説明

コンディショニングタイツ

【課題】着用者の疲労軽減等のコンディショニングに優れた新規なコンディショニングタイツを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、少なくとも着用者の腰部から足首までを覆うタイツにおいて、タイツ全体として伸縮性を有する素材によって成形され、少なくとも膝下部から足首まで段階的に着圧が変化する着圧調整領域を形成する。また、前記着圧調整領域は、それ以外の領域よりも着圧が高く、着用者の足首から膝下部まで徐々に着圧が低くなるようにする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも着用者の腰部から足首までを覆うコンディショニングタイツに関する。特に、疲労軽減等に効果を有する新規なコンディショニングタイツに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な衣料用のタイツは、下半身の保温を目的とする。他方、最近では、激しい運動をするスポーツ選手に適したスポーツウエアとしてのスパッツ(タイツ)が提案、普及している。この種のスパッツは、テーピング機能やサポーター機能を有するものであり、特定の部位を強力にサポートしたり、制動したりする構造であり、例えば、下記の特許文献1に示されている。
【特許文献1】特開2001−214303
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、テーピング機能やサポーター機能を有するスパッツとは異なり、着用者の疲労軽減等のコンディショニング効果に優れた新規なコンディショニングタイツを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記のような目的を達成するために、本発明は、少なくとも着用者の腰部から足首までを覆うタイツにおいて、タイツ全体として伸縮性を有する素材によって成形され、少なくとも膝下部から足首まで段階的に着圧が変化する着圧調整領域を形成する。また、前記着圧調整領域は、それ以外の領域よりも着圧が高く、着用者の足首から膝下部まで徐々に着圧が低くなるようにする。
【0005】
本発明においては、タイツ全体として伸縮性を有すること;腰部から足首までを覆うこと;下腿部の着圧が他の部分より高いこと;足首から膝下部まで徐々に着圧が低くなっていることが重要である。更に、伸縮性繊維の密度を調整することによって、足首から膝下部までの着圧を調整することが好ましい。ここで、着圧を段階的に変化させるのは、足首から膝下までとするのは、乳酸が下腿に多く溜まる傾向があるためである。
【0006】
本発明に係るタイツは、例えば、スポーツを行う際の運動効率向上のため;長時間の立ち仕事を行う看護婦等の下半身の疲労軽減等のために使用可能である。特に、下腿(膝下)の筋肉を多く使うスポーツ、例えば、ジャンプする頻度の高いバレーボールやバスケットボール、あるいは登山、長距離走(ジョギング、ウォーキング)等に適している。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るタイツの着用により、疲労を緩和させる効果が期待できる。すなわち、下腿部における段階的な着圧により、血液及びリンパの流れがスムーズになり、血中乳酸を心臓に向けて速やかに戻すことができる。更に、全体として伸縮性を有する素材を採用することにより、余分な筋振動を抑制し、運動性能が向上する。
【0008】
スポーツ時における、疲労の尺度の1つである血中乳酸は、下腿の血中に多く溜まってゆく性質がある。それを早く解消し、疲労軽減するためには、血中に溜まった乳酸を下腿よりいち早く、心臓に向けて戻す必要がある。本発明によれば、着圧段階領域により下腿に溜まった乳酸を速やかに大腿へ送り込むと共に、タイツ全体の伸縮性により、乳酸を大腿から腹部へとリレーする。これにより、下半身の疲れを効果的に解消可能となる。
【0009】
なお、大腿まで連続的に段階着圧をすることも可能であるが、段階的な着圧調整は下腿部分のみでも充分な効果がある。逆に、膝よりも上(大腿)まで連続的に着圧を変化させた場合、大腿部は脂肪が多いため、血液の流れを調整するには大きな締め付けが必要となり、上述した本発明の効果が得られないだけでなく、装着感を悪化させる等の問題が発生する。

【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の実施例に係るタイツ及びシャツを着用した様子を着用者の前方から見た斜視図である。
【図2】図2は、本発明の実施例に係るタイツ及びシャツを着用した様子を着用者の左斜め後方から見た斜視図である。
【図3】図3は、本発明の実施例に係るタイツを着用した様子を着用者の左斜め後方から見た斜視図である。
【図4】図4は、実施例に係るタイツの着圧分布を示す説明図である。
【図5】図5は、実施例に係るタイツの効果を確認するテストの結果を示す表である。
【図6】図6は、実施例に係るタイツの効果を確認するテストの結果を示す表である。
【図7】図7は、実施例に係るタイツの効果を確認するテストの結果を示す表である。
【図8】図8は、実施例に係るタイツの効果を確認するテストの結果を示す表である。
【図9】図9は、実施例に係るタイツの効果を確認するテストの結果を示す表である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1及び図2は、本発明の実施例に係るタイツ200及びシャツ100を着用した様子を着用者の前方及び左斜め後方から見た様子を示す斜視図である。また、図3は、本発明の実施例に係るタイツ200を着用した様子を着用者の左斜め後方から見た様子を示す斜視図である。
【0012】
本実施例に係るタイツ200は、少なくとも着用者の腰部から足首までを覆うタイツに適用される。タイツ200は、タイツ全体として伸縮性を有する素材によって成形され、膝下部から足首まで段階的に着圧が変化する着圧調整領域202を形成する。また、着圧調整領域202は、それ以外の領域(以下、「本体領域」と言う。)204よりも着圧が高く、着用者の足首から膝下部まで徐々に着圧が低くなるようにする。
【0013】
本発明においては、タイツ全体として伸縮性を有すること;腰部から足首までを覆うこと;下腿部(202)の着圧が他の部分(204)より高いこと;足首から膝下部まで徐々に着圧が低くなっていることが重要である。更に、伸縮性繊維の密度を調整することによって、足首から膝下部まで(202)の着圧を調整することが特徴の1つである。
【0014】
本体領域204の素材としては、例えば、ポリエステル85%、ポリウレタン15%の伸縮性に優れた素材を使用する。例えば、複数の弾性糸を束ねた構造とし、当該弾性糸の束ねる数・間隔によって締め付け力を調整する。着圧調整領域202は、40デニールのポリエステル糸と、40デニールのポリウレタン糸を使用した編み込みで成形する。そして、ポリウレタン糸の本数と分布によって着圧を調整する。
【0015】
シャツ100についても、タイツ200と同様に本体領域104と着圧調整領域102とから構成されている。なお、素材や着圧の調整方法についても、タイツ200と同様にすることができる。
【0016】
着圧調整領域202の着圧を、例えば、三段階(上部、中間部、下部)に変化させる場合、着圧の最も強い下部はポリウレタン糸を全て2重にして使用し、着圧が最も弱い上部はポリウレタン糸を全て1本で使用する。具体的な着圧は、以下に示す通りとすることが出来る。なお、着圧の測定は、衣服圧測定器(AMI3037-10(株式会社エイエムアイ・テクノ)、エアパックセンサー20mmΦ)を用いて行った。
足首(下部):33.1hPa(29〜34)
脹ら脛(中間部):29.9hPa(28〜29)
膝下部(上部):20.8hPa(20〜21)
【0017】
実験の結果、下部:中間部:上部の着圧の比率を、上記のように約11:10:7とした場合に良好な結果が得られた。
【0018】
図4は、実施例に係るタイツの着圧分布を示す説明図である。図4の場合、着圧調整領域202の着圧を5段階に変化させており、ポリウレタン糸の本数及び分布を図のように設定する。ここで、ポリウレタン糸本数の横の並びは、パワーの強度を意味するものであり、相対的な数字である。また、吋間の数字(6,11)は、針の間隔を意味する。
【0019】
図5〜図9は、実施例に係るタイツ200の効果を確認するテストの結果を示す表であり、タイツ200を着用した場合と未着用の場合とに分けて示す。各図は、利き足が右の20歳代男性の被験者1〜5のデータである。テストでは、血中乳酸値、下腿部の周径(太さ)の測定を、安静時と運動後に分けて示す。ここで、「運動後」とは、バイクトレーニングを60分した直後の状態を言う。また、1回目と2回目のインターバルは180分とした。また、「利き足」は、ボールを蹴るときに、蹴りやすいほうの足としている。
【0020】
血中乳酸値は、安静時と運動後において血液採取によって測定した。
下腿周径は、下腿の以下の箇所について安静時と運動後に測定した。
(1)脹ら脛:脹ら脛(ふくらはぎ)の最も太い部分の径
(2)0cm:膝蓋骨の中心部
(3)5cm:膝蓋骨上部から5cm上の部分
(4)大腿長1/2:膝関節と股関節の中心部
心拍数は、60分間のエアロバイク連続運動の開始時から5分間隔で測定した。
【0021】
上記のような実験の結果を以下に示す。
本発明のタイツ(200)を着用した場合、以下に示すように、血中乳酸値の上昇において明らかな有意性が確認された。
血中乳酸値の平均上昇値 着用時:0.16
非着用時:0.6
運動後の血中乳酸値 着用時:1.9
非着用時:2.1
また、5名の被験者のうち3名については、タイツ未着用の場合に比べてタイツ着用の場合に血中乳酸値の上昇率が低い又は低下した。
【0022】
本発明のタイツ(200)を着用した場合、以下に示すように、運動の前後における下腿周径(筋肉の腫れ)において、本発明に係るタイツの着用によって明らかな有意性が確認された。特に、利き足である右足でその効果が顕著であった。
右足下腿周径増加値 着用時:−0.4
非着用時:+0.1
左足下腿周径増加値 着用時:−0.1
非着用時: 0.0
【0023】
本発明のタイツ(200)を着用した場合、心拍数の上昇において、明らかな有意性が確認された。特は、運動の安定期において効果が顕著であった。運動開始10分から終了10分前の40分間における心拍数の上昇率の被験者5人の平均値を以下に示す。
着用時: 8.0
非着用時:12.2
【0024】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲に示された技術的思想の範疇において変更可能なものである。

【符号の説明】
【0025】
200 タイツ
202 着圧調整領域
204 本体領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも着用者の腰部から足首までを覆うタイツにおいて、
全体として伸縮性を有する素材によって成形され、少なくとも膝下部から足首まで段階的に着圧が変化する着圧調整領域を形成し、
前記着圧調整領域は、それ以外の領域よりも着圧が高く、着用者の足首から膝下部まで徐々に着圧が低くなるように成形されていることを特徴とするタイツ。
【請求項2】
前記着圧調整領域は、伸縮性繊維の密度を調整することによって着圧調整されていることを特徴とする請求項1に記載のタイツ。
【請求項3】
前記伸縮性繊維は、ポリウレタン繊維であることを特徴とする請求項2に記載のタイツ。
【請求項4】
前記着圧調整領域は、足首周辺の下部領域と、膝下部周辺の上部領域と、前記下部及び上部領域の間の中間領域とを含み、
前記下部領域:中間領域:上部領域の着圧の比率が、約11:10:7であることを特徴とする請求項1,2又は3に記載のタイツ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−38218(P2011−38218A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187901(P2009−187901)
【出願日】平成21年8月14日(2009.8.14)
【出願人】(594056100)フットマーク株式会社 (8)
【出願人】(303011275)株式会社ジャパーナ (43)
【Fターム(参考)】