説明

コンバイン

【課題】 刈り残しが発生しにくい夜間作業を操縦容易に行うことができるコンバインを提供する。
【解決手段】 走行機体前方の地面に向けて走行機体前後向きの線状スポット照明光30を照射する照射手段を設けてある。線状スポット照明光30を既刈り地32と未刈り地33との境界Lに照射させるよう構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインにおいて、従来、たとえば特許文献1に示されるものがあった。特許文献1に示されるコンバインは、刈取り部に設けたライト、アンローダに設けたライトを備えている。刈取り部のライトは、走行機体の前方に設定の照射範囲を照明する。すなわち、前照灯である。アンローダのライトは、刈取り部の中央直前を照明する。すなわち、作業灯である。
【0003】
【特許文献1】特開2006−25666号公報(段落〔0020〕−〔0027〕、図1,2,6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンバインにおいて、刈り残しを回避しながら作業するには、刈取り前処理部の横端部が既刈り地と未刈り地との境界を通るようにして走行機体を走行させる必要がある。このため、従来の照明に関する技術を採用することによって夜間作業を可能にした場合、照明の下で既刈り地と未刈り地の境界を認識し、この境界を刈取り前処理部の横端部が通るよう注意深く操縦する必要があった。
【0005】
本発明の目的は、刈り残しが発生しにくい夜間作業を操縦容易に行うことができるコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本第1発明によるコンバインは、走行機体前方の地面に向けて走行機体前後向きの線状スポット照明光を照射する照射手段を設け、前記線状スポット照明光を既刈り地と未刈り地との境界に照射させるよう構成してある。
【0007】
本第1発明の構成によると、線状スポット照明光が既刈り地と未刈り地の境界に照射される状態にして走行機体を走行させることにより、刈取り前処理部の横一端部が境界を通るよう設定することができる。すると、刈取り前処理部の横一端部が前記境界を通るようにして走行機体を走行させるための操縦が、線状スポット照明光を照準手段として従来よりも操縦容易に行うことができる。
【0008】
これにより、夜間作業でも、刈取り前処理部の横一端部が前記境界を通って刈り残りが発生しにくい作業を操縦面から楽にかつ容易に行うことができる。
【0009】
本第2発明は、本第1発明の構成において、前記照射手段を、前照灯による照射光の一部を前記線状スポット照明光として照射するよう構成してある。
【0010】
本第2発明の構成によると、前照灯を線状スポット照明光の光源に利用できる。
【0011】
これにより、刈り残りが発生しにくい夜間作業を楽にかつ容易に行えるコンバインでありながら、線状スポット照明光の光源に前照灯を利用して安価に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例に係るコンバインの全体側面図である。図2は、本発明の実施例に係るコンバインの全体平面図である。これらの図に示すように、本実施例に係るコンバインは、左右一対のクローラ式走行装置1,1を備えた走行機体と、この走行機体の機体フレーム2の前部に連結された刈取り前処理部10と、前記機体フレーム2の後部側に設けた脱穀装置3および穀粒タンク4とを備えている。
【0013】
このコンバインは、稲、麦などの穀粒を収穫する。
すなわち、走行機体は、前記左右一対の走行装置1,1を備える他、前記機体フレーム2の前端部の刈取り前処理部10が連結している側とは反対側の横端側に設けた運転部5を備えている。運転部5は、運転座席6を備えている。この運転座席6は、エンジンボンネットに兼用の座席支持台を介して機体フレーム2に支持されている。刈取り前処理部10は、前記機体フレーム2に基部が連結された前処理部フレーム11と、前記前処理部フレーム11の前部を構成するとともに機体横方向に並んだ複数本の分草フレーム12と、各分草フレーム12の先端部に設けた分草具13と、この分草具13の後方に配置して前記前処理部フレーム11に機体横方向に並べて設けた複数の引起し装置14と、この引起し装置14の後方に配置して前記前処理部フレーム11に設けた一つのバリカン型の刈取り装置15と、この刈取り装置15の上方に配置して前記前処理部フレームに設けた搬送装置16とを備えている。刈取り前処理部10は、前記前処理部フレーム11が昇降シリンダ17によって機体フレーム2に対して上下に揺動操作されることにより、前記各分草具13が地面の近くに位置した下降作業状態と、各分草具13が地面から高く上昇した上昇非作業状態とに昇降操作される。刈取り前処理部10を下降作業状態にして走行機体を走行させると、各分草具13がこれに対応した刈り取り対象の穀稈列の植立穀稈を他の穀稈列の植立穀稈と分草して後方に導入し、各分草具13からの植立穀稈は、これに対応する引起し装置14によって引起し処理される。各引起し装置14によって引起し処理されている植立穀稈が刈取り装置15によって刈取り処理され、刈取り装置15からの刈取り穀稈が搬送装置16によって後方に搬送して脱穀装置3の脱穀フィードチェーン3aに供給される。脱穀装置3は、脱穀フィードチェーン3aによって刈取り穀稈の株元側を後方に挟持搬送しながら、その刈取り穀稈の穂先側を脱穀処理する。穀粒タンク4は、脱穀装置3からの脱穀粒を回収して貯留していく。
【0014】
図1,2,3に示すように、刈取り前処理部10は、前記複数の引起し装置14のうちの最も機体左横外側に位置する引起し装置14の上部の左横側と、前記複数の引起し装置14のうちの最も機体右横外側に位置する引起し装置14の上部の右横側とに振り分けて設けた左右一対の前照灯20,20を備えている。図4は、各前照灯20の刈取り前処理部10に設置された状態での斜視図である。この図では、左側(運転部5から遠い側)の前照灯20のカバー23が取り外され、右側(運転部3に近い側)の前照灯20にはカバー23が装着されている。図5は、左側の前照灯20のカバー取り外し状態での正面図である。図6は、左側の前照灯20のカバー取り外し状態での斜視図である。図7は、右側の前照灯20のカバー取り外し状態での正面図である。図8は、右側の前照灯20のカバー取り外し状態での斜視図である。これらの図に示すように、各前照灯20は、機体上下方向に並んだ上下一対のバルブ21,21と、一つの反射器22と、一つのカバー23とを備えて構成してある。反射器22は、引起し装置14の前カバー14aの前面に連なる穀稈支持面を形成するカバー18に設けた前照灯組み付け凹部に装着してある。上下一対のバルブ21,21は、反射器22に設けた上下一対の反射鏡部24,24に振り分けて支持させてある。カバー23は、前記反射器22および前記各バルブ21を覆うよう形成して前記前照灯組み付け凹部に装着してある。このカバー23は、反射鏡部24およびバルブ21からの光を透過しやすいよう透明になっている。
【0015】
左側の前照灯20の前記上下一対の反射鏡部24,24は、複数の平坦な反射鏡面24aを備えている。各反射鏡部24の複数の反射鏡面24aは、全ての反射鏡面24aによって凹入形でかつ非球面形の反射鏡面を形成し、バルブ21からの光を走行機体の前方に向けて照射するよう並んでいる。
【0016】
右側の前照灯20の前記上下一対の反射鏡部24,24は、複数の平坦な反射鏡面24a,24bを備えている。各反射鏡部24の複数の反射鏡面24a,24bは、全ての反射鏡面24a,24bによって凹入形でかつ非球面形の反射鏡面を形成し、バルブ21からの光を走行機体の前方に向けて照射するよう並んでいる。上側の反射鏡部24のうちのバルブ21の上方と下方とに位置する一部の複数の反射鏡面24bは、これらの反射鏡面24bによってバルブ21からの光の一部を他の反射鏡面24aよりも遠くまで線状にかつスポット状に照射する反射角を備えている。
【0017】
左側の前照灯20と、右側の前照灯20とを比較すると、下側の反射鏡部24については同一の構成を備え、上側の反射鏡部24について異なる構成を備えている。すなわち、右側の前照灯20は、上側の反射鏡部24に設けた前記スポット状反射の反射鏡面24bを備えているのに対し、左側の前照灯20は、前記スポット状反射の反射鏡面24bを備えていない。
【0018】
図9は、左右一対の前照灯20,20による照明状態を示す平面図である。この図に示すように、左側の前照灯20は、上下一対のバルブ21,21による照明光を上下一対の反射鏡部24,24によって走行機体前方の地面に向けて照射し、照明範囲LDと照明範囲ADとを照明する。右側の前照灯20は、上下一対のバルブ21,21による照明光を上下一対の反射鏡部24,24によって走行機体前方の地面に向けて照射し、照明範囲RDと照明範囲ADとを照明する。右側の前照灯20は、上側のバルブ21による照明光の一部を前記スポット状反射の反射鏡面24bによって走行機体前後向きの線状スポット照明光30として走行機体前方の地面に向けて照射し、前記照明範囲RDよりも前方の走行機体前後向きの線状照明範囲RDSを照明する。照明範囲ADは、左側前照灯20による照明と、右側の前照灯20による照明とが重なる照明範囲である。
【0019】
前記線状照明範囲RDSと走行機体との機体横方向での位置関係を、図9の如く設定してある。すなわち、図9に示すように、作業時には、走行機体の前方に位置する複数の植立穀稈列のうちの最も運転部側(右側)に位置する植立穀稈列31に隣り合った切り株列Lが既刈り地32と未刈り地33との境界になる。前記境界としての切り株列Lに前記線状スポット照明光30が照射される状態で走行機体が走行するよう走行機体の操縦をすれば、刈取り前処理部10の運転部側の横端部が既刈り地32と未刈り地33との境界としての切り株列Lを通るよう設定してある。つまり、線状スポット照明光30は、最も運転部側に位置する分草具13が未刈り地33の最も運転部側に位置する植立穀稈列31の植立穀稈を引起し装置14に導入していくよう走行機体を操縦するのに、既刈り地32と未刈り地33との境界としての切り株列Lに位置合わせする照準手段になっている。
【0020】
〔別実施例〕
上記実施例のスポット状反射の反射鏡面24bに替え、専用の照明灯によって線状スポット照明光30を照射する構成を採用しても本発明の目的を達成することができる。また、複数の点状の照明光が走行機体前後方向に線状に並んだ照明光を照射させる構成を採用しても本発明の目的を達成することができる。従って、これら連続したスポット照明光や不連続のスポット照明光を総称して線状スポット照明光30と総称する。また、これら反射鏡面24bや専用の照明灯を総称して線状スポット照明光を照射する照射手段24bと呼称する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】コンバインの全体平面図
【図3】刈取り前処理部の正面図
【図4】前照灯の設置状態での斜視図
【図5】左側の前照灯のカバー取り外し状態での正面図
【図6】左側の前照灯のカバー取り外し状態での斜視図
【図7】右側の前照灯のカバー取り外し状態での正面図
【図8】右側の前照灯のカバー取り外し状態での斜視図
【図9】照明状態を示す平面図
【符号の説明】
【0022】
20 前照灯
24b 照射手段
30 線状スポット照明光
32 既刈り地
33 未刈り地
L 境界

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体前方の地面に向けて走行機体前後向きの線状スポット照明光を照射する照射手段を設け、
前記線状スポット照明光を既刈り地と未刈り地との境界に照射させるよう構成してあるコンバイン。
【請求項2】
前記照射手段を、前照灯による照射光の一部を前記線状スポット照明光として照射するよう構成してある請求項1記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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