説明

ココナッツミルク含有飲食品及びその風味向上方法

【課題】風味が改良されたココナッツミルク含有飲食品を提供する。
【解決手段】スクラロース、グリセリン脂肪酸エステル、カゼインナトリウム、キサンタンガム及び10%重曹溶液を80℃の水に投入し、80℃10分間攪拌溶解後、ココナッツクリーム、色素を添加し、70℃にて、第一段階 9.8×106Pa(100kgf/cm2)、第二段階 4.7×106Pa(50kgf/cm2)の計150kg/cm2の計150kg/cm2の圧力でホモゲナイズする。ホモゲナイズ後、容器充填し、121℃20分間加熱殺菌を行い、風味の改良されたココナッツミルク飲料を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はココナッツミルクを含有する飲料等の飲食品に関する。詳細には、ココナッツミルクを含み、長期間安定に保存できる飲料、デザート、スープ、ソース、クリームなどのココナッツミルク含有飲食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、南方系植物のココナッツ(ココヤシ)を原料とした飲食品が開発されている。中でも、果実の胚乳(果肉)からココナッツミルクを、胚乳液(果汁液)からはココナッツウオーターを、そしてココナッツウオーターからはこれを発酵したナタデココなど、各種のココナッツ素材を使用した飲食品が挙げられ、この中で、飲料、デザート、スープ、ソース、クリーム等、広範囲に使用できるのがココナッツミルクである。
【0003】
ココヤシの果実内の白実を細砕し、圧縮して得た汁は、粗ココナッツミルクと称され、ココナッツミルク飲料の原料として種々の優れた特性を備えているが、様々な要因から、現段階では幅広い商品化には至っていない。その要因の主なものとして、製造工程中で粒子の沈殿を生じる、脂質成分が分離して均一な乳濁液が得られない、及びココナッツミルク自体の独特臭などの欠点が挙げられるからである。
【0004】
この様な欠点を排除するために様々な研究が行われ、グリセリン脂肪酸エステル及びカゼインナトリウムを含有することにより改良を行ったココナッツミルク含有飲食品(特許文献1)を見い出し、これらの問題については解消されている。
【0005】
しかし、ココナッツミルク自体の独特臭を改良するための研究については、飲料のpHの幅を制限する以外、何ら検討されておらず、風味改良効果を有するココナッツミルクの開発が求められていた。
【特許文献1】特開2003-325147公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みて開発されたもので、風味が改良されたココナッツミルク含有飲食品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記従来技術の問題点に鑑み鋭意研究を重ねて行ったところ、ココナッツミルクにスクラロースを含有することにより、風味改良効果が得られることを見出した。また、ココナッツミルク含有飲食品の保存時における、酸化が原因と思われる酸味をもマスキングすることができることを見出して、本発明を完成した。
【0008】
本発明は、以下の態様を有する;
項1.スクラロースを含有することを特徴とするココナッツミルク含有飲食品。
項2. スクラロースの添加量が0.0005〜0.05質量%である、項1に記載のココナッツミルク含有飲食品。
項3. スクラロースを含有することを特徴とするココナッツミルク含有飲食品の風味向上方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、風味が改良されたココナッツミルク含有飲食品を提供できるようになった。更に、当該飲食品保存時の、酸化が原因と思われる酸味をもマスキングできるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係るココナッツミルク含有飲食品は、ココナッツミルクを含む飲食品であって、スクラロースを含有することを特徴とする。
【0011】
ココナッツミルクは、ココナッツ(ココヤシ)を原料とし、果実の胚乳(果肉)から白実を細砕、圧搾して得られる搾汁であり、油脂分10〜30%程度、固形分が数%〜30%であり、残余が水分であるような組成が一般的である。本発明では、ココナッツミルクに加えて、油脂や固形分が多いココナッツクリームや粉末化を行ったココナッツミルクパウダーを使用しても構わない。ココナッツミルクの含有量であるが、使用するココナッツミルクの種類や適用食品に応じて、適宜調整することができる。例えば、ココナッツミルク含有飲食品に対して、0.5〜50重量%を挙げることができ、ココナッツクリームを使用する際は、0.5〜50重量%、好ましくは、1〜20重量%、更に好ましくは5〜10重量%である。また、ココナッツミルクパウダーを使用する際は、0.1〜50重量%、好ましくは、1〜20重量%、更に好ましくは1〜13重量%である。
【0012】
本発明で言うココナッツミルク含有飲食品とは、ココナッツミルクを含む飲食品であれば特に限定はされないが、より好ましくは、飲料、デザート、スープ、ソース、クリームなどの飲食品に用いられる。
【0013】
本発明で使用するスクラロースは、ショ糖分子内のフルクトース残基の1、6位およびグルコース残基の4位の三つの水酸基を塩素分子で置換した構造をしており、ショ糖の約600倍の良質の甘味を示す高甘味度甘味料である。なお、本発明で使用するスクラロースは商業上入手可能であり、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のサンスイートシリーズなどを挙げることができる。
【0014】
本発明のココナッツミルク含有飲食品に対するスクラロースの添加量は、飲食品中のココナッツミルクの濃度や種類、製品の流通状態によって異なるが、通常、ココナッツミルク含有飲食品に対してスクラロース0.0005〜0.05質量%、好ましくは、0.001〜0.02質量%、更に好ましくは、0.002〜0.015質量%を例示することができる。これより配合量が少ないと所望の効果が望めず、これを越えるときは、添加剤特有の風味が強くなり、最終飲食品の風味に影響を与える場合があるからである。
【0015】
また、従来公知若しくは将来知られ得る甘味成分もスクラロースと併用することができ、具体的には、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ソーマチン、アリテーム、ネオテーム、カンゾウ抽出物(グリチルリチン)、サッカリン、サッカリンナトリウム、ステビア抽出物、ステビア末等の甘味成分を用いてもよい。
【0016】
本発明に係るココナッツミルク含有飲食品は、前述に加え、必要に応じて、グリセリン脂肪酸エステル及びカゼインナトリウムを任意に添加することができる。本発明で使用できるグリセリン脂肪酸エステルはコハク酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、酢酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド、蒸留モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル等であるが、好適にはコハク酸モノグリセリドを使用することができる。また、カゼインナトリウムは、一般的に飲料用の乳化剤や安定剤として使用されているものを使用することができる。
【0017】
本発明のココナッツミルク含有飲食品に対するグリセリン脂肪酸エステル及びカゼインナトリウムを配合量は、飲食品中のココナッツミルクの濃度や種類、製品の流通状態によって異なるが、通常、ココナッツミルク含有飲食品に対してグリセリン脂肪酸エステル0.005〜1質量%、好ましくは、0.05〜0.5質量%、カゼインナトリウム0.005〜0.3質量%、好ましくは、0.05〜0.2質量%を例示することができる。
【0018】
更に、本発明では、静菌作用を有する添加剤を添加しても良く、ショ糖脂肪酸エステルを添加することが好ましい。HLBが13以上で、構成飽和脂肪酸の炭素数を16〜22のものが好ましい。炭素数が16〜22の飽和脂肪酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸などが挙げられ、単独でも2種以上の混合物であってもよい。これらの中で特に好ましいのは、パルミチン酸及びステアリン酸である。
【0019】
本発明に係るココナッツミルク含有飲食品は、前述に加えて、必要に応じて、糖類、甘味料、牛乳、全粉乳、脱脂粉乳、生クリームなどの乳成分、卵黄、卵白等の卵加工品、酸味料、調味料、色素、香料、果汁、ピューレ、ココア粉末、チョコレート、保存料、エキス、糊料、pH調整剤、洋酒、ビタミン、その他ミネラル類等を任意に添加することができる。
【0020】
糖質としては、砂糖、果糖、ブドウ糖、水飴、還元水飴、はちみつ、異性化糖、転化糖、オリゴ糖(イソマルトオリゴ糖、還元キシロオリゴ糖、還元ゲンチオオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、テアンデオリゴ糖、大豆オリゴ糖等)、トレハロース、糖アルコール(マルチトール、エリスリトール、ソルビトール、パラチニット、キシリトール、ラクチトール等)、砂糖結合水飴(カップリングシュガー)等をあげることができる。
【0021】
更に、本発明は、ココナッツミルク含有飲食品の製造方法として、ココナッツミルク及びスクラロースを含有した状態で、均質化及び加熱殺菌を行うことを特徴とする。
【0022】
均質化は、一般的な方法を用いることができる。例えば、市販のホモミキサーやホモゲナイザーにて処理する方法を挙げることができるが、2段均質化を行うのが好ましい。均質化条件として、例えば2段均質化を行う場合、60〜80℃で、第一段階 9.8×106Pa(100kgf/cm2)、第二段階 4.7×106Pa(50kgf/cm2)の計14.7×106Pa(150kgf/cm2)を挙げることができる。
【0023】
加熱殺菌は、原材料を混合、均質化の後、容器に充填して密封したのち行うのが一般的である。加熱殺菌条件として、例えば、レトルト殺菌による場合は、121℃で30分間程度、チューブ殺菌の場合は、140℃で2〜5秒程度、またペットボトルに充填する場合には、135℃で15〜45秒程度のUHT殺菌を行うことが出来る。また、原材料を混合後、プレート式熱交換器に通して加熱殺菌した後、冷却、無菌充填する方法、などのいずれの方法によってもよい。このような加熱を行っても、風味が改良されたココナッツミルク含有食品を提供できるようになった。
【実施例】
【0024】
以下に、実施例を用いて本発明を更に詳しく説明する。ただし、これらの例は本発明を制限するものではない。特に記載のない限り「部」とは、「重量部」を意味するものとし、文中「*」印のものは、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製、文中「※」印は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標であることを示す。
【0025】
実施例1:ココナッツミルク飲料
スクラロース、グリセリン脂肪酸エステル、カゼインナトリウム、キサンタンガム及び10%重曹溶液を80℃の水に投入し、80℃10分間攪拌溶解後、ココナッツクリーム、色素を添加し、70℃にて、第一段階 9.8×106Pa(100kgf/cm2)、第二段階 4.7×106Pa(50kgf/cm2)の計150kg/cm2の計150kg/cm2の圧力でホモゲナイズした(イズミフードマシナリ社製、型式HV−OA−2−1.5S)。ホモゲナイズ後、容器充填し、121℃20分間加熱殺菌を行い、ココナッツミルク飲料を得た。比較例として、スクラロースの代わりに砂糖に置き換えた以外は実施例1と同様の処方、製法にてココナッツミルク飲料を作成した。
得られた実施例1のココナッツミルク飲料は、比較例1と比べて、ココナッツの風味が改良された美味しい飲み物となった。また、25℃にて一ヶ月保存後も風味の劣化が感じられなかった。それに対して比較例1については、保存時の酸化が原因と思われる酸味が感じられた。
【0026】

【0027】
実施例2:ココナッツミルク飲料
下記表の処方のうち、砂糖、スクラロース、飲料用複合製剤、10%重曹溶液を水に投入し、80℃10分間攪拌加熱溶解後、ココナッツミルクを添加し、70℃にて、第一段階 9.8×106Pa(100kgf/cm2)、第二段階 4.7×106Pa(50kgf/cm2)の計150kg/cm2の圧力でホモゲナイズした。ホモゲナイズ後、容器充填し、121℃20分間加熱殺菌を行い、ココナッツミルク飲料を得た。得られた実施例2のココナッツミルク飲料は、比較例2と比べて、ココナッツの風味が改良された美味しい飲み物となった。また、25℃にて一ヶ月保存後も風味の劣化が感じられなかった。それに対して比較例2については、保存後の酸化が原因と思われる酸味が感じられた。
【0028】

注1)ホモゲン NO.1379:カゼインナトリウム46.4%、ショ糖脂肪酸エステル21.4%、グリセリン脂肪酸エステル21.4%、カラギナン6%
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明により、風味が改良されたココナッツミルク含有飲食品を提供できる。更には、当該飲食品保存時の、酸化が原因と思われる酸味をもマスキングすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクラロースを含有することを特徴とするココナッツミルク含有飲食品。
【請求項2】
スクラロースの添加量が0.0005〜0.05質量%である、請求項1に記載のココナッツミルク含有飲食品。
【請求項3】
スクラロースを含有することを特徴とするココナッツミルク含有飲食品の風味向上方法。

【公開番号】特開2008−99676(P2008−99676A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−245292(P2007−245292)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000175283)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【Fターム(参考)】