説明

コンバイン

【課題】 夜間作業でも、運転部側とは反対側の機体横側方を見やすいコンバインを構造簡単に得る。
【解決手段】 刈取り前処理部10に設けた前照灯20Lを備えてある。前照灯20Lの前方に設けた反射手段26を備えてある。反射手段26は、前照灯20Lによる照射光の一部を走行機体の運転部5が位置する側とは反対側での横外側方の地面に向けて反射させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインにおいて、従来、たとえば特許文献1に示されるものがあった。特許文献1に示されたコンバインは、刈取り前処理部の横側に設けた側照灯を備えている。側照灯は、刈取り前処理部の運転部が位置する側とは反対側の横側方を照明する。
【0003】
【特許文献1】特開2006−55094号公報(段落〔0032〕−〔0034〕、図1−3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンバインでは、一般に、自走機体の運転部が位置する側とは反対側の横外側に未刈り地が位置するようにして作業される。穀稈が長稈であると、機体横側方の植立穀稈が機体側に倒れかかりやすいことから、植立穀稈の機体への巻き込みを回避する注意深い運転が必要になる。このため、夜間作業の場合でも、運転部側とは反対側の機体横側方における状況の判断を行いやすいよう従来の照明技術を採用すると、横側方を照明する専用の照明灯が必要になっていた。
【0005】
本発明の目的は、夜間作業でも運転部側とは反対側の機体横側方における状況の判断を行いやすいものでありながら、構造簡単に得ることができるコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本第1発明によるコンバインは、刈取り前処理部に設けた前照灯と、前記前照灯による照射光の一部を走行機体の運転部が位置する側とは反対側での横外側方の地面に向けて反射させるよう前記前照灯の前方に設けた反射手段とを備えてある。
【0007】
本第1発明の構成によると、前照灯による照射光の一部を反射手段によって反射させ、この反射光によって走行機体の運転部側とは反対側での横外側方を照明することができる。
【0008】
これにより、夜間作業の場合でも、運転部側とは反対側の機体横側方における状況を見やすく、穀稈の機体への巻き込みを回避しやすいなど有利に作業することができるものでありながら、前照灯を横側方の照明用に利用した構造簡単なものとし、安価に得ることができる。
【0009】
本第2発明は、本第1発明の構成において、前記刈取り前処理部に脱着自在な強制分草装置と、前記強制分草装置に設けた補助前照灯とを備え、
前記反射手段を、前記前照灯による照射光のうちの前記強制分草装置に当たる照射光を反射させるよう前記強制分草装置に設けてある。
【0010】
本第2発明の構成によると、前照灯による照明光の一部が強制分草装置に当たって前方照明に使用できなくても、補助前照灯によって前方照明を補い、前方照明の明るさを確保することができる。強制分草装置のために前方照明に使用できない照明光を反射手段によって反射させ、走行機体の運転部側とは反対側での横外側方の照明に使用できる。
【0011】
これにより、強制分草装置を備えるものでありながら、前方照明の明るさを確保して運転しやすくすることができ、かつ、前照灯の強制分草装置に当たる照明光を走行機体横外側方の照明に使用し、前照灯による照明光を無駄なく使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例に係るコンバインの全体側面図である。この図に示すように、本発明の実施例に係るコンバインは、左右一対のクローラ式走行装置1,1を備えた走行機体と、この走行機体の機体フレーム2の前部に連結された刈取り前処理部10と、前記機体フレーム2の後部側に設けた脱穀装置3および穀粒タンク4とを備えている。
【0013】
このコンバインは、稲、麦などの穀粒を収穫する。
すなわち、図1,7に示すように、走行機体は、前記左右一対の走行装置1,1を備える他、前記機体フレーム2の前端部の刈取り前処理部10が連結している側とは反対側の横端側に設けた運転部5を備えている。運転部5は、エンジンボンネットに兼用の座席支持台を介して機体フレーム2に支持された運転座席6を備えている。刈取り前処理部10は、前記機体フレーム2に基部が連結された前処理部フレーム11と、前記前処理部フレーム11の前部を構成するとともに機体横方向に並んだ複数本の分草フレーム12と、各分草フレーム12の先端部に設けた分草具13と、この分草具13の後方に配置して前記前処理部フレーム11に機体横方向に並べて設けた複数の引起し装置14と、この引起し装置14の後方に配置して前記前処理部フレーム11に設けた一つのバリカン型の刈取り装置15と、この刈取り装置15の上方に配置して前記前処理部フレーム11に設けた搬送装置16と、前記複数の引起し装置14のうちの運転部5から最も離れた引起し装置14の機体横外側に設けた強制分草装置30とを備えている。強制分草装置30は、分草ケース31と、この分草ケース31から分草ケース前側の引起し経路に突出して引起し経路を上昇移動するよう分草ケース内に支持された複数本の分草爪32と、前記引起し装置14の駆動力を引起し装置14の前カバー14aの上部から分草ケース31の上部に導入する伝動ケース33とを備えている。刈取り前処理部10は、前記前処理部フレーム11が昇降シリンダ17によって機体フレーム2に対して上下に揺動操作されることにより、前記各分草具13が地面の近くに位置した下降作業状態と、各分草具13が地面から高く上昇した上昇非作業状態とに昇降操作される。刈取り前処理部10を下降作業状態にして走行機体を走行させると、刈取り前処理部10は、各分草具13によって対応した刈り取り対象の穀稈列の植立穀稈を他の穀稈列の植立穀稈と分草して後方に導入し、運転部5から最も離れて位置する分草具13からの刈り取り対象の植立穀稈を強制分草装置30の分草爪32によって非刈取り対象の植立穀稈と分草しながら後方に導入し、各分草具13からの植立穀稈を対応する引起し装置14によって引起し処理するとともに刈取り装置15によって刈取り処理し、刈取り装置15からの刈取り穀稈を搬送装置16によって後方に搬送して脱穀装置3の脱穀フィードチェーン3aに供給する。脱穀装置3は、脱穀フィードチェーン3aによって刈取り穀稈の株元側を後方に挟持搬送しながら、その刈取り穀稈の穂先側を脱穀処理する。穀粒タンク4は、脱穀装置3からの脱穀粒を回収して貯留していく。
【0014】
図1,2,7に示すように、刈取り前処理部10は、前記複数の引起し装置14のうちの最も機体左横外側に位置する引起し装置14の上部の左横側と、前記複数の引起し装置14のうちの最も機体右横外側に位置する引起し装置14の上部の右横側とに振り分けて設けた左右一対の前照灯20L,20Rと、前記強制分草装置30の上部に設けた補助前照灯25と、前記左右一対の前照灯20L,20Rのうちの運転部5から遠い側に位置する前照灯20Lの前方に設けた反射手段26とを備えている。
【0015】
図5は、前記各前照灯20L,20Rの分解状態での斜視図である。図6は、前記各前照灯20L,20Rの縦断側面図である。これらの図に示すように、前記各前照灯20L,20Rは、機体上下方向に並んだ上下一対のバルブ21,21と、一つの反射器22と、一つのカバー23とを備えて構成してある。反射器22は、引起し装置14の前記前カバー14aの前面に連なる穀稈支持面を形成するカバー18に設けた前照灯組み付け凹部に装着してある。上下一対のバルブ21,21は、反射器22に設けた上下一対の反射鏡部24,24に振り分けて支持させてある。カバー23は、前記反射器22および前記各バルブ21を覆うよう形成して前記前照灯組み付け凹部に装着してある。このカバー23は、反射鏡部24およびバルブ21からの光が透過しやすいよう透明になっている。
【0016】
図3は、運転部5から遠い方の前照灯20L、補助前照灯25、反射手段26が配設された部位の側面図である。図4は、運転部5から遠い方の前照灯20L、補助前照灯25、反射手段26が配設された部位の平面図である。これらの図に示すように、運転部5から遠い方の前照灯20Lによる照明光の一部は、強制分草装置30の前記伝動ケース33と分草ケース31の上部とに当たり、機体前方の照明範囲に届かない。このため、前記補助前照灯25は、前記前照灯20Lと同様に機体前方に向けて照明光を照射し、前照灯20Lによる前方照明を補った前方照明を行う。前記反射手段26は、前記分草ケース31の背後に設けた機体後方向きの反射鏡面で成り、前記前照灯20Lによって照射された照明光の一部であって前記分草ケース31に当たった照明光を走行機体の運転部5が位置する側とは反対側での横外側方の地面に向けて反射する。
【0017】
図7は、前記左右一対の前照灯20L,20Rと、前記補助前照灯25と、前記反射手段26とによる照明範囲を示す平面図である。この図に示すように、運転部5から遠い方の前照灯20Lと、前記補助前照灯25とは、走行機体前方の地面に向けて照射し、照明範囲LDと照明範囲ADとを照明する。運転部5に近い方の前照灯20Rは、走行機体前方の地面に向けて照射し、照明範囲RDと照明範囲ADとを照明する。照明範囲ADは、運転部5から遠い方の前照灯20Lと補助前照灯25とによる照明と、運転部5に近い方の前照灯20Rによる照明とが重なる照明範囲である。反射手段26は、照明灯20Lからの照明光の一部を後方向きに反射し、走行機体の横外側に位置する未刈り地の照明範囲BDを照明し、図1,2の如く刈取り前処理部10に位置するサイドミラー34を利用することによって得られる走行機体横外側の視界を照明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】刈取り前処理部の正面図
【図3】前照灯、補助前照灯、反射手段の配設部の側面図
【図4】前照灯、補助前照灯、反射手段の配設部の平面図
【図5】前照灯の分解状態での斜視図
【図6】前照灯の縦断側面図
【図7】照明範囲を示す平面図
【符号の説明】
【0019】
5 運転部
10 刈取り前処理部
20L 前照灯
25 補助前照灯
26 反射手段
30 強制分草装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取り前処理部に設けた前照灯と、前記前照灯による照射光の一部を走行機体の運転部が位置する側とは反対側での横外側方の地面に向けて反射させるよう前記前照灯の前方に設けた反射手段とを備えてあるコンバイン。
【請求項2】
前記刈取り前処理部に脱着自在な強制分草装置と、前記強制分草装置に設けた補助前照灯とを備え、
前記反射手段を、前記前照灯による照射光のうちの前記強制分草装置に当たる照射光を反射させるよう前記強制分草装置に設けてある請求項1記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−131868(P2008−131868A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318604(P2006−318604)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】