説明

コンクリート躯体における下地モルタル層又はタイル貼付けモルタル層の剥離・剥落防止法。

【課題】コンクリート躯体1における下地モルタル層2又はタイル貼付けモルタル層12の剥離・剥落の防止を目的としたコンクリート躯体1の下地処理工法には、超高圧水5(100Mpa以上)を用いてコンクリート躯体1に粗面3を形成しコンクリート躯体1表面とモルタル層との圧着力を高める工法や、他の諸工法があるが、いずれの工法も作業工程が複層し、従ってコスト高でもあるので、作業性が改善されかつコストを削減できる工法を提供する。
【解決手段】型枠8にコンクリート凝結遅延剤10を塗布しコンクリートを打設後、型枠8の脱型時に高圧洗浄機9等でコンクリート躯体1表面に粗面3を形成することによって、コンクリート躯体1と下地モルタル層2又はタイル貼付けモルタル層12との圧着力を高めるとともに、作業工程の大幅な縮小とコストの大幅な削減を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、外壁面の下地処理の施工法に係わり、コンクリート躯体表面に粗面を形成させコンクリート躯体と下地モルタル層又はタイル貼付けモルタル層との圧着力を高めることによって、コンクリート躯体における下地モルタル層又はタイル張付けモルタル層の剥離・剥落を防止することを目的とする施工法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート躯体1における下地モルタル層2又はタイル貼付けモルタル層12が剥離・剥落するのは、コンクリート躯体1表面と下地モルタル層2又はタイル貼付けモルタル層12の界面がほとんどである。
そこで、耐震対策等に係わるコンクリート躯体1におけるモルタル層の剥離・剥落の防止策として、コンクリート躯体1と下地モルタル層2又はタイル貼付けモルタル層12との圧着力を高める施工法の提供が要求されるが、現在、様々な工法が提案されている。
例えば、コンクリート打設後のコンクリート躯体1表面に超高圧水5やサンダーを利用して粗面3を形成させ躯体とモルタル層との圧着力を高める工法や、コンクリート打設時や打設直後にピンを打ち込んだり、コンクリート躯体表面とモルタル層間にメッシュシートを挟んだり、または、モルタル層自体にひび割れ防止材を混入させたりすること等によって、コンクリート躯体表面とモルタル層との剥離・剥落の防止を図るなど、様々な工法が提案されている。
図5は、かかる従来工法の一例を説明する図である。
コンクリート躯体1表面に、超高圧水5(100Mpa以上)を噴射し、粗面3を形成している。
これは、コンクリート躯体1に粗面3を形成することにより、コンクリート躯体1とモルタル層との圧着力を高めることを目的としている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在提供されている下地モルタル層2又はタイル貼り付けモルタル層12の剥離・剥落の防止策でコンクリート躯体1表面に粗面3を形成させる工法のうち、超高圧水5(100Mpa以上)を利用する工法では、その問題点の1つに作業員に負荷される苦渋の作業が挙げられる。
超高圧水5(100Mpa以上)を発生させるには大型の装置11が必要で、その設置には大きな制約が伴い、その操作性の困難さは作業員に過度な負担を強い、さらに超高圧水5(100Mpa以上)を使用するため、危険も伴う。
また、今1つの問題点に、コスト高がある。
超高圧水5(100Mpa以上)を発生させる大型の装置11は高額で、そのコスト高は下地モルタル層2又はタイル貼付けモルタル層12の剥離・剥落防止という、耐震対策等の普及を妨げる要因ともなっている。
その他の剥離・剥落の防止策の諸工法には、施工項目の複層化にともなう大幅なコスト高が指摘されている。
そこで本発明は、この作業性の改善およびコストの削減という目的を、同時に解決する工法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
以上の課題を解決するために、請求項1は、コンクリート躯体1表面とモルタル層との圧着力を高める工法として、コンクリート打設時の型枠8に、コンクリート凝結遅延剤10を塗布することをもってコンクリート躯体1表面に粗面3を形成させる工法を提供した。
本発明の工法に係わるコンクリート凝結遅延剤10は、コンクリートの打設面に塗布することをもって、その凝結の遅延効果に応じて仕上げ面を洗い出し、コンクリート仕上げ面を粗面状に仕上げるものであり、本来コンクリートの打継面の処理剤や「洗い出し」の処理剤等の目的で開発されたものである。
本発明は、このコンクリート凝結遅延剤10の効果に着目し、これをコンクリート躯体1表面の粗面形成工法として適用した。
その結果、従来の工法である超高圧水5(100Mpa以上)やサンダーによって形成されるコンクリート躯体1表面の粗面3に相当するものが、コンクリート凝結遅延剤10の適用によっても形成されることが確認された。
また、請求項2の発明は、請求項1の発明によって形成される粗面3の仕上げ工法として、型枠8の脱型後、高圧洗浄機9やジェットタガネ6や超音波式はつり機7等を使用する工法を提供した。
これらの工具を用いることによって、コンクリート躯体1表面における下地モルタル層2又はタイル貼付けモルタル層12の剥離・剥落防止策としての圧着力を高めるための粗面3の形成が適正に行える。
請求項3の発明は、請求項1の発明によって形成される粗面3を、広く使用されている水溶性のコンクリート凝結遅延剤10によるのでなく、コンクリート打設時の遅延剤剥離による粗面不形成を避けるため、難溶性若しくは不溶性のコンクリート凝結遅延剤10を用いる工法を提供した。
この凝結遅延剤を用いることによって、粗面3の形成をより確実にすることができる。
【発明の効果】
【0005】
以上の通り本発明によると、コンクリート躯体1における下地モルタル層2又はタイル貼付けモルタル層12の剥離・剥落防止を目的としたコンクリート凝結遅延剤10を用いたコンクリート躯体1の粗面3形成工法は、従来技術である超高圧水5(100Mpa以上)による工法や、その他の諸工法に比べて、はるかに作業工程は簡略化されるとともに、そのことによるコスト面の大幅な削減は、耐震対策等としてのコンクリート躯体1における下地モルタル層2又はタイル貼付けモルタル層12の剥離・剥落防止策の普及に大いに貢献できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実地の形態について、図面を参照して説明する。
本発明のコンクリート躯体1表面の粗面3形成工法は、型枠8、コンクリート凝結遅延剤10、高圧洗浄機9若しくはジェットタガネ6若しくは超音波式はつり機7等の粗面3形成仕上げ工具、から構成される。
まず、型枠8にコンクリート凝結遅延剤10をローラーで塗布する。
このコンクリート凝結遅延剤10を乾燥させた後(30分位)、コンクリートを打設する。
適切な養生期間をおいた後、型枠8を脱型し、高圧洗浄機9若しくはジェットタガネ6若しくは超音波式はつり機7等粗面形成仕上げ工具によって、粗面3を完成させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実地の形態に係わる、型枠の脱型後のコンクリート躯体1表面に高圧洗浄機9を用いて粗面3を形成している工法を示す図である。
【図2】本発明の実地の形態に係わる、ジェットタガネ6と超音波式はつり機7を示す図である。
【図3】本発明の実地の形態に係わる、コンクリート躯体1と粗面3と下地モルタル層2とタイル貼付けモルタル層12とタイル4の構造を示す斜視図である。
【図4】本発明の実地の形態に係わる、コンクリート凝結遅延剤10を塗布した型枠8と打設したコンクリートの状態を示す断面図(a)と型枠8の脱型後形成した粗面3の状態を示す断面図(b)である。
【図5】従来の、大型の発生装置11より噴出された超高圧水5(100Mpa以上)を用いたコンクリート躯体1表面に対する粗面3の形成工法を示す図である。
【符号の説明】
【0008】
1 コンクリート躯体
2 下地モルタル層
3 粗面
4 タイル
5 超高圧水(100Mpa以上)
6 ジェットタガネ
7 超音波式はつり機
8 型枠
9 高圧洗浄機
10 コンクリート凝結遅延剤
11 超高圧水(100Mpa以上)発生装置
12 タイル貼付けモルタル層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート凝結遅延剤を塗布した型枠を用いて成型したコンクリート躯体表面に粗面を形成することによってコンクリート躯体と下地モルタル層又はタイル貼付けモルタル層との圧着力を高めることを特徴とした、コンクリート躯体における下地モルタル層またはタイル貼付けモルタル層等の剥離・剥落防止工法。
【請求項2】
前記粗面は、該型枠にコンクリートを打設し、その脱型後、高圧水やジェットタガネや超音波式はつり機等を用いて形成し、該粗面によってコンクリート躯体と下地モルタル層又はタイル貼付けモルタル層との圧着力を高めることを特徴とした、請求項1記載にあるようなコンクリート躯体における下地モルタル層又はタイル貼付けモルタル層の剥離・剥落防止工法。
【請求項3】
前記コンクリート凝結遅延剤は、水に対して難溶性若しくは不溶性であるものを用いることによってコンクリート躯体に粗面を確実に形成させ、該粗面によってコンクリート躯体と下地モルタル層又はタイル貼付けモルタル層との圧着力を高めることを特徴とした、請求項1にあるようなコンクリート躯体における下地モルタル層又はタイル貼付けモルタル層の剥離・剥落防止工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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