説明

コンバインの刈取搬送部

【課題】
コンバインにおいて、刈取搬送部に対する引起装置の着脱操作を容易化し、メンテナンス作業を迅速容易にする。
【解決手段】
上部引起伝動筒体(46)の下方にはスライド支持枠体(65)を左右方向に沿わせて設け、引起装置(61)をスライド支持枠体(65)にリンク(66b)を介して軸支して、リンク(66b)を後側に回動し引起装置(61)を前記スライド支持枠体(65)に近づけると、前記引起装置(61)が引起入力伝動軸(51)と駆動スプロケット(61c)とが接続されて動力伝動状態となり、リンク(66b)を前側に回動しスライド支持枠体(65)から引起装置(61)を前方へ離間させると、引起入力伝動軸(51)と駆動スプロケット(61c)とが離脱して非動力伝動状態となり、且つ、スライド支持枠体(65)に沿って左右へ移動可能状態となるべく構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインの刈取搬送部に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインの刈取搬送部に備えた穀稈引起装置において、引起駆動スプロケット、従動ローラ、引起タイン付きの無端チェン、前側蓋、裏蓋等を一つの穀稈引起ケースとしてユニット化し、引起ギヤケースに内蔵された引起側ベベルギヤのスプライン孔に引起駆動軸のスプライン部をスプライン嵌合し、穀稈引起ケースの裏側面上部と引起ギヤケースとを締結具で着脱自在に締結し、穀稈引起ケースのメンテナンスを容易にしたものは、公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−75031号公報(11〜12頁、図10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示す先行技術では、穀稈引起ケースと引起ギヤケースとを締結具で着脱自在に締結する構成であり、メンテナンス時に取り外した穀稈引起ケースを機体の周辺に安置し、メンテナンス作業が終了すると、穀稈引起ケースを持ってきて取り付ける構成である。従って、複数の引起ケースを取り外した場合には、引起ギヤケースに隣接する穀稈引起ケースの取付位置を確認しながら取り付けなければならず、取付作業が煩雑になりメンテナンス作業を迅速に実行できないという不具合があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような不具合を解消し、刈取搬送部に対する引起装置の着脱操作を容易化し、メンテナンス作業を迅速容易にしようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決するために次のような技術的手段を講じた。
請求項1記載の発明は、上部引起伝動軸(45)を内装する上部引起伝動筒体(46)を左右方向に架設し、該上部引起伝動軸(45)から駆動される複数の引起入力伝動軸(51)を設け、該引起入力伝動軸(51)から刈取搬送部(6)の前側に設けた複数の引起装置(61)を駆動する構成とし、該引起装置(61)の引起ケース(61a)側に軸受した駆動スプロケット(61c)を引起入力伝動軸(51)に対して前後方向に移動させることにより動力の遮断及び接続が可能な構成とし、前記上部引起伝動筒体(46)の下方にはスライド支持枠体(65)を左右方向に沿わせて設け、該スライド支持枠体(65)に移動体(66a)を左右方向に移動自在に支持し、該移動体(66a)に一端部を連結するリンク(66b)を備えた支持手段(66)を設け、該リンク(66b)の他端部に前記引起ケース(61a)の上部を軸支し、該リンク(66b)を後側に回動させて引起装置(61)を前記スライド支持枠体(65)に近づけると、前記引起装置(61)が刈取作業位置に移動して引起入力伝動軸(51)と駆動スプロケット(61c)とが接続されて動力伝動状態となり、一方、リンク(66b)を前側に回動させてスライド支持枠体(65)から引起装置(61)を前方へ離間させると、引起装置(61)がメンテナンス位置に移動して引起入力伝動軸(51)と駆動スプロケット(61c)とが離脱して非動力伝動状態となり、引起装置(61)をスライド支持枠体(65)に沿って左右へ移動可能な状態となる構成としたことを特徴とするコンバインの刈取搬送部とした。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記支持手段(66)のリンク(66b)を伸縮自在な構成としたことを特徴とする請求項1記載のコンバインの刈取搬送部とした。
請求項3記載の発明は、前記引起装置(61)を複数連結して支持手段(66)のリンク(66b)に支持させたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のコンバインの刈取搬送部とした。
【0008】
請求項4記載の発明は、前記引起装置(61)の駆動スプロケット(61c)に係合離脱自在のロック部材(76)を設け、該ロック部材(76)と一体のハンドル(76b)を引起装置(61)の前面に突出させて、前記駆動スプロケット(61c)にロック部材(76)を係合させた状態と、ハンドル(76b)を引起装置(61)の前面に沿う姿勢に切替えてロック部材(76)を駆動スプロケット(61c)から離脱させて該駆動スプロケット(61c)を回転可能とする状態とに切替可能な構成としたことを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載のコンバインの刈取搬送部とした。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、支持手段(66)のリンク(66b)の回動により引起装置(61)をスライド支持枠体(65)から離間すると、引起装置(61)を動力非伝達状態としたメンテナンス位置に移動させることができ、引起装置(61)をスライド支持枠体(65)に沿って左右へ移動させ、刈取搬送部(6)の前側部にメンテナンス空間を形成することができる。また、メンテナンス作業が終了すると、引起装置(61)をスライド支持枠体(65)に沿って左右方向中央へ移動させて刈取作業位置に戻すことができるので、メンテナンス作業を容易に行なうことができ、刈取作業の能率が高まる。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、支持手段(66)のリンク(66b)を伸縮させることで前側への突出長さを長くすることができるので、引起装置(61)を前側へ大きく離間した広いメンテナンス空間を形成することができる。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は請求項2記載の発明の効果に加えて、単一の支持手段(66)のリンク(66b)に複数の引起装置(61,61)を取り付けたので、この複数の引起装置(61,61)を刈取作業位置とメンテナンス位置に一挙に移動させることができ、メンテナンスを迅速に行なうことができる。
【0012】
請求項4記載の発明によれば、請求項1又は請求項2又は請求項3の発明の前記効果に加えて、引起装置(61)の駆動スプロケット(61c)にロック部材(76)を係合させてロック状態とすることにより、メンテナンス作業中の引起装置(61)の駆動スプロケット(61c)の回動を防止し、引起ラグ(61e)の位相のずれを防止し、また、メンテナンス作業後の引起入力伝動軸(51)と駆動スプロケット(61c)とを容易に係合させることができる。しかも、ロック部材(76)を駆動スプロケット(61c)に係合させるとハンドル(76b)が引起装置(61)の前方に突出した状態となり、引起装置(61)を容易にメンテナンス位置に移動できるとともに、ロック部材(76)の係合を解除した通常の刈取作業状態においては、ハンドル(76b)が引起装置(61)の前面に沿う姿勢となって穀稈搬送を妨げにくくなり、刈取作業を円滑に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】コンバインの側面図。
【図2】コンバインの平面図。
【図3】コンバインの正面図。
【図4】刈取搬送部の一部省略した側面図。
【図5】引起装置上部の側面図、平面図。
【図6】引起装置上部の側面図、平面図。
【図7】引起装置上部の側面図、平面図。
【図8】引起装置上部の斜視図、平面図。
【図9】刈取搬送部の一部省略した側面図。
【図10】引起装置上部の側面図、正面図。
【図11】刈取搬送部の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1乃至図3は、本発明を備えたコンバインを示すものであり、この走行車体1には、クローラ走行装置2,2を備え、後部左側に脱穀部3を搭載し、この脱穀部3の右側にグレンタンク4を搭載し、グレンタンク4の前側に操縦部5を設け、操縦部5及び脱穀部3の前方に刈取搬送部6を昇降自在に設けている。
【0015】
脱穀部3には、左側部に穀稈搬送用のフィードチェン10を備え、内部には図示省略したが、扱胴、排塵処理胴、二番処理胴を内装している上側の扱室部と、揺動選別棚、唐箕、一番受樋、二番受樋を備えている下側の選別室部とから構成している。前記フィードチェン10の終端側部に排稾搬送チェン(図示省略)の始端側を臨ませ、排稾搬送チェンで脱穀済みの排稾を排稾カッタ21に搬送し、排稾を裁断し圃場に放出するようにしている。
【0016】
前記グレンタンク4は、合成樹脂製の上部タンクと鉄板製の下部受樋とで構成し、内部に貯溜穀粒を機外へ排出する下部ラセンを備え、排出オーガ22を経て機外へ排出するようにしている。
【0017】
次に、図4及び図5に基づき刈取搬送部6について説明する。
脱穀部3の前側において走行車体1上に設けた刈取懸架台32の上端部に、後側刈取フレーム33の上側の基部を左右方向の刈取入力軸33a回りに上下回動自在に支持し、後側刈取フレーム33の前端部に下部伝動ケース34の左右中央部を取り付けている。
【0018】
後側刈取フレーム33は先端側と走行車体1との間に単動型の昇降シリンダ(図示省略)とバランススプリング(図示省略)を設けて、該バランススプリングにより上向き付勢し、昇降シリンダで上下回動させる構成としている。
【0019】
下部伝動ケース34から複数の分草パイプ35,…を前方へ延出し、前側端部に分草体35a,…を取り付けている。分草パイプ35,…の前後方向中間部に掻込搬送装置36の前側部を支持させて設け、分草パイプ35,…の前後方向中間部に刈刃装置37の左右両側部を支持させている。
【0020】
また、下部伝動ケース34の右側端部から右引起伝動軸42を内装する右引起伝動筒体43を立設し右引起伝動筒体43の上端部間に左右方向に沿った上部引起伝動軸45の内装されている上部引起伝動筒体46を架設し、右引起伝動軸42から上部引起伝動軸45に動力を伝達している。
【0021】
また、上部引起伝動筒46の上部引起伝動軸45から複数の引起伝動筒体52,…に内装する引起入力伝動軸51,…を下向きに分岐延出し、この引起入力伝動軸51,…から引起装置61,…に動力を伝達している。
【0022】
引起装置61,…は、引起ケース61aの上端部に入力軸61bと一体の駆動スプロケット61cを軸架し、引起ケース61aの下端部に従動ローラ61dを回転自在に軸架し、駆動スプロケット61c、従動ローラ61d、テンションスプロケット(図示省略)に多数の引起ラグ61e,…を軸支している引起チェン61fを巻き掛けて構成している。
【0023】
そして、引起入力伝動筒体52,…の前側端部に対して引起ケース61a,…側の入力軸62b,…を軸方向に挿入した状態でスプライン接合させて動力を伝動するように構成している。また、引起装置61,…の下部を分草パイプ35,…の前部に着脱自在に取り付けている。
【0024】
また、前記上部引起伝動筒体46の上方にはスライド支持枠体65を左右方向に沿うように支架し、刈取搬送部6の後側部から後上部フレーム33bを前側に延出しスライド支持枠体65を支持している。そして、スライド支持枠体65には支持手段66を介して引起装置61の引起ケース61aを支持し、引起ケース61aを後側に移動した取付状態としたり、前側へ移動した引起ケース61aをスライド支持枠体65の左右方向にスライド移動させ、刈取搬送部6の前側中央部を開放したりできるように構成している。
【0025】
引起ケース61aの取付状態においては、該引起ケース61aと引起入力伝動筒体52とをボルトやピンによって固定する。
支持手段66は、前記スライド支持枠体65に支持されていて左右方向に沿って移動自在の移動体66aと、移動体66aに上下方向の軸回りに回動自在に支持している基部リンク66b,先端リンク66cとで構成し、先端リンク66cの端部と引起ケース61aの上部を上下方向のピン66dで枢支連結している。
【0026】
しかして、基部リンク66bと先端リンク66cとを左右方向に沿うように後側に回動し、スライド枠体65の下方に収納状態にすると、引起装置61,…が取付位置に移動し、上部引起伝動筒体46に接近した動力伝達状態で支持される。また、基部リンク66bと先端リンク66cを前方へ突出するように回動し、引起装置61を前方のメンテナンス位置に移動させと動力非伝動状態となり、引起装置61をスライド支持枠体65に沿って左右両側に移動させることができ、刈取搬送部6の前側中央部を開放し、メンテナンスをすることができる。
【0027】
なお、引起装置61の引起ケース61aの上端前側部には、ハンドル79を設け、引起装置61の前方への開放回動を容易にしている。このハンドル79を前側に突出して設けるにあたっては、引起装置61の側方に補助引起装置を設けることを配慮し、干渉しない位置に設けることが望ましい。
【0028】
刈取搬送部6の上部の上部引起伝動筒体46及びスライド支持枠体65を左右方向幅広のカバー78で前側と上側を被覆している。このカバー78を側面視逆U字型に構成し、その後側下端部を左右方向の軸78a回りに回動自在に支持している。しかして、刈取作業中には下方に閉鎖回動してスライド支持枠体65を被覆し、スライド支持枠体65への水や塵埃類の付着を防止することができる。また、メンテナンス作業中はカバー78を上方へ開放回動し、引起装置61の前方への移動をできるようにしている。
【0029】
また、支持手段66を、図6に示すように構成してもよい。
即ち、単一のリンク66eで構成し、引起装置61を左右スライド自在で且つ前後に移動させるようにしたり(図6中のA)、複数の移動体66a,66aに複数のリンク66f,66gを連結し、リンク66f,66gを左右スライドさせることにより、引起装置61を左右移動自在で且つ前後に移動させるように構成してもよい(図6中のB)。
【0030】
また、前述の支持手段66の各実施例において、図7に示すように支持手段66のリンク66h,66iを、後側リンク66ha,66ia及び前側リンク66hb,66ibに分割構成し、伸縮を可能にすると、引起装置61を前後方向の任意の位置で移動することができ、メンテナンス作業が容易になる。
【0031】
また、中央部の隣接する引起装置61,61の引起ケース61a,61aの上部を連結し、複数の引起装置61,61を支持手段66で支持するように構成し、中央部の2条の引起装置61,61を一括してスライド支持枠体65で左右方向へ移動するように構成すると、メンテナンス空間を迅速に形成することができる。
【0032】
次に、図8について説明する。(A)、(B)は夫々引起装置61の要部斜視図と平面図である。
支持手段66を、スライド支持枠体65に支持されていて左右方向に沿って移動自在の移動体66aと、移動体66aに上下方向の軸回りに回動自在に支持している基部リンク66b,先端リンク66cとで構成している。そして、移動体66aの左右外側部にロックプレート72を取り付け、また、先端リンク66cの左右内側部にロックプレート72を設け、基部リンク66b,先端リンク66cをロックプレート72,72に当接させ引起装置61,61の左右移動位置を規制するようにしている。
【0033】
前記構成によると、支持手段66及び引起装置61を基部リンク66b及び先端リンク66cの端部に夫々形成した円周部66ba,66caをロックプレート72に摺接させながら前方に移動させるので引起装置61を任意の前後位置で保持できる。また、基部リンク66b及び先端リンク66cの平面部66bb,66cbがロックプレート72,72に当接する状態まで移動させると、引起装置61の移動位置を規制し、引起装置61を安定して移動させることができる。
【0034】
また、図6の実施例に前記ロックプレート72を組合わせることもできる。
次に、図9について説明する。引起装置61,…の下部後側部に左右方向の軸74a回りに回動自在な引起スタンド74、あるいは、伸縮調節可能な引起スタンド74を設けている。しかして、引起装置61,61の前方へ移動したメンテナンス位置で引起装置61の下側を地面や他の引起装置61前面に当接させて保持しながら、安全に刈取搬送部6のメンテナンス作業をすることができる。作業状態においては、引起スタンド74の先端側を上向き回動させて引起装置61の裏側に収納するので、穀稈搬送を妨げない。
【0035】
また、図10に示すように、引起装置61上部の入力軸61bと一体の駆動スプロケット61cの側方には、ハンドル76bと一体のロック部材76を回動軸76a回りに回動自在に設け、ハンドル76bを引起装置61の前方に起立させて駆動スプロケット61cの駆動爪部にロック部材76を係合しロック状態としたり(図15中のB)、また、ハンドル76bを引起装置61の前面に沿わせる姿勢として駆動スプロケット61cの駆動爪部からロック部材76を離脱し回転可能状態とするように構成している(図15中のA)。しかして、引起装置61のメンテナンス中の駆動スプロケット61cの回動を防止することで、引起ラグ61e,…のずれを防止し、また、引起伝動軸51と引起装置61の駆動スプロケット61cとの係合離脱を容易にすることができる。
【0036】
次に、図11に基づき刈取搬送部6の穀稈搬送構成について説明する。
刈取搬送部6には、前側から後側にかけて分草体35a、穀稈引起装置61、掻込搬送装置36、刈刃装置37、穀稈集送搬送装置38、穂先搬送装置39a及び根元搬送装置39bからなる穀稈搬送装置39を設け、穀稈搬送装置39の終端側を脱穀部3のフィードチェン10の始端側に接続している。
【0037】
また、前記穀稈搬送装置39の穂先搬送装置39aは後側上部に位置する単一構成とするが、根元搬送装置39bを前側根元搬送装置39baと後側根元搬送装置39bbとに分割構成している。そして、前側根元搬送装置39baの前側部を軸支して後側部を上下調節自在に構成し、また、穂先搬送装置39aと後側根元搬送装置39bbとをフレーム部39cに支架し、このフレーム部39cの後側下部を支点にして後側根元搬送装置39bb及び穂先搬送装置39aの前側部を上下調節自在に構成している。
【0038】
また、前側根元搬送装置39baの後側部を後側根元搬送装置39bbの前側部に連設して穀稈を引継ぎ搬送するようにし、前側根元搬送装置39baの前側部を支点にして後側部を上下調節可能に構成している。穀稈搬送装置39は、脱穀部3の前端近傍に設けた扱深さセンサ(図示省略)によって脱穀部3に挿入される穂先長さを調節すべく回動調節する。
【0039】
そして、前側根元搬送装置39ba及び後側根元搬送装置39bbを上下調節可能に構成するにあたり、前側根元搬送装置39baの上下回動調節範囲を大きくし、後側根元搬送装置39bbの上下回動調節範囲を小さくしている。
【0040】
前記構成によると、前側根元搬送装置39ba及び後側根元搬送装置39bbを上下調節しながら扱ぎ深さ調節をするが、前側根元搬送装置39baの上下回動調節範囲を大きくし、後側根元搬送装置39bbの上下回動調節範囲を小さくしているので、後側根元搬送装置39bbとフィードチェン10との回動調節角度を小さくすることができ、搬送穀稈をフィードチェン10に安定して引き継ぐことができる。
【0041】
また、後側根元搬送装置39bbを前側根元搬送装置39baよりもを側面視で上方に配置し、後側根元搬送装置39bbの始端側を前側根元搬送装置39baの終端側よりも前方へ突出するように構成し、扱ぎ深さ調節をしても前側根元搬送装置39baから後側根元搬送装置39bbへの搬送穀稈の途切れを防止し円滑に搬送できるようにしている。
【0042】
また、引起装置61の後側上部に穀稈長さ検出センサ40を設け、所定以上の長稈を検出するようにしている。そして、穀稈長さ検出センサ40が穀稈を検出していないときには、制御部(図示省略)からの扱ぎ深さ調節指令により、穀稈搬送装置39の穂先搬送装置39aが短い穀稈の穂先搬送位置から上方へは調節できないように構成している。また、穀稈長さ検出センサ40が長い穀稈を検出しているときには、制御部からの扱ぎ深さ調節指令により、穀稈搬送装置39の穂先搬送装置39aが長い穀稈の穂先搬送位置である上方へ調節できるようにしている。
【0043】
刈取作業の終了間際の畔際での刈取作業では、穀稈の刈取位置が安定せず、脱穀部3の扱室入口部の穀稈搬送状態を扱深さセンサ(図示省略)で検出し穀稈搬送装置39の扱ぎ深さ調節をする構成であると、穂先搬送装置39aが長い穀稈に対応するように浅い扱ぎ深さに調節されることがあり、穀稈搬送装置39からフィードチェン10への引継ぎが乱れることがある。
【0044】
しかし、前記構成によると、穀稈長さ検出センサ40が短い穀稈を検出している状態では、制御部からの扱ぎ深さ調節指令により、穀稈搬送装置39の穂先搬送装置39aが短い穀稈の穂先搬送位置から上方へは調節できないので、穀稈搬送装置39が短稈搬送状態を維持し、穀稈搬送装置39からフィードチェン10へ穀稈を円滑に引き継ぐことができる。
【0045】
また、後側根元搬送装置39bb及び前側根元搬送装置39baにポテンショメータ(図示省略)を設けて調節位置を検出し、前側根元搬送装置39ba及び後側根元搬送装置39bbを関連調節するにあたり、前側根元搬送装置39ba及び後側根元搬送装置39bbを側面視て互いに平行になるように扱ぎ深さ調節をする。そして、穂先搬送装置39aが最上端位置まで調節されたときにのみ前側根元搬送装置39baを後側根元搬送装置39bbよりも急傾斜に上側に調節し扱ぎ深さを深くするように構成してもよい。
【0046】
前記構成によると、穀稈の引継ぎ搬送時に穀稈の引き抜きを防止し円滑に搬送することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 走行車体
6 刈取搬送部
45 上部引起伝動軸
46 上部引起伝動筒体
51 引起入力伝動軸
61 引起装置
61a 引起ケース
61c 駆動スプロケット
65 スライド支持枠体
66 支持手段
66a 移動体
66b リンク
76 ロック部材
76b ハンドル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部引起伝動軸(45)を内装する上部引起伝動筒体(46)を左右方向に架設し、該上部引起伝動軸(45)から駆動される複数の引起入力伝動軸(51)を設け、該引起入力伝動軸(51)から刈取搬送部(6)の前側に設けた複数の引起装置(61)を駆動する構成とし、該引起装置(61)の引起ケース(61a)側に軸受した駆動スプロケット(61c)を引起入力伝動軸(51)に対して前後方向に移動させることにより動力の遮断及び接続が可能な構成とし、前記上部引起伝動筒体(46)の下方にはスライド支持枠体(65)を左右方向に沿わせて設け、該スライド支持枠体(65)に移動体(66a)を左右方向に移動自在に支持し、該移動体(66a)に一端部を連結するリンク(66b)を備えた支持手段(66)を設け、該リンク(66b)の他端部に前記引起ケース(61a)の上部を軸支し、該リンク(66b)を後側に回動させて引起装置(61)を前記スライド支持枠体(65)に近づけると、前記引起装置(61)が刈取作業位置に移動して引起入力伝動軸(51)と駆動スプロケット(61c)とが接続されて動力伝動状態となり、一方、リンク(66b)を前側に回動させてスライド支持枠体(65)から引起装置(61)を前方へ離間させると、引起装置(61)がメンテナンス位置に移動して引起入力伝動軸(51)と駆動スプロケット(61c)とが離脱して非動力伝動状態となり、引起装置(61)をスライド支持枠体(65)に沿って左右へ移動可能な状態となる構成としたことを特徴とするコンバインの刈取搬送部。
【請求項2】
前記支持手段(66)のリンク(66b)を伸縮自在な構成としたことを特徴とする請求項1記載のコンバインの刈取搬送部。
【請求項3】
前記引起装置(61)を複数連結して支持手段(66)のリンク(66b)に支持させたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のコンバインの刈取搬送部。
【請求項4】
前記引起装置(61)の駆動スプロケット(61c)に係合離脱自在のロック部材(76)を設け、該ロック部材(76)と一体のハンドル(76b)を引起装置(61)の前面に突出させて、前記駆動スプロケット(61c)にロック部材(76)を係合させた状態と、ハンドル(76b)を引起装置(61)の前面に沿う姿勢に切替えてロック部材(76)を駆動スプロケット(61c)から離脱させて該駆動スプロケット(61c)を回転可能とする状態とに切替可能な構成としたことを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載のコンバインの刈取搬送部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−29568(P2012−29568A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169090(P2010−169090)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】