説明

コンバインの刈取部

【課題】搬送装置により搬送中の各条分の穀稈が合流する合流部近傍の構造を簡素化して、この合流部近傍での穀稈の詰まりを抑制することができるコンバインの刈取部を提供することを目的とする。
【解決手段】右側2条分の穀稈171・172を掻き込む第一掻込装置110と、左右中央側3条分のうち片側1条分の穀稈173を掻き込む第二掻込装置120と、左右中央側3条分のうち残り2条分の穀稈174・175を掻き込む第三掻込装置130と、左側2条分の穀稈176・177を掻き込む第四掻込装置140と、前記第二掻込装置120で掻き込まれた穀稈173の穂先を搬送する第二上部搬送装置320と、を備え、前記第二掻込装置120の単一の掻込輪121と、前記第三掻込装置130の掻込輪のうち単一の掻込輪と隣り合う掻込輪131とを噛合し、動力を第二上部搬送装置320に前記第三掻込装置130から前記第二掻込装置120を介して伝達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの刈取部に関し、詳細には、刈取部の穂先搬送装置への動力伝達構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、7条刈りのコンバインの刈取部に関する技術は公知となっている。このような7条刈りのコンバインの刈取部は、例えば、特許文献1に示すように、2条分の穀稈を掻き込む掻込装置を左右方向に三つ並設し、1条分の穀稈を掻き込む掻込装置を左右中央側掻込装置と右側掻込装置との間に配設している。また、この刈取部は、2条分の穀稈の株元側を搬送する下部搬送装置(根元搬送チェン)を左右方向に三つ並設し、1条分の穀稈の株元側を搬送する下部搬送装置を左右中央側の下部搬送装置と右側の下部搬送装置との間に配設している。また、この刈取部は、2条分の穀稈の穂先側を搬送する上部搬送装置(穂先搬送ラグ)を左右方向に三つ並設し、1条分の穀稈の穂先側を搬送する上部搬送装置を左右中央側の上部搬送装置と右側の上部搬送装置との間に配設している。
【0003】
そして、刈取部は、コンバインに搭載されたエンジンの動力が1条分の穀稈の穂先側を搬送する上部搬送装置には伝動軸等を含む伝動装置を介して伝達されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−153436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示すようなコンバインの刈取部においては、前記伝動装置は、1条分の穀稈を搬送する上部搬送装置及び下部搬送装置の後方に設けられるため、各上部搬送装置及び各下部搬送装置の搬送終端部近傍、すなわち、搬送装置により搬送中の各条分の穀稈が合流する合流部近傍における構造が複雑となった。これにより、前記伝動装置を含む周辺部品に搬送中の穀稈が引っ掛かり、この合流部で穀稈が詰まり易いという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の如き課題を鑑みてなされたものであり、搬送装置により搬送中の穀稈が合流する合流部近傍の構造を簡素化して、この合流部近傍での穀稈の詰まりを抑制するコンバインの刈取部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
請求項1においては、引起装置と、掻込装置と、切断装置と、搬送装置とを備えるコンバインの刈取部において、前記掻込装置は、左右一対の掻込輪及び掻込ベルトで右側2条分の穀稈を掻き込む第一掻込装置と、単一の掻込輪及び掻込ベルトで左右中央側3条分のうち片側1条分の穀稈を掻き込む第二掻込装置と、左右一対の掻込輪及び掻込ベルトで左右中央側3条分のうち残り2条分の穀稈を掻き込む第三掻込装置と、左右一対の掻込輪及び掻込ベルトで左側2条分の穀稈を掻き込む第四掻込装置と、を備え、前記第二掻込装置の単一の掻込輪と、前記第三掻込装置の掻込輪のうち前記単一の掻込輪と隣り合う掻込輪とを噛合し、前記搬送装置は、前記第一掻込装置で掻き込まれた穀稈の穂先を搬送する第一上部搬送装置と、前記第二掻込装置で掻き込まれた穀稈の穂先を搬送する第二上部搬送装置と、前記第三掻込装置で掻き込まれた穀稈の穂先を搬送する第三上部搬送装置と、前記第四掻込装置で掻き込まれた穀稈の穂先を搬送する第四上部搬送装置と、を備え、動力を前記第二上部搬送装置に前記第三掻込装置から前記第二掻込装置を介して伝達するものである。
【0009】
請求項2においては、前記掻込装置は、前記第二掻込装置の単一の掻込輪と、この単一の掻込輪と噛合する前記第三掻込装置の掻込輪との厚みを、他の前記掻込輪の厚みよりも厚く設定するものである。
【0010】
請求項3においては、前記掻込装置は、前記第二掻込装置の単一の掻込輪及び前記第三掻込装置の左右一対の掻込輪を、前記第一掻込装置の左右一対の掻込輪及び前記第四掻込装置の左右一対の掻込輪よりも高い位置に配置するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1においては、第二上部搬送装置への動力伝達構造が第二掻込装置の上方に設けられることとなる。したがって、搬送装置により搬送中の各条分の穀稈が合流する合流部近傍の構造を簡素化して、この合流部近傍での穀稈の詰まりを抑制することができる。
【0013】
請求項2においては、第二掻込装置の単一の掻込輪と、第三掻込装置の掻込輪との噛合が外れにくくなる。したがって、動力を第三掻込装置の掻込輪から第二掻込装置の単一の掻込輪へ確実に伝達することができ、ひいては第二上部搬送装置に第三掻込装置から第二掻込装置を介して確実に伝達することができる。
【0014】
請求項3においては、第二掻込装置の単一の掻込輪及び前記第三掻込装置の左右一対の掻込輪と、第一掻込装置の左右一対の掻込輪との干渉を避けて、互いの間隔を狭めることが可能となる。また、第二掻込装置の単一の掻込輪及び前記第三掻込装置の左右一対の掻込輪と、第四掻込装置の左右一対の掻込輪との干渉を避けて、互いの間隔を狭めることができる。したがって、刈取部をコンパクトに構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】コンバインの全体側面図。
【図2】刈取部の側面図。
【図3】刈取部の下部搬送装置を示す平面図。
【図4】刈取部の上部搬送装置を示す平面図。
【図5】刈取部の動力伝達構造を示す図。
【図6】刈取部の一部断面側面図。
【図7】第二掻込装置及び第三掻込装置の近傍を示す平面図。
【図8】第二掻込装置の掻込輪及び第三掻込装置の掻込輪を示す図。
【図9】第二掻込装置及び第二上部搬送装置を示す一部断面平面図。
【図10】第二掻込装置及び第二上部搬送装置を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0017】
まず、本発明の一実施形態に係る7条刈りコンバイン1の全体構成について説明する。
【0018】
図1に示すように、コンバイン1においては、走行部2が左右一対の走行クローラ3によって支持されている。圃場の穀稈を刈り取りながら取り込む刈取部4が、走行部2の前部に昇降調節可能に装着されている。刈取部4により刈り取られた穀稈を脱穀する脱穀部5が、走行部2の左上部に配設されている。脱穀部5により脱穀された処理物を選別する選別部6が、走行部2の左下部に配設されている。選別部6により選別された穀粒を貯留する穀粒タンク7が、走行部2の右部に配設されている。穀粒タンク7に貯溜された穀粒を外部へ排出する排出オーガ8が、走行部2の右後部に配設されている。そして、前記各部を操作する運転部9が、走行部2の右前部に配設されている。
【0019】
次に、刈取部4の構成について詳細に説明する。
【0020】
図2に示すように、刈取部4は、刈取フレーム10と、分草具30と、引起装置40と、掻込装置100と、切断装置50と、搬送装置60とを備える。
【0021】
刈取フレーム10は、分草具30や前記各装置を支持するものである。刈取フレーム10は、刈取入力パイプ11と、縦伝動パイプ12と、横伝動パイプ13と、複数の分草フレーム14・14・・・と、駆動パイプ15と、引起縦伝動パイプ16と、縦連結フレームと、引起横伝動パイプ17と、複数の引起駆動パイプ18と、連結フレーム19と、中搬送伝動パイプ20とから構成される。
【0022】
刈取入力パイプ11は、その軸線方向を左右方向として、走行部2の左前部に回動可能に設けられる。縦伝動パイプ12は、その軸線方向を刈取入力パイプ11の軸線方向に対して直交方向として、刈取入力パイプ11の右端部から前斜下方へ延出される。横伝動パイプ13は、その軸線方向を左右方向として、縦伝動パイプ12の延出端部から左右方向へ延出される。
【0023】
各分草フレーム14は、その軸線方向を概ね前後方向として、横伝動パイプ13から前方へ延出される。複数の分草フレーム14・14・・・は、左右方向に適宜の間隔ごとに平行に並べられる。駆動パイプ15は、その軸線方向を左右方向として、左右最外側に位置する分草フレーム14・14の間に横架される。駆動パイプ15は、横伝動パイプ13の前斜下方に位置して、当該横伝動パイプ13と平行に並べられる。
【0024】
引起縦伝動パイプ16は、その軸線方向を横伝動パイプ13の軸線方向に対して直交方向として、横伝動パイプ13の左端部から前斜上方へ延出される。前記縦連結フレームは、その軸線方向を横伝動パイプ13の軸線方向に対して直交方向として、横伝動パイプ13の右端部から前斜上方へ延出される。
【0025】
引起横伝動パイプ17は、その軸線方向を左右方向として、引起縦伝動パイプ16の延出端部と縦連結フレームの延出端部との間に横架される。各引起駆動パイプ18は、その軸線方向を概ね上下方向として、引起横伝動パイプ17から前方へ延出される。複数の引起駆動パイプ18・18・・・は、左右方向に所定間隔ごとに平行に並べられる。
【0026】
連結フレーム19は、その軸線方向を概ね前後方向として、引起横伝動パイプ17の左右中途部から後方へ延出される。連結フレーム19は、その延出端部で縦伝動パイプ12の刈取入力パイプ11側に連結される。中搬送伝動パイプ20は、縦伝動パイプ12の横伝動パイプ13側から前斜上方へ延出される。
【0027】
分草具30は、圃場の穀稈を一条ごとに分離(分草)するものである。分草具30は、8つの分草板31・31・・・を具備する(図3参照)。各分草板31は、それぞれ先端が細くなるように形成される。各分草板31は、その先端が前方を向くように、各分草フレーム14の前端部に取り付けられる。
【0028】
引起装置40は、分草後の穀稈を引き起こすものである。引起装置40は、タイン付チェン42を回転駆動可能に支持する引起ケース41を7つ具備する。複数の引起ケース41は、それぞれ分草具30の後方に前低後高の傾斜状に配置されて、左右方向に適宜の間隔ごとに並べられる。各引起ケース41は、各分草フレーム14と各引起駆動パイプ18との間に位置して、これらに支持される。
【0029】
掻込装置100は、引起装置40により引き起こされた穀稈の株元を掻き込むものである。掻込装置100は、引起装置40の後方に前低後高の傾斜状に配置される。図3に示すように、掻込装置100は、第一掻込装置110と、第二掻込装置120と、第三掻込装置130と、第四掻込装置140とを備える。これらの掻込装置110〜140は、それぞれ引起装置40の後方に前低後高の傾斜状に配置されて、左右方向に適宜の間隔ごとに並べられる。
【0030】
第一掻込装置110は、7条分の穀稈のうち右側2条分の穀稈(右側から数えて1条目と2条目の穀稈171・172)の株元を掻き込むものである。第一掻込装置110は、左右一対の星形状の掻込輪111・112と、左右一対の突起付きの掻込ベルト113・114とを備える。第一掻込装置110は、複数の掻込装置110〜140のうち最も右側に配置される。
【0031】
掻込輪111は、前低後高の傾斜状に配置され、回転軸161回りに回転可能に設けられる。掻込輪112は、前低後高の傾斜状に配置され、回転軸162回りに回転可能に設けられる。掻込輪111と掻込輪112とは、左右方向に隣り合うように並べられて、互いに噛合される。
【0032】
大径プーリ115が、掻込輪111の上方に配置されて、掻込輪111とともに回転軸161に固定される。小径プーリ116が、大径プーリ115の右前方に配置されて、刈取フレーム10に対して回転自在に設けられる。そして、掻込ベルト113が、大径プーリ115と小径プーリ116とに巻き掛けられる。
【0033】
大径プーリ117が、掻込輪112の上方に配置されて、掻込輪112とともに回転軸162に固定される。小径プーリ118が、大径プーリ117の左前方に配置されて、刈取フレーム10に対して回転自在に設けられる。そして、掻込ベルト114が、大径プーリ117と小径プーリ118とに巻き掛けられる。
【0034】
こうして、掻込ベルト113と掻込ベルト114とは、左右方向に隣り合うように並べられて、互いに対向するベルト面間、即ち掻込ベルト113の左外側面と掻込ベルト114の右外側面との間の距離が前方から後方へ向かうに従って徐々に小さくなるように、即ち正面視略ハの字状になるように、それぞれ概ね前後方向に張設される。
【0035】
第二掻込装置120は、7条分の穀稈のうち左右中央側3条分の片側、本実施形態においては右側1条分の穀稈(最右側から数えて3条目の穀稈173)の株元を掻き込むものである。第二掻込装置120は、単一で星形状の掻込輪121と、単一で突起付の掻込ベルト122とを備える。第二掻込装置120は、複数の掻込装置110〜140のうち左右中央側で第一掻込装置110の左隣に配置される。
【0036】
掻込輪121は、前低後高の傾斜状に配置され、回転軸163回りに回転可能に設けられる。掻込輪121は、第一掻込装置110の左側掻込輪112の左側方に位置し、当該左側掻込輪112とは噛合されない。
【0037】
大径プーリ123が、掻込輪121の上方に配置されて、掻込輪121とともに回転軸163に固定される。小径プーリ124が、大径プーリ123の左前方に配置されて、刈取フレーム10に対して回転自在に設けられる。そして、掻込ベルト122が大径プーリ123と小径プーリ124とに巻き掛けられる。
【0038】
こうして、掻込ベルト122は概ね前後方向に張設される。また、不図示の案内杆が、掻込ベルト122と第一掻込装置110の掻込ベルト114との間に設けられて、掻込ベルト122の右外側面と所定間隔を隔てて対向するように配置される。
【0039】
第三掻込装置130は、7条分の穀稈のうち左右中央側3条分の残り2条、本実施形態においては中央1条分と左側1条分の穀稈(最右側から数えて4条目と5条目の穀稈174・175)の株元を掻き込むものである。第三掻込装置130は、左右一対で星形状の掻込輪131・132と、左右一対で突起付の掻込ベルト133・134とを備える。第三掻込装置130は、複数の掻込装置110〜140のうち左右中央側で第二掻込装置120の左隣に配置される。
【0040】
掻込輪131は、前低後高の傾斜状に配置され、回転軸164回りに回転可能に設けられる。掻込輪132は、前低後高の傾斜状に配置され、回転軸165回りに回転可能に設けられる。掻込輪131と掻込輪132とは、左右方向に隣り合うように並べられて、互いに噛合される。
【0041】
掻込輪131は、第二掻込装置120の掻込輪121の左側方に位置し、当該掻込輪121と左右方向に隣り合うように並べられる。つまり、掻込輪131は、左側方の掻込輪132と右側方の掻込輪121とに挟まれるように並べられる。そして、掻込輪131が前述のように掻込輪132と噛合されるとともに、掻込輪121とも噛合される。
【0042】
大径プーリ135が、掻込輪131の上方に配置されて、掻込輪131とともに回転軸164に固定される。小径プーリ136が、大径プーリ135の右前方に配置されて、刈取フレーム10に対して回転自在に設けられる。そして、掻込ベルト133が、大径プーリ135と小径プーリ136とに巻き掛けられる。
【0043】
大径プーリ137が、掻込輪132の上方に配置されて、掻込輪132とともに回転軸165に固定される。小径プーリ138が、大径プーリ137の左前方に配置されて、刈取フレーム10に対して回転自在に設けられる。そして、掻込ベルト134が、大径プーリ137と小径プーリ138とに巻き掛けられる。
【0044】
こうして、掻込ベルト133と掻込ベルト134とは、左右方向に隣り合うように並べられて、互いに対向するベルト面間、即ち掻込ベルト133の左外側面と掻込ベルト134の右外側面との間の距離が前方から後方へ向かうに従って徐々に小さくなるように、即ち正面視略ハの字状になるように、それぞれ概ね前後方向に張設される。
【0045】
第四掻込装置140は、7条分の穀稈のうち左側2条分の穀稈(右側から数えて6条目と7条目の穀稈176・177)の株元を掻き込むものである。第四掻込装置140は、左右一対で星形状の掻込輪141・142と、左右一対で突起付の掻込ベルト143・144とを備える。第四掻込装置140は、複数の掻込装置110〜140のうち最も左側で第三掻込装置130の左隣に配置される。
【0046】
掻込輪141は、前低後高の傾斜状に配置され、回転軸166回りに回転可能に設けられる。掻込輪142は、前低後高の傾斜状に配置され、回転軸167回りに回転可能に設けられる。掻込輪141と掻込輪142とは、左右方向に隣り合うように並べられて、互いに噛合される。
【0047】
大径プーリ145が、掻込輪141の上方に配置されて、掻込輪141とともに回転軸166に固定される。小径プーリ146が、大径プーリ145の右前方に配置されて、刈取フレーム10に対して回転自在に設けられる。そして、掻込ベルト143が、大径プーリ145と小径プーリ146とに巻き掛けられる。
【0048】
大径プーリ147が、掻込輪142の上方に配置されて、掻込輪142とともに回転軸167に固定される。小径プーリ148が、大径プーリ147の左前方に配置されて、刈取フレーム10に対して回転自在に設けられる。そして、掻込ベルト144が、大径プーリ147と小径プーリ148とに巻き掛けられる。
【0049】
こうして、掻込ベルト143と掻込ベルト144とは、左右方向に隣り合うように並べられて、互いに対向するベルト面間、即ち掻込ベルト143の左外側面と掻込ベルト144の右外側面との間の距離が前方から後方へ向かうに従って徐々に小さくなるように、即ち正面視略ハの字状になるように、それぞれ概ね前後方向に張設される。
【0050】
また、掻込装置100においては、図8に示すように、第二掻込装置120の掻込輪121の厚みと、掻込輪121と噛合する第三掻込装置130の右側掻込輪131の厚みとが、その他の各掻込輪111・112・132・141・142の厚みよりも厚く設定される。すなわち、掻込輪121の回転軸163の軸線方向の幅と、掻込輪131の回転軸164の軸線方向の幅とが、他の掻込輪111・112・132・141・142の、それぞれに対応する回転軸161・162・165・166・167の軸線方向の幅よりも大きく設定される。
【0051】
本実施形態においては、第二掻込装置120の掻込輪121の厚みと、第三掻込装置130の右側掻込輪131の厚みとが、ともに等しい厚みL1に設定される。一方、その他の各掻込輪111・112・132・141・142の厚みが、ともに等しい厚みL2に設定される。そして、厚みL1と厚みL2とが、厚みL1が厚みL2よりも厚いL1>L2の関係とされる。
【0052】
また、掻込装置100においては、図8に示すように、第二掻込装置120の掻込輪121と、第三掻込装置130の左右一対の掻込輪131・132とは、第一掻込装置110の掻込輪111・112及び第四掻込装置140の掻込輪141・142よりも上下方向において高い位置に配置される。詳しくは、掻込輪121及び掻込輪131・132の下面が、掻込輪111・112及び掻込輪141・142の上面よりも上下方向において高い位置に配置される。
【0053】
本実施形態においては、第二掻込装置120の掻込輪121の下面高さと、第三掻込装置130の右側掻込輪131の下面高さが、ともに等しい下面高さH1に設定される。第三掻込装置130の左側掻込輪132の下面高さが、下面高さH2に設定される。第一掻込装置110の掻込輪111・112の上面高さと、第四掻込装置140の掻込輪141・142の上面高さが、ともに等しい上面高さH3に設定される。そして、下面高さH1・H2と上面高さH3とが、下面高さH1・H2が上面高さH3よりも高いH1・H2>H3の関係とされる。
【0054】
図2に示すように、切断装置50は、掻込装置100の第一掻込装置110、第二掻込装置120、第三掻込装置130及び第四掻込装置140によって掻き込まれた7条分の穀稈を刈刃51によって株元側で切断するものである。切断装置50は、掻込装置100の下方に前低後高の傾斜状に配置される。
【0055】
搬送装置60は、切断装置50により切断された穀稈を脱穀部5へ向けて搬送するものである。搬送装置60は、引起装置40の後方であって、掻込装置100及び切断装置50の上方から後上方にわたって配置される。搬送装置60は、下部搬送装置200と、上部搬送装置300と、縦搬送装置70と、補助搬送装置80と、穂先搬送装置90とを備える。
【0056】
下部搬送装置200は、刈り取った穀稈の株元を合流させて縦搬送装置70まで挟持搬送するものである。図3に示すように、下部搬送装置200は、第一下部搬送装置210と、第二下部搬送装置220と、第三下部搬送装置230と、第四下部搬送装置240とを備える。
【0057】
第一下部搬送装置210は、第一掻込装置110で掻き込んだ2条分の穀稈171・172の株元に、他の下部搬送装置から挟持搬送されてくる穀稈173・174・175・176・177の株元を合流させて、7条分の穀稈171・172・173・174・175・176・177の株元を縦搬送装置70まで挟持搬送するものである。第一下部搬送装置210は、第一掻込装置110及び第二掻込装置120の後方に前低後高の傾斜状に配置され、第一掻込装置110近傍から左斜後方へ向けて延出される。
【0058】
第一下部搬送装置210は、搬送チェン211と、回転軸161に固設された従動スプロケット212と、駆動スプロケット213と、この駆動スプロケット213の左右に設けられた遊動プーリ214・215と、駆動スプロケット213の右前方に設けられたテンションプーリ216とを具備する。搬送チェン211は、従動スプロケット212、駆動スプロケット213、遊動プーリ214・215及びテンションプーリ216に巻き掛けられる。
【0059】
第二下部搬送装置220は、第二掻込装置120で掻き込んだ1条分の穀稈173の株元を第一下部搬送装置210との合流部182まで挟持搬送するものである。第二下部搬送装置220は、第二掻込装置120の後方であって第一下部搬送装置210の左側前方に前低後高の傾斜状に配置され、第二掻込装置120近傍から第一下部搬送装置210の搬送中途部近傍まで後方へ向けて延出される。
【0060】
第二下部搬送装置220は、搬送チェン221と、回転軸163に固設された駆動スプロケット223と、二つの遊動プーリ224・225と、テンションプーリ226とを具備する。搬送チェン221は、駆動スプロケット223、遊動プーリ224・225及びテンションプーリ226に巻き掛けられる。
【0061】
第三下部搬送装置230は、第三掻込装置130で掻き込んだ2条分の穀稈174・175の株元を第四下部搬送装置240との合流部181まで挟持搬送するものである。第三下部搬送装置230は、第三掻込装置130の後方であって第四下部搬送装置240の右側前方に前低後高の傾斜状に配置され、第三掻込装置130近傍から第四下部搬送装置240の搬送中途部近傍まで後方へ向けて延出される。
【0062】
第三下部搬送装置230は、搬送チェン231と、回転軸164に固設された従動スプロケット232と、駆動スプロケット233と、この駆動スプロケット233の左方に設けられた遊動プーリ234と、駆動スプロケット233の前方に設けられたテンションプーリ235とを具備する。搬送チェン231は、従動スプロケット232、駆動スプロケット233、遊動プーリ234及びテンションプーリ235に巻き掛けられる。
【0063】
第四下部搬送装置240は、第四掻込装置140で掻き込んだ2条分の穀稈176・177の株元に、第三下部搬送装置230挟持搬送されてくる穀稈174・175の株元を合流させて、4条分の穀稈174・175・176・177の株元を第一下部搬送装置210との合流部183まで挟持搬送するものである。第四下部搬送装置240は、第四掻込装置140の後方に前低後高の傾斜状に配置され、第三掻込装置130近傍から第四下部搬送装置240の搬送終端部近傍まで右斜後方へ向けて延出される。
【0064】
第四下部搬送装置240は、搬送チェン241と、回転軸167に固設された従動スプロケット242と、駆動スプロケット243と、この駆動スプロケット243の右方に設けられた遊動プーリ244・245と、駆動スプロケット233の前方に設けられたテンションプーリ246とを具備する。搬送チェン241は、従動スプロケット242、駆動スプロケット243、遊動プーリ244・245及びテンションプーリ246に巻き掛けられる。
【0065】
上部搬送装置300は、下部搬送装置200で挟持搬送している穀稈の穂先を係止搬送するものである。図2に示すように、上部搬送装置300は、下部搬送装置200の上方に前低後高の傾斜状に配置され、掻込装置100の上方付近から後方へ向けて延出される。図4に示すように、上部搬送装置300は、第一上部搬送装置310と、第二上部搬送装置320と、第三上部搬送装置330と、第四上部搬送装置340とを備える。
【0066】
第一上部搬送装置310は、第一下部搬送装置210で搬送される2条分の穀稈171・172の穂先に、第二上部搬送装置320から係止搬送される穀稈173の穂先を合流させて、3条分の穀稈171・172・173の穂先を係止搬送するものである。第一上部搬送装置310は、第一下部搬送装置210の上方に配置され、第一掻込装置110近傍から左斜後方へ向けて延出される。
【0067】
第一上部搬送装置310は、搬送チェン311と、この搬送チェン311に所定の間隔で突出・収納可能に取り付けられたタイン312と、駆動スプロケット313と、テンションプーリ314とを備える。搬送チェン311は、駆動スプロケット313及びテンションプーリ314に巻き掛けられる。
【0068】
第二上部搬送装置320は、第二下部搬送装置220で搬送される1条分の穀稈173の穂先を第一上部搬送装置310との合流部192まで係止搬送するものである(詳細は後述する)。
【0069】
第三上部搬送装置330は、第三下部搬送装置230で搬送される2条分の穀稈174・175の穂先を第四上部搬送装置340との合流部191まで係止搬送するものである。第三上部搬送装置330は、第三下部搬送装置230の上方に配置され、第三掻込装置130近傍から左斜後方へ向けて延出される。
【0070】
第三上部搬送装置330は、搬送チェン331と、この搬送チェン331に所定の間隔で突出・収納可能に取り付けられたタイン332と、駆動スプロケット333と、テンションプーリ334と、遊動プーリ335とを備える。搬送チェン331は、駆動スプロケット333、テンションプーリ334及び遊動プーリ335に巻き掛けられる。
【0071】
第四上部搬送装置340は、第四下部搬送装置240で搬送される2条分の穀稈176・177の穂先に、第三上部搬送装置330から係止搬送されてくる穀稈174・175の穂先を合流させて、4条分の穀稈174・175・176・177の穂先を第一上部搬送装置310との合流部193まで係止搬送するものである。第四上部搬送装置340は、第四下部搬送装置240の上方に配置され、第四掻込装置140近傍から右斜後方へ向けて延出される。
【0072】
第四上部搬送装置340は、搬送チェン341と、この搬送チェン341に所定の間隔で突出・収納可能に取り付けられたタイン342と、駆動スプロケット343と、テンションプーリ344と、遊動プーリ345・346とを備える。搬送チェン341は、駆動スプロケット343、テンションプーリ344及び遊動プーリ345・346に巻き掛けられる。
【0073】
縦搬送装置70は、第一下部搬送装置210の搬送終端部から受け継いだ7条分の穀稈の株元を補助搬送装置80まで挟持搬送するものである。図2に示すように、縦搬送装置70は、下部搬送装置200の後方に前低後高の傾斜状に配置され、下部搬送装置200の搬送終端部付近から左斜後方へ向けて延出される。
【0074】
補助搬送装置80は、縦搬送装置70の搬送終端部から受け継いだ7条分の穀稈の株元を脱穀部5まで挟持搬送するものである。補助搬送装置80は、縦搬送装置70の後上方に配置され、縦搬送装置70の搬送終端部付近から後方へ向けて延出される。
【0075】
穂先搬送装置90は、第一下部搬送装置210、縦搬送装置70及び補助搬送装置80で搬送される穀稈の穂先を係止搬送するものである。穂先搬送装置90は、第一上部搬送装置310の後部下方に配置され、第一上部搬送装置310の搬送中途部付近から後方へ向けて延出される(図4参照)。
【0076】
次に、刈取部4の動力伝達構造について説明する。
【0077】
刈取フレーム10、即ちこれを構成する各パイプ等には、各装置に動力を伝達する伝動軸が長手方向に沿って内挿される。具体的には、例えば、図6に示すように、刈取入力パイプ11には、刈取入力軸411が内挿される。縦伝動パイプ12には、縦伝動軸412が内挿される。横伝動パイプ13には、横伝動軸413が内挿される。中搬送伝動パイプ20には、中搬送伝動軸420が内挿される。
【0078】
刈取入力軸411は、走行部2に搭載されたエンジンに連動連結されるとともに、縦伝動軸412に連動連結される。縦伝動軸412は、横伝動軸413、中搬送伝動軸420及びその他の伝動軸に適宜に連動連結される。こうして、エンジンから刈取入力軸411に伝達された動力が、当該刈取入力軸411から縦伝動軸412を経て、さらに引起装置40、掻込装置100、切断装置50及び搬送装置60に伝達可能とされる。
【0079】
ここで、刈取入力軸411から第二掻込装置120への動力伝達構造について詳細に説明する。
【0080】
図5及び図6に示すように、刈取入力軸411の左端には、エンジンの動力が入力される入力プーリ410が固設され、右端には、ベベルギヤが固設される。縦伝動軸412の後端には、このベベルギヤと噛合するベベルギヤが固設される。刈取入力軸411の右端が縦伝動軸412の後端と連動連結される。縦伝動軸412の前端には、ベベルギヤが固設され、このベベルギヤと噛合するベベルギヤが横伝動軸の左右中途部に固設される。縦伝動軸412の前端が横伝動軸413の左右中途部と連動連結される。
【0081】
また、縦伝動軸412の前部、詳しくは縦伝動軸412の前端よりもやや後方の位置に、ベベルギヤが固設され、このベベルギヤを介して中搬送伝動軸420の一端(下側)と連動連結される。中搬送伝動軸420の長手方向中途部には、第三下部搬送装置230の駆動スプロケット233が固設される。
【0082】
そして前述のように、図7に示すように、駆動スプロケット233には、従動スプロケット232とともに搬送チェン231が巻き掛けられる。従動スプロケット232は、掻込輪131とともに回転軸164に固定される。第三掻込装置130の右側掻込輪131は、第二掻込装置120の掻込輪121と噛合される。
【0083】
このような構造によって、エンジンから入力プーリ410に伝達された動力は、刈取入力軸411、縦伝動軸412、中搬送伝動軸420、駆動スプロケット233、搬送チェン231、従動スプロケット232、回転軸164、掻込輪131の順に伝達され、さらに掻込輪131から掻込輪121に伝達される。
【0084】
なお、掻込輪121が動力の伝達により回転することによって、第二下部搬送装置220の駆動スプロケット223が回転して、この駆動スプロケット223に巻き掛けられた搬送チェン221が回転することとなる(図3参照)。
【0085】
このような構成において、刈取部4は、刈取作業時に前記各装置をエンジンからの動力により駆動して、圃場の穀稈を刈り取りながら取り込む。すなわち、刈取部4においては、圃場の穀稈が分草具30により一条ごとに分離するように分草された後、分草後の穀稈が引き起こされる。つづいて、掻込装置100で引起装置40により引き起こされた穀稈の株元側が掻き込まれる。
【0086】
詳しくは、第一掻込装置110において、掻込輪111及び大径プーリ115が回転軸161回りに図3における矢印方向に回転する。この大径プーリ115の回転によって、掻込ベルト113が回転する。また、掻込輪111の回転によって、この掻込輪111と噛合する掻込輪112が回転軸162回りに図3における矢印方向に回転する。この掻込輪112の回転によって、大径プーリ117が回転する。そして、大径プーリ117の回転によって、掻込ベルト114が回転する。これにより、右側2条分の穀稈171・172の株元側が、掻込輪111・112及び掻込ベルト113・114により後方へ向かって掻き込まれる。
【0087】
第二掻込装置120及び第三掻込装置130において、掻込輪131及び大径プーリ135が回転軸164回りに図3における矢印方向に回転する。この大径プーリ135の回転によって、掻込ベルト133が回転する。また、掻込輪131の回転によって、この掻込輪131と噛合する掻込輪121・132がそれぞれ回転軸163・165回りに図3における矢印方向に回転する。この掻込輪121の回転によって、大径プーリ123が図3における矢印方向に回転する。そして、大径プーリ123の回転により、掻込ベルト122が回転する。また、掻込輪132の回転によって、大径プーリ137が回転する。そして、大径プーリ137の回転により、掻込ベルト134が回転する。これにより、左右中央側3条のうち右側1条分の穀稈173の株元側が、掻込輪121及び掻込ベルト122により後方へ向かって掻き込まれて、左右中央側3条のうち残りの2条分の穀稈174・175の株元側が、掻込輪131・132及び掻込ベルト133・134により後方へ向かって掻き込まれる。
【0088】
第四掻込装置140において、掻込輪142及び大径プーリ147が回転軸167回りに図3における矢印方向に回転する。この大径プーリ147の回転により、掻込ベルト144が回転する。また、掻込輪142の回転によって、この掻込輪142と噛合する掻込輪141が回転軸166回りに図3における矢印方向に回転する。この掻込輪141の回転によって、大径プーリ145が回転する。そして、大径プーリ145の回転によって、掻込ベルト143が回転する。これにより、左側2条分の穀稈176・177の株元側が、掻込輪141・142及び掻込ベルト143・144により後方へ向かって掻き込まれる。
【0089】
そして、切断装置50により穀稈171・172、穀稈173、穀稈174・175、穀稈176・177が株元側で切断される。切断後の各条分の穀稈171・172、穀稈173、穀稈174・175、穀稈176・177が、搬送装置60により途中で合流させられつつ脱穀部5へ向けて搬送される。搬送装置60においては、まず穀稈171・172、穀稈173、穀稈174・175、穀稈176・177の株元側が下部搬送装置200により搬送され、穂先側が上部搬送装置300により搬送される。
【0090】
詳しくは、第三下部搬送装置230において、駆動スプロケット233の回転によって、搬送チェン231が回転する。これにより、第三掻込装置130により掻き込まれた2条分の穀稈174・175の株元側が、斜後上方の合流部181まで搬送される。ここで、合流部181は、第四下部搬送装置240の搬送中途部であって第三下部搬送装置230と近接する位置となる。
【0091】
一方、第三上部搬送装置330において、駆動スプロケット333の回転によって、搬送チェン331が回転する。これにより、第三下部搬送装置230により株元側が搬送される2条分の穀稈174・175の穂先側が、斜後上方の合流部191まで係止搬送される。ここで、合流部191は、第四上部搬送装置340の搬送中途部であって第三上部搬送装置330と近接する位置となる。
【0092】
第四下部搬送装置240においては、駆動スプロケット243の回転によって、搬送チェン241が回転する。これにより、第四掻込装置140により掻き込まれた2条分の穀稈176・177の株元側とともに、合流部181で受け継いだ穀稈174・175の株元側が、斜後上方の合流部183まで搬送される。ここで、合流部183は、第一下部搬送装置210の搬送中途部より下流であって第四下部搬送装置240と近接する位置となる。
【0093】
一方、第四上部搬送装置340において、駆動スプロケット343の回転によって、搬送チェン341が回転する。これにより、第四下部搬送装置240により株元側が搬送される2条分の穀稈176・177の穂先側が、第三上部搬送装置330により係止搬送される穀稈174・175の穂先側と合流して、4条分の穀稈174・175・176・177の穂先側が、斜後上方の合流部193まで係止搬送される。ここで、合流部193は、第一上部搬送装置310の搬送中途部より下流であって第四上部搬送装置340と近接する位置とされる。
【0094】
第二下部搬送装置220において、駆動スプロケット223の回転によって、搬送チェン221が回転する。これにより、第二掻込装置120により掻き込まれた1条分の穀稈173の株元側が、後上方の合流部182まで搬送される。ここで、合流部182は、第一下部搬送装置210の搬送中途部であって第二下部搬送装置220と近接する位置となる。
【0095】
一方、第二上部搬送装置320において、第二下部搬送装置220により株元側が搬送される1条分の穀稈173の穂先側が、後上方の合流部192まで係止搬送される。ここで、合流部192は、第一上部搬送装置310の搬送中途部であって第二上部搬送装置320と近接する位置となる。
【0096】
第一下部搬送装置210において、駆動スプロケット213の回転によって、搬送チェン211が回転する。これにより、第一掻込装置110により掻き込まれた2条分の穀稈171・172の株元側が、斜後上方に搬送され、合流部182・183で受け継いだ穀稈173・174・175・176・177の株元側とともに縦搬送装置70まで搬送される。
【0097】
一方、第一上部搬送装置310において、駆動スプロケット313の回転によって、搬送チェン311が回転する。これにより、第一下部搬送装置210により株元側が搬送される2条分の穀稈171・172の穂先側が、合流部192で受け継いだ穀稈173の穂先とともに、3条分の穀稈171・172・173の穂先が斜後上方に係止搬送される。
【0098】
すなわち、下部搬送装置200においては、第三下部搬送装置230により搬送される穀稈174・175の株元側が合流部181において第四下部搬送装置240により搬送される穀稈176・177の株元側と合流して、搬送中の穀稈174・175・176・177が4条分の一つの束となり、この束が合流部183まで搬送される。そして、第一下部搬送装置210により搬送される穀稈171・172の株元側が合流部182において第二下部搬送装置220により搬送される穀稈173の株元側と合流して、搬送中の穀稈171・172・173が3条分の一つの束となり、この束が合流部183で第四下部搬送装置240により搬送される穀稈174・175・176・177と合流する。こうして一つの束となった7条分の穀稈171・172・173・174・175・176・177の株元側が縦搬送装置70の搬送始端部に渡される。
【0099】
上部搬送装置300においては、第三上部搬送装置330により搬送される穀稈174・175の穂先側が合流部191において第四上部搬送装置340により搬送される穀稈176・177の穂先側と合流して、搬送中の穀稈174・175・176・177が4条分の一つの束となり、この束が合流部193まで搬送される。そして、第一上部搬送装置310により搬送される穀稈171・172の穂先側が合流部192において第二上部搬送装置320により搬送される穀稈173の穂先側と合流して、搬送中の穀稈171・172・173が3条分の一つの束となり、この束が合流部193で第四上部搬送装置340により搬送される穀稈174・175・176・177と合流する。こうして一つの束となったこの7条分の穀稈171・172・173・174・175・176・177の穂先側が穂先搬送装置90の搬送中途部に受け渡される。なお、穂先搬送装置90の搬送始端部は、合流部192の下流であって、第一上部搬送装置310の下方に設けられ、第一下部搬送装置210で挟持搬送される穀稈を第一上部搬送装置310の搬送途中から、第一上部搬送装置310とともに係止搬送する。
【0100】
そして、7条分の穀稈171・172・173・174・175・176・177は、その穂先側が穂先搬送装置90により係止搬送されつつ、その株元側が縦搬送装置70により挟持搬送され、最後に補助搬送装置80を介して脱穀部5へ渡される。
【0101】
次に、第二上部搬送装置320の詳細な構造と、この第二上部搬送装置320への動力伝達構造を説明する。図7、図9及び図10に示すように、第二上部搬送装置320には、動力が前記第二掻込装置120の掻込輪121から伝動装置150を介して伝達される。
【0102】
伝動装置150は、チェン151と、駆動スプロケット152と、従動スプロケット153と、カバー部材154とを備える。駆動スプロケット152は、掻込輪121とともに回転軸163に固定される。従動スプロケット153は、駆動スプロケット152の右斜後方であって、回転軸163と平行に延びる回転軸155に軸支される。チェン151は、駆動スプロケット152及び従動スプロケット153に巻き掛けられる。
【0103】
チェン151、駆動スプロケット152及び従動スプロケット153は、略直方形状のカバー部材154によって被覆される。カバー部材154の前下部には、回転軸163が内挿された円柱状の第一伝動パイプ156が突設される。伝動装置150は、この第一伝動パイプ156を介して第二掻込装置120に支持される。また、カバー部材154の後上部には、回転軸155が内挿された円柱状の第二伝動パイプ157が突設される。第二上部搬送装置320は、第二伝動パイプ157を介して伝動装置150に支持される。
【0104】
第二上部搬送装置320は、回転板321と、複数(4つ)のタイン322・322・322・322と、上板323と、下板324と、ガイド部材とを備える。回転板321は、略円板形状に形成される。回転軸155が、回転板321の中心部に挿嵌されて、当該回転板321と固定される。回転板321の径方向外周端には、回転軸155を中心として周方向に所定間隔(略90°)ごとに略へ字形状のタイン322・322・322・322の一端部(基部322a)が枢支される。各タインの基部322aは、支軸322bの軸線方向であって、回転板321と反対側に突出される。
【0105】
上板323及び下板324は、前記回転板321よりも大きい板面を有する板材である。上板323は、その板面を回転板321の板面に対向させ、側面視において回転板321の上方に当該回転板321と略平行となるように配置される。下板324は、その板面を回転板321の板面に対向させ、側面視において回転板321の下方に当該回転板321と略平行となるように配置される。つまり、上板323と下板324とが回転軸155の軸線方向に所定間隔をとって対向配置され、回転板321が上板323と下板324と間に挟まれて配置される。
【0106】
上板323及び下板324の中心部には、回転軸155が挿嵌される。上板323及び下板324は軸受け等を介して回転軸155に軸支される。そして、上板323は、ボルトナット325等によって下板324に締結される。上板323及び下板324の一部外周端(右側)で内側面には、第一ガイド部材326・326が、外周形状に沿うように回転板321側に向かって突設される。両第一ガイド部材326・326間の幅は、回転軸155の軸線方向において、各タイン322の幅よりも大きく設定される。上板323及び下板324の前記外周端よりもやや内周寄りの内側面には、回転軸155を中心ととする略円弧形状の第二ガイド部材327・327が回転板321側に向かって突設される。
【0107】
このような構造によって、掻込輪121の回転によって、伝動装置150の駆動スプロケット152が回転して、この駆動スプロケット152に巻き掛けられたチェン151を介して、従動スプロケット153が回転する。そして、この従動スプロケット153の回転に伴い、回転板321が矢印方向に回転する。この時、回転板321に枢支されたタイン322は、回転軸155を中心として回転して、基部322aが第二ガイド部材327・327と当接した時には、支軸322bを中心として回転板321の回転方向に回転する。これにより、タイン322の先端部322cが第一ガイド部材326・326よりも外側方へ突出する。その後、タイン322の基部322aが、第一ガイド部材326・326と第二ガイド部材327・327との間を移動して、タイン322の突出状態が保持される。つまり、タイン322は、穀稈の穂先側を係止搬送する。そして、タイン322は、基部322aが第二ガイド327・327と当接していない時には、支軸322bを中心として回転板321の回転方向と反対方向に回転する。これにより、タイン322の先端部322cが第一ガイド部材326・326よりも内側方に位置して外側方には突出されない。つまり、タイン322は、収納される。
【0108】
なお、第二上部搬送装置320で搬送される穀稈173の穂先側を、伝動装置150の外縁と当接させて案内しながら、搬送するように構成してもよい。すなわち、伝動装置150のカバー部材154が搬送される穀稈の案内杆を兼用するように構成してもよい。
【0109】
以上のように、本発明の一実施形態に係る7条刈りコンバイン1の刈取部4は、引起装置40と、掻込装置100と、切断装置50と、搬送装置60とを備えるコンバイン1の刈取部4において、前記掻込装置100は、左右一対の掻込輪111・112及び掻込ベルト113・114で右側2条分の穀稈171・172を掻き込む第一掻込装置110と、単一の掻込輪121及び掻込ベルト122で左右中央側3条分のうち片側1条分の穀稈173を掻き込む第二掻込装置120と、左右一対の掻込輪131・132及び掻込ベルト133・134で左右中央側3条分のうち残り2条分の穀稈174・175を掻き込む第三掻込装置130と、左右一対の掻込輪141・142及び掻込ベルト143・144で左側2条分の穀稈176・177を掻き込む第四掻込装置140と、を備え、前記第二掻込装置120の単一の掻込輪121と、前記第三掻込装置130の掻込輪のうち前記単一の掻込輪と隣り合う掻込輪131とを噛合し、前記搬送装置60は、前記第一掻込装置110で掻き込まれた穀稈171・172の穂先を搬送する第一上部搬送装置310と、前記第二掻込装置120で掻き込まれた穀稈173の穂先を搬送する第二上部搬送装置320と、前記第三掻込装置130で掻き込まれた穀稈174・175の穂先を搬送する第三上部搬送装置330と、前記第四掻込装置140で掻き込まれた穀稈176・177の穂先を搬送する第四上部搬送装置340と、を備え、動力を前記第二上部搬送装置320に前記第三掻込装置130から前記第二掻込装置120を介して伝達するものである。
【0110】
これにより、第二上部搬送装置320への動力伝達構造が第二掻込装置120の上方に設けられることとなる。つまり、従来のように第二上部搬送装置320へ動力を伝達するための伝動装置を搬送装置60により搬送中の各条分の穀稈が合流する合流部近傍、具体的には、下部搬送装置200により搬送中の穀稈の株元側が合流する合流部182近傍や上部搬送装置300により搬送中の穀稈の穂先が合流する合流部192近傍に設けずに済む。したがって、合流部近傍の構造を簡素化して、この合流部近傍での穀稈の詰まりを抑制することができる。また、第二上部搬送装置320へ動力伝達構造を簡素化することができる。
【0111】
そして、1条分の穀稈173の上部を搬送するものであるから第二上部搬送装置320を駆動するために必要な動力が少なくてすむ。すなわち、本実施形態のように、掻込輪131から掻込輪121、伝動装置150を介して動力を伝達する構成としても、第二上部搬送装置320を十分に駆動することができる。
【0112】
また、前記掻込装置100は、前記第二掻込装置120の単一の掻込輪121と、この単一の掻込輪121と噛合する前記第三掻込装置130の掻込輪131との厚みを、他の前記掻込輪111・112・132・141・142の厚みよりも厚く設定するものである。これにより、第二掻込装置の単一の掻込輪と、第三掻込装置の掻込輪との噛合が外れにくくなる。すなわち、掻込装置100において、第三掻込装置130のように一対の掻込輪131・132がある場合、穀稈を挟持して搬送するとき、一対の掻込輪131・132には左右対称に歪みが生じて、一方の掻込輪131から他方の掻込輪132への動力伝達に支障は生じない。一方、第二掻込装置120のように単一の掻込輪121しかない場合、穀稈を挟持して搬送するとき、単一の掻込輪121にも歪みは生じるが、この歪みは噛合する掻込輪131に生じた歪みに対応したものになるとは限らず、場合によっては互いの噛合が外れて掻込輪131から単一の掻込輪への動力伝達に支障が生じるおそれがあった。しかし、単一の掻込輪121と掻込輪131とは他の掻込輪111・112・132・141・142よりも厚みがあるため、互いの噛合が外れにくくなる。したがって、動力を第三掻込装置130の掻込輪131から第二掻込装置120の単一の掻込輪121へ確実に伝達することができ、ひいては第二上部搬送装置320に第三掻込装置130から第二掻込装置120を介して確実に伝達することができる。
【0113】
また、前記掻込装置100は、前記第二掻込装置120の単一の掻込輪121及び前記第三掻込装置130の左右一対の掻込輪131・132を、前記第一掻込装置110の左右一対の掻込輪111・112及び前記第四掻込装置140の左右一対の掻込輪141・141よりも高い位置に配置するものである。これにより、第二掻込装置120の単一の掻込輪121及び前記第三掻込装置130の左右一対の掻込輪131・132と、第一掻込装置110の左右一対の掻込輪111・112との干渉を避けて、互いの間隔を狭めることができる。また、第二掻込装置120の単一の掻込輪121及び前記第三掻込装置130の左右一対の掻込輪131・132と、第四掻込装置140の左右一対の掻込輪141・142との干渉を避けて、互いの間隔を狭めることができる。同時に、掻込装置100では、第二掻込装置120の単一の掻込ベルト122及び前記第三掻込装置130の左右一対の掻込ベルト133・134が、第一掻込装置110の左右一対の掻込ベルト113・114及び第四掻込装置140の左右一対の掻込ベルト143・144よりも高い位置に配置されることとなる。これにより、前記同様に、第二掻込装置120の単一の掻込ベルト122及び前記第三掻込装置130の左右一対の掻込ベルト133・134と、第一掻込装置110の左右一対の掻込ベルト113・114との干渉を避けて、互いの間隔を狭めることができる。また、第二掻込装置120の単一の掻込ベルト122及び前記第三掻込装置130の左右一対の掻込ベルト133・134と、第四掻込装置140の左右一対の掻込ベルト143・144との干渉を避けて、互いの間隔を狭めることができる。したがって、隣り合う掻込装置の間隔を左右方向で狭めて、掻込装置の設置部分ひいては刈取部4をコンパクトに構成できる。
【0114】
また、前記第三掻込装置130の一方の掻込輪131から左右両側に並設された前記第三掻込装置130の右側の掻込輪132及び前記第二掻込装置120の単一の掻込輪121に動力が伝達されるように構成される。これにより、動力が掻込輪131から当該掻込輪131の左右両側に並設された二つの掻込輪121・132にバランスよく割り振られることとなる。したがって、各掻込輪121・131・132への負荷が分散され、第二掻込装置120及び第三掻込装置130の故障率を低減することができる。
【0115】
また、前記第二掻込装置120の掻込輪121と前記第三掻込装置130の右側掻込輪131とを噛合して並設して、掻込輪121から伝達される動力によって前記第二下部搬送装置220を駆動するように構成される。これにより、従来のように第二下部搬送装置220へ動力を伝達するための伝動装置を搬送装置60により搬送中の各条分の穀稈が合流する合流部近傍、具体的には、下部搬送装置200により搬送中の穀稈の株元側が合流する合流部182近傍や上部搬送装置300により搬送中の穀稈の穂先が合流する合流部192近傍に設けずに済む。したがって、合流部近傍の構造を簡素化して、この合流部近傍での穀稈の詰まりを抑制することができる。また、第二下部搬送装置220に動力を伝達する駆動軸等の伝動装置が不要となる。すなわち、第二下部搬送装置220への動力伝達構造を簡素化して、部品点数を削減できる。
【0116】
なお、掻込装置100は、本実施形態においては、左右中央側3条分の穀稈を右側1条分と左側2条分とに分けて掻き込み後方に搬送する構成としたが、第二掻込装置120と第三掻込装置130とを左右逆に入れ替え、第二下部搬送装置220と第三下部搬送装置230とを左右逆に入れ替え、第二上部搬送装置320と第三上部搬送装置330とを入れ替えたような構造として、左右中央三条分の穀稈を右側2条分と左側1条分とに分けて掻き込み後方に搬送する構成とすることも可能である。
【0117】
なお、左右一対の掻込輪及び掻込ベルトを有する掻込装置を複数並設して偶数条刈り用の刈取部を構成し、この偶数条刈り用の刈取部に単一の掻込輪及び掻込ベルトを有する掻込装置をさらに並設して奇数条刈り用の刈取部を構成する場合は、単一の掻込輪を、左右一対の掻込輪と噛合して構成するだけで、単一の掻込装置への動力伝達機構を容易に構成することができる。さらに、噛合された単一の掻込輪から、単一で掻き込んだ穀稈の株元を搬送する下部搬送装置や穂先を搬送する上部搬送装置に動力を伝達する構成としたときは、これら下部搬送装置及び上部搬送装置への動力伝達構造を簡易なものとすることができる。
【符号の説明】
【0118】
1 コンバイン
4 刈取部
100 掻込装置
110 第一掻込装置
120 第二掻込装置
130 第三掻込装置
140 第四掻込装置
200 下部搬送装置
210 第一下部搬送装置
220 第二下部搬送装置
230 第三下部搬送装置
240 第四下部搬送装置
300 上部搬送装置
310 第一上部搬送装置
320 第二上部搬送装置
330 第三上部搬送装置
340 第四上部搬送装置
111 掻込輪
112 掻込輪
121 掻込輪
131 掻込輪
132 掻込輪
141 掻込輪
142 掻込輪
113 掻込ベルト
114 掻込ベルト
122 掻込ベルト
133 掻込ベルト
134 掻込ベルト
143 掻込ベルト
144 掻込ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引起装置と、掻込装置と、切断装置と、搬送装置とを備えるコンバインの刈取部において、
前記掻込装置は、
左右一対の掻込輪及び掻込ベルトで右側2条分の穀稈を掻き込む第一掻込装置と、
単一の掻込輪及び掻込ベルトで左右中央側3条分のうち片側1条分の穀稈を掻き込む第二掻込装置と、
左右一対の掻込輪及び掻込ベルトで左右中央側3条分のうち残り2条分の穀稈を掻き込む第三掻込装置と、
左右一対の掻込輪及び掻込ベルトで左側2条分の穀稈を掻き込む第四掻込装置と、を備え、
前記第二掻込装置の単一の掻込輪と、前記第三掻込装置の掻込輪のうち前記単一の掻込輪と隣り合う掻込輪とを噛合し、
前記搬送装置は、
前記第一掻込装置で掻き込まれた穀稈の穂先を搬送する第一上部搬送装置と、
前記第二掻込装置で掻き込まれた穀稈の穂先を搬送する第二上部搬送装置と、
前記第三掻込装置で掻き込まれた穀稈の穂先を搬送する第三上部搬送装置と、
前記第四掻込装置で掻き込まれた穀稈の穂先を搬送する第四上部搬送装置と、を備え、
動力を前記第二上部搬送装置に前記第三掻込装置から前記第二掻込装置を介して伝達することを特徴とするコンバインの刈取部。
【請求項2】
前記掻込装置は、前記第二掻込装置の単一の掻込輪と、この単一の掻込輪と噛合する前記第三掻込装置の掻込輪との厚みを、他の前記掻込輪の厚みよりも厚く設定する請求項1に記載のコンバインの刈取部。
【請求項3】
前記掻込装置は、前記第二掻込装置の単一の掻込輪及び前記第三掻込装置の左右一対の掻込輪を、前記第一掻込装置の左右一対の掻込輪及び前記第四掻込装置の左右一対の掻込輪よりも高い位置に配置することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンバインの刈取部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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