コネクタ装置
【課題】複数の接続端子をそれぞれ保持する一対のハウジングが嵌合されていないとき、複数の接続端子を押圧する押圧力の出力部材をハウジング内に支持することが可能なコネクタ装置を提供する。
【解決手段】雄側ハウジング21と雌側ハウジング22とが嵌合されたとき、雄側接続端子311〜313、雌側接続端子321〜323、及び第1〜第4絶縁部材41〜44が積層構造となるコネクタ装置10は、雄側ハウジング21に支持された回転部材51の回転により、積層構造を押圧する押圧力を出力部材54から出力する押圧機構5を備える。雄側ハウジング21は、導電性の第1エレメント211と、第1エレメント211と雄側接続端子311〜313との間に介在する絶縁性の一対の壁部212a,212bとを有し、出力部材54は、一対の壁部212a,212bに当接することによって積層方向に支持される。
【解決手段】雄側ハウジング21と雌側ハウジング22とが嵌合されたとき、雄側接続端子311〜313、雌側接続端子321〜323、及び第1〜第4絶縁部材41〜44が積層構造となるコネクタ装置10は、雄側ハウジング21に支持された回転部材51の回転により、積層構造を押圧する押圧力を出力部材54から出力する押圧機構5を備える。雄側ハウジング21は、導電性の第1エレメント211と、第1エレメント211と雄側接続端子311〜313との間に介在する絶縁性の一対の壁部212a,212bとを有し、出力部材54は、一対の壁部212a,212bに当接することによって積層方向に支持される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれが複数の接続端子を保持する2つのハウジングを嵌合した後に、これら両ハウジングの複数の接続端子を押圧することが可能な押圧機構を備えたコネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば電気自動車の駆動源としての電気モータに電流を供給する電流供給経路に設けられ、電力ハーネス同士、又は電力ハーネスとモータもしくはインバータとの間を着脱可能とするコネクタが用いられている。この種のコネクタとして、第1コネクタ部と第2コネクタ部とを結合し、両コネクタ部のそれぞれの接合端子同士を押圧して接触させるものが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1,2に記載されたコネクタは、複数の第1接合端子、及び複数の第1接合端子に一体的に固定された複数の絶縁部材が収容された第1ターミナルハウジングを有する第1コネクタ部と、複数の第2接続端子が収容された第2ターミナルハウジングを有する第2コネクタ部とを備え、第1ターミナルハウジングと第2ターミナルハウジングとを嵌合させると、第1接合端子と第2接合端子とが絶縁部材を介して交互に配置される積層状態となるように構成されている。このコネクタはさらに、積層状態となった複数の第1接合端子、複数の第2接合端子、及び複数の絶縁部材を積層方向に押圧することで、複数の第1接続端子と複数の第2接続端子とを各接点にて一括して固定し、電気的に接続させる接続部材を第1ターミナルハウジング内に備えている。
【0004】
この接続部材は、締め付け工具を嵌合させる異形穴が形成された大径部と、大径部と一体に形成された筒状の小径部と、小径部の内部空間に一端部が収容されたコイルバネからなる弾性部材とを有している。小径部の外周面には雄ネジが形成され、この雄ネジは第1ターミナルハウジングの接続部材挿入孔の内周面に形成された雌ネジに螺合している。
【0005】
しかして、大径部及び小径部を締め付け工具によって回転させると、大径部及び小径部の軸方向移動によって弾性部材が圧縮され、弾性部材の弾性力(復元力)によって複数の絶縁部材のうち最も接続部材に近い絶縁部材が積層方向に押圧され、これにより複数の第1接続端子と複数の第2接続端子とが電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−113942号公報(図9)
【特許文献2】特開2011−159590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、例えば本出願人が別途提案(特願2011−9027)しているように、第2ターミナルハウジング内に複数の絶縁部材を収容し、第1ターミナルハウジングと第2ターミナルハウジングの未嵌合状態で、第1ターミナルハウジングの接続部材と、この接続部材に最も近い第1接合端子との間に積層方向の隙間が形成される場合には、接続部材の押圧力(弾性部材の弾性力)を受ける受け部材を、例えば弾性部材の一端に接着剤により接着して保持する必要がある。この場合、コネクタの強度、より詳しくは、弾性部材の一端に対する受け部材の固定位置が接着剤の接着力に依存してしまう。また、第1コネクタ部の第1ターミナルハウジングの内部で弾性部材の一端に受け部材を接着する作業が困難性を伴うこととなる。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の接続端子をそれぞれ保持する一対のハウジングが嵌合されていないとき、複数の接続端子を押圧する押圧力の出力部材をハウジング内に支持することが可能なコネクタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、複数の第1接続端子と、前記複数の第1接続端子にそれぞれ接続される複数の第2接続端子と、前記複数の第1接続端子を保持する第1ハウジングと、前記複数の第2接続端子を保持する第2ハウジングと、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとが嵌合されたとき、前記複数の第1接続端子と前記複数の第2接続端子との各接点間に介在する複数の絶縁部材と、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの嵌合により積層構造となった前記複数の第1接続端子、前記複数の第2接続端子、及び前記複数の絶縁部材をこれらの積層方向に押圧する押圧力を発生する押圧機構とを備え、前記押圧機構は、前記第1ハウジングに回転可能に支持された回転部材と、前記回転部材の回転によって前記積層方向に圧縮される弾性部材と、前記弾性部材の弾性力を受けて前記押圧力として出力する出力部材とを有し、前記第1ハウジングは、導電性を有する外側ハウジング部材と、前記複数の第1接続端子を挟んで互いに対向し、前記外側ハウジング部材と前記複数の第1接続端子との間に介在する絶縁性の一対の壁部を有する内側ハウジング部材とを有し、前記出力部材は、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとが嵌合されていないとき、前記一対の壁部に当接することによって前記積層方向に支持されるコネクタ装置を提供する。
【0010】
また、前記出力部材は、前記一対の壁部の前記積層方向の端部にそれぞれ当接する一対の被支持部と、前記一対の被支持部の間に形成され、前記弾性部材の弾性力を受ける受圧部とを有するとよい。
【0011】
また、前記内側ハウジング部材と前記外側ハウジング部材との間には、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの嵌合方向の隙間が形成され、前記出力部材は、前記一対の被支持部の少なくとも一部が前記隙間に介在することで、前記第1ハウジングに対する前記嵌合方向及びその逆方向への移動が規制されているとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るコネクタ装置によれば、複数の接続端子をそれぞれ保持する一対のハウジングが嵌合されていないとき、複数の接続端子を押圧する押圧力の出力部材をハウジング内に支持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】本発明の実施の形態に係るコネクタ装置を構成する雄コネクタ及び雌コネクタの構成例を示す外観図である。
【図1B】雄コネクタ及び雌コネクタの断面図である。
【図2A】雄側ハウジングと雌側ハウジングとが嵌合し、雄コネクタと雌コネクタが結合された状態におけるコネクタ装置の構成例を示す外観図である。
【図2B】雄コネクタ及び雌コネクタが結合されたコネクタ装置の断面図である。
【図2C】押圧機構が作動した状態を示すコネクタ装置の断面図である。
【図3】押圧機構の構造及び動作を示し、(a)は回転部材及びカムリングの斜視図、(b)〜(d)は回転部材及びカムリングの動作状態を示す側面図である。
【図4】出力部材の構成例を示し、(a)は側面図、(b)は斜視図である。
【図5】雄側ハウジングの第2エレメント及び第3エレメントの構成例を示し、(a)は図1Aと同方向から見た平面図、(b)は斜視図である。
【図6】出力部材が一対の壁部に支持された状態を示し、(a)は平面図、(b)は斜視図である。
【図7】雄コネクタの構成例を示し、(a)は雌側ハウジングに嵌合される側の端部を示す斜視図、(b)は斜視断面図である。
【図8】(a)は、図7(a)とは異なる角度から見た雄コネクタの斜視図であり、(b)は、その斜視断面図である。
【図9A】(a)は図8(a)のA−A線断面図であり、(b)は(a)の部分拡大図である。(c)は、(b)において出力部材が積層方向に移動した状態を示す図である。
【図9B】図9A(b)において出力部材及びコイルバネの図示を省略した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施の形態]
次に、本発明の実施の形態について、図1A〜図9Bを参照して詳細に説明する。
【0015】
図1Aは、本発明の実施の形態に係るコネクタ装置を構成する雄コネクタ及び雌コネクタの構成例を示す外観図であり、図1Bは雄コネクタ及び雌コネクタの断面図である。
【0016】
このコネクタ装置10は、雄コネクタ11及び雌コネクタ12を有している。雄コネクタ11と雌コネクタ12とは、雄コネクタ11の雄側ハウジング21と雌コネクタ12の雌側ハウジング22とを嵌合することにより結合される。本実施の形態では、雄側ハウジング21の一部が雌側ハウジング22に収容されるように、雄側ハウジング21と雌側ハウジング22との嵌合が行われる。
【0017】
雌コネクタ12には、例えば車両の駆動源としての電気モータに電流を供給するための3本の電線131,132,133が接続されている。この電気モータは例えば三相交流モータであり、3本の電線131,132,133は、三相交流モータに各相電流を供給する。また、この電気モータが搭載される車両としては、例えば電気モータを単一の駆動源とする電気自動車や、電気モータ及び内燃機関であるエンジンを併用して駆動源とする所謂ハイブリッド車が挙げられる。
【0018】
(雄コネクタ11の構成)
雄コネクタ11は、複数の第1接続端子としての雄側接続端子311,312,313と、雄側接続端子311,312,313を保持する第1ハウジングとしての雄側ハウジング21とを有している。
【0019】
雄側接続端子311,312,313は、例えば銅合金からなる基材の表面を錫めっきしてなり、一端が平板状の接触片311a,312a,313aとして形成されている。また、他端は後述する端子台部212cを構成する座金片311c,312c,313cとして形成されている。接触片311a,312a,313aと座金片311c,312c,313cとは、連結部311b,312b,313bによって一体に連結されている。接触片311a,312a,313aと座金片311c,312c,313cとは、それぞれの平面の向きが90°異なっており、連結部311b,312b,313bは、この平面の向きを変更する平面変更部としても機能している。
【0020】
雄側ハウジング21は、アルミニウム等の導電性を有する金属製の第1エレメント211と、第1エレメント211に保持された樹脂製の第2エレメント212と、第1エレメント211及び第2エレメント212に保持された樹脂製の第3エレメント213とからなる。第2エレメント212及び第3エレメント213を構成する樹脂材料としては、例えばPBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PA(ポリアミド)等の絶縁性樹脂を用いることができる。なお、第2エレメント212と第3エレメント213とを一体に形成してもよい。第1エレメント211は、本発明の外側ハウジング部材の一例であり、第2エレメント212は、本発明の内側ハウジング部材の一例である。
【0021】
第1エレメント211は、雄側接続端子311,312,313の接触片311a,312a,313aを収容する筒状の筒部211aと、雄側ハウジング21を機器のケース等の固定対象物に固定するための図略の貫通孔が形成されたフランジ部211bとを一体に有している。筒部211aの一端部(フランジ部211bとは反対側の端部)の外周面には、環状シール部材231が保持されている。また、フランジ部211bの一側面(筒部211aとは反対側の側面)には、環状シール部材232が保持されている。
【0022】
筒部211aには、その内外に貫通する保持孔211cが形成されている。この保持孔211cには、後述する回転部材51が回転可能に保持されている。保持孔211cの内面には、保持孔211cの中心に向かって突出し、保持孔211cの中心軸線と平行に延びる突起211dが形成されている。また、筒部211aの内部には、保持孔211cに対向する凸部211eが形成されている。凸部211eは、保持孔211c側に向かって筒部211aの内面から突き出るように形成されている。
【0023】
また、筒部211aには、その外周側における保持孔211cの近傍に、保持孔211cの中心軸に直交する方向に突出した支持突起211fが形成されている。支持突起211fは、保持孔211cのフランジ部211bとは反対側の部位に、雄側ハウジング21と雌側ハウジング22との嵌合方向(図1A及び図1Bに示すX軸方向。以下、「コネクタ嵌合方向」という。)に沿って、フランジ部211bの反対側に向かって突出して形成されている。
【0024】
また、筒部211aには、図1Aに示すように、その外周面に雌コネクタ12の雌側ハウジング22とランス嵌合するための嵌合突起211gが設けられている。またさらに、筒部211aには、フランジ部211bの近傍に、後述する蓋部材6をスライド可能に支持するためのスライド溝211hが形成されている。
【0025】
第2エレメント212は、その一部が第1エレメント211の筒部211aに収容されて、第1エレメント211に保持されている。第2エレメント212と第1エレメント211のフランジ部211bとの間には、シール部材233が配置されている。
【0026】
第2エレメント212は、第1エレメント211の筒部211aに収容された一対の壁部212a,212b(図1Bには壁部212aのみ示す)と、第1エレメント211から突出した部分の端部に形成された端子台部212cと、一対の壁部212a,212bと端子台部212cとの間に形成され、第3エレメント213を保持する保持部212dとを一体に有している。
【0027】
保持部212dには、雄側接続端子311,312,313の連結部311b,312b,313bを挿通させる3つの挿通孔212eが形成されている。この3つの挿通孔212eの内部には、第2エレメント212と雄側接続端子311,312,313の連結部311b,312b,313bとの間をシールする3つのシール部材234〜236がそれぞれ配置されている。
【0028】
端子台部212cには、雄側接続端子311,312,313の座金片311c,312c,313cが並列して保持されている。座金片311c,312c,313c及び端子台部212cには、接続対象の端子を固定するためのボルトを挿通させる3つの貫通孔31cが形成されている。
【0029】
第3エレメント213は、雄側接続端子311,312,313のそれぞれに対応して3か所に形成された突起部213aと、突起部213aよりも接触片311a,312a,313a側に形成され、連結部311b,312b,313bを案内するガイド部213bとを有している。そして、第3エレメント213は、突起部213aによって雄側接続端子311,312,313の連結部311b,312b,313bを支持している。
【0030】
また、雄コネクタ11は、第1エレメント211に回転可能に支持された回転部材51、回転部材51の回転によるカム作用によって回転部材51の回転軸線方向に進退移動するカムリング52、及びカムリング52に一端が当接するコイルバネ53、コイルバネ53の他端が当接する金属製の座金530、及び座金530を収容する凹部が形成された出力部材54を有して構成される押圧機構5を備えている。回転部材51及びカムリング52は、例えばアルミニウム等の金属からなる。
【0031】
回転部材51は、有底円筒状であり、円板状の底部511と、底部511によって一端が閉塞される円筒状の円筒部512とを一体に有している。カムリング52もまた有底円筒状であり、円板状の底部521と、底部521によって一端が閉塞される円筒状の円筒部522とを一体に有している。カムリング52の底部521、及び円筒部522の一部は、回転部材51の円筒部512内に収容されている。
【0032】
回転部材51は、保持孔211cの内面に形成された環状の溝に係止された環状保持部材214に底部511が当接することによって、第1エレメント211に対する軸方向移動が規制されている。また、円筒部512と保持孔211cとの間には、環状のシール部材237が配置されている。
【0033】
出力部材54は、第2エレメント212の一対の壁部212a,212bに支持されている。出力部材54と雄側接続端子311の接触片311aとの間には、後述する第1絶縁部材41及び雌側接続端子321が挿入される隙間が形成されている。出力部材54の支持構造、及び押圧機構5の動作の詳細については後述する。
【0034】
雄コネクタ11はさらに、回転部材51の少なくとも一部を覆う蓋部材6を備えている。この蓋部材6は、コネクタ嵌合方向に沿って、第1エレメント211に対してスライド可能である。
【0035】
蓋部材6は、保持孔211cに保持された回転部材51の外面を覆うように配置される本体部60と、スライド溝211hに係合して本体部60の一端を支持する第1の支持部61と、支持突起211fに係合して本体部60の他端を支持する第2の支持部62とを一体に有している。本体部60には、回転部材51の底部511に形成された工具受容部511aに挿入される工具を挿通させる工具挿通孔60a、及びフランジ部211b側へのスライドによって回転部材51の回転を規制することが可能な突起601が形成されている。なお、第1の支持部61は、本体部60を挟むように2つ設けられているが、図1Aでは一方の第1の支持部61のみを示している。
【0036】
(雌コネクタ12の構成)
雌コネクタ12は、複数の第2接続端子としての雌側接続端子321,322,323と、雌側接続端子321,322,323を保持する第2ハウジングとしての雌側ハウジング22とを有している。雌側接続端子321,322,323には、電線131,132,133が電気的に接続されている。電線131,132,133は、導電性の金属からなる芯線131a,132a,133aを、その先端部を除き、絶縁被膜131b,132b,133bで覆って構成されている。芯線131a,132a,133aの断面積は、例えば10〜40mm2である。
【0037】
雌側接続端子321,322,323は、例えば銅合金からなる基材の表面を錫めっきしてなり、一端が平板状の接触片321a,322a,323aとして形成されている。また、他端は電線131,132,133の芯線131a,132a,133aの先端部を加締め固定する加締め部321b,322b,323bとして形成されている。
【0038】
雌側ハウジング22は、第1エレメント221と、第1エレメント221に保持された第2エレメント222とからなる。第1エレメント221及び第2エレメント222の材料としては、雄側ハウジング21の第2エレメント212及び第3エレメント213と同様の絶縁性樹脂を用いることができる。
【0039】
第1エレメント221は、雌側接続端子321,322,323の接触片321a,322a,323aを収容する収容部221aと、雌側接続端子321,322,323の加締め部321b,322b,323bを保持する保持部221bとを一体に有している。
【0040】
収容部221aには、雄側ハウジング21と雌側ハウジング22の嵌合時において回転部材51の工具受容部511aに対応する位置に、貫通孔221cが形成されている。また、収容部221aの外側の面には、図1Aに示すように、雄コネクタ11の第1エレメント211に設けられた嵌合突起211gとランス嵌合する嵌合凹部221dが形成されている。
【0041】
保持部221bは、その外周囲の一部が金属製のカバー部材14によって覆われている。また、電線131,132,133を挿通させる保持部221bの開口221eには、電線131,132,133と開口221eの内面との間を封止するシール部材223が配置されている。また、保持部221bの外面には、雄コネクタ11の第1エレメント211との間を封止するためのシール部材224が配置されている。
【0042】
第2エレメント222は、電気絶縁性を有する絶縁材料からなる第1絶縁部材41、第2絶縁部材42、第3絶縁部材43、及び第4絶縁部材44を保持している。この絶縁材料としては、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)、PPA(ポリフタルアミド)、PA(ポリアミド)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)や、エポキシ系樹脂等の樹脂材料を用いることができる。
【0043】
第1絶縁部材41と第2絶縁部材42との間には接触片321aが、第2絶縁部材42と第3絶縁部材43との間には接触片322aが、第3絶縁部材43と第4絶縁部材44との間には接触片323aが、それぞれ介在している。
【0044】
第1絶縁部材41には、凹部41aが形成され、この凹部41aに接触片321aが保持されている。同様に、第2絶縁部材42及び第3絶縁部材43には、凹部42a,43aが形成され、この凹部42a,43aに接触片322a,323aが保持されている。
【0045】
第2エレメント222は、第1絶縁部材41、第2絶縁部材42、第3絶縁部材43、及び第4絶縁部材44を、接触片321a,322a,323aに垂直な方向(Y軸方向)に配列し、これら第1〜第4絶縁部材41〜44をY軸方向に所定の範囲で移動可能に保持している。
【0046】
図2Aは、雄側ハウジング21と雌側ハウジング22とが嵌合し、雄コネクタ11と雌コネクタ12が結合された状態におけるコネクタ装置10の構成例を示す外観図である。図2Bは、図2Aの断面図である。
【0047】
図2A及び図2Bでは、雄コネクタ11の第1エレメント211の筒部211aが蓋部材6と共に雌コネクタ12の第1エレメント221の収容部221aに収容され、雄側ハウジング21と雌側ハウジング22との嵌合が完了した嵌合状態を示している。
【0048】
この嵌合状態では、雌側ハウジング22の第1エレメント221における収容部221aに形成された貫通孔221cが、回転部材51の工具受容部511a、及び蓋部材6の工具挿通孔60aに対応する位置にあり、貫通孔221c及び工具挿通孔60aを介して外部から工具受容部511aに工具Tを嵌め合わせることが可能である。
【0049】
また、この嵌合状態では、雄側接続端子311の接触片311aが、第1絶縁部材41に保持された雌側接続端子321の接触片321aと第2絶縁部材42との間に挟まれている。また、雄側接続端子312の接触片312aが、第2絶縁部材42に保持された雌側接続端子322の接触片322aと第3絶縁部材43との間に挟まれている。またさらに、雄側接続端子313の接触片313aが、第3絶縁部材43に保持された雌側接続端子323の接触片323aと第4絶縁部材44との間に挟まれている。
【0050】
このように、雄側ハウジング21と雌側ハウジング22との嵌合状態では、雄側接続端子311〜313、雌側接続端子321〜323、及び第1〜第4絶縁部材41〜44がY軸に平行に積層される。より詳細には、第1絶縁部材41、雌側接続端子321の接触片321a、雄側接続端子311の接触片311a、第2絶縁部材42、雌側接続端子322の接触片322a、雄側接続端子312の接触片312a、第3絶縁部材43、雌側接続端子323の接触片323a、雄側接続端子313の接触片313a、及び第4絶縁部材44が、積層方向に上記の順序で積層された積層構造となる。
【0051】
すなわち、第1絶縁部材41、第2絶縁部材42、第3絶縁部材43、及び第4絶縁部材44は、雄側ハウジング21と雌側ハウジング22とが嵌合されたとき、雄側接続端子311と雌側接続端子321、雄側接続端子312と雌側接続端子322、及び雄側接続端子313と雌側接続端子323の各接点間に介在する。
【0052】
コネクタ装置10は、雄コネクタ11と雌コネクタ12とを結合し、回転部材51を回転させて押圧機構5に雄側接続端子311,312,313と雌側接続端子321,322,323とを積層方向に押圧する押圧力を発生させ、さらに蓋部材6をスライドさせることにより、雄コネクタ11と雌コネクタ12とを接続させる作業工程が完了する。
【0053】
図2Cは、回転部材51の回転に伴って、カムリング52が回転部材51から離間する方向に移動した状態を示している。この状態では、押圧機構5が、積層構造となった雄側接続端子311〜313、雌側接続端子321〜323、及び第1〜第4絶縁部材41〜44を積層方向に押圧する押圧力を発生している。この押圧力により、雄側接続端子311〜313と雌側接続端子321〜323とが、それぞれの接点において互いに接触する方向の荷重を受けて接触している。
【0054】
また、蓋部材6が、スライド溝211h(図1Aに示す)に案内されてフランジ部211b側に移動し、突起601が回転部材51の底部511に形成された凹部511cに係合して、回転部材51の回転が規制されている。また、蓋部材6の工具挿通孔60aが工具受容部511aからずれた位置に移動し、工具Tを工具受容部511aに嵌め合わせることが抑止されている。これにより、振動や誤操作等によって回転部材51が回転し、押圧機構5による押圧力が低下することが抑制されている。
【0055】
(押圧機構5の構成)
押圧機構5は、雄側ハウジング21と雌側ハウジング22との嵌合状態における回転部材51の回転により、雄側接続端子311〜313、雌側接続端子321〜323、及び第1〜第4絶縁部材41〜44からなる積層構造をこれらの積層方向に押圧する押圧力を発生する。
【0056】
図3は、回転部材51及びカムリング52の構造及び動作を示し、(a)は回転部材51及びカムリング52の斜視図、(b)〜(d)は回転部材51及びカムリング52の動作状態を示す側面図である。
【0057】
回転部材51の底部511には、第1の凹部511bと、第2の凹部511cとが形成されている。第1の凹部511bには、雄側ハウジング21と雌側ハウジング22との未嵌合状態における回転部材51の回転を規制する、蓋部材6に設けられた図略の突起が係合する。
【0058】
円筒部512には、シール部材237(図1Bに示す)を保持するための環状凹所512aが形成されている。また、円筒部512の底部511とは反対側の端部には、回転部材51の回転軸線Oに平行な方向に突出する摺動突起512bが形成されている。なお、摺動突起512bは、円筒部512の周方向に等間隔に複数(本実施の形態では2つ)形成されているが、図3(a)では、このうちの1つの摺動突起512bのみを示している。
【0059】
カムリング52は、回転部材51と回転軸線Oに沿って相対移動可能に組み合わされ、コイルバネ53(図1Bに示す)によって回転部材51の底部511に向かって付勢されている。カムリング52の円筒部522は、小径部522aと大径部522bとからなる。大径部522bの外周面には、円筒部522の軸方向に沿って延びるスライド溝522cが形成されている。スライド溝522cは、前述の突起211d(図1Bに示す)にスライド可能に係合し、カムリング52を雄側ハウジング21に対して回り止めしている。
【0060】
小径部522aと大径部522bとの間には、回転部材51の回転に伴ってその摺動突起512bが摺動する摺動面523が形成されている。摺動面523は、第1の平坦面523aと、第1の平坦面523aに平行な第2の平坦面523cと、第1の平坦面523aと第2の平坦面523cとの間に形成された傾斜面523bとから構成されている。第1の平坦面523aは、第2の平坦面523cよりも回転部材51から離間した位置に形成されている。傾斜面523bは、円筒部522の軸方向に対して傾斜し、第1の平坦面523aと第2の平坦面523cとの間を一定の傾斜角で接続するように形成されている。
【0061】
大径部522bには、第2の平坦面523cに連続して、円筒部522の軸方向に窪んだ凹部522dが形成されている。この凹部522dには、回転部材51の摺動突起512bが嵌合可能である。また、凹部522dの第2の平坦面523cとは反対側の端部には、摺動突起512bの円筒部522の周方向一側への移動を規制するように突出したストッパ部522eが形成されている。
【0062】
図3(b)は、回転部材51の摺動突起512bが、カムリング52の第1の平坦面523aに当接する位置にある初期状態を示している。この初期状態から回転部材51がカムリング52に対して正方向(図3(a)の矢印R1に示す方向)に回転すると、図3(c)に示すように、回転部材51の摺動突起512bがカムリング52の傾斜面523b上を摺動し、カムリング52が回転軸線Oに沿って回転部材51から離間する。
【0063】
さらに回転部材51がカムリング52に対して正方向に回転すると、図3(d)に示すように、回転部材51の摺動突起512bがカムリング52の第2の平坦面523c上を摺動する。
【0064】
さらに回転部材51がカムリング52に対して正方向に回転すると、図3(a)に示すように、回転部材51の摺動突起512bが凹部522dに嵌合し、回転部材51の正方向への回転がストッパ部522eによって規制された状態となる。
【0065】
上記のように、回転部材51が正方向に回転することによってカムリング52が回転軸線Oに沿って回転部材51から離間する方向に移動し、コイルバネ53が圧縮される。この際、回転部材51は回転軸線O方向に移動せず、環状保持部材214と摺接する。
【0066】
コイルバネ53は、その復元力によって出力部材54を押圧する。出力部材54と雄側ハウジング21の第1エレメント211に形成された凸部211eとの間には、雄側接続端子311〜313、雌側接続端子321〜323、及び第1〜第4絶縁部材41〜44からなる積層構造が介在するので、圧縮されたコイルバネ53の復元力が上記積層構造を積層方向に押圧する押圧力となる。すなわち、出力部材54は、コイルバネ53の弾性力を受け、この弾性力を積層構造を押圧する押圧力として出力する。
【0067】
(出力部材54の構成及び支持構造)
図4は、出力部材54の構成例を示し、(a)は側面図、(b)は斜視図である。この出力部材54の材料としては、雄側ハウジング21の第2エレメント212及び第3エレメント213と同様の絶縁性樹脂を用いることができる。
【0068】
図4(a)及び(b)に示すように、出力部材54は、一対の被支持部541,542と、被支持部541と被支持部542との間に形成された受圧部543とを一体に有している。受圧部543は、図1Bに示すように、座金530及びコイルバネ53の一端部を収容する凹部の底面として形成され、コイルバネ53の弾性力を受ける平板状に形成されている。
【0069】
被支持部541,542は、受圧部543と平行な板状の当接片541a,542aと、当接片541a,542aに直交する方向に突出した板状の突出片541b,542bとを有するL字状に形成されている。当接片541a,542aと受圧部543との間には段差が形成され、この段差によって受圧部543が被支持部541,542に対して窪むように形成されている。
【0070】
突出片541b,542bは、被支持部541,542に対して受圧部543から離間する方向に突出して形成されている。なお、本実施の形態では、突出片541bと突出片542bとが互いに分離して形成されているが、突出片541bと突出片542bとを連続して形成してもよい。
【0071】
出力部材54は、雄側ハウジング21と雌側ハウジング22とが嵌合されていないとき、第2エレメント212の一対の壁部212a,212bに被支持部541,542がそれぞれ当接して支持される。
【0072】
図5は、雄側ハウジング21の第2エレメント212及び第3エレメント213の構成例を示し、(a)は図1Aと同方向から見た平面図、(b)は斜視図である。
【0073】
一対の壁部212a,212bは、互いに平行な平板状であり、第3エレメント213を保持する第2エレメント212の保持部212dから、端子台部212cとは反対方向に突出して形成されている。壁部212aと壁部212bとは、雄側接続端子311〜313の接触片311a〜313aを挟んで互いに対向している。
【0074】
雄側接続端子311〜313は、第3エレメント213のガイド部213b(図1Bに示す)に案内され、接触片311a〜313aが第3エレメント213の端面から一対の壁部212a,212bの間に突出している。第3エレメント213には、第1エレメント211の筒部211aの内面に係合する2つの係合突起213cが形成されている。
【0075】
壁部212a及び壁部212bは、四角形状の一角部が長方形状に切り欠かれた切欠き形状を有し、この切り欠かれた部分に、コネクタ嵌合方向に平行な第1の端面212a1,212b1、及びコネクタ嵌合方向に垂直な第2の端面212a2,212b2が形成されている。
【0076】
図6は、出力部材54が一対の壁部212a,212bに支持された状態を示し、(a)は平面図、(b)は斜視図である。
【0077】
出力部材54は、被支持部541,542が一対の壁部212a,212bにおける上記積層構造の積層方向の一端部(回転部材51側の端部)に当接して支持される。より具体的には、出力部材54は、被支持部541,542の当接片541a,542aが、一対の壁部212a,212bの第1の端面212a1,212b1に当接して、上記積層構造の積層方向に支持される。
【0078】
また、出力部材54は、被支持部541,542の突出片541b,542bが一対の壁部212a,212bの第2の端面212a2,212b2に当接して、コネクタ嵌合方向に支持される。また、受圧部543は、第1の端面212a1,212b1よりも雄側接続端子311の接触片311a側に窪むように配置される。
【0079】
図7は、雄コネクタ11の構成例を示し、(a)は雌側ハウジング22に嵌合される側の端部を示す斜視図、(b)は斜視断面図である。
【0080】
図7に示すように、一対の壁部212a,212bは、第1エレメント211の筒部211aと雄側接続端子311〜313の接触片311a〜313aとの間に介在し、第1エレメント211を介した雄側接続端子311〜313の間(又は雌側接続端子321〜323の間)の短絡又は漏電を防止する機能を有している。
【0081】
第1エレメント211には、一対の壁部212a,212bの第1の端面212a1,212b1との間に出力部材54の当接片541a,542aを挟むように、一対の突起211i,211jが形成されている。第1の端面212a1,212b1と一対の突起211i,211jとの間の隙間は、当接片541a,542aの厚みよりも大きな寸法に形成されている。
【0082】
本実施の形態では、雄側ハウジング21と雌側ハウジング22との未嵌合状態で、出力部材54の当接片541a,542aが、コイルバネ53の弾性力によって第1の端面212a1,212b1に押し付けられるように構成されている。ただし、この未嵌合状態で、当接片541a,542aが第1の端面212a1,212b1に押し付けられないように、すなわち出力部材54が積層方向のガタを有するように、一対の壁部212a,212bに支持されていてもよい。
【0083】
図8(a)は、図7(a)とは異なる角度から見た雄コネクタ11の斜視図であり、図8(b)は、その斜視断面図である。
【0084】
図8に示すように、第1エレメント211の突起211jと壁部212bの第2の端面212b2(図5参照)との間には、コネクタ嵌合方向の隙間が形成され、この隙間に出力部材54の突出片542bが介在している。すなわち、壁部212bの第2の端面212b2と突起211jとの間に、出力部材54の一部(突出片542b)が介在している。また、図示は省略しているが、第1エレメント211の突起211iと壁部212aの第2の端面212a2との間にも、コネクタ嵌合方向の隙間が形成され、この隙間に出力部材54の突出片542aが介在している。これにより、出力部材54のコネクタ嵌合方向に沿った両方向(雄側ハウジング21と雌側ハウジング22との嵌合方向及びその逆の離脱方向)への移動が規制されている。
【0085】
図9A(a)は図8(a)のA−A線断面図であり、図9A(b)は図9A(a)の部分拡大図である。図9A(c)は、図9A(b)において出力部材54が積層方向に移動した状態を示す図である。また、図9Bは、図9A(b)において出力部材54及びコイルバネ53の図示を省略し、壁部212bと突起211jとの間の隙間を明示した説明図である。
【0086】
図9Bに示すように、突起211jには、壁部212bの第1の端面212b1に対向する第1の端面211j1と、壁部212bの第2の端面212b2に対向する第2の端面211j2とが形成されている。第1の端面212b1と第1の端面211j1、及び第2の端面212b2と第2の端面211j2は、それぞれ互いに平行となるように形成されている。
【0087】
壁部212bの第1の端面212b1と突起211jの第1の端面211j1との間には、第1の隙間S1が形成されている。また、壁部212bの第2の端面212b2と突起211jの第2の端面211j2との間には、第2の隙間S2が形成されている。すなわち、第2の隙間S2は、コネクタ嵌合方向に互いに対向する第2の端面212b2と第2の端面211j2との間に形成されたコネクタ嵌合方向の隙間である。
【0088】
第1の隙間S1は、コネクタ嵌合方向に沿って延びるように形成され、第2の隙間S2は、第1の隙間S1の一端部(端子台部212c側の端部)からコネクタ嵌合方向に対して直交するように形成されている。このように、壁部212bと突起211jとの間には、第1の隙間S1及び第2の隙間S2からなるL字状の隙間が形成されている。
【0089】
図9A(b)に示すように、出力部材54の当接片542aは、壁部212bの第1の端面212b1と突起211jの第1の端面211j1との間、すなわち第1の隙間S1に介在している。第1の端面212b1と第1の端面211j1との間の距離は、当接片542aの厚みよりも大きな寸法に設定されているので、当接片542aが壁部212bの第1の端面212b1に当接した状態では、当接片542aと第1の端面211j1との間に空間が形成されている。出力部材54は、この空間の範囲で、当接片542aに垂直な方向(上記積層構造の積層方向)に移動可能である。
【0090】
また、出力部材54の突出片542bは、壁部212bの第2の端面212b2と第2の端面212b2に対向する突起211jの第2の端面211j2との間、すなわち第2の隙間S2に介在している。第2の端面212b2と第2の端面211j2との間の距離は、突出片542bの厚みよりも僅かに大きな寸法に設定されている。これにより、出力部材54は、コネクタ嵌合方向(図9A(b)の左方向)の外力を受けた場合には、突出片542bが壁部212bの第2の端面212b2に当接し、その反対方向(図9A(b)の右方向)の外力を受けた場合には、突出片542bが突起211jの第2の端面211j2に当接して、雄側ハウジング21に対する移動が規制される。なお、突出片542a、壁部212a、及び突起211iについても同様に構成されている。
【0091】
雄側ハウジング21と雌側ハウジング22とが嵌合されると、雄側接続端子311〜313、雌側接続端子321〜323、及び第1〜第4絶縁部材41〜44が積層構造となるので、出力部材54が第1絶縁部材41によってカムリング52側に押し上げられ、当接片541a,542aが一対の壁部212a,212bの第1の端面212a1,212b1から離間する。この状態で回転部材51が回転されると、カムリング52が回転部材51に対して出力部材54に接近するように移動し、コイルバネ53が圧縮される。
【0092】
出力部材54は、圧縮されたコイルバネ53の弾性力を受け、雄側接続端子311〜313と雌側接続端子321〜323とを、それぞれの接点において互いに接触させるように、積層方向に押圧する。これにより、各接点における確実な接触が得られる。
【0093】
なお、第1エレメント211への出力部材54、及び第2エレメント212の組み付けは、出力部材54をコイルバネ53の弾性力に抗してカムリング52側に押し付けた状態で、第2エレメント212を第3エレメント213と共に第1エレメント211の筒部211a内に圧入することにより、行うことができる。
【0094】
(本実施の形態の作用及び効果)
以上説明した本実施の形態によれば、以下のような効果が得られる。
【0095】
(1)雄側ハウジング21と雌側ハウジング22とが未嵌合状態であるとき、出力部材54を例えばコイルバネ53との接着によって保持することなく、雄側ハウジング21内に支持することが可能となる。これにより、コネクタ装置10の強度を高め、かつ組み付けを容易化することができる。
【0096】
(2)出力部材54は、一対の壁部212a,212bにそれぞれ当接する一対の被支持部541,542の間に、コイルバネ53の弾性力を受ける受圧部543が形成されているので、出力部材54の雄側ハウジング21内における姿勢を安定させることができる。これにより、雄側ハウジング21と雌側ハウジング22との嵌合を円滑に行うことができる。
【0097】
(3)出力部材54は、一対の被支持部541,542の突出片541b,542bが、一対の壁部212a,212bと第1エレメント211の突起211i,211jとの間に、コネクタ嵌合方向に沿った両側から挟まれるように介在するので、出力部材54のコネクタ嵌合方向及びその逆方向への雄側ハウジング21に対する移動が規制される。これにより、簡素な構成で出力部材54を支持することができ、コネクタ装置10を小型化することが可能となる。
【0098】
(4)雄側ハウジング21と雌側ハウジング22との未嵌合状態で、出力部材54がコイルバネ53によって一対の壁部212a,212bに押し付けられるように雄コネクタ11を構成すれば、未嵌合状態における出力部材54の位置及び姿勢を安定させることができる。また、予めコイルバネ53を圧縮しておくことで、雄側ハウジング21と雌側ハウジング22との嵌合後に積層構造を押圧する押圧力を高めることが可能となる。
【0099】
以上、本発明の各実施の形態を説明したが、上記に記載した各実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、各実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0100】
また、本発明は、上記実施の形態に記載した構成に限らず、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、雄側接続端子及び雌側接続端子の数がそれぞれ3である場合について説明したが、これに限らず、2又は4以上であってもよい。また、コネクタ装置の用途にも制限はない。
【符号の説明】
【0101】
5…押圧機構、6…蓋部材、10…コネクタ装置、11…雄コネクタ、12…雌コネクタ、14…カバー部材、21…雄側ハウジング(第1ハウジング)、22…雌側ハウジング(第2ハウジング)、31c…貫通孔、41〜44…第1〜第4絶縁部材、41a,42a,43a…凹部、51…回転部材、52…カムリング、53…コイルバネ(弾性部材)、54…出力部材、60…本体部、60a…工具挿通孔、61…第1の支持部、62…第2の支持部、131,132,133…電線、131a,132a,133a…芯線、131b,132b,133b…絶縁被膜、211…第1エレメント(外側ハウジング部材)、211a…筒部、211b…フランジ部、211c…保持孔、211d…突起、211e…凸部、211f…支持突起、211g…嵌合突起、211h…スライド溝、211i,211j…突起、211j1…第1の端面,211j2…第2の端面、212…第2エレメント(内側ハウジング部材)、212a,212b…壁部、212a1,212b1…第1の端面、212a2,212b2…第2の端面、212c…端子台部、212d…保持部、212e…挿通孔、213…第3エレメント、213a…突起部、213b…ガイド部、213c…係合突起、214…環状保持部材、221…第1エレメント、221a…収容部、221b…保持部、221c…貫通孔、221d…嵌合凹部、221e…開口、222…第2エレメント、223,224…シール部材、231,232…環状シール部材、233〜237シール部材、311,312,313…雄側接続端子(第1接続端子)、311a,312a,313a…接触片、311b,312b,313b…連結部、311c,312c,313c…座金片、321,322,323…雌側接続端子(第2接続端子)、321a,322a,323a…接触片、321b,322b,323b…加締め部、511…底部、511a…工具受容部、511b…第1の凹部、511c…第2の凹部、512…円筒部、512a…環状凹所、512b…摺動突起、521…底部、522…円筒部、522a…小径部、522b…大径部、522c…スライド溝、522d…凹部、522e…ストッパ部、523…摺動面、523a…第1の平坦面、523b…傾斜面、523c…第2の平坦面、530…座金、541,542…被支持部、541a,542a…当接片、541b,542b…突出片、543…受圧部、601…突起、S1…第1の隙間、S2…第2の隙間
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれが複数の接続端子を保持する2つのハウジングを嵌合した後に、これら両ハウジングの複数の接続端子を押圧することが可能な押圧機構を備えたコネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば電気自動車の駆動源としての電気モータに電流を供給する電流供給経路に設けられ、電力ハーネス同士、又は電力ハーネスとモータもしくはインバータとの間を着脱可能とするコネクタが用いられている。この種のコネクタとして、第1コネクタ部と第2コネクタ部とを結合し、両コネクタ部のそれぞれの接合端子同士を押圧して接触させるものが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1,2に記載されたコネクタは、複数の第1接合端子、及び複数の第1接合端子に一体的に固定された複数の絶縁部材が収容された第1ターミナルハウジングを有する第1コネクタ部と、複数の第2接続端子が収容された第2ターミナルハウジングを有する第2コネクタ部とを備え、第1ターミナルハウジングと第2ターミナルハウジングとを嵌合させると、第1接合端子と第2接合端子とが絶縁部材を介して交互に配置される積層状態となるように構成されている。このコネクタはさらに、積層状態となった複数の第1接合端子、複数の第2接合端子、及び複数の絶縁部材を積層方向に押圧することで、複数の第1接続端子と複数の第2接続端子とを各接点にて一括して固定し、電気的に接続させる接続部材を第1ターミナルハウジング内に備えている。
【0004】
この接続部材は、締め付け工具を嵌合させる異形穴が形成された大径部と、大径部と一体に形成された筒状の小径部と、小径部の内部空間に一端部が収容されたコイルバネからなる弾性部材とを有している。小径部の外周面には雄ネジが形成され、この雄ネジは第1ターミナルハウジングの接続部材挿入孔の内周面に形成された雌ネジに螺合している。
【0005】
しかして、大径部及び小径部を締め付け工具によって回転させると、大径部及び小径部の軸方向移動によって弾性部材が圧縮され、弾性部材の弾性力(復元力)によって複数の絶縁部材のうち最も接続部材に近い絶縁部材が積層方向に押圧され、これにより複数の第1接続端子と複数の第2接続端子とが電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−113942号公報(図9)
【特許文献2】特開2011−159590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、例えば本出願人が別途提案(特願2011−9027)しているように、第2ターミナルハウジング内に複数の絶縁部材を収容し、第1ターミナルハウジングと第2ターミナルハウジングの未嵌合状態で、第1ターミナルハウジングの接続部材と、この接続部材に最も近い第1接合端子との間に積層方向の隙間が形成される場合には、接続部材の押圧力(弾性部材の弾性力)を受ける受け部材を、例えば弾性部材の一端に接着剤により接着して保持する必要がある。この場合、コネクタの強度、より詳しくは、弾性部材の一端に対する受け部材の固定位置が接着剤の接着力に依存してしまう。また、第1コネクタ部の第1ターミナルハウジングの内部で弾性部材の一端に受け部材を接着する作業が困難性を伴うこととなる。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の接続端子をそれぞれ保持する一対のハウジングが嵌合されていないとき、複数の接続端子を押圧する押圧力の出力部材をハウジング内に支持することが可能なコネクタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、複数の第1接続端子と、前記複数の第1接続端子にそれぞれ接続される複数の第2接続端子と、前記複数の第1接続端子を保持する第1ハウジングと、前記複数の第2接続端子を保持する第2ハウジングと、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとが嵌合されたとき、前記複数の第1接続端子と前記複数の第2接続端子との各接点間に介在する複数の絶縁部材と、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの嵌合により積層構造となった前記複数の第1接続端子、前記複数の第2接続端子、及び前記複数の絶縁部材をこれらの積層方向に押圧する押圧力を発生する押圧機構とを備え、前記押圧機構は、前記第1ハウジングに回転可能に支持された回転部材と、前記回転部材の回転によって前記積層方向に圧縮される弾性部材と、前記弾性部材の弾性力を受けて前記押圧力として出力する出力部材とを有し、前記第1ハウジングは、導電性を有する外側ハウジング部材と、前記複数の第1接続端子を挟んで互いに対向し、前記外側ハウジング部材と前記複数の第1接続端子との間に介在する絶縁性の一対の壁部を有する内側ハウジング部材とを有し、前記出力部材は、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとが嵌合されていないとき、前記一対の壁部に当接することによって前記積層方向に支持されるコネクタ装置を提供する。
【0010】
また、前記出力部材は、前記一対の壁部の前記積層方向の端部にそれぞれ当接する一対の被支持部と、前記一対の被支持部の間に形成され、前記弾性部材の弾性力を受ける受圧部とを有するとよい。
【0011】
また、前記内側ハウジング部材と前記外側ハウジング部材との間には、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの嵌合方向の隙間が形成され、前記出力部材は、前記一対の被支持部の少なくとも一部が前記隙間に介在することで、前記第1ハウジングに対する前記嵌合方向及びその逆方向への移動が規制されているとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るコネクタ装置によれば、複数の接続端子をそれぞれ保持する一対のハウジングが嵌合されていないとき、複数の接続端子を押圧する押圧力の出力部材をハウジング内に支持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】本発明の実施の形態に係るコネクタ装置を構成する雄コネクタ及び雌コネクタの構成例を示す外観図である。
【図1B】雄コネクタ及び雌コネクタの断面図である。
【図2A】雄側ハウジングと雌側ハウジングとが嵌合し、雄コネクタと雌コネクタが結合された状態におけるコネクタ装置の構成例を示す外観図である。
【図2B】雄コネクタ及び雌コネクタが結合されたコネクタ装置の断面図である。
【図2C】押圧機構が作動した状態を示すコネクタ装置の断面図である。
【図3】押圧機構の構造及び動作を示し、(a)は回転部材及びカムリングの斜視図、(b)〜(d)は回転部材及びカムリングの動作状態を示す側面図である。
【図4】出力部材の構成例を示し、(a)は側面図、(b)は斜視図である。
【図5】雄側ハウジングの第2エレメント及び第3エレメントの構成例を示し、(a)は図1Aと同方向から見た平面図、(b)は斜視図である。
【図6】出力部材が一対の壁部に支持された状態を示し、(a)は平面図、(b)は斜視図である。
【図7】雄コネクタの構成例を示し、(a)は雌側ハウジングに嵌合される側の端部を示す斜視図、(b)は斜視断面図である。
【図8】(a)は、図7(a)とは異なる角度から見た雄コネクタの斜視図であり、(b)は、その斜視断面図である。
【図9A】(a)は図8(a)のA−A線断面図であり、(b)は(a)の部分拡大図である。(c)は、(b)において出力部材が積層方向に移動した状態を示す図である。
【図9B】図9A(b)において出力部材及びコイルバネの図示を省略した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施の形態]
次に、本発明の実施の形態について、図1A〜図9Bを参照して詳細に説明する。
【0015】
図1Aは、本発明の実施の形態に係るコネクタ装置を構成する雄コネクタ及び雌コネクタの構成例を示す外観図であり、図1Bは雄コネクタ及び雌コネクタの断面図である。
【0016】
このコネクタ装置10は、雄コネクタ11及び雌コネクタ12を有している。雄コネクタ11と雌コネクタ12とは、雄コネクタ11の雄側ハウジング21と雌コネクタ12の雌側ハウジング22とを嵌合することにより結合される。本実施の形態では、雄側ハウジング21の一部が雌側ハウジング22に収容されるように、雄側ハウジング21と雌側ハウジング22との嵌合が行われる。
【0017】
雌コネクタ12には、例えば車両の駆動源としての電気モータに電流を供給するための3本の電線131,132,133が接続されている。この電気モータは例えば三相交流モータであり、3本の電線131,132,133は、三相交流モータに各相電流を供給する。また、この電気モータが搭載される車両としては、例えば電気モータを単一の駆動源とする電気自動車や、電気モータ及び内燃機関であるエンジンを併用して駆動源とする所謂ハイブリッド車が挙げられる。
【0018】
(雄コネクタ11の構成)
雄コネクタ11は、複数の第1接続端子としての雄側接続端子311,312,313と、雄側接続端子311,312,313を保持する第1ハウジングとしての雄側ハウジング21とを有している。
【0019】
雄側接続端子311,312,313は、例えば銅合金からなる基材の表面を錫めっきしてなり、一端が平板状の接触片311a,312a,313aとして形成されている。また、他端は後述する端子台部212cを構成する座金片311c,312c,313cとして形成されている。接触片311a,312a,313aと座金片311c,312c,313cとは、連結部311b,312b,313bによって一体に連結されている。接触片311a,312a,313aと座金片311c,312c,313cとは、それぞれの平面の向きが90°異なっており、連結部311b,312b,313bは、この平面の向きを変更する平面変更部としても機能している。
【0020】
雄側ハウジング21は、アルミニウム等の導電性を有する金属製の第1エレメント211と、第1エレメント211に保持された樹脂製の第2エレメント212と、第1エレメント211及び第2エレメント212に保持された樹脂製の第3エレメント213とからなる。第2エレメント212及び第3エレメント213を構成する樹脂材料としては、例えばPBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PA(ポリアミド)等の絶縁性樹脂を用いることができる。なお、第2エレメント212と第3エレメント213とを一体に形成してもよい。第1エレメント211は、本発明の外側ハウジング部材の一例であり、第2エレメント212は、本発明の内側ハウジング部材の一例である。
【0021】
第1エレメント211は、雄側接続端子311,312,313の接触片311a,312a,313aを収容する筒状の筒部211aと、雄側ハウジング21を機器のケース等の固定対象物に固定するための図略の貫通孔が形成されたフランジ部211bとを一体に有している。筒部211aの一端部(フランジ部211bとは反対側の端部)の外周面には、環状シール部材231が保持されている。また、フランジ部211bの一側面(筒部211aとは反対側の側面)には、環状シール部材232が保持されている。
【0022】
筒部211aには、その内外に貫通する保持孔211cが形成されている。この保持孔211cには、後述する回転部材51が回転可能に保持されている。保持孔211cの内面には、保持孔211cの中心に向かって突出し、保持孔211cの中心軸線と平行に延びる突起211dが形成されている。また、筒部211aの内部には、保持孔211cに対向する凸部211eが形成されている。凸部211eは、保持孔211c側に向かって筒部211aの内面から突き出るように形成されている。
【0023】
また、筒部211aには、その外周側における保持孔211cの近傍に、保持孔211cの中心軸に直交する方向に突出した支持突起211fが形成されている。支持突起211fは、保持孔211cのフランジ部211bとは反対側の部位に、雄側ハウジング21と雌側ハウジング22との嵌合方向(図1A及び図1Bに示すX軸方向。以下、「コネクタ嵌合方向」という。)に沿って、フランジ部211bの反対側に向かって突出して形成されている。
【0024】
また、筒部211aには、図1Aに示すように、その外周面に雌コネクタ12の雌側ハウジング22とランス嵌合するための嵌合突起211gが設けられている。またさらに、筒部211aには、フランジ部211bの近傍に、後述する蓋部材6をスライド可能に支持するためのスライド溝211hが形成されている。
【0025】
第2エレメント212は、その一部が第1エレメント211の筒部211aに収容されて、第1エレメント211に保持されている。第2エレメント212と第1エレメント211のフランジ部211bとの間には、シール部材233が配置されている。
【0026】
第2エレメント212は、第1エレメント211の筒部211aに収容された一対の壁部212a,212b(図1Bには壁部212aのみ示す)と、第1エレメント211から突出した部分の端部に形成された端子台部212cと、一対の壁部212a,212bと端子台部212cとの間に形成され、第3エレメント213を保持する保持部212dとを一体に有している。
【0027】
保持部212dには、雄側接続端子311,312,313の連結部311b,312b,313bを挿通させる3つの挿通孔212eが形成されている。この3つの挿通孔212eの内部には、第2エレメント212と雄側接続端子311,312,313の連結部311b,312b,313bとの間をシールする3つのシール部材234〜236がそれぞれ配置されている。
【0028】
端子台部212cには、雄側接続端子311,312,313の座金片311c,312c,313cが並列して保持されている。座金片311c,312c,313c及び端子台部212cには、接続対象の端子を固定するためのボルトを挿通させる3つの貫通孔31cが形成されている。
【0029】
第3エレメント213は、雄側接続端子311,312,313のそれぞれに対応して3か所に形成された突起部213aと、突起部213aよりも接触片311a,312a,313a側に形成され、連結部311b,312b,313bを案内するガイド部213bとを有している。そして、第3エレメント213は、突起部213aによって雄側接続端子311,312,313の連結部311b,312b,313bを支持している。
【0030】
また、雄コネクタ11は、第1エレメント211に回転可能に支持された回転部材51、回転部材51の回転によるカム作用によって回転部材51の回転軸線方向に進退移動するカムリング52、及びカムリング52に一端が当接するコイルバネ53、コイルバネ53の他端が当接する金属製の座金530、及び座金530を収容する凹部が形成された出力部材54を有して構成される押圧機構5を備えている。回転部材51及びカムリング52は、例えばアルミニウム等の金属からなる。
【0031】
回転部材51は、有底円筒状であり、円板状の底部511と、底部511によって一端が閉塞される円筒状の円筒部512とを一体に有している。カムリング52もまた有底円筒状であり、円板状の底部521と、底部521によって一端が閉塞される円筒状の円筒部522とを一体に有している。カムリング52の底部521、及び円筒部522の一部は、回転部材51の円筒部512内に収容されている。
【0032】
回転部材51は、保持孔211cの内面に形成された環状の溝に係止された環状保持部材214に底部511が当接することによって、第1エレメント211に対する軸方向移動が規制されている。また、円筒部512と保持孔211cとの間には、環状のシール部材237が配置されている。
【0033】
出力部材54は、第2エレメント212の一対の壁部212a,212bに支持されている。出力部材54と雄側接続端子311の接触片311aとの間には、後述する第1絶縁部材41及び雌側接続端子321が挿入される隙間が形成されている。出力部材54の支持構造、及び押圧機構5の動作の詳細については後述する。
【0034】
雄コネクタ11はさらに、回転部材51の少なくとも一部を覆う蓋部材6を備えている。この蓋部材6は、コネクタ嵌合方向に沿って、第1エレメント211に対してスライド可能である。
【0035】
蓋部材6は、保持孔211cに保持された回転部材51の外面を覆うように配置される本体部60と、スライド溝211hに係合して本体部60の一端を支持する第1の支持部61と、支持突起211fに係合して本体部60の他端を支持する第2の支持部62とを一体に有している。本体部60には、回転部材51の底部511に形成された工具受容部511aに挿入される工具を挿通させる工具挿通孔60a、及びフランジ部211b側へのスライドによって回転部材51の回転を規制することが可能な突起601が形成されている。なお、第1の支持部61は、本体部60を挟むように2つ設けられているが、図1Aでは一方の第1の支持部61のみを示している。
【0036】
(雌コネクタ12の構成)
雌コネクタ12は、複数の第2接続端子としての雌側接続端子321,322,323と、雌側接続端子321,322,323を保持する第2ハウジングとしての雌側ハウジング22とを有している。雌側接続端子321,322,323には、電線131,132,133が電気的に接続されている。電線131,132,133は、導電性の金属からなる芯線131a,132a,133aを、その先端部を除き、絶縁被膜131b,132b,133bで覆って構成されている。芯線131a,132a,133aの断面積は、例えば10〜40mm2である。
【0037】
雌側接続端子321,322,323は、例えば銅合金からなる基材の表面を錫めっきしてなり、一端が平板状の接触片321a,322a,323aとして形成されている。また、他端は電線131,132,133の芯線131a,132a,133aの先端部を加締め固定する加締め部321b,322b,323bとして形成されている。
【0038】
雌側ハウジング22は、第1エレメント221と、第1エレメント221に保持された第2エレメント222とからなる。第1エレメント221及び第2エレメント222の材料としては、雄側ハウジング21の第2エレメント212及び第3エレメント213と同様の絶縁性樹脂を用いることができる。
【0039】
第1エレメント221は、雌側接続端子321,322,323の接触片321a,322a,323aを収容する収容部221aと、雌側接続端子321,322,323の加締め部321b,322b,323bを保持する保持部221bとを一体に有している。
【0040】
収容部221aには、雄側ハウジング21と雌側ハウジング22の嵌合時において回転部材51の工具受容部511aに対応する位置に、貫通孔221cが形成されている。また、収容部221aの外側の面には、図1Aに示すように、雄コネクタ11の第1エレメント211に設けられた嵌合突起211gとランス嵌合する嵌合凹部221dが形成されている。
【0041】
保持部221bは、その外周囲の一部が金属製のカバー部材14によって覆われている。また、電線131,132,133を挿通させる保持部221bの開口221eには、電線131,132,133と開口221eの内面との間を封止するシール部材223が配置されている。また、保持部221bの外面には、雄コネクタ11の第1エレメント211との間を封止するためのシール部材224が配置されている。
【0042】
第2エレメント222は、電気絶縁性を有する絶縁材料からなる第1絶縁部材41、第2絶縁部材42、第3絶縁部材43、及び第4絶縁部材44を保持している。この絶縁材料としては、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)、PPA(ポリフタルアミド)、PA(ポリアミド)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)や、エポキシ系樹脂等の樹脂材料を用いることができる。
【0043】
第1絶縁部材41と第2絶縁部材42との間には接触片321aが、第2絶縁部材42と第3絶縁部材43との間には接触片322aが、第3絶縁部材43と第4絶縁部材44との間には接触片323aが、それぞれ介在している。
【0044】
第1絶縁部材41には、凹部41aが形成され、この凹部41aに接触片321aが保持されている。同様に、第2絶縁部材42及び第3絶縁部材43には、凹部42a,43aが形成され、この凹部42a,43aに接触片322a,323aが保持されている。
【0045】
第2エレメント222は、第1絶縁部材41、第2絶縁部材42、第3絶縁部材43、及び第4絶縁部材44を、接触片321a,322a,323aに垂直な方向(Y軸方向)に配列し、これら第1〜第4絶縁部材41〜44をY軸方向に所定の範囲で移動可能に保持している。
【0046】
図2Aは、雄側ハウジング21と雌側ハウジング22とが嵌合し、雄コネクタ11と雌コネクタ12が結合された状態におけるコネクタ装置10の構成例を示す外観図である。図2Bは、図2Aの断面図である。
【0047】
図2A及び図2Bでは、雄コネクタ11の第1エレメント211の筒部211aが蓋部材6と共に雌コネクタ12の第1エレメント221の収容部221aに収容され、雄側ハウジング21と雌側ハウジング22との嵌合が完了した嵌合状態を示している。
【0048】
この嵌合状態では、雌側ハウジング22の第1エレメント221における収容部221aに形成された貫通孔221cが、回転部材51の工具受容部511a、及び蓋部材6の工具挿通孔60aに対応する位置にあり、貫通孔221c及び工具挿通孔60aを介して外部から工具受容部511aに工具Tを嵌め合わせることが可能である。
【0049】
また、この嵌合状態では、雄側接続端子311の接触片311aが、第1絶縁部材41に保持された雌側接続端子321の接触片321aと第2絶縁部材42との間に挟まれている。また、雄側接続端子312の接触片312aが、第2絶縁部材42に保持された雌側接続端子322の接触片322aと第3絶縁部材43との間に挟まれている。またさらに、雄側接続端子313の接触片313aが、第3絶縁部材43に保持された雌側接続端子323の接触片323aと第4絶縁部材44との間に挟まれている。
【0050】
このように、雄側ハウジング21と雌側ハウジング22との嵌合状態では、雄側接続端子311〜313、雌側接続端子321〜323、及び第1〜第4絶縁部材41〜44がY軸に平行に積層される。より詳細には、第1絶縁部材41、雌側接続端子321の接触片321a、雄側接続端子311の接触片311a、第2絶縁部材42、雌側接続端子322の接触片322a、雄側接続端子312の接触片312a、第3絶縁部材43、雌側接続端子323の接触片323a、雄側接続端子313の接触片313a、及び第4絶縁部材44が、積層方向に上記の順序で積層された積層構造となる。
【0051】
すなわち、第1絶縁部材41、第2絶縁部材42、第3絶縁部材43、及び第4絶縁部材44は、雄側ハウジング21と雌側ハウジング22とが嵌合されたとき、雄側接続端子311と雌側接続端子321、雄側接続端子312と雌側接続端子322、及び雄側接続端子313と雌側接続端子323の各接点間に介在する。
【0052】
コネクタ装置10は、雄コネクタ11と雌コネクタ12とを結合し、回転部材51を回転させて押圧機構5に雄側接続端子311,312,313と雌側接続端子321,322,323とを積層方向に押圧する押圧力を発生させ、さらに蓋部材6をスライドさせることにより、雄コネクタ11と雌コネクタ12とを接続させる作業工程が完了する。
【0053】
図2Cは、回転部材51の回転に伴って、カムリング52が回転部材51から離間する方向に移動した状態を示している。この状態では、押圧機構5が、積層構造となった雄側接続端子311〜313、雌側接続端子321〜323、及び第1〜第4絶縁部材41〜44を積層方向に押圧する押圧力を発生している。この押圧力により、雄側接続端子311〜313と雌側接続端子321〜323とが、それぞれの接点において互いに接触する方向の荷重を受けて接触している。
【0054】
また、蓋部材6が、スライド溝211h(図1Aに示す)に案内されてフランジ部211b側に移動し、突起601が回転部材51の底部511に形成された凹部511cに係合して、回転部材51の回転が規制されている。また、蓋部材6の工具挿通孔60aが工具受容部511aからずれた位置に移動し、工具Tを工具受容部511aに嵌め合わせることが抑止されている。これにより、振動や誤操作等によって回転部材51が回転し、押圧機構5による押圧力が低下することが抑制されている。
【0055】
(押圧機構5の構成)
押圧機構5は、雄側ハウジング21と雌側ハウジング22との嵌合状態における回転部材51の回転により、雄側接続端子311〜313、雌側接続端子321〜323、及び第1〜第4絶縁部材41〜44からなる積層構造をこれらの積層方向に押圧する押圧力を発生する。
【0056】
図3は、回転部材51及びカムリング52の構造及び動作を示し、(a)は回転部材51及びカムリング52の斜視図、(b)〜(d)は回転部材51及びカムリング52の動作状態を示す側面図である。
【0057】
回転部材51の底部511には、第1の凹部511bと、第2の凹部511cとが形成されている。第1の凹部511bには、雄側ハウジング21と雌側ハウジング22との未嵌合状態における回転部材51の回転を規制する、蓋部材6に設けられた図略の突起が係合する。
【0058】
円筒部512には、シール部材237(図1Bに示す)を保持するための環状凹所512aが形成されている。また、円筒部512の底部511とは反対側の端部には、回転部材51の回転軸線Oに平行な方向に突出する摺動突起512bが形成されている。なお、摺動突起512bは、円筒部512の周方向に等間隔に複数(本実施の形態では2つ)形成されているが、図3(a)では、このうちの1つの摺動突起512bのみを示している。
【0059】
カムリング52は、回転部材51と回転軸線Oに沿って相対移動可能に組み合わされ、コイルバネ53(図1Bに示す)によって回転部材51の底部511に向かって付勢されている。カムリング52の円筒部522は、小径部522aと大径部522bとからなる。大径部522bの外周面には、円筒部522の軸方向に沿って延びるスライド溝522cが形成されている。スライド溝522cは、前述の突起211d(図1Bに示す)にスライド可能に係合し、カムリング52を雄側ハウジング21に対して回り止めしている。
【0060】
小径部522aと大径部522bとの間には、回転部材51の回転に伴ってその摺動突起512bが摺動する摺動面523が形成されている。摺動面523は、第1の平坦面523aと、第1の平坦面523aに平行な第2の平坦面523cと、第1の平坦面523aと第2の平坦面523cとの間に形成された傾斜面523bとから構成されている。第1の平坦面523aは、第2の平坦面523cよりも回転部材51から離間した位置に形成されている。傾斜面523bは、円筒部522の軸方向に対して傾斜し、第1の平坦面523aと第2の平坦面523cとの間を一定の傾斜角で接続するように形成されている。
【0061】
大径部522bには、第2の平坦面523cに連続して、円筒部522の軸方向に窪んだ凹部522dが形成されている。この凹部522dには、回転部材51の摺動突起512bが嵌合可能である。また、凹部522dの第2の平坦面523cとは反対側の端部には、摺動突起512bの円筒部522の周方向一側への移動を規制するように突出したストッパ部522eが形成されている。
【0062】
図3(b)は、回転部材51の摺動突起512bが、カムリング52の第1の平坦面523aに当接する位置にある初期状態を示している。この初期状態から回転部材51がカムリング52に対して正方向(図3(a)の矢印R1に示す方向)に回転すると、図3(c)に示すように、回転部材51の摺動突起512bがカムリング52の傾斜面523b上を摺動し、カムリング52が回転軸線Oに沿って回転部材51から離間する。
【0063】
さらに回転部材51がカムリング52に対して正方向に回転すると、図3(d)に示すように、回転部材51の摺動突起512bがカムリング52の第2の平坦面523c上を摺動する。
【0064】
さらに回転部材51がカムリング52に対して正方向に回転すると、図3(a)に示すように、回転部材51の摺動突起512bが凹部522dに嵌合し、回転部材51の正方向への回転がストッパ部522eによって規制された状態となる。
【0065】
上記のように、回転部材51が正方向に回転することによってカムリング52が回転軸線Oに沿って回転部材51から離間する方向に移動し、コイルバネ53が圧縮される。この際、回転部材51は回転軸線O方向に移動せず、環状保持部材214と摺接する。
【0066】
コイルバネ53は、その復元力によって出力部材54を押圧する。出力部材54と雄側ハウジング21の第1エレメント211に形成された凸部211eとの間には、雄側接続端子311〜313、雌側接続端子321〜323、及び第1〜第4絶縁部材41〜44からなる積層構造が介在するので、圧縮されたコイルバネ53の復元力が上記積層構造を積層方向に押圧する押圧力となる。すなわち、出力部材54は、コイルバネ53の弾性力を受け、この弾性力を積層構造を押圧する押圧力として出力する。
【0067】
(出力部材54の構成及び支持構造)
図4は、出力部材54の構成例を示し、(a)は側面図、(b)は斜視図である。この出力部材54の材料としては、雄側ハウジング21の第2エレメント212及び第3エレメント213と同様の絶縁性樹脂を用いることができる。
【0068】
図4(a)及び(b)に示すように、出力部材54は、一対の被支持部541,542と、被支持部541と被支持部542との間に形成された受圧部543とを一体に有している。受圧部543は、図1Bに示すように、座金530及びコイルバネ53の一端部を収容する凹部の底面として形成され、コイルバネ53の弾性力を受ける平板状に形成されている。
【0069】
被支持部541,542は、受圧部543と平行な板状の当接片541a,542aと、当接片541a,542aに直交する方向に突出した板状の突出片541b,542bとを有するL字状に形成されている。当接片541a,542aと受圧部543との間には段差が形成され、この段差によって受圧部543が被支持部541,542に対して窪むように形成されている。
【0070】
突出片541b,542bは、被支持部541,542に対して受圧部543から離間する方向に突出して形成されている。なお、本実施の形態では、突出片541bと突出片542bとが互いに分離して形成されているが、突出片541bと突出片542bとを連続して形成してもよい。
【0071】
出力部材54は、雄側ハウジング21と雌側ハウジング22とが嵌合されていないとき、第2エレメント212の一対の壁部212a,212bに被支持部541,542がそれぞれ当接して支持される。
【0072】
図5は、雄側ハウジング21の第2エレメント212及び第3エレメント213の構成例を示し、(a)は図1Aと同方向から見た平面図、(b)は斜視図である。
【0073】
一対の壁部212a,212bは、互いに平行な平板状であり、第3エレメント213を保持する第2エレメント212の保持部212dから、端子台部212cとは反対方向に突出して形成されている。壁部212aと壁部212bとは、雄側接続端子311〜313の接触片311a〜313aを挟んで互いに対向している。
【0074】
雄側接続端子311〜313は、第3エレメント213のガイド部213b(図1Bに示す)に案内され、接触片311a〜313aが第3エレメント213の端面から一対の壁部212a,212bの間に突出している。第3エレメント213には、第1エレメント211の筒部211aの内面に係合する2つの係合突起213cが形成されている。
【0075】
壁部212a及び壁部212bは、四角形状の一角部が長方形状に切り欠かれた切欠き形状を有し、この切り欠かれた部分に、コネクタ嵌合方向に平行な第1の端面212a1,212b1、及びコネクタ嵌合方向に垂直な第2の端面212a2,212b2が形成されている。
【0076】
図6は、出力部材54が一対の壁部212a,212bに支持された状態を示し、(a)は平面図、(b)は斜視図である。
【0077】
出力部材54は、被支持部541,542が一対の壁部212a,212bにおける上記積層構造の積層方向の一端部(回転部材51側の端部)に当接して支持される。より具体的には、出力部材54は、被支持部541,542の当接片541a,542aが、一対の壁部212a,212bの第1の端面212a1,212b1に当接して、上記積層構造の積層方向に支持される。
【0078】
また、出力部材54は、被支持部541,542の突出片541b,542bが一対の壁部212a,212bの第2の端面212a2,212b2に当接して、コネクタ嵌合方向に支持される。また、受圧部543は、第1の端面212a1,212b1よりも雄側接続端子311の接触片311a側に窪むように配置される。
【0079】
図7は、雄コネクタ11の構成例を示し、(a)は雌側ハウジング22に嵌合される側の端部を示す斜視図、(b)は斜視断面図である。
【0080】
図7に示すように、一対の壁部212a,212bは、第1エレメント211の筒部211aと雄側接続端子311〜313の接触片311a〜313aとの間に介在し、第1エレメント211を介した雄側接続端子311〜313の間(又は雌側接続端子321〜323の間)の短絡又は漏電を防止する機能を有している。
【0081】
第1エレメント211には、一対の壁部212a,212bの第1の端面212a1,212b1との間に出力部材54の当接片541a,542aを挟むように、一対の突起211i,211jが形成されている。第1の端面212a1,212b1と一対の突起211i,211jとの間の隙間は、当接片541a,542aの厚みよりも大きな寸法に形成されている。
【0082】
本実施の形態では、雄側ハウジング21と雌側ハウジング22との未嵌合状態で、出力部材54の当接片541a,542aが、コイルバネ53の弾性力によって第1の端面212a1,212b1に押し付けられるように構成されている。ただし、この未嵌合状態で、当接片541a,542aが第1の端面212a1,212b1に押し付けられないように、すなわち出力部材54が積層方向のガタを有するように、一対の壁部212a,212bに支持されていてもよい。
【0083】
図8(a)は、図7(a)とは異なる角度から見た雄コネクタ11の斜視図であり、図8(b)は、その斜視断面図である。
【0084】
図8に示すように、第1エレメント211の突起211jと壁部212bの第2の端面212b2(図5参照)との間には、コネクタ嵌合方向の隙間が形成され、この隙間に出力部材54の突出片542bが介在している。すなわち、壁部212bの第2の端面212b2と突起211jとの間に、出力部材54の一部(突出片542b)が介在している。また、図示は省略しているが、第1エレメント211の突起211iと壁部212aの第2の端面212a2との間にも、コネクタ嵌合方向の隙間が形成され、この隙間に出力部材54の突出片542aが介在している。これにより、出力部材54のコネクタ嵌合方向に沿った両方向(雄側ハウジング21と雌側ハウジング22との嵌合方向及びその逆の離脱方向)への移動が規制されている。
【0085】
図9A(a)は図8(a)のA−A線断面図であり、図9A(b)は図9A(a)の部分拡大図である。図9A(c)は、図9A(b)において出力部材54が積層方向に移動した状態を示す図である。また、図9Bは、図9A(b)において出力部材54及びコイルバネ53の図示を省略し、壁部212bと突起211jとの間の隙間を明示した説明図である。
【0086】
図9Bに示すように、突起211jには、壁部212bの第1の端面212b1に対向する第1の端面211j1と、壁部212bの第2の端面212b2に対向する第2の端面211j2とが形成されている。第1の端面212b1と第1の端面211j1、及び第2の端面212b2と第2の端面211j2は、それぞれ互いに平行となるように形成されている。
【0087】
壁部212bの第1の端面212b1と突起211jの第1の端面211j1との間には、第1の隙間S1が形成されている。また、壁部212bの第2の端面212b2と突起211jの第2の端面211j2との間には、第2の隙間S2が形成されている。すなわち、第2の隙間S2は、コネクタ嵌合方向に互いに対向する第2の端面212b2と第2の端面211j2との間に形成されたコネクタ嵌合方向の隙間である。
【0088】
第1の隙間S1は、コネクタ嵌合方向に沿って延びるように形成され、第2の隙間S2は、第1の隙間S1の一端部(端子台部212c側の端部)からコネクタ嵌合方向に対して直交するように形成されている。このように、壁部212bと突起211jとの間には、第1の隙間S1及び第2の隙間S2からなるL字状の隙間が形成されている。
【0089】
図9A(b)に示すように、出力部材54の当接片542aは、壁部212bの第1の端面212b1と突起211jの第1の端面211j1との間、すなわち第1の隙間S1に介在している。第1の端面212b1と第1の端面211j1との間の距離は、当接片542aの厚みよりも大きな寸法に設定されているので、当接片542aが壁部212bの第1の端面212b1に当接した状態では、当接片542aと第1の端面211j1との間に空間が形成されている。出力部材54は、この空間の範囲で、当接片542aに垂直な方向(上記積層構造の積層方向)に移動可能である。
【0090】
また、出力部材54の突出片542bは、壁部212bの第2の端面212b2と第2の端面212b2に対向する突起211jの第2の端面211j2との間、すなわち第2の隙間S2に介在している。第2の端面212b2と第2の端面211j2との間の距離は、突出片542bの厚みよりも僅かに大きな寸法に設定されている。これにより、出力部材54は、コネクタ嵌合方向(図9A(b)の左方向)の外力を受けた場合には、突出片542bが壁部212bの第2の端面212b2に当接し、その反対方向(図9A(b)の右方向)の外力を受けた場合には、突出片542bが突起211jの第2の端面211j2に当接して、雄側ハウジング21に対する移動が規制される。なお、突出片542a、壁部212a、及び突起211iについても同様に構成されている。
【0091】
雄側ハウジング21と雌側ハウジング22とが嵌合されると、雄側接続端子311〜313、雌側接続端子321〜323、及び第1〜第4絶縁部材41〜44が積層構造となるので、出力部材54が第1絶縁部材41によってカムリング52側に押し上げられ、当接片541a,542aが一対の壁部212a,212bの第1の端面212a1,212b1から離間する。この状態で回転部材51が回転されると、カムリング52が回転部材51に対して出力部材54に接近するように移動し、コイルバネ53が圧縮される。
【0092】
出力部材54は、圧縮されたコイルバネ53の弾性力を受け、雄側接続端子311〜313と雌側接続端子321〜323とを、それぞれの接点において互いに接触させるように、積層方向に押圧する。これにより、各接点における確実な接触が得られる。
【0093】
なお、第1エレメント211への出力部材54、及び第2エレメント212の組み付けは、出力部材54をコイルバネ53の弾性力に抗してカムリング52側に押し付けた状態で、第2エレメント212を第3エレメント213と共に第1エレメント211の筒部211a内に圧入することにより、行うことができる。
【0094】
(本実施の形態の作用及び効果)
以上説明した本実施の形態によれば、以下のような効果が得られる。
【0095】
(1)雄側ハウジング21と雌側ハウジング22とが未嵌合状態であるとき、出力部材54を例えばコイルバネ53との接着によって保持することなく、雄側ハウジング21内に支持することが可能となる。これにより、コネクタ装置10の強度を高め、かつ組み付けを容易化することができる。
【0096】
(2)出力部材54は、一対の壁部212a,212bにそれぞれ当接する一対の被支持部541,542の間に、コイルバネ53の弾性力を受ける受圧部543が形成されているので、出力部材54の雄側ハウジング21内における姿勢を安定させることができる。これにより、雄側ハウジング21と雌側ハウジング22との嵌合を円滑に行うことができる。
【0097】
(3)出力部材54は、一対の被支持部541,542の突出片541b,542bが、一対の壁部212a,212bと第1エレメント211の突起211i,211jとの間に、コネクタ嵌合方向に沿った両側から挟まれるように介在するので、出力部材54のコネクタ嵌合方向及びその逆方向への雄側ハウジング21に対する移動が規制される。これにより、簡素な構成で出力部材54を支持することができ、コネクタ装置10を小型化することが可能となる。
【0098】
(4)雄側ハウジング21と雌側ハウジング22との未嵌合状態で、出力部材54がコイルバネ53によって一対の壁部212a,212bに押し付けられるように雄コネクタ11を構成すれば、未嵌合状態における出力部材54の位置及び姿勢を安定させることができる。また、予めコイルバネ53を圧縮しておくことで、雄側ハウジング21と雌側ハウジング22との嵌合後に積層構造を押圧する押圧力を高めることが可能となる。
【0099】
以上、本発明の各実施の形態を説明したが、上記に記載した各実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、各実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0100】
また、本発明は、上記実施の形態に記載した構成に限らず、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、雄側接続端子及び雌側接続端子の数がそれぞれ3である場合について説明したが、これに限らず、2又は4以上であってもよい。また、コネクタ装置の用途にも制限はない。
【符号の説明】
【0101】
5…押圧機構、6…蓋部材、10…コネクタ装置、11…雄コネクタ、12…雌コネクタ、14…カバー部材、21…雄側ハウジング(第1ハウジング)、22…雌側ハウジング(第2ハウジング)、31c…貫通孔、41〜44…第1〜第4絶縁部材、41a,42a,43a…凹部、51…回転部材、52…カムリング、53…コイルバネ(弾性部材)、54…出力部材、60…本体部、60a…工具挿通孔、61…第1の支持部、62…第2の支持部、131,132,133…電線、131a,132a,133a…芯線、131b,132b,133b…絶縁被膜、211…第1エレメント(外側ハウジング部材)、211a…筒部、211b…フランジ部、211c…保持孔、211d…突起、211e…凸部、211f…支持突起、211g…嵌合突起、211h…スライド溝、211i,211j…突起、211j1…第1の端面,211j2…第2の端面、212…第2エレメント(内側ハウジング部材)、212a,212b…壁部、212a1,212b1…第1の端面、212a2,212b2…第2の端面、212c…端子台部、212d…保持部、212e…挿通孔、213…第3エレメント、213a…突起部、213b…ガイド部、213c…係合突起、214…環状保持部材、221…第1エレメント、221a…収容部、221b…保持部、221c…貫通孔、221d…嵌合凹部、221e…開口、222…第2エレメント、223,224…シール部材、231,232…環状シール部材、233〜237シール部材、311,312,313…雄側接続端子(第1接続端子)、311a,312a,313a…接触片、311b,312b,313b…連結部、311c,312c,313c…座金片、321,322,323…雌側接続端子(第2接続端子)、321a,322a,323a…接触片、321b,322b,323b…加締め部、511…底部、511a…工具受容部、511b…第1の凹部、511c…第2の凹部、512…円筒部、512a…環状凹所、512b…摺動突起、521…底部、522…円筒部、522a…小径部、522b…大径部、522c…スライド溝、522d…凹部、522e…ストッパ部、523…摺動面、523a…第1の平坦面、523b…傾斜面、523c…第2の平坦面、530…座金、541,542…被支持部、541a,542a…当接片、541b,542b…突出片、543…受圧部、601…突起、S1…第1の隙間、S2…第2の隙間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1接続端子と、
前記複数の第1接続端子にそれぞれ接続される複数の第2接続端子と、
前記複数の第1接続端子を保持する第1ハウジングと、
前記複数の第2接続端子を保持する第2ハウジングと、
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとが嵌合されたとき、前記複数の第1接続端子と前記複数の第2接続端子との各接点間に介在する複数の絶縁部材と、
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの嵌合により積層構造となった前記複数の第1接続端子、前記複数の第2接続端子、及び前記複数の絶縁部材をこれらの積層方向に押圧する押圧力を発生する押圧機構とを備え、
前記押圧機構は、前記第1ハウジングに回転可能に支持された回転部材と、前記回転部材の回転によって前記積層方向に圧縮される弾性部材と、前記弾性部材の弾性力を受けて前記押圧力として出力する出力部材とを有し、
前記第1ハウジングは、導電性を有する外側ハウジング部材と、前記複数の第1接続端子を挟んで互いに対向し、前記外側ハウジング部材と前記複数の第1接続端子との間に介在する絶縁性の一対の壁部を有する内側ハウジング部材とを有し、
前記出力部材は、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとが嵌合されていないとき、前記一対の壁部に当接することによって前記積層方向に支持される
コネクタ装置。
【請求項2】
前記出力部材は、前記一対の壁部の前記積層方向の端部にそれぞれ当接する一対の被支持部と、前記一対の被支持部の間に形成され、前記弾性部材の弾性力を受ける受圧部とを有する、
請求項1に記載のコネクタ装置。
【請求項3】
前記内側ハウジング部材と前記外側ハウジング部材との間には、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの嵌合方向の隙間が形成され、
前記出力部材は、前記一対の被支持部の少なくとも一部が前記隙間に介在することで、前記第1ハウジングに対する前記嵌合方向及びその逆方向への移動が規制されている、
請求項1又は2に記載のコネクタ装置。
【請求項1】
複数の第1接続端子と、
前記複数の第1接続端子にそれぞれ接続される複数の第2接続端子と、
前記複数の第1接続端子を保持する第1ハウジングと、
前記複数の第2接続端子を保持する第2ハウジングと、
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとが嵌合されたとき、前記複数の第1接続端子と前記複数の第2接続端子との各接点間に介在する複数の絶縁部材と、
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの嵌合により積層構造となった前記複数の第1接続端子、前記複数の第2接続端子、及び前記複数の絶縁部材をこれらの積層方向に押圧する押圧力を発生する押圧機構とを備え、
前記押圧機構は、前記第1ハウジングに回転可能に支持された回転部材と、前記回転部材の回転によって前記積層方向に圧縮される弾性部材と、前記弾性部材の弾性力を受けて前記押圧力として出力する出力部材とを有し、
前記第1ハウジングは、導電性を有する外側ハウジング部材と、前記複数の第1接続端子を挟んで互いに対向し、前記外側ハウジング部材と前記複数の第1接続端子との間に介在する絶縁性の一対の壁部を有する内側ハウジング部材とを有し、
前記出力部材は、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとが嵌合されていないとき、前記一対の壁部に当接することによって前記積層方向に支持される
コネクタ装置。
【請求項2】
前記出力部材は、前記一対の壁部の前記積層方向の端部にそれぞれ当接する一対の被支持部と、前記一対の被支持部の間に形成され、前記弾性部材の弾性力を受ける受圧部とを有する、
請求項1に記載のコネクタ装置。
【請求項3】
前記内側ハウジング部材と前記外側ハウジング部材との間には、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの嵌合方向の隙間が形成され、
前記出力部材は、前記一対の被支持部の少なくとも一部が前記隙間に介在することで、前記第1ハウジングに対する前記嵌合方向及びその逆方向への移動が規制されている、
請求項1又は2に記載のコネクタ装置。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【公開番号】特開2013−89344(P2013−89344A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226555(P2011−226555)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】
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