説明

コンバイン

【課題】二番物の詰りが発生するという問題を解消しつつ、枝梗除去能力および搬送速度の向上を可能とする二番処理装置を備えたコンバインを提供する。
【解決手段】ローター40と、該ローター40に植設される処理歯84・84・・・と、ローター40を収納する処理ケース39の内面に固設される固定歯81・81・・・および送塵弁82・82・82からなる二番還元処理装置38を二番還元搬送部36に備えるコンバイン100において、ローター40には、穀粒を搬送方向に導くスクリュー83が固設され、かつ、送塵弁82・82・82は、穀粒の搬送を妨げる角度に配設される構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの選別装置により選別した二番物を還元する二番還元コンベアの二番処理装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、選別装置により選別した二番物を還元する二番還元コンベアを備え、さらに該二番還元コンベアに二番処理装置を備える構成としたコンバインは公知となっている。
係る二番処理装置においては、二番物の搬送機構は、枝梗処理用のローターと該ローターを内挿する処理ケースの内面に設けられる送塵弁により構成しており、ローターの回転によりローターの回転周方向に押圧されて移動する二番物を、ローターの回転周方向に対して傾斜させて配設する送塵弁のガイド作用によりローター軸方向に移動させて、二番物を脱穀装置側へと搬送するようにしている。
また、送塵弁をローター軸に対する角度を可変に構成することにより、脱穀処理の対象となる作物種(例えば、稲や麦等)に応じて、二番物の搬送速度を適切に調整可能とする技術も公知となっている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3814198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来技術においては、送塵弁の角度調整により二番物の搬送速度を上げると、枝梗処理性能が低下する(即ち、枝梗が除去されない穀粒が増える)ため、枝梗除去能力を確保しようとすると搬送速度を上げられないという問題があった。また、送塵弁の角度調整により二番物の搬送速度を下げると、枝梗処理装置内部で二番物の詰りが発生しやすくなるという問題もあった。つまり、枝梗除去能力の向上と搬送速度の向上という課題は相反する関係にあり、これらの課題を両立して解決することは困難な状況であった。
そこで本発明では、このような状況を鑑み、二番物の詰りが発生するという問題を解消しつつ、枝梗除去能力および搬送速度の向上を可能とする二番処理装置を備えたコンバインを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、ローターと、該ローターに植設される枝梗処理歯と、前記ローターを収納する処理ケースの内面に固設される受歯および送塵弁からなる二番還元処理装置を二番還元搬送部に備えるコンバインにおいて、前記ローターには、被処理物を搬送方向に導くスクリューが固設され、かつ、前記送塵弁は、前記被処理物の搬送を妨げる角度に配設される、ことを特徴としたものである。
【0006】
請求項2においては、前記送塵弁の角度は、前記ローターの回転方向に対して、前記スクリューによる前記被処理物の搬送方向と略線対称となる、ことを特徴としたものである。
【0007】
請求項3においては、前記ローターの軸方向矢視において、前記枝梗処理歯と、前記受歯が重複する、ことを特徴としたものである。
【0008】
請求項4においては、前記ローターの軸方向矢視において、前記スクリューは、該スクリューの回転半径を、前記枝梗処理歯の頂部の回転半径に比して小さくする、ことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1においては、被処理物が二番還元処理装置に滞留する時間を長くすることができる。これにより、枝梗除去能力を向上することができる。
また、二番物の処理(搬送)速度を上げた場合においても、枝梗除去能力を確保できるため、処理能力(搬送速度および搬送量)を向上することができる。
【0011】
請求項2においては、被処理物が二番還元処理装置に滞留する時間を長くすることができる。
【0012】
請求項3においては、枝梗除去能力を向上することができる。
【0013】
請求項4においては、被処理物が二番還元処理装置に滞留する時間を長くしつつ、被処理物を搬送方向に確実に搬送して、被処理物の詰りを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係るコンバインの全体的な構成を示す左側面図、図2は同じく平面図、図3は同じくコンバインの動力伝達系統図、図4は同じくコンバインの脱穀装置および二番還元搬送部を示す右側面図、図5は同じく左側面図、図6は同じく二番還元搬送部を示す拡大左側面図、図7は同じく二番還元処理装置を示す拡大左側面図、図8は同じく二番還元処理装置の内部構成を示す拡大平面図、図9は同じくスクリュー・処理歯・固定歯の配列を示す左側面模式図、図10は同じく二番還元処理装置内における穀粒の滞留状況を示す模式図である。
【0015】
まず、本発明の一実施例に係るコンバイン100の全体構成について説明をする。
尚、以下の説明では、走行機体1の進行方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく進行方向に向かって右側を単に右側と称する。
【0016】
図1および図2に示す如く、コンバイン100は、左右一対の走行クローラ2によって走行機体1が支持されており、該走行機体1の前部には穀稈を刈り取りながら取り込む刈取装置3が昇降調節可能に装着されている。走行機体1には、フィードチェン6を有する脱穀装置5と、脱穀後の穀粒を貯留する穀粒タンク7とが横並び状に搭載されている。本実施例においては、脱穀装置5が走行機体1の進行方向左側に、穀粒タンク7が走行機体1の進行方向右側に配置されている。
走行機体1の後部には、排出オーガ8が旋回可能に設けられており、穀粒タンク7の内部の穀粒が、排出オーガ8の籾投げ口9からトラックの荷台またはコンテナ等に排出されるように構成されている。該穀粒タンク7の前方には、運転部10が設けられている。
【0017】
運転部10には、オペレータが搭乗するステップ11と、該ステップ11上のハンドルコラム12に設けた略U形の操縦ハンドル13と、該操縦ハンドル13の後方に設けた運転座席14と、該運転座席14の左側方のサイドコラム15に設けた主変速レバー16と副変速レバー17と刈取クラッチレバー18と刈取変速レバー19とが配設されている。該運転座席14の下方には、コンバイン100自体の走行や後述するフィードチェン6を駆動するための動力源となるエンジン20が配置されている。
【0018】
刈取装置3下部の刈取フレーム21の下方には、圃場の未刈り穀稈の株元を切断する図示しない刈刃装置が設けられている。該刈取フレーム21の前方には、圃場の未刈り穀稈を引き起こす2条分の穀稈引起装置23が配設されている。該穀稈引起装置23とフィードチェン6の前端部(送り始端側)との間には、刈刃装置22によって刈取られた刈取り穀稈をフィードチェン6へと搬送する穀稈搬送装置24が設けられている。そして、該穀稈引起装置23の下部前方には、圃場の未刈り穀稈を分草する分草体25が突設されている。
このような構成として、コンバイン100は、エンジン20にて走行クローラ2を駆動して圃場内を移動しながら、刈取装置3を駆動して圃場の未刈り穀稈を連続的に刈り取ることができる。
【0019】
脱穀装置5には、穀稈脱穀用の扱胴26と、扱胴26の下方に落下する脱粒物を選別する揺動選別盤27及び唐箕ファン28と、扱胴26の後部から取出される脱穀排出物を再処理する処理胴29と、揺動選別盤27後部の排塵を排出する排塵ファン30とを備えている。尚、扱胴26の回転軸はフィードチェン6による穀稈の搬送方向、換言すれば走行機体1の進行方向に沿って延びている。刈取装置3から穀稈搬送装置24によって搬送された穀稈の株元側は、フィードチェン6に受け継がれて後方へと挟持搬送される。そして、該穀稈の穂先側が扱胴26内に搬入されて扱胴26にて脱穀されるのである。
【0020】
揺動選別盤27の下方側には、揺動選別盤27によって選別された穀粒(一番物)を取り出す一番コンベア31と、枝梗付き穀粒等(二番物)を取り出す二番コンベア32とが設けられている。本実施例における両コンベア31・32は、走行機体1の進行方向前側から一番コンベア31、二番コンベア32の順で、側面視において走行クローラ2・2の後部上方の走行機体1上面側に横設されている。
該揺動選別盤27は、扱胴26の下方に張設された受網から漏下した脱穀物が、図示しないフィードパン及びチャフシーブ等によって揺動選別(比重選別)されるように構成している。そして、揺動選別盤27のグレンシーブ(図示省略)から落下した穀粒等は、唐箕ファン28からの選別風によって粉塵が除去され、一番コンベア31と二番コンベア32上へと落下する。
【0021】
一番コンベア31の右側端には上下方向に延びる揚穀コンベア33の下端が連通接続されており、該一番コンベア31から取り出された穀粒が、該揚穀コンベア33を介して穀粒タンク7へと搬入される。一方、二番コンベア32の一側は、前記揚穀コンベア33と交差して前後方向に延びる二番還元縦コンベア37および二番還元処理装置38を介して、揺動選別盤27のフィードパンの上面側に連通接続されており、二番物を揺動選別盤27のフィードパンの上面側に戻して再選別できるように構成している。
【0022】
フィードチェン6の後端側(送り終端側)には、排藁チェン34が配置されている。フィードチェン6の後端側から排藁チェン34に受け継がれた排藁(穀粒が脱粒された稈)は、長い状態のまま走行機体1の後方に排出されるか、又は脱穀装置5の後方側に設けた排藁カッタ35にて適宜長さに短く切断されたのち、走行機体1の後方下方に排出される構成になっている。
【0023】
次に、本実施例に係るコンバイン100の動力伝達系統について説明をする。
図3に示す如く、前記エンジン20の駆動力は、該エンジン20に突設された出力軸41を介して、左右両走行クローラ2を駆動させる走行ミッション装置42と、脱穀装置5、揺動選別盤27(図示せず)及び刈取装置3と、排出オーガ8との3つの方向に分岐して伝達される。
【0024】
まず、走行ミッション装置42は、油圧ポンプ及び油圧モータからなる走行用油圧無段変速機(図示せず)と、同じく油圧ポンプ及び油圧モータからなる旋回用油圧無段変速機(図示せず)とを備えており、エンジン20の出力軸41から走行ミッション装置42に向かう分岐動力は、該走行用油圧無段変速機の走行用ポンプの入力側へと伝達され、該入力側から旋回用油圧無段変速機の旋回用ポンプの入力側へと伝達される。
そして、運転部10に設けられた操縦ハンドル13の操作量に応じて前記油圧無段変速機の油圧ポンプ側回転斜板の傾斜角度を調節することによって、油圧モータ(図示せず)への圧油の吐出方向及び吐出量が変更され、走行用又は旋回用油圧無段変速機の出力側の回転方向及び回転数(左右の走行クローラ2の駆動速度及び駆動方向)が任意に調節される。
【0025】
エンジン20の出力軸41から排出オーガ8への分岐動力は、タンク入力軸43を介して、穀粒タンク7内の底コンベア44及び排出オーガ8における縦コンベア45へと伝達され、次いで、受け継ぎスクリューを介して排出オーガ8における横オーガ筒内の排出コンベア46へと伝達される。そして、前述したように、各コンベア44・45・46によって穀粒タンク7内の穀粒がトラックの荷台等に搬出されることになる。
【0026】
エンジン20の出力軸41から脱穀装置5及び刈取装置3へと向かう分岐動力は、脱穀クラッチ47を介して唐箕ファン28の唐箕軸48へと伝達され、この唐箕軸48から2つの方向に分岐して動力伝達される。即ち、唐箕軸48の動力の一方は一番コンベア31・二番コンベア32・排塵ファン30・排藁カッタ35へと分岐して伝達され、他方は脱穀入力軸49を介して刈取装置3・扱胴26・処理胴29へと分岐して伝達される。
【0027】
前記脱穀入力軸49から刈取装置3への分岐動力は刈取変速機構50へと伝達され、その一部の駆動力が揺動駆動軸51及びフィードチェン6の駆動スプロケット52を経てフィードチェン6の前端部へと伝達され、残りの駆動力は揺動駆動軸51上の刈取変速出力プーリ51aから刈取クラッチ53を介して刈取入力軸54へと伝達されて、該刈取入力軸54から刈取装置3の各部へと伝達される。
【0028】
本実施例においては、刈取入力軸54に伝達された動力は、縦伝動用の刈取入力軸55を介して横伝動用の刈取入力軸56へと伝達され、刈刃装置22と穀稈引起装置23・23・23とが刈取入力軸56によって駆動される構成になっている。また、刈取入力軸54に伝達された動力は、縦搬送支点軸57を経由して、穀稈搬送装置24の縦搬送チェン・上部搬送タイン・穂先搬送タイン(共に図示せず)へと伝達される。
【0029】
一方、脱穀入力軸49から扱胴26に伝達された分岐動力は、扱胴26を軸支した扱胴軸58に伝達され、該扱胴軸58後端側の動力は排藁駆動軸59を介して排藁チェン34へと伝達される。つまり、該脱穀入力軸49からの動力によって、扱胴26及び排藁チェン34が駆動されることになる。
【0030】
また、揺動駆動軸51の一側端部(左側端部)には減速ギヤ61を固設しており、該減速ギア61と噛合する減速ギア62を介して減速軸63を連結している。また、減速軸63上にはフィードチェンクラッチ64を固設しており、該フィードチェンクラッチ64を介してクラッチ軸65を連結している。さらに、クラッチ軸65には、係脱部66を介してフィードチェン6を駆動する駆動スプロケット軸74を連結する構成としている。
【0031】
次に、本発明の一実施例に係る二番還元搬送部の全体構成について説明をする。
図4乃至図6に示す如く、二番還元搬送部36は、脱穀装置5の下方および右方に配設されており、二番コンベア32、二番還元縦コンベア37、二番還元処理装置38等により構成されている。
脱穀時に生成される枝梗付き穀粒等の二番物は、まず二番コンベア32上に集められて、該二番コンベア32により機体の右方向に搬送される。そして二番物は、二番コンベア32から二番還元縦コンベア37の始端部へと受継がれる。さらに二番物は、二番還元縦コンベア37により、機体の前上方向に搬送されて、二番還元処理装置38の始端部へと受継がれる。そして二番物は、二番還元処理装置38により枝梗除去処理を施された後に、揺動選別盤27の前部へ還元されて再選別が施される構成としている。
【0032】
図7および図8に示す如く、二番還元処理装置38は、該二番還元処理装置38を全体的に覆う処理ケース39と、該処理ケース39に内挿されて回動可能に支持されるローター40等により構成されている。
処理ケース39の内面には固定歯81・81・・・が植設されるとともに、処理ケース39内を搬送される穀粒の流れを制御する送塵弁82・82・82が配設されている。
また、ローター40には、穀粒の搬送に寄与する螺旋状のスクリュー83が配設されるとともに、前記固定歯81・81・・・と協働して穀粒に残る枝梗を処理する処理歯84・84・・・を植設している。
処理ケース39の外周面の左右中途部には取付フランジ39aが固設されており、該取付フランジ39aにより、処理ケース39の終端部を脱穀装置5の内部に臨ませた状態で、脱穀装置5に固設する構成としている。
【0033】
次に、固定歯81・81・・・、スクリュー83、処理歯84・84・・・の配列について、さらに詳細に説明をする。
図7乃至図9に示す如く、ローター40の周面にはスクリュー83を配設するとともに、該スクリュー83を避けた位置にはローター40の周面に対して垂直に複数の処理歯84・84・・・を植設している。また、処理ケース39の内面には、前記ローター40の軸心方向に向けて複数の固定歯81・81・・・を植設している。
さらに本実施例では、前記スクリュー83の最大外形寸法(即ち、図9中に示す距離A)に比して、前記処理歯84・84・・・の最大回転半径(即ち、処理歯84・84・・・の頂部84a・84a・・・が描く側面視方向から見た軌跡、図9中に示すB)を小さく構成している。
また、処理ケース39の内面に植設される複数の固定歯81・81・・・は、前述した処理歯84・84・・・の頂部84a・84a・・・が描く側面視方向から見た軌跡とオーバーラップする長さに構成されており、該固定歯81・81・・・および前記処理歯84・84・・・が協働することにより効率よく枝梗の除去が行われる構成としている。なお、本実施例では、固定歯81・81・・・と処理歯84・84・・・は、図9中に示す距離C分オーバーラップするように構成している。
【0034】
即ち、ローター40の軸方向矢視において、スクリュー83は、スクリュー83の回転半径を、処理歯84・84・・・の頂部の回転半径に比して小さくする構成としている。これにより、穀粒が二番還元処理装置38に滞留する時間を長くしつつ、穀粒を搬送方向に確実に搬送して、穀粒の詰りを防止することができるのである。
また、ローター40の軸方向矢視において、処理歯84・84・・・と、固定歯81・81・・・が重複する構成としている。
これにより、枝梗除去能力を向上することができるのである。
【0035】
次に、送塵弁82・82・82の構成について、説明をする。
図8に示す如く、従来(図8中に破線で示している)は、送塵弁82・82・82の角度は、ローター40の回転速度と、ローター40による軸方向への搬送速度を合成したベクトルに沿う(即ち、二番物の搬送方向に対して略平行となる)角度としており、送塵弁のガイド作用により、二番物を搬送可能とする構成としていた。
また、スクリュー83は、従来構成における送塵弁角度とした場合の二番物の搬送方向と略一致するように、該スクリュー83の羽根角度が設定されている(図8参照)。言い換えれば、スクリュー83のみであれば、二番物の搬送方向が従来構成と略一致する構成としている。
本実施例においては、送塵弁82・82・82の角度は、前記ベクトルをローター40の回転方向に対して略線対称となる角度に設定しており、送塵弁82・82・82により二番物の搬送を積極的に遅らせるようにしている。つまり、平面視において、送塵弁82・82・82を前後方向に対して右回り(時計回り)に回転した傾斜角度としている。これにより、二番物が二番還元処理装置38内で滞留する時間を確保し、枝梗除去処理が十分に施される構成としている。
また、本実施例の場合、送塵弁によるガイド作用が得られず、従来と同様の構成では二番物の搬送が行えないため、二番還元処理装置38内部における二番物の搬送機構としてスクリュー83を備える構成としている。
【0036】
即ち、ローター40と、該ローター40に植設される処理歯84・84・・・と、ローター40を収納する処理ケース39の内面に固設される固定歯81・81・・・および送塵弁82・82・82からなる二番還元処理装置38を二番還元搬送部36に備えるコンバイン100において、ローター40には、穀粒を搬送方向に導くスクリュー83が固設され、かつ、送塵弁82・82・82は、穀粒の搬送を妨げる角度に配設される構成としている。
また、送塵弁82・82・82の角度は、ローター40の回転方向に対して、スクリュー83による穀粒の搬送方向と略線対称となる角度に構成している。つまり、平面視でスクリュー83の羽根(上側)の角度と略平行としている。
これにより、穀粒が二番還元処理装置38に滞留する時間を長くすることができ、枝梗除去能力を向上することができるのである。
また、二番物の処理(搬送)速度を上げた場合においても、枝梗除去能力を確保できるため、処理能力(搬送速度および搬送量)を向上することができるのである。
【0037】
次に、本発明の一実施例に係る二番還元処理装置38内の穀粒の流れについて説明をする。
図10(a)に示す如く、二番還元縦コンベア37から受継がれた穀粒(二番物)は、投入口38aから二番還元処理装置38へと取り込まれる。取り込まれた穀粒は、二番還元処理装置38内で回転する受継スクリュー85と接触して遠心力が付勢されて、まず処理ケース39の内面に沿うように拡散する。これにより、処理ケース39内においては、穀流が側面視略ドーナツ状に堆積するように構成している。
【0038】
処理ケース39内面に側面視略ドーナツ状に穀粒が堆積している領域の内、前記処理歯84・84・・・と固定歯81・81・・・がオーバーラップしている領域(図9中に示す距離C分オーバーラップしている領域)では、ローター40の回転により処理歯84・84・・・と固定歯81・81・・・が協働して枝梗の除去が行われる。つまり、処理ケース39の外周面近傍に堆積した穀流が前記処理歯84・84・・・と固定歯81・81・・・がオーバーラップしている領域(図9中に示す距離C分オーバーラップしている領域)に滞留している間に枝梗の除去が行われる構成としている。ここで、前述の通り、送塵弁82・82・82の角度を二番物の搬送を遅らせる角度に構成しており、枝梗処理時間を確保することができるため、十分に枝梗が除去される構成としている。
【0039】
次に、図10(b)に示す如く、穀粒の堆積量が増加してくると、側面視略ドーナツ状に滞留する穀流は、ドーナツの内側の円が縮小するようにして穀粒の堆積が発達してくる。そして、内周側の中心領域(即ち、スクリュー83の回転半径内)にまで滞留する穀流が及んでくると、回転するスクリュー83と接触した穀流はスクリュー83の軸線に沿って左方向に確実に搬送される。
つまり、送塵弁82・82・82の角度を調整して搬送速度を遅らせて、枝梗処理能力を確保しつつ、さらに中心領域(即ち、スクリュー83の回転半径内)にまで堆積してきた穀粒はスクリュー83により確実に搬送する構成とすることにより、詰りの発生を防止しつつ、搬送能力(搬送速度および搬送量)を確保する構成としている。
【0040】
そして、スクリュー83により軸線に沿って左方向に搬送された穀粒は、拡散羽根86・86・・・と接触して拡散されて、処理ケース39の下面に形成された放出口87より略下方に拡散しながら放出される。このようにして、二番物は揺動選別盤27の前部に還元されて、脱穀装置5により再選別が施される構成としている。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施例に係るコンバインの全体的な構成を示す左側面図。
【図2】同じく平面図。
【図3】同じくコンバインの動力伝達系統図。
【図4】同じくコンバインの脱穀装置および二番還元搬送部を示す右側面図。
【図5】同じく左側面図。
【図6】同じく二番還元搬送部を示す拡大左側面図。
【図7】同じく二番還元処理装置を示す拡大左側面図。
【図8】同じく二番還元処理装置の内部構成を示す拡大平面図。
【図9】同じくスクリュー・処理歯・固定歯の配列を示す左側面模式図。
【図10】同じく二番還元処理装置内における穀粒の滞留状況を示す模式図。
【符号の説明】
【0042】
36 二番還元搬送部
38 二番還元処理装置
39 処理ケース
40 ローター
81 固定歯
82 送塵弁
83 スクリュー
84 処理歯
100 コンバイン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローターと、
該ローターに植設される枝梗処理歯と、
前記ローターを収納する処理ケースの内面に固設される受歯および送塵弁からなる二番還元処理装置を二番還元搬送部に備えるコンバインにおいて、
前記ローターには、
被処理物を搬送方向に導くスクリューが固設され、かつ、
前記送塵弁は、前記被処理物の搬送を妨げる角度に配設される、
ことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記送塵弁の角度は、
前記ローターの回転方向に対して、
前記スクリューによる前記被処理物の搬送方向と略線対称となる、
ことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記ローターの軸方向矢視において、
前記枝梗処理歯と、
前記受歯が重複する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載のコンバイン。
【請求項4】
前記ローターの軸方向矢視において、
前記スクリューは、
該スクリューの回転半径を、
前記枝梗処理歯の頂部の回転半径に比して小さくする、
ことを特徴とする請求項3記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−220246(P2008−220246A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−62141(P2007−62141)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】