説明

コンバインの穀稈係止搬送装置

【課題】刈取・脱穀作業中にタインの形状の異常をセンサで検出すること。
【解決手段】無端帯状体の外周に間隔を開けて複数のタインを起立・倒伏自在に取り付けて、無端帯状体をその伸延方向に回動させることで、タインが起立姿勢で穀稈に係止作用する作用側経路と、タインが倒伏姿勢で穀稈に作用しない非作用側経路を形成した穀稈係止搬送装置であって、穀稈に係止作用するタインの形状を検出するセンサを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの穀稈係止搬送装置に関する。詳しくは穀稈係止搬送装置のタインの折損等の異常を検出することができるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインの穀稈係止搬送装置の一形態として、特許文献1に開示されたものがある。すなわち、特許文献1には、無端帯状体の外周に間隔を開けて複数のタインを起立・倒伏自在に取り付けて、無端帯状体をその伸延方向に回動させることで、タインが起立姿勢で穀稈に係止作用する作用側経路と、タインが倒伏姿勢で穀稈に作用しない非作用側経路を形成した穂先搬送装置が開示されている。
【0003】
かかる穂先搬送装置は、コンバインの刈取部に株元搬送装置と対向状態に配置されて、両搬送装置が協働して後続の脱穀部へ刈り取り穀稈を搬送するようにしている。
【0004】
また、かかる穂先搬送装置では、無端帯状体がカバー体により被覆されており、作用側経路を起立姿勢にて移動するタインは無端帯状体に連結している基端部以外がカバー体から露出した状態である一方、非作用側経路を倒伏姿勢にて移動するタインはカバー体内に収容された状態である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−142246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、前記したタインはナイロン等の合成樹脂により成形されているため、過負荷や劣化等による折損等の形状異常がタインに生じる場合がある。その場合、タインの穀稈搬送機能が低下することや、穀稈搬送に支障をきたすことがあり、後続の脱穀部に正常な姿勢で穀稈を搬送することができないために、脱穀部の脱穀性能に悪影響を及ぼすという不具合がある。
【0007】
そのため、刈取・脱穀作業を開始する前にタインに異常がないか状況確認をするようにしているが、非作用側経路では倒伏姿勢でカバー体内に収容されているタインは、カバー体内に被覆されているために状況が確認できない。状況を確認するためには、エンジンを駆動させて刈取部を作動させることで、穂先搬送装置の作動中に起立姿勢を採るタインを視認しなければならないという煩雑さがある。
【0008】
そこで、本発明は、刈取・脱穀作業中にタインの形状の異常をセンサで検出することができるコンバインの穀稈係止搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明に係るコンバインの穀稈係止搬送装置は、無端帯状体の外周に間隔を開けて複数のタインを起立・倒伏自在に取り付けて、無端帯状体をその伸延方向に回動させることで、タインが起立姿勢で穀稈に係止作用する作用側経路と、タインが倒伏姿勢で穀稈に作用しない非作用側経路を形成した穀稈係止搬送装置であって、穀稈に係止作用するタインの形状を検出するセンサを具備することを特徴とする。
【0010】
かかる穀稈係止搬送装置では、本機のエンジンが駆動されて穀稈の刈取・脱穀作業が開始されると、複数のタインが順次穀稈を係止して搬送する穀稈係止搬送作動もなされる。そして、センサは穀稈に係止作用する各タインの形状を検出する。つまり、センサがタインの形状の異常、例えば、タインの折損を検出することができる。また、少なくとも異常検出結果は、適宜作業者に報知するようにすることができる。したがって、タインの異常検出を認知した(報知を受けた)作業者は、異常なタインの交換等の対処を迅速かつ堅実に行うことができる。その結果、タインの搬送機能を良好に確保することができて、穀稈の搬送姿勢を正常な状態に維持することができる。換言すると、穀稈の搬送姿勢が乱れて後続の脱穀作業に悪影響を及ぼすという不具合の発生を回避することができる。
【0011】
請求項2記載の発明に係るコンバインの穀稈係止搬送装置は、請求項1記載の発明に係るコンバインの穀稈係止搬送装置であって、前記センサは、前記タインが起立姿勢から倒伏姿勢に姿勢変更する前記作用側経路の終端近傍に配設するとともに、倒伏姿勢に姿勢変更するタインの作用面にセンサのセンシング面を対面させて配置したことを特徴とする。
【0012】
かかる穀稈係止搬送装置では、タインが起立姿勢から倒伏姿勢に姿勢変更する前記作用側経路の終端近傍において、センサのセンシング面をタインの作用面に対面させて配置しているため、姿勢変更しながら移動するタインの作用面を長手方向に堅実にセンシングすることができる。その結果、センサによる検出効果を高めることができる。
【0013】
請求項3記載の発明に係るコンバインの穀稈係止搬送装置は、請求項2記載の発明に係るコンバインの穀稈係止搬送装置であって、前記作用側経路の終端近傍に、起立姿勢で移動するタインを受け止めるとともに、受け止めた状態でタインを倒伏姿勢に姿勢変更案内するタイン受け止め案内体を配設したことを特徴とする。
【0014】
かかる穀稈係止搬送装置では、作用側経路の終端近傍に配設したタイン受け止め案内体により起立姿勢で移動するタインを受け止めるとともに、受け止めた状態でタインを倒伏姿勢に姿勢変更案内することができる。そのため、タインは揺動等の不規則な動きをすることなく倒伏姿勢に姿勢変更しながら移動される。すなわち、センサのセンシング面に対してタインの作用面を対面させた状態で、タインは倒伏姿勢に姿勢変更しながらセンシング面と略一定の間隔を保持したまま移動される。その結果、センサによるお検出効果をより一層高めることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、次のような効果を奏する。すなわち、本発明では、刈取・脱穀作業中にタインの異常さらにはタインの損傷量(損傷具合)をセンサで検出することができるため、刈取・脱穀作業に先駆けてタインの状況を確認するために穀稈係止搬送装置を作動させるという作業前確認作業の煩雑さを解消することができる。しかも、刈取・脱穀作業中において、タインの異常をセンサで検出することができるため、異常検出時には迅速かつ堅実に対処することで、穀稈係止搬送装置の穀稈係止搬送機能、さらには、後続の脱穀部の脱穀性能を良好に確保することができる。その結果、刈取・脱穀作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るコンバインの側面図。
【図2】刈取部の側面図。
【図3】上部搬送体の平面説明図。
【図4】上部搬送体の一部側面説明図。
【図5】図3のI−I線断面図。
【図6】上部搬送体の一部拡大平面説明図。
【図7】制御ブロック図。
【図8】正常なタインの説明図(a)と異常なタイン(b)の説明図。
【図9】検出信号の波形。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1に示す1は本実施形態に係るコンバインであり、コンバイン1は左右一対のクローラ式の走行部2,2上に機体3を配置し、機体3の左側前端部に刈取部4を昇降自在に取り付けている。機体3の左側には脱穀部5を配設するとともに、その下方に選別部6を配設し、これらの後方に排藁処理部7を配設している。機体3の右側には運転部8を配設し、その後方に穀粒貯留部9を配設している。脱穀部5には前後方向に軸線を向けた扱胴10をその軸線廻りに回転自在に配設しており、扱胴10の左側方には挟扼体11とフィードチェン12を上下に対向させて配設している。そして、挟扼体11とフィードチェン12により後述する刈取穀稈の株元側を挟持するとともに、刈取穀稈の穂先側を扱胴10の下部周面に沿わせて後方へ移送することで、穂先側が回転する扱胴により脱穀されるようにしている。13は各部を駆動する原動機部としてのエンジンである。
【0019】
このように構成したコンバイン1は、運転部8において作業者が操作することで、走行部2,2により機体3を自走させながら、刈取部4により圃場に植立している穀稈を刈り取る。そして、刈り取られた穀稈は脱穀部5に搬送されて、脱穀部5で脱穀される。脱穀部5で脱穀された穀粒は選別部6で揺動選別及び風選別される。選別部6で選別された精穀粒は穀粒貯留部9に搬送される。また、脱穀後の穀稈である排藁は排藁処理部7に搬送されて細断処理される。
【0020】
刈取部4は、図1及び図2に示すように、機体3の左側前端部に立設した支持体20の上端部に、左右方向に直状に伸延する第1伝動筒体21をその軸線廻りに回動自在に取り付け、第1伝動筒体21の中途部から前下方へ向けて直状に第2伝動筒体22を延設して、第2伝動筒体22の先端部に左右側方へ直状に伸延する第3伝動筒体23を連設して、刈取部4のメインフレームを形成している。これら第1〜第3伝動筒体21〜23中には伝動シャフトを配設して、伝動機構としても機能させている。
【0021】
第3伝動筒体23には、前後方向に伸延する左右一対の前後伸延補助フレーム24の後端部を取り付け、前後伸延補助フレーム24の前端部に分草体25を取り付けている。また、第3伝動筒体23には、前上方へ向けて左右一対の立ち上がり補助フレーム26を立設し、立ち上がり補助フレーム26の上端部と前後伸延補助フレーム24の前端部との間に、穀稈を引き起こす穀稈引起体27を後傾姿勢に取り付けている。左右一対の前後伸延補助フレーム24の中途部間には、左右方向に伸延するバリカン式の刈刃体28を横架状に取り付けて、後述する掻込体30により掻き込まれた穀稈の株元を刈り取るようにしている。
【0022】
穀稈引起体27の後方で刈刃体28の直前上方位置には、穀稈引起体27により引き起こされた穀稈を掻き込む掻込体30を配設しており、掻込体30はスターホイル31や掻込みベルト32等からなる。刈刃体28の上方位置には掻込体30により掻き込まれた穀稈の株元側を後方へ搬送する下部搬送体33を配設している。下部搬送体33の上方には刈取穀稈の穂先を後方へ搬送する穂先搬送体34,35や上部搬送体36を配設している。上部搬送体36は穂先搬送体34,35の後方に配設しており、上部搬送体36の前部を下方位置に、そして、穂先搬送体34,35の後部を上方位置に、上下に一部重複させて配置している。下部搬送体33の後方には穀稈の株元側を後方へ搬送する縦搬送体57を配設しており、縦搬送体57の後方には穀稈の株元側を前記したフィードチェン12に受け継ぐための補助搬送体58を配設している。刈取部4の各駆動部にはエンジン13から伝動機構である第1〜第3伝動筒体21〜23中の伝動シャフトを介して、動力が伝達されるようにしている。
【0023】
刈取部4は、このように構成することで、圃場に植立した穀稈を分草体25により分草し、分草体25により分草された穀稈を穀稈引起体27により引き起こし、掻込体30により掻き込みながら刈刃体28により穀稈の株元側を刈り取るようにしている。そして、刈り取られた穀稈の株元側は下部搬送体33から縦搬送体57に受け継がれるとともに、刈り取られた穀稈の穂先側は穂先搬送体34,35から上部搬送体36に受け継がれながら後方へ搬送されるようにしている。また、穀稈の株元側は縦搬送体57から補助搬送体58を介してフィードチェン12の始端部に受け継がれる。つまり、刈取部4から脱穀部5に穀稈が搬送される。
【0024】
ここで、穀稈引起体27、穂先搬送体34,35、及び、上部搬送体36は、それぞれ穀稈をタインにより係止して搬送する機能を有する穀稈係止搬送装置である。本実施形態では、穀稈係止搬送装置としての上部搬送体36について、図3〜図6を参照しながら説明する。
【0025】
すなわち、上部搬送体36は、図3〜図6に示すように、やや湾曲させて前後方向に伸延する上下一対の上部カバー体60と下部カバー体61とを上下に対向させて配置している。上・下部カバー体60,61間の前部には、上下方向に軸線を向けた支軸62を介して従動スプロケット63を枢支している。一方、上・下部カバー体60,61間の後部には、上下方向に軸線を向けた駆動軸64を介して駆動スプロケット65を枢支している。そして、従動スプロケット63と駆動スプロケット65を前後方向に対向させて配置して、その間に無端帯状体としての無端チェン66を巻回している。
【0026】
無端チェン66には周方向に間隔を開けて複数のタイン67の基端部を上下方向の軸線を向けた枢支ピン67dを介して枢支している。各タイン67は、無端チェン66と略直交状態に外方へ突出する起立姿勢(a)と、無端チェン66にほぼ沿った平衡状態に倒伏する倒伏姿勢(b)とに姿勢変更自在に取り付けている。また、タイン67は、前後方向に伸延する無端チェン66の緊張側において、起立姿勢(a)で穀稈に係止作用する作用側経路68を形成するとともに、前後方向に伸延する無端チェン66の弛緩側において、倒伏姿勢(b)で穀稈に作用しない非作用側経路69を形成している。
【0027】
従動スプロケット63と駆動スプロケット65との中間には、第1補助スプロケット70と第2補助スプロケット71を仮想の湾曲線上に配置して、作用側経路68と非作用側経路69を湾曲させて形成している。
【0028】
緊張側の無端チェン66の直上位置と直下位置には、それぞれ無端チェン66に沿って伸延する一対の棒状の起立ガイドレール72,72を配設している。起立ガイドレール72,72の前端は従動スプロケット63の直後方位置に配置する一方、起立ガイドレール72,72の後端は駆動スプロケット65を支持している駆動軸64の外側方位置に配置している。
【0029】
タイン67は、図6に示すように、棒状に形成して基端部を無端チェン66に枢支連結したタイン本体67aと、タイン本体67aの基端部に略直交状に突出させて形成した摺動片67bとをナイロン等の合成樹脂により一体成形している。67dは枢支ピンである。そして、無端チェン66の緊張側において、起立ガイドレール72,72の外側面上を摺動片67bが摺動するとともに、タイン本体67aが起立姿勢(a)を採るように規制される。また、起立ガイドレール72,72の後端を経由して駆動スプロケット65の後半部、さらには、従動スプロケット63を経由して起立ガイドレール72,72の始端に至るまでは、タイン本体67aが起立姿勢(a)への規制が解除される。そのため、タイン67は枢支ピン67dを中心に揺動自在かつ倒伏姿勢(b)への姿勢変更が自由になる。タイン本体67aが穀稈に係止作用する面を作用面67cとなしており、作用面67cはタイン本体67aの長手幅にわたって形成されている。
【0030】
上記のように構成した上部搬送体36は、穀稈に係止作用するタイン67の形状を検出するセンサ80を具備している。すなわち、上・下部カバー体60,61の右側後端部間に、左側方が開口するブラケット81を取り付けて、ブラケット81にセンサ80を取り付けている。センサ80としては非接触式の反射型センサを使用することができ、本実施形態では光電センサ(反射型投受光器)を使用している。すなわち、センサ80はセンサ本体80aに、発光素子(LED)を有して可視光線、赤外線などの「光」を発射する投光部80bと、検出物体であるタイン67の表面である作用面67cに当たって反射した反射光を検出する受光素子を有する受光部80cを隣接させて設けて、受光部80cから出力信号(受光検出信号)を得るようにしている。
【0031】
センサ80は、作用側経路68の終端において、起立姿勢(a)への規制が解除されたタイン67の形状を検出するようにしている。すなわち、投光部80bが指向している側のセンサ本体80aの側面をセンシング面80dとなして、センシング面80dをタイン67の作用面67cに可及的に近接させるとともに対面させて配置している。
【0032】
上・下部カバー体60,61の右側後端部間でセンサ80の左側近傍位置には、タイン受け止め案内体85を配設している。タイン受け止め案内体85は、上・下部カバー体60,61の右側後端部間に介設したピン状の案内本片85aと、案内本片85aの周面に弾性ゴム素材を積層して形成した弾性受け片85bとから形成している。
【0033】
このように構成することで、起立姿勢(a)への規制が解除されているにもかかわらず、遠心力により起立姿勢(a)のまま移動するタイン67の作用面67cの中途部を、弾性受け片85bにより反発させることなく受け止めることができる。その結果、受け止めた接点を支点としてタイン67の基端部側が移動されるので、タイン67はスムーズに倒伏姿勢(b)に姿勢変更案内される。
【0034】
そして、上・下部カバー体60,61の右側後端部間でセンサ80の左側直前方位置には、横臥姿勢案内体90を配設している。横臥姿勢案内体90は、上・下部カバー体60,61の右側後端部間に介設したピン状の姿勢案内本片90aと、姿勢案内本片90aの周面を囲繞する筒状弾性ゴム素材製の受け片90bとから形成している。
【0035】
このように構成することで、タイン受け止め案内体85を支点にして起立姿勢(a)から倒伏姿勢(b)に姿勢変更されながら移動されるタイン67の作用面67cが、その基端部から先端部にかけて、経時的に横臥姿勢案内体90に摺接しながら倒伏姿勢(b)を保つようにしている。
【0036】
つまり、タイン67は、その作用面67cがセンシング面80dに対面状態で、ほぼ一定の間隔(例えば、40mm)を保持したまま、倒伏姿勢(b)にて移動されるようにしている。その結果、投光部80bから発射した光を堅実に作用面67cの基端部側から先端部側に長手幅の全幅にわたって順次当てることができるとともに、順次反射した反射光を受光部80cで堅実に検出することができる。換言すると、投光部80bから発射した光をタイン67以外の物体に反射させて、その反射光を受光部80cが検出するとノイズ(処理対象となる情報以外の不要な情報)が多くなるので、検出物体であるタイン67の作用面67cのみを検出するようにして、ノイズの発生を極力少なくすることができる。
【0037】
センサ80は、図7に示すように、運転部8に配設した制御部92の入力側に接続し、制御部92の出力側にはタイン検出表示部93と報知部94を接続している。制御部92は、中央演算処理手段(CPU)95やROM、RAM等の各種メモリ等を有する記憶手段96を備えたタイマー内蔵のマイクロコンピュータを含むものである。ROMにはCPU95の動作プログラムおよび固定的なデータ(後述する計算式も含む)を格納している。RAMはCPU95の作業領域および一時記憶領域を提供する。
【0038】
センサ80では、検出された検出信号がI−V(電流−電圧)変換器で電流から電圧に変換されて、増幅器で増幅された後、A/D(アナログーデジタル)変換器でデジタル値として変換されて、CPU95に送られる。
【0039】
CPU95では、記憶手段96にあらかじめ記憶されている正常なタイン67の形状値を基準データとして読み出すようにしている。つまり、基準データは異常のない正常なタイン67をあらかじめ検出した検出データであって、記憶手段96のROMに記憶させていたものである。また、センサ80により検出された検出データは、記憶手段96のRAMに記憶するようにしている。そして、基準データと検出データを比較することでタイン67の異常の有無(本実施形態では折損の有無)を判定するようにしている。
【0040】
より具体的に説明すると、センサ80のセンシング面80dに対面した横臥姿勢(b)でタイン67が移動されることで、タイン67はその作用面67cが基端部から先端部までの長手幅にわたってセンサ80により検出される。つまり、図8(a)に示す正常被検出幅Wがセンサ80により検出される。そして、検出された検出データ(信号)は、図7及び図9に示すように、タイン検出表示部93に矩形波形としてモニター表示される。ここで、図9の横軸は検出開始からの時間、縦軸はセンサ80の出力を電圧値で表した出力電圧(検出電圧)である。Vmaxは出力電圧の最大値であり、タイン67の作用面67cが検出されている場合に出力される電圧値である。Vminiは出力電圧の最小値であり、タイン67の作用面67cが検出されていない場合に出力される電圧値である。
【0041】
図8(b)に示すように、経時劣化等によりタイン67の先端部が折損されて、穀稈の搬送機能を十分に果たさない状態、つまり異常状態である場合には、センサ80により検出される正常被検出幅Wが異常被検出幅Waとなる(正常被検出幅W>異常被検出幅Wa)。その結果、検出電圧の最大値Vmaxとして検出される時間の幅である検出時間幅Tn(nは整数)は、タイン67が正常(正常被検出幅W)であればほぼ同一であるが、タイン67が異常(異常被検出幅Wa)であれば短幅となる。
【0042】
そこで、あらかじめ正常被検出幅Wを有する正常なタイン67の検出時間幅を検出して、基準検出時間幅Tsとして記憶手段96に記憶させておく。また、閾値(例えば、基準検出時間幅Tsの70%)を設定して、検出時間幅Tn<基準検出時間幅Ts×0.7である場合には異常と判定する比較・演算処理プログラムを記憶手段96に記憶させておく。そして、センサ80により検出された検出情報が制御部92のCPU95に入力されることで、CPU95が記憶手段96から読み出した基準検出時間幅Tsと比較・演算処理プログラムとにより、基準検出時間幅Tsと検出時間幅Tn(T,T,T・・・・)とが逐次比較され、異常の有無が判定される。判定結果はRAMに記憶される。
【0043】
図9においては、第1〜第4,第6の検出時間幅T,T,T,T,T≒基準検出時間幅Tsで、検出時間幅T,T,T,T,Tは正常検出時間幅と判定される。第5の検出時間幅T<基準検出時間幅Ts×0.7で、検出時間幅Tは異常検出時間幅と判定される。つまり、5番目のタイン67は折損されて、穀稈搬送機能を果たしていない可能性ありと判定される。
【0044】
その判定結果として異常が検出された場合には、報知部94に制御(作動)情報を出力する。制御情報を出力された報知部94は、異常検出時間幅と判定された検出時間幅Tのタイン67が存在することを、視覚的信号ないしは聴覚的信号として音や光で作業者に報知する。その結果、報知信号を認識した作業者は迅速にタイン67の付け替え等の対処をすることができる。
【0045】
また、閾値は段階的に複数設定、例えば、基準検出時間幅Tsの80%,60%,40%で設定して、
1)検出時間幅Tn<基準検出時間幅Ts×0.8
2)検出時間幅Tn<基準検出時間幅Ts×0.6
3)検出時間幅Tn<基準検出時間幅Ts×0.4
の各設定条件で異常(タイン損傷量ないしはタイン損傷具合)を判定した場合や、異常なタイン67が複数検出された場合や、連続的に異常なタイン67が複数検出された場合には、それぞれ報知の仕方(例えば、音の大きさや音色や間欠音の間隔)を代えることで、異常の度合いを作業者に強く認識させて、対応の緊急性を促すこともできる。また、制御部92は、報知部94に制御情報を出力するとともに、刈取部4の駆動部に制御情報を出力して、刈取部4の各駆動部を駆動停止させることもできる。
【0046】
本実施形態に係るコンバイン1は、上記のように構成しているものである。かかるコンバイン1では、本機のエンジン13が駆動されて穀稈の刈取・脱穀作業が開始されると、多数のタインが順次穀稈を係止して搬送する穀稈係止搬送装置、特に、上部搬送体36の穀稈係止搬送作動もなされる。
【0047】
この際、上部搬送体36は、作用側経路68の終端において、起立姿勢(a)への規制が解除されたタイン67の形状をセンサ80により検出するようにしている。
【0048】
すなわち、センサ80は、センサ80の投光部80bが指向している側のセンサ本体80aの側面をセンシング面80dとなして、センシング面80dをタイン67の作用面67cに可及的に近接させるとともに対面させている。センサ80の左側近傍位置には、タイン受け止め案内体85を配設しており、起立姿勢(a)への規制が解除されているにもかかわらず、遠心力により起立姿勢(a)で移動するタイン67の作用面67cの中途部をタイン受け止め案内体85の弾性受け片85bにより受け止めるとともに、受け止めた状態でタイン67を倒伏姿勢(b)に姿勢変更案内するようにしている。
【0049】
そして、上・下部カバー体60,61の右側後端部間でセンサ80の右側直前方位置には、横臥姿勢案内体90を配設しており、タイン受け止め案内体85を支点にして起立姿勢(a)から倒伏姿勢(b)に姿勢変更されながら移動されるタイン67が、その基端部から先端部にかけて、経時的に横臥姿勢案内体90に摺接しながら倒伏姿勢(b)を保つようにしている。
【0050】
つまり、タイン67は、その作用面67cがセンシング面80dに対面状態で、ほぼ一定の間隔を保持したまま、倒伏姿勢(b)にて移動されるようにして、投光部80bから発射した光を堅実に作用面67cの基端部側から先端部側に長手幅の全幅にわたって順次当てることができるとともに、順次反射した反射光を受光部80cで堅実に検出することができる。
【0051】
センサ80により検出された検出情報は、制御部92のCPU95に入力されて比較・演算処理される。検出された検出データ(検出電圧)は、タイン検出表示部93にモニター表示される。そして、制御部92は、基準検出時間幅Tsと検出時間幅Tを、検出時間幅Tn<基準検出時間幅Ts×0.7の計算式に基づいて比較・演算処理し、異常と判定した場合には、報知部94に制御(作動)情報を出力する。制御情報を出力された報知部94はタイン67の異常を、音や光で視覚的ないしは聴覚的に作業者に報知する。タイン67の異常検出を認知した(報知を受けた)作業者は、異常なタイン67の交換等の対処を迅速かつ堅実に行うことができる。その結果、タイン67の搬送機能を良好に確保することができて、穀稈の搬送姿勢を正常な状態に維持することができる。換言すると、穀稈の搬送姿勢が乱れて後続の脱穀作業に悪影響を及ぼすという不具合の発生を回避することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 コンバイン
2 走行部
3 機体
4 刈取部
5 脱穀部
6 選別部
7 排藁処理部
8 運転部
9 穀粒貯留部
36 上部搬送体
67 タイン
80 センサ
68 作用側経路
69 非作用側経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端帯状体の外周に間隔を開けて複数のタインを起立・倒伏自在に取り付けて、無端帯状体をその伸延方向に回動させることで、タインが起立姿勢で穀稈に係止作用する作用側経路と、タインが倒伏姿勢で穀稈に作用しない非作用側経路を有するコンバインの穀稈係止搬送装置であって、
穀稈に係止作用するタインの形状を検出するセンサを具備することを特徴とするコンバインの穀稈係止搬送装置。
【請求項2】
前記センサは、前記タインが起立姿勢から倒伏姿勢に姿勢変更する前記作用側経路の終端近傍に配設するとともに、倒伏姿勢に姿勢変更するタインの作用面にセンサのセンシング面を対面させて配置したことを特徴とする請求項1記載のコンバインの穀稈係止搬送装置。
【請求項3】
前記作用側経路の終端近傍に、起立姿勢で移動するタインを受け止めるとともに、受け止めた状態でタインを倒伏姿勢に姿勢変更案内するタイン受け止め案内体を配設したことを特徴とする請求項2記載のコンバインの穀稈係止搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−178977(P2012−178977A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42095(P2011−42095)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】