コンクリート打継面の評価方法、評価装置及びコンピュータプログラム
【課題】コンクリート打継面のせん断強度を精度良く評価する。
【解決手段】 先に打設されて硬化したコンクリートの表面であって新たに打設するコンクリートと接触する打継面5を、2つのデジタルカメラ1a,1bで異なる位置から撮影する。コンピュータ2を用いた演算によって2つの画像から打継面の所定の方向に所定の間隔で該打継面と直角方向の凹凸量を測定する。所定の範囲における上記測定値によって描かれる形状線を波形としてフーリエ変換を行い、パワースペクトルを演算する。このパワースペクトルの周波数領域(波長の逆数)における所定範囲で該パワースペクトルの値の総和を演算し、この総和に基づいて打継面におけるせん断強度を評価し、表示装置に出力する。
【解決手段】 先に打設されて硬化したコンクリートの表面であって新たに打設するコンクリートと接触する打継面5を、2つのデジタルカメラ1a,1bで異なる位置から撮影する。コンピュータ2を用いた演算によって2つの画像から打継面の所定の方向に所定の間隔で該打継面と直角方向の凹凸量を測定する。所定の範囲における上記測定値によって描かれる形状線を波形としてフーリエ変換を行い、パワースペクトルを演算する。このパワースペクトルの周波数領域(波長の逆数)における所定範囲で該パワースペクトルの値の総和を演算し、この総和に基づいて打継面におけるせん断強度を評価し、表示装置に出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物を構築するために先に打設して硬化したコンクリートとこれに密着するように後から打設するコンクリートとの接触面すなわちコンクリートの打継面におけるせん断強度を、先に打設したコンクリートの打継面の状態から評価する方法、評価を行うために用いる装置及び評価をするためのコンピュータプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物を構築する場合においては、一部のコンクリートを打設し、硬化してからこの部分と連続するように新たなコンクリートを打設して一体とする方法が一般に採用されている。このように先に打設したコンクリートと後から打設するコンクリートの接合面すなわち打継面は、コンクリートが一体となって挙動し、この打継面が弱点とならないように処理することが必要となる。
【0003】
打継面の処理は、ワイヤブラシで表面を削る方法、チッピング等によって表面を粗にする方法、高圧水の噴射によって骨材を露出させて凹凸を形成する方法などが採用されている。そして、新たにコンクリートを打設する直前には先に打設したコンクリートを充分に吸水させ、セメントペースト又はモルタル等を塗った後に新たなコンクリートを打設することが行われている。
【0004】
しかし、このような打継面の処理は、どの程度の処理をすればよいのか定量的に指標が明確になっていないことから、コンクリートの打設現場において過剰のチッピングが要求されたり、施工効率を求める余りに打継面の処理が不十分になっていることもあると考えられる。
【0005】
このような状況において、コンクリートの打継面の処理状態を定量的に評価しようとする試みがいくつか提案されており、例えば特許文献1に表面処理形状の評価システムが提案されている。
この評価システムは、表面処理後のコンクリートについて表面の凹凸量を所定のピッチで測定し、測定された凹凸量を集計してコンクリートの表面処理形状の特徴量を算出する。そして、あらかじめ保存されている理想的な表面処理形状を有するコンクリートの特徴量と対比することによってコンクリートの表面処形状を評価するものである。上記特徴量としては例えば、凹凸量の平均値のデータ及び標準偏差値のデータが提案されている。
【0006】
一方、非特許文献1には、コンクリートの表面粗さを十点平均粗さ、自乗平均粗さ、中心平均粗さ等で評価し、定量化することが提案されている。
上記十点平均粗さH1は、図6に示すように、表面の形状線と最小自乗法で求めた基準線とから、最も大きい山から5番目の山までの頂上の標高の平均値と、最も低い谷から5番目の谷までの谷底の標高の平均値とを算出し、これらの差によって表面粗さを示すものである。
中心線平均粗さH2は、図7に示すように、中心線から上側の形状線までの面積と中心線から下側の形状線までの面積とが等しくなるように中心線の位置を定め、中心線から形状線までの高さをf(x)としたときの、f(x)の絶対値の総和を測定点数で除した値で表面の粗さを示すものである。
【0007】
上記のような指標の他にも、平均深さd、表面積率Rで表面の粗さを示すものがある。
平均深さdは、図8に示すように、最も高い山の頂部を通る水平線からの深さの平均値で表面の粗さを示すものである。また、表面積率Rは、図9に示すように、凹凸を形成する形状線の線長Rを投影した線長すなわち水平距離で除した値で表面の粗さを示すものである。
【特許文献1】特開平11―336017号公報
【非特許文献1】槇谷貴光、香取慶一、林静雄、「コンクリート打継ぎ面における表面粗さの評価とせん断力伝達能力に関する実験的研究」、コンクリート工学会、コンクリート工学年次論文報告集、Vol.17,No.2,1995
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のように打継面を定量的に評価しようとする場合には、次のような課題がある。
打継面のせん断強度は、いくつかの要因に影響されるものと考えられるが、その一つに骨材特に粗骨材がせん断キーとして作用することによるものが考えられる。これは、先に打設したコンクリートの打継面から突き出した骨材が新たに打設されるコンクリート中に埋め込まれ、骨材粒が双方のコンクリートに跨るように埋め込まれることによって発揮されるものである。一方、波長の大きな凹凸はせん断強度には大きくは寄与しないものと考えられる。つまり、先に打設するコンクリートの打継面をこて仕上げするときに生じた大きな凹凸や、打継面の型枠が波打つようにゆがんでいる場合に生じる凹凸は、せん断強度にあまり影響しない。
【0009】
しかし、上記のように骨材の寸法より遙かに波長が大きい凹凸は、打継面のせん断強度にはあまり寄与しないにもかかわらず、前述の十点平均粗さや中心線平均粗さには大きく影響することがある。このため、これらの数値によって打継面のせん断強度を評価すると実際のせん断強度との差が大きくなり、評価精度が低下するおそれがある。
【0010】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、コンクリートの打継面のせん断強度を精度良く評価することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、 硬化したコンクリートの表面であって新たに打設するコンクリートと接触する打継面について、所定の方向に所定の間隔で該打継面と直角方向の凹凸量を測定し、 所定の範囲における前記測定値によって描かれる形状線を波形と考えてフーリエ変換を行い、パワースペクトルを演算し、 前記パワースペクトルの周波数領域(波長の逆数)における所定範囲で該パワースペクトルの値の総和を演算し、 前記総和に基づいて、前記打継面における先に打設したコンクリートと後から打設したコンクリートとの間のせん断強度を評価することを特徴とするコンクリート打継面の評価方法を提供する。
【0012】
この方法では、先に打設されて硬化したコンクリートの打継面について測定した凹凸量から、その表面の形状線をスペクトルに変換することができる。つまり、形状線を構成する曲線を波形と考えて周波数成分の分析すなわち凹凸を形成する曲線がどのような波長の正弦波によって構成されているかを分析することが可能となる。したがって、演算されたパワースペクトルからせん断強度に寄与する波長の成分だけを取りだして、打継面のせん断強度を評価することができる。これにより、小さな凹凸や型枠の歪みのような大きな波長の成分が除外され、精度良くせん断強度を評価することができる。
なお、上記方法において評価する打継面は、ワイヤブラシによる表面処理、チッピング処理又は高圧水の噴射による処理等が行われ、ゆるんだ骨材粒等が除去されていることが望ましい。また、打継面がコンクリート打設時に型枠によって形成された凹凸を有するものであってもよい。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の評価方法において、 前記パワースペクトルの値の総和を演算する所定の範囲は、正弦波の波長の最小値を0mmから前記コンクリートに含まれる粗骨材の最大寸法までの範囲で設定された値とし、正弦波の波長の最大値を粗骨材の最大寸法の2倍から前記打継面の型枠を構成する板材の最小寸法未満の範囲で設定された値としたときの、前記最小値から最大値までの範囲とする。
また、請求項3に係る発明は、請求項1に記載の評価方法において、 前記パワースペクトルの値の総和を演算する所定の範囲は、正弦波の波長の最小値を0mmから前記コンクリートに含まれる粗骨材の最大寸法までの範囲で設定された値とし、正弦波の波長の最大値を粗骨材の最大寸法の2倍から5倍までの範囲で設定された値としたときの、前記最小値から最大値までの範囲とする。
【0014】
コンクリートの打継面におけるせん断強度は、骨材粒の存在に起因する凹凸が最も大きく影響するものと考えられ、図10に示すように、先に打設したコンクリート101から粗骨材102が間隔をおいて突き出している状態がせん断強度に大きく寄与する。図10に示すように粗骨材が突き出した間の凹部103には、新たに打設するコンクリートの粗骨材が入り込み、双方のコンクリートに含まれる粗骨材がせん断強度に寄与するものである。このような状態では、先に打設したコンクリートの打継面における形状線は、主に粗骨材寸法から粗骨材寸法の2倍を一波長とする成分が含まれている。したがって、パワースペクトルから、せん断強度への影響が大きい領域を限定するときには、この波長の範囲を含む領域に設定するのが良い。したがって、パワースペクトルにおける波長の所定範囲は、最大値を粗骨材の最大寸法の2倍より大きい値とする。また、最大値は型枠のゆがみによる影響を除外するのが望ましいことから、型枠の最小寸法より小さい範囲で最大値を定めるのがよい。打継面に用いられる型枠は、多くの場合に貫通する鉄筋があること等によって10cm幅程度の板材が多く用いられる。このような板材を組み合わせた型枠は、図11(a)に示すように波打つようなゆがみが生じたり、図11(b)に示すように隣接する板材間で目違いを生じ易く、この影響をを除外するものである。
また、水平な打継面等においては型枠が用いられず、こて仕上げ等を行うことによる起伏が生じる可能性がある。このような起伏による影響を排除するために、粗骨材の最大寸法の5倍までの範囲で最大値を定めるのが望ましい。最大値は粗骨材の最大寸法の2倍から5倍までの範囲で設定してもせん断強度との対応はほぼ同じであることが実験によって確認されている。
【0015】
一方、パワースペクトルにおける波長の所定範囲は、上記粗骨材の寸法より大幅に小さい領域では、せん断強度にほとんど影響しない。したがって、粗骨材の寸法より小さい範囲で波長の最小値を設定すれば、精度の良い評価が可能となる。
【0016】
なお、粗骨材の最大寸法とは、JIS A0203(コンクリート用語)において定められているものであり、質量で骨材の90%以上が通るふるいのうち、最小寸法のふるいの呼び寸法で示される粗骨材の寸法をいうものである。
【0017】
請求項4に係る発明は、 硬化したコンクリートの表面であって新たに打設するコンクリートと接触する打継面について、所定の方向に所定の間隔で該打継面と直角方向の凹凸量を測定する凹凸量測定装置と、 所定の範囲における前記測定値によって描かれる形状 線を波形と考えてフーリエ変換を行い、パワースペクトルを演算するスペクトル演算部と、 前記パワースペクトルの周波数領域(波長の逆数領域)における所定範囲で、該パワース ペクトルの値の総和を演算し、該演算値に基づいて前記打継面における先に打設したコンクリートと後から打設したコンクリートとの間のせん断強度の評価を演算する評価演算部と、 前記評価演算部の演算結果を表示する表示装置とを有することを特徴とするコンク リート打継面の評価装置を提供するものである。
【0018】
この評価装置は、請求項1に係る方法を実施することができるものであり、先に打設して硬化したコンクリートの表面における凹凸量を測定し、その表面の形状をパワースペクトルに変換することができる。そして、このパワースペクトルから所定の範囲を限定してスペクトル値の総和を演算し、この値に基づいて打継面のせん断強度を精度良く評価することができる。
【0019】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の評価装置において、 前記凹凸量測定装置は、前記打継面を基準定規とともに2つの位置から撮影するデジタルカメラと、 前記デジタルカメラで撮影された二つの画像から、前記打継面の複数の位置における座標を演算する座標演算部と、 この座標値から前記打継面上の所定間隔で凹凸量を演算する凹凸量演算部とを有するものである。
【0020】
この評価装置では、打継面を撮影した2つの画像から打継面の凹凸量つまり打継面と直角方向の位置を演算によって迅速かつ正確に算出することができる。そして、この算出値を用いて高速フーリエ変換(FFT)を行うことができ、パワースペクトルの演算も容易に行うことができる。
【0021】
請求項6に係る発明は、 硬化したコンクリートの表面であって新たに打設するコンクリートと接触する打継面について、凹凸を表す形状線の所定の範囲を波形と考えてフーリエ変換を行い、パワースペクトルを演算する手順と、 前記パワースペクトルの周波数領域(波長の逆数)における所定範囲で該パワースペクトルの値の総和を演算する手順と、
前記総和に基づいて、前記打継面における先に打設したコンクリートと後から打設したコンクリートとの間のせん断強度に対応した評価を演算する手順とを、コンピュータに実行させるためのプログラムを提供するものである。
【0022】
このプラグラムによって駆動されるコンピュータにより、所定間隔で測定された凹凸量に基づいて高速フーリエ変換を行い、パワースペクトルを迅速に演算することができる。そして、このパワースペクトルの周波数領域における所定の範囲について、スペクトル値の演算も連続しておこなうことができ、打継面におけるせん断強度の評価を迅速におこなうことができる。
【0023】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の評価装置において、 前記打継面を基準定規とともに2つの位置から撮影した画像から、前記打継面の複数の位置における凹凸量を演算する手順をコンピュータに実行させる内容を含むものである。
【0024】
このプラグラムにより、2つの画像から打継面の凹凸量を演算し、この演算値からフーリエ変換を連続しておこなうことができる。したがって、現場における打継面の撮影からせん断強度の評価までを迅速に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の評価方法では、打継面の波長の小さな凹凸や型枠のゆがみ等に起因する波長の大きな凹凸等、せん断強度に影響の少ない凹凸の成分を除外して、打継面のせん断強度の評価を精度良く行うことが可能となる。
また、本発明の評価装置では、打継面におけるせん断強度の評価を精度良く迅速に行うことができる。さらに、本発明のプラグラムでコンピュータを駆動することにより、コンクリートの打継面におけるせん断強度の評価を汎用的な機器を用いて迅速に精度良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本願に係る発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本願発明の一実施形態である「コンクリート打継面の評価装置」を示す概略構成図である。
この評価装置は、打設されて硬化したコンクリートの打継面5を基準定規とともに撮影する二つのデジタルカメラ1a,1bと、このデジタルカメラで撮影された画像をデジタル信号として取り込むコンピュータ2と、このコンピュータに操作者が情報の入力を行うための入力装置3と、コンピュータによって演算された結果を出力する表示装置4とで主要部が構成されている。
【0027】
上記デジタルカメラ1a,1bは、2台がコンクリートの打継面5における同じ領域を異なる位置から重ねて撮影するように設置されている。つまり、図1に示すように、撮影領域にある各位置Pを2つのデジタルカメラ1a,1bから異なる角度で撮影するものである。
【0028】
上記コンピュータ2は、プログラムがインストールされることにより、上記デジタル信号として取り込まれた画像情報から、コンクリート打継面5における複数の位置の座標を演算する機能と、演算された複数の位置の座標からコンクリート打継面の所定の方向へ所定の間隔で凹凸量を演算する機能と、これに基づいてフーリエ変換を行い、パワースペクトルを演算するとともに、上記パワースペクトルの周波数領域(波長の逆数)における所定範囲で該パワースペクトルの値の総和を演算する機能と、上記総和に基づいて打継面における先に打設したコンクリートと後から打設したコンクリートとの間のせん断強度に対応した評価を演算する機能とを有するものとなっている。また、このコンピュータ2が備える記憶装置2aには、上記パワースペクトルの値の総和と打継面のせん断強度との関係についてのデータが記憶されている。このデータは、例えばあらかじめ実験等を行った結果によりパワースペクトルの値の総和と打継面のせん断強度とを関係付けたものである。
【0029】
上記コンクリート打継面における複数の位置の座標を演算する機能は、次のような工程を行うものである。
二つの画像に撮影されている基準定規のある点を基準点とし、その座標を設定する。そして、この基準点の座標と画像上の位置から二つのデジタルカメラの位置及び傾きを特定する。その後、二つの画像上に撮影された対応する点(同一点)すなわちマッチングポイントを探索する処理を行う。見出された複数のマッチングポイントについて、二つのデジタルカメラの位置及び傾きから各マッチングポイントの座標を演算する。
【0030】
コンクリート打継面の凹凸量を演算する機能は、上記のように座標が演算されたマッチングポイントがランダムな配列となっていることから、これら座標値から補間して所定の方向へ所定の間隔で設定された測定点について凹凸量を演算するものである。つまり、打継面の断面が図2(a)に示すように骨材10の突出等によって凹凸が形成されているときに、図2(b)に示すように所定の長さLの範囲において所定の間隔aで表面の基準線Sからの凹凸量を演算する。コンクリート打継面における所定の方向は、コンクリート構造物に荷重が作用したときの打継面に発生するせん断力の方向に設定する。また、所定の間隔aは、打継面のせん断強度に影響を及ぼす凹凸の間隔つまり凹凸を波形と考えたときの波長より充分に小さく設定するのが望ましい。
なお、請求項4に係る発明における凹凸量測定装置は、上記デジタルカメラと打継面の座標を演算し、凹凸量を演算するように機能する上記コンピュータとを含むものである。
【0031】
パワースペクトルを演算する機能は、図2(b)に示されるように所定の間隔で表面の凹凸量が演算されると、これらを結ぶ形状線が所定の長さL毎に周期的に繰り返す周期関数としてフーリエ変換を行うものである。フーリエ変換は、所定間隔で設定された点の凹凸量のデータから高速フーリエ変換(FFT)によって行い、スペクトルに変換することができる。
【0032】
図3は、演算されたパワースペクトルの一例を示すものである。上記コンピュータのパワースペクトルの値の総和を演算する機能は、入力されたデータ又はあらかじめ設定されたデータに基づき、図3に示されるように、波長の逆数における軸線上で所定の範囲(ωa〜ωb)を限定し、この範囲内でパワースペクトルの値の総和を演算する。そして、せん断強度に対応した評価を演算する機能は、上記のように演算されたパワースペクトルの総和と記憶装置に保存されているデータとから、打継面のせん断強度を推定するものである。一般に上記のように限定された範囲におけるパワースペクトルの値の総和が大きいほどせん断強度は大きくなり、記憶装置にパワースペクトルの値の総和とせん断強度との関係が記憶されていることにより、これを参照して打継面のせん断強度を推定することができる。
【0033】
図3において、パワースペクトルの値の総和を演算する範囲(ωa〜ωb)は、一例として次のように設定したものである。
波長の最大値は粗骨材の最大寸法の2倍以上で、型枠の最小寸法100mmより小さいの範囲で定めたものであり、粗骨材の最大寸法の5倍までの範囲でもある。この例ではコンクリートに含まれる粗骨材の最大寸法が20mmであることから、最大値を90mmとしている。また、最小値は粗骨材の最大寸法以下に定めたものであり、この例では20mmにしている。
【0034】
なお、上記コンピュータと接続されている入力装置は、図1に示す例ではキーボードが用いられているが、その他のデータを入力することが可能な様々な装置を用いることができる。また、表示装置として図1に示す例ではディアスプレイが用いられているが、プリンタ等の演算結果を表示可能な様々な装置を用いることができる。
【0035】
上記のような装置を用いることにより、コンクリート構造物を構築する現場においてコンクリートの打継面を撮影し、この画像信号をコンピュータに入力する。そして、コンピュータにおいて、打継面のせん断力が作用する方向に所定の間隔で設定された位置の凹凸量を演算する手順と、所定の範囲における前記凹凸量の測定値によって描かれる形状線を波形と考えてフーリエ変換を行い、パワースペクトルを演算する手順と、パワースペクトルの周波数領域(波長の逆数)における所定範囲で該パワースペクトルの値の総和を演算する手順と、総和に基づいて打継面のせん断強度を推定する手順とを、迅速におこなうことができる。したがって、現場において新たなコンクリートを打設する前に、先のコンクリートの打継面が適切に処理されているか否かを判断することができ、打継面の処理が不十分であるときには再処理を行って適切に新旧コンクリートを打ち継ぐことができる。
【0036】
次に、本願発明に係る評価方法の妥当性について行った実験について説明する。
この実験は、先にブロック状にコンクリートを打設し、硬化後このコンクリート片に連続するように新たなコンクリートを打設し、打継面にせん断力を作用させてせん断強度を測定するものである。先に打設したコンクリート片は、打継面の処理の状態を変えて複数を製作し、それぞれについて本願発明の評価方法及び評価装置によって処理状態を評価する。そして、それぞれに新たなコンクリートを連続するように打設し、打継面の処理状態とせん断強度との関係を調査したものである。
【0037】
(1)試験体
試験体は、図4に示すように、厚さ150mm、幅300mm、高さ300mmのコンクリートブロック21を製作し、その両側面に打継ぎ処理を行った後、同寸法の二つのコンクリートブロック22a,22bをそれぞれの側面と連続するように打ち足す。このとき新たに打ち足すコンクリートブロック22a,22bは、高さ方向に50mmずれた位置で連続するように製作する。したがって、先にコンクリートを打設したブロック21と新たにコンクリートを打設した二つのブロック22a,22bとは、幅が300mmで高さ方向に250mmの範囲で接合された状態となる。
【0038】
(2)載荷方法
荷重の載荷は、図4に示すように、新たにコンクリートを打設した二つのブロックを試験台上に載置し、上方に突き出している先にコンクリートを打設したブロック21に鉛直方向の荷重を載荷する。これにより荷重が作用するコンクリートブロック21と両側面に接合された二つのコンクリートブロック22a,22bとの打継面にせん断力が作用する。
【0039】
(3)打継面の処理
打継面の処理は、次の3種類をぞれぞれ異なる試験体に施し、これらによるパワースペクトルの値の総和及びせん断強度の比較を行った。
処理A:コンクリートが硬化した後、チッピングを行うものである。チッピングはコンクリート打設後一日経過時に行った。チッピングにはドリルを用い、コンクリートの打継面に当てて表面付近のセメントペース又はモルタル部分を剥離させる。
処理B:コンクリート打設時に、型枠に遅延剤を塗布しておき、コンクリートの硬化後に洗浄を行うものである。打継面付近のコンクリートの硬化が遅れ、内部のコンクリートが硬化した後に洗浄を行うことによって表面付近のセメントペーストが除去される。したがって、骨材が露出・突出してせん断強度に寄与するものとなる。
処理C:コンクリート打設時に、型枠に遅延シートを貼付しておき、コンクリートの硬化後に洗浄を行うものである。遅延剤を塗布した場合と同様に骨材が露出・突出して凹凸を形成する。
【0040】
(4)載荷実験及び演算処理
載荷実験は、図4に示すように、先に打設したコンクリート片に鉛直方向の荷重を徐々に増加しながら載荷し、先にコンクリートを打設したブロック21と後からコンクリートを打設したブロック22a,22bとの打継面にせん断破壊が生じたときの荷重を測定する。載荷実験は、先に打設したコンクリートの材齢が14日であり、後から打設したコンクリートの材齢が7日のときに行った。このときのコンクリートの強度は、それぞれ40.0N/mm2、39.1N/mm2であった。
打継面の凹凸量を測定し、パワースペクトルを演算した後にこのパワースペクトルの総和を演算する範囲は、波長が0mmから骨材の最大寸法の2倍(40mm)までの範囲としている。
【0041】
(5)結果
図5は上記実験の結果を示すものであり、横軸にパワースペクトルの値の所定範囲における総和を示すものであり、縦軸は打継面のせん断強度である。
この図に示すように、パワースペクトルの値の所定範囲における総和と打継面のせん断強度とはほぼ比例しており、パワースペクトルの値の所定範囲における総和が大きくなるにしたがって打継面のせん断強度も大きくなっている。したがって、パワースペクトルの値の所定範囲における総和と打継面のせん断強度との対応とをあらかじめ実験等によって調査しておくことにより、パワースペクトルの値の総和からせん断強度を推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態である「コンクリート打継面の評価装置」を示す概略構成図である。
【図2】コンクリート打継面の凹凸を示す拡大断面図及びこの打継面について凹凸量を測定して描かれた形状線を示す図である。
【図3】打継面の形状線を波形と考えて演算されたパワースペクトルの一例を示す図である。
【図4】本発明の効果を確認するために行った実験の概要を示す概略斜視図である。
【図5】本発明の効果を確認するために行った実験の結果であって、パワースペクトルの値の総和と打継面のせん断強度との関係を示す図である。
【図6】十点平均粗さH1を説明する概略図である。
【図7】中心線平均粗さH2を説明する概略図である。
【図8】平均深さdを説明する概略図である。
【図9】表面積率Rを説明する概略図である。
【図10】打継面の凹凸と骨材との関係を示す概略断面図である。
【図11】打継面の凹凸と型枠のゆがみとの関係を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1:デジタルカメラ、 2:コンピュータ、 3:入力装置、 4:表示装置、 5:コンクリートの打継面、 10:骨材、 21:試験体の先にコンクリートを打設するブロック、 22:試験体の後からコンクリートを打設するブロック、
101:先に打設したコンクリート、 102:骨材、 103:骨材が突き出した間の凹部、
L:打継面の凹凸を測定する範囲、 a:打継面の凹凸を測定する間隔、 S:打継面の凹凸の基準線
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物を構築するために先に打設して硬化したコンクリートとこれに密着するように後から打設するコンクリートとの接触面すなわちコンクリートの打継面におけるせん断強度を、先に打設したコンクリートの打継面の状態から評価する方法、評価を行うために用いる装置及び評価をするためのコンピュータプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物を構築する場合においては、一部のコンクリートを打設し、硬化してからこの部分と連続するように新たなコンクリートを打設して一体とする方法が一般に採用されている。このように先に打設したコンクリートと後から打設するコンクリートの接合面すなわち打継面は、コンクリートが一体となって挙動し、この打継面が弱点とならないように処理することが必要となる。
【0003】
打継面の処理は、ワイヤブラシで表面を削る方法、チッピング等によって表面を粗にする方法、高圧水の噴射によって骨材を露出させて凹凸を形成する方法などが採用されている。そして、新たにコンクリートを打設する直前には先に打設したコンクリートを充分に吸水させ、セメントペースト又はモルタル等を塗った後に新たなコンクリートを打設することが行われている。
【0004】
しかし、このような打継面の処理は、どの程度の処理をすればよいのか定量的に指標が明確になっていないことから、コンクリートの打設現場において過剰のチッピングが要求されたり、施工効率を求める余りに打継面の処理が不十分になっていることもあると考えられる。
【0005】
このような状況において、コンクリートの打継面の処理状態を定量的に評価しようとする試みがいくつか提案されており、例えば特許文献1に表面処理形状の評価システムが提案されている。
この評価システムは、表面処理後のコンクリートについて表面の凹凸量を所定のピッチで測定し、測定された凹凸量を集計してコンクリートの表面処理形状の特徴量を算出する。そして、あらかじめ保存されている理想的な表面処理形状を有するコンクリートの特徴量と対比することによってコンクリートの表面処形状を評価するものである。上記特徴量としては例えば、凹凸量の平均値のデータ及び標準偏差値のデータが提案されている。
【0006】
一方、非特許文献1には、コンクリートの表面粗さを十点平均粗さ、自乗平均粗さ、中心平均粗さ等で評価し、定量化することが提案されている。
上記十点平均粗さH1は、図6に示すように、表面の形状線と最小自乗法で求めた基準線とから、最も大きい山から5番目の山までの頂上の標高の平均値と、最も低い谷から5番目の谷までの谷底の標高の平均値とを算出し、これらの差によって表面粗さを示すものである。
中心線平均粗さH2は、図7に示すように、中心線から上側の形状線までの面積と中心線から下側の形状線までの面積とが等しくなるように中心線の位置を定め、中心線から形状線までの高さをf(x)としたときの、f(x)の絶対値の総和を測定点数で除した値で表面の粗さを示すものである。
【0007】
上記のような指標の他にも、平均深さd、表面積率Rで表面の粗さを示すものがある。
平均深さdは、図8に示すように、最も高い山の頂部を通る水平線からの深さの平均値で表面の粗さを示すものである。また、表面積率Rは、図9に示すように、凹凸を形成する形状線の線長Rを投影した線長すなわち水平距離で除した値で表面の粗さを示すものである。
【特許文献1】特開平11―336017号公報
【非特許文献1】槇谷貴光、香取慶一、林静雄、「コンクリート打継ぎ面における表面粗さの評価とせん断力伝達能力に関する実験的研究」、コンクリート工学会、コンクリート工学年次論文報告集、Vol.17,No.2,1995
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のように打継面を定量的に評価しようとする場合には、次のような課題がある。
打継面のせん断強度は、いくつかの要因に影響されるものと考えられるが、その一つに骨材特に粗骨材がせん断キーとして作用することによるものが考えられる。これは、先に打設したコンクリートの打継面から突き出した骨材が新たに打設されるコンクリート中に埋め込まれ、骨材粒が双方のコンクリートに跨るように埋め込まれることによって発揮されるものである。一方、波長の大きな凹凸はせん断強度には大きくは寄与しないものと考えられる。つまり、先に打設するコンクリートの打継面をこて仕上げするときに生じた大きな凹凸や、打継面の型枠が波打つようにゆがんでいる場合に生じる凹凸は、せん断強度にあまり影響しない。
【0009】
しかし、上記のように骨材の寸法より遙かに波長が大きい凹凸は、打継面のせん断強度にはあまり寄与しないにもかかわらず、前述の十点平均粗さや中心線平均粗さには大きく影響することがある。このため、これらの数値によって打継面のせん断強度を評価すると実際のせん断強度との差が大きくなり、評価精度が低下するおそれがある。
【0010】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、コンクリートの打継面のせん断強度を精度良く評価することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、 硬化したコンクリートの表面であって新たに打設するコンクリートと接触する打継面について、所定の方向に所定の間隔で該打継面と直角方向の凹凸量を測定し、 所定の範囲における前記測定値によって描かれる形状線を波形と考えてフーリエ変換を行い、パワースペクトルを演算し、 前記パワースペクトルの周波数領域(波長の逆数)における所定範囲で該パワースペクトルの値の総和を演算し、 前記総和に基づいて、前記打継面における先に打設したコンクリートと後から打設したコンクリートとの間のせん断強度を評価することを特徴とするコンクリート打継面の評価方法を提供する。
【0012】
この方法では、先に打設されて硬化したコンクリートの打継面について測定した凹凸量から、その表面の形状線をスペクトルに変換することができる。つまり、形状線を構成する曲線を波形と考えて周波数成分の分析すなわち凹凸を形成する曲線がどのような波長の正弦波によって構成されているかを分析することが可能となる。したがって、演算されたパワースペクトルからせん断強度に寄与する波長の成分だけを取りだして、打継面のせん断強度を評価することができる。これにより、小さな凹凸や型枠の歪みのような大きな波長の成分が除外され、精度良くせん断強度を評価することができる。
なお、上記方法において評価する打継面は、ワイヤブラシによる表面処理、チッピング処理又は高圧水の噴射による処理等が行われ、ゆるんだ骨材粒等が除去されていることが望ましい。また、打継面がコンクリート打設時に型枠によって形成された凹凸を有するものであってもよい。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の評価方法において、 前記パワースペクトルの値の総和を演算する所定の範囲は、正弦波の波長の最小値を0mmから前記コンクリートに含まれる粗骨材の最大寸法までの範囲で設定された値とし、正弦波の波長の最大値を粗骨材の最大寸法の2倍から前記打継面の型枠を構成する板材の最小寸法未満の範囲で設定された値としたときの、前記最小値から最大値までの範囲とする。
また、請求項3に係る発明は、請求項1に記載の評価方法において、 前記パワースペクトルの値の総和を演算する所定の範囲は、正弦波の波長の最小値を0mmから前記コンクリートに含まれる粗骨材の最大寸法までの範囲で設定された値とし、正弦波の波長の最大値を粗骨材の最大寸法の2倍から5倍までの範囲で設定された値としたときの、前記最小値から最大値までの範囲とする。
【0014】
コンクリートの打継面におけるせん断強度は、骨材粒の存在に起因する凹凸が最も大きく影響するものと考えられ、図10に示すように、先に打設したコンクリート101から粗骨材102が間隔をおいて突き出している状態がせん断強度に大きく寄与する。図10に示すように粗骨材が突き出した間の凹部103には、新たに打設するコンクリートの粗骨材が入り込み、双方のコンクリートに含まれる粗骨材がせん断強度に寄与するものである。このような状態では、先に打設したコンクリートの打継面における形状線は、主に粗骨材寸法から粗骨材寸法の2倍を一波長とする成分が含まれている。したがって、パワースペクトルから、せん断強度への影響が大きい領域を限定するときには、この波長の範囲を含む領域に設定するのが良い。したがって、パワースペクトルにおける波長の所定範囲は、最大値を粗骨材の最大寸法の2倍より大きい値とする。また、最大値は型枠のゆがみによる影響を除外するのが望ましいことから、型枠の最小寸法より小さい範囲で最大値を定めるのがよい。打継面に用いられる型枠は、多くの場合に貫通する鉄筋があること等によって10cm幅程度の板材が多く用いられる。このような板材を組み合わせた型枠は、図11(a)に示すように波打つようなゆがみが生じたり、図11(b)に示すように隣接する板材間で目違いを生じ易く、この影響をを除外するものである。
また、水平な打継面等においては型枠が用いられず、こて仕上げ等を行うことによる起伏が生じる可能性がある。このような起伏による影響を排除するために、粗骨材の最大寸法の5倍までの範囲で最大値を定めるのが望ましい。最大値は粗骨材の最大寸法の2倍から5倍までの範囲で設定してもせん断強度との対応はほぼ同じであることが実験によって確認されている。
【0015】
一方、パワースペクトルにおける波長の所定範囲は、上記粗骨材の寸法より大幅に小さい領域では、せん断強度にほとんど影響しない。したがって、粗骨材の寸法より小さい範囲で波長の最小値を設定すれば、精度の良い評価が可能となる。
【0016】
なお、粗骨材の最大寸法とは、JIS A0203(コンクリート用語)において定められているものであり、質量で骨材の90%以上が通るふるいのうち、最小寸法のふるいの呼び寸法で示される粗骨材の寸法をいうものである。
【0017】
請求項4に係る発明は、 硬化したコンクリートの表面であって新たに打設するコンクリートと接触する打継面について、所定の方向に所定の間隔で該打継面と直角方向の凹凸量を測定する凹凸量測定装置と、 所定の範囲における前記測定値によって描かれる形状 線を波形と考えてフーリエ変換を行い、パワースペクトルを演算するスペクトル演算部と、 前記パワースペクトルの周波数領域(波長の逆数領域)における所定範囲で、該パワース ペクトルの値の総和を演算し、該演算値に基づいて前記打継面における先に打設したコンクリートと後から打設したコンクリートとの間のせん断強度の評価を演算する評価演算部と、 前記評価演算部の演算結果を表示する表示装置とを有することを特徴とするコンク リート打継面の評価装置を提供するものである。
【0018】
この評価装置は、請求項1に係る方法を実施することができるものであり、先に打設して硬化したコンクリートの表面における凹凸量を測定し、その表面の形状をパワースペクトルに変換することができる。そして、このパワースペクトルから所定の範囲を限定してスペクトル値の総和を演算し、この値に基づいて打継面のせん断強度を精度良く評価することができる。
【0019】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の評価装置において、 前記凹凸量測定装置は、前記打継面を基準定規とともに2つの位置から撮影するデジタルカメラと、 前記デジタルカメラで撮影された二つの画像から、前記打継面の複数の位置における座標を演算する座標演算部と、 この座標値から前記打継面上の所定間隔で凹凸量を演算する凹凸量演算部とを有するものである。
【0020】
この評価装置では、打継面を撮影した2つの画像から打継面の凹凸量つまり打継面と直角方向の位置を演算によって迅速かつ正確に算出することができる。そして、この算出値を用いて高速フーリエ変換(FFT)を行うことができ、パワースペクトルの演算も容易に行うことができる。
【0021】
請求項6に係る発明は、 硬化したコンクリートの表面であって新たに打設するコンクリートと接触する打継面について、凹凸を表す形状線の所定の範囲を波形と考えてフーリエ変換を行い、パワースペクトルを演算する手順と、 前記パワースペクトルの周波数領域(波長の逆数)における所定範囲で該パワースペクトルの値の総和を演算する手順と、
前記総和に基づいて、前記打継面における先に打設したコンクリートと後から打設したコンクリートとの間のせん断強度に対応した評価を演算する手順とを、コンピュータに実行させるためのプログラムを提供するものである。
【0022】
このプラグラムによって駆動されるコンピュータにより、所定間隔で測定された凹凸量に基づいて高速フーリエ変換を行い、パワースペクトルを迅速に演算することができる。そして、このパワースペクトルの周波数領域における所定の範囲について、スペクトル値の演算も連続しておこなうことができ、打継面におけるせん断強度の評価を迅速におこなうことができる。
【0023】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の評価装置において、 前記打継面を基準定規とともに2つの位置から撮影した画像から、前記打継面の複数の位置における凹凸量を演算する手順をコンピュータに実行させる内容を含むものである。
【0024】
このプラグラムにより、2つの画像から打継面の凹凸量を演算し、この演算値からフーリエ変換を連続しておこなうことができる。したがって、現場における打継面の撮影からせん断強度の評価までを迅速に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の評価方法では、打継面の波長の小さな凹凸や型枠のゆがみ等に起因する波長の大きな凹凸等、せん断強度に影響の少ない凹凸の成分を除外して、打継面のせん断強度の評価を精度良く行うことが可能となる。
また、本発明の評価装置では、打継面におけるせん断強度の評価を精度良く迅速に行うことができる。さらに、本発明のプラグラムでコンピュータを駆動することにより、コンクリートの打継面におけるせん断強度の評価を汎用的な機器を用いて迅速に精度良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本願に係る発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本願発明の一実施形態である「コンクリート打継面の評価装置」を示す概略構成図である。
この評価装置は、打設されて硬化したコンクリートの打継面5を基準定規とともに撮影する二つのデジタルカメラ1a,1bと、このデジタルカメラで撮影された画像をデジタル信号として取り込むコンピュータ2と、このコンピュータに操作者が情報の入力を行うための入力装置3と、コンピュータによって演算された結果を出力する表示装置4とで主要部が構成されている。
【0027】
上記デジタルカメラ1a,1bは、2台がコンクリートの打継面5における同じ領域を異なる位置から重ねて撮影するように設置されている。つまり、図1に示すように、撮影領域にある各位置Pを2つのデジタルカメラ1a,1bから異なる角度で撮影するものである。
【0028】
上記コンピュータ2は、プログラムがインストールされることにより、上記デジタル信号として取り込まれた画像情報から、コンクリート打継面5における複数の位置の座標を演算する機能と、演算された複数の位置の座標からコンクリート打継面の所定の方向へ所定の間隔で凹凸量を演算する機能と、これに基づいてフーリエ変換を行い、パワースペクトルを演算するとともに、上記パワースペクトルの周波数領域(波長の逆数)における所定範囲で該パワースペクトルの値の総和を演算する機能と、上記総和に基づいて打継面における先に打設したコンクリートと後から打設したコンクリートとの間のせん断強度に対応した評価を演算する機能とを有するものとなっている。また、このコンピュータ2が備える記憶装置2aには、上記パワースペクトルの値の総和と打継面のせん断強度との関係についてのデータが記憶されている。このデータは、例えばあらかじめ実験等を行った結果によりパワースペクトルの値の総和と打継面のせん断強度とを関係付けたものである。
【0029】
上記コンクリート打継面における複数の位置の座標を演算する機能は、次のような工程を行うものである。
二つの画像に撮影されている基準定規のある点を基準点とし、その座標を設定する。そして、この基準点の座標と画像上の位置から二つのデジタルカメラの位置及び傾きを特定する。その後、二つの画像上に撮影された対応する点(同一点)すなわちマッチングポイントを探索する処理を行う。見出された複数のマッチングポイントについて、二つのデジタルカメラの位置及び傾きから各マッチングポイントの座標を演算する。
【0030】
コンクリート打継面の凹凸量を演算する機能は、上記のように座標が演算されたマッチングポイントがランダムな配列となっていることから、これら座標値から補間して所定の方向へ所定の間隔で設定された測定点について凹凸量を演算するものである。つまり、打継面の断面が図2(a)に示すように骨材10の突出等によって凹凸が形成されているときに、図2(b)に示すように所定の長さLの範囲において所定の間隔aで表面の基準線Sからの凹凸量を演算する。コンクリート打継面における所定の方向は、コンクリート構造物に荷重が作用したときの打継面に発生するせん断力の方向に設定する。また、所定の間隔aは、打継面のせん断強度に影響を及ぼす凹凸の間隔つまり凹凸を波形と考えたときの波長より充分に小さく設定するのが望ましい。
なお、請求項4に係る発明における凹凸量測定装置は、上記デジタルカメラと打継面の座標を演算し、凹凸量を演算するように機能する上記コンピュータとを含むものである。
【0031】
パワースペクトルを演算する機能は、図2(b)に示されるように所定の間隔で表面の凹凸量が演算されると、これらを結ぶ形状線が所定の長さL毎に周期的に繰り返す周期関数としてフーリエ変換を行うものである。フーリエ変換は、所定間隔で設定された点の凹凸量のデータから高速フーリエ変換(FFT)によって行い、スペクトルに変換することができる。
【0032】
図3は、演算されたパワースペクトルの一例を示すものである。上記コンピュータのパワースペクトルの値の総和を演算する機能は、入力されたデータ又はあらかじめ設定されたデータに基づき、図3に示されるように、波長の逆数における軸線上で所定の範囲(ωa〜ωb)を限定し、この範囲内でパワースペクトルの値の総和を演算する。そして、せん断強度に対応した評価を演算する機能は、上記のように演算されたパワースペクトルの総和と記憶装置に保存されているデータとから、打継面のせん断強度を推定するものである。一般に上記のように限定された範囲におけるパワースペクトルの値の総和が大きいほどせん断強度は大きくなり、記憶装置にパワースペクトルの値の総和とせん断強度との関係が記憶されていることにより、これを参照して打継面のせん断強度を推定することができる。
【0033】
図3において、パワースペクトルの値の総和を演算する範囲(ωa〜ωb)は、一例として次のように設定したものである。
波長の最大値は粗骨材の最大寸法の2倍以上で、型枠の最小寸法100mmより小さいの範囲で定めたものであり、粗骨材の最大寸法の5倍までの範囲でもある。この例ではコンクリートに含まれる粗骨材の最大寸法が20mmであることから、最大値を90mmとしている。また、最小値は粗骨材の最大寸法以下に定めたものであり、この例では20mmにしている。
【0034】
なお、上記コンピュータと接続されている入力装置は、図1に示す例ではキーボードが用いられているが、その他のデータを入力することが可能な様々な装置を用いることができる。また、表示装置として図1に示す例ではディアスプレイが用いられているが、プリンタ等の演算結果を表示可能な様々な装置を用いることができる。
【0035】
上記のような装置を用いることにより、コンクリート構造物を構築する現場においてコンクリートの打継面を撮影し、この画像信号をコンピュータに入力する。そして、コンピュータにおいて、打継面のせん断力が作用する方向に所定の間隔で設定された位置の凹凸量を演算する手順と、所定の範囲における前記凹凸量の測定値によって描かれる形状線を波形と考えてフーリエ変換を行い、パワースペクトルを演算する手順と、パワースペクトルの周波数領域(波長の逆数)における所定範囲で該パワースペクトルの値の総和を演算する手順と、総和に基づいて打継面のせん断強度を推定する手順とを、迅速におこなうことができる。したがって、現場において新たなコンクリートを打設する前に、先のコンクリートの打継面が適切に処理されているか否かを判断することができ、打継面の処理が不十分であるときには再処理を行って適切に新旧コンクリートを打ち継ぐことができる。
【0036】
次に、本願発明に係る評価方法の妥当性について行った実験について説明する。
この実験は、先にブロック状にコンクリートを打設し、硬化後このコンクリート片に連続するように新たなコンクリートを打設し、打継面にせん断力を作用させてせん断強度を測定するものである。先に打設したコンクリート片は、打継面の処理の状態を変えて複数を製作し、それぞれについて本願発明の評価方法及び評価装置によって処理状態を評価する。そして、それぞれに新たなコンクリートを連続するように打設し、打継面の処理状態とせん断強度との関係を調査したものである。
【0037】
(1)試験体
試験体は、図4に示すように、厚さ150mm、幅300mm、高さ300mmのコンクリートブロック21を製作し、その両側面に打継ぎ処理を行った後、同寸法の二つのコンクリートブロック22a,22bをそれぞれの側面と連続するように打ち足す。このとき新たに打ち足すコンクリートブロック22a,22bは、高さ方向に50mmずれた位置で連続するように製作する。したがって、先にコンクリートを打設したブロック21と新たにコンクリートを打設した二つのブロック22a,22bとは、幅が300mmで高さ方向に250mmの範囲で接合された状態となる。
【0038】
(2)載荷方法
荷重の載荷は、図4に示すように、新たにコンクリートを打設した二つのブロックを試験台上に載置し、上方に突き出している先にコンクリートを打設したブロック21に鉛直方向の荷重を載荷する。これにより荷重が作用するコンクリートブロック21と両側面に接合された二つのコンクリートブロック22a,22bとの打継面にせん断力が作用する。
【0039】
(3)打継面の処理
打継面の処理は、次の3種類をぞれぞれ異なる試験体に施し、これらによるパワースペクトルの値の総和及びせん断強度の比較を行った。
処理A:コンクリートが硬化した後、チッピングを行うものである。チッピングはコンクリート打設後一日経過時に行った。チッピングにはドリルを用い、コンクリートの打継面に当てて表面付近のセメントペース又はモルタル部分を剥離させる。
処理B:コンクリート打設時に、型枠に遅延剤を塗布しておき、コンクリートの硬化後に洗浄を行うものである。打継面付近のコンクリートの硬化が遅れ、内部のコンクリートが硬化した後に洗浄を行うことによって表面付近のセメントペーストが除去される。したがって、骨材が露出・突出してせん断強度に寄与するものとなる。
処理C:コンクリート打設時に、型枠に遅延シートを貼付しておき、コンクリートの硬化後に洗浄を行うものである。遅延剤を塗布した場合と同様に骨材が露出・突出して凹凸を形成する。
【0040】
(4)載荷実験及び演算処理
載荷実験は、図4に示すように、先に打設したコンクリート片に鉛直方向の荷重を徐々に増加しながら載荷し、先にコンクリートを打設したブロック21と後からコンクリートを打設したブロック22a,22bとの打継面にせん断破壊が生じたときの荷重を測定する。載荷実験は、先に打設したコンクリートの材齢が14日であり、後から打設したコンクリートの材齢が7日のときに行った。このときのコンクリートの強度は、それぞれ40.0N/mm2、39.1N/mm2であった。
打継面の凹凸量を測定し、パワースペクトルを演算した後にこのパワースペクトルの総和を演算する範囲は、波長が0mmから骨材の最大寸法の2倍(40mm)までの範囲としている。
【0041】
(5)結果
図5は上記実験の結果を示すものであり、横軸にパワースペクトルの値の所定範囲における総和を示すものであり、縦軸は打継面のせん断強度である。
この図に示すように、パワースペクトルの値の所定範囲における総和と打継面のせん断強度とはほぼ比例しており、パワースペクトルの値の所定範囲における総和が大きくなるにしたがって打継面のせん断強度も大きくなっている。したがって、パワースペクトルの値の所定範囲における総和と打継面のせん断強度との対応とをあらかじめ実験等によって調査しておくことにより、パワースペクトルの値の総和からせん断強度を推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態である「コンクリート打継面の評価装置」を示す概略構成図である。
【図2】コンクリート打継面の凹凸を示す拡大断面図及びこの打継面について凹凸量を測定して描かれた形状線を示す図である。
【図3】打継面の形状線を波形と考えて演算されたパワースペクトルの一例を示す図である。
【図4】本発明の効果を確認するために行った実験の概要を示す概略斜視図である。
【図5】本発明の効果を確認するために行った実験の結果であって、パワースペクトルの値の総和と打継面のせん断強度との関係を示す図である。
【図6】十点平均粗さH1を説明する概略図である。
【図7】中心線平均粗さH2を説明する概略図である。
【図8】平均深さdを説明する概略図である。
【図9】表面積率Rを説明する概略図である。
【図10】打継面の凹凸と骨材との関係を示す概略断面図である。
【図11】打継面の凹凸と型枠のゆがみとの関係を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1:デジタルカメラ、 2:コンピュータ、 3:入力装置、 4:表示装置、 5:コンクリートの打継面、 10:骨材、 21:試験体の先にコンクリートを打設するブロック、 22:試験体の後からコンクリートを打設するブロック、
101:先に打設したコンクリート、 102:骨材、 103:骨材が突き出した間の凹部、
L:打継面の凹凸を測定する範囲、 a:打継面の凹凸を測定する間隔、 S:打継面の凹凸の基準線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化したコンクリートの表面であって新たに打設するコンクリートと接触する打継面について、所定の方向に所定の間隔で該打継面と直角方向の凹凸量を測定し、
所定の範囲における前記測定値によって描かれる形状線を波形と考えてフーリエ変換を行い、パワースペクトルを演算し、
前記パワースペクトルの周波数領域(波長の逆数)における所定範囲で該パワースペクトルの値の総和を演算し、
前記総和に基づいて、前記打継面における先に打設したコンクリートと後から打設したコンクリートとの間のせん断強度を評価することを特徴とするコンクリート打継面の評価方法。
【請求項2】
前記パワースペクトルの値の総和を演算する所定の範囲は、正弦波の波長の最小値を0mmから前記コンクリートに含まれる粗骨材の最大寸法までの範囲で設定された値とし、正弦波の波長の最大値を粗骨材の最大寸法の2倍から前記打継面の型枠を構成する板材の最小寸法未満の範囲で設定された値としたときの、前記最小値から最大値までの範囲とすることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート打継面の評価方法。
【請求項3】
前記パワースペクトルの値の総和を演算する所定の範囲は、正弦波の波長の最小値を0mmから前記コンクリートに含まれる粗骨材の最大寸法までの範囲で設定された値とし、正弦波の波長の最大値を粗骨材の最大寸法の2倍から5倍までの範囲で設定された値としたときの、前記最小値から最大値までの範囲とすることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート打継面の評価方法。
【請求項4】
硬化したコンクリートの表面であって新たに打設するコンクリートと接触する打継面について、所定の方向に所定の間隔で該打継面と直角方向の凹凸量を測定する凹凸量測定装置と、
所定の範囲における前記測定値によって描かれる形状線を波形と考えてフーリエ変換を行い、パワースペクトルを演算するスペクトル演算部と、
前記パワースペクトルの周波数領域(波長の逆数領域)における所定範囲で、該パワースペクトルの値の総和を演算し、該演算値に基づいて前記打継面における先に打設したコンクリートと後から打設したコンクリートとの間のせん断強度の評価を演算する評価演算部と、
前記評価演算部の演算結果を表示する表示装置とを有することを特徴とするコンクリート打継面の評価装置。
【請求項5】
前記凹凸量測定装置は、前記打継面を基準定規とともに2つの位置から撮影するデジタルカメラと、
前記デジタルカメラで撮影された二つの画像から、前記打継面の複数の位置における座標を演算する座標演算部と、
この座標値から前記打継面上の所定間隔で凹凸量を演算する凹凸量演算部とを有するものであることを特徴とする請求項4に記載のコンクリート打継面の評価装置。
【請求項6】
硬化したコンクリートの表面であって新たに打設するコンクリートと接触する打継面について、凹凸を表す形状線の所定の範囲を波形と考えてフーリエ変換を行い、パワースペクトルを演算する手順と、
前記パワースペクトルの周波数領域(波長の逆数)における所定範囲で該パワースペクトルの値の総和を演算する手順と、
前記総和に基づいて、前記打継面における先に打設したコンクリートと後から打設したコンクリートとの間のせん断強度に対応した評価を演算する手順とを、コンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項7】
前記打継面を基準定規とともに2つの位置から撮影した画像から、前記打継面の複数の位置における凹凸量を演算する手順をコンピュータに実行させる内容を含むことを特徴とする請求項6に記載のプログラム。
【請求項1】
硬化したコンクリートの表面であって新たに打設するコンクリートと接触する打継面について、所定の方向に所定の間隔で該打継面と直角方向の凹凸量を測定し、
所定の範囲における前記測定値によって描かれる形状線を波形と考えてフーリエ変換を行い、パワースペクトルを演算し、
前記パワースペクトルの周波数領域(波長の逆数)における所定範囲で該パワースペクトルの値の総和を演算し、
前記総和に基づいて、前記打継面における先に打設したコンクリートと後から打設したコンクリートとの間のせん断強度を評価することを特徴とするコンクリート打継面の評価方法。
【請求項2】
前記パワースペクトルの値の総和を演算する所定の範囲は、正弦波の波長の最小値を0mmから前記コンクリートに含まれる粗骨材の最大寸法までの範囲で設定された値とし、正弦波の波長の最大値を粗骨材の最大寸法の2倍から前記打継面の型枠を構成する板材の最小寸法未満の範囲で設定された値としたときの、前記最小値から最大値までの範囲とすることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート打継面の評価方法。
【請求項3】
前記パワースペクトルの値の総和を演算する所定の範囲は、正弦波の波長の最小値を0mmから前記コンクリートに含まれる粗骨材の最大寸法までの範囲で設定された値とし、正弦波の波長の最大値を粗骨材の最大寸法の2倍から5倍までの範囲で設定された値としたときの、前記最小値から最大値までの範囲とすることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート打継面の評価方法。
【請求項4】
硬化したコンクリートの表面であって新たに打設するコンクリートと接触する打継面について、所定の方向に所定の間隔で該打継面と直角方向の凹凸量を測定する凹凸量測定装置と、
所定の範囲における前記測定値によって描かれる形状線を波形と考えてフーリエ変換を行い、パワースペクトルを演算するスペクトル演算部と、
前記パワースペクトルの周波数領域(波長の逆数領域)における所定範囲で、該パワースペクトルの値の総和を演算し、該演算値に基づいて前記打継面における先に打設したコンクリートと後から打設したコンクリートとの間のせん断強度の評価を演算する評価演算部と、
前記評価演算部の演算結果を表示する表示装置とを有することを特徴とするコンクリート打継面の評価装置。
【請求項5】
前記凹凸量測定装置は、前記打継面を基準定規とともに2つの位置から撮影するデジタルカメラと、
前記デジタルカメラで撮影された二つの画像から、前記打継面の複数の位置における座標を演算する座標演算部と、
この座標値から前記打継面上の所定間隔で凹凸量を演算する凹凸量演算部とを有するものであることを特徴とする請求項4に記載のコンクリート打継面の評価装置。
【請求項6】
硬化したコンクリートの表面であって新たに打設するコンクリートと接触する打継面について、凹凸を表す形状線の所定の範囲を波形と考えてフーリエ変換を行い、パワースペクトルを演算する手順と、
前記パワースペクトルの周波数領域(波長の逆数)における所定範囲で該パワースペクトルの値の総和を演算する手順と、
前記総和に基づいて、前記打継面における先に打設したコンクリートと後から打設したコンクリートとの間のせん断強度に対応した評価を演算する手順とを、コンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項7】
前記打継面を基準定規とともに2つの位置から撮影した画像から、前記打継面の複数の位置における凹凸量を演算する手順をコンピュータに実行させる内容を含むことを特徴とする請求項6に記載のプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−145174(P2008−145174A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−330618(P2006−330618)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【Fターム(参考)】
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