説明

コンニャク種芋温湯消毒装置

【課題】浸漬槽内の温湯を温湯消毒温度の適正温度となるように温度管理するとともに、コンニャク種芋に付着する土砂やごみを効果的に除去できるようにする。
【解決手段】循環ポンプ5で吸水口3から取り入れた温湯をヒータタンク20で加熱する。この温湯の加熱温度をコンニャク種芋等の浸漬による熱損失分を考慮して高く設定し、浸漬後には温湯消毒の適正温度になるよう温度制御を切り替えて処理する。ヒータタンク20で加熱した温湯を側壁1aの両側に設けた吐出口4から対向する側壁1bに向けて温湯を噴射すると、側壁1bにぶつかって戻った噴流Sが浸漬槽1のほぼ中央に合流する。この噴流Sを長い流路として形成することによってコンニャク種芋に付着していた土砂を沈下させ、微細な土砂やごみはフィルタ7で除去して吸水口3から吸引する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泥付きのコンニャク種芋を所定温度に管理した温湯に所定時間浸漬させてコンニャク種芋の病原菌や害虫を殺菌・殺虫処理するコンニャク種芋温湯消毒装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンニャクの安定生産には、根腐病の対策は重要な課題の一つとなっている。出願人は、この課題を解決するため多くの研究を行ってきている。根腐病を引き起こす病原菌は土壌および種芋を介して伝染する。従来から根腐病対策は、畑の土壌に農薬(土壌くん蒸剤)を注入し、土壌表面をポリエチレンシート等で覆い、土壌中に発生・拡散するガスで根腐病菌を殺す方法が一般的である。しかし、土壌消毒後の畑に病原菌が付着・寄生している種芋の植え付け等による再汚染には抗し難い。その対策として、健全な種芋の選別や植え付け時以降の殺菌剤の土壌処理を併用することで種芋からの伝染を防止してきた。しかし、肉眼による種芋選別では完全な無病種芋の選別は難しく、見落としにより汚染された種芋が混入する危険性があった。一方、殺菌剤では薬剤に対する効果低下菌の出現により、薬剤の防除効果の低下が確認された。その結果、汚染された種芋(生子)が消毒された畑土壌に植え付けられ、発病し、病勢が拡大することで消毒土壌が病原菌により広範囲に再汚染されてしまう。それと同時に、植え付けた種芋(生子)が生育し、収穫される次作のための種芋(2年生)自体が罹病または汚染畑の泥を付着させた芋となる危険性が高くなった。この状態では、土壌と種芋の間で病原菌の行き来が常に生じ、栽培農家が土壌くん蒸剤による土壌消毒を毎年実施しても、根腐病の被害が絶えない悪循環となってしまい、生産安定上の大きな問題となってきた。さらに、コンニャクでは、根腐病以外にも土壌及び種芋で伝染する病害虫(腐敗病やネコブセンチュウなど)があり、これらについても同様な経緯で被害が絶えない状況となる場合があった。そのため、種芋による病原菌や害虫の伝染を遮断する方法として、コンニャクに適応した温湯消毒技術を確立した。社会的には、農薬使用による農作物の安全性への消費者の不安も高まっていた。
【0003】
他方、出願人は、対象とする農産物は相違するが、農薬を使わない種籾に対する種子消毒技術としての温湯消毒技術を確立している。下記の多くの特許文献は、処理対象農作物を種籾とした温湯浸種槽装置が提案されている。この温湯浸種槽装置は、上面が開放された箱状の浸漬槽と、所定の温度に温度調節された温湯を供給するための温湯器と、浸漬槽内の種籾に向けて温湯を噴出する複数の噴出ノズルと、浸漬槽の略中央底部から温湯を吸水するための吸水口とを設け、天井には種籾を搬入・搬出する搬送手段を設けている。
【特許文献1】特開平11−129490号公報
【特許文献2】特開平11−318118号公報
【特許文献3】特開2000−316321号公報
【特許文献4】特開2000−342018号公報
【特許文献5】特開2002−330605号公報
【特許文献6】特開2003−009612号公報
【特許文献7】特開2003−023815号公報
【特許文献8】特開2003−235308号公報
【特許文献9】特開2003−235309号公報
【特許文献10】特開2004−000090号公報
【特許文献11】特開2004−000261号公報
【特許文献12】特開2004−290011号公報
【特許文献13】特開2006−050982号公報
【特許文献14】特開2006−081426号公報
【特許文献15】特開2006−230270号公報
【特許文献16】特開2006−280387号公報
【特許文献17】特開2006−314330号公報
【特許文献18】特開2007−049921号公報
【特許文献19】特開2008−131903号公報
【特許文献20】特開2008−131904号公報
【0004】
このような温湯浸漬処理装置は、処理対象物としての農作物が相違しても、そのままの方式で適用できるというものではない。作物自体の相違や、後処理に対する相違等によって、特定の処理対象物に対する温湯浸漬処理装置は、独自のものを開発する必要がある。つまり、作物の相違による構造的な検討や、作物に付く病原菌や害虫に対する消毒温度と消毒時間及び作物(コンニャクの場合は種芋)としての耐温時間(作物の機能を阻害しない温度と時間)との関係の見極めが重要となる。
【0005】
つまり、対象とする農産物が相違し対策する病原菌や害虫も相違すると、新たな温湯消毒技術を確立する必要がある。そして、本発明は、泥付きのコンニャク種芋の温湯消毒装置であるために必須の構造的特徴である泥対策に着目し、また、コンニャク種芋の病害虫の対策としては略50℃に温度調節した温湯で40〜50分間浸漬する方法が有効であることに着目して発明したものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記各特許文献に開示されているような、種籾用の温湯浸種槽装置ではなく、泥つきコンニャク種芋用の温湯浸漬処理装置として開発しようとするものであり、この温湯浸漬処理装置は、温湯に処理対象の泥つきコンニャク種芋を浸漬させて殺菌・殺虫処理するものである。このような泥つきコンニャク種芋の温湯浸漬処理装置にとっては、泥対策が極めて重要であり、加えて、温湯の温度管理も極めて重要なポイントとなる。
【0007】
処理対象をコンニャク種芋とした場合、浸漬槽の温湯を50℃に制御して40〜50分浸漬することが病原菌や害虫を殺菌・殺虫する上で重要となる。一方農家においてコンニャク種芋は、一般的に、10kg〜15kg程度を合成樹脂製の収納籠に入れて取り扱われている。このような収納籠を一つ一つ取り扱う方式では効率が悪く、装置の大型化も避けられない。また、一度に複数の収納籠を取り扱おうとすると、温湯消毒装置への搬入・搬出が大変になる。また、処理しようとするコンニャク種芋を浸漬槽に一度に多量に搬入すると、当然、処理前のコンニャク種芋は温湯温度(50℃)より低いので、コンニャク種芋を温湯に浸漬すると、浸漬槽の温湯温度は初期の消毒温度より数度ほど(処理量にもよるが、1〜4℃程度)低下してしまう。このため、浸漬槽の温湯温度を温湯消毒適正温度(50℃)に設定しても、コンニャク種芋浸漬開始時での実際の浸漬槽の温湯は、それより低くなってしまい、病原菌や害虫の殺菌・殺虫処理能力が低下する。
【0008】
加えて、処理対象としてコンニャク種芋を温湯消毒する場合、コンニャクは圃場で栽培されることから、収穫したコンニャク種芋には多くの土砂やごみが付着し、コンニャク種芋を温湯に浸して病原菌や害虫を温湯消毒すると、温湯の噴流によって種芋に付着する土砂やごみが洗い流され、吸水口から浸漬槽内の温湯を取り入れる際、温湯と共に土砂やごみが吸引され、吸水口が詰まるとともに、吸水口からポンプ内に土砂やごみが侵入するなどして装置の故障を引き起こし易い。これは、種籾の温湯消毒装置においてはなかった課題である。
【0009】
また、前記各特許文献に示す種籾用の温湯浸種槽装置は、異なる温度に管理された複数の浸漬槽、すなわち、予浸用の温湯浸種槽、浸種用の温湯浸種槽、冷水槽を併設し、逐次処理対象の種籾を収納した収納容器を走行クレーン装置で吊り下げて各槽に搬送しているため、走行クレーン装置を設置している。このような方式を、コンニャク種芋の温湯処理装置にそのまま適用しようとすると、コンニャク種芋の収納容器の搬送に大規模な設備が必要となり、製造コストも嵩むため小規模な設備投資で簡単に利用できないという課題を包含していた。つまり、このようなシステム構成は、処理対象物が種籾であるからこそ取り得た構成となっていたものである。
【0010】
本発明は上述した課題を解決するために為されたものであり、浸漬槽内の温湯の温度をコンニャク種芋の病原菌や害虫の温湯消毒温度に適した温度に制御調節することを第1の課題とし、コンニャク種芋に付着する土砂やごみを効果的に除去することを第2の課題とし、かつ、フォーク式移動リフター(フォークリフトなど)を利用して簡単にコンニャク種芋の浸漬槽への浸漬、浸漬槽からのコンニャク種芋の引き上げ並びに自由な移動が可能とすることを第3の課題としたコンニャク種芋温湯消毒装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載のコンニャク種芋温湯消毒装置は、温湯を貯める長方形箱型の浸漬槽と、この浸漬槽内に温湯を循環させる吸水口及び吐出口と、この吸水口から取り入れた温湯を吐出口から噴射して前記浸漬槽内に温湯を循環させる循環ポンプと、前記吸水口から前記吐出口の間に配置された加熱ユニットとを設けており、前記吸水口から取り入れた温湯を前記加熱ユニットで加熱して前記吐出口から噴射することによって前記浸漬槽内の温湯温度を所定温度に調節し、温湯に所定時間浸漬してコンニャク種芋の病原菌や害虫を殺菌・殺虫処理するコンニャク種芋温湯消毒装置であり、温湯消毒処理をする泥付きのコンニャク種芋を収容する収容籠を複数備え、該複数の収容籠を積載してフォーク式移動リフター(フォークリフトなど)などにより前記浸漬槽内に搬入・搬出するための浸漬枠を設けたことを特徴とする。
【0012】
請求項2記載のコンニャク種芋温湯消毒装置は、温湯を貯める長方形箱型の浸漬槽と、この浸漬槽内に温湯を循環させる吸水口及び吐出口と、この吸水口から取り入れた温湯を吐出口から噴射して前記浸漬槽内に温湯を循環させる循環ポンプと、前記吸水口から前記吐出口の間に配置された加熱ユニットとを設け、前記吸水口から取り入れた温湯を前記加熱ユニットで加熱して前記吐出口から噴射することによって前記浸漬槽内の温湯温度を所定温度に調節し、温湯に所定時間浸漬してコンニャク種芋を温湯消毒処理するコンニャク種芋温湯消毒装置であって、該コンニャク種芋温湯消毒装置は、泥付きのコンニャク種芋を収容する複数の収容籠と、該複数の収容籠を積載して前記浸漬槽内に搬入・搬出する浸漬枠とを備えており、
前記加熱ユニットは、加熱すべき水を収容するヒータタンクと、このヒータタンク内の水を加熱するヒータと、このヒータをオン・オフ制御する温度調節手段と、この温度調節手段を制御して前記ヒータタンク内の水温を調節制御する制御手段とで構成され、温度設定手段は、多段に温度設定することができるように少なくとも2つの温度設定部を設けるとともに、前記制御手段は、1つの温度設定部によって設定された設定温度による制御から他の温度設定部によって設定された設定温度による制御への切り替えを行う切り替え手段と所定時間を設定するタイマ手段とを設け、コンニャク種芋を収容した複数の収容籠を積載した前記浸漬枠が前記浸漬槽に搬入されるまでは、前記1つの温度設定部によって設定された設定温度による制御が行われ、該浸漬枠が搬入された際には、前記他の温度設定部によって設定された設定温度による制御へ切り替えられて、前記タイマ手段により設定された所定時間の温湯処理消毒が行われるようにしたことを特徴とする。
【0013】
請求項3記載のコンニャク種芋温湯消毒装置は、前記1つの温度設定部によって設定される設定温度は、コンニャク種芋を収容した複数の収容籠を積載した前記浸漬枠が前記浸漬槽に搬入浸漬されることにより低下する温度を見込んだ温度として設定され、前記他の温度設定部によって設定される設定温度は、コンニャク種芋の温湯消毒のための適正温度が設定されたことを特徴とする。
【0014】
請求項4記載のコンニャク種芋温湯消毒装置は、温湯を貯める長方形箱型の浸漬槽と、この浸漬槽内に温湯を循環させる吸水口及び吐出口と、この吸水口から取り入れた温湯を吐出口から噴射して前記浸漬槽内に温湯を循環させる循環ポンプと、前記吸水口から前記吐出口の間に配置された加熱ユニットとを設け、前記吸水口から取り入れた温湯を前記加熱ユニットで加熱して前記吐出口から噴射することによって前記浸漬槽内の温湯温度を所定温度に調節し、温湯に所定時間浸漬してコンニャク種芋を温湯消毒処理するコンニャク種芋温湯消毒装置であって、該コンニャク種芋温湯消毒装置は、泥付きのコンニャク種芋を収容する複数の収容籠と、該複数の収容籠を積載して前記浸漬槽内に搬入・搬出する浸漬枠とを備えており、
前記加熱ユニットは、前記浸漬槽の長手方向に対向する側壁の一方の側壁の外壁に設けられ、前記温湯の吐出口は前記長手方向に対向する一方の側壁の内壁近傍に配置され、前記吸水口も前記長手方向に対向する一方の側壁の内壁近傍に配置されており、前記吐出口から前記長手方向に対向する他方の側壁に向って温湯を噴射して前記浸漬槽内に噴流を生じさせ、該噴流は前記長手方向に対向する他方の側壁により反転されて反転流を形成された後に前記吸水口に取り入れられて噴流の流路を長く形成し、その間にコンニャク種芋に付着していた土砂を沈下させ、さらに前記吸水口にはコンニャク種芋に付着していた土砂やごみを除去するフィルタを設けたことを特徴とする。
【0015】
請求項5記載のコンニャク種芋温湯消毒装置は、前記加熱ユニットは、前記浸漬槽の長手方向に対向する側壁の一方の側壁の外壁に一対の加熱ユニットとして設けられ、前記温湯の吐出口は前記浸漬槽の長手方向に対向する一方の側壁の内壁近傍で且つ前記浸漬槽の短手方向に対向する側壁の内壁近傍に各々配置され、前記吸水口は前記長手方向に対向する一方の側壁の内壁近傍の中央部分に各々配置されており、前記各吐出口から前記長手方向に対向する他方の側壁に向って温湯を噴射して前記浸漬槽内に噴流を生じさせ、該噴流は前記長手方向に対向する他方の側壁により反転・合流されて反転流を形成された後に前記各吸水口に取り入れられて噴流の流路を長く形成し、その間にコンニャク種芋に付着していた土砂を沈下させ、さらに前記各吸水口にはコンニャク種芋に付着していた土砂やごみを除去する共通のフィルタを設けたことを特徴とする。
【0016】
請求項6記載のコンニャク種芋温湯消毒装置は、温湯を貯める長方形箱型の浸漬槽と、この浸漬槽内に温湯を循環させる吸水口及び吐出口と、この吸水口から取り入れた温湯を吐出口から噴射して前記浸漬槽内に温湯を循環させる循環ポンプと、前記吸水口から前記吐出口の間に配置された加熱ユニットとを設け、前記吸水口から取り入れた温湯を前記加熱ユニットで加熱して前記吐出口から噴射することによって前記浸漬槽内の温湯温度を所定温度に調節し、温湯に所定時間浸漬してコンニャク種芋を温湯消毒処理するコンニャク種芋温湯消毒装置であって、該コンニャク種芋温湯消毒装置は、泥付きのコンニャク種芋を収容する複数の収容籠と、該複数の収容籠を積載してフォーク式移動リフター(フォークリフトなど)により前記浸漬槽内に搬入・搬出する浸漬枠とを備えており、
前記複数の収納籠を積載する浸漬枠は、複数の収納籠を積載する載置台を備え、この載置台には、一対の支柱と各支柱の上端部に架設した連結枠とから成る門型フレームを構成するとともに、前記連結枠には、前記フォーク式移動リフター(フォークリフトなど)のフォークを挿通案内する一対のガイド部材を設けたことを特徴とする。
【0017】
請求項7記載のコンニャク種芋温湯消毒装置は、前記複数の収納籠を積載した浸漬枠を、前記浸漬層の長手方向に対向する一方の側壁の内壁近傍に設けた前記吐出口を避けた前記浸漬槽内の有効スペースに搬入するべくガイドするための指標手段を設けたことを特徴とする。
【0018】
請求項8記載のコンニャク種芋温湯消毒装置は、前記指標手段を前記浸漬槽に着脱自在に設けたポールとして構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明のコンニャク種芋温湯消毒装置によれば、泥付きのコンニャク種芋を収容した収容籠を複数積載した浸漬枠をフォーク式移動リフター(フォークリフトなど)によって搬入・搬出ができるため、簡単な構造でのコンニャク種芋の温湯消毒装置を提供することが可能なものである。これにより、コンニャク種芋を介した圃場の病原菌や害虫による土壌汚染を引き起こす心配がなくなる。これに対して種籾の場合は、種籾を播種し、育苗する場所は苗田や育苗施設内であり、種籾を介した田への直接の土壌汚染の心配は極めて少なかったものである。
【0020】
本発明のコンニャク種芋温湯消毒装置によれば、コンニャク種芋を収容した複数の収容籠を積載した浸漬枠が浸漬槽に搬入されるまでは、1つの温度設定部によって設定された設定温度による制御が行われ、浸漬枠が搬入された際には、他の温度設定部によって設定された設定温度による制御へ切り替えられて、所定時間の温湯処理消毒が行われるようにしたことにより、浸漬槽内の温湯温度をコンニャク種芋の温湯消毒温度の所定温度に制御することが可能になり適正な温湯消毒処理が達成できる。
【0021】
このように、本発明のコンニャク種芋温湯消毒装置によれば、浸漬するコンニャク種芋等によって浸漬槽内の温湯の熱が奪われたとしても、一つの温度設定部でその熱損失分だけ温湯の加熱温度を高くなるように温度設定し、浸漬後は制御部により浸漬槽内の温湯温度を他の温度設定部で設定したコンニャク種芋の温湯消毒に適した所定温度に維持することが可能である。
【0022】
本発明のコンニャク種芋温湯消毒装置によれば、吐出口から長手方向に対向する側壁に向って温湯を噴射して浸漬槽内に噴流を生じさせ、該噴流は反対の側壁により反転されて反転流を形成された後に吸水口に取り入れられるように噴流の流路を長く形成し、その間にコンニャク種芋に付着していた土砂を沈下させ、さらに吸水口にはコンニャク種芋に付着していた土砂やごみを除去するフィルタを設けることにより、コンニャク種芋に付着していた土砂やごみを効果的に除去し、循環ポンプで濾過した温湯を吸引することで、吸水口及び循環ポンプの目詰まりを防止することができる。
【0023】
さらに、本発明のコンニャク種芋温湯消毒装置によれば、一対の吐出口から長手方向に対向する側壁に向って温湯を噴射して浸漬槽内に噴流を生じさせ、該噴流は反対の側壁により反転・合流されて反転流を形成された後に吸水口に取り入れられるようにして噴流の流路を長く形成し、その間にコンニャク種芋に付着していた土砂を沈下させ、さらに前記各吸水口にはコンニャク種芋に付着していた土砂やごみを除去する共通のフィルタを設けることにより、コンニャク種芋に付着していた土砂やごみを効果的に除去し、循環ポンプで濾過した温湯を吸引することで吸水口及び循環ポンプの目詰まりを防止することができる。
【0024】
本発明のコンニャク種芋温湯消毒装置によれば、複数の収納籠を積載する浸漬枠に門型フレームを構成し、それにフォーク式移動リフター(フォークリフトなど)のフォークを挿通案内する一対のガイド部材を設けたことにより、フォーク式移動リフター(フォークリフトなど)を利用してコンニャク種芋の収納籠の搬入・搬出を簡単に行うことができ、大規模な設備投資が不要となるから、コスト削減が可能である。
【0025】
本発明のコンニャク種芋温湯消毒装置によれば、コンニャク種芋を浸漬槽に浸漬する際、コンニャク種芋を収納籠に収納するとともに、この収納籠を積載した浸漬枠のガイド部材にフォーク式移動リフター(フォークリフトなど)のフォークを挿通し、浸漬枠を吊り上げる。この後、浸漬槽の上方まで浸漬枠を搬送した後、フォークを降下させることによって、浸漬槽内にコンニャク種芋が浸漬され、容易にコンニャク種芋の病原菌や害虫の温湯消毒処理が達成される。
【0026】
本発明のコンニャク種芋温湯消毒装置によれば、連結枠に設けたガイド部材にフォーク式移動リフター(フォークリフトなど)のフォークを差し入れて浸漬枠を吊り上げることで、載置台に積載した収納籠を安定した状態で吊り上げることができる。
【0027】
さらに、本発明のコンニャク種芋温湯消毒装置によれば、浸漬槽内の有効スペースのセンターに指標部を設けたものであるから、浸漬槽内に収納籠を積載した浸漬枠を降ろす際、浸漬枠長辺の中心と浸漬槽内の有効スペースのセンターとを正確に位置合わせすることができる。さらに、指標部を浸漬槽に着脱自在に設けたポールで構成したものであるから、使用環境によって、浸漬槽の前方又は後方にポールを選択的に立設することができるから、浸漬枠を浸漬槽内に降ろす際、浸漬槽の前方又は後方から搬入・搬出したとしても常に運転者の正面側(浸漬槽の前方から搬入した場合は、後方の浸漬槽壁面上部に、後方から搬入した場合は、前面の浸漬槽壁面上部に)にポールを配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明のコンニャク種芋温湯消毒装置の一実施例について、添付図面を参照して説明する。
【0029】
図1〜図3に示すように、本発明の実施例のコンニャク種芋温湯消毒装置は、温湯を循環させながら貯めておく浸漬槽1と、浸漬槽1の温湯を所定温度となるように加熱制御する加熱ユニット2と、前記浸漬槽1内の温湯を循環するための吸水口3及び吐出口4と、この吸水口3から取り入れた温湯を前記加熱ユニット2に送り、その加熱ユニット2によって所定温度に温度調節した温湯を再度吐出口4から吐出して浸漬槽1内に循環させる循環ポンプ5を備えている。この吸水口3及び吐出口4は、浸漬槽1の前後方向に複数設けることが好ましく、図示した実施例においては、吸水口3及び吐出口4を対称に一対となるように配置した。この場合は、後述するフィルタ7の配置位置との関係で、2つの吐出口4を浸漬槽1の前後に配置し、吸水口3を中央部に配置するのが望ましい。なお、本実施例において位置関係を表現する用語としての「前後」方向とは、図1に表示された前面(図面手前側)及び後面(図面背面側)方向(図2においては、図の上下方向に相当する)であり、「左右」方向及び「上下」方向とは、図2に表示されたとおりの方向に従って行うものである。
【0030】
浸漬槽1は、上面が開放された長方形箱型であり、開放した浸漬槽1の上面から浸漬槽1の内部にコンニャク種芋(図示せず)を収納した収納籠10を搬入浸漬させる。収納籠10は透水性の金網や多孔の合成樹脂ケースなどで構成されるのが好ましいが、それに限定されるものではなく、取り扱いの容易な容器であれば構わないし、袋状容器でも構わない。本実施例では、合成樹脂ケースから成る8個の収納籠10,10・・・を浸漬枠11に積載し、その浸漬枠11をフォーク式移動リフター(フォークリフトなど)Fで吊り上げて浸漬槽1内に降ろして搬入・搬出することによって、浸漬槽1の温湯にコンニャク種芋を浸漬させ取り出す例を説明する。図1乃至図3において、一点鎖線10で示した範囲が、浸漬枠11に積載して搬入される8個の収納籠10,10・・・である。
【0031】
浸漬枠11は、図4、図5に示すように、収納籠10,10・・・を載置する載置台12、載置台12の両側に設けた一対の支柱13,13、この各支柱13の上端部に架設した一対の連結枠14,14とからなる一対の門型フレーム15,15とで構成されている。また、前記各連結枠14の中間部にはフォーク式移動リフター(フォークリフトなど)FのフォークF1,F1を案内するガイド部材16,16が設けられているとともに、載置台12の下部には前記浸漬槽1の底部と載置台12との間に後述するフィルタを配置するためにスペーサとして機能する所定の高さを有した一対の架台17,17が固定されている。本実施例の載置台12には8個の収納籠10,10・・・を積載できるように構成したが、8個に限定されないことは言うまでもない。
【0032】
本実施例の加熱ユニット2は、図7及び図8(構成ブロック図)に示すように、一対の加熱系が構成されているが、処理すべきコンニャク種芋の処理量に応じた必要温湯量によって一つの加熱系で構成しても良い。加熱ユニット2は、ヒータタンク20と、このヒータタンク20内の水を加熱するヒータ21と、このヒータ21の温度調節機22を備えている。この温度調節機22は、二つの設定温度を自由に設定できるように、第1温度設定部24aを備えた第1の制御盤23aと第2温度設定部24bを備えた第2の制御盤23bとを備えている。前記第1及び第2の温度設定部24a、24bで設定した異なる温度の切り替えは、制御部31により浸漬枠11の搬入のタイミングで行われる。この切り替えは浸漬枠11の搬入のタイミングで手動により行っても良いが、浸漬槽1底面に浸漬枠11の搬入を検知する検知手段(リミットスイッチなど)を配置して自動的に切り替わるように構成しても良い。制御部31は、所定の浸漬時間をカウントするタイマ手段30を備えている。加熱ユニット2は、図7に示すように、一対のヒータタンク20,20と、一対の循環ポンプ5,5と,それから伸びる一対の供給管4a,4a及び接続管3c,3cとにより一対の加熱ユニットを構成しており、それらの制御のために、第1の制御盤23aと第2の制御盤23bとを備えている。図7では、第1及び第2の温度設定部24a、24bを表示しているが、図7では、第1及び第2の温度設定部24a、24bの設定温度表示を示しており、設定温度の上げ下げは適当なボタンにより可能である。図7中の28a及び28bは、それぞれの浸漬槽1内の温湯温度の表示部を示している。また、コンニャク種芋温湯消毒装置の消毒処理操作を開始させる動作スイッチ29は本実施例では図2で示すように、浸漬槽1に取り付けられているが、動作スイッチ29の位置は操作しやすい位置であればよい。
【0033】
加熱ユニット2は、浸漬槽1の対向する左右方向の一方の側壁1a(右側壁)の外面に配置され、その右側壁1aの内面側にヒータタンク20から供給された温湯を吐出するための2個の吐出口4,4を上下に有する供給管4aが、一対をなして浸漬槽1の前後壁の内面に位置するように右側壁1aの両隅に沿って立ち上がって配置されるとともに、各供給管4aの端部が前記ヒータタンク20に接続されている。また、浸漬槽1の図2における中央底部には、前記吸水口3を有する吸水管3aが一対配設されている。この一対の各吸水管3a,3aは中継管3bを介して接続管3cに接続され、その接続管3cが前記循環ポンプ5に接続されている。この一対の各吸水管3a,3aは、一対の供給管4a,4aの間に位置するように配置されている。
【0034】
前記吸水口3は、多数の孔6a,6a,6a・・・を有する透水箱6に接続されており、その透水箱6の内部にはフィルタ7が配置されている。フィルタ7は、透水箱6と実質的に同じサイズの直方体の多孔質状であり、図中は点線により示されている。このフィルタ7によって処理対象であるコンニャク種芋に付着していた土砂やごみを濾過する。こうして土砂やごみが除去された温湯が循環ポンプ5によって各吸水管3a,3aから吸引されて、濾過した後の温湯を循環ポンプ5によってヒータタンク20内に送り、ヒータタンク20により温度設定部(24a或いは24b)で設定された水温に加熱してから前記4つの吐出口4から浸漬槽1の内部に噴射される。この時、図2に示すように、浸漬槽1の一方の側壁1aの両側から浸漬槽1の長手方向に沿って対向する他方の側壁1bへ向けて温湯が同時に噴射されて噴流となり、側壁1bにぶつかった噴流が反転流を作り浸漬槽1の中央に合流して再び浸漬槽1の一方の側壁1aに戻る。これにより、図2で示すように、浸漬槽1内に矢印で示す温湯に噴流Sが生じ、その両噴流S,Sの合流部S1が浸漬槽1の底部中央に戻りの噴流となり、前記各吸水管3a,3aに戻ってくる。この長い噴流の流路中にコンニャク種芋に付着していた土砂は沈下し、各吸水管3aを覆うフィルタ7が配置されているので土砂やごみは濾過される。
【0035】
また、前述したように、浸漬槽1の一方の側壁1a(右壁)に沿って吐出口4を有する一対の供給管4a,4aを配置しているため、収納籠10を積載した浸漬枠11をフォーク式移動リフター(フォークリフトなど)Fで搬入する際には、供給管4a,4aを避けて浸漬枠11を降ろす必要がある。すなわち、図1に示すように、浸漬槽1のセンターhと、浸漬枠11を降ろす際の実質的な浸漬槽1内の浸漬有効スペースのセンターh1とでずれが生じている。そこで、浸漬槽1内の有効スペースのセンターh1をフォーク式移動リフター(フォークリフトなど)Fの運転手に知らせるための指標部となるポール25が浸漬槽1の側面外側(フォーク式移動リフター(フォークリフトなど)Fの運転手と反対側の側壁面が望ましい)に立設されている。このポール25は、浸漬槽1内の浸漬有効スペースのセンターh1に立設されているから、浸漬する浸漬枠11の長辺の中心Hがポール25と一致するようにフォーク式移動リフター(フォークリフトなど)Fを運転すれば、供給管4aを避けた浸漬槽1内の浸漬有効スペースのセンターh1に浸漬枠11長辺の中心Hを簡単に位置合わせすることができる。なお、使用環境によっては、浸漬槽1の前側だけではなく後ろ側からも浸漬枠11を搬送することになる。そのために、浸漬槽1の後側面あるいは前側面にポール25が取り付けられるように、ポール25を浸漬槽1に固定する取付板26を取り付け取り外し自在に構成し、その取付板26には2つの孔部27,27を設けておき、ポール25を2つの孔部27,27の内のいずれか一方に着脱自在に挿入する。使用環境によって、フォーク式移動リフター(フォークリフトなど)Fを浸漬槽1の前側あるいは後ろ側の何れかから作業する際には、フォーク式移動リフター(フォークリフトなど)Fと反対側の浸漬槽1側壁に取付板26を取り付け、取付板26に設けた左右一対の孔部27の何れかが浸漬槽1内の浸漬有効スペースのセンターh1に合致するように形成されているから、それにポール25を差し込んで指標部とする。図2においては、取付板26は、浸漬槽1の後側の側壁に取り付けられた状態を示しているが、これは浸漬槽1の前側から作業を行う場合であり、浸漬槽1の後ろ側から作業を行う場合には、取付板26を浸漬槽1の前側の側壁に付け替え、ポール25も、浸漬有効スペースのセンターh1に合致する側の孔部27に挿入する。
【0036】
以上のように構成される本実施例の動作について説明する。コンニャク種芋の温湯消毒の際には、コンニャク種芋を収容した収納籠10を浸漬槽1内に浸漬して所定時間温湯に浸漬してコンニャク種芋に付いた病原菌や害虫を温湯により殺菌・殺虫処理するものであるが、その前の事前の準備が大切である。つまり、浸漬槽1内の温湯と、その浸漬槽1に浸漬する処理前のコンニャク種芋自体の熱は、当然、温度差があり、温度の高い温湯から温度の低いコンニャク種芋へと熱が伝わる。他方、本発明において、コンニャク種芋の温湯消毒は、ほぼ50℃に温度調節した温湯で所定時間(40〜50分間)浸漬するものであるので、処理作業の前に、この熱損失分を考慮した温湯を準備する必要がある。このような温湯の熱損失は、800Lの温湯に浸漬する場合、主にコンニャク種芋の浸漬量等に応じて変化するが、概ね1〜4℃(α℃)である。同様に浸漬する浸漬枠(多孔の合成樹脂ケースからなる収納籠含む)によっても熱損失は生じるが、概ね0.4℃(β℃)である。そこで、温湯処理作業開始前に、ヒータタンク20で加熱制御して浸漬槽1内に貯留する温湯の温度は、コンニャク種芋および浸漬枠(多孔の合成樹脂ケースからなる収納籠含む)等による温湯の熱損失分を考慮して、第1の制御盤23aの第1の温度設定部24aの設定温度を50+γ(γ=α+β)℃に設定し、温度調節機22により、浸漬槽1内の温湯温度は温湯消毒に必要な温度より少し高めに調節制御される。さらに、第2の制御盤23bの第2温度設定部24bで設定温度を温湯消毒に適した50℃に設定するとともに、タイマ手段30で浸漬時間(40〜50分間)を設定する。ここまでの処理操作が、本発明のコンニャク種芋温湯消毒処理の作業前に完了しておくべき処理操作である。
【0037】
この作業前の処理操作と並行して行うことは可能であるが、各収納籠10に温湯消毒するべきコンニャク種芋を収納し、その収納籠10を載置台12に積載した後、浸漬枠11の連結枠14間に架設したガイド部材16にフォーク式移動リフター(フォークリフトなど)FのフォークF1を差し入れ、フォーク式移動リフター(フォークリフトなど)Fによって浸漬枠11を吊り上げる。そして、フォーク式移動リフター(フォークリフトなど)Fで吊り上げた浸漬枠11を浸漬槽1まで搬送し、浸漬槽1の内部に浸漬枠11を降して浸漬槽1内の温湯にコンニャク種芋を浸漬させる(図6参照)。
【0038】
この時、フォーク式移動リフター(フォークリフトなど)Fの運転者は、浸漬枠11にフォークを挿すことにより浸漬枠11長辺の中心Hが運転席の前に来るので、浸漬枠11長辺の中心Hと、浸漬槽1内の有効スペースのセンターh1に立設するポール25とを目視で合わせることで、簡単に供給管4aを避けた浸漬槽1内の浸漬有効スペースのセンターh1に収納籠10を積載した浸漬枠11長辺の中心Hを合わせて浸漬させることができる。このように浸漬槽1内の浸漬有効スペースのセンターh1と、浸漬枠11長辺の中心Hとを合わせた状態で浸漬枠11を降ろすことができる。
【0039】
こうして浸漬槽1内に収納籠10を降ろして浸漬枠11の載置台12に積載した各収納籠10に収納したコンニャク種芋を浸漬槽1に浸漬すると、コンニャク種芋および浸漬枠(多孔の合成樹脂ケースからなる収納籠含む)によって温湯の温度が概ねγ℃奪われるが、フォーク式移動リフター(フォークリフトなど)Fの運転者が温湯消毒の動作スイッチ29を押すことで、第1の温度設定部24aで設定した50+γ℃の温度調節から第2温度設定部24bで設定した温湯消毒に適した50℃に切り替わる。これにより、ヒータタンク20により50℃に加熱調節した温湯が循環ポンプ5によって各吐出口4から噴射され、各吐出口4から噴射された温湯は浸漬槽1の一方の側壁1a両サイドから対向する他方の側壁1bに向い、かつ、側壁1bにぶつかって浸漬槽1の中央で合流する噴流Sが生じ、その噴流Sの合流部S1に位置する吸水口3から循環ポンプ5によって温湯が吸引され、循環ポンプ5によってヒータタンク20に還流され、ヒータタンク20により50℃に加熱調節した温湯を各吐出口4から噴射することで浸漬槽1の温湯は、温湯消毒に適した約50℃に調節制御される。また、温湯消毒の動作スイッチ29の押下により、タイマ手段30が温湯処理の所定時間(40〜50分)のカウントを開始する。これにより、浸漬槽1内の温湯温度が、コンニャク種芋の温湯消毒の適正温度である概ね50℃に制御され、その浸漬槽1内の温湯に各収納籠10に収納したコンニャク種芋を所定時間(40〜50分間)浸漬してコンニャク種芋に付いた病原菌や害虫を温湯により殺菌・殺虫処理する。このように、動作スイッチ29の押下に連動して温度制御に有効となる制御盤を切り替えることで、高温の設定のままで消毒処理を行う危険性を回避した。
【0040】
以上のように、温湯消毒処理前の事前準備作業として、温度調節機22により、第1の温度設定部24aで設定した温度に基づいて浸漬開始前の温湯を50+γ℃の温度に調節して循環させておき、浸漬時に、浸漬槽1内の温湯の温度がコンニャク種芋等によってγ℃程度熱を奪われたとしても、浸漬槽1内の温湯温度は概ね50℃を維持し、その後は、温度調節機22により、第2の温度設定部24bで設定した温度に基づいて温湯を50℃の温度に調節して循環させるので、タイマ手段30によって設定された所定時間(40〜50分間)コンニャク種芋の温湯消毒の適正温度である概ね50℃が達成される。したがって、浸漬槽1内の温湯を50℃となるように温度管理してコンニャク種芋の温湯殺菌・殺虫能力をより高度に保つことができる。温湯消毒開始後、タイマ手段30によって設定された所定時間(40〜50分間)が終了すると、ブザーとパトランプにより温湯消毒処理の終了が知らされるので、フォーク式移動リフター(フォークリフトなど)Fにより浸漬枠11を浸漬槽1から搬出して、再度、動作スイッチ29を押すと、第2の温度設定部24bで設定した温度(50℃)に基づいた温度制御から、第1の温度設定部24aで設定した温度(50+γ℃)に基づいて浸漬開始前の温湯制御に切り替えられる。本実施例のコンニャク種芋温湯消毒装置においては、温湯消毒温度(50℃)から、4℃程度上げて第1の温度設定部24aで設定した温度にまでするのには数分が必要となるが、場合によっては、直接、高温の温湯を追加供給することも考えられる。この場合には、図示していないが、給湯器を配置することによって解決可能である。
【0041】
また、温湯を吐出口4から噴射して温湯を循環する際、浸漬槽1内において噴流Sが生じ、その噴流Sによってコンニャク種芋に付着していた土砂やごみが洗い落とされるが、その噴流Sによって形成される長い噴流の流路中で浸漬槽1内に多くの土砂やごみが沈下して滞留することになる。また、本実施例においては、吸水口3が多数の孔6aを有する透水箱6で覆われており、その透水箱6の内部には、吸水口3を覆うフィルタ7が配置されているから、そのフィルタ7で土砂やごみを効果的に除去することができ、土砂やごみによる吸水口3の目詰まりを防止することができるとともに、吸水口3を通過した土砂やごみを循環ポンプ5で吸い込むといった心配もない。循環ポンプ5で各供給管4aから温湯を噴射することによって生じる噴流Sの合流部S1の下流側にフィルタ7を配置することにより、浸漬槽1内に滞留する土砂やごみの多くは浸漬槽1内に沈下し、フィルタ7においては微細なごみ等が効果的に除去することができる。
【0042】
また、浸漬槽1へ搬入及び搬出はフォーク式移動リフター(フォークリフトなど)Fを用いて簡単に行うことができ、走行クレーンなどの大規模な設備投資が不要となり、コスト削減が可能である。また、コンニャク種芋を収納した収納籠10を積載した浸漬枠11をフォーク式移動リフター(フォークリフトなど)Fで搬送する際、フォーク式移動リフター(フォークリフトなど)FのフォークF1を浸漬枠11に設けたガイド部材16に通して吊り上げることによって、フォーク式移動リフター(フォークリフトなど)Fで吊り上げた浸漬枠11の重心が偏ることなく、浸漬枠11の重心が安定した状態で吊り上げることができる。
【0043】
さらに、浸漬槽1の一方の側壁1aに沿って吐出口4を有する2本の供給管4aが配置しているため、構造上、浸漬槽1のセンターhと、浸漬槽1内の有効スペースのセンターh1とでずれが生じるが、浸漬槽1内の有効スペースのセンターh1に指標部となるポール25を立設することによって、フォーク式移動リフター(フォークリフトなど)Fの運転者は浸漬枠11長辺の中心Hと浸漬槽1内の有効スペースのセンターh1に立設するポール25とを目視で合わせることで、簡単に供給管4aを避けた浸漬槽1内の有効スペースのセンターh1に収納籠10を積載した浸漬枠11長辺の中心Hを合わせることができる。加えて、浸漬槽1の前側あるいは後ろ側にもポール25が取り付けられるように、ポール25は浸漬槽1に固定する取付板26の設けた一対の孔部27の一方に着脱自在に挿入されているから、使用環境によって、浸漬槽1の前側あるいは後ろ側の何れかに取付板26を取り付け、取付板26に設けた一対の孔部27の何れかにポール25を差し込むことによって浸漬槽1に指標部となるポール25を取り付けることができる。
【0044】
図9は、本発明の一実施例のコンニャク種芋温湯消毒装置において、8個の収納籠を載置した浸漬枠の浸漬状態を示す断面図である。浸漬枠11の支柱13,13には弾性ベルト35を引っ掛ける係止部36,36を上下に設けている。これは、収納籠10の数に対応して例えば2段積み(8個)した場合には、上方の係止部36,36を用いて弾性ベルト35を掛け渡し(当然のこと、奥に積載した収納籠10.10にも掛け渡す)、1段積み(4個)した場合には、下方の係止部36,36を用いて弾性ベルト35を掛け渡すことによって浸漬枠11に積載した収納籠10.10が崩れないようにすることができる。
【0045】
以上、本発明の一実施例について詳述したが、本発明は前記一実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施例が可能である。例えば、吸水口3や吐出口4の位置や配置や浸漬枠の構造などの温湯消毒装置の基本的構造は適宜選定すればよい。また、指標部としてポール25を設けた例を示したが、運転者に浸漬槽1内の有効スペースのセンターh1を示す構造であればよい。
【0046】
また、前記実施例では、第1の温度設定部24aで設定した温度(50+γ℃:浸漬開始前の温度設定)から、第2の温度設定部24bで設定した温度(50℃:温湯消毒温度)の切り替えを動作スイッチ29の押下によって制御する例を示したが、例えば、浸漬枠11の搬入・搬出をリミットスイッチなどの検知手段によって検知し、その検知手段からの信号に基づいて制御部31が温湯消毒時か準備段階かを、浸漬枠11の有無によって認識することによって、浸漬槽1の湯温の温度を準備段階の温度(50+γ℃)と温湯消毒温度の適正温度(50℃)とを交互に制御するように構成してもよい。
【0047】
さらに、処理対象としてコンニャク種芋を例にして説明したが、必ずしもコンニャク種芋に限定されるものではなく、例えば、種芋・球根・枝・根などの栄養体で繁殖させる農作物(いも類、スイセン、ラッキョウなど)、種子繁殖性の農作物(種籾、麦種子など)、収穫後の各種農産物の温湯殺菌・殺虫処理にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施例を示す浸漬槽の断面図である。
【図2】同上、浸漬槽の平面図である。
【図3】同上、浸漬槽を横方向から見た断面図である。
【図4】同上、収納籠を載置した浸漬枠の正面図である。
【図5】同上、収納籠を載置した浸漬枠の側面図である。
【図6】同上、フォーク式移動リフター(フォークリフトなど)を用いた積み込み状態を示す正面図である。
【図7】同上、加熱ユニットの正面図である。
【図8】同上、加熱ユニットのブロック図である。
【図9】同上、収納籠を載置した浸漬枠の浸漬状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 浸漬槽、1a 側壁、1b 側壁
2 加熱ユニット、3 吸水口、4 吐出口、5 循環ポンプ、7 フィルタ
10 収納籠、11 浸漬枠、12 載置台、13 支柱、14 連結枠
15 門型フレーム、16 ガイド部材、25 ポール(指標部)
20 ヒータタンク、21 ヒータ、22 温度調節機
24a 第1の温度設定部、24b 第2の温度設定部
29 動作スイッチ、30 タイマ手段、31 制御部
F フォーク式移動リフター(フォークリフトなど)、F1 フォーク
S 噴流、S1 合流部
H 浸漬枠長辺の中心、h1 浸漬槽の有効スペースのセンター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温湯を貯める長方形箱型の浸漬槽と、この浸漬槽内に温湯を循環させる吸水口及び吐出口と、この吸水口から取り入れた温湯を吐出口から噴射して前記浸漬槽内に温湯を循環させる循環ポンプと、前記吸水口から前記吐出口の間に配置された加熱ユニットとを設けており、前記吸水口から取り入れた温湯を前記加熱ユニットで加熱して前記吐出口から噴射することによって前記浸漬槽内の温湯温度を所定温度に調節し、温湯に所定時間浸漬してコンニャク種芋の病原菌や害虫を殺菌・殺虫処理するコンニャク種芋温湯消毒装置であり、温湯消毒処理をする泥付きのコンニャク種芋を収容する収容籠を複数備え、該複数の収容籠を積載してフォーク式移動リフター(フォークリフトなど)により前記浸漬槽内に搬入・搬出するための浸漬枠を備えたことを特徴とするコンニャク種芋温湯消毒装置。
【請求項2】
温湯を貯める長方形箱型の浸漬槽と、この浸漬槽内に温湯を循環させる吸水口及び吐出口と、この吸水口から取り入れた温湯を吐出口から噴射して前記浸漬槽内に温湯を循環させる循環ポンプと、前記吸水口から前記吐出口の間に配置された加熱ユニットとを設け、前記吸水口から取り入れた温湯を前記加熱ユニットで加熱して前記吐出口から噴射することによって前記浸漬槽内の温湯温度を所定温度に調節し、温湯に所定時間浸漬してコンニャク種芋を温湯消毒処理するコンニャク種芋温湯消毒装置であって、該コンニャク種芋温湯消毒装置は、泥付きのコンニャク種芋を収容する複数の収容籠と、該複数の収容籠を積載して前記浸漬槽内に搬入・搬出する浸漬枠とを備えており、
前記加熱ユニットは、加熱すべき水を収容するヒータタンクと、このヒータタンク内の水を加熱するヒータと、このヒータをオン・オフ制御する温度調節手段と、この温度調節手段を制御して前記ヒータタンク内の水温を調節制御する制御手段とで構成され、温度設定手段は、多段に温度設定することができるように少なくとも2つの温度設定部を設けるとともに、前記制御手段は、1つの温度設定部によって設定された設定温度による制御から他の温度設定部によって設定された設定温度による制御への切り替えを行う切り替え手段と所定時間を設定するタイマ手段とを設け、コンニャク種芋を収容した複数の収容籠を積載した前記浸漬枠が前記浸漬槽に搬入されるまでは、前記1つの温度設定部によって設定された設定温度による制御が行われ、該浸漬枠が搬入された際には、前記他の温度設定部によって設定された設定温度による制御へ切り替えられて、前記タイマ手段により設定された所定時間の温湯処理消毒が行われるようにしたことを特徴とするコンニャク種芋温湯消毒装置。
【請求項3】
前記1つの温度設定部によって設定される設定温度は、コンニャク種芋を収容した複数の収容籠を積載した前記浸漬枠が前記浸漬槽に搬入浸漬されることにより低下する温度を見込んだ温度として設定され、前記他の温度設定部によって設定される設定温度は、コンニャク種芋の温湯消毒のための適正温度が設定されたことを特徴とする請求項2記載のコンニャク種芋温湯消毒装置。
【請求項4】
温湯を貯める長方形箱型の浸漬槽と、この浸漬槽内に温湯を循環させる吸水口及び吐出口と、この吸水口から取り入れた温湯を吐出口から噴射して前記浸漬槽内に温湯を循環させる循環ポンプと、前記吸水口から前記吐出口の間に配置された加熱ユニットとを設け、前記吸水口から取り入れた温湯を前記加熱ユニットで加熱して前記吐出口から噴射することによって前記浸漬槽内の温湯温度を所定温度に調節し、温湯に所定時間浸漬してコンニャク種芋を温湯消毒処理するコンニャク種芋温湯消毒装置であって、該コンニャク種芋温湯消毒装置は、泥付きのコンニャク種芋を収容する複数の収容籠と、該複数の収容籠を積載して前記浸漬槽内に搬入・搬出する浸漬枠とを備えており、
前記加熱ユニットは、前記浸漬槽の長手方向に対向する側壁の一方の側壁の外壁に設けられ、前記温湯の吐出口は前記長手方向に対向する一方の側壁の内壁近傍に配置され、前記吸水口も前記長手方向に対向する一方の側壁の内壁近傍に配置されており、前記吐出口から前記長手方向に対向する他方の側壁に向って温湯を噴射して前記浸漬槽内に噴流を生じさせ、該噴流は前記長手方向に対向する他方の側壁により反転されて反転流を形成された後に前記吸水口に取り入れられて噴流の流路を長く形成し、その間にコンニャク種芋に付着していた土砂を沈下させ、さらに前記吸水口にはコンニャク種芋に付着していた土砂やごみを除去するフィルタを設けたことを特徴とするコンニャク種芋温湯消毒装置。
【請求項5】
前記加熱ユニットは、前記浸漬槽の長手方向に対向する側壁の一方の側壁の外壁に一対の加熱ユニットとして設けられ、前記温湯の吐出口は前記浸漬槽の長手方向に対向する一方の側壁の内壁近傍で且つ前記浸漬槽の短手方向に対向する側壁の内壁近傍に各々配置され、前記吸水口は前記長手方向に対向する一方の側壁の内壁近傍の中央部分に各々配置されており、前記各吐出口から前記長手方向に対向する他方の側壁に向って温湯を噴射して前記浸漬槽内に噴流を生じさせ、該噴流は前記長手方向に対向する他方の側壁により反転・合流されて反転流を形成された後に前記各吸水口に取り入れられて噴流の流路を長く形成し、その間にコンニャク種芋に付着していた土砂を沈下させ、さらに前記各吸水口にはコンニャク種芋に付着していた土砂やごみを除去する共通のフィルタを設けたことを特徴とする請求項4記載のコンニャク種芋温湯消毒装置。
【請求項6】
温湯を貯める長方形箱型の浸漬槽と、この浸漬槽内に温湯を循環させる吸水口及び吐出口と、この吸水口から取り入れた温湯を吐出口から噴射して前記浸漬槽内に温湯を循環させる循環ポンプと、前記吸水口から前記吐出口の間に配置された加熱ユニットとを設け、前記吸水口から取り入れた温湯を前記加熱ユニットで加熱して前記吐出口から噴射することによって前記浸漬槽内の温湯温度を所定温度に調節し、温湯に所定時間浸漬してコンニャク種芋を温湯消毒処理するコンニャク種芋温湯消毒装置であって、該コンニャク種芋温湯消毒装置は、泥付きのコンニャク種芋を収容する複数の収容籠と、該複数の収容籠を積載してフォーク式移動リフター(フォークリフトなど)により前記浸漬槽内に搬入・搬出する浸漬枠とを備えており、
前記複数の収納籠を積載する浸漬枠は、複数の収納籠を積載する載置台を備え、この載置台には、一対の支柱と各支柱の上端部に架設した連結枠とから成る門型フレームを構成するとともに、前記連結枠には、前記フォーク式移動リフター(フォークリフトなど)のフォークを挿通案内する一対のガイド部材を設けたことを特徴とするコンニャク種芋温湯消毒装置。
【請求項7】
前記複数の収納籠を積載した浸漬枠を、前記浸漬層の長手方向に対向する一方の側壁の内壁近傍に設けた前記吐出口を避けた前記浸漬槽内の有効スペースに搬入するべくガイドするための指標手段を設けたことを特徴とする請求項6記載のコンニャク種芋温湯消毒装置。
【請求項8】
前記指標手段を前記浸漬槽に着脱自在に設けたポールとして構成したことを特徴とする請求項7記載のコンニャク種芋温湯消毒装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−57459(P2010−57459A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229298(P2008−229298)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(591032703)群馬県 (144)
【出願人】(000132792)株式会社タイガーカワシマ (48)
【Fターム(参考)】