバター含有量はこれに限るものではない。
【0020】
本発明において用いられるアセスルファムカリウム(Acesulfame Potassium)は、ショ糖のおよそ200倍の甘味度を有する合成甘味料である。飲食品の甘味料として一般に用いられ、市販もされているので、そのような市販品を用いればよい。なお、甘味度とは、ショ糖溶液に対する甘さの程度を表す指標である。例えば、ショ糖濃度1質量%の水溶液の甘さを1(甘味度1)としたとき、200分の1の濃度でその甘さと同程度の甘さを呈する甘味成分の甘味度は200となる。
【0021】
本発明において用いられるスクラロース(Sucralose)は、ショ糖のおよそ600倍の甘味度を有する合成甘味料である。飲食品の甘味料として一般に用いられ、市販もされているので、そのような市販品を用いればよい。
【0022】
本発明において用いられるエリスリトール(Erythritol)は、ショ糖のおよそ0.8倍の甘味度を有する天然糖アルコールタイプの甘味料である。飲食品の添加物として一般に用いられ、市販もされているので、そのような市販品を用いればよい。
【0023】
本発明において用いられる上記アセスルファムカリウム、スクラロース、エリスリトールは、熱に対して安定であるので、本発明のココア飲料が加熱殺菌処理される場合や、ホットベンダーとして加温状態で販売される場合にも好都合である。
【0024】
本発明のココア飲料は、上記ココアパウダーであってココアバター含有量の異なる2種類以上のココアパウダーが、ココアパウダー全体として0.50〜2.5質量%の含有量で配合されている。また、ココアパウダー全体として1.0〜2.0質量%の含有量で配合されていることがより好ましく、1.2〜1.8質量%の含有量で配合されていることが最も好ましい。
【0025】
本発明のココア飲料には、上記アセスルファムカリウム、上記スクラロース、及び上記エリスリトールを含む甘味料が配合される。その配合の態様としては下記に示すように、ココア飲料全体に対するそれぞれの濃度で規定することができる。あるいはまた、それぞれの濃度比とココア飲料全体の甘味度で規定することができる。
【0026】
すなわち、本発明のココア飲料における甘味料の配合の態様を、上記アセスルファムカリウム、上記スクラロース、及び上記エリスリトールの、ココア飲料全体に対するそれぞれの濃度で規定する場合には、上記アセスルファムカリウム、上記スクラロース、及び上記エリスリトールは、それぞれ0.0060〜0.034質量%、0.002〜0.0113質量%、及び0.2〜5.0質量%の含有量で配合される。この場合、上記アセスルファムカリウム、上記スクラロース、及び上記エリスリトールは、それぞれ0.01〜0.03質量%、0.0033〜0.01質量%、及び0.5〜3.0質量%の含有量で配合されていることがより好ましく、それぞれ0.015〜0.025質量%、0.005〜0.008質量%、及び0.6〜2.5質量%の含有量で配合されていることが最も好ましい。
【0027】
他方、本発明のココア飲料における甘味料の配合の態様を、上記アセスルファムカリウム、上記スクラロース、及び上記エリスリトールのそれぞれの濃度比と、ココア飲料全体の甘味度で規定する場合には、上記アセスルファムカリウム、上記スクラロース、及び上記エリスリトールを含む甘味料は、2.0〜30質量%濃度のショ糖水溶液と同等の甘味度になる量で配合される。この場合、5.0〜25質量%濃度のショ糖水溶液と同等の甘味度になる量で配合されていることがより好ましく、5.0〜20質量%濃度のショ糖水溶液と同等の甘味度になる量で配合されていることが最も好ましい。また、上記アセスルファムカリウム、上記スクラロース、及び上記エリスリトールは、それぞれ0.12〜14.41:0.040〜5.20:81.53〜99.84の濃度比で配合される。この場合、上記アセスルファムカリウム、上記スクラロース、及び上記エリスリトールは、それぞれ0.33〜5.63:0.10〜1.92:92.59〜99.56の濃度比で配合されていることがより好ましく、それぞれ0.59〜3.97:0.19〜1.28:94.78〜99.21の濃度比で配合されていることが最も好ましい。
【0028】
本発明のココア飲料においては、上記の構成を満たす限りにおいて、上記アセスルファムカリウム、上記スクラロース、及び上記エリスリトールを含む甘味料以外にも、ショ糖等の他の甘味料を配合することもできる。この場合、ココア飲料が2.0〜30質量%濃度のショ糖水溶液と同等の甘味度になる量で配合されることが好ましく、5.0〜25質量%濃度のショ糖水溶液と同等の甘味度になる量で配合されていることがより好ましく、5.0〜20質量%濃度のショ糖水溶液と同等の甘味度になる量で配合されていることが最も好ましい。
【0029】
また、本発明のココア飲料においては、ショ糖を配合しないことも好ましい。これによれば、より低カロリーのココア飲料を提供できる。また、ショ糖の摂取過剰を予防することができ、近年の健康志向のニーズにも応えることができる。
【0030】
本発明のココア飲料は、上記ココアパウダー、上記アセスルファムカリウム、上記スクラロース、及び上記エリスリトールを、ココア飲料の配合成分として、上記の配合及び含有量で用いる以外は、通常のココア飲料の調製方法に従って得ることができる。
【0031】
本発明のココア飲料においては、その副原料として、通常のココア飲料に使用されるもの、すなわち、乳原料、安定剤、乳化剤、pH調整剤、香料、調味料等を、必要に応じて選択して用いることができる。例えば、乳原料として、市販の牛乳、練乳、加糖脱脂練乳、全粉乳、又は脱脂粉乳等、安定剤として、セルロース、又はキサンタンガム等の増粘剤等、乳化剤として、ショ糖脂肪酸エステル、又はポリグリセリン脂肪酸エステル等、pH調整剤として、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、リン酸、又はこれらの塩類等、調味料として、食塩等を、必要に応じて選択して用いることができる。
【0032】
本発明のココア飲料においては、ココアバター含有量が0.062〜0.54質量%とされていることが好ましく、ココアバター含有量が0.124〜0.432質量%とされていることがより好ましい。
【0033】
本発明のココア飲料においては、後述する実施例でも示されるように、ココアバター含有量の異なる2種類以上のココアパウダーとして、高脂肪ココアパウダーと低脂肪ココアパウダーとを配合することが好ましい。ここで、高脂肪ココアパウダーとは、通常、ココアバター含有量が22〜24質量%程度のココアパウダーをいい、低脂肪ココアパウダーとは、通常、ココアバター含有量が10〜12質量%程度のココアパウダーをいう。本発明においては、例えば、ココアバター含有量の異なる2種類以上のココアパウダーとして、ココアバター含有量が22〜24質量%の高脂肪ココアパウダーと、ココアバター含有量が10〜12質量%の低脂肪ココアパウダーとを、2:8〜8:2の質量比で配合するようにすることが好ましい。
【0034】
本発明のココア飲料においては、飲料100mlあたりのカロリーが20kcal以下とされていることが好ましい。
【0035】
本発明のココア飲料においては、後述する実施例でも示されるように、食塩を0.05〜0.3質量%の含有量で含有することが好ましい。その場合、上記アセスルファムカリウム、上記スクラロース、及び上記エリスリトールを含む甘味料は、2.0〜30質量%濃度のショ糖水溶液と同等の甘味度になる量で配合されていることが好ましい。また、食塩を0.08〜0.25質量%の含有量で含有し、上記アセスルファムカリウム、上記スクラロース、及び上記エリスリトールを含む甘味料は、5.0〜25質量%濃度のショ糖水溶液と同等の甘味度になる量で配合されていることがより好ましい。更に、食塩を0.10〜0.20質量%の含有量で含有し、上記アセスルファムカリウム、上記スクラロース、及び上記エリスリトールを含む甘味料は、5.0〜20質量%濃度のショ糖水溶液と同等の甘味度になる量で配合されていることが最も好ましい。
【0036】
本発明のココア飲料は、食品衛生上必要とされる殺菌処理が施されて、密封容器に封入されて最終消費者へ提供することができる。そのためには、例えば、通常用いられる製造技術に従って、缶又はガラス瓶入りココア飲料として製造したものをレトルト殺菌してもよく、また、殺菌処理したものを、缶、ガラス瓶、紙パック、ペットボトル等に無菌充填することもできる。
【0037】
本発明のココア飲料は、冷たい飲料として最終消費者へ提供されてもよく、また、いわゆるホットベンダーとして50〜80℃の加温状態で提供されてもよい。本発明のココア飲料は、熱変質しにくい材料を用いているので、特にホットベンダーなどの加温状態で販売される用途に適している。
【実施例】
【0038】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0039】
<試験例1>
下記表1に示す配合でココア飲料を調製した。
【0040】
【表1】


【0041】
その際、下記表2に示すように、その原料となるココアパウダーとして、ココアバター含有量が22〜24質量%の高脂肪ココアパウダー(表中、「ココアパウダーH」と表す。以下同様。)と、ココアバター含有量が10〜12質量%の低脂肪ココアパウダー(表中、「ココアパウダーL」と表す。以下同様。)とを用い、それらの配合を代えて、低脂肪ココアパウダーと高脂肪ココアパウダーとを併用する効果について調べた。
【0042】
【表2】


【0043】
官能評価試験では、上記のように調製した例A1〜A3のココア飲料を6名のパネラーに試飲してもらい、(1)「ココアの香りが強いと思う順に並べて下さい」、(2)「苦味(焦げ臭)が強いと思う順に並べて下さい」、(3)「ザラツキが強いと思う順に並べて下さい」、(4)「飲みやすいと思う順に並べて下さい」との質問をし、評価してもらった。また、上記のように調製した例B1〜B3、又は例C1〜C3のココア飲料についても、それぞれ同様に評価を行った。下記表3には、比較したココア飲料のなかで、各評価項目について、1番目に該当すると評価した者の人数について、その結果をまとめた。
【0044】
【表3】


【0045】
その結果、ココアパウダーの含有量が低い場合において(0.5質量%、例A1〜A3)、低脂肪ココアパウダーのみを含有する例A1では、苦味、ザラツキを強く感じる傾向にあった。一方、高脂肪ココアパウダーと低脂肪ココアパウダーを併用した例A2では、ココアの香りが豊かであり、飲みやすく、好まれる傾向にあった。
【0046】
ココアパウダーの含有量が増加すると(2.5質量%、例B1〜B3)、低脂肪ココアパウダーのみを含有する例B1では、苦味をより強く感じる傾向にあった。高脂肪ココアパウダーを併用することによって、その苦味が弱くなって、飲みやすくなり、ココアの香りも強くなった(例B2)。
【0047】
ココアパウダーの含有量がさらに増加すると(3.8質量%、例C1〜C3)、全体に意見が割れ、低脂肪ココアパウダーと高脂肪ココアパウダーとを併用する効果は、明瞭ではなかった。
【0048】
<試験例2>
下記表4に示す配合でココア飲料を調製した。
【0049】
【表4】


【0050】
その際、下記表5に示すようにその原料となるココアパウダーの配合を代えて、試験例1と同様にして、低脂肪ココアパウダーと高脂肪ココアパウダーとを併用する効果について調べた。
【0051】
【表5】


【0052】
官能評価試験では、上記のように調製した例A4〜A7、例B4〜B7のココア飲料を6名のパネラーに試飲してもらい、試験例1と同様にして評価した。その結果を下記表6にまとめた。
【0053】
【表6】


【0054】
その結果、ココアパウダーの含有量が低い場合において(0.5質量%、例A4〜A7)、低脂肪ココアパウダーの含有割合が高い例A4では、苦味を強く感じる傾向にあった。一方、高脂肪ココアパウダーと低脂肪ココアパウダーを併用した例A5、6では、ココアの香りが豊かであり、飲みやすく、好まれる傾向にあった。
【0055】
ココアパウダーの含有量が増加すると(2.5質量%、例B4〜B7)、低脂肪ココアパウダーのみを含有する例B1において、苦味、ザラツキ強く感じる傾向にあった。高脂肪ココアパウダーを併用することによって、その苦味やザラツキが弱くなって、飲みやすくなった(例B5、6)。
【0056】
<試験例3>
下記表7に示す配合でココア飲料を調製した。その際、その原料として用いるココアパウダーとして、上記試験例1、2では用いなかった銘柄の異なる高脂肪ココアパウダーの2種(表中、「ココアパウダーH1」又は「ココアパウダーH2」と表す。以下同様。)と、上記試験例1、2では用いなかった銘柄の異なる低脂肪ココアパウダーの1種(表中、「ココアパウダーL1」と表す。以下同様。)とを新たに加えた。
【0057】
【表7】


【0058】
下記表8に示すように、それらココアバターの配合を代えて、試験例1と同様に、低脂肪ココアパウダーと高脂肪ココアパウダーとを併用する効果について調べた。
【0059】
【表8】


【0060】
官能評価試験では、上記のように調製した例D1〜D12のココア飲料を6名のパネラーに試飲してもらい、試験例1と同様にして評価した。その結果を下記表9にまとめた。
【0061】
【表9】


【0062】
その結果、ココアパウダーの種類を変えても、上記試験例1、2と同様に、低脂肪ココアパウダーのみでは苦味、ザラツキが強く感じられ、高脂肪ココアパウダーを併用すると、その苦味やザラツキが弱くなって、飲みやすくなり、ココアの香りも強くなる、という傾向が認められた。
【0063】
以上の試験例1〜3の結果を、下記表10にまとめた。なお、例A1〜7、例D1〜12については、パネラーに甘さについてコメントをもらい、その代表的意見をまとめて示した。
【0064】
【表10】


【0065】
これらの結果から、香りが豊かな高脂肪ココアパウダーと呈味に効果のある低脂肪ココアパウダーを併用することで、低カロリーであっても、呈味、食感、ココアの香りの芳醇さなどが良好なココア飲料が得られることが明らかとなった。
【0066】
<試験例4>
下記表11に示す配合でココア飲料を調製した。
【0067】
【表11】


【0068】
その際、下記表12に示すように、その原料となる甘味料として、ショ糖と、エリスリトールと、スクラロースと、アセスルファムカリウムとを用い、それらの配合を、甘味度(12.8)が同じになるように代えて、甘味料の種類による影響について調べた。
【0069】
【表12】


【0070】
官能評価試験では、上記のように調製した例E1〜E5のココア飲料を6名のパネラーに試飲してもらい、(1)「おいしいと思う順に並べて下さい。」、(2)「甘さの質が良いと思う順に並べてください」、(3)「後切れが良いと思う順に並べてください」、(4)「ココアらしい濃厚感が強いと思う順に並べてください」、(5)「例F1(ショ糖含有)に最も近いと思うものを例E2〜E5の中から選んでください」との質問をし、評価してもらった。下記表13には、比較したココア飲料のなかで、各評価項目について、1番目又は2番目に該当すると評価した者の人数について、その結果をまとめた。
【0071】
【表13】


【0072】
その結果、ショ糖を配合した例E1のココア飲料はおいしさ、甘さの質、ココアらしい濃厚感ともに良好であった。そして、そのショ糖に一番近い甘味を与えるのはエリスリトールと、スクラロースと、アセスルファムカリウムとをブレンドして用いた例E5のココア飲料であった。
【0073】
<試験例5>
下記表14に示す配合でココア飲料を調製した。
【0074】
【表14】


【0075】
その際、下記表15に示すように、その原料となる甘味料として、アセスルファムカリウムと、スクラロースと、エリスリトールとを用い、それらの配合を、甘味度(約8)が同じになるように代えて、甘味料の種類による影響について調べた。
【0076】
【表15】


【0077】
官能評価試験では、上記のように調製した例F1〜F14のココア飲料を6名のパネラーに試飲してもらい、(1)「ココアのコク・厚み」、(2)「甘味の質」、(3)「全体的な好み」のそれぞれについて、好ましいほうから5〜1点で、点数を付けてもらった。そして、その平均の結果を上記表15にまとめて示した。また、パネラーに甘さについてコメントをもらい、その代表的意見を、同じく上記表15にまとめて示した。
【0078】
その結果、以下の傾向が認められた。
(アセスルファムカリウムとスクラロースの配合割合による傾向)
・アセスルファムカリウムが多いと、苦味・塩味が強くなる。
・スクラロースが多いと、後切れが悪く、甘味がダラダラと続く。
・アセスルファムカリウムとスクラロースを併用することによって、ショ糖に近い甘味とコクを付与できる。また、程よい苦味と塩味もココアにマッチする。
(アセスルファムカリウムとスクラロースとエリスリトールの配合割合による傾向)
・エリスリトールの配合によって、アセスルファムカリウムとスクラロースの苦味・塩味・金属味が抑えられる。また、立ち上がりの甘味が強く、コクが出てくる。
・エリスリトールの含有量が増えすぎると、キレが良い分、水っぽく感じる。また、ココア様の苦味もマスクされてしまう。
【0079】
これらの結果から、アセスルファムカリウムとスクラロースとエリスリトールとをブレンドすることでショ糖に近い甘味を付与することができるが(試験例4)、その場合にも、各々の配合割合を適宜に選択することで、さらに良好なココア飲料が得られることが明らかとなった。
【0080】
<試験例6>
下記表16に示す配合でココア飲料を調製した。
【0081】
【表16】


【0082】
その際、下記表17に示すように、その原料となるショ糖と精製塩の配合を代えて、精製塩による塩味が、ココア飲料の甘味にどのような影響を与えるかについて調べた。
【0083】
【表17】


【0084】
官能評価試験では、上記のように調製した例G1〜G12のココア飲料を6名のパネラーに試飲してもらい、甘味や塩味について、パネラーにコメントをもらい、その代表的意見を、上記表17にまとめて示した。
【0085】
その結果、ショ糖の含有量が2〜30質量%であって、食塩の濃度が0.05〜0.3%であるときに、ココア飲料の甘さをひきたてて、すっきりとした後味にすることができることが明らかとなった。
【0086】
<試験例7>
上記試験例6で示された食塩の効果について、甘味料として、ショ糖のかわりに、アセスルファムカリウムとスクラロースとエリスリトールとをブレンドしたものを用いて、調べた。すなわち、下記表18に示す配合でココア飲料を調製した。
【0087】
【表18】


【0088】
その際、下記表19に示すように、その原料となる精製塩の配合を代えて、精製塩による塩味が、ココア飲料の甘味にどのような影響を与えるかについて調べた。
【0089】
【表19】


【0090】
官能評価試験では、上記のように調製した例H1〜H4のココア飲料を6名のパネラーに試飲してもらい、甘味や塩味について、パネラーにコメントをもらい、その代表的意見を、上記表19にまとめて示した。
【0091】
その結果、上記試験例7の結果と同様に、食塩の濃度が0.05〜0.3%であるときに、塩味が強すぎることなく、ココア飲料の甘さをひきたてることができることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ココアバター含有量の異なる2種類以上のココアパウダーと、アセスルファムカリウム、スクラロース、及びエリスリトールを含む甘味料とを含有し、前記ココアバター含有量の異なる2種類以上のココアパウダーはココアパウダー全体として0.50〜2.5質量%の含有量で配合され、前記アセスルファムカリウム、前記スクラロース、及び前記エリスリトールは、それぞれ0.0060〜0.034質量%、0.002〜0.0113質量%、及び0.2〜5.0質量%の含有量で配合されていることを特徴とするココア飲料。
【請求項2】
ココアバター含有量の異なる2種類以上のココアパウダーと、アセスルファムカリウム、スクラロース、及びエリスリトールを含む甘味料とを含有し、前記ココアバター含有量の異なる2種類以上のココアパウダーはココアパウダー全体として0.50〜2.5質量%の含有量で配合され、前記甘味料は2.0〜30質量%濃度のショ糖水溶液と同等の甘味度になる量で配合され、該アセスルファムカリウム、該スクラロース、及び該エリスリトールは、それぞれ0.12〜14.41:0.040〜5.20:81.53〜99.84の濃度比で配合されていることを特徴とするココア飲料。
【請求項3】
ココアバター含有量が0.062〜0.54質量%とされている請求項1又は2記載のココア飲料。
【請求項4】
前記ココアバター含有量の異なる2種類以上のココアパウダーは、ココアバター含有量が22〜24質量%の高脂肪ココアパウダーと、ココアバター含有量が10〜12質量%の低脂肪ココアパウダーとを、2:8〜8:2の質量比で含む、請求項1〜3のいずれか1つに記載のココア飲料。
【請求項5】
飲料100mlあたりのカロリーが20kcal以下とされている請求項1〜4のいずれか1つに記載のココア飲料。
【請求項6】
加温状態で販売されるものである請求項1〜5のいずれか1つに記載のココア飲料。
【請求項7】
食塩を0.05〜0.3質量%の含有量で含有する請求項1〜6のいずれか1つに記載のココア飲料。

【公開番号】特開2011−19441(P2011−19441A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166484(P2009−166484)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000006116)森永製菓株式会社 (130)
【Fターム(参考)】