説明

コロニーの計数方法

【課題】シャーレ内で培養した微生物のコロニー数を、単色のCCDカメラを利用した簡易な装置構成で、培地に対する複雑な事前処理を必要としないで、種々の形状及び近接した微生物の微細なコロニーまで精度良く短時間に計数可能なコロニーの計数方法を提供する。
【解決手段】CCDカメラ7による撮影画像を撮影画像データとして取込んで、コロニーKの数を計数する計数画像領域13として設定し、計数画像領域13を中心画像領域10と周辺画像領域11に2分割して、それぞれの領域の画像条件に好適な異なるデータ処理手段により個別にコロニー数を算出する。また、中心画像領域10のコロニーKを大、小のサイズに分別して、それぞれに適したデータ処理によりコロニー数を別個に計数、加算して中心画像領域10のコロニー数を算出する。そして、中心画像領域10と周辺画像領域11のコロニー数を加算して計数画像領域13全体のコロニー数を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャーレを利用して培地中に菌類、カビ等の微生物を培養した後、生成された微生物のコロニー数を数えるコロニーの計数方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
細菌やカビ等微生物の計数方法や用具は医療用として開発され、主として細菌の有無や存在した痕跡が計数対象となっていた。一方、食品工業分野では、微生物の計数対象となる製品が問題を起こさないように、あるいは、食品の製造工程で有用な微生物が適正に増殖していること等を検出する生菌検出システムとして、培地を利用した培養型の計数手段が利用されることが多い。例えば、微生物計数の公定法として寒天培地を利用して微生物のコロニーを生成させてコロニー数を計測する方法が、特に生物の分散度が低い計数対象品に対して広く利用されている。
【0003】
そして、寒天培地等に生成したコロニー数を目視で計数する旧来の方法に変えて、CCDカメラを利用した計数対象培地の撮影画像データを処理してコロニー数を自動的に計数する手段も多数提案されている。例えば、培地の表面に微生物が反応する蛍光物質を拡散させてコロニーの個数を数える方法や、病原菌を後退染色などで染色処理して計数処理する方法が提案されている(特許文献1,特許文献2参照。)。しかし、これらの方法はコロニー計数の前処理に時間と手間がかかり、また対象とする微生物が限定されるなどの制約があった。
【0004】
また、連結したコロニーを形状から識別してコロニーを計数する方法や、群体微生物に対して色相の濃淡を利用して外周円弧を検出して微生物数を計算する手段が提案されているが、種々の大きさで、また形状に大きな差異のある各種のコロニーを精度良く高速で計数する上で限界があった(特許文献3,特許文献4参照。)。また、RGBの色相を利用した複雑なデータ処理によるコロニー計数システムが増加する一方で、逆に色相を利用しない単色の画像を簡易にデータを処理してコロニー数を精度よく計数する手段が求められていた(特許文献5参照。)。
【0005】
また、これらの微生物の分析やコロニーの計数方法を利用して、コロニーの数を自動的に計数する装置も提案されている(特許文献6,特許文献7参照。)。
【特許文献1】特開平7−147997号公報
【特許文献2】特開2000−78999号公報
【特許文献3】特開平9−140397号公報
【特許文献4】特開2001−22929号公報
【特許文献5】特開2004−194610号公報
【特許文献6】特開2001−157573号公報
【特許文献7】特開2002−98704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前述の状況に鑑み提案されたものであって、従来のコロニー計数手段に較べて簡易な、単色のCCDカメラを利用した装置構成で、培地に対する計数のための複雑な前処理を必要とせず、また、種々の形態の微生物を対象として精度良く短時間にコロニー数を計数できるコロニーの計数方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、シャーレ内の培地に生成された微生物のコロニーをCCDカメラで撮影した単色の撮影画像をデータ処理してコロニー数を計数する方法であって、まず、前記撮影画像を撮影画像データとしてデータ処理装置に取込んでシャーレ内のコロニーを計数する対象領域を計数画像領域として設定する。そして、前記計数画像領域を中心画像領域と周辺画像領域に2分割し、両領域の撮影画像の条件差を考慮してそれぞれの撮影画像に適した別のデータ処理手段を用いてコロニー数を計数し、事後に両領域のコロニー数を加算して前記計数画像領域のコロニー数を算出することを特徴とするコロニーの計数方法に係る。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記周辺画像領域の外側にさらにコロニー数を算定する最外周領域を設定し、前記計数画像領域のコロニー数を用いた予め設定した算出方法に従って前記最外周領域のコロニー数を算出し、これを前記計数画像領域のコロニー数に加算することにより計数画像領域と最外周領域と合わせたコロニー計数全領域のコロニー数を算出することを特徴とするコロニーの計数方法に係る。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2において、前記中心画像領域の撮影画像データをデータ処理する際、予め設定した分別基準によりコロニーを大、小のサイズに2分し、はじめに大きいサイズのコロニーを対象としてコロニー計数を行い、事後に小さいサイズのコロニーの計数を行い、大小両サイズのコロニー数を加算して前記中心画像領域のコロニー数を計数することを特徴とするコロニーの計数方法に係る。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3に記載のコロニー計数方法を用いて前記計数画像領域のコロニー数を計数した後、前記計数画像領域のコロニー中で複数のコロニーが複合している可能性のあるコロニーを複合コロニーとして分別し、前記複合コロニーのみを対象としたコロニー分離のデータ処理を実施する。そして、複合コロニーから分離された追加コロニー数をコロニー分離前のコロニー数に加算して、前記計数画像領域の真のコロニー数を計数することを特徴とするコロニーの計数方法に係る。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、CCDカメラで撮影した培地及びシャーレの単色撮影画像中のコロニーを計数する対象領域を計数画像領域として設定して、これを中心画像領域と周辺画像領域に2分割して、両画像データの性質に適合した互いに異なるデータ処理を行ってコロニー数を個別に算出する。即ち、前記中心画像領域と周辺画像領域では画像の特性及びコロニーの分布状況が異なるため、それぞれの領域における画像の特性に好適な撮影画像データ手段を採用することにより、コロニーの計数精度及び計数効率に優れた計数を実施することができる。
【0012】
また、請求項2に記載の発明によれば、前記周辺画像領域の外側にコロニー数を算定する最外周領域を設定して、計数画像領域のコロニー数を用いて予め設定した算出方法に従って前記最外周領域のコロニー数を算出する。そして、算出した最外周領域のコロニー数を前記計数画像領域のコロニー数に加算することにより前記計数画像領域と前記最外周領域と合わせたコロニー計数全領域のコロニー数を算出する。この理由は、シャーレの内周端部では通常撮影画像がシャーレの影や泡等の影響、並びにシャーレ垂直部のコロニー画像が相互に重なり、前記周辺画像領域よりさらにコロニーの計数精度が低下するため、これを補ってコロニーの計数精度が確保するためである。
【0013】
そして、先行して採取した多数の計数データに基づいて、計数画像領域のコロニー数と最外周領域のコロニー数の相関を対象微生物の種類や培養条件に従って予め整理分析し、この相関データに基づいて計数画像領域のコロニー数から最外周領域のコロニー数を算出する算式を予め設定する。このため、この算式に従って前記計数画像領域のコロニー数を基準として充分な精度で効率良く前記最外周領域のコロニーを計測することが可能となり、これを前記計数画像領域のコロニー数に加算することにより計数全領域のコロニー数を効率よく算出することができる。即ち、前記最外周領域のコロニー数を撮影画像データから直接の計数する場合に発生したコロニー計数値の無用の変動を排して、実用的で使い勝手の良いデータを算定して利用することができる効果がある。
【0014】
また、請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2において、中心画像領域内のコロニーをデータ処理する際、予め指定した分別基準によりコロニーを大、小のサイズに2分して、予め大きいサイズのコロニーを対象としてコロニー計数を行う。そして、大きいサイズのコロニーに関する画像データを計数領域のデータから削除した状態で小さいコロニー数を計数する。この場合、残された小さいコロニーのサイズは指定したサイズ以下に限定され、これに適合した画像処理を実施するため極めて微小なコロニーの検出が可能となり、その結果としての計数精度を著しく向上させることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3に記載の何れかのコロニー計数方法を用いて計数画像領域のコロニー数を計数した後、まず計数画像領域のコロニー中で複数のコロニーが複合している可能性のあるコロニーを複合コロニーと判定する。そして、複合コロニーのみを対象としてコロニー分離データ処理を実施するため、分離対象のコロニー数が減少すると共にコロニー分離に好適な画像処理手段を適用して、精度の良いコロニーの計数を行うことが可能となる。そして、分離した追加コロニー数をコロニー分離前のコロニー数に加算して、計数画像領域の真のコロニー数の計数を精度良くかつ効率的に実施することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付の図1から図5に従って、この発明を詳細に説明する。図1は本発明の方法に係るコロニー計数の工程を示すフローチャート、図2は本発明に係るコロニー計数を実施するための装置の例を示す側面図、図3はシャーレ内の培地で生成されたコロニーを計数するときの画像分割要領を示す平面図、図4はコロニーが近接または重なっている複合コロニーの分離手段を示す説明図、図5は中心画像領域と周辺画像領域等の境界にコロニーが存在する場合の説明図である。
【0017】
図1は、本発明の方法に係るシャーレ中の培地で培養した細菌や微生物等の微生物のコロニーを計数する工程を示すフローチャートである。まず、図2の側面図でコロニー数を計数する装置の構成を説明すると、架台17の一部を構成する支え板5に固定された拡散板4上に配置されたシャーレ2中の培地1はシャーレ蓋3を下方に被せた状態で、下方から平行板18を介して照明装置6によって照明されている。そして、シャーレ2の上方には支持器具等を図示省略したCCDカメラ7が配設されて、シャーレ2の底面方向から培地の面像を撮影可能に構成されている。
【0018】
また、CCDカメラ7には信号ケーブル8が接続されて、撮像した撮影画像データをデータ処理装置9に送り、詳細後述のデータ処理を実施して培地1中のコロニーKの数を計数し、必要に応じて撮影画像等を画像モニター9aに表示する。なお、本実施例においては、培地の撮像に際してシャーレ蓋3を除去すると培地に雑菌が入り継続した培養が困難になる等の理由で、シャーレ2を反転して拡散板4上に配置し、下方から照明装置6で照明し、上方からCCDカメラ7で撮影する構成を採用している。なお、照明装置6とCCDカメラ7を逆の配置とすることも可能で、特に図示した実施例に限定されるものではない。
【0019】
図3は、上方のCCDカメラ7でシャーレ2底面を撮影した撮影画像14の例を示し、シャーレ側壁2aの内側には培地1があって計数対象とする微生物のコロニーKが多様な形状で生成されている。ここで、シャーレ側壁2a内部の画像を、図示のごとく中心画像領域10、周辺画像領域11、その外側を最外周領域12に分割する。なお、中心画像領域10と周辺画像領域11を合わせた領域をコロニーの数を撮影画像データのデータ処理により計数する計数画像領域13とする。
【0020】
このとき、中心画像領域10、周辺画像領域11、及び最外周領域12のシャーレ側壁2aの内径に対する寸法、又は比率は特に指定されないが、過去の経験に基づいて中心画像領域10はコロニーKの分布及び光学的にシャーレ側壁2aの影響が少なく、比較的良好な画像が取得できる領域を選定し、周辺画像領域11はコロニーKの分布及び光学的にシャーレ側壁2aの影響を受けて画像の処理にやや困難を伴う領域を指定し、最外周領域12は、シャーレ側壁2aに近接して撮影画像によるコロニーKの計数が著しく困難な領域を指定する。例えば、シャーレ内壁2aの直径を100としたとき、中心画像領域10、周辺画像領域11、最外周領域12のそれぞれの直径を84、92,100として各領域の範囲を設定してコロニー数を計数する。
【0021】
以下、図1に示すフローチャート及び図2をもちいて、コロニー計数の工程と画像データの処理手段を説明する。まず、撮影画像データ入力(S1)において、シャーレ2及び内部の培地1をCCDカメラ7で撮影し、その撮影画像14の撮影画像データを信号ケーブル8でデータ処理装置9に送信して入力する。次に、計数画像生成(S2)において、撮影画像中のシャーレ2の位置を検出してシャーレの中心を求めて位置合わせ及び画像サイズを決める等の手段で、シャーレ2の外側の不要な画像をマスキングして消去して図3に対応する計数対象の画像を生成する。
【0022】
そして計数領域自動抽出(S3)において、シャーレ側壁2aの内側直径を例えば100とした場合、計数画像領域13の直径を前記に例示の如く92等、予め指定した比率に設定して計数画像領域13を自動的に抽出し決定する。なお、予め指定するシャーレ側壁2aの直径に対する計数画像領域13の直径比率は、計数対象微生物の種類、培養条件及びシャーレ2のサイズ等を考慮した過去の計数データに基づき、好適な比率に設定する。
【0023】
次に、計測領域の分割(S4)において、計数画像領域13を中心画像領域10と周辺画像領域11に2分割して、それぞれの領域のコロニーを個別に計数する(S5、S6)。これは、シャーレ側壁2aの近傍の撮影画像がシャーレ2の影、培地中の泡及びシャーレ2成形時のプラスチック材料注入ゲートの影響を受けるため、周辺画像領域11の画像データが中心画像領域10に比べて濃淡変動が多く、ノイズを多く含んでデータ処理精度が低下することを補うもので、それぞれの領域に適合した画像データの前処理及び計数手段を採用して、コロニーの計数精度及び計数効率を高めようとするものである。
【0024】
なお通常、コロニーの培地画像を対象とする場合、一般的な自然画像に較べて濃度分布が狭い範囲にあるため、コントラストが低く検査対象物が識別し難いことが多い。このため、本件発明の実施例においては、計数画像領域13全体に対してデータ処理装置9の表示機能の許容範囲で、濃度値の全領域を利用するよう濃度値を変換して、濃度ダイナミックレンジを拡大してコロニーKの検出と計数を容易ならしめる多値画面データの前処理を施している。
【0025】
以後、周辺画像領域の計数(S5)において、周辺画像領域11の撮影面像データに対して、例えば空間フイルタリングとしてラプラスフィルタを適用してコロニーKの輪郭を抽出した後、2値化画像を作成する。そして、前記2値化画像データに対して、ぼやかすことなくノイズを除去した後、連結成分に対してラべリングを行ってコロニーKの計数を実施する。
【0026】
この際、連結成分の計測面積の最小値及び計測長径の最大値をコロニー識別のしきい値として設定し、計測面積が設定最小値より大きく、計測長径が計測面積に対して設定の比率範囲に属してコロニーとしての特徴を有するものをコロニーKと判断して計数する。なお、前記実施例としてのコロニー計数手段としての画像データの前処理、並びにノイズ除去は特に例示の手段に限定されるものではなく、対象とする撮影画像の特性に応じて種々のデータ処理手段を選定して適用することができる。
【0027】
次に中心画像領域の計数(S6)において、前記の濃度ダイナミックレンジを拡大した多値画面データの中心画像領域10に対しては、自動しきい値決定法の判別分析法により2値化を行う方法を採用している。即ち、周辺画像領域11に対しては全体に対して一つのしきい値を採用して2値化画像を作成したが、計数領域13の面積の主要部を占めてコロニー計数精度に影響の大きい中心画像領域10に対しては、自動しきい値決定法の判別分析法を利用して対象物としてのコロニーKと背景の培地との違いが際立つようにしきい値を決めて2値化画像を作成し、2値化画像の連結成分をラべリングして、予め設定したコロニーに対する面積と形状のしきい値を用いてコロニーKを計数する。
【0028】
なお、上記の中心画像領域の計数(S6)においては中心画像領域のコロニー計数をまとめて実施したが、中心画像領域の計数を大きいコロニーの抽出と計数(S7)及び小さいコロニーの抽出と計数(S8)の如く、中心画像領域のコロニーKを大小のコロニーに分離して計数することもできる。この場合は、まず大きいコロニーKの抽出と計数(S7)に示す如く、中心画像領域10に対して、自動しきい値決定法の判別分析法を利用して対象物としてのコロニーKと背景の培地との違いが際立つようにしきい値を決めて2値化画像を作成し、2値化画像の連結成分をもとめて予め設定した大きいコロニーに対する面積と形状のしきい値を用いて大きいコロニーKを計数する。
【0029】
次に、中心面像領域10中の前記の大きいコロニー画像をマスキングして、残された領域に対して可変しきい値法により撮影画像データを2値化して、小さいコロニーKを選定して計数している(S8)。即ち、シャーレ2内の位置により撮影画面の濃度やコロニー自体の濃度が局所的に高い部分あるいは低い部分が発生することがあるため、該当画素を近傍画素の局所平均と比較して2値化する可変しきい値法により2値化画像を作成して、極めて小さいコロニーKまで確実に画像として顕在化させて精度良く計数可能としている。
【0030】
この場合、面積の比率が高くコロニーの計数精度に影響の大きな中心画像領域10に対しては、領域内のコロニーKを大小のコロニーKの計数に適した画像処理手段によって分別して計数(S7,S8)した後、計数値の一次統合(S9)の段階で加算して、極めて小さいコロニーKに対して精度の高い計数を可能ならしめている。なお、前記コロニー計数における撮影画像データの前処理やしきい値の決定手段は、対象とする微生物の特性、生成条件、及びコロニー計数に利用するCCDカメラ7や照明器具の特性に対応して各種の手段が選択的に採用可能であり、特に実施例に限定されるものではない。
【0031】
そして、計数値の―次統合(S9)において、中心画像領域10と周辺画像領域11のコロニー数を加算して計数画像領域13の一次段階のコロニー数を取得する。この後、分離対象の判断(S10)において、計数画像領域13のコロニー中から予め指定するコロニーKの面積をしきい値として、大きなコロニーKを複数のコロニーKを内部に含んでいる可能性のあるコロニーKとして選別する。即ち、計数値の一次統合(S9)の段階までは図4の平面図に示すコロニーK1乃至K4は、画像データの処理上それぞれ一つのコロニーKとして処理して計数した。
【0032】
そして、実施例としての複合コロニー画像K1乃至K4をそれぞれ個別のコロニーKに分離する分離アルゴリズム(S11)としては、対象とするコロニーKの撮影画像データに対して例えばGaussの平滑化オぺレータにより濃淡境界を利用して近傍コロニーを分離し、重複コロニーに対しては濃度の高い山をコロニーKとして分離している。この結果、コロニーK1はK1a,K1b、コロニーK2はK2a,K2b、コロニーK3はK3a,K3b,K3c、コロニーK4はK4a,K4b,K4cの如くそれぞれ複数のコロニーKに分離される。なお、コロニーK1乃至K4中のコロニーK3b及びコロニーK4cは重複コロニー、その他は近傍コロニーで、重複コロニーは培地中の厚さ方向で異なる高さにコロニーKが生成された場合を示している。
【0033】
前記説明の如く、分離アルゴリズム(S11)を用いて複合コロニーを構成する個別のコロニーに分離して、この結果として増加したコロニー数を計数値の二次統合(S12)において加算して、中心画像領域10及び周辺画像領域11の真のコロニー数を得る。そして、最外周領域12の補正の要否(S13)において、利用する管理データとして、周辺画像領域11外周のシャーレ側壁2a側領域のコロニー数を加算して補正することの必要性を判断する。そして、計数したコロニー数を管理データとして利用する上で、最外周領域12のコロニー数を追加利用する場合には、面積による自動補正(S14)において、周辺画像領域11の外側に最外周領域12を設定して、シャーレ側壁2aの近傍のコロニー数を計数済みの中心画像領域10及び周辺画像領域11のコロニー数を利用して以下の如く算出する(S14)。
【0034】
例えば、設定した最外周領域12の面積を算出して、これに周辺画像領域11の面積あたりの複合コロニーを考慮したコロニー数を掛け合わせて最外周領域12のコロニー数を求める。また、予め計数試験データに基づき周辺画像領域11の面積あたりのコロニー数に対する最外周領域12のコロニー数の比率を求めておいて、これを基準として最外周領域12のコロニー数を算出してコロニー数の推定精度をさらに向上させることもできる。
【0035】
このように最外周領域12のコロニー数を撮影画像データから直接計数しないで、中心画像領域10及び周辺画像領域11のコロニー数から算出する理由は、シャーレ側壁2aに近接した領域の撮影画像は、シャーレの影や泡等の影響並びにシャーレ垂直部のコロニー画像が相互に重なりコロニーの計数精度が大きく低下して、経験的に直接計数して利用するより、内部の計数データを利用して加算した方がコロニーKの計数及び管理上有効な結果が出ているためである。
【0036】
なお、図5に示す如く、中心画像領域10、周辺画像領域11、最外周領域12の境界上のコロニーK13乃至K15に関しては、例えば各領域のコロニーKの面積比率でコロニーKを計数して、最終的に4捨5入したコロニー数を利用する等の便宜的な運用ができる。そして、最外周領域12と計数画像領域13のコロニー数を合計して、コロニー計数の最終値を得ることができる(S15)。また、必要に応じて前記のコロニー計数結果のデータをデータ処理装置9に保存して、有用な形に加工して管理データとして利用することができる。
【0037】
また、前記説明において、それぞれ検査領域に対する撮影画像のデータ処理及びコロニーKの計数方法に関して特定の実施例を説明したが、本発明は実施例の範囲に留まらず本発明の主旨の範囲で各種のデータ処理手段や計数方法を採用することができる。また、本件発明はシャーレ2を利用した培地1におけるコロニーKの計数方法を説明したが、シャーレ2に替えてプラスチックシートを利用した培地に生成させたコロニー等他の方式の培地にも適用することができる。
【0038】
さらに、実施例では、画像データのノイズ除去の手段として、撮影画像を中心画像領域と周辺画像領域に分割し、中心画像領域に比べて濃淡変動が多くノイズを多く含んでいる周辺画像領域の画像データから2値化画像データを作成してノイズを除去する手段を用いたが、撮影画像を複数回撮像し、前記複数の撮影画像を比較することによってノイズを特定した後、当該ノイズを電子処理により除去して、得られた画像データを計数処理に用いるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の方法に係るコロニー計数の工程を示すフローチャートである。
【図2】本発明に係るコロニー計数を実施するための装置の例を示す側面図である。
【図3】シャーレ内のコロニーの計数時における分割例を示す平面図である。
【図4】コロニーが近接または重なっている複合コロニーの分離手段を示す説明図である。
【図5】中心画像領域と周辺画像領域等の境界にコロニーが存在する場合の計数方法の説明図である。
【符号の説明】
【0040】
1 培地
2 シャーレ
2a シャーレ側壁
3 シャーレ蓋
4 拡散板
5 支え板
6 照明装置
7 CCDカメラ
8 信号ケーブル
9 データ処理装置
9a 画像モニター
10 中心画像領域
11 周辺画像領域
12 最外周領域
13 計数画像領域
14 撮影画像
16 計数画像
17 架台
18 平行版
K コロニー
K1 コロニー
K2 コロニー
K3 コロニー
K4 コロニー
K13 コロニー
K14 コロニー
K15 コロニー
S1 撮影画像データ入力
S2 計数画像生成
S3 計数領域自動抽出
S4 計数画像の分割
S5 周辺画像領域の計数
S6 中心画像領域の計数
S7 大きいコロニーの抽出と計数
S8 小さいコロニーの抽出と計数
S9 計数値の一次統合
S10 分離対象の判定
S11 分離アルゴリズム
S12 計数値の二次統合
S13 計最外周領域び補正要否
S14 面積による自動補正
S15 計数の最終値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャーレ内の培地に生成された微生物のコロニーをCCDカメラで撮影した単色の撮影画像をデータ処理してコロニー数を計数する方法であって、
前記撮影画像を撮影画像データとしてデータ処理装置に取込んでシャーレ内のコロニーを計数する対象領域を計数画像領域として設定し、
前記計数画像領域を中心画像領域と周辺画像領域に2分割し、それぞれの領域の前記撮影画像データに対して異なるデータ処理手段によりコロニー数を計数し、両領域のコロニー数を加算して前記計数画像領域のコロニー数を算出することを特徴とするコロニーの計数方法。
【請求項2】
請求項1において、前記周辺画像領域の外側にコロニー数を算定する最外周領域を設定し、
前記計数画像領域のコロニー数を用いる予め設定した算出方法に従って前記最外周領域のコロニー数を算出し、これを前記計数画像領域のコロニー数に加算することにより前記計数画像領域と前記最外周領域と合わせたコロニー計数全領域のコロニー数を算出することを特徴とするコロニーの計数方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記中心画像領域の撮影画像データをデータ処理する際、予め設定した分別基準によりコロニーを大、小のサイズに2分し、はじめに大きいサイズのコロニーを対象としてコロニー計数を行い、事後に小さいサイズのコロニーの計数を行い、両者を加算して前記中心画像領域のコロニー数を計数することを特徴とするコロニーの計数方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載のコロニー計数方法を用いて前記計数画像領域のコロニー数を計数した後、前記計数画像領域のコロニー中で複数のコロニーが複合している可能性のあるコロニーを複合コロニーとして分別し、前記複合コロニーのみを対象としてコロニー分離のデータ処理を実施して、分離された追加コロニー数をコロニー分離前のコロニー数に加算し、前記計数画像領域の真のコロニー数を計数することを特徴とするコロニーの計数方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−345750(P2006−345750A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−174805(P2005−174805)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【出願人】(000128131)株式会社エヌテック (16)
【出願人】(000006884)株式会社ヤクルト本社 (132)
【出願人】(593205831)東邦商事株式会社 (14)
【Fターム(参考)】