説明

コルゲート二重管

【課題】本発明は、可撓性があり、かつ圧縮扁平強度の高いコルゲート二重管を提供することにある。
【解決手段】平滑内面を有する円管状の内層管2とコルゲート形状の外層管3とからなるコルゲート二重管1であって、上記外層管3はポリプロピレンからなり、上記内層管2はポリプロピレンとポリエチレンと可撓性付与剤とからなるコルゲート二重管1を提供する。
該可撓性付与剤としてはスチレン系エラストマーおよび/またはオレフィン系エラストマーが使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電力通信ケーブルの保護管として使用されるコルゲート二重管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
〔発明の背景〕
この種の保護管としては、例えば障害物を回避する場合などには曲線配管が要求され、また、ケーブルを内側に挿通するために内面が平滑であることが要求される。このために従来から平滑内面を有する内層管と、コルゲート形状の外層管とからなるコルゲート二重管が提供されている。
この種の保護管としては、上記したように曲線配管に適合する可撓性が必要とされるが、更に該保護管は埋設された場合に土圧によって圧縮扁平されないよう、ある程度の剛性を必要とする。また更に、施工容易性を確保するために該保護管を配管する際の蛇行を低減させるとともに、埋設時、土圧によって管路が大きく撓んで変形しないよう、直進性(直線性)が要求される。更に、量産時には成形安定性を向上させて高水準の歩留まりを維持すべく、管肉厚などの外観上の均一化が必要とされる。
【0003】
〔従来の技術〕
従来は内層管、外層管共にポリプロピレンを材料としたコルゲート二重管(特許文献1参照)、内層管、外層管共にポリエチレンを材料としたコルゲート二重管(特許文献2参照)、内層管にポリオレフィンエラストマーを材料とし、外層管に高密度ポリエチレンを材料としたコルゲート二重管(特許文献3参照)が提供されている。
【0004】
【特許文献1】特開昭61−215883号公報
【特許文献2】特開2003−227584号公報
【特許文献3】特開2002−257269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
内層管、外層管共にポリプロピレンを材料としたものは、所望の剛性や直進性が得られるものの可撓性が不足し、また内層管、外層管共にポリエチレンを材料としたものや内層管にポリオレフィンエラストマー、外層管に高密度ポリエチレンを材料としたものは所望の可撓性が得られるものの剛性や直進性が不足すると云う問題点がある。
例えば、内層管、外層管共にポリプロピレンを材料とした従来のコルゲート二重管では曲線配管をする場合、10mRのような大きな彎曲には対応出来ていたが、5mRあるいは3mRのような小さな曲率半径の曲がり部分に対しては、曲がり管もしくは継手を使用しなくては対応出来ないと云う課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するための手段として、平滑内面を有する円管状の内層管2とコルゲート形状の外層管3とからなるコルゲート二重管1であって、上記外層管3はポリプロピレンからなり、上記内層管2はポリプロピレンとポリエチレンと可撓性付与剤とからなるコルゲート二重管1を提供するものである。
上記ポリプロピレン100質量部に対して上記ポリエチレンは100〜250質量部添加されていることが望ましい。
また上記可撓性付与剤はポリプロピレンとポリエチレンとの混合物100質量部に対して5〜20質量部添加されていることが望ましい。更に上記可撓性付与剤はスチレン系エラストマーおよび/またはオレフィン系エラストマーであることが望ましい。
【0007】
〔作用〕
外層管3はポリプロピレンを材料とするから剛性が高く圧縮扁平強度に優れているが、コルゲート形状が付与されているので、可撓性は良好である。内層管2はポリプロピレンとポリエチレンとの混合物に可撓性付与剤が添加された材料からなるので、該可撓性付与剤によってポリプロピレンの可撓性が改良され、充分な可撓性を有し、またポリエチレンが添加されているため成形性が向上する。更に外層管3と内層管2共にポリプロピレンを含有しているため相互融着性が良好である。
【0008】
〔効果〕
本発明では良好な可撓性を有し、5mRあるいは3mRのような小さな曲率半径の曲線配管の場合でも、曲がり管や継手を使用することなく対応することが出来、かつ剛性、圧縮扁平強度および直進性が高く、外層管と内層管との相互融着性も良好であるコルゲート二重管が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明を詳細に説明する。
図1に示すのはコルゲート二重管1であって、平滑内面を有する円管状の内層管2と、コルゲート形状を有する外層管3とからなり、該内層管2と該外層管3とは融着部4で融着されている。上記コルゲート二重管1において、通常呼び径は50〜130mm、外層管3の肉厚は呼び径50mmの場合は0.5〜1.5mm、呼び径130mmの場合1.5〜2.5mm、内層管2の肉厚は呼び径に関係なく0.3〜1.3mmに設定されるが、呼び径300mmのものにも適用可能である。上記コルゲート二重管1は例えば二重押出しブロー成形によって製造される。
【0010】
上記外層管3は剛性と直進性を確保するために硬度の高いポリプロピレンを材料としているが、コルゲート形状が付されているために、可撓性は確保されている。
【0011】
上記内層管2はポリプロピレンとポリエチレンとの混合物に可撓性付与剤を添加したポリマーブレンドあるいはポリマーアロイを材料として、コルゲート二重管1の可撓性を阻害しないよう配慮されている。更に外層管3と内層管2とにはポリプロピレンが含まれているので相互融着性も良好である。
【0012】
上記可撓性付与剤としては、例えばスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプロピレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−ブチレンブロック共重合体(SEB)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン−プロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレン−エチレン−ブチレン結晶オレフィンブロック共重合体(SEBC)等のようなスチレン系エラストマー、エチレン−プロピレン共重合体(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)のようなエチレン−プロピレンゴム(EPR)、エチレン−αオレフィン共重合体、結晶性オレフィン−エチレン−ブチレン−結晶性オレフィンブロック共重合体(CEBC)等のオレフィン系エラストマーが好適に使用されるが、その他アクリルゴム(AR),ブチルゴム、ケイ素ゴム、ウレタンゴム(UR)、フッ化物系ゴム、多硫化物系ゴム、グラフトゴム、ブタジエンゴム(BR)、ポリブタジエン、イソプレンゴム(IR)、ポリイソプレン、クロロプレンゴム(CR)、ポリイソブチレンゴム(IBR)、ポリブテンゴム、チオコールゴム、多硫化ゴム、ポリエーテルゴム、エピクロロヒドリンゴム、ノルボルネンターポリマー、ヒドロキシ又はカルボキシ−末端変性ポリブタジエン、部分水添スチレン−ブタジエンブロック共重合体、クロルスルホン化ゴム、イソブテン−イソプレンゴム(IIR)、アクリレート−ブタジエンゴム(ABR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ピリジン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレンゴム(SIR)、スチレン−エチレン共重合体、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン−ポリ(αメチルスチレン)(α−MeSBα−MeS)、ポリ(αメチルスチレン)−ポリイソプレン−ポリ(α−メチルスチレン)、エチレン−プロピレン共重合体(EP),ブタジエン−スチレン共重合体(EP)、エチレン−プロピレン−エチリデン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−ブテン−1共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−エチルデンノルボルネン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジシクロペンタジエン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−1,4ヘキサジエン共重合体ゴム、エチレン−ブテン−1−エチリデンノルボルネン共重合体ゴム、エチレン−ブテン−1−ジシクロペンタジエン共重合体ゴム、エチレン−ブテン−1−1,4ヘキサジエン共重合体ゴム、アクリロニトリル−クロロプレンゴム(NCR)、スチレン−クロロプレンゴム(SCR)等の合成ゴム、エステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、アミド系エラストマー等が使用されてもよい。
【0013】
上記スチレン系エラストマー、EPR、およびオレフィン系エラストマーはポリプロピレンと相溶性を有し、ポリプロピレンの可撓性を効果的に改良する。更に上記スチレン系エラストマーとしては、SEBS、SEB、SEPS、SEBC等の水素添加されたエラストマーが望ましい。上記水素添加されたエラストマーは耐久性を有する。
【0014】
上記ポリプロピレンに対するポリエチレンの添加により、内層管2の肉厚のバラツキが低減され、成形安定性が向上する。ポリエチレンの中では、硬度の高い剛性に富む高密度ポリエチレン(HDPE)を選択することが望ましい。ポリエチレンの配合比率は、通常ポリプロピレン100質量部に対してPE100〜250質量部が添加される。
【0015】
上記ポリプロピレンと上記ポリエチレンの混合物と可撓性付与剤との配合比率は、通常ポリプロピレンとポリエチレンの混合物100質量部に対して可撓性付与剤5〜20質量部が添加され、ポリマーブレンドまたはポリマーアロイとされる。
【0016】
上記ポリマーブレンドまたはポリマーアロイにおいては、上記可撓性付与剤としてスチレン系エラストマーあるいはオレフィン系エラストマーを選択した場合、該スチレン系エラストマーやオレフィン系エラストマーは相溶化剤として作用し、該ポリオレフィンは連続相、該ポリエチレンは分散相とする海島構造が形成される。
【0017】
上記外層管3の材料および内層管2の材料には、顔料、染料、老化防止剤、難燃剤等が添加されてもよい。難燃剤としては、リン酸エステル、リン酸塩、ポリリン酸塩等のリン酸系難燃剤の使用が望ましいが、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモフタル酸等の臭素系難燃剤も使用可能である。
【0018】
以下に本発明を更に具体的に説明するために実施例を記載する。
図1に示すコルゲート二重管1において、呼び径100mm、外径128.0±2.0mm、内径101.0±2.0mm、外層管3の肉厚1.3±0.5mm、内層管2の肉厚0.8±0.5mmのものを使用した。
【実施例1】
【0019】
外層管3の材料はポリプロピレン、内層管2の材料は表1に示すポリマーアロイを材料とした。可撓性、圧縮扁平強度の試験結果を表1に示す。
【0020】
〔試験方法と評価〕
可撓性:国土交通省基準の導通棒試験に準拠 ○:クリア ×:クリアせず
圧縮扁平強度:JIS C 3653基準の圧縮(扁平)試験に準拠
○:クリア ×:クリアせず 成形安定性:管軸方向にし所定間隔をおいた30箇所の各々について周方向に等間隔で 4箇所、計120箇所にて肉厚変化を各々測定する。各箇所における肉厚 差(最大肉厚−最小肉厚)を算出し、肉厚差(最大肉厚−最小肉厚)の平 均値を導出する。この平均値が0.4mm未満の場合には成形安定性が良 好と判定する。
○:肉厚差(最大肉厚−最小肉厚)の平均値が0.4mm未満
×:肉厚差(最大肉厚−最小肉厚)の平均値が0.4mm以上
内外層の融着性:コルゲート二重管1を直径方向に扁平させ、対向する内層管2の壁面 を当接させた後、コルゲート二重管1を管軸方向に切断して内層管2と外 層管3とが剥離していないか断面を目視する。
○:剥離していない ×:剥離している
【0021】
【表1】

【0022】
表1に示すように、本発明の試料E,F,G,Hはいずれも可撓性、圧縮扁平強度、成形安定性、内外層の融着性において満足な結果が得られるが、ポリプロピレン100質量部に対してポリエチレンを100質量部以下の量(50質量部)で添加した比較試料Aは成形安定性が劣り、またポリエチレンを250質量部以上(300質量部)で添加した比較試料Bは内外層の融着性が劣る。更にPP+HDPE100質量部に対してCEBCが5質量部以下の量(2質量部)で添加した比較試料Cは可撓性に欠け、CEBCを20質量部以上の量(30質量部)で添加した比較試料Dは成形安定性および直進性に劣る。
【実施例2】
【0023】
外層管3の材料はポリプロピレン、内層管2の材料は表2に示すポリマーアロイを材料とした。可撓性、圧縮扁平強度の試験結果を表2に示す。
【0024】
【表2】

【0025】
表2に示すように、本発明の試料I,J,K,Lはいずれも可撓性、圧縮扁平強度、成形安定性、内外層の融着性において満足な結果が得られた。
【0026】
上記実施例以外CEBC、SEBSに代えて可撓性付与剤としてエチレン−αオレフィン共重合体EPM、EPDMを使用しても、同様な結果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明のコルゲート二重管は、量産に適するとともに、可撓性に優れ、曲率半径の小さい曲線配管も曲がり管や継手を使用することなく対応出来、かつ圧縮扁平強度が大きく直進性も高いので、例えば電力通信ケーブル保護管として有用であるから、産業上利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】コルゲート二重管の部分切欠き側面図
【符号の説明】
【0029】
1 コルゲート二重管
2 内層管
3 外層管
4 融着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平滑内面を有する円管状の内層管とコルゲート形状の外層管とからなるコルゲート二重管であって、上記外層管はポリプロピレンからなり、上記内層管はポリプロピレンとポリエチレンと可撓性付与剤とからなることを特徴とするコルゲート二重管。
【請求項2】
上記ポリプロピレン100質量部に対して上記ポリエチレンは100〜250質量部添加されている請求項1に記載のコルゲート二重管。
【請求項3】
上記可撓性付与剤はポリプロピレンとポリエチレンとの混合物100質量部に対して5〜20質量部添加される請求項1または請求項2に記載のコルゲート二重管。
【請求項4】
上記可撓性付与剤はスチレン系エラストマーおよび/またはオレフィン系エラストマーである請求項1〜3のいずれか1項に記載のコルゲート二重管。

【図1】
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