説明

コンデンサ

【課題】導線部のフレキシブル性を維持してはんだクラックを防止する。
【解決手段】コンデンサ素子をケースに収納し、該ケースに樹脂を充填して形成されたコンデンサであって、コンデンサ素子の電極面3aにはんだ接合される金属製の端子部材と、端子部材4にその一端部が接続されると共に、フレキシブル性を有する導電性線材で構成された導線部5と、導線部5の他端部に接続される外部引出電極6とを有する。端子部材は、基部41と、基部41の一端から突出して、電極面3aにはんだ接合される端子部42と、基部41の他端から突出すると共に、基部41との間で導線部5の一端部を挟持する一対の素子側腕部43とを有する。外部引出電極6は、電極本体61と、電極本体61から延出する胴部62と、胴部62の両端部から突出すると共に、胴部62との間で導線部5の他端部を挟持する一対の引出側腕部63とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極の引出構造の一部にフレキシブル性を有する導線部を設けたコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンデンサとして、図8に示すような、コンデンサ素子92の端面に電極93が形成され、この電極93に、電極引出バー94がはんだ付けによって接続された構成のコンデンサ91がある。
このようなコンデンサ素子は、ケース内に収納されている。特に、乾式のフィルムコンデンサの場合には、図8に示すように、コンデンサ素子が収納されたケース97内には絶縁性樹脂からなる充填材98が充填されている。
【0003】
しかし、このように電極に電極引出バーがはんだ接合されているコンデンサにおいては、はんだ接合部の強度が弱いため、はんだ接合部に外力が作用した場合に、はんだにクラック(亀裂)が生じるおそれがある。
図8のようにケース97内に樹脂の充填材98が充填されている場合、大幅な温度変化が生じる環境下で使用すると、充填材98が膨張・収縮することにより、はんだ接合部に応力が集中して、はんだクラックが生じる場合がある。
また、コンデンサに振動が加わった場合にも、はんだクラックが生じる場合がある。
【0004】
はんだを用いた配線構造における、熱サイクル等に起因するはんだクラックを防止する技術として、例えば特許文献1に記載されているものがある。
特許文献1の技術では、配線構造の一部に、平編線などのフレキシブル性を有する導線部を使用し、導線部を配線基板にはんだ接合している。
特許文献1によれば、導線部が変形することによって、外力を吸収して、はんだ接合部に作用する応力を低減して、はんだクラックを防止するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−344841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、フレキシブル性を有する導線部を接続対象物に直接、はんだ接合する場合、接合強度を高めるために、比較的広い範囲ではんだ接合を行う必要がある。
そのため、導線部全体にはんだが浸透し、導線部が固まってしまい、本来のフレキシブル性を喪失してしまうため、はんだクラックを防止することが困難となる
【0007】
そこで、本発明は、導線部のフレキシブル性を維持してはんだクラックを防止することのできるコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のコンデンサは、コンデンサ素子をケースに収納し、該ケースに樹脂を充填して形成されたコンデンサにおいて、前記コンデンサ素子の電極面にはんだ接合される金属製端子部材と、前記端子部材にその一端部が接続されると共に、フレキシブル性を有する導電性線材で構成された導線部と、前記導線部の他端部に接続される外部引出電極とを含み、前記端子部材が、基部と、前記基部の一端から突出して、前記電極面にはんだ接合される端子部と、前記基部の他端から突出すると共に、前記基部との間で前記導線部の一端部を挟持する一対の素子側腕部とを有することを特徴とする(第1の発明)。
また、前記外部引出電極が、前記電極本体と、前記電極本体から延出する胴部と、前記胴部の両端部から突出すると共に、前記胴部との間で前記導線部の他端部を挟持する一対の引出側腕部とを有することが好ましい(第2の発明)。
【0009】
この構成によれば、コンデンサ素子の電極面には、端子部材がはんだ接合されており、この端子部材は、フレキシブル性を有する導電性線材で構成された導線部を介して外部引出電極に接続されている。導線部の一端部は、端子部材の基部と一対の素子側腕部によって挟持され、導線部と端子部材の間をはんだによらずとも強固に接続することができる。
したがって、導線部のフレキシブル性を維持することができるため、、コンデンサ素子の周りに充填された樹脂が熱膨張/収縮しても、はんだ接合部に作用する応力を緩和して、はんだクラックの発生を防止することができる。
【0010】
さらに、第2の発明によれば、導線部の一端部は、端子部材の基部と一対の素子側腕部によって挟持される一方、導線部の他端部は、外部引出電極の胴部と一対の引出側腕部によって挟持される構造とすることもできる。このとき、導線部と端子部材の間および導線部と外部引出電極との間をはんだによらずとも強固に接続することができる。
したがって、導線部のフレキシブル性を維持することができるため、コンデンサ素子の周りに充填された樹脂が熱膨張/収縮しても、はんだ接合部に作用する応力を緩和して、はんだクラックの発生を防止することができる。
【0011】
第3の発明のコンデンサは、前記第1の発明において、前記導線部の一端部が、前記端子部材の前記基部と一対の素子側腕部とによって挟持されていることに加えて、前記端子部材にはんだ接合されていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、導線部の一端部と端子部材とをより強固に接続することができる。
また、導線部と端子部材とは、挟持とはんだ接合の両方によって接続されているため、はんだ接合のみで接続する場合に比べて、はんだ接合部の範囲は挟持部分周辺にとどまり、小さくてすむ。したがって、導線部全体にはんだが浸透することがなく、導線部のフレキシブル性を維持することができる。
【0013】
第4の発明のコンデンサは、前記第2の発明において、前記導線部の他端部が、前記外部引出電極の胴部と一対の引出側腕部とによって挟持されていることに加えて、前記外部引出電極にはんだ接合されていることを特徴とする。
【0014】
この構成によると、導線部の他端部と外部引出電極とをより強固に接続することができる。
また、導線部と外部引出電極とは、挟持とはんだ接合の両方によって接続されているため、はんだ接合のみで接続する場合に比べて、はんだ接合部の範囲は挟持部分周辺にとどまり、小さくてすむ。したがって、導線部全体にはんだが浸透することがなく、導線部のフレキシブル性を維持することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のコンデンサによると、導線部のフレキシブル性を維持することができるため、コンデンサ素子の周りに充填された樹脂が熱膨張/収縮しても、はんだ接合部に作用する応力を緩和して、はんだクラックの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係るコンデンサの内部構造図であって、(a)は正面内部構造図であり、(b)は側面内部構造図である。
【図2】(a)はコンデンサ素子の正面図であり、(b)はコンデンサ素子の側面図である。
【図3】(a)はコンデンサ素子の部分拡大図であり、(b)は金属化フィルムの平面図である。
【図4】図1(a)の部分拡大断面図である。
【図5】端子部材と導線部との接続手順を示す図である。
【図6】電極引出バーの腕部を折り曲げる前の状態を示す図である。
【図7】発明の他の実施形態の端子部材を示す図である。
【図8】従来のコンデンサの内部構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1および図4に示すように、本実施形態のコンデンサ1は、3つのコンデンサ素子2と、3つのコンデンサ素子2が収納される直方体状のケース7と、ケース7内に充填される樹脂材料からなる充填材8と、6つの端子部材4と、6つの平編線(導線部)5と、2つの電極引出バー6とから構成されている。
なお、本実施形態では、コンデンサ素子2の数は3つとしたが、この数に限定されるものではない。
以下のコンデンサ1の説明において、図1中の上下方向を「上下方向」と定義して説明する。
【0018】
ケース7は、樹脂材料で形成されている。
充填材8としては、例えば、エポキシ樹脂等の絶縁性を有する熱硬化性樹脂が用いられる。
【0019】
コンデンサ素子2は、円筒状であって、後述する2枚の金属化フィルム20を巻回することによって形成されている。
図2に示すように、各コンデンサ素子2の両端面には、メタリコン(金属溶射)によってメタリコン電極3がそれぞれ形成されている。
【0020】
図3(a)および(b)に示すように、金属化フィルム20は、帯状の誘電体フィルム21と、この誘電体フィルム21の片面に蒸着により形成された蒸着電極22とを有する。誘電体フィルム21の蒸着電極22が形成されている面の幅方向一端部には、非蒸着部である絶縁マージン23が設けられている。
【0021】
誘電体フィルム21は、例えば、ポリプロピレン(PP)で形成されており、蒸着電極22は、例えばアルミニウムや亜鉛等で形成されている。
【0022】
図3(b)に示すように、蒸着電極22は、絶縁マージン23と反対側端部に形成された電極導出部22aと、複数の分割電極部22bと、隣接する分割電極部22b同士を接続するヒューズ部22cとから構成されている。
【0023】
ヒューズ部22cは、絶縁破壊が生じた際にヒューズとして機能する。具体的には、絶縁破壊時には、破壊点の特定の分割電極部22bにヒューズ部22cを介して電流が集中して流れ込む。この電流のエネルギーによってこのヒューズ部22cを発熱飛散させて、特定の分割電極部22bを電気的に孤立させて、絶縁を回復させるようになっている。
【0024】
図3(a)に示すように、2枚の金属化フィルム20は、2つの絶縁マージン23が幅方向に関して反対側に位置するように重ね合わされた状態で、巻回されている。
【0025】
図4に示すように、メタリコン電極3の表面(電極面)3aには、端子部材4がはんだにより接続されている。端子部材4は、平編線5(本発明の「導線部」に相当)を介して電極引出バー6(本発明の「外部引出電極」に相当)に接続されている。
なお、図1および図4において、端子部材4の後述する端子部42にかかるように表示された円は、はんだ接合の範囲を示している。
【0026】
平編線5は、一方の端部が端子部材4に接続され、他方の端部が電極引出バー6に接続されている。
平編線5は、導電性金属(例えば銅)の線材を複数本、編組することによって形成されており、フレキシブル性(柔軟性)を有する。
平編線5は、平板状に形成されている。具体的には、平編線5としては、線材を帯状に編組したものであっても、線材を中空の筒状に編組して、偏平状にしたものであってもよい。また、一重編組、二重編組、三重編組等の何れであってもよい。
【0027】
図4および図5に示すように、端子部材4は、基部41と、端子部42と、一対の腕部43(本発明の「素子側腕部」に相当)とから構成されている。
基部41と端子部42と腕部43の板厚は全て同じである。
端子部材4の材料としては、例えば、銅等が挙げられる。
【0028】
基部41は、矩形状であって、図4中の上下方向の長さが、平編線5の幅よりも短い。
端子部42は、図4中の基部41の右端部から上方に突出して形成されている。なお、端子部42は、図4中の基部41の右端部から下方に突出して形成されていてもよい。
端子部42の先端(基部41と反対側の端部)は、メタリコン電極3の電極面3aにはんだ接合により接続されている。
はんだの材料は、例えば、鉛50%、錫50%の合金等が挙げられる。
【0029】
一対の腕部43は、図4中の基部41の左端部から上下方向にそれぞれ突出すると共に、折り曲げられている。
図5(a)は、一対の腕部43が折り曲げられる前の状態の端子部材4を示している。図5(b)および(c)に示すように、一対の腕部43は、メタリコン電極3と反対側に折り曲げられており、この一対の腕部43と基部41との間で、図4中の平編線5の左端部が挟持されている。これにより、平編線5は、基部41と一対の腕部43とによって囲まれた状態で挟持されているため、端子部材4に確実に接触すると同時に、強固に接続されている。
【0030】
図示は省略するが、端子部材4と平編線5とは、上述の挟持による接続に加えて、はんだにより接続されている。詳細には、一対の腕部43を折り曲げた後、一対の腕部43と平編線5とをはんだ接合している。なお、基部41と平編線5とをはんだ接合してもよい。
端子部材4と平編線5とは既に挟持により接続されているため、はんだ接合部の範囲は挟持部分周辺にとどまり、小さくてすみ、平編線5のフレキシブル性を維持することができる。
【0031】
図1および図6に示すように、電極引出バー6は、電極本体61と、電極本体61から張り出した胴部62と、一対の腕部63(本発明の「引出側腕部」に相当)とから構成されている。
胴部62と腕部63の板厚は同じである。電極本体61の板厚は、胴部62の板厚よりも厚くても、同じであってもよい。
電極引出バー6の材料としては、例えば、銅等が挙げられる。
【0032】
図1に示すように、電極本体61は、長方形状の平板部材であり、メタリコン電極3の電極面3aに平行で、かつ、3つのコンデンサ素子2の配列方向(図1中の上下方向)に沿って配置されている。電極本体61の一方の端部は、ケース7の外部に引き出されている。
【0033】
図4に示すように、胴部62は、図4中の電極本体61の左端部から左方に突出して形成されている。
胴部62は、図4中の上下方向の長さ(胴部62の幅)が、平編線5の幅よりも短い。
【0034】
一対の腕部63は、胴部62の上下方向にそれぞれ突出すると共に、折り曲げられている。
図6は、一対の腕部63が折り曲げられる前の状態の電極引出バー6を示している。図4に示すように、一対の腕部63は、メタリコン電極3と反対側に折り曲げられており、一対の腕部63と胴部62との間で、平編線5の図4中の右端部が挟持されている。これにより、平編線5は、胴部62と一対の腕部63とによって囲まれた状態で挟持されているため、電極引出バー6に確実に接触すると同時に、強固に接続されている。
【0035】
図示は省略するが、電極引出バー6と平編線5とは、上述の挟持による接続に加えて、はんだにより接続されている。詳細には、一対の腕部63を折り曲げた後で、一対の腕部63と平編線5とをはんだ接合している。なお、胴部62と平編線5とをはんだ接合してもよい。
端子部材4と電極引出バー6とは既に挟持により接続されているため、はんだ接合部の範囲は挟持部分周辺にとどまり、小さくてすみ、平編線5のフレキシブル性を維持することができる。
【0036】
以上説明したコンデンサ1を、大幅な温度変化が(例えば−40℃〜+120℃)が生じる環境下で使用した場合、ケース7内の充填材8が膨張・収縮する。
仮に、メタリコン電極3が電極引出バー6にはんだ接続されている場合、充填材8の膨張・収縮により、メタリコン電極3と電極引出バー6とのはんだ接合部に応力がかかって、はんだに割れ(クラック)が生じる。
一方、本実施形態では、メタリコン電極3が、端子部材4と平編線5とを介して電極引出バー6に接続されており、平編線5はフレキシブル性を保っている。そのため、充填材8の膨張・収縮により電極引出バー6にかかる力は、平編線5が変形することによって、メタリコン電極3と端子部材4との間のはんだ接合部に伝わりにくくなり、はんだにクラックが発生するのを防止することができる。
【0037】
上述したように、平編線5の一端部(図4中の左端部)は、基部41と一対の腕部43によって挟持されて、端子部材4に確実に接触すると同時に、強固に接続されている。
また、平編線5の他端部(図4中の右端部)は、胴部62と一対の腕部63によって挟持されて、電極引出バー6に確実に接触すると同時に、強固に接続されている。
【0038】
また、端子部材4と平編線5、および、平編線5と電極引出バー6とは、腕部43、63を用いた挟持による接続に加えて、はんだによって接続されている。そのため、挟持による接続のみの場合に比べて、より強固に接続されている。
【0039】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の実施形態は以下のように変更して実施することができる。なお、上記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を用いて適宜その説明を省略する。
【0040】
端子部材4の基部41と素子側腕部42とにより平編線5が挟持されている限り、端子部材4と平編線5とは、はんだによって接続されていなくてもよい。
【0041】
上記実施形態では、基部41の電極引出バー6側の端部(図4中右端部)に端子部42が設けられ、基部41の電極引出バー6と反対側の端部(図4中左端部)に腕部43が設けられているが、図7(a)〜(c)に示すように、基部41の電極引出バー6と反対側の端部に端子部42が設けられ、基部41の電極引出バー6側の端部に腕部43が設けられていてもよい。
この場合、図7(a)に示すように、端子部42は、基部41から、平編線5の延在方向と同じ方向に突出していてもよく、また、図7(b)に示すように、基部41から上下方向に突出していてもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、基部41に接続されている端子部42の数は1つであるが、図7(b)〜(d)に示すように、2つ以上の端子部42が設けられていてもよい。
この構成によると、端子部材4とメタリコン電極3とをより確実に接続することができると同時に、端子部材4とメタリコン電極3の端子部42分の面積が大きくなるため、通電時の発熱を抑制できる。
【0043】
また、上記構成において、平編線5と電極引出バー6とは、胴部62と一対の腕部63によって挟持されることによって接続されているが、適宜、他の挟持方法や、強固に接続できる固定方法に置き換えることができる。
【0044】
また、上記実施形態では、本発明の導線部として、平板状の平編線5を用いたが、円柱状の編み線を用いてもよい。
また、編み線に代えて、複数の銅等の線材が撚り合わされた構成の撚り線を用いてもよい。但し、フレキシブル性を有するように、緩めに縒られた撚り線を用いる。
【0045】
上記実施形態では、2枚の金属化フィルムが巻回された構成の巻回形のフィルムコンデンサに本発明を適用した一例を説明したが、複数枚の金属化フィルムが積層された構成の積層形のフィルムコンデンサに本発明を適用してもよい。
【0046】
次に、本発明の具体的な実施例を比較例と合わせて説明する。
実施例として、厚さが7μmのポリプロピレン(PP)フィルムに、図3に示すようなアルミニウム蒸着電極が形成された金属化フィルムを用いてコンデンサ素子を作製し、コンデンサ素子の両端面にメタリコン電極を形成した。図1および図4に示すように、このメタリコン電極に、平編線を介して電極引出バーに接続された端子部材を、鉛50%、錫50%組成のはんだで接続して、3つのコンデンサ素子を並列接続した後、ケース内に収納して、エポキシ樹脂を充填、硬化させて、静電容量300μFのコンデンサを作製した。
【0047】
比較例として、図8に示すように、電極引出バー94に設けられた突起部94aを、メタリコン電極93に直接はんだ付けした点以外は、上記実施例と同様の手順でコンデンサを作製した。
【0048】
実施例および比較例の各5個のコンデンサについて、−40℃から+120℃まで昇温し、再び−40℃に降温する工程を1サイクルとする温度サイクル試験を、2000サイクル行った後、5V印加、1kHzでtanδ(1kHz)を測定した。その結果を表1に示す。
なお、tanδ(誘電正接)は、コンデンサのエネルギー損失を示す指標であり、0に近いほど損失が少ないことを示す。
【0049】
【表1】

【0050】
試験の結果、比較例では、5個中3個の試料が、メタリコン電極と突起部との間のはんだに割れが生じ、この割れが進展したことにより断線していた。残りの2個の試料についても、tanδ(1kHz)の値が5%以上と大きい値であった。
一方、実施例では、tanδ(1kHz)が0.4%以下と小さく、比較例に比べて温度サイクルによる劣化が少ないことが分かる。
【0051】
なお、試験結果の記載は省略するが、誘電体フィルムの材料として、ポリプロピレン以外の材料を用いた場合でも、同様の結果が得られた。
また、蒸着電極の材料としてアルミニウム以外の金属を用いた場合でも、同様の結果が得られた。
【0052】
また、試験結果の記載は省略するが、端子部材と平編線、または、平編線と電極引出バーを、はんだにより接続せずに、挟持のみで接続した構成のコンデンサであっても、比較例に対して優れた結果が得られた。
【符号の説明】
【0053】
1 コンデンサ
2 コンデンサ素子
3 メタリコン電極
3a 電極面
4 端子部材
5 平編線(導線部)
6 電極引出バー(外部引出電極)
7 ケース
8 充填材
20 金属化フィルム
21 誘電体フィルム
22 蒸着電極
22a 電極導出部
22b 分割電極部
22c ヒューズ部
23 絶縁マージン
41 基部
42 端子部
43 腕部(素子側)
61 電極本体
62 胴部
63 腕部(引出側)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサ素子をケースに収納し、該ケースに樹脂を充填して形成されたコンデンサにおいて、
前記コンデンサ素子の電極面にはんだ接合される金属製端子部材と、
前記端子部材にその一端部が接続されると共に、フレキシブル性を有する導電性線材で構成された導線部と、
前記導線部の他端部に接続される外部引出電極とを含み、
前記端子部材が、
基部と、
前記基部の一端から突出して、前記電極面にはんだ接合される端子部と、
前記基部の他端から突出すると共に、前記基部との間で前記導線部の一端部を挟持する一対の素子側腕部とを有することを特徴とするコンデンサ。
【請求項2】
前記外部引出電極が、
前記電極本体と、
前記電極本体から延出する胴部と、
前記胴部の両端部から突出すると共に、前記胴部との間で前記導線部の他端部を挟持する一対の引出側腕部とを有することを特徴とする請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項3】
前記導線部の一端部が、
前記端子部材の基部と一対の素子側腕部とによって挟持されていることに加えて、
前記端子部材にはんだ接合されていることを特徴とする請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項4】
前記導線部の他端部が、
前記外部引出電極の胴部と一対の引出側腕部とによって挟持されていることに加えて、
前記外部引出電極にはんだ接合されていることを特徴とする請求項2に記載のコンデンサ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−29556(P2011−29556A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176516(P2009−176516)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000004606)ニチコン株式会社 (656)
【Fターム(参考)】