説明

コンバイン

【課題】コンバインにおいて選別風を温風化し脱穀選別物の乾燥を促進する。
【解決手段】エンジンEと、脱穀物を風選する風選別部を具備するコンバインにおいて、唐箕22の左右吸風口22a,22bから吸入して唐箕22の前側部から選別風を送り出すように構成する。エンジンEとラジエータ31との間を循環する循環冷却水管32,32を設け、循環冷却水管32のエンジンEからラジエータ31に流れる部位から風選別部21の唐箕22を経てエンジンEに還流する唐箕循環冷却水管33を分岐する。唐箕循環冷却水管33の平面状に広がる熱交換部33aを唐箕22の左右吸風口22a,22bに対向配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀物を温風で予備乾燥するコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンバインにおいて、運転部を上部に備えたエンジン部を脱穀装置の前側部横一側に配設し、脱穀装置の前側部略全幅に亘って選別ファンを配設し、選別ファンの左右両側に選別風吸風用の吸気口を設け、選別ファンの左右中央部に補助吸気口を設け、エンジンからの冷却排風をファンにより補助吸気口に強制導入するように構成したものは公知である(特許文献1)。
【特許文献1】実開昭63−148144号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来装置では、選別ファンの左右中央部に補助吸気口を設け、ラジエータ及びエンジンを通過した冷却排風をファンにより補助吸気口に強制導入する構成である。従って、熱風は周囲の空気に曝されて温度が低下し、また、ファンにより選別ファンに導入する熱風もその一部であり、選別風の加熱効率が悪く選別物の乾燥効果が上がらないという不具合があった。そこで、この発明はこのような不具合を解消しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1の発明は、エンジン(E)と、脱穀物を風選する風選別部(21)を具備するコンバインにおいて、前記エンジン(E)とラジエータ(31)との間を循環する循環冷却水管(32,32)を設け、前記循環冷却水管(32)のエンジン(E)からラジエータ(31)に流れる部位から唐箕循環冷却水管(33)を分岐して風選別部(21)の唐箕(22)周辺部を経てエンジン(E)に還流するように構成し、該唐箕循環冷却水管(33)の一部を前記唐箕(22)の風が流れる部分に対向配置したことを特徴とするコンバインとする。
【0005】
前記構成によると、エンジン(E)により熱せられた冷却水は循環冷却水管(32)及び唐箕循環冷却水管(33)をながれ唐箕(22)の周辺部を経てエンジン(E)に還流する。そして、唐箕循環冷却水管(33)の冷却水が唐箕(22)の風が流れる部分を通過する際に熱交換して唐箕(22)の選別風を温風にし、脱穀選別物を乾燥しながら選別することができる。
【0006】
請求項2の発明は、前記唐箕(22)の左右吸風口(22a、22b)から吸入して唐箕(22)の前側部から選別風を送り出すように構成し、唐箕循環冷却水管(33)の平面状に広がる熱交換部(33a)を唐箕(22)の左右吸風口(22a、22b)に対向配置したことを特徴とする請求項1に記載のコンバインとする。
【0007】
前記構成によると、請求項1に記載の発明の前記作用に加えて、唐箕循環冷却水管(33)の平面状に広がる熱交換部(33a)を冷却水が通過する際に、唐箕(22)の左右吸風口(22a、22b)に吸引される吸引風により熱交換される。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明は、エンジン(E)により熱せられた冷却水を循環冷却水管(32)及び唐箕循環冷却水管(33)により温度の低下を少なくしながら唐箕(22)に全量を導くことができ、熱交換効率を高めながら唐箕(22)の選別風を温風化することができ、湿った脱穀選別物の乾燥効果を高めて後行程の穀粒乾燥時間の短縮と使用燃料の削減をことができる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の発明の前記効果に加えて、唐箕循環冷却水管(33)の平面状に広がる熱交換部(33a)を冷却水が通過する際に、唐箕(22)の左右吸風口(22a、22b)に吸引される吸引風を作用させるので、効率的に熱交換され選別風の温度を上昇させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に示すこの発明の実施の形態について説明する。
まず、コンバイン1の全体構成について説明する。図1にはコンバイン1の全体側面図、図2には全体平面図、図3には切断背面図、図4には切断側面図が図示されている。
【0011】
コンバイン1の走行車体2の下方には、左右一対の走行クローラ3,3を配設し、走行車体2上には、右側前部に操縦席4を、操縦席4の後方にグレンタンク6を、左側後部に脱穀部5を、脱穀部5及びグレンタンク6の後方に排稾処理装置7を、それぞれ配設している。脱穀部5の前方には、植立穀稈を分草引越しながら刈り取り後方の脱穀部5に向けて搬送する刈取搬送部8を昇降自在に設けている。
【0012】
次に、脱穀部5の構成について説明する。
扱室11内には前後方向の扱胴軸回りに回転するように扱歯付きの扱胴12を軸架し、扱胴12の下部外周を受網14で覆っている。扱室11の右側上方には二番処理室16を設け、二番処理室16には前後方向の二番処理胴軸回りに回転するように処理歯付きの二番処理胴17を軸架している。
【0013】
また、扱室11の右側下方には、排塵処理室18を設け、この排塵処理室18には前後方向の排塵処理胴軸回りに回転するようにラセン処理歯付きの排塵処理胴19を軸架し、扱室11の後側端部と排塵処理室18の前端端部とを連通口により連通し、扱室11から排塵処理室18に送り込まれた藁屑類を排塵処理胴19のラセン処理歯により後側に送りながら脱穀処理するように構成している。
【0014】
また、扱室11の左側方には脱穀用穀稈を移送するフィードチエン9を設け、フィードチエン9の搬送下手側には排藁搬送装置10を設けて、脱穀済みの排藁を後方の排稾処理装置7に向けて搬送するように構成している。
【0015】
また、扱室11の下方から後部にかけて風選別部21を設けている。唐箕22から前後方向の選別風路23に後方に向けて選別風を送り、選別風路23には前後方向に往復揺動する揺動選別棚24を設けている。揺動選別棚24の上部側には、前側部から後側部に向けてグレンパン24a、グレンシーブ24b、チャフシーブ24c及びストローラック24dからなる粗選別部を構成し、揺動選別棚24の下部側には網体からなるグレンシーブ24eにより精選別部を構成し、扱室11、二番処理室16及び排塵処理室18からの脱穀処理物を受けて後側に揺動移送しながら比重選別するように構成している。
【0016】
選別風路23の底部の前側には、選別された一番穀粒を受ける一番ラセン25a付きの一番受樋25を設け、一番受樋25に選別された一番穀粒を一番揚穀機26により前記グレンタンク6に揚穀し、後側には選別された二番物を受ける二番ラセン27a付きの二番受樋27を設け、二番受樋27に選別された二番物を二番揚穀機28により前記二番処理室16に揚穀するように構成している。
【0017】
次に、図4及び図5に基づき風選別部21における選別風の温風化構成について説明する。
エンジンEとラジエータ31の間を循環冷却水管32,32により接続し、冷却水がエンジンEとラジエータ31の間を循環するように構成している。また、循環冷却水管32のエンジンEからラジエータ31に流れる部位に制御弁34を設けて唐箕循環冷却水管33を分岐し、この唐箕循環冷却水管33を前記唐箕22のを経てラジエータ31に循環するように構成している。そして、唐箕循環冷却水管33の左右吸風口22a,22bに対向する部分を、上手側から複数の水管を経て下手側に流れる平面状の熱交換部33aに構成している。
【0018】
また、前記制御弁34により、(1)エンジンeからの冷却水をラジエータ31に流したり、あるいは、(2)エンジンEから唐箕循環冷却水管33に流したり、あるいは、(3)エンジンEからラジエータ31及び唐箕循環冷却水管33の双方に流すように、切り換え可能に構成している。しかして、このように種々に切り換えることにより、エンジンEの負荷変動による広範囲の温度変化でも冷却水の温度を一定に保つことができる。
【0019】
また、循環冷却水管32のラジエータ31からエンジンEへ流れる部位にはリリーフ弁35を設け、唐箕循環冷却水33からの冷却水がラジエータ31を所定圧で満たした後にリリーフ弁35からエンジンEに還流するように構成している。
【0020】
前記構成によると、エンジンEの冷却水を循環冷却水32、制御弁34から唐箕循環冷却水管33に送り、唐箕22の左右吸風口22a,22bの熱交換部33a,33aを経由してエンジンEに循環させることにより、熱交換効率を高めながら唐箕22の選別風を温風化することができ、湿った脱穀選別物の乾燥効果を高め、後行程の穀粒乾燥時間を短縮することができる。
【0021】
また、図6及び図7に基づき他の実施形態について説明する。
唐箕循環冷却水管33の熱交換部33aを唐箕22における選別風路23への送風口22cに配設しても、前記実施形態と同様の効果が期待できる。また、唐箕22の送風口22cに対向する部分に配設した熱交換部33aにより、選別風の風割り機能も兼ねることができる。
【0022】
次に、図4、図5、図8及び図9に基づき循環制御の実施形態について説明する。
図8に示すように、エンジンEの回転動力を脱穀ベルト伝動装置38を経由して脱穀部5の回転各部に動力を伝達し、脱穀クラッチレバー39により脱穀クラッチワイヤ40を介して脱穀クラッチ41を入/切できるように構成している。
【0023】
また、図9に示すように、制御部42の入力側には、入力インターフェイスを経由して脱穀クラッチ41の入/切を検出する脱穀クラッチ検出センサSE1を接続し、制御部42の出力側には、出力インターフェイスを経由して制御弁駆動手段SO1を接続している。
【0024】
前記構成によると、脱穀クラッチ検出センサSE1が脱穀クラッチ41の入りを検出すると、制御部42の指令により制御弁34が切り換えられ、エンジンEで加熱された冷却水が循環冷却水管32、唐箕循環冷却水管33を経由して唐箕22の左右吸風口22a,22bに対向配設されている熱交換部33aに送られてエンジンEに還流される。
【0025】
従って、冷却水の熱交換効率を高めながら唐箕22の選別風を温風化し、湿った脱穀選別物の乾燥効果を高めることができる。なお、脱穀クラッチ検出センサSE1が脱穀クラッチ41の切りを検出すると、制御弁34はラジエータ31側への循環に切り換えられる。
【0026】
また、脱穀クラッチ検出センサSE1が脱穀クラッチ41の入りを検出すると、制御弁34を唐箕22側及びラジエータ31側の双方への循環に切り換えてもよい。このように構成することにより、エンジンEの過負荷時にも加熱冷却水を十分に冷却することができる。
【0027】
次に、図10〜図12に基づき他の実施形態について説明する。
グレンタンク6を鉄板製の下部樋部6aと、合成樹脂製の上部タンク6bとに分割構成し、これらを着脱自在に連結しグレンタンク6を構成している。また、図12に示すように、循環冷却水管32のエンジンEからラジエータ31に流れる部位から、制御弁34を介してグレンタンク循環冷却水管33bを分岐し、グレンタンク6の下部樋部6aの傾斜板外周部には、グレンタンク環冷却水管33bの広い面積の熱交換部33aを対向配置し、グレンタンク循環冷却水管33bの終端側をラジエータ31に循環するように構成している。また、グレンタンク循環冷却水管33bの熱交換部33aをカバー43により被覆している。
【0028】
前記構成によると、エンジンEからの加熱された冷却水を制御弁34を経由してグレンタンク循環冷却水管33bに送ると、グレンタンク6の下部樋部6aの傾斜板部に対向している熱交換部33aにより、グレンタンク6内の穀粒を加熱乾燥し、冷却された冷却水はエンジンEに循環される。
【0029】
従って、後行程の穀粒乾燥機での乾燥時間を短縮することができる。また、グレンタンク6の下部樋部6aの傾斜板外周部の熱交換部33aによりグレンタンク6内の穀粒を加熱乾燥するので、高水分の穀粒の流下を促進し、穀粒の排出時間を短縮することができる。また、グレンタンク6の下部樋部6aは板金製であるので、熱に対しても強く耐久性を保持することができる。また、グレンタンク6の下部樋部6aを走行車体2から取り外すと、グレンタンク循環冷却水管33b及び熱交換部33aも同時に取り外すことができ、メンテナンス作業が容易となる。また、グレンタンク6の下部樋部6aの傾斜板外周部に、広い面積の熱交換部33aを対向配置しているので、グレンタンク6の下部を広い範囲で加熱することができ、穀粒との熱交換効率を高めることができる。また、グレンタンク環冷却水管33bの熱交換部33aをカバー43により被覆しているので、熱が外部に漏れにくく熱交換比率を高めることができる。
【0030】
また、グレンタンク循環冷却水管33bによりグレンタンク6内の穀粒を乾燥するにあたり、図1〜図3に示すように、グレンタンク6の左右方向中央部に熱交換部33aを上下方向に沿うように配設しても、前記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0031】
また、図2に示すように、グレンタンク6の後側端部を揚穀ラセン6bの筒体回りに回動するように構成すると、グレンタンク6を右外側に回動することにより、グレンタンク循環冷却水管33bも一体的に回動し、グレンタンク6及びグレンタンク循環冷却水管33b及び熱交換部33aのメンテナンスが容易になる。
【0032】
また、図2に示すように、グレンタンク6の揚穀ラセン6bの筒体部近傍を通してグレンタンク循環冷却水管33b,33bを上方に導き、次いで、グレンタンク6の中途後部から熱交換部33aに接続すると、グレンタンク6の回動時にも、グレンタンク循環冷却水管33b,33bの巻き付きや伸縮を防ぎ、耐久性を高めることができる。
【0033】
次に、図13及び図14に基づき他の制御形態について説明する。
図13に示すように、エンジンEの動力をグレンタンクベルト伝動装置46を経由してグレンタンク6の下部ラセン6a、揚穀ラセン6b及び排出オーガー6cに伝達し、排出クラッチレバー47を操作することにより、排出クラッチワイヤ48を介して排出クラッチ49を入/切できるように構成している。
【0034】
また、図14に示すように、制御部(CPU)42の入力側には、入力インターフェイスを介して排出クラッチ49の入/切を検出する排出クラッチ検出センサSE2及び水分計50を接続し、制御部42の出力側には、出力インターフェイスを経由して制御弁駆動手段SO1を接続している。
【0035】
前記構成によると、排出クラッチ検出センサSE2が排出クラッチ49の入りを検出すると、制御部42の指令により制御弁34が切り換えられ、エンジンEで加熱された冷却水が循環冷却水管32、グレンタンク循環冷却水管33bに送られ、グレンタンク6の下部樋部6aに対向している熱交換部33aを経てエンジンEに還流する。
【0036】
従って、加熱された冷却水の熱交換効率を高めながらグレンタンク6の穀粒を乾燥し、穀粒の流下を促進し排出作業を迅速に行なうことができる。また、排出クラッチ検出センサSE2が排出クラッチ49の切りを検出すると、制御弁34は冷却水をエンジンEからラジエータ31側への循環に切り換えられる。
【0037】
次に、図13及び図14に基づき他の制御形態について説明する。
水分計50が所定水分値以上の水分を検出すると、制御部42の指令により制御弁34が切り換えられ、エンジンEからの加熱された冷却水が循環冷却水管32、グレンタンク循環冷却水管33bを経由してグレンタンク6の下部樋部6aの熱交換部33aに送られてエンジンEに還流する。
【0038】
従って、冷却水の熱交換効率を高めながらグレンタンク6の穀粒を乾燥して穀粒の流下を促進し、下部樋部6aへの穀粒の付着を防止しながら排出作業を迅速に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】コンバイン全体の側面図
【図2】コンバイン全体の平面図
【図3】コンバインの切断背面図
【図4】脱穀部の切断側面図
【図5】循環冷却水管の流れを示すブロック図
【図6】脱穀部の切断側面図
【図7】循環冷却水管の流れを示すブロック図
【図8】伝動装置の側面図
【図9】制御ブロック図
【図10】コンバイン全体の側面図
【図11】コンバインの切断背面図
【図12】循環冷却水管の流れを示すブロック図
【図13】伝動装置の側面図
【図14】制御ブロック図
【符号の説明】
【0040】
1 コンバイン
21 風選別部
22 唐箕
22a,22b 左右吸風口
31 ラジエータ
32 循環冷却水管
33 唐箕循環冷却水管
33a 熱交換部
E エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(E)と、脱穀物を風選する風選別部(21)を具備するコンバインにおいて、前記エンジン(E)とラジエータ(31)との間を循環する循環冷却水管(32,32)を設け、前記循環冷却水管(32)のエンジン(E)からラジエータ(31)に流れる部位から唐箕循環冷却水管(33)を分岐して風選別部(21)の唐箕(22)周辺部を経てエンジン(E)に還流するように構成し、該唐箕循環冷却水管(33)の一部を前記唐箕(22)の風が流れる部分に対向配置したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記唐箕(22)の左右吸風口(22a、22b)から吸入して唐箕(22)の前側部から選別風を送り出すように構成し、唐箕循環冷却水管(33)の平面状に広がる熱交換部(33a)を唐箕(22)の左右吸風口(22a、22b)に対向配置したことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−174927(P2007−174927A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−374755(P2005−374755)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】