説明

コンクリートの養生シート

【課題】型枠を取り外した後の養生シートの取付作業を省略することできる養生シートを提供することができ養生シートを提供すること。
【解決手段】コンクリートの型枠に予め付設して使用する養生シートであり、プラスチックフィルム11又はシート10の一方表面に水溶性ポリマー層12を設け、コンクリート壁面の乾燥を防止する。また、養生シートの表面に直接化粧面を設けることにより養生シートを剥がすことなく、そのまま化粧面を構成する表面部材として使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水の蒸散を抑制する目的で用いられる基礎コンクリートの養生シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート基礎は次のように構築される。まず、離型剤を塗った型枠を基礎周りに設置してからコンクリートを打設する。数日後に型枠を外して、コンクリート構造材として、十分な強度及び耐久性を得るために、養生シートを付設して十分な養生を行う。ここで、離型剤を塗るのは硬化後にコンクリートを型枠から剥がし易くするためであり、養生シートを付設するのはコンクリートの乾燥を防ぐためである。しかし、この従来の構築方法では、型枠に離型剤を塗ることと、型枠を外した後に養生シートを付設することの2工程が必要となる。また、通常、コンクリートと養生シートとは完全には密着しておらず、ガムテープなどでシート間をとめているので、風でめくれたり、隙間から、水が蒸散したりして十分強剛にコンクリートを養生できない問題があった。そこで、この工程を1回に簡略化し、かつ養生シートをコンクリート表面に密着させて水の蒸散を防止するために以下のものが提案されている。
【0003】
例えば、型枠の表面に着脱可能に貼着されるとともに、コンクリート打設面側に向けて拡径化した複数の突起を突出形成した養生シートがある。この養生シートによれば、型面に養生シートを貼着した状態で型枠内部にコンクリートを打設し、コンクリートの固化後に型枠を脱型すればシートの突起がコンクリート表面に食い込んだ状態で残置することができる。そして、養生終了後は、養生シートをコンクリート表面から強制的に引張れば、シートは前記突起を弾性歪曲しつつコンクリート表面から引き剥がすか、或いは突起の根元を切断してシートを撤去することができるという効果を有するものである(特許文献1参照)。
【0004】
しかし、この養生シートは、突起に対応してコンクリート表面に形成された穴は、モルタルなどの充填材による補修処理によって埋める必要があるという問題点があった。
【特許文献1】特開平7−102763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、以上の課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、1)コンクリート打設前に型枠に離型剤を塗っておく、型枠を取り外した後の養生シートを付設する、という二度手間を一回に省略することができ、2)養生シートが風でめくれたりせず、コンクリートと十分密着して水の蒸散を防止して、強剛なコンクリートとすることができる養生シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上のような課題を解決するために、本発明のコンクリートの養生シートは、コンクリートの型枠に予め付設して使用する養生シートであり、プラスチックフィルム又はシートの一方表面に水溶性ポリマー層を設けたことを特徴とする。本発明の養生シートに用いられるプラスチックフィルム又はシートは、コンクリート壁面の乾燥を防止するためのものである。従って、最低限水蒸気の透過を防止する程度の気密性を有するものであればよく、プラスチックフィルム又はシートの素材としては前記要件を満たすものであれば限定されない。具体的には、気密性の高さや製品価格の安定性から、PE、PP、PET、PVC又はナイロン(登録商標)等を用いるとよい。また、使用時の取り扱い性の高さや丈夫さ等を考慮すると、5〜500μmの厚さのプラスチックフィルムを使用するとよい。尚、使用するプラスチックフィルム又はシート中には繊維等が混合していても構わない。
【0007】
一方、プラスチックフィルム又はシートの一方表面に設ける水溶性ポリマー層は、打設したコンクリート中に含まれる水分で溶解して、コンクリート中に分散、混合し、コンクリートの乾燥とともに乾固し、その密着力によって該プラスチックフィルム又はシートの硬化したコンクリートへの密着性を確保するようになっている。この水溶性ポリマー層を構成するポリマー成分としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、フェノール樹脂、ポリアクリル酸金属塩などの合成樹脂系ポリマー、澱粉糊、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース系ポリマー、ゼラチンなどのタンパク質系ポリマー等を挙げることができる。中でも取り扱い性、価格、性能の面から、ポリビニルアルコールやエチレン−酢酸ビニル共重合体などが好ましい。この水溶性ポリマー層は、十分な密着性を確保するため、目付量が3〜100g/m2であることが望ましい。この水溶性ポリマー層は、無孔のシート状のほか、穴あきシート状、ネット状、蜘蛛の巣状、ストライプ状などの形態を採ることができる。
【0008】
本発明の養生シートの作製方法としては、例えば図8の(a)(b)に示すように、プラスチックフィルム又はシート11の一方面に水で溶解した水溶性ポリマー12を塗布する方法がある。また、水溶性ポリマーを予め穴あきシート状、ネット状、蜘蛛の巣状に成形しておき、これらの水溶性ポリマーシート12の一面に水をかけてシート表面の樹脂の一部を溶解させてプラスチックフィルム又はシート11の一方面に積層した後、乾燥させることで、プラスチックフィルム又はシート11に水溶性ポリマーシート12を密着させて養生シート10を作製する方法などもある。
【0009】
本発明の養生シートは、プラスチックフィルム又はシートと水溶性ポリマー層との間に断熱層を設ける形態を採ることもできる。断熱層を設けることによって、暑中下の日射や寒中期の低温などの急激な温度変化による影響を防止することができ、またコンクリートと水の反応効率の向上を図り、より強いコンクリートとすることができるようになる。
【0010】
養生シートを型枠に付設する方法としては特に限定されない。例えば、プラスチックフィルム又はシート表面に両面テープを貼りつけたり、接着剤を塗布して付設したりすることができる。両面テープの場合は、粘着層の表面には離型用フィルムが設けてあるので、使用時に離型用フィルムを剥がせば、粘着層が露出して型枠に容易に養生シートを貼着することができるようになるため好適である。勿論、両面テープや接着剤は、表面全体に設けても構わないし、部分的に設けても構わない。また両面テープや接着剤の接着強度は、プラスチックフィルム又はシートがコンクリートに密着する力よりも弱い力で剥がすことができる強度のものを用いれば、型枠を剥がす際にコンクリートに養生シートを残置させることができて都合がよい。
【0011】
こうして作製された養生シートは、まず、プラスチックフィルム又はシート側が型枠内面側にくるように型枠に付設して、この型枠をコンクリート基礎等の構造物を形成する場所に設置した後、コンクリートを打設する。そして、コンクリートが硬化した後、前記養生シートのプラスチックフィルム又はシートをコンクリート壁面に密着させた状態、すなわち、水溶性ポリマー層が若干コンクリート内に入り込んで溶融固化して一定の密着力を有した状態のまま、型枠のみを除去する。この状態で養生シートは、コンクリート面を覆うように保護されているので、水分がコンクリート表面から蒸発することはなく、また、断熱材を有する養生シートを用いれば、コンクリートの急激な温度変化を防止でき、水和反応を早めることができ、効果的に養生が促進される。そして、十分に養生がなされたら養生シートを剥がして、コンクリート構造物が完成する。また、養生シートの表面に直接化粧面を設けたり、化粧面を有する化粧シート材を貼りつけたりすることによって、養生シート自体が化粧面とすることができるようにしておけば、養生シートを剥がすことなく、そのまま化粧面を構成する表面部材として使用することができるようになる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の養生シートによれば、予め型枠に養生シートを付設した状態でコンクリートを打設するので、型枠に離型剤を塗っておく必要がなくなり、型枠を外せば養生シートはコンクリートに付設されることになるので、改めて養生シートを付設するという作業を省略することができる。
【0013】
また、養生シートは、水溶性ポリマー層を介して全面でコンクリートに密着しているので、風で養生シートがめくれたりすることがない。一方プラスチックフィルム又はシートは水の蒸散を防止するため、十分な水和反応をさせることができて強剛なコンクリートとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図1に沿って説明する。図1及び図2は、本発明の実施例1にかかるコンクリートの養生シート10の断面図を示している。本実施例に係る養生シート10は、プラスチックフィルム11と、水溶性ポリマー層12とからなる。
【0015】
コンクリートの養生シート10は、両面テープを部分的に貼りつけて型枠20に付設して使用される。この養生シートが付設された型枠20は、コンクリート構造物を作製する所定の位置に取付けられ、型枠20内部にコンクリートが打設される(図2)。そして、コンクリートの打設に伴い、コンクリート中に含まれる水分で水溶性ポリマー層が溶解して、コンクリート中に分散、混合する。コンクリートの硬化とともに、溶解した水溶性ポリマーも乾固し、その密着力によって該プラスチックフィルム又はシートが硬化したコンクリートへの密着することになる。この段階で、養生シート10をコンクリートに密着させた状態のまま、すなわち、養生シートをコンクリート表面に残置した状態のままで型枠が外される(図3)。そして、コンクリートが十分に養生し、強度及び耐久性を確保した後、図4に示すように、養生シート10をコンクリートから剥離して、コンクリート構造物は完成する(図5)。こうして作製されたコンクリート構造物によれば、プラスチックフィルム11によって水分の蒸散が防止され、水和反応に十分な水分が確保した状態で硬化するため、堅固なコンクリート構造物を構築することができる。
【0016】
図6は、本発明の実施例2にかかるコンクリートの養生シート10aの断面図を示している。実施例2に係るコンクリートの養生シート10aは、プラスチックフィルム11aの水溶性接着剤層12aの反対側の表面にタイル状の化粧模様を有する化粧フィルム13aを貼り合わせたものである。すなわち、実施例1の養生シート10aに対して表面にタイル状の化粧面を設けたものである。それ以外の構成は実施例1と同様である。
【0017】
この養生シート10aは、実施例1と同様にして、型枠を外した後は、コンクリート面に密着させた状態でコンクリート面に付設される。この後、この実施例2における養生シート10aによれば、図7に示すようにコンクリート構造物の表面に化粧面を形成することになるので、養生シート10aを剥がすことなくそのまま化粧壁面として使用する。なお、図7においては、タイル状の模様にしてあるが、この模様に限定されるものでないことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1に係るコンクリートの養生シートを示す断面図である。
【図2】実施例1に係るコンクリートの養生シートを用いて、コンクリート構造物を作製する1工程を示す断面図である。
【図3】実施例1に係るコンクリートの養生シートを用いて、コンクリート構造物を作製する1工程を示す断面図である。
【図4】実施例1に係るコンクリートの養生シートを用いて、コンクリート構造物を作製する1工程を示す断面図である。
【図5】実施例1に係るコンクリートの養生シートを用いて作製されたコンクリート構造物を示す断面図である。
【図6】実施例2に係るコンクリートの養生シートを示す断面図である。
【図7】実施例2に係るコンクリートの養生シートによって化粧面が形成されたコンクリート壁面を示す斜視図である。
【図8】本発明の養生シートの作製方法のバリエーションを示す模式図である。
【符号の説明】
【0019】
10 養生シート
11 プラスチックフィルム
12 水溶性ポリマー層
20 型枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
型枠に予め付設した後、コンクリートを打設して使用されるコンクリートの養生シートにおいて、
プラスチックフィルム又はシートの一方表面に水溶性ポリマー層を設けたことを特徴とするコンクリートの養生シート。
【請求項2】
水溶性ポリマー層の目付量が3〜100g/m2であることを特徴とする請求項1記載のコンクリートの養生シート。
【請求項3】
プラスチックフィルム又はシートは、PE、PP、PET、PVC又はナイロンからなることを特徴とする請求項1又は2記載のコンクリートの養生シート。
【請求項4】
プラスチックフィルムの厚みが5〜500μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のコンクリートの養生シート。
【請求項5】
プラスチックフィルム又はシートの他方表面に直接化粧面を設け、又は化粧面を形成する化粧用シート材を貼り合わせてなり、コンクリート養生後も剥がすことなく化粧面として使用可能な請求項1〜4のいずれかに記載のコンクリートの養生シート。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のコンクリートの養生シートを使用してコンクリートを養生する方法であって、
予めプラスチックフィルム又はシートの他方表面側が型枠内面側となるように前記養生シートを付設した型枠を作製する工程、
前記型枠を基礎周りに設置し、型枠内にコンクリートを打設する工程、
コンクリートの打設に伴って前記プラスチックフィルム又はシートの一方表面側の水溶性ポリマー層をコンクリートに密着させる工程、
コンクリートが硬化した後、前記養生シートの一方表面側の水溶性ポリマー層がコンクリート壁面に密着した状態で残置させつつ型枠を除去する工程、
前記コンクリートを養生させる工程、
とからなることを特徴とするコンクリートの養生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−77754(P2007−77754A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−270098(P2005−270098)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(000106771)シーシーアイ株式会社 (245)
【Fターム(参考)】