説明

コンバイン

【課題】ホッパ型の穀粒取出部を備えたコンバインにおいて、エンジンの排気パイプの高熱を遮断し、穀粒取出作業の安全性を高める。
【解決手段】脱穀選別部(5)の右側部に唐箕の選別風吸気カバー(16)を設け、該選別風吸気カバー(16)の近傍に唐箕風量調節レバー(17)を設け、エンジン(E)の左側上部にマフラー(11)を配設し、該マフラー(11)から排気パイプ(12)の始端側排気パイプ(12a)を下方に延出し、該始端側排気パイプ(12a)から終端側排気パイプ(12b)を穀粒取出部(4)と脱穀選別部(5)の間を通して後方へ延出して設け、マフラー(11)の後側方と、始端側排気パイプ(12a)の右側方及び後側方と、終端側排気パイプ(12b)の右側方とを覆うカバー(15、15a)を、エンジン(E)の後方に設けた後部操縦フレーム(10)の左側部に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンバインにおいて、走行車台の右側部には前側部から後側部にかけて操縦部、エンジン、ホッパ型の穀粒取出部を、左側部には脱穀選別部をそれぞれ配設したものは、特許文献1に例示するように公知である。
【0003】
また、図7に示すように、エンジンの左側上部にマフラーaを配設し、マフラーaから排気パイプの始端側排気パイプbを下方に延出し、次いで、終端側排気パイプcを穀粒取出部と脱穀選別部の間を通して後方へ延出して排気するように構成し、マフラーa、始端側排気パイプb及び終端側排気パイプcの右側方をカバーdにより被覆したものは、公知である。
【特許文献1】特開2005−199807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
背景技術のようなコンバインにおいて、エンジンのマフラーa、始端側排気パイプb及び終端側排気パイプcの右側方をカバーdにより被覆し、終端側排気パイプcの左側方に脱穀選別部の唐箕の選別風吸気カバーや、唐箕風量調節レバーを設けた構成であると、唐箕風量調節レバーの調節操作時に排気パイプで火傷をするという不具合がある。また、排気パイプの全周部をカバーで被覆することにより、このような不具合を解消することができる。しかし、唐箕の選別風吸気カバーの吸気量が不足するという新たな不具合が発生する。
【0005】
そこで、本発明は、唐箕風量調節レバーの調節操作時の排気パイプによる火傷等の不具合、及び、唐箕の吸気量不足という不具合を共に解消しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、走行車台(1)の右側部には、前側部から後側部にかけて操縦部(3)と、エンジン(E)と、ホッパ型の穀粒取出部(4)とを設け、走行車台(1)の左側部には脱穀選別部(5)を設け、該脱穀選別部(5)の右側部に唐箕の選別風吸気カバー(16)を設け、該選別風吸気カバー(16)の近傍に唐箕風量調節レバー(17)を設け、前記エンジン(E)の左側上部にマフラー(11)を配設し、該マフラー(11)から排気パイプ(12)の始端側排気パイプ(12a)を下方に延出し、該始端側排気パイプ(12a)から終端側排気パイプ(12b)を穀粒取出部(4)と脱穀選別部(5)の間を通して後方へ延出して設け、前記マフラー(11)の後側方と、始端側排気パイプ(12a)の右側方及び後側方と、終端側排気パイプ(12b)の右側方とを覆うカバー(15、15a)を、前記エンジン(E)の後方に設けた後部操縦フレーム(10)の左側部に取り付けたことを特徴とするコンバインとする。
【0007】
この構成によると、カバー(15、15a)により、マフラー(11)の後側方、排気パイプ(12)の始端側排気パイプ(12a)の右側方及び後側方、並びに、終端側排気パイプ(12b)の右側方を覆うようにしたので、穀粒取出部(4)で作業する作業者が排気パイプ(12)により火傷をするようなこともなく、穀粒取出部(4)の穀粒取出作業や、唐箕風量調節レバー(17)の調節操作をすることができる。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記カバー(15、15a)の左側端部にステー(18)の一端を面接合状態で取り付け、該ステー(18)の他端を前記選別風吸気カバー(16)に面接合状態で取り付けたことを特徴とする請求項1記載のコンバインとする。
【0009】
この構成によると、前記作用に加えて、カバー(15、15a)を左右方向に長く構成すると共に、ステー(18)の両端をカバー(15、15a)の左側端部と選別風吸気カバー(16)とにを面接合状態で取り付けたので、カバー(15、15a)のびびりをなくした状態で取り付けることができ、また、脱穀選別部(5)の震動をカバー(15、15a)により弱め、後部操縦フレーム(10)への震動を軽減させることができる。
【0010】
請求項3記載の発明は、前記カバー(15、15a)における左側端部の前記選別風吸気カバー(16)と対向する部位には、切除した開放部(15b)を構成したことを特徴とする請求項1又は2記載のコンバインとする。
【0011】
この構成によると、前記作用に加えて、カバー(15、15a)には切除した開放部(15b)を構成したので、選別風吸気カバー(16)の右側方には前後方向に風の流れる空間部が形成され、選別風吸気カバー(16)の吸気量を高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によると、穀粒取出部(4)で作業する作業者が排気パイプ(12)により火傷をするようなこともなく、穀粒取出部(4)の穀粒取出作業や、唐箕風量調節レバー(17)の調節操作をすることができ、作業の安全性を高めることができる。
【0013】
請求項2記載の発明によると、上記請求項1記載の発明の効果に加えて、カバー(15、15a)のびびりを解消し、脱穀選別部(5)の震動を左右方向に長いカバー(15、15a)により弱め、後部操縦フレーム(10)への震動の影響を軽減することができる。
【0014】
請求項3記載の発明によると、上記請求項1又は2記載の発明の効果に加えて、選別風吸気カバー(16)の右側方における前後方向の風の流れを円滑にし、選別風吸気カバー(16)の吸気量を増大させ、脱穀選別部(5)の唐箕の選別風量を十分に確保して収穫作業を能率よく行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
まず、図1乃至図3に基づき本発明を具備するコンバインの全体構成について説明する。図1はコンバインの側面図、図2は平面図、図3は背面図である。
コンバインの走行車台1の下方には左右走行クローラ2,2を配設し、走行車台1の右側部には、前側部から後側部にかけて操縦部3、エンジンE、穀粒取出部4を配設し、左側部に脱穀選別部5を配設し、走行車台1の前側部には刈取搬送部6を昇降自在に設けている。
【0016】
また、図4及び図5に示すように、走行車台1の右側前部を操縦載置部1aとして操縦部3を設け、その後方をエンジン載置部1bとしてにエンジンEを搭載し、その後方を穀粒取出載置部1cとして穀粒取出部4を設け、左側部を脱穀載置部1dとして脱穀選別部5を搭載している。
【0017】
エンジンEの左側上部にマフラー11を配設し、マフラー11から下方に向けて排気パイプ12の始端側排気パイプ12aを延出し、次いで、終端側排気パイプ12bを穀粒取出載置部1cと脱穀載置部1dの間隔部を通して後方へ延出し、後方へ向けて排気するように構成している。また、脱穀選別部5の前側上部に配設したエアクリーナ13から吸気パイプ14を経てエンジンEに空気を供給している。
【0018】
エンジンEの前側部を操縦部3の後部カバー3aで覆い、エンジンEの後側部に操縦部3の後部操縦フレーム10を平面視で左右方向に沿わせて配設している。また、後部操縦フレーム10の左側端部にはカバー15を取り付け、カバー15を左側に延出して脱穀選別部5の右側端部まで延出し、前記マフラー11と上下方向に沿った始端側排気パイプ12aの後側部を被覆している。そして、脱穀選別部5における唐箕(図示省略)の選別風吸気カバー16にカバー15の左側端部をステー18を介してボルト・ナットで着脱自在に取り付け、排気パイプ12の前後方向に沿った終端側排気パイプ12bを選別風吸気カバー16の下方を通って後方へ延出している。
【0019】
また、脱穀風選部5の選別風吸気カバー16の近傍には、唐箕風量調節レバー17を設けている。カバー15の右側下端部には後部カバー15aを後方へ延出するように取り付け、後部カバー15aにより終端側排気パイプ12b及び唐箕風量調節レバー17の右側上方を覆うようにしている。
【0020】
前記構成によると、マフラー11及び排気パイプ12の穀粒取出部4側はカバー15及び後部カバー15aにより被覆されているので、オペレータが火傷をするようなこともなく安全であり、穀粒取出部4で穀粒袋の着脱操作や唐箕風量調節レバー17の調節操作を安全に行なうことができる。
【0021】
また、後部操縦フレーム10の左側端部にはカバー15を取り付け、カバー15の左側端部をマフラー11及び上下方向に沿った始端側排気パイプ12aの後側部を通して脱穀選別部5側に延出し、カバー15を左右方向に長く構成しているので、脱穀選別部5の震動をカバー15により弱め、後部操縦フレーム10への震動の影響を軽減することができる。
【0022】
また、脱穀選別部5における唐箕の選別風吸気カバー16にカバー15の左側端部を取り付けるにあたり、ステー18の前側折り曲げ部18aをカバー15の左側端部に面接合状態でボルト・ナットで固着し、あた、ステー18の後側部を選別風吸気カバー16の上面部に面接合した状態でボルト・ナットで固着しているので、カバー15のびびりを解消することができる。また、ステー18の選別風吸気カバー16への取付孔、カバー15への取付孔をばか孔あるいは長孔に構成しておくと、取付調整が容易になる。
【0023】
また、カバー15の左側端部における選別風吸気カバー16の近傍には、切り欠き開放部15bを構成し、選別風吸気カバー16の右側方における前後方向の風の流れを円滑にしたので、唐箕の選別風量を十分に確保することができる。
【0024】
次に、図1及び図2により穀粒取出部4について説明する。
走行車台1の穀粒取出載置部1cから立ち上げた穀粒取出フレーム21には、前後方向に長い取出ホッパ22を左右中央よりに配設し、脱穀選別部5の一番穀粒を1番揚穀機20により取出ホッパ22に取り出すように構成している。この取出ホッパ22の底部には移送螺旋を設けて穀粒を前側から後側に移送可能に構成し、取出ホッパ22の右側部に前側、中間、後側穀粒取出口23,…を設け、これらの取出口23,…に対向して左右一対の支持棒からなる袋ホルダ24,…を設けている。
【0025】
また、走行車台1の穀粒取出載置部1c上には取出フロア25を設け、この取付フロア25の右側には右側に突出したり又は内側に収納自在の補助フロア25aを設け、補助作業者が取付フロア25及び補助フロア25aに搭乗できるようにしている。取出フロア25の右側部上方に補助作業者用の背もたれ装置26を設けている。
【0026】
この背もたれ装置26は、図8に示すように、平面視L字型に屈折している支持パイプ26aと、支持パイプ26aの前後方向に沿っている部分に取り付ける背当て板26bとにより構成し、支持パイプ26aの左右方向に沿った後側基部を穀粒取出フレーム21に左右方向のピン26cで回動自在に軸支している。支持パイプ26aの前後方向に沿った背もたれ板26bが右側方に突出回動した背もたれ状態と、背もたれ板26bが左右内側に回動し取出ホッパ22の上方に位置する収納状態に変更できる。従って、取出フロア25に乗った補助作業者は右側に突出回動した背当て板26bに背もたれし、取出ホッパ22の内側を向いた姿勢で、前側、中間、後側の穀粒取出口23,…を開閉操作しながら、穀粒袋に穀粒を取り出す。
【0027】
次に、図9に基づき補助作業者の背もたれ装置26の他の実施例について説明する。
この背もたれ装置26は、平面視L字型に屈折している支持パイプ26aと、支持パイプ26aの前後方向に沿っている部分に取り付ける前後方向に長い背当て板26bとにより構成している。そして、この背当て板26bを、断面扇形状に構成し、その扇形中心部に前後方向に長いパイプ26eを固着している。支持パイプ26aの前後方向に沿っている部分にパイプ26eを外側から嵌合装着し、パイプ26eを前後方向に摺動自在で、且つ、軸心線回りに回動自在に支持し、パイプ26eを前後方向所定位置で且つ所定回動位置で取付ボルト26dにより固定できるように構成している。また、背当て板26bの扇形状外周面にクッション材27を張り付けている。
【0028】
前記構成によると、背当て板26bを好みの前後方向に移動調節し、背凭れ位置を上下に回動調節し、楽な姿勢で穀粒の取り出し作業をすることができる。
次に、図10に基づき背もたれ装置26の他の実施例について説明する。
【0029】
この背もたれ装置26は、平面視L字型に屈折している支持パイプ26aと、支持パイプ26aの前後方向に沿っている部分に取り付ける前後方向に長い背当て板26bとにより構成している。そして、平板状の背当て板26bの裏面には前後方向に沿わせてパイプ26eを取り付け、このパイプ26eの径を支持パイプ26aの径よりも大きく構成し、支持パイプ26aの外周に背当て板26b側のパイプ26eを嵌合し、取出ボルト26dにより前後方向に調節自在で、且つ、パイプ26eの軸心回りに回動調節自在に取り付けている。前記構成によると、支持パイプ26aに対して背当て板26bを前後方向に調節し、背当て板26bを回動調節することにより、補助作業者の1人作業、2人作業に対応したり、身長に合わせて調節することができる。
【0030】
また、背当て板26bの扇形状外周面に張り付けるクッション材27を、図11に示すように構成してもよい。前後方向に長いクッション材27を左右方向に分割して分割クッション材27a,…を構成し、この分割クッション材27a,…をそれぞれ独立した状態に表皮材27bで包み込んでいる。このように構成すると、クッション材27a,…の上下方向の偏りを防止し、背もたれ装置26の耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】コンバインの側面図。
【図2】コンバインの平面図。
【図3】コンバインの背面図。
【図4】コンバインの車台部にエンジンを搭載した側面図。
【図5】コンバインの車台部にエンジンを搭載した平面図。
【図6】脱穀選別部及びエンジン後方部の斜視図。
【図7】従来装置の脱穀選別部及びエンジン後方部の斜視図。
【図8】背もたれ装置の斜視図。
【図9】背もたれ装置の側面図、正面図。
【図10】背もたれ装置の平面図。
【図11】背もたれ装置の側面図、正面図、切断正面図。
【符号の説明】
【0032】
1 走行車台
3 操縦部
4 ホッパ型の穀粒取出部
5 脱穀選別部
10 後部操縦フレーム
11 マフラー
12 排気パイプ
12a 始端側排気パイプ
12b 終端側排気パイプ
15 カバー
15a 後部カバー
15b 開放部
16 選別風吸気カバー
17 唐箕風量調節レバー
18 ステー
E エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車台(1)の右側部には、前側部から後側部にかけて操縦部(3)と、エンジン(E)と、ホッパ型の穀粒取出部(4)とを設け、走行車台(1)の左側部には脱穀選別部(5)を設け、該脱穀選別部(5)の右側部に唐箕の選別風吸気カバー(16)を設け、該選別風吸気カバー(16)の近傍に唐箕風量調節レバー(17)を設け、前記エンジン(E)の左側上部にマフラー(11)を配設し、該マフラー(11)から排気パイプ(12)の始端側排気パイプ(12a)を下方に延出し、該始端側排気パイプ(12a)から終端側排気パイプ(12b)を穀粒取出部(4)と脱穀選別部(5)の間を通して後方へ延出して設け、前記マフラー(11)の後側方と、始端側排気パイプ(12a)の右側方及び後側方と、終端側排気パイプ(12b)の右側方とを覆うカバー(15、15a)を、前記エンジン(E)の後方に設けた後部操縦フレーム(10)の左側部に取り付けたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記カバー(15、15a)の左側端部にステー(18)の一端を面接合状態で取り付け、該ステー(18)の他端を前記選別風吸気カバー(16)に面接合状態で取り付けたことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記カバー(15、15a)における左側端部の前記選別風吸気カバー(16)と対向する部位には、切除した開放部(15b)を構成したことを特徴とする請求項1又は2記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−51228(P2010−51228A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−218902(P2008−218902)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】