説明

コネクタ

【課題】ハウジングとフロントホルダとの間のガタつき、及びフロントホルダの保持力低下を抑制できるコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ11は、後方からメス端子が挿入される端子収容室17を有する筒型形状のハウジング13と、相手端子挿入孔45を有してハウジング13の前端部51に対してコネクタ嵌合方向に直交する上方から挿入され、ハウジング13の両側壁53に設けたロック部55に係止されるフロントホルダ15と、を備える。フロントホルダ15の両側面上部63には、ハウジング13に装着された際に、ハウジング13の前端部51における両側壁上端部67を内方へ押圧付勢するように係合する押圧部65が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタには、端子収容室に接続端子の前方抜け防止壁を設けるためや、端子を二重係止するためのフロントホルダを備えるものがある(例えば、特許文献1参照)。
図7に示すコネクタ501は、ハウジング503と、フロントホルダ505と、接続端子と、を有して構成されている。ハウジング503には接続端子であるメス端子507を収容する端子収容室509が形成され、端子収容室509にはメス端子507の後方抜けを防止するランス511が設けられている(図7(b)参照)。メス端子507にはランス511が係止するランス係止部513が設けられている。ランス前方のハウジング503には、フロントホルダ505を収容するホルダ収容空間515が形成される。
フロントホルダ505は、ハウジング503の上面517からホルダ収容空間515に挿着され、端子収容室509の前方に前方抜け防止壁525を区画形成する。
【0003】
図7(c)に示すように、ハウジング503の両側壁519には、フロントホルダ505のロック突起521と係止する凹状のロック部523が形成される。ロック部523は、ハウジング503の左右対称位置で設けられる。フロントホルダ505は、ハウジング503の上方から矢印Y方向に挿着され、側面に突設したロック突起521がロック部523に係止されることでホルダ収容空間515に収容保持される。即ち、コネクタ嵌合方向と直交するハウジング503の上方から挿着されたフロントホルダ505のロック突起521がハウジング503のロック部523に係止されることで、コンパクトなロック構造としながら、フロントホルダ505のコネクタ前方への移動を確実に規制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−277763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来のコネクタ501は、ホルダ収容空間515へのフロントホルダ505の挿入時に、適正な挿入方向から挿入されずに抉られたり、フロントホルダ505自体の挿入性が悪かったりすると、ハウジング503の前端部527におけるホルダ挿入開口部529を無理やり開いてフロントホルダ505が挿入され、両側壁519が矢印X方向の外側に変形してしまう可能性があった。この様に両側壁519が開き方向に変形すると、ハウジング503とフロントホルダ505の間にガタつきが発生したり、ロック部523に対するロック突起521の係り代が減少してフロントホルダ505の保持力が低下したりする虞がある。
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、ハウジングとフロントホルダとの間のガタつき、及びフロントホルダの保持力低下を抑制できるコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 後方から接続端子が挿入される端子収容室を有する筒型形状のハウジングと、相手端子挿入孔を有して前記ハウジングの前端部に対してコネクタ嵌合方向に直交する上方から挿着され、前記ハウジングの両側壁に設けたロック部にロック突起が係止されるフロントホルダと、を備えるコネクタであって、前記フロントホルダの両側面上部には、前記ハウジングに装着された際に、前記ハウジングの前端部における両側壁上端部を内方へ押圧付勢するように係合する押圧部が設けられることを特徴とするコネクタ。
【0008】
上記(1)の構成のコネクタによれば、ハウジングの前端部に対してコネクタ嵌合方向に直交する上方からフロントホルダが挿入されると、フロントホルダの両側面上部に設けた押圧部がハウジングの両側壁上端部を内方へ押圧付勢して両側壁を内方へ撓ませることができる。これにより、挿入時のフロントホルダの抉り等によりハウジングの両側壁が開き方向に変形してしまった場合でも、ハウジングとフロントホルダとの間に発生するガタつきを抑制し、ロック部に対するロック突起の係り代を増加させてフロントホルダの保持力を向上させることができる。
【0009】
(2) 上記(1)の構成のコネクタであって、前記押圧部が、前記ハウジングの前端部における両側壁上端部に当接して内方へ撓ませるテーパ部を有することを特徴とするコネクタ。
【0010】
上記(2)の構成のコネクタによれば、フロントホルダが挿着完了の直前になると、押圧部に設けられたテーパ部がハウジングの両側壁上端部を内方へ押圧付勢するよう係合する。そこで、簡単な構造で両側壁を内方へ撓ませることができると共に、フロントホルダの挿入が容易に行える。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るコネクタによれば、ハウジングとフロントホルダとの間のガタつき、及びフロントホルダの保持力低下を抑制できる。
【0012】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係るコネクタのフロントホルダをハウジングから分離した全体斜視図である。
【図2】(a)は図1に示したコネクタのフロントホルダを装着した状態の縦断面図、(b)は(a)のB部拡大図である。
【図3】図1に示したコネクタの正面図である。
【図4】図3に示したハウジングにフロントホルダが装着された状態の正面図である。
【図5】(a)は図3のC部拡大断面図、(b)は図4のD部拡大断面図である。
【図6】(a)は図3のE部拡大図、(b)は図3のF部拡大図、(c)は図4のG部拡大図である。
【図7】(a)はフロントホルダが装着された従来のコネクタの正面図、(b)は(a)の縦断面図、(c)は(a)のA部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るコネクタ11は、筒型に形成されるハウジング13と、このハウジング13に装着されるフロントホルダ15と、を有する。ハウジング13は、樹脂製(例えばPBT:ポリブチレンテレフタート等)の一体成形品からなる。なお、本明細書中、ハウジング13は相手コネクタとの嵌合側を前、その反対側を後とし、フロントホルダ15の挿着側を上とする。
【0015】
ハウジング13には、複数の横並びの端子収容室17が上下に形成されている。図2に示すように、端子収容室17には、ハウジング13の後方から接続端子であるメス端子19が挿入される。端子収容室17には、メス端子19の後方抜けを阻止するランス21が設けられる。メス端子19にはランス21が係止するランス係止部23が設けられる。
【0016】
メス端子19の後端には電線25が接続され、電線25はハウジング13の後面27から導出される。後面27から導出された電線25は、ハウジング13の後面27に取り付けられる電線カバー(図示せず)によって所望方向に向けられて覆われる。
【0017】
図1及び図3に示すように、ハウジング13は、略直方体形状であり、相手コネクタとの嵌合側に嵌合ブロック部29が表出する。ハウジング13には外周壁31が形成され、外周壁31は嵌合ブロック部29の外側に離間して形成される。ハウジング13にはこの外周壁31に沿って空所33が周設され、空所33はコネクタ嵌合方向の前方に開口する。つまり、空所33は、外周壁31と嵌合ブロック部29との間に形成される環状空間となる。空所33の奥側には、嵌合ブロック部29の外周に嵌装されたパッキン(図示せず)が収容される。空所33の底面35にはパッキンの係止部分と係合する貫通孔37が穿設される。この空所33には、相手コネクタの套体部(図示せず)が挿入される。空所33に挿入された套体部は、パッキンによって嵌合ブロック部29との間が水密シールされる。
【0018】
嵌合ブロック部29の内方には、上記の端子収容室17が形成されている。嵌合ブロック部29の前面には、端子収容室17が開口している。嵌合ブロック部29の前部には、図1に示すホルダ収容空間39が形成される。ホルダ収容空間39は、ハウジング13の上面41に、フロントホルダ15の装着用のホルダ挿入開口部43を有する。
【0019】
フロントホルダ15には、端子収容室17に対応して複数の相手端子挿入孔45が形成されている。フロントホルダ15には、図2(b)に示すように、相手端子挿入孔45の後方に、メス端子19の先端部47を収容する先端収容スペース49が形成されている。フロントホルダ15は、ハウジング13の前端部51(図1参照)に形成されたホルダ収容空間39に、ホルダ挿入開口部43から挿着される。つまり、フロントホルダ15は、コネクタ嵌合方向に直交する上方(図3の矢印a方向)から挿着される。
【0020】
ホルダ収容空間39の両側におけるハウジング13の両側壁53には、図5(a)に示すように、凹状のロック部55が形成される。ロック部55は、ハウジング13の左右対称位置に設けられる。一方、フロントホルダ15の両側のホルダ側面57には、図5(b)に示すように、ロック突起59が突設される。ホルダ収容空間39に収容されたフロントホルダ15は、このロック突起59がロック部55に係止されることで、ホルダ収容空間39から上方への抜けが規制されると共に、コネクタ前方への移動が規制されて収容保持される。
【0021】
ホルダ収容空間39に保持されたフロントホルダ15は、図2(b)に示すように、メス端子19の前方抜けを防止する前方抜け防止壁61をそれぞれの端子収容室17の前方に区画形成する。つまり、コネクタ11は、ハウジング13とフロントホルダ15との2部品で端子収容室17を構成している。
【0022】
図6(a)に示すように、フロントホルダ15の両側面上部63には、外側に突出し且つ垂下する先細りの押圧部65が形成されている。ホルダ側面57の押圧部65の下方には、上記のロック突起59が位置する。
【0023】
一方、ハウジング13には、図6(b)に示すように、ロック部55が設けられた両側壁53の上方、すなわち、両側壁上端部67に押え部69が形成されている。押え部69は、ホルダ収容空間39の内方に向かって張り出し、且つ上方が開口した凹状に形成される。この押え部69には、フロントホルダ15の押圧部65が係合する。
【0024】
押圧部65は、フロントホルダ15がハウジング13に挿着された際に、図6(c)に示すように、押え部69に進入することで、ハウジング13の前端部51における両側壁上端部67を内方へ押圧付勢して両側壁53を内方へ撓ませるように係合する。
また、押圧部65にはテーパ部71が形成されている。このテーパ部71は、ハウジング13の両側壁上端部67に当接することで、両側壁上端部67を内方へ押圧付勢するように係合する。
【0025】
次に、上記構成を有するコネクタ11の作用を説明する。
本実施形態のコネクタ11では、ハウジング13の前端部51に設けられたホルダ収容空間39にフロントホルダ15が挿着されると、フロントホルダ15は、ロック突起59が両側壁53のロック部55に係止され、ホルダ収容空間39から上方への抜け及び前方への移動が規制される。
【0026】
このフロントホルダ15の挿入時、適正な挿入方向からホルダ挿入開口部43に挿入されずに抉られたり、フロントホルダ15自体の挿入性が悪かったりすると、ハウジング13の前端部51におけるホルダ挿入開口部43を無理やり押し開いてフロントホルダ15が挿入され、両側壁53が外側に変形して一時的に元の位置に弾性復元しないことがある。このようにハウジング13の両側壁53が開き方向に変形してしまった場合でも、フロントホルダ15が挿入完了直前になると、フロントホルダ15の押圧部65が、両側壁53の押え部69に係合を開始する。
【0027】
フロントホルダ15が更に挿入されると、押圧部65は、側壁上端部67の押え部69に進入し、図6(c)に示すように、押え部69に外側からラップする。ラップした押圧部65のテーパ部71は、押え部69を介してハウジング13の側壁上端部67を徐々に内方(図6(c)の矢印d方向)へ押圧付勢する。
フロントホルダ15の挿着が完了すると、押圧部65の押圧付勢力が最大となり、両側壁53の弾性復元が不完全であっても、両側壁上端部67が元の位置に配置されることとなる。これにより、ハウジング13とフロントホルダ15との間に発生するガタつきが抑制される。
【0028】
また、押圧部65がハウジング13の両側壁上端部67を内方へ押圧付勢して両側壁53を内方へ撓ませる。これにより、ハウジング13の両側壁53の開きが矯正されてロック部55に対するロック突起59の係り代を増加させてフロントホルダ15の保持力を向上させることができる。
【0029】
更に、本実施形態におけるフロントホルダ15は、押圧部65に設けられたテーパ部71がハウジング13の両側壁上端部67を徐々に内方へ押圧付勢するよう係合する。そこで、簡単な構造で両側壁上端部67を内方へ撓ませることができると共に、フロントホルダ15の挿入が容易に行える。
【0030】
従って、本実施形態に係るコネクタ11によれば、ハウジング13とフロントホルダ15との間のガタつき、及びフロントホルダ15の保持力低下を抑制できる。
なお、本発明のコネクタは、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0031】
11…コネクタ
13…ハウジング
15…フロントホルダ
17…端子収容室
19…メス端子(接続端子)
45…相手端子挿入孔
51…前端部
53…側壁
55…ロック部
59…ロック突起
63…側面上部
65…押圧部
67…側壁上端部
71…テーパ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後方から接続端子が挿入される端子収容室を有する筒型形状のハウジングと、
相手端子挿入孔を有して前記ハウジングの前端部に対してコネクタ嵌合方向に直交する上方から挿着され、前記ハウジングの両側壁に設けたロック部にロック突起が係止されるフロントホルダと、
を備えるコネクタであって、
前記フロントホルダの両側面上部には、前記ハウジングに装着された際に、前記ハウジングの前端部における両側壁上端部を内方へ押圧付勢するように係合する押圧部が設けられることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタであって、
前記押圧部が、前記ハウジングの前端部における両側壁上端部に当接して内方へ撓ませるテーパ部を有することを特徴とするコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−105592(P2013−105592A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247788(P2011−247788)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】