説明

コンデンサ放電式内燃機関用点火装置

【課題】機関の高速回転領域での点火性能を犠牲にすることなく、放電用サイリスタの誤動作を防止して、信頼性を向上させたコンデンサ放電式内燃機関用点火装置を提供する。
【解決手段】点火用コンデンサを充電する電源部としてDC−DCコンバータを用いる。マイクロプロセッサにより演算した点火位置を検出した時に点火位置信号Vipを発生させる。点火位置信号が発生したときに放電用サイリスタをオン状態にして点火動作を行わせる。点火位置信号Vipが発生するタイミングtiよりも設定された先行時間Tpだけ進んだタイミングで昇圧動作停止指令信号Vaを発生させ、点火位置信号Vipが消滅するタイミングで昇圧動作停止指令信号Vaを消滅させる。昇圧動作停止指令信号Vaが発生している間DC−DCコンバータの昇圧動作を停止させることにより、点火用コンデンサに充電電流Ivcが流れている状態で点火位置信号Vipが発生することがないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ放電式の内燃機関用点火装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンデンサ放電式の内燃機関用点火装置は、点火コイルと、該点火コイルの一次側に設けられた点火用コンデンサと、点火信号が与えられたときにターンオンして点火用コンデンサを点火コイルの一次コイルを通して放電させる放電用サイリスタとを備えた点火回路と、点火用コンデンサを充電する充電用電源部と、内燃機関の点火位置(点火動作が行われるクランク角位置)で点火信号を発生する点火制御部とにより構成される。
【0003】
この種の点火装置においては、点火制御部が点火信号を発生したときに放電用サイリスタがターンオンして点火用コンデンサの電荷を点火コイルの一次コイルを通して放電させ、点火コイルの一次コイルに高い電圧を誘起させる。この電圧は点火コイルの一次、二次間の昇圧比により昇圧されるため、点火コイルの二次コイルに点火用の高電圧が誘起する。この高電圧は機関の気筒に取りつけられた点火プラグに印加されるため、該点火プラグで火花放電が生じて、機関が点火される。点火用コンデンサの静電容量をC、点火動作が行われる際の点火用コンデンサの充電電圧(点火用コンデンサの両端の電圧)をVcとすると、点火エネルギPは、P=C×Vc/2で与えられる。従って、所定の点火性能を得るためには、点火動作を行う前に、点火用コンデンサの充電電圧Vcが所定のレベルに達するまで、点火用コンデンサを充電しておくことが必要である。
【0004】
点火用コンデンサを充電する充電用電源部としては、内燃機関に取り付けられた磁石発電機内に設けられたエキサイタコイルとその交流出力を整流する整流器とからなるものと、バッテリの出力電圧(通常は12[V])をチョッパ回路を用いた昇圧回路により昇圧するDC−DCコンバータからなるものとが用いられている。
【0005】
エキサイタコイルは、その巻数を非常に多くする必要があるため、磁石発電機内にエキサイタコイルを設けると、機関に取り付ける磁石発電機が大形化するのを避けられない。これに対し、DC−DCコンバータからなる充電用電源部を採用すると、磁石発電機内に巻数が多いエキサイタコイルを設ける必要がないため、磁石発電機の小形化を図ることができる。
【0006】
DC−DCコンバータからなる充電用電源部を用いたコンデンサ放電式内燃機関用点火装置としては、例えば特許文献1に示されたものがある。特許文献1に示された点火装置で用いられている充電用電源部は、バッテリの出力電圧が一次コイルに印加される昇圧トランスと、駆動信号が与えられている間導通してバッテリから昇圧トランスに一次電流を流すチョッパ用スイッチ回路とを備えた昇圧回路と、昇圧トランスの二次電流が所定のしきい値未満であることが検出されたときにチョッパ用スイッチ回路を導通させて昇圧トランスに一次電流を流し、昇圧トランスの一次電流が設定値に達したことが検出されたときにチョッパ用スイッチ回路を遮断状態にして該昇圧トランスの二次コイルに電圧を誘起させるように昇圧トランスの一次電流及び二次電流に応じてチョッパ用スイッチ回路を制御するチョッパ用スイッチ制御回路とを備えたDC−DCコンバータからなっている。
【0007】
特許文献1に示された点火装置では、DC−DCコンバータが、昇圧動作を断続的に繰り返し、各昇圧動作が行われる毎に該コンバータから出力される電圧により、点火用コンデンサが段階的に充電されていく。従って、図4(D)に示すように、点火用コンデンサに充電電流Ivcが断続的に流れ、同図(C)に示すように、点火用コンデンサの充電電圧(点火用コンデンサの両端の電圧)Vcが段階的に上昇していく。特許文献1に示された点火装置では、点火用コンデンサの充電開始時に行われるDC−DCコンバータの初回の昇圧動作で最も長い時間T1の間点火用コンデンサに充電電流Ivcが流れ、その後点火用コンデンサの充電が進むにつれて、各昇圧動作が行われた際に充電電流Ivcが流れる時間が短くなっていく。
【0008】
特許文献1に示された点火装置においては、点火用コンデンサを所定の充電電圧まで充電するため、点火用コンデンサの充電電圧を検出する電圧検出回路と、この電圧検出回路により検出された点火用コンデンサの充電電圧が設定レベルVcm以上になったときにDC−DCコンバータの昇圧動作を停止させ、点火用コンデンサの充電電圧が設定レベル未満になったときにDC−DCコンバータの昇圧動作を再開させるように充電用コンデンサの充電電圧に応じてDC−DCコンバータの昇圧動作を制御する昇圧動作制御回路とを設けている。
【0009】
特許文献1に示された点火装置では、点火用コンデンサに対して並列に抵抗分圧器からなる電圧検出回路が接続されていて、この電圧検出回路により点火用コンデンサの放電回路が構成されるため、点火用コンデンサは、その充電電圧Vcが設定レベルVcmに達するまで充電された後、僅かずつではあるが放電し、この放電により点火用コンデンサの充電電圧が設定レベル未満になるとDC−DCコンバータの昇圧動作が再開される。そのため、点火用コンデンサは図4(C)及び(D)に示すように充放電を繰り返しながら、その充電電圧Vcが設定レベルVcm付近に保たれる。
【0010】
この種の点火装置では、点火信号に応答して放電用サイリスタがターンオンしたときに、DC−DCコンバータから放電用サイリスタに電流が流れ込むと、放電用サイリスタをターンオフすることができなくなる。そのため、特許文献1に示された点火装置では、放電用サイリスタのターンオフを確実に行わせるために、点火信号Viが発生したときに設定時間Taの間、昇圧動作停止指令信号Va(図4B)を発生する昇圧動作停止指令信号発生手段と、昇圧動作停止指令信号Vaが発生している間チョッパ用スイッチをオフ状態に保つことによりDC−DCコンバータの昇圧動作を停止させる昇圧動作停止回路とを設けて、点火信号が発生したときに、設定時間Taの間(昇圧動作停止指令信号が発生している間)DC−DCコンバータの昇圧動作を停止させるようにしている。上記昇圧動作停止指令信号の信号幅(設定時間)Taは、満充電状態の点火用コンデンサの電荷を完全に放電させるのに要する時間よりも僅かに長い時間(例えば10μsec)に設定されている。
【0011】
点火信号Viが発生する直前に点火用コンデンサの再充電が行われることがない状態では、上記のように昇圧動作停止指令信号を発生させて、点火信号が発生してから点火用コンデンサの電荷の放電が完了するまでの間DC−DCコンバータの昇圧動作を停止させるようにしておくと、点火用コンデンサの放電が完了した時点で放電用サイリスタを確実にターンオフさせることができるため、その後遅滞なく点火用コンデンサの充電を開始させて、点火動作を支障なく行わせることができる。
【0012】
しかしながら、以下に示すように、たまたま点火信号Viが発生する直前(昇圧動作停止指令信号が発生する直前)に点火用コンデンサの再充電が行われた場合には、放電用サイリスタのターンオフに失敗して、点火動作が停止し、機関がストールするおそれがある。
【0013】
即ち、図4に示ししたように、点火タイミングtiで点火信号Viが発生する直前(昇圧動作停止指令信号が発生する直前)に点火用コンデンサの再充電が行われ、DC−DCコンバータから点火用コンデンサに再充電電流Ivcが流れている間に点火信号Viが発生する状態が生じると、放電用サイリスタがターンオンしたときに、それまで点火用コンデンサに流れていた再充電電流が放電用サイリスタに流れ込むため、図4(E)に示すように、放電用サイリスタに長い時間の間アノード電流Isiが流れる。点火信号Viが消滅すると、昇圧動作停止指令信号Vaが消滅するため、DC−DCコンバータは昇圧動作を開始する。このときサイリスタには未だ電流Isiが流れていて、サイリスタはオン状態にあるため、DC−DCコンバータからサイリスタに電流が流れ込み、サイリスタはターンオフすることができなくなる。DC−DCコンバータは断続的に昇圧動作を行うが、昇圧動作を休止する期間は極めて短いため、DC−DCコンバータが昇圧動作を休止している間に放電用サイリスタをターンオフさせることはできない。このような状態が生じると、点火用コンデンサの充電は行われなくなるため、点火動作が行われなくなり、機関はストールしてしまう。
【0014】
上記の問題を解決するためには、点火信号Viが発生する直前に行われた昇圧動作によりDC−DCコンバータの昇圧トランスの二次コイルに蓄積されたエネルギが放電用サイリスタを通して完全に放出されて、放電用サイリスタを流れるアノード電流が保持電流未満になるまでの間、昇圧動作停止指令信号Vaを発生させ続けるようにすればよい。
【特許文献1】特開平9−209893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記のように、特許文献1に示されたコンデンサ放電式内燃機関用点火装置において、点火信号Viが発生する直前に点火用コンデンサの再充電が行われた場合でも、放電用サイリスタのターンオフを確実に行わせるためには、放電用サイリスタを通して流れる電流Isiがサイリスタの保持電流未満に減衰するまで、昇圧動作停止指令信号Vaを発生させ続けるようにする必要がある。
【0016】
しかしながら、昇圧動作停止指令信号の信号幅をこのように長く設定した場合には、点火用コンデンサの充電の開始が遅れるため、内燃機関の1燃焼サイクルが行われる時間が短くなる機関の高速回転時に点火用コンデンサの充電を十分に行うことができなくなり、高速回転時の点火性能が低下するという問題が生じる。
【0017】
本発明の目的は、チョッパ用スイッチにより昇圧トランスの一次電流を断続させて昇圧動作を行うDC−DCコンバータを点火用コンデンサ充電用の電源部として用いるコンデンサ放電式内燃機関用点火装置において、機関の高速回転時の点火性能を犠牲にすることなく、放電用サイリスタがターンオフに失敗するおそれをなくして、信頼性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、バッテリの出力電圧を昇圧するDC−DCコンバータと、点火コイルと、点火コイルの一次側に設けられてDC−DCコンバータが断続的に出力する電圧により段階的に充電される点火用コンデンサと、内燃機関の点火位置で点火信号を発生する点火制御部と、点火信号が発生したときにターンオンして点火用コンデンサに蓄積された電荷を点火コイルの一次コイルを通して放電させる放電用サイリスタと、点火用コンデンサに対して並列に接続された抵抗分圧回路からなる電圧検出回路と、電圧検出回路により検出された点火用コンデンサの充電電圧が設定レベル以上になったときにDC−DCコンバータの昇圧動作を停止させ、点火用コンデンサの充電電圧が設定レベル未満になったときにDC−DCコンバータの昇圧動作を再開させるように充電用コンデンサの充電電圧に応じてDC−DCコンバータの昇圧動作を制御する昇圧動作制御回路と、点火信号に応答してターンオンした放電用サイリスタをターンオフさせる時間を確保するために設定時間の間昇圧動作停止指令信号を発生する昇圧動作停止指令信号発生手段と、昇圧動作停止指令信号が発生している間DC−DCコンバータの昇圧動作を停止させる昇圧動作停止回路とを備えたコンデンサ放電式内燃機関用点火装置を対象とする。
【0019】
本発明が対象とするコンデンサ放電式内燃機関用点火装置においては、上記DC−DCコンバータとして、バッテリの出力電圧が一次コイルに印加される昇圧トランスと、駆動信号が与えられている間導通してバッテリから昇圧トランスに一次電流を流すチョッパ用スイッチ回路とを備えた昇圧回路と、昇圧トランスの二次電流が所定のしきい値未満であることが検出されたときにチョッパ用スイッチ回路を導通させて昇圧トランスに一次電流を流し、昇圧トランスの一次電流が設定値に達したことが検出されたときにチョッパ用スイッチ回路を遮断状態にして該昇圧トランスの二次コイルに電圧を誘起させるように昇圧トランスの一次電流及び二次電流に応じてチョッパ用スイッチ回路を制御するチョッパ用スイッチ制御回路とを備えたものを用いる。
【0020】
本発明においては、上記昇圧動作停止指令信号発生手段を、点火信号が発生するタイミングよりも設定された先行時間だけ前のタイミングで昇圧動作停止指令信号を発生させ、放電用サイリスタを通して行われる点火用コンデンサの放電が完了するタイミングの直後のタイミングで昇圧動作停止指令信号を消滅させるように構成する。
【0021】
上記先行時間は、点火用コンデンサの両端の電圧が設定レベル未満になったときに昇圧動作を再開したDC−DCコンバータから点火用コンデンサに充電電流が流れる時間に、設定された余裕時間を加えた時間に等しく設定するのが好ましい。
【0022】
上記のように、点火信号が発生するタイミングよりも設定された先行時間だけ前のタイミングで昇圧動作停止指令信号を発生させるようにすると、機関の低速回転時にDC−DCコンバータから点火用コンデンサに再充電電流が流れている状態で放電用サイリスタに点火信号が与えられるのを防ぐことができるため、点火信号に応答して放電用サイリスタがターンオンしたときにDC−DCコンバータから放電用サイリスタに電流が流れるのを防ぐことができる。そのため、点火用コンデンサの放電が完了するタイミングの直後に昇圧動作停止指令信号を消滅させても、放電用サイリスタのターンオフを確実に行わせることができる。
【0023】
上記のように、点火信号が発生するタイミングよりも設定された先行時間だけ前のタイミングで昇圧動作停止指令信号を発生させるようにすると、DC−DCコンバータから点火用コンデンサに再充電電流が流れている間に点火信号が発生する状態が生じることがないようにして、点火信号に応答して放電用サイリスタがターンオンした際に、DC−DCコンバータ側から放電用サイリスタに電流が流れ込むのを防ぐことができるため、点火用コンデンサの放電が完了した後(点火動作が行われた後)昇圧動作停止指令信号を速やかに消滅させても、機関の低速回転時に放電用サイリスタがターンオフできない事態が生じることがない。そのため、点火動作が行われた後、遅滞なく点火用コンデンサの充電を開始させて、機関の高速回転時に点火用コンデンサを充電する時間が不足するのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明によれば、点火信号が発生するタイミングよりも設定された先行時間だけ前のタイミングで昇圧動作停止指令信号を発生させることにより、DC−DCコンバータから点火用コンデンサに再充電電流が流れている間に放電用サイリスタに点火信号が与えられる状態が生じることがないようにしたので、点火信号に応答して放電用サイリスタがターンオンしたときにDC−DCコンバータ側から放電用サイリスタに電流が流れて放電用サイリスタがターンオフできなくなる事態が生じるのを防ぐことができ、点火用コンデンサの放電が完了するタイミングの直後に昇圧動作停止指令信号を消滅させても、放電用サイリスタのターンオフを確実に行わせることができる。従って、点火用コンデンサの充電を開始するタイミングを遅らせることなく、サイリスタのターンオフを確実に行わせることができ、機関の高速回転時の点火性能を犠牲にすることなく、点火装置の動作の信頼性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下図面を参照して本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態の構成を示した回路図で、本実施形態に係わる点火装置のハードウェアの構成は、特許文献1に示された点火装置のそれと同様である。図1において1は点火回路、2は充電用電源部、3はマイクロプロセッサを備えた点火制御部、4は電圧検出回路、5は昇圧動作制御回路、6は昇圧動作停止回路、7は定電圧電源回路である。以下各部の構成につき説明する。
【0026】
点火回路1は、一次コイルL1及び二次コイルL2を有する点火コイルIGと、点火コイルの一次側に設けられた点火用コンデンサCi と、点火信号Vi が与えられた時に導通して点火用コンデンサCi の電荷を点火コイルの一次コイルL1を通して放電させる放電用サイリスタSi と、機関の気筒に取り付けられて点火コイルの二次コイルL2に接続された点火プラグPとを備えた周知のコンデンサ放電式の回路である。
【0027】
コンデンサ放電式点火回路の具体的な構成には種々の変形があるが、図示の回路の構成を更に詳細に説明すると、この例では、点火コイルIGの一次コイルL1 の一端が接地され、該一次コイルの他端に点火用コンデンサCi の一端が接続されている。コンデンサCi の他端と接地間にカソードを接地側に向けてサイリスタSi が接続され、サイリスタSi のゲートカソード間に抵抗Ri が接続されている。点火コイルIGの一次コイルL1 の両端には、カソードを接地側に向けたダイオードDi が接続されている。点火コイルIGの二次コイルL2 の一端は一次コイルL1 の他端に共通接続され、二次コイルL2 の他端は機関の気筒に取り付けられた点火プラグPの非接地側端子に接続されている。
【0028】
充電用電源部2は、負極が接地されたバッテリ2Aと、このバッテリの電圧を昇圧するDC−DCコンバータとからなっている。DC−DCコンバータは、昇圧トランス2B及びチョッパ用スイッチ回路2Cからなる昇圧回路2Dと、チョッパ用スイッチ制御回路2Jとを備えている。
【0029】
チョッパ用スイッチ制御回路2Jは、チョッパ駆動指令信号発生回路2Eと、微分制御スイッチ回路2Fと、微分回路2Gと、駆動信号供給回路2Hと、遮断指令信号発生回路2Kと、スイッチ遮断制御回路2Lとにより構成されている。
【0030】
この例では、バッテリ2Aの両端の電圧(通常は12[V])が電源スイッチSWを通して定電圧電源回路7に入力され、該定電圧電源回路7から得られるほぼ一定の直流電圧Vccが各部の電源端子に印加される。図示してないが、バッテリ2Aは内燃機関に取り付けられた磁石発電機内に設けられた充電用コイルの出力により所定の充電回路を通して充電される。
【0031】
昇圧トランス2Bは、フェライトコアに一次コイルW1 及び二次コイルW2 を巻装したもので、その一次コイルW1 の一端はバッテリ2Aの正極端子に接続されている。一次コイルW1 の他端にはFET(電界効果トランジスタ)F1 のドレインが接続され、FET F1 のソースは一次電流検出用抵抗R20を通して接地されている。Df はFETのドレインソース間に存在する寄生ダイオードである。
【0032】
FET F1 のゲートには抵抗R1 の一端が接続され、該抵抗の他端はNPNトランジスタTR1 のエミッタとPNPトランジスタTR2 のエミッタとの共通接続点に接続されている。トランジスタTR1 のコレクタは電源スイッチSWを通してバッテリ2Aの正極端子に接続され、トランジスタTR2 のコレクタは接地されている。トランジスタTR1 及びTR2 のベースは共通に接続され、両トランジスタのベースの共通接続点とトランジスタTR1 のコレクタとの間に抵抗R2 が接続されている。
【0033】
この例では、トランジスタTR1 及びTR2 と抵抗R1 及びR2 とによりFET F1 を駆動する駆動回路が構成され、該駆動回路とFET F1 とによりチョッパ用スイッチ回路2Cが構成されている。このチョッパ用スイッチ回路2Cにおいては、トランジスタTR1 及びTR2 のベースの共通接続点が駆動信号の入力端子となっていて、該入力端子に正極性の(接地に対して正電位に立ち上がる)駆動信号Vd が与えられたときにトランジスタTR2 が遮断状態になり、トランジスタTR1 が導通状態になる。トランジスタTR1が導通状態になると、バッテリ2A側からスイッチSWとトランジスタTR1 のコレクタエミッタ間と抵抗R1 とを通してFET F1 に駆動信号Vg が与えられる。FET F1 は駆動信号Vgが与えられている間(駆動信号Vd が発生している間)導通して昇圧トランス2Bに一次電流を流す。
【0034】
昇圧トランス2Bの二次コイルW2 の一端はダイオードD1 を通して点火用コンデンサCi とサイリスタSi のアノードとの接続点に接続されている。昇圧トランスの二次コイルW2 の他端側にはアノードが接地された充電電流検出用ダイオードD2 が設けられている。ダイオードD2 は昇圧トランスの二次コイルW2 に直列に接続され、ダイオードD2 のカソードに、エミッタが接地された駆動指令信号発生用トランジスタTR3 のベースが接続されている。トランジスタTR3 のコレクタと定電圧電源回路7の出力端子との間、及びトランジスタTR3 のベースと定電圧電源回路7の出力端子との間にそれぞれ抵抗R3 及びR4 が接続され、トランジスタTR3 のベース接地間に抵抗R5 が接続されている。この例では、ダイオードD2 と、トランジスタTR3 と、抵抗R3 〜R5 とにより、チョッパ駆動指令信号発生回路2Eが構成されている。
【0035】
トランジスタTR3 のコレクタには微分制御用トランジスタTR4 のベースが接続され、トランジスタTR4 のベースエミッタ間に抵抗R6 が接続されている。この例では、トランジスタTR4 と抵抗R6 とにより微分制御用スイッチ回路2Fが構成されている。
【0036】
微分制御用トランジスタTR4 のコレクタは、微分コンデンサC1 の一端に接続され、該コンデンサC1 の他端は、エミッタが接地された微分パルス発生用トランジスタTR5 のベースに抵抗R7bを通して接続されている。トランジスタTR5 のベースエミッタ間にはアノードを接地側に向けたダイオードD3 と抵抗R15とが並列に接続され、微分コンデンサC1 の一端と電源回路7の出力端子との間に抵抗R7aが接続されている。この例では、微分コンデンサC1 と、微分パルス発生用トランジスタTR5 と、ダイオードD3 と、抵抗R7a〜R7b及びR15とにより、微分回路2Gが構成されている。
【0037】
駆動信号供給回路2Hは、エミッタが接地されたNPNトランジスタTR6 と、トランジスタTR6 のベースと電源回路7の出力端子との間に接続された抵抗R8 と、トランジスタTR6 のベースエミッタ間に接続された抵抗R9 とからなっており、トランジスタTR6 のベース及びエミッタにそれぞれトランジスタTR5 のコレクタ及びエミッタが接続されている。トランジスタTR6 のコレクタは、チョッパ用スイッチ回路2Cの駆動信号入力端子(トランジスタTR1 及びTR2 のベース)に接続されている。
【0038】
この例では、微分制御用スイッチ回路2Fと、微分回路2Gとにより、チョッパ駆動指令信号が発生したときにトリガされて所定の時間幅のパルスを駆動パルスVd ´として発生する駆動パルス発生回路が構成されている。駆動信号供給回路2Hは、この駆動パルスVd ´の極性を反転させて、駆動信号Vd としてチョッパ用スイッチ回路2Cの駆動信号入力端子に与える。
【0039】
一次電流検出用抵抗R20の両端の電圧V20は抵抗R21を通して比較回路CP1の反転入力端子に入力されている。比較回路CP1 の非反転入力端子には、定電圧電源回路7の出力電圧Vccを抵抗R22及びR23の直列回路からなる分圧回路により分圧して得た基準電圧Vr1が入力されている。比較回路CP1 の出力端子はカソードが接地されたプログラマブルユニジャンクショントランジスタ(PUT)Pu1のゲートに接続され、該PUTのアノードは微分コンデンサC1 と抵抗R7bとの接続点に接続されている。PUT Pu1のアノードゲート間には抵抗R24が接続されている。
【0040】
この例では、一次電流検出用抵抗R20と、抵抗R21〜R23と、比較回路CP1とにより、昇圧トランス2Bの一次電流を検出して該一次電流が設定値に達したことが検出されたときに遮断指令信号Voff を発生する遮断指令信号発生回路2Kが構成されている。またPUT Pu1と抵抗R24とにより、遮断指令信号Voff が発生したときにチョッパ用スイッチ回路に駆動信号Vd が与えられるのを阻止して該チョッパ用スイッチ回路を遮断状態にするスイッチ遮断制御回路2Lが構成されている。
【0041】
点火制御部3は、信号コイル3Aと、該信号コイル3Aの出力を入力として内燃機関の点火位置を演算するマイクロプロセッサ(MPU)3Bと、点火信号出力回路3Cとを備えている。
【0042】
信号コイル3Aは、機関に取り付けられた信号発生器(図示せず。)内に設けられていて、機関の基準クランク角位置及び最小進角位置でそれぞれパルス波形の第1の信号Vs1及び第2の信号Vs2を発生する。第1の信号Vs1は、機関のピストンが上死点に達するときのクランク角位置(上死点位置)に対して十分に進角した位置(最大進角位置よりも更に進角した位置)に設定された基準クランク角位置で発生し、第2の信号Vs2は、基準クランク角位置よりも遅れたクランク角位置に設定された最小進角位置で発生する。上死点位置よりも十分に進角した基準クランク角位置で発生する第1の信号Vs1は、機関の点火位置の計測を開始する位置を定める基準信号として用いられる。
【0043】
マイクロプロセッサ3Bは、第1の信号(基準信号)Vs1及び第2の信号Vs2から得られる回転角度情報と、回転速度情報とを用いて各回転速度における点火位置(点火位置を行うクランク角位置)を演算する。この点火位置は、上死点位置からの進み角として演算される。マイクロプロセッサは、機関のクランク角位置が演算した点火位置に一致したことを検出したときに高レベル(Hレベル)から低レベル(Lレベル)に立ち下がる波形の点火位置信号Vip(図2A)を出力する。
【0044】
本実施形態では、点火位置信号Vipの信号幅が、点火用コンデンサCiに蓄積された電荷を放電用サイリスタSiと点火コイルの一次コイルL1とを通して完全に放電させるために必要な時間よりも僅かに長く(例えば10μsec程度に)設定する。
【0045】
点火信号出力回路3Cは、マイクロプロセッサ3Bが点火位置信号Vipを出力したときに点火信号Viを出力する回路で、エミッタが定電圧電源回路7の出力端子に接続され、ベースがマイクロプロセッサ3Bの点火位置信号出力用ポートに接続されたPNPトランジスタTR7 と、トランジスタTR7 のコレクタに一端が接続された抵抗R11と、抵抗R11の他端にアノードが接続されたダイオードD4 とからなり、ダイオードD4 のカソードが点火信号出力端子として点火回路1のサイリスタSi のゲート(点火回路の点火信号入力端子)に接続されている。
【0046】
点火位置制御部のマイクロプロセッサ3Bが点火位置信号出力用ポートの電位をLレベルに低下させて点火位置信号Vipを出力すると、トランジスタTR7が導通し、トランジスタTR7 のエミッタコレクタ間と抵抗R11とダイオードD4 とを通して図2(B)に示すような点火信号Viを出力する。この点火信号Vi の立上り位置が機関の点火位置となる。点火信号Viの波形は、点火位置信号Vipの波形を反転させた波形となる。
【0047】
電圧検出回路4は、点火用コンデンサCi とサイリスタSiのアノードとの接続点と接地間に接続された抵抗R12及びR13の直列回路と抵抗R12及びR13の接続点に一端が接続された抵抗R14とからなり、抵抗R14の他端と接地間にコンデンサCi の充電電圧(コンデンサCi の端子電圧)に相応した出力電圧V4 を発生する。
【0048】
昇圧動作制御回路5は、点火用コンデンサの充電電圧の設定レベルVcmを与える一定の参照電圧Vr2を発生する参照電圧発生回路5Aと、点火用コンデンサの充電電圧Vcに比例した電圧検出回路4の出力電圧V4 及び参照電圧Vr2がそれぞれ非反転入力端子及び反転入力端子に入力された比較回路CP2 と、比較回路CP2 の出力端子と定電圧電源回路7の出力端子との間に接続された抵抗R32と、比較回路CP2 の出力端子に抵抗R33を通してベースが接続され、エミッタが接地されたNPNトランジスタTR8 と、トランジスタTR8 のベースと接地間に接続された抵抗R34とからなっている。トランジスタTR8 のコレクタは微分コンデンサC1 と抵抗R7aとの接続点に接続されている。参照電圧発生回路5Aは、定電圧電源回路7の出力端子間に接続された抵抗R30及びR31の直列回路からなっていて、電源電圧Vccを分圧して参照電圧Vr2を出力する。
【0049】
昇圧動作停止回路6は、微分コンデンサC1と抵抗R7aとの接続点にコレクタが接続され、エミッタが接地されたNPNトランジスタTR9と、トランジスタTR9 のベースエミッタ間に接続された抵抗R35と、トランジスタTR9のベースに一端が接続された抵抗R36と、抵抗R36の他端と定電圧電源回路7の出力端子との間に接続された抵抗R37とからなり、トランジスタTR9 のベースは、マイクロプロセッサ3Bの昇圧動作停止指令信号出力用ポートに接続されている。
【0050】
点火制御部3のマイクロプロセッサ3Bは、所定のプログラムを実行することにより、点火信号Viが発生するタイミングよりも設定された先行時間Tpだけ前のタイミングで昇圧動作停止指令信号Vaを発生させる昇圧動作停止指令信号発生手段を構成する。
【0051】
昇圧動作停止指令信号発生手段は、図2に示されているように、点火信号Viが発生するタイミングtiよりも設定された先行時間Tpだけ前のタイミングで昇圧動作停止指令信号Vaを発生させ(Hレベルに立ち上げ)、点火信号Viに応答してターンオンした放電用サイリスタSiを通して行われる点火用コンデンサCiの放電が完了するタイミングの直後のタイミングで昇圧動作停止指令信号Vaを消滅させる(Lレベルにする)ように構成されている。後記するように、先行時間Tpは、点火信号が発生するまでの間にDC−DCコンバータから点火用コンデンサに流れる充電電流を消滅させておくために必要な長さに設定される。
【0052】
本実施形態では、点火位置信号Vipが点火位置で発生し(Lレベルになり)、点火用コンデンサCiの放電が完了するタイミングの直後のタイミングで消滅する(Hレベルになる)ように点火位置信号Vipの信号幅(点火信号Viの信号幅)が設定されているため、点火位置信号Vipが消滅すると同時に、昇圧動作停止指令信号Vaを消滅させている。
【0053】
上記昇圧動作停止指令信号Vaは、抵抗R36を通してトランジスタTR9 のベースに入力されていて、昇圧動作停止指令信号Vaが発生している間トランジスタTR9がオン状態を保持するようになっている。
【0054】
なお機関の始動時には、マイクロプロセッサのイニシャライズが行われるが、このイシニシャライズ時にも、マイクロプロセッサが昇圧動作停止指令信号Va を出力するようになっている。
【0055】
次に本実施形態の点火装置の動作を説明する。図1の点火装置において、電源スイッチSWが開いている状態で微分コンデンサC1 の電荷が零であるとする。電源スイッチSWが開いている状態では、トランジスタTR1 〜TR6 が遮断状態にあり、FET F1 は遮断状態にあるため、昇圧トランス2Bは電圧の発生を停止している。
【0056】
電源スイッチSWが投入されると、定電圧電源回路7が電圧Vccを発生し、該電圧Vccがチョッパ駆動指令信号発生回路2Eに印加される。このとき昇圧トランス2Bの二次コイルW2 には電流が流れておらず、ダイオードD2 の両端には順方向電圧降下が発生していないため、トランジスタTR3 が導通し、トランジスタTR4 は遮断状態にある。このとき電源電圧Vccが抵抗R7aと微分コンデンサC1 と抵抗R7bとの直列回路を通してトランジスタTR5 のベースエミッタ間に印加されるため、定電圧電源回路7から抵抗R7a及びR7bを通して微分コンデンサC1 に流れる充電電流がトランジスタTR5 にベース電流として流れる。微分コンデンサC1 の充電電流が流れている間だけトランジスタTR5 が導通するため、該トランジスタTR5 のコレクタエミッタ間に高電位からほぼ零電位まで立ち下がる駆動パルスVd ´が発生する。駆動パルスVd ´が発生している間(トランジスタTR5 が導通している間)だけトランジスタTR6 が遮断状態になるため、該トランジスタTR6 のコレクタエミッタ間に駆動パルスVd ´を反転させたものに相当する駆動信号Vd が発生する。駆動信号Vd が発生している間(トランジスタTR6 が遮断している間)トランジスタTR2 が遮断状態になるため、トランジスタTR1 のコレクタエミッタ間と抵抗R1 とを通してFET F1 に駆動信号Vg が与えられる。これによりFET F1 が導通状態になり、昇圧トランス2Bに一次電流が流れる。
【0057】
昇圧トランス2Bの一次電流が設定値に達すると、一次電流検出用抵抗R20の両端の電圧が設定値に達し、比較回路CP1 の反転入力端子に入力される電圧V20が基準電圧Vr1を超えるため、比較回路CP1 の出力端子の電位が接地電位になる。これによりPUT Pu1が導通する。PUT Pu1が導通すると、微分コンデンサC1 と抵抗R7bとを通してトランジスタTR5 に流れるベース電流が該トランジスタTR5 から側路されるため、トランジスタTR5 が遮断状態になる。トランジスタTR5 が遮断状態になると、トランジスタTR6 が導通状態になる(駆動信号Vd が消滅する)ため、トランジスタTR2 が導通状態になり、FETF1 の駆動信号Vg を消滅させる。
【0058】
図示の例においては、チョッパ用スイッチ回路のFET F1 が遮断状態になる際に昇圧トランス2Bに流れている一次電流の大きさが、トランス2Bのコアを流れる磁束を飽和値に近い大きさにするように(飽和値にはしないように)、一次電流の設定値を設定するのが好ましい。
【0059】
また、微分回路2Gから駆動信号供給回路2Hを通してチョッパ用スイッチ回路2Cに与えられる駆動信号Vd のパルス幅(時間幅)は、昇圧トランスに一次電流が流れ始めてから上記設定値に達するまでの時間よりも長い時間に設定される。駆動信号Vd のパルス幅は、微分回路2Gの抵抗R7a及びR7bの抵抗値とコンデンサC1 の静電容量とにより決まる時定数を調整することにより適宜に設定することができる。
【0060】
駆動信号Vd が消滅すると、FET F1 への駆動信号Vgの供給が停止するため、FET F1が遮断状態になり、昇圧トランス2Bの一次電流が遮断される。これにより昇圧トランス2Bの二次コイルW2 に高い電圧が誘起し、この電圧がダイオードD1 を通して点火回路1に与えられる。このとき二次コイルW2 →ダイオードD1 →点火用コンデンサCi →ダイオードDi 及び点火コイルの一次コイルL1 →ダイオードD2 →二次コイルW2 の経路で点火用コンデンサCi に充電電流が流れ、点火用コンデンサCi が図示の極性に充電される。
【0061】
点火用コンデンサCi の充電電流が流れているときには、充電電流検出用ダイオードD2 の両端に順方向電圧降下(最大で約0.6ボルト)Vakが生じる。この電圧降下によりトランジスタTR3 のベースエミッタ間が逆バイアスされるため、トランジスタTR3 が遮断状態になり、トランジスタTR4 が導通する。
【0062】
トランジスタTR4 が導通すると、微分コンデンサC1 →トランジスタTR4 のコレクタエミッタ間→ダイオードD3 →抵抗R7b→微分コンデンサC1 の経路で微分コンデンサC1 の電荷が放電する。昇圧トランスの二次コイルW2 から点火用コンデンサCi に流れていた充電電流が所定のしきい値未満になり(ほぼ零になり)、ダイオードD2 の両端の順方向電圧降下が所定レベル未満になると、トランジスタTR3 が導通状態になるため、トランジスタTR4 が遮断状態になる。トランジスタTR4 が遮断状態になると同時に微分コンデンサC1 に充電電流が流れるため、微分回路2Gから駆動パルスVd ´が発生し、駆動信号供給回路2Hからチョッパ用スイッチ回路2Cに駆動信号Vd が供給される。
【0063】
駆動信号Vd が発生すると、FET F1 に駆動信号Vg が与えられて該FETが導通させられるため、昇圧トランス2Bに一次電流が流れる。昇圧トランスの一次電流が設定値に達して駆動信号Vd が消滅したときにFET F1が遮断状態になって昇圧トランスの一次電流が遮断し、該昇圧トランスの二次コイルW2 に200数十ボルトまで昇圧された電圧が誘起する。
【0064】
以下同様の動作が繰り返され、昇圧トランス2Bの二次コイルに電圧が誘起する毎に、点火用コンデンサCi に充電電流が流れて、図2(D)に示すように、点火用コンデンサCi の両端の電圧が段階的に上昇していく。
【0065】
図2(E)に示されているように、点火用コンデンサCi の充電が進んでいくと、該コンデンサCi に充電電流Ivcが流れる時間が短くなっていくため、FET F1 のゲートに与えられる駆動信号Vg の発生間隔が短くなっていく。従って、点火用コンデンサCi の充電間隔は、該コンデンサの充電が進むに従って短くなっていき、コンデンサCi の充電電圧Vcは、図2(D)に示したように上昇していく。
【0066】
点火用コンデンサCi の充電電圧Vcが設定レベルVcm以上になると、電圧検出回路4の出力電圧V4 が参照電圧Vr2以上になるため、比較回路CP2の出力端子の電位が高レベルになる。これによりトランジスタTR8 が導通状態になって微分コンデンサC1 の一端をほぼ接地電位に保つ。そのため微分回路2Gがパルス信号Vd ´を発生しなくなり、昇圧回路2Dの昇圧動作が停止するが、既に発生しているDC−DCコンバータの出力電圧による点火用コンデンサの充電は継続され、点火用コンデンサは設定レベルVcmよりも僅かに高いレベルまで充電される。
【0067】
このようにして点火用コンデンサCiの充電が一旦完了した後、点火用コンデンサCi の電荷が電圧検出回路4の抵抗器R12及びR13を通して一定の時定数で放電するため、点火用コンデンサCi の充電電圧は一定の割合で低下していく。点火用コンデンサCiの充電電圧Vcが設定レベルVcm未満になると、比較回路CP2の出力端子の電位が低レベル(Lレベル)になるため、トランジスタTR8がオフ状態になり、FET F1への駆動信号Vgの供給が再開される。これによりFETがオン状態になって、昇圧動作が再開され、点火用コンデンサCiの再充電が行われる。この再充電により点火用コンデンサCiの充電電圧が設定レベルVcm以上になるため、比較回路CP2の出力端子の電位が高レベルになり、トランジスタTR8 が導通状態になって、昇圧回路2Dの昇圧動作が停止するが、既に発生しているDC−DCコンバータの出力電圧により点火用コンデンサの充電が継続され、点火用コンデンサは設定レベルVcmよりも僅かに高いレベルまで充電される。以上のようにして、点火用コンデンサの放電と再充電が繰り返されて、点火用コンデンサCiの充電電圧が設定レベルVcm付近に保たれる。
【0068】
点火用コンデンサCiに再充電電流が流れる時間Tn′は、点火用コンデンサの充電が完了する直前に点火用コンデンサに充電電流Ivcが流れる時間Tnにほぼ等しい。Tn′及びTnは例えば10μsec程度である。
【0069】
点火制御部3は、点火位置信号Vip を発生させるタイミングよりも設定された先行時間Tpだけ前のタイミングtpで昇圧動作停止指令信号Va を発生し、点火位置信号Vipを消滅させると同時に昇圧動作停止指令信号Vaを消滅させる。昇圧動作停止指令信号Va が発生している間はトランジスタTR9 が導通するため、微分コンデンサC1 の一端を接地電位に保って、該微分回路が駆動パルスVd ´を発生するのを阻止する。
【0070】
図2に示した例では、昇圧動作停止指令信号Vaが発生する前に、点火用コンデンサの再充電が完了しているため、昇圧動作停止指令信号Vaが発生している間に点火用コンデンサの充電が行われることはない。
【0071】
内燃機関の点火位置で点火制御部3が点火位置信号Vipを発生すると、点火信号出力回路3Cが点火信号Vi を出力する。この点火信号は放電用サイリスタSi に与えられるため、該サイリスタSi が導通してコンデンサCi の電荷を点火コイルIGの一次コイルL1を通して放電させる。これにより点火コイルIGの二次コイルL2に点火用の高電圧が発生し、点火プラグPに火花が発生して機関が点火される。
【0072】
図2に示した例では、点火信号Viが発生したときにDC−DCコンバータ2が出力を停止しているため、放電用サイリスタがオン状態になったときにDC−DCコンバータ側から放電用サイリスタSiに電流が流れ込むことはない。そのため、放電用サイリスタSiは点火用コンデンサCiの電荷が完全に放電して、アノード電流が保持電流未満になった時点でターンオフする。
【0073】
上記の説明では、昇圧動作停止指令信号Vaが発生した際に既に点火用コンデンサCiの再充電が完了していて、DC−DCコンバータ2から点火用コンデンサCiに充電電流が流れていないとしたが、たまたまDC−DCコンバータの昇圧トランス2B一次電流が流れている状態で、昇圧動作停止指令信号Vaが発生したとすると、昇圧動作停止指令信号が発生した瞬間に昇圧トランスの一次電流が遮断されるため、昇圧トランスの二次コイルに電圧が誘起し、この電圧により点火用コンデンサCiに充電電流が流れる。この場合には、DC−DCコンバータ2から点火用コンデンサCiに充電電流Ivcが流れる期間の全体が、昇圧動作停止指令信号Vaの先行時間Taの一部にオーバラップする。昇圧動作停止指令信号Vaの発生タイミングを定める先行時間Tpは、このような状態でも、点火信号Viの発生時にDC−DCコンバータ2から点火用コンデンサCiに充電電流が流れていることがないように、十分に長く設定する必要がある。しかしながら、先行時間Tpを余り長く設定すると、機関の高速回転時に点火用コンデンサの充電を完了させることができなくなるおそれがある。
【0074】
従って、上記先行時間Tpは、必要最小限の長さに設定することが好ましい。本実施形態では、上記先行時間Tpを、点火用コンデンサCiの充電が一旦完了した後、点火用コンデンサの電荷が電圧検出回路4の抵抗器を通して放電して、該点火用コンデンサの充電電圧Vcが設定レベルVcm未満になったときに昇圧動作を再開したDC−DCコンバータから点火用コンデンサに充電電流が流れる時間Tn′に、設定された余裕時間Tαを加えた時間に等しく設定している。
【0075】
点火用コンデンサの両端の電圧が設定レベルVcm未満になったときに昇圧動作を再開したDC−DCコンバータ2から点火用コンデンサCiに充電電流が流れる時間Tn′は例えば10μsec程度である。この場合、余裕時間Tαは10μsec程度に設定する。また点火信号Viの信号幅は10μsec程度に設定される。この場合、昇圧動作停止指令信号の信号幅Taは約30μsecとなる。なお余裕時間Tαは必ずしもTn′に等しくなくなもよい。
【0076】
なおこれらの具体的数値はあくまでも一例であり、先行時間Tp、余裕時間Tα及び点火信号の信号幅は、回路定数等により種々の値をとり得る。
【0077】
本実施形態のように、点火用コンデンサCiの放電が完了するタイミングの直後のタイミングで点火信号Viを消滅させるようにしておいて、点火位置信号Vipが消滅すると同時に、昇圧動作停止指令信号Vaを消滅させるようにすると、昇圧動作停止指令信号Vaの発生と消滅とをコントロールするためのプログラムを簡単にすることができる。
【0078】
しかし、本発明はこのように構成する場合に限定されるものではなく、点火用コンデンサの電荷の放電が完了するタイミングよりも前のタイミングで点火位置信号Vipを消滅させ、放電用サイリスタSiを通して行われる点火用コンデンサの電荷の放電が完了するタイミングよりも僅かに遅れたタイミング(点火信号Viが消滅するタイミングよりも僅かに遅れたタイミング)で昇圧動作停止指令信号Vaを消滅させるようにしてもよい。
【0079】
上記のように、点火信号が発生するよりも前に昇圧動作停止指令信号Vaを発生させると、点火用コンデンサCiの再充電電流Ivcが流れている間に点火信号Viが発生する状態が生じるのを防ぐことができるため、点火用コンデンサの再充電電流が放電用サイリスタSiに流れ込んで、放電用サイリスタのターンオフが遅れたり、放電用サイリスタがターンオフできなくなったりする異常事態が生じるのを防ぐことができる。
【0080】
本実施形態において、点火位置信号を発生する点火位置信号発生手段及び昇圧動作停止指令信号を発生する昇圧動作停止指令信号発生手段を構成するために点火制御部3のマイクロプロセッサに実行させるタスクのアルゴリズムの一例を示したフローチャートを図3に示した。図3のタスクは、信号コイル3Aが基準クランク角位置で基準信号Vs1を発生した時、及び点火制御部3を構成するマイクロプロセッサに設けられたタイマの計数値がセットされた計数値に一致した時に実行される。マイクロコンピュータは、図示しない信号発生器が基準信号を発生した時にタイマの計数動作を開始させ、その後該タイマの計数値がセットされた計数値に一致する毎に新たな計数値をセットして、セットした計数値の計数を行わせる。
【0081】
図3に示したアルゴリズムによる場合には、先ずステップS1で、今回のタスクの実行タイミングが、基準信号の発生タイミングであるか否かを判定する。その結果、基準信号の発生タイミングであると判定されたときには、ステップS2に進んで昇圧動作停止指令信号Vaを発生させるタイミングを検出するための計数値である「Va出力タイミング検出用計数値」をタイマにセットしてその計数動作を開始させ、このタスクを終了する。
【0082】
タイマが「Va出力タイミング検出用計数値」を計数すると再び図3のタスクが実行される。このときステップS1で今回のタスク実行タイミングが基準クランク信号の発生タイミングではないと判定されるため、ステップS3が実行され、今回のタスク実行タイミングがVa出力タイミングであるか否かを判定する。この判定は、タイマの計数値が、「Va出力タイミング検出用計数値」に一致したか否かを判定することにより行われる。「Va出力タイミング検出用計数値」は、基準信号が発生するタイミングから昇圧動作停止指令信号Vaを発生させるタイミングまでの時間に相当する。
【0083】
ステップS3において、今回のタスク実行タイミングがVa出力タイミングであると判定されたときには、ステップS4に進んで昇圧動作停止指令信号VaをHレベルにしてDC−DCコンバータの昇圧動作を停止させる。次いでステップS5に進み、現在のタイミングから点火位置信号VipをLレベルにするタイミング(点火位置信号出力タイミング)までの間にタイマに計数させる計数値(「Vip出力タイミング検出用計数値」)をタイマにセットすると同時にその計数を開始させてこのタスクを終了する。「Vip出力タイミング検出用計数値」は例えば20μsecに設定される。
【0084】
タイマが「Vip出力タイミング検出用計数値」を計数すると、再び図3のタスクが実行される。このタスク実行タイミングでは、ステップS1で今回のタスク実行タイミングが基準信号の発生タイミングではないと判定され、ステップS3で今回のタスク実行タイミングがVa出力タイミングではないと判定されるため、ステップS6が実行される。ステップS6では、今回のタスク実行タイミングがVip出力タイミングであるか否かを判定する。この判定は、前回のタスク実行タイミングから今回のタスク実行タイミングまでの間にタイマが計数した計数値がVip出力タイミング検出用計数値に一致したか否かを見ることにより行われる。
【0085】
ステップS6で今回のタスク実行タイミングがVip出力タイミングであると判定されたときには、ステップS7でマイクロコンピュータの点火位置信号出力用ポートの電位をLレベルとして点火位置信号Vipを発生させ、次いでステップS8で、点火位置信号VipをLレベルに保つ時間(Vipの信号幅)を設定するための計数値である「Vip信号幅設定用計数値」(例えば10μsec)をタイマにセットしてこのタスクを終了する。
【0086】
タイマが「Vip信号幅設定用計数値」を計数すると再び図3のタスクが実行される。このタスク実行タイミングでは、ステップS1で今回のタスク実行タイミングが基準信号の発生タイミングではないと判定され、ステップS3で今回のタスク実行タイミングがVa出力タイミングではないと判定され、更にステップS6で今回のタスク実行タイミングがVip出力タイミングではないと判定されるため、ステップS9に進んで点火位置信号VipをHレベルとするとともに、昇圧動作停止指令信号VaをLレベルとする。
【0087】
次いで、ステップS10で、次回の昇圧動作停止指令信号Vaの発生タイミングを検出するための計数値(「Va出力タイミング検出用計数値」)を演算してこのタスクを終了する。「Va出力タイミング検出用計数値」は、基準位置から点火位置信号Vipの発生位置(点火位置)までクランク軸が回転するのに要する時間である「点火位置検出用計数値」から昇圧動作停止指令信号Vaの発生タイミングを定める先行時間(今の例では20μsec)を差し引くことにより演算される。「点火位置検出用計数値」は、現在の機関の回転速度で基準クランク角位置から点火制御部3が演算した点火位置までクランク軸が回転するのに要する時間である。
【0088】
図3に示した例では、マイクロプロセッサに設けられた1つのタイマを用いて、昇圧動作停止指令信号Vaを発生及び消滅させるタイミングと、点火位置信号Vip(点火信号Vi)を発生及び消滅させるタイミングとを求めるようにしているが、昇圧動作停止指令信号を発生及び消滅させるタイミングと、点火位置信号を発生及び消滅させるタイミングとを、それぞれ互いに同期して動作する別々のタイマを用いて求めるようにすることもできる。
【0089】
上記の点火装置において、電源スイッチSWが閉じた際に微分コンデンサC1が充電された状態にあると、微分回路2Gが駆動パルスVd ´を発生しないため、昇圧回路2Dが昇圧動作を行なわない。昇圧動作が行なわれないと、昇圧トランスの二次コイルW2 に電流が流れないため、トランジスタTR3 は導通状態を保持し、トランジスタTR4 は遮断状態を保持する。このような状態が生じると、昇圧動作を開始することができず、点火動作を開始させることができない。また電源スイッチSWを投入した際に該スイッチの接触抵抗が大きく、電源電圧Vccが徐々に立上った場合にも、微分回路2Gが駆動パルスVd ´を発生しないため、上記と同様の問題が生じる。
【0090】
上記の例のように、昇圧動作停止回路6を設けて、点火制御部3を構成するマイクロプロセッサのイニシャライズ時または点火信号の発生タイミングよりも先行時間Tpだけ前のタイミングtpで昇圧動作停止指令信号Vaを発生させることにより、トランジスタTR9 を導通させて微分コンデンサC1 を強制的に放電させ、昇圧動作停止指令信号Va が消滅したときに微分回路2Gの微分動作を開始させるように構成しておくと、機関の始動時に1度点火信号が発生した後に駆動パルスVd ´を確実に発生させることができるため、機関の始動に失敗するおそれをなくすことができる。
【0091】
機関の停止時に微分コンデンサC1 に電荷が残るのを防ぐため、電源スイッチSWが開かれた際に該スイッチと連動して閉じるリセット用スイッチを設けて、該リセット用スイッチを微分コンデンサC1 の一端と接地間に直接または電流制限素子を介して接続することにより微分コンデンサの放電を図る構成をとることもできる。
【0092】
上記のように、昇圧トランス2Bの一次電流を検出して該一次電流が設定値に達したことが検出されたときに該一次電流を遮断することにより該昇圧トランスの二次コイルに電圧を誘起させるようにすると、バッテリ電圧の如何に係わりなく一次電流の遮断値を一定にして、チョッパ用スイッチの1回の遮断により昇圧トランスの二次コイルに誘起する電圧を一定にすることができ、バッテリ電圧の低下時に点火用コンデンサの充電電圧が不足するのを防ぐことができる。
【0093】
また上記のように、昇圧トランス2Bの二次電流を検出して該二次電流が所定のしきい値未満であることが検出されたときにチョッパ用スイッチ回路2Cを導通させて昇圧トランス2Bに一次電流を流すようにすると、昇圧トランスに二次電流が流れているとき、即ち昇圧トランスの鉄心に磁束が流れているときに一次電流が流れないため、昇圧トランスの一次電流が大きくなって該トランスでの消費電力が増大するのを防いで昇圧回路の効率を高くすることができ、昇圧トランスの発熱が増大したり、チョッパ用スイッチ回路2Cでの発熱が増大したりするのを防ぐことができる。
【0094】
更に上記のように構成すると、二次電流がしきい値未満になった後直ちに一次電流が流れるため、昇圧トランスの負荷が小さくなる(点火用コンデンサの充電が進んで充電電流が流れる時間が短くなる)につれて、チョッパ用スイッチのオンオフの周波数を高くすることができる。従って、点火用コンデンサの充電速度を高くすることができ、バッテリ電圧の如何に係わりなく昇圧トランスの二次コイルに誘起する電圧を一定にすることができることと相俟って、点火用コンデンサを常に充分に高い電圧まで充電して満足な点火動作を行なわせることができる。
【0095】
上記の例では、微分回路2Gを用いて駆動信号Vd を発生させるようにしたが、本発明においては、昇圧トランス2Bの二次電流(またはコンデンサCi の充電電流)がしきい値未満になったときに一定の時間幅のパルスを駆動信号として発生させればよく、パルスを発生させる回路の構成は上記の例に限定されない。
【0096】
例えば、昇圧トランス2Bの二次電流がしきい値未満になって、チョッパ駆動指令信号発生回路2Eがチョッパ駆動指令信号を発生したときに単安定マルチバイブレータをトリガすることにより駆動パルスを発生させる構成をとることもできる。
【0097】
上記の例では、FETを主のスイッチ素子(昇圧トランスの一次電流をオンオフするスイッチ素子)としてチョッパ用スイッチ回路2Cを構成したが、トランジスタ等の他のオンオフ制御が可能なスイッチ素子を主のスイッチ素子としてチョッパ用スイッチ回路を構成できるのはもちろんである。
【0098】
上記の例では、点火回路1の点火用コンデンサCi を点火コイルの一次コイルに対して直列に接続しているが、該コンデンサCi とサイリスタSi との位置を入れ替えた構成の周知の点火回路が用いられる場合にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の実施形態に係わるコンデンサ放電式内燃機関用点火装置のハードウェアの構成を示した回路図である。
【図2】本発明の実施形態の動作を説明するための波形図である。
【図3】本発明の実施形態において昇圧動作停止指令信号及び点火位置信号の発生及び消滅を制御するためにマイクロプロセッサに実行させるタスクのアルゴリズムを示したフローチャートである。
【図4】従来のコンデンサ放電式内燃機関用点火装置の動作を説明するための波形図である。
【符号の説明】
【0100】
1 点火回路
2 充電用電源部
2A バッテリ
2B 昇圧トランス
2C チョッパ用スイッチ回路
2D 昇圧回路
2E チョッパ駆動指令信号発生回路
2F 微分制御用スイッチ回路
2G 微分回路
2H 駆動信号供給回路
3 点火制御部
3B マイクロプロセッサ
4 電圧検出回路
5 昇圧動作制御回路
6 昇圧動作停止回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリの出力電圧が一次コイルに印加される昇圧トランスと、駆動信号が与えられている間導通して前記バッテリから昇圧トランスに一次電流を流すチョッパ用スイッチ回路とを備えた昇圧回路と、前記昇圧トランスの二次電流が所定のしきい値未満であることが検出されたときに前記チョッパ用スイッチ回路を導通させて前記昇圧トランスに一次電流を流し、前記昇圧トランスの一次電流が設定値に達したことが検出されたときに前記チョッパ用スイッチ回路を遮断状態にして前記昇圧トランスの二次コイルに電圧を誘起させるように前記昇圧トランスの一次電流及び二次電流に応じて前記チョッパ用スイッチ回路を制御するチョッパ用スイッチ制御回路とを備えたDC−DCコンバータと、
点火コイルと、
前記点火コイルの一次側に設けられて前記DC−DCコンバータが断続的に出力する電圧により段階的に充電される点火用コンデンサと、
内燃機関の点火位置で点火信号を発生する点火制御部と、
前記点火信号が発生したときにターンオンして前記点火用コンデンサに蓄積された電荷を点火コイルの一次コイルを通して放電させる放電用サイリスタと、
前記点火用コンデンサに対して並列に接続された抵抗分圧回路からなる電圧検出回路と、
前記電圧検出回路により検出された点火用コンデンサの充電電圧が設定レベル以上になったときに前記DC−DCコンバータの昇圧動作を停止させ、前記点火用コンデンサの充電電圧が前記設定レベル未満になったときに前記DC−DCコンバータの昇圧動作を再開させるように前記充電用コンデンサの充電電圧に応じて前記DC−DCコンバータの昇圧動作を制御する昇圧動作制御回路と、
前記点火信号に応答してターンオンした前記放電用サイリスタをターンオフさせる時間を確保するために設定時間の間昇圧動作停止指令信号を発生する昇圧動作停止指令信号発生手段と、
前記昇圧動作停止指令信号が発生している間前記DC−DCコンバータの昇圧動作を停止させる昇圧動作停止回路と、
を備えたコンデンサ放電式内燃機関用点火装置において、
前記昇圧動作停止指令信号発生手段は、前記点火信号が発生するタイミングよりも設定された先行時間だけ前のタイミングで前記昇圧動作停止指令信号を発生させ、前記放電用サイリスタを通して行われる前記点火用コンデンサの放電が完了するタイミングの直後のタイミングで前記昇圧動作停止指令信号を消滅させるように構成されていること、
を特徴とするコンデンサ放電式内燃機関用点火装置。
【請求項2】
前記先行時間は、前記点火用コンデンサの両端の電圧が前記設定レベル未満になったときに昇圧動作を再開した前記DC−DCコンバータから前記点火用コンデンサに充電電流が流れる時間に、設定された余裕時間を加えた時間に等しく設定されていることを特徴とするコンデンサ放電式内燃機関用点火装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−25372(P2008−25372A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−195785(P2006−195785)
【出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【出願人】(000001340)国産電機株式会社 (191)
【Fターム(参考)】