コンバインの刈取穀稈搬送装置
【課題】刈取穀稈搬送装置の構成を工夫することで、穀稈量が少ない場合でも穀稈の取り込みが良好に行われて詰まり等が生じることなく、良好な穀稈の刈取収穫作業を続行出来るようにする。
【解決手段】刈取穀稈を左右一側前方から左右他側後方へ向けて挟持搬送する搬送装置(1)を、刈取穀稈の稈身の株元側を挟持して搬送する前側チェン(2)とこの前側チェン(2)よりも穂先側を挟持して搬送する後側チェン(3)とから構成する。そして、前側チェン(2)の後端部と後側チェン(3)の前端部とを連動させる支持部(4)を設ける。また、後側チェン(3)の前端部を巻き掛ける従動スプロケット(5)と前側チェン(2)の後端部を巻き掛ける駆動スプロケット(6)とを同一軸上に一体的に設けて前記支持部(4)を構成する。
【解決手段】刈取穀稈を左右一側前方から左右他側後方へ向けて挟持搬送する搬送装置(1)を、刈取穀稈の稈身の株元側を挟持して搬送する前側チェン(2)とこの前側チェン(2)よりも穂先側を挟持して搬送する後側チェン(3)とから構成する。そして、前側チェン(2)の後端部と後側チェン(3)の前端部とを連動させる支持部(4)を設ける。また、後側チェン(3)の前端部を巻き掛ける従動スプロケット(5)と前側チェン(2)の後端部を巻き掛ける駆動スプロケット(6)とを同一軸上に一体的に設けて前記支持部(4)を構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインに設ける刈取穀稈搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンバインの機体前部には、穀稈を引き起こす引起装置と、引き起こした穀稈の株元を刈り取る刈刃及び刈り取った穀稈の稈身を挟持して後方のフィードチェンへ送る搬送装置からなる刈取搬送装置を設けている。そして、多条刈りのコンバイン(例えば、六条刈りコンバイン)は、機体の右側で刈り取った穀稈を機体の左側部に設けるフィードチェン側へ送る右側搬送装置と左右中央で刈り取った穀稈を該右側搬送装置へ合流させる中央搬送装置と左側で刈り取った穀稈を右側搬送装置へ合流させる左側搬送装置とから構成している。右側搬送装置へ合流した穀稈はフィードチェンに引き継がれて穂先側を脱穀装置で脱穀されるのである。(例えば、特許文献1、2参照。)
【特許文献1】特開2006−223262号公報
【特許文献2】特開平8−308357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の従来技術では、機体の右前側で刈り取った穀稈の稈身株元側を挟持して左後方のフィードチェンへ送る右側搬送装置が機体を横切って右側から斜め左後方側へ一体的に設けられている。この右側搬送装置は、刈り取る穀稈の量が多い場合には穀稈を良く挟持して搬送するが、穀稈量が少ないと、右側の穀稈取り込み位置で稈身の挟持に失敗して停滞して詰まりを生じることが有った。
【0004】
そこで、本発明では、右側搬送装置の構成を工夫することで、穀稈量が少ない場合でも穀稈の取り込みが良好に行われて詰まり等が生じることなく、良好な穀稈の刈取収穫作業を続行出来るようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上述の如き課題を解決するために、以下のような技術的手段を講じる。
すなわち、請求項1記載の発明では、刈取穀稈を左右一側前方から左右他側後方へ向けて挟持搬送する搬送装置(1)を、刈取穀稈の稈身の株元側を挟持して搬送する前側チェン(2)とこの前側チェン(2)よりも穂先側を挟持して搬送する後側チェン(3)とから構成し、該前側チェン(2)の後端部と後側チェン(3)の前端部とを連動させる支持部(4)を設けたことを特徴とするコンバインの刈取穀稈搬送装置とした。
【0006】
この構成により、刈り取った穀稈の株元位置を前側チェン2でキャッチして搬送し、支持部4でこの刈取穀稈の稈身の中間部を挟持する後側チェン3に受け渡す。また、支持部4によって前側チェン2の後端部と後側チェン3の前端部とが連動されるため、該前側2と後側チェン3とを独立して駆動する構造を必要としない。
【0007】
また、請求項2記載の発明では、前記後側チェン(3)の前端部を巻き掛ける従動スプロケット(5)と前側チェン(2)の後端部を巻き掛ける駆動スプロケット(6)とを同一軸上に一体的に設けて前記支持部(4)を構成したことを特徴とする請求項1記載のコンバインの刈取穀稈搬送装置とした。
【0008】
この構成により、搬送装置1が前側チェン2と後側チェン3とに分割された構成であっても、後側チェン3から前側チェン2への駆動力の伝動がスムーズに行われて穀稈の挟持搬送が良好に行われる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によると、搬送装置1の挟持搬送開始位置で前側チェン3が穀稈の株元位置を挟持するので、少ない穀稈でも確実に挟持して搬送でき、穀稈の搬送を停滞させることが少なくなる。これによって、刈取速度の変動や畦際刈りによって刈取穀稈量が変動しても刈取作業を円滑に継続でき、刈取作業の能率が向上する。
【0010】
また、請求項2記載の発明によると、搬送装置1が前側チェン2と後側チェン3とに分割構成されていても、前側チェン2と後側チェン3を確実に駆動できて前側チェン2で挟持された穀稈が後側チェン3へ良好に引き継ぎ挟持されるので、搬送装置1に続く搬送チェンへの穀稈の搬送が円滑になり、コンバインによる刈取脱穀作業の能率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の実施例を図面を参照しながら説明する。なお、本説明で左右とは、機体の進行方向に向かって位置する側を言う。
図1は、コンバインの穀稈刈取搬送装置10の支持構造を示している。
【0012】
クローラ走行装置12を装着した機体フレーム11の前端に支持台13を立設し、この支持台13の上端に縦支持筒14を油圧シリンダ20で上下回動可能に支持している。
縦支持筒14の下端には左右方向へ延びる下部伝動筒15を設け、この下部伝動筒15の左右端部から斜め前上方へ側部伝動筒18と側部フレーム(図示省略)を立設し、この側部伝動筒18と側部フレームの上部を左右方向の上部伝動筒21により連結している。また、前記下部伝動筒15の左右所定間隔で前方へ向けて複数の取付杆16を固定し、該取付杆16の中間には左右方向に長い刈刃フレーム22を固定し、取付杆16の先端に斜め後上方へ向けて分草板17を固定する。左右側端の取付杆16,16を連結する逆U字状の横連結フレーム23を設け、この横連結フレーム23と前記上部伝動筒21との間に左右所定間隔を置いて引起装置19を設けている。
【0013】
さらに、下部伝動筒15から前上方へ掻込軸24を左右所定間隔で起立し、この掻込軸24の上部にラグ付掻込ベルト26と掻込スターホイル25を設けている。このラグ付掻込ベルト26と掻込スターホイル25の下側に位置する刈刃フレーム22にはバリカン式の刈刃装置を設けている。
【0014】
本穀稈刈取搬送装置10は、六条植の穀稈を一度に刈り取る構成で、図2に示す如く、右側から左側までラグ付掻込ベルト26と掻込スターホイル25を六セット設けて、それぞれ二セット分で2条の穀稈を刈り取るようにし、まず、右端側とその内側のラグ付掻込ベルト26,26と掻込スターホイル25,25により掻き込んで刈刃によって刈り取った穀稈が右側搬送装置1の右先端側で挟持されて左後方のフィードチェン側へ向けて搬送される。左右中央側のラグ付掻込ベルト26,26と掻込スターホイル25,25により掻き込んで刈刃によって刈り取った穀稈が中央搬送装置8で挟持されて右側搬送装置1の左終端近傍へ送られて右先端側で挟持されて搬送中の穀稈と合流し、左端側とその内側のラグ付掻込ベルト26,26と掻込スターホイル25,25により掻き込んで刈刃によって刈り取った穀稈が左側搬送装置9で挟持されて右側搬送装置1の終端部へ送られて搬送中の穀稈と合流する。
【0015】
右側搬送装置1は、下側に位置する前チェン(前側チェン)2と上側の後チェン(後側チェン)3を右端掻込スターホイル25の内側近傍に設ける中継支持部4で連係した構成で、図3に示す如く、中継支持部(支持部)4で前チェン2を巻き掛ける駆動スプロケット6と後チェン3を巻き掛ける従動スプロケット5が、掻込スターホイル25を支持するフレーム28から延ばしたアーム27の枢支軸29に取り付けた軸受30を挟み込んで一体的にボルト34で固定することで、従動スプロケット5と駆動スプロケット6に軸方向の力が加わっても強固で外れることがない。前チェン2のテンションローラ32,33も同フレーム28から延ばしたアーム31で支持している。前チェン2と後チェン3には挟把杆46を沿わせて設けて穀稈を挟持する。
【0016】
なお、中継支持部4の位置は、前チェン2の回動軌跡が左端掻込スターホイル25の回動軌跡と重なるようにしている。また、アーム27には、前チェン2と後チェン3に注油する注油ノズル68,69を取り付ける注油ステー67を固定している。
【0017】
後チェン3の駆動スプロケット7は、図4に示す如く、縦支持筒14の近傍に設け、後チェン3のテンションローラ36,37を支持するアーム38,39を取り付ける宙吊りフレーム35を縦支持筒14から後チェン3の上側を越して設けている。このため、藁屑等が宙吊りフレーム35に引っ掛かることが少ない。
【0018】
右端とその左内側のラグ付掻込ベルト26,26と掻込スターホイル25,25により掻き込む二条分の穀稈を右側搬送装置1を構成する前チェン2と後チェン3及び挟把杆46で挟持して搬送するのであるが、稈身の嵩が多くしっかりした株元部を下側の前チェン2で最初にキャッチするので、畦際刈取や低速刈取で刈り取る穀稈が少なくても挟持ミスが無く、軽快な刈取作業を続行出来る。
【0019】
中央搬送装置8は、左右中央で後チェン3に接近して設ける駆動スプロケット40と右から4番目の掻込スターホイル25と同軸に設けた従動スプロケット41との間に巻き掛けた搬送チェン42と挟把杆47で構成し、左右中央のラグ付掻込ベルト26,26と掻込スターホイル25,25により掻き込む二条分の穀稈を右側搬送装置1の終端近くへ挟持搬送し、後チェン3が搬送中の穀稈と合流する。
【0020】
左側搬送装置9は、左側で後チェン3の終端に接近して設ける駆動スプロケット43と最左側の掻込スターホイル25と同軸に設けた従動スプロケット44との間に巻き掛けた搬送チェン45と挟把杆48で構成し、左端側のラグ付掻込ベルト26,26と掻込スターホイル25,25により掻き込む二条分の穀稈を右側搬送装置1の終端へ挟持して搬送し、後チェン3が搬送中の穀稈と合流する。
【0021】
なお、穀稈の穂先側をフィードチェン側へ向けて搬送する穂先搬送装置は従来と変わりが無いので、説明を省略する。
図5は、前記右側搬送装置1で搬送した穀稈をフィードチェンへ引き渡す供給引継チェン50のテンション付与構成を示している。
【0022】
縦支持筒14の基部に設ける伝動ケース56から上方へ立ち上げる駆動軸60に固着の駆動スプロケット49と該駆動軸60に回動可能に支持するフレーム58に固定の従動スプロケット59に供給引継チェン50を巻き掛け、テンションスプロケット51,52で該供給引継チェン50を張っている。テンションスプロケット51はフレーム58に固定で、テンションスプロケット52は、フレーム58のアーム部53とテンションスプロケット52の枢支アーム62との間に設ける引張スプリング61で供給引継チェン50を張っている。そして、フレーム58の係合長孔54を引起しフレーム63から突出する係合杆55に係合させて、刈取搬送部66を機体フレーム11に対して左右に移動させた場合にフレーム58が同時に左右揺動するようにしている。このようにフレーム58のアーム部53と枢支アーム62との間でテンションスプロケット52に引っ張り力を作用させて供給引継チェン50を張っているので、刈取搬送部66の左右移動が供給引継チェン50のテンション付与に影響することがない。57は、機体フレーム11側からの動力を受ける入力プーリである。
【0023】
図6は、供給引継チェン50のテンション付与構成の別実施例を示している。テンションスプロケット51と従動スプロケット59を枢支しているフレーム58が刈取搬送部66の左右移動に連動している構成は前記と同じであるが、テンションスプロケット52の枢支アーム62を引っ張る引張スプリング65の取付位置を伝動ケース56に設けるブラケット64に取り付けている構成が異なっている。引張スプリング65の引き方向は、刈取搬送部66を左右に移動すると、駆動軸60に対して支点越えの状態になる。この構成で、刈取搬送部66の左右移動時の供給引継チェン50の位置決めが安定する。
【0024】
図7、図8は、刈取搬送部66を覆う刈取ケース70の上面でコンバインの操縦席から操作可能な位置に取り付けた各種操作レバーを示している。
注油レバー71は、左右に揺動することで注油ポンプ75を駆動して前記注油ノズル68,69等からオイルをチェンに供給する。
【0025】
変速レバー72は左右に傾けて刈刃の駆動速度や引起装置19の引起し速度を高・低に切換える。
分草レバー73は、前後に回動することで最右端分草板17Rを内外へ傾けて、畦際の刈取時に外側へ傾けて穀稈を広く取り込む。
【0026】
ナローガイドレバー74は、横で上下に回動して、機体の左側に設けるナローガイド76の後方に向かう傾きを変更する。ナローガイドレバー74とナローガイド76は、ワイヤ82と伸ばすと固定するリンク77で連結し、ナローガイドレバー74をガイドケース78のガイド溝79に沿って回動し、上側の係止溝80に係止するとナローガイド76が機体に沿った位置になり下側の係止溝81に係止するとナローガイド76が外側へ開いた状態になる。ナローガイドレバー74を勢いよく押し下げられるようにまた、ワイヤ82の伸びに対応するように下側の係止溝81の幅をレバーの幅よりも広くしている。
【0027】
これらの注油レバー71と変速レバー72と分草レバー73とナローガイドレバー74は、互いに干渉しないように集中配置し、刈取搬送部66を上昇させた時に操縦席のオペレータに接近し過ぎないようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】コンバインの一部側面図
【図2】コンバインの一部平面図
【図3】コンバインの一部拡大平面図
【図4】コンバインの一部平面図
【図5】コンバインの一部拡大平面図
【図6】別実施例を示すコンバインの一部平面図
【図7】コンバインの一部拡大側面図
【図8】コンバインの一部拡大背面図
【図9】一部の拡大平面図
【図10】一部の拡大平面図
【図11】一部の拡大側面図
【符号の説明】
【0029】
1 右側搬送装置
2 前チェン(前側チェン)
3 後チェン(後側チェン)
4 中継支持部(支持部)
5 従動スプロケット
6 駆動スプロケット
7 駆動スプロケット
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインに設ける刈取穀稈搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンバインの機体前部には、穀稈を引き起こす引起装置と、引き起こした穀稈の株元を刈り取る刈刃及び刈り取った穀稈の稈身を挟持して後方のフィードチェンへ送る搬送装置からなる刈取搬送装置を設けている。そして、多条刈りのコンバイン(例えば、六条刈りコンバイン)は、機体の右側で刈り取った穀稈を機体の左側部に設けるフィードチェン側へ送る右側搬送装置と左右中央で刈り取った穀稈を該右側搬送装置へ合流させる中央搬送装置と左側で刈り取った穀稈を右側搬送装置へ合流させる左側搬送装置とから構成している。右側搬送装置へ合流した穀稈はフィードチェンに引き継がれて穂先側を脱穀装置で脱穀されるのである。(例えば、特許文献1、2参照。)
【特許文献1】特開2006−223262号公報
【特許文献2】特開平8−308357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の従来技術では、機体の右前側で刈り取った穀稈の稈身株元側を挟持して左後方のフィードチェンへ送る右側搬送装置が機体を横切って右側から斜め左後方側へ一体的に設けられている。この右側搬送装置は、刈り取る穀稈の量が多い場合には穀稈を良く挟持して搬送するが、穀稈量が少ないと、右側の穀稈取り込み位置で稈身の挟持に失敗して停滞して詰まりを生じることが有った。
【0004】
そこで、本発明では、右側搬送装置の構成を工夫することで、穀稈量が少ない場合でも穀稈の取り込みが良好に行われて詰まり等が生じることなく、良好な穀稈の刈取収穫作業を続行出来るようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上述の如き課題を解決するために、以下のような技術的手段を講じる。
すなわち、請求項1記載の発明では、刈取穀稈を左右一側前方から左右他側後方へ向けて挟持搬送する搬送装置(1)を、刈取穀稈の稈身の株元側を挟持して搬送する前側チェン(2)とこの前側チェン(2)よりも穂先側を挟持して搬送する後側チェン(3)とから構成し、該前側チェン(2)の後端部と後側チェン(3)の前端部とを連動させる支持部(4)を設けたことを特徴とするコンバインの刈取穀稈搬送装置とした。
【0006】
この構成により、刈り取った穀稈の株元位置を前側チェン2でキャッチして搬送し、支持部4でこの刈取穀稈の稈身の中間部を挟持する後側チェン3に受け渡す。また、支持部4によって前側チェン2の後端部と後側チェン3の前端部とが連動されるため、該前側2と後側チェン3とを独立して駆動する構造を必要としない。
【0007】
また、請求項2記載の発明では、前記後側チェン(3)の前端部を巻き掛ける従動スプロケット(5)と前側チェン(2)の後端部を巻き掛ける駆動スプロケット(6)とを同一軸上に一体的に設けて前記支持部(4)を構成したことを特徴とする請求項1記載のコンバインの刈取穀稈搬送装置とした。
【0008】
この構成により、搬送装置1が前側チェン2と後側チェン3とに分割された構成であっても、後側チェン3から前側チェン2への駆動力の伝動がスムーズに行われて穀稈の挟持搬送が良好に行われる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によると、搬送装置1の挟持搬送開始位置で前側チェン3が穀稈の株元位置を挟持するので、少ない穀稈でも確実に挟持して搬送でき、穀稈の搬送を停滞させることが少なくなる。これによって、刈取速度の変動や畦際刈りによって刈取穀稈量が変動しても刈取作業を円滑に継続でき、刈取作業の能率が向上する。
【0010】
また、請求項2記載の発明によると、搬送装置1が前側チェン2と後側チェン3とに分割構成されていても、前側チェン2と後側チェン3を確実に駆動できて前側チェン2で挟持された穀稈が後側チェン3へ良好に引き継ぎ挟持されるので、搬送装置1に続く搬送チェンへの穀稈の搬送が円滑になり、コンバインによる刈取脱穀作業の能率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の実施例を図面を参照しながら説明する。なお、本説明で左右とは、機体の進行方向に向かって位置する側を言う。
図1は、コンバインの穀稈刈取搬送装置10の支持構造を示している。
【0012】
クローラ走行装置12を装着した機体フレーム11の前端に支持台13を立設し、この支持台13の上端に縦支持筒14を油圧シリンダ20で上下回動可能に支持している。
縦支持筒14の下端には左右方向へ延びる下部伝動筒15を設け、この下部伝動筒15の左右端部から斜め前上方へ側部伝動筒18と側部フレーム(図示省略)を立設し、この側部伝動筒18と側部フレームの上部を左右方向の上部伝動筒21により連結している。また、前記下部伝動筒15の左右所定間隔で前方へ向けて複数の取付杆16を固定し、該取付杆16の中間には左右方向に長い刈刃フレーム22を固定し、取付杆16の先端に斜め後上方へ向けて分草板17を固定する。左右側端の取付杆16,16を連結する逆U字状の横連結フレーム23を設け、この横連結フレーム23と前記上部伝動筒21との間に左右所定間隔を置いて引起装置19を設けている。
【0013】
さらに、下部伝動筒15から前上方へ掻込軸24を左右所定間隔で起立し、この掻込軸24の上部にラグ付掻込ベルト26と掻込スターホイル25を設けている。このラグ付掻込ベルト26と掻込スターホイル25の下側に位置する刈刃フレーム22にはバリカン式の刈刃装置を設けている。
【0014】
本穀稈刈取搬送装置10は、六条植の穀稈を一度に刈り取る構成で、図2に示す如く、右側から左側までラグ付掻込ベルト26と掻込スターホイル25を六セット設けて、それぞれ二セット分で2条の穀稈を刈り取るようにし、まず、右端側とその内側のラグ付掻込ベルト26,26と掻込スターホイル25,25により掻き込んで刈刃によって刈り取った穀稈が右側搬送装置1の右先端側で挟持されて左後方のフィードチェン側へ向けて搬送される。左右中央側のラグ付掻込ベルト26,26と掻込スターホイル25,25により掻き込んで刈刃によって刈り取った穀稈が中央搬送装置8で挟持されて右側搬送装置1の左終端近傍へ送られて右先端側で挟持されて搬送中の穀稈と合流し、左端側とその内側のラグ付掻込ベルト26,26と掻込スターホイル25,25により掻き込んで刈刃によって刈り取った穀稈が左側搬送装置9で挟持されて右側搬送装置1の終端部へ送られて搬送中の穀稈と合流する。
【0015】
右側搬送装置1は、下側に位置する前チェン(前側チェン)2と上側の後チェン(後側チェン)3を右端掻込スターホイル25の内側近傍に設ける中継支持部4で連係した構成で、図3に示す如く、中継支持部(支持部)4で前チェン2を巻き掛ける駆動スプロケット6と後チェン3を巻き掛ける従動スプロケット5が、掻込スターホイル25を支持するフレーム28から延ばしたアーム27の枢支軸29に取り付けた軸受30を挟み込んで一体的にボルト34で固定することで、従動スプロケット5と駆動スプロケット6に軸方向の力が加わっても強固で外れることがない。前チェン2のテンションローラ32,33も同フレーム28から延ばしたアーム31で支持している。前チェン2と後チェン3には挟把杆46を沿わせて設けて穀稈を挟持する。
【0016】
なお、中継支持部4の位置は、前チェン2の回動軌跡が左端掻込スターホイル25の回動軌跡と重なるようにしている。また、アーム27には、前チェン2と後チェン3に注油する注油ノズル68,69を取り付ける注油ステー67を固定している。
【0017】
後チェン3の駆動スプロケット7は、図4に示す如く、縦支持筒14の近傍に設け、後チェン3のテンションローラ36,37を支持するアーム38,39を取り付ける宙吊りフレーム35を縦支持筒14から後チェン3の上側を越して設けている。このため、藁屑等が宙吊りフレーム35に引っ掛かることが少ない。
【0018】
右端とその左内側のラグ付掻込ベルト26,26と掻込スターホイル25,25により掻き込む二条分の穀稈を右側搬送装置1を構成する前チェン2と後チェン3及び挟把杆46で挟持して搬送するのであるが、稈身の嵩が多くしっかりした株元部を下側の前チェン2で最初にキャッチするので、畦際刈取や低速刈取で刈り取る穀稈が少なくても挟持ミスが無く、軽快な刈取作業を続行出来る。
【0019】
中央搬送装置8は、左右中央で後チェン3に接近して設ける駆動スプロケット40と右から4番目の掻込スターホイル25と同軸に設けた従動スプロケット41との間に巻き掛けた搬送チェン42と挟把杆47で構成し、左右中央のラグ付掻込ベルト26,26と掻込スターホイル25,25により掻き込む二条分の穀稈を右側搬送装置1の終端近くへ挟持搬送し、後チェン3が搬送中の穀稈と合流する。
【0020】
左側搬送装置9は、左側で後チェン3の終端に接近して設ける駆動スプロケット43と最左側の掻込スターホイル25と同軸に設けた従動スプロケット44との間に巻き掛けた搬送チェン45と挟把杆48で構成し、左端側のラグ付掻込ベルト26,26と掻込スターホイル25,25により掻き込む二条分の穀稈を右側搬送装置1の終端へ挟持して搬送し、後チェン3が搬送中の穀稈と合流する。
【0021】
なお、穀稈の穂先側をフィードチェン側へ向けて搬送する穂先搬送装置は従来と変わりが無いので、説明を省略する。
図5は、前記右側搬送装置1で搬送した穀稈をフィードチェンへ引き渡す供給引継チェン50のテンション付与構成を示している。
【0022】
縦支持筒14の基部に設ける伝動ケース56から上方へ立ち上げる駆動軸60に固着の駆動スプロケット49と該駆動軸60に回動可能に支持するフレーム58に固定の従動スプロケット59に供給引継チェン50を巻き掛け、テンションスプロケット51,52で該供給引継チェン50を張っている。テンションスプロケット51はフレーム58に固定で、テンションスプロケット52は、フレーム58のアーム部53とテンションスプロケット52の枢支アーム62との間に設ける引張スプリング61で供給引継チェン50を張っている。そして、フレーム58の係合長孔54を引起しフレーム63から突出する係合杆55に係合させて、刈取搬送部66を機体フレーム11に対して左右に移動させた場合にフレーム58が同時に左右揺動するようにしている。このようにフレーム58のアーム部53と枢支アーム62との間でテンションスプロケット52に引っ張り力を作用させて供給引継チェン50を張っているので、刈取搬送部66の左右移動が供給引継チェン50のテンション付与に影響することがない。57は、機体フレーム11側からの動力を受ける入力プーリである。
【0023】
図6は、供給引継チェン50のテンション付与構成の別実施例を示している。テンションスプロケット51と従動スプロケット59を枢支しているフレーム58が刈取搬送部66の左右移動に連動している構成は前記と同じであるが、テンションスプロケット52の枢支アーム62を引っ張る引張スプリング65の取付位置を伝動ケース56に設けるブラケット64に取り付けている構成が異なっている。引張スプリング65の引き方向は、刈取搬送部66を左右に移動すると、駆動軸60に対して支点越えの状態になる。この構成で、刈取搬送部66の左右移動時の供給引継チェン50の位置決めが安定する。
【0024】
図7、図8は、刈取搬送部66を覆う刈取ケース70の上面でコンバインの操縦席から操作可能な位置に取り付けた各種操作レバーを示している。
注油レバー71は、左右に揺動することで注油ポンプ75を駆動して前記注油ノズル68,69等からオイルをチェンに供給する。
【0025】
変速レバー72は左右に傾けて刈刃の駆動速度や引起装置19の引起し速度を高・低に切換える。
分草レバー73は、前後に回動することで最右端分草板17Rを内外へ傾けて、畦際の刈取時に外側へ傾けて穀稈を広く取り込む。
【0026】
ナローガイドレバー74は、横で上下に回動して、機体の左側に設けるナローガイド76の後方に向かう傾きを変更する。ナローガイドレバー74とナローガイド76は、ワイヤ82と伸ばすと固定するリンク77で連結し、ナローガイドレバー74をガイドケース78のガイド溝79に沿って回動し、上側の係止溝80に係止するとナローガイド76が機体に沿った位置になり下側の係止溝81に係止するとナローガイド76が外側へ開いた状態になる。ナローガイドレバー74を勢いよく押し下げられるようにまた、ワイヤ82の伸びに対応するように下側の係止溝81の幅をレバーの幅よりも広くしている。
【0027】
これらの注油レバー71と変速レバー72と分草レバー73とナローガイドレバー74は、互いに干渉しないように集中配置し、刈取搬送部66を上昇させた時に操縦席のオペレータに接近し過ぎないようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】コンバインの一部側面図
【図2】コンバインの一部平面図
【図3】コンバインの一部拡大平面図
【図4】コンバインの一部平面図
【図5】コンバインの一部拡大平面図
【図6】別実施例を示すコンバインの一部平面図
【図7】コンバインの一部拡大側面図
【図8】コンバインの一部拡大背面図
【図9】一部の拡大平面図
【図10】一部の拡大平面図
【図11】一部の拡大側面図
【符号の説明】
【0029】
1 右側搬送装置
2 前チェン(前側チェン)
3 後チェン(後側チェン)
4 中継支持部(支持部)
5 従動スプロケット
6 駆動スプロケット
7 駆動スプロケット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取穀稈を左右一側前方から左右他側後方へ向けて挟持搬送する搬送装置(1)を、刈取穀稈の稈身の株元側を挟持して搬送する前側チェン(2)とこの前側チェン(2)よりも穂先側を挟持して搬送する後側チェン(3)とから構成し、該前側チェン(2)の後端部と後側チェン(3)の前端部とを連動させる支持部(4)を設けたことを特徴とするコンバインの刈取穀稈搬送装置。
【請求項2】
前記後側チェン(3)の前端部を巻き掛ける従動スプロケット(5)と前側チェン(2)の後端部を巻き掛ける駆動スプロケット(6)とを同一軸上に一体的に設けて前記支持部(4)を構成したことを特徴とする請求項1記載のコンバインの刈取穀稈搬送装置。
【請求項1】
刈取穀稈を左右一側前方から左右他側後方へ向けて挟持搬送する搬送装置(1)を、刈取穀稈の稈身の株元側を挟持して搬送する前側チェン(2)とこの前側チェン(2)よりも穂先側を挟持して搬送する後側チェン(3)とから構成し、該前側チェン(2)の後端部と後側チェン(3)の前端部とを連動させる支持部(4)を設けたことを特徴とするコンバインの刈取穀稈搬送装置。
【請求項2】
前記後側チェン(3)の前端部を巻き掛ける従動スプロケット(5)と前側チェン(2)の後端部を巻き掛ける駆動スプロケット(6)とを同一軸上に一体的に設けて前記支持部(4)を構成したことを特徴とする請求項1記載のコンバインの刈取穀稈搬送装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−55826(P2009−55826A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−225292(P2007−225292)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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