説明

コンバイン

【課題】覆い体の拡張と収縮作業を、横オーガの回動操作により楽に行う。覆い体を、作業時の日除けや雨除けとして使用する。
【解決手段】縦オーガ12aの上端部を中心として横オーガ12bを略水平方向に回動自在となした搬出オーガ12を具備するコンバインAにおいて、覆い体14を横オーガ12bに設け、横オーガ12bの略水平方向への回動動作に連動して拡張・収縮可能となすと共に、覆い体14を運転部4の上方を覆う配置構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、覆い体を設けたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインの機体をカバーできるようにしたカバー装置がある(特許文献1参照)。該カバー装置100は、図9に示すように、オーガ100bを備えたコンバイン100aにおいて、横オーガ100bの長さ方向に添って巻取シャフト100cを回転自在に設けると共に、被覆用のシート100dを巻取り自在に装着し、刈取り作業時には被覆用のシート100dを巻取シャフト100cに巻き取って収納状態にしておき、カバーが必要な時にはシート100dを巻き出して機体をカバーできるように構成されている。
【0003】
また、簡易機体用シートを空気の充填により膨らむチューブで構成したカバー装置がある(特許文献2参照)。該簡易機体用シート200は、図10に示すように、チューブをエンジンの排気により膨らませて機体用シートを自立させた後に、コンバイン200aを走行させて簡易機体用シート200中へ移動させ、その後にコックを開操作して空気を抜くことにより機体にカバーを掛けるように構成されている。
【特許文献1】特開平9−313027号公報
【特許文献2】特開2004−337023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記したコンバイン用の従来のカバー装置のうち、前者のカバー装置は、カバーを機体に架設するフレームを備えていない。そのため、刈取り作業を終えた後にコンバインをそのまま圃場に置いておく場合やコンバイン不使用時の保護カバーとして使用できるが、刈取り作業中の乗用型コンバインの日除けや雨除けとしは使用できない。
【0005】
また、後者のカバー装置は、不使用時のコンバインの保管を目的とするものであり、刈取り作業中の乗用型コンバインの日除けや雨除けとして使用できるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、上記課題を解決するため、本発明は、上下方向に伸延する縦オーガの上端部に、前後方向に伸延する横オーガの基端部を連通連結すると共に、同縦オーガの上端部を中心として横オーガを略水平方向に回動自在となした搬出オーガを具備するコンバインにおいて、上記横オーガに覆い体を設けると共に、同覆い体は、横オーガの略水平方向への回動動作に連動して拡張・収縮可能となしたことを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明は、さらに、覆い体は、シート状の覆い本片と、同覆い本体に前後方向に伸延させて形成した袋条片とを具備すると共に、同袋条片には、空気を注入して膨張させることにより、保形用リブとして機能する前後伸延条部を形成可能となしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、コンバインの横オーガに覆い体を設け、その覆い体を横オーガの略水平方向への回動動作に連動して拡張・収縮できる。したがって、横オーガの旋回指令を行なうことによって簡単に覆い体の展開架設操作および撤去収納操作を行うことができる。
【0009】
また、覆い体には、保形用リブとして機能する前後伸延条部を形成するための袋条部が備えられている。したがって、覆い体が設けられた横オーガを旋回させた後、前後方向に伸延した袋条片に空気を充填すると、袋条片が膨張し、保形用リブとして機能する前後伸延条部が形成される。このようにして前後伸延条部が形成されると、前後方向の強度が向上し、覆い本片の垂れ下がりが防止される。
このような作業を行なうことによって簡単に、運転部とその近傍の機体要所を覆う覆い体を架設できる。
【0010】
袋条片は、空気充填時にはフレームとしての必要強度を有した気嚢となり、排気時には柔軟なシート状になるものである。このように、袋条片は、必要に応じて剛柔自在に形態を変えるものであり、このような袋条片を備える覆い体を用いれば、覆い体の架設や撤去収納を簡単に行うことができる。また、このような覆い体は軽量であり、しかも折り畳んだときに容積を大幅に縮小させることができるので、収納箱などの収納スペースを確保する場合にコンパクトなもので済む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の最良の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0012】
図1〜図4は、本発明に係るコンバインAを示しており、コンバインAは、左右一対の走行部3,3を装着した走行フレーム1の上方に機体フレーム2を載設し、機体フレーム2の前方に刈取部5を昇降自在に連結し、機体フレーム2の一側に運転部4を配置すると共に後方にグレンタンク11を配置したものである。そして、機体フレーム2の他側には、脱穀部6と揺動選別部7とが上下に配設され、これらの後方に排藁処理部8が配置されている。
【0013】
刈取部5で刈取られた穀稈は脱穀部6に搬送され、脱穀部6の扱胴9及び処理胴10によって脱穀される。脱穀により生じた排藁は排藁処理部8から外部に排出され、脱穀物は揺動選別部7で穀粒と塵芥とに分離される。穀粒はグレンタンク11に収納され、塵芥は外部排出される。
【0014】
上記グレンタンク11には穀粒の搬出オーガ12が連結されている。搬出オーガ12は、グレンタンク11から穀粒を搬送するものであり、下端部をグレンタンク11の下部に位置させた縦オーガ12aと、縦オーガ12aの上端部に連結された横オーガ12bとからなるものである。
【0015】
また、搬出オーガ12は、図5に示すオーガ旋回装置13によって可動できるようになっている。オーガ旋回装置13では、駆動装置13aの駆動によりピニオン13bが回転し、それに伴いピニオン13bと噛合している歯車13cが回転するようになっており、この回転に伴い横オーガ12bが旋回するようになっている。
【0016】
そして、図2に示すように、横オーガ12bには覆い体14が取付けられている。覆い体14は、覆い本片15と袋条片16とを有する。
【0017】
覆い本片15は、略扇形をなすシート状物からなり、扇にたとえて説明すれば、一方の親骨の位置には、横オーガ12bへ取り付けるための取付片18が設けられており、他の一辺、即ち、扇の他方の親骨位置には、支柱22へ取り付けるための係止部19と雨除けとなる垂幕20が設けられている。
【0018】
袋条片16は、図2aに示すように、扇の他方の親骨の近傍位置に、前後伸延条部を形成する袋条片16aとして形成されている。
【0019】
袋条片16は、気密性を有したシート又は布を袋に加工して形成されている。
【0020】
袋条片16は、当初は、保形性を有しない形態であり折り曲げ可能であるが、空気が充填されると、図6に示すように、筒状に膨らみ、覆い本片15を支持可能な保形性を有した形態に変化する。袋条片16は、空気が抜かれると再び保形性を失い、折り畳み可能な形態に戻る。
【0021】
袋条片16は、この実施例においては、前後伸延条部を形成する袋条片16aの他にも他の袋条片16が設けられている。即ち、扇の一方の親骨近傍位置には、横オーガ側伸延条部を形成する袋条片16bが、扇の先端位置には、弧状をなす前縁伸延条部を形成する袋条片16cが、扇のカナメ側には、弧状をなす後縁伸延条部を形成する袋条片16dが各々設けられている。その袋条片16dの一端には、前後伸延条部を形成する袋条片16aが連通状態に連結されており、他端には横オーガ側伸延条部を形成する袋条片16bが同様に連通状態に連結されている。
【0022】
そして、開口部23が、後縁伸延条部を形成する袋条片16dに設けられており、開口部23には、コンプレッサ24に接続された連通管26が通気可能に接続されている。
【0023】
桟状袋条片17は、扇の中骨相当位置に設けられており、連通部17aにより前縁伸延条部を形成する袋条片16c連通連結されている。
【0024】
取付片18は、横オーガ側伸延条部を形成する袋条片16bの外縁部に形成されており、その取付片18は、横オーガ12bに取り付けられて固定されている。
【0025】
係止部19は、前後伸延条部を形成する袋条片16aの近傍の前後両端に設けられており、コンバインAの機体に取り付けられている支柱22の上端部に係止される。
【0026】
垂幕20は、覆い本片15の外側縁に、前後方向に伸延させて形成した袋条片16aの外側位置に沿って設けられている。機体側方からの風雨の侵入することのないときに取り外せるように、垂幕20を面ファスナで取外し可能に取り付けておくことができる。
【0027】
覆い体収納箱21は、図4に示すように、横オーガ12bに取り付けられている。覆い体収納箱21には、覆い体14を出し入れする上部開口が設けられており、その上部開口は、シートからなる開閉自在なカバー21aにより覆蓋されカバー留具21bで係止されている。
【0028】
次に、コンバイン機体の上方位置への覆い体14の架設操作と格納操作について説明する。
【0029】
まず、覆い体収納箱21が取り付けられた横オーガ12bを、支柱22の近傍位置まで旋回操作する。その後、覆い体収納箱21から覆い体14を少し引き出し、覆い体14に設けられた係止部19を支柱22の先端に取り付ける。
【0030】
覆い体14を支柱22に取り付けた後、横オーガ12bを支柱22から遠ざかる方向へ旋回操作しながら、覆い体14を覆い体収納箱21から少しずつ引き出してゆく。
【0031】
旋回により、横オーガ12bが覆い体14の張り上がり位置に到達したときに、横オーガ12bの旋回操作は完了する。
【0032】
その後、コンプレッサ24を駆動すると共に、切換弁25を連通状態に切換え操作する。コンプレッサ24から送られてきた空気は、連通管26と開口部23を経由して袋条片16へ注入充填される。
【0033】
空気が充填され前後伸延条部を形成する袋条片16aが膨らむと、柔軟性を有した袋条片16aは、保形性を有した形態に変化し、覆い体14の縁部は、真っ直ぐに張り上げられその状態で支持される。
【0034】
コンプレッサ24から送られてくる空気は、桟状袋条片17にも充填され、桟状袋条片17も桟状膨らみ、覆い本片15の垂れ下がりを防止する。
【0035】
このようにして覆い体14を架設すると、図2bに示されるように、架設された覆い体14によって運転部およびその周辺の機体の要所の上方が覆われる状態になる。そして、本実施形態のコンバインAによれば、覆い体14で運転部4等を覆った状態で刈取りなどの作業を行なうことができる。コンバインによる作業は、炎天下や雨天のときにも行なわれるものであるところ、このような覆い体14があれば、覆い体14を作業中の日除けや雨除けとして使用することができ、作業環境が向上し、ひいては作業性が向上する。
【0036】
格納は、架設時の略逆の手順で、覆い体14を覆い体収納箱21内に格納し保管する。
【0037】
袋条片16に一旦注入した空気を排気するときには、弁25を操作し、コンプレッサ24と連通していた連通管26を大気側へ開放するように弁25を操作する。この弁操作により、袋条片16内の空気は大気中に排気されてゆく。
【0038】
給排気回路は、他の給排気回路として構成することができる。即ち、切換弁を用いた給排気回路を構成しておき、給気時には、連通管26をコンプレッサ24の吐出側に連通させ、排気時には、連通管26をコンプレッサ24の吸込側へ連通させる強制給排気回路とする(不図示)。
【0039】
また、給排気回路は、コンプレッサ24に代え、正逆回転可能なポンプ又は送風機を用いた強制給排気回路とすることができる(不図示)。
【0040】
袋条片16には、排気のために、図7に示すように、排気口27を設けておくことができる。排気口27には、栓体が取り付けられており、開栓することで袋条片16内の空気を排出することができる。この操作により排気を行うときは、排気のための弁25の操作は任意である。
【0041】
袋条片16内の空気を放出するための排出口については、密閉栓に代え、気密ファスナ(不図示)により構成することができる。気密ファスナを用いた排気口は開口を排気が短時間で行えるように大開口部に構成するに適している。
【0042】
なお、垂れ下り防止部材として桟状袋条片17を用いた例を示したが、これに代え、図8に示すように、剛性を有した軽量な部材、例えば中空棒状の桟部材17bを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】乗用型コンバインを示す側面図。
【図2a】本発明に係る乗用型コンバインの覆い体を示す平面図。
【図2b】図2と同様な平面図であって、一部を透視した平面図。
【図3】図2bのA−A線の断面を示す図。
【図4】横オーガと覆い体収納箱を示す拡大断面図。
【図5】穀粒搬出オーガの側面図。
【図6】覆い体の部分断面図。
【図7】給排気装置を示す回路図。
【図8】覆い体の他の実施例を示す平面図。
【図9】従来例を示す斜視図。
【図10】他の従来例を示す斜視図。
【符号の説明】
【0044】
1 コンバイン
2 機体フレーム
3 走行部
4 運転部
5 刈取部
6 脱穀部
7 揺動選別部
8 排藁処理部
9 扱胴
10 処理胴
11 グレンタンク
12 搬出オーガ
12a 縦オーガ
12b 横オーガ
13 オーガ旋回装置
14 覆い体
15 覆い本片
16 袋条片
17 桟状袋条片
20 垂幕
21 覆い体収納箱
22 支柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に伸延する縦オーガの上端部に、前後方向に伸延する横オーガの基端部を連通連結すると共に、同縦オーガの上端部を中心として横オーガを略水平方向に回動自在となした搬出オーガを具備するコンバインにおいて、
上記横オーガに覆い体を設けると共に、同覆い体は、横オーガの略水平方向への回動動作に連動して拡張・収縮可能となしたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
覆い体は、シート状の覆い本片と、同覆い本体に前後方向に伸延させて形成した袋条片とを具備すると共に、同袋条片には、空気を注入して膨張させることにより、保形用リブとして機能する前後伸延条部を形成可能となしたことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−244247(P2007−244247A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−69743(P2006−69743)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】