説明

コンバイン

【課題】処理胴から出力される動力を搬送装置に伝達するための動力伝達手段の組み立て並びにメンテナンスを容易に行うことができるとともに、脱穀部の扱室の空間を大きくできるコンバインを提供する。
【解決手段】刈取後の穀稈を脱穀する扱胴41と、扱胴41からの未処理物を処理する処理胴42と、処理胴42で処理した後の処理物を機体前方へ戻すリターンコンベア90と、を有する脱穀部4を備えたコンバイン1であって、処理胴42を扱胴41の後方で扱胴41と平行に配置し、リターンコンベア90を処理胴42の下方に配置して、処理胴42の処理胴軸49とリターンコンベア90のコンベア軸91とを、脱穀部4の後部に設けられる脱穀後板99よりも後方に延設し、処理胴42から出力される動力をリターンコンベア90に伝達するための動力伝達手段70を、処理胴軸49の後端部とコンベア軸91の後端部との間に設けたコンバイン1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに関し、詳細には、脱穀部の処理胴下方に配設された搬送装置の駆動構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1においては、脱穀部と、前記脱穀部で脱穀した穀粒を揺動選別・風選別する選別部とを有し、前記脱穀部に扱胴と、送塵口に受口が連通して前記扱胴の脱粒物を再処理する処理胴と、二番物等を処理する枝梗処理装置を備えたコンバインであって、前記処理胴の下方にあって前記処理胴で処理された処理物を受け、前記処理物を前記処理胴による脱穀物の送り方向とは反対方向に搬送して選別部の揺動選別装置上に排出する搬送装置(搬送体)を備えたコンバインが開示されている。
【0003】
特許文献1のコンバインにおいては、処理胴は扱胴の右後方に配置されていた。そして、処理胴の駆動軸の前端部と、搬送装置の駆動軸の前端部とが、扱胴の側方付近でプーリやベルト等からなる動力伝達手段を介して連動連結されて、処理胴の駆動軸から出力される動力が搬送装置の駆動軸に伝達されるようになっていた。この動力伝達手段は、機体フレーム上のグレンタンクの側方に配置されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−33154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のコンバインにおいては、前記動力伝達手段が処理胴及び搬送装置の前方に配置されるので、グレンタンクを機体に対して外側方へ開放してから、動力伝達手段の取外又は装着作業を機体フレーム上のグレンタンクが設置されている空間で行い、当該動力伝達手段の組み立て及びメンテナンスを行う必要があった。そのため、動力伝達手段の組み立て及びメンテナンスが行いにくくなっていた。
【0006】
そこで、本発明は、処理胴から出力される動力を搬送装置に伝達するための動力伝達手段の組み立て及びメンテナンスを容易に行うことができるコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、第1の発明に係るコンバインは、刈取後の穀稈を脱穀する扱胴と、前記扱胴の後側方に配置されて前記扱胴からの未処理物を処理する処理胴と、前記処理胴の下方に配置されて当該処理胴で処理した後の処理物を前記扱胴側へ戻す搬送装置と、を有する脱穀部を備えたコンバインであって、前記処理胴の処理胴軸と前記搬送装置の駆動軸とを、前記脱穀部の後部に設けられる脱穀後板よりも後方に延設し、前記処理胴から出力される動力を前記搬送装置に伝達するための動力伝達手段を、前記処理胴軸の後端部と前記駆動軸の後端部との間に設けたものである。
【0009】
第2の発明に係るコンバインは、第1の発明に係るコンバインにおいて、前記脱穀部にて脱穀処理した穀稈を排藁として処理する排藁処理部を、前記脱穀部の後方に機体に対して開閉可能に備え、前記動力伝達手段を、前記脱穀部と前記排藁処理部との間に配置したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
第1の発明に係るコンバインにおいては、動力伝達手段が脱穀部の後方外側に配置されるため、作業者は動力伝達手段の取外又は装着作業を機体後方で行うことが可能となる。したがって、動力伝達手段の組み立て及びメンテナンスを容易に行うことができる。
【0012】
第2の発明に係るコンバインにおいては、排藁処理部を機体に対して開閉するだけで、動力伝達手段が取外又は装着可能な状態となる。したがって、動力伝達手段の組み立て及びメンテナンスを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンバインの側面図。
【図2】本発明の一実施形態に係るコンバインの平面図。
【図3】本発明の一実施形態に係るコンバインの背面斜視図。
【図4】本発明の一実施形態に係るコンバインの脱穀部及び選択部の側面断面図。
【図5】本発明の一実施形態に係るコンバインのリターンコンベア後部付近の側面図。
【図6】本発明の一実施形態に係るコンバインのリターンコンベア付近の背面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0015】
まず、本発明の一実施形態に係るコンバイン1の全体構成について説明する。
なお、以下の説明では、図1に示す矢印Aの指す方向を機体前方向とし、前後方向を規定する。また、かかる前後方向と水平方向に直交する方向を左右方向と規定する。
【0016】
図1及び図2に示すように、コンバイン1は、機体フレーム10に対して、走行部2と、刈取部3と、脱穀部4と、選別部5と、穀粒貯溜部6と、排藁処理部7と、エンジン部8と、運転部9等とから構成される。
【0017】
走行部2は、機体フレーム10の下部に設けられる。走行部2には、左右一対のクローラを有するクローラ式走行装置11等が設けられる。走行部2は、クローラ式走行装置11が駆動されることにより機体を走行させるように構成される。
【0018】
刈取部3は、機体フレーム10の前端部に機体に対して昇降可能に設けられる。刈取部3は、分草装置12と、引起装置13と、切断装置14と、搬送装置15等とから構成される。刈取部3は、分草装置12により圃場の穀稈を分草し、引起装置13により分草後の穀稈を引き起こし、切断装置14により引き起こし後の穀稈の株元を切断し、搬送装置15により切断後の穀稈を脱穀部4側へ搬送するように構成される。
【0019】
脱穀部4は、機体フレーム10の左側前部であって、刈取部3の後方に設けられる。脱穀部4は、刈取部3から搬送される穀稈を受け継いで、フィードチェン43により排藁処理部7側へ搬送し、搬送中の穀稈を扱胴41(図4)等により脱穀し、その処理物を選別部5へ落下させるように構成される。
【0020】
選別部5は、機体フレーム10の左側部であって、脱穀部4の下方に設けられる。選別部5は、脱穀部4から落下した処理物を揺動選別及び風選別により、穀粒と、穂付粒や未脱粒と、排藁と、塵埃等とに選別する。そして、選別部5は、選別した穀粒を穀粒貯溜部6へ搬送し、穂付粒及び未脱粒を脱穀部4へ搬送し、排藁及び塵埃等を外部へ排出するように構成される。
【0021】
穀粒貯溜部6は、機体フレーム10の右側後部であって、脱穀部4及び選別部5の右側方に設けられる。穀粒貯溜部6は、グレンタンク17と、穀粒排出装置68等とから構成される。穀粒貯溜部6は、選別部5から搬送される穀粒をグレンタンク17に貯溜するとともに、グレンタンク17に貯溜される穀粒を穀粒排出装置68により機体の外部へ排出するように構成される。グレンタンク17は、その後端部を支点として右側方へ回動し、機体に対して開放可能になっている。
【0022】
排藁処理部7は、機体フレーム10の後部であって、脱穀部4の後方に設けられる。図3に示すように、排藁処理部7は、排藁搬送装置87、排藁切断装置88、後部カバー89等から構成される。排藁処理部7は、脱穀部4から搬送される脱穀済みの穀稈を、排藁搬送装置87で受け継いで排藁として外部へ排出し、又は排藁切断装置88に搬送して切断した後に機体の外部へ排出するように構成される。
排藁切断装置88は、機体の最後部に位置する後部カバー89によって覆われて支持されている。図3に示すように、後部カバー89は、機体の後部右側に上下方向の支点軸(図示せず)を中心に前後方向へ回動可能に支持され、機体に対して開閉可能に設けられている。後部カバー89が排藁切断装置88とともに後方へ回動され機体に対して開放されることによって、後述する動力伝達手段70が機体の後方外側に露出することになる。
【0023】
エンジン部8は、機体フレーム10の右側部であって、穀粒貯溜部6の前方に設けられる。エンジン部8は、エンジン83等を有して、エンジン83から各部の装置に伝達機構を介して動力を伝達し、各装置を駆動可能に構成される。
【0024】
運転部9は、機体フレーム10の右側前部であって、刈取部3の搬送装置15の右側方に設けられる。運転部9は、キャビン18と、座席19と、ハンドル20と、操作ペダルと、操作レバーと、操作パネル等を備える。運転部9は、キャビン18により座席19、ハンドル20等とが覆われるように構成される。
【0025】
このようにして、コンバイン1は、走行部2にて機体を走行させながら、刈取部3で圃場の穀稈を刈り取り、脱穀部4で刈取部3からの穀稈を脱穀し、選別部5で脱穀部4からの脱穀物を選別して、穀粒貯溜部6で選別部5からの穀粒を貯溜すると同時に、排藁処理部7で脱穀部4からの排藁を外部へ排出することができるように構成される。
【0026】
次に、脱穀部4について説明する。
【0027】
図4に示すように、脱穀部4は、扱胴41と、処理胴42と、フィードチェン43と、搬送装置としてのリターンコンベア90等を備える。
【0028】
扱胴41は、前端部を面取りした円筒状に形成され、軸心方向を前後方向として扱室46内に配置される。扱胴41は、扱室46の前後両壁に前後方向に延在する図示しない扱胴軸回りに回転自在に支持される。扱胴41は、穀稈を機体後方向に搬送しながら脱穀する。扱胴41の下方には、受網44が扱胴41の下半部を覆うように配置される。
【0029】
処理胴42は、円筒状に形成され、軸心方向を前後方向として扱胴41と平行に、扱胴41の右後方で処理室45内に配置される。処理胴は、処理室45の前後両壁に前後方向に延在する扱胴軸回りに回転自在に支持される。処理室45の前後両壁のうち後壁、即ち脱穀部4の後壁は、脱穀後板99によって構成される。脱穀後板99は、処理胴42の真後ろに開口部を有する。この開口部は、後蓋97によって閉じられる。
処理胴42は、扱室46より搬送された枝梗付着粒等の未処理物を機体後方向に搬送しながら処理する。扱室46の後部右側と処理室45の前部左側とが送塵口47を介して連通されて、扱室46内の枝梗付着粒や藁屑等が送塵口47から処理室45内に搬送される。
処理胴42の下方周囲には、処理胴網(濾過網)48が配設される。
【0030】
ここで、処理胴軸49は、処理胴42を駆動するための軸である。処理胴軸49は、扱胴41の図示しない扱胴軸と平行に配置され、処理室45から扱胴41の右側方を通過して前方へ向かって延出される。処理胴軸49の前端部は、扱室41の前端部の側方周辺に配置される。処理胴軸49の前端部には、入力プーリ81が固設される。
また、処理胴軸49は、脱穀後板99を貫通して後方へ向かって延出される。処理同軸49の後端部は、処理室45、即ち脱穀部4の後方外側に配置される。処理胴軸49の後端部には、動力伝達手段70が設けられる。
【0031】
フィードチェン43は、扱胴41の左側方で刈取部3と排藁処理部7との間にわたって配置される。フィードチェン43は、扱胴41の左側方で図示しないフィードチェンフレームに設けられた駆動スプロケット及び複数の従動スプロケットに巻回され、その駆動スプロケットにエンジン83からの動力が伝達されることで回転駆動される。
【0032】
リターンコンベア90は、処理胴42で処理した後の処理物を機体前方へ戻すための搬送装置である。本実施形態において、リターンコンベア90は、処理胴42の下方にその軸方向、即ち前後方向に沿って配置される。ただし、リターンコンベアを処理胴42の上方又は側方に配置する構成とすることも可能である。
リターンコンベア90は、受樋92と、コンベア軸91と、スクリュー93と、を備える。
【0033】
受樋92は、処理胴42からの処理物を受けるものである。上部が開放されて正面視略U字状に形成される。受樋92は、処理胴42と略平行に前後方向に沿って延長され、平面視で処理胴42と概ね重複するように、処理胴42の右側下方に配置される。
受樋92の後端部は、処理胴42の後端部の下方に配置される。受樋92の前端部は、処理胴42の前端部の前下方で、扱胴41の後端部と側面視で一部重複する位置に配置される。受樋92の前端部には、排出口が下方に開口するように形成される。
【0034】
コンベア軸91は、リターンコンベア90を駆動するための駆動軸である。コンベア軸91は、前後方向に延長され、処理胴42の処理胴軸49と略平行に配置される。コンベア軸91は、受樋92内にその長手方向に沿って収容され、受樋92の前端部に設けられた支持部材及び後蓋98に回転自在に支持される。
コンベア軸91は、前記後側の支持部材及び後蓋98を貫通して後方へ向かって延出される。コンベア軸91の後端部は、処理胴軸49の後端部と対向するように、処理室45、即ち脱穀部4の後方外側に配置される。処理胴軸49の後端部には、動力伝達手段70が設けられる。
【0035】
スクリュー93は、受樋92内の処理物を前方へ向かって送るためのものである。スクリュー93は、コンベア軸91にその軸方向に沿って固着される。そして、動力がコンベア軸91に動力伝達手段70を介して伝達されることによって、スクリュー93がコンベア軸91と一体的に回転駆動される。
【0036】
このような構成において、脱穀部4では、刈取部3からの穀稈がフィードチェン43により受け継がれ、排藁処理部7側へ搬送される。この搬送中の穀稈が扱胴41により脱穀され、その穀粒や藁屑や塵埃を含む処理物が選別部5へ落下する過程で受網44により選別される。扱胴41により脱穀されなかった未処理物は、扱室46から送塵口47を介して処理室45に搬送されて、処理胴42により処理され、その処理物がリターンコンベア90へ落下する過程で処理胴網48により選別される。リターンコンベア90へ落下したものは、スクリュー93により扱胴41側(機体前方)へ送られて、処理胴42の前端部付近まで戻され、その後に受樋92の排出口から選別部5の揺動選別装置50へ排出される。
【0037】
次に、選別部5について説明する。
【0038】
図4に示すように、選別部5は、揺動選別装置50と、風選別装置51と、穀粒搬送装置52等を備える。
【0039】
まず、揺動選別装置50について説明する。
【0040】
揺動選別装置50は、揺動選別装置本体53と、フィードパン54・66と、チャフシーブ55と、グレンシーブ56と、ストローラック57と、を備える。
【0041】
揺動選別装置本体53は、その長手方向を前後方向として、扱胴41、受網44、処理胴42及び処理胴網48の下方に配置され、エンジン83からの動力によって揺動する。
フィードパン54は、揺動選別装置本体53の前部に設けられ、脱穀部4の扱胴41及び受網44の前部下方に配置される。
チャフシーブ55は、揺動選別装置本体53の前後中途部に設けられ、脱穀部4の扱胴41及び受網44の前部下方であって、フィードパン54の後方に配置される。
フィードパン66は、揺動選別装置本体53の前後中途部に設けられ、チャフシーブ55の下方に配置される。
グレンシーブ56は、揺動選別装置本体53の前後中途部に設けられ、チャフシーブ55の下方に配置される。
ストローラック57は、揺動選別装置本体53の後部に設けられ、チャフシーブ55の後方であってグレンシーブ56の後上方に配置される。
【0042】
次に、風選別装置51について説明する。
【0043】
風選別装置51は、風選別装置本体58と、唐箕ファン59と、吸引ファン60と、セカンドファン67と、を備える。
【0044】
唐箕ファン59は、風選別装置本体58の前部に左右方向に横設され、フィードパン66の後部の下方に配置される。
吸引ファン60は、風選別装置本体58の後端部の上方で左右方向に横設され、ストローラック57の後上方に配置される。
セカンドファン67は、風選別装置本体58の前後中途部に設けられ、グレンシーブ56の後下方に配置される。
【0045】
次に、穀粒搬送装置52について説明する。
【0046】
穀粒搬送装置52は、一番コンベア61と、二番コンベア62と、揚穀筒(揚穀コンベア)63と、二番還元コンベア64等を備える。
【0047】
一番コンベア61は、風選別装置本体58の底部で左右方向に横設され、唐箕ファン59の後方であってチャフシーブ55及びグレンシーブ56の下方に配置される。
二番コンベア62は、風選別装置本体58の底部で左右方向に横設され、一番コンベア61の後方であってストローラック57の下方に配置される。
揚穀筒(揚穀コンベア)63は、風選別装置本体58の右外側に上下方向に立設され、一番コンベア61の右端に接続されるとともに、穀粒貯溜部6のグレンタンク17と接続される。
二番還元コンベア64は、風選別装置本体58の右外側に前後方向に斜設され、一側が二番コンベア62と接続されるとともに、他側が脱穀部4の扱室46または揺動選別装置50の上方空間に連通される。
【0048】
このような構成において、選別部5では、揺動選別装置50が作動されている状態、つまり揺動選別装置本体53が図示しない揺動機構により揺動されている状態で、脱穀部4の受網44の前部から落下した処理物の層がフィードパン54により均平化されて、処理物が比重選別される。フィードパン54による選別後のものがチャフシーブ55により粗選別される。また、脱穀部4の受網44及び処理胴網48から落下した処理物がチャフシーブ55により粗選別される。チャフシーブ55による選別後のものがグレンシーブ56と唐箕ファン59からの選別風により精選別される。
【0049】
チャフシーブ55及びグレンシーブ56から落下する穀粒や藁屑などが、唐箕ファン59からの選別風により精選別される。このとき、比重が大きく重い穀粒は、一番物として選別風に逆らって落下し、一番コンベア61に収容される。これよりも比重が小さく軽いものは、唐箕ファン59からの選別風により二番コンベア62の上方へ向けて飛ばされる。
【0050】
この飛ばされたものの中でも比較的重いものは、二番物として落下し、二番コンベア62に収容される。これを除いたものは、唐箕ファン59からの選別風によりストローラック57へ向けてさらに飛ばされる。そのうちの藁屑はストローラック57によりほぐされる。この藁屑の中にある穀粒は、二番物として落下し、二番コンベア62に収容される。他の塵埃などは、吸引ファン60により吸引されて、三番口65から外部に排出される。
【0051】
一番物は、一番コンベア61により揚穀筒(揚穀コンベア)63に搬送され、続いて、二番還元コンベア64により穀粒貯溜部6のグレンタンク17に搬送されて、このグレンタンク17に一時的に貯溜される。二番物は、二番コンベア62により二番還元コンベア64に搬送され、続いて、二番還元コンベア64により脱穀部4の扱室46又は揺動選別装置50の上方空間へ搬送され、脱穀され又は脱穀されずに揺動選別装置50により再選別される。
【0052】
次に、処理胴42及びリターンコンベア90の駆動構成について説明する。
【0053】
上述のように、処理胴42の処理胴軸49の前端部には、入力プーリ81が固設される。入力プーリ81は、ベルト82等からなる動力伝達機構を介して、エンジン83と連動連結される。この処理胴軸49の後端部には、動力伝達手段70が設けられる。処理胴軸49は、動力伝達手段70を介して、リターンコンベア90のコンベア軸91と連動連結される。
【0054】
動力伝達手段70は、処理胴42の処理胴軸49から出力される動力をリターンコンベア90のコンベア軸91に伝達するものである。図4に示すように、動力伝達手段70は、脱穀部4(処理室45)の後方外側に配置され、脱穀後板99の後面(外)側で処理胴軸49の後端部と、その下方に位置するコンベア軸91の後端部との間に設けられる。
【0055】
図5及び図6に示すように、動力伝達手段70は、出力スプロケット71と、入力スプロケット72と、テンションスプロケット73と、中間スプロケット74と、チェーン75とから構成される。
これらの出力スプロケット71と、入力スプロケット72と、テンションスプロケット73と、中間スプロケット74と、チェーン75とは、処理胴軸49及びコンベア軸91の軸方向と直交する平面上に配置される。
【0056】
出力スプロケット71は、コンベア軸91の後端部上に固設される。
入力スプロケット72は、処理胴軸49の後端部上に固設される。
テンションスプロケット73は、出力スプロケット71と入力スプロケット72との間で、出力スプロケット71の右下方かつ入力スプロケット72の左上方に配置されて、第1回動軸78に回動自在に支持される。第1回動軸78は、支持部材77の長手方向一端部に設けられる。支持部材77は、板状の部材であり、長手方向他端部で脱穀後板99に前後方向の支軸を介して枢支され、スプリング等の弾性部材で上方に回動するように付勢される。
中間スプロケット74は、出力スプロケット71と入力スプロケット72との間で、出力スプロケット71の右下方かつ入力スプロケット72の右上方に配置されて、第2回動軸79に回動自在に支持される。第2回動軸79は、支持板85に設けられる。支持板85は、脱穀後板99に固設される。
チェーン75は、出力スプロケット71と、入力スプロケット72と、テンションスプロケット73と、中間スプロケット74とに巻き掛けられる。これらに巻き掛けられたチェーン75は、テンションスプロケット73により一定の張力を付与される。
【0057】
また、動力伝達手段70の外周部には、カバー76が設けられる。カバー76は、前後両端部に開口を有する筒状に形成される。カバー76は、出力スプロケット71と、入力スプロケット72と、中間スプロケット74と、チェーン75とを外側から囲みながら、これらが開口から後方外側に露出するように、後蓋97・98に取り付けられている。
【0058】
このような構成において、エンジン83からの動力は、処理胴42の処理胴軸49に入力プーリ81を介して伝達される。これにより、処理胴軸49が回転駆動し、それにともなって処理胴42が回転駆動する。
そして、処理胴軸49に伝達された動力が、動力伝達手段70を、即ち入力スプロケット72、チェーン75、出力スプロケット71等を介して、リターンコンベア90のコンベア軸91に伝達される。これにより、コンベア軸91が回転駆動し、それにともなってスクリュー93が回転駆動する。つまり、リターンコンベア90が駆動する。
【0059】
また、動力伝達手段70は、脱穀部4と、排藁処理部7、詳しくはその後部カバー89との間に配置されることとなる。このため、作業者は、例えば、次のようにすることによって、動力伝達手段70を処理胴軸49及びリターンコンベア90から取り外し、さらには処理胴42及びリターンコンベア90を処理室45から取り外すことが可能となる。
即ち、図3に示すように、まず後部カバー89を、後方へ回動させて、機体に対して開放する。これにより、動力伝達手段70を機体の後方外側に露出させる。つづいて、動力伝達手段70のテンションスプロケット73による張力を緩めて、チェーン75を外す。出力スプロケット71と、入力スプロケット72と、テンションスプロケット73と、中間スプロケット74とをそれぞれ取り外す。こうして、動力伝達手段70を処理胴軸49及びリターンコンベア90から取り外すことができる。そして、支持板85及び後蓋97・98を脱穀後板99から外し、処理胴42及びリターンコンベア90を、脱穀後板99の開口部から機体後方へ引き出す。こうして、処理胴42及びリターンコンベア90を処理室45から取り外すことができる。
【0060】
以上のように、コンバイン1は、刈取後の穀稈を脱穀する扱胴41と、扱胴41の後側方に配置されて扱胴41からの未処理物を処理する処理胴42と、処理胴42の下方に配置されて当該処理胴42で処理した後の処理物を扱胴41側(機体前方)へ戻すリターンコンベア(搬送装置)90と、を有する脱穀部4を備えたコンバイン1であって、処理胴42の処理胴軸49とリターンコンベア90のコンベア軸91とを、脱穀部4の後部に設けられる脱穀後板99よりも後方に延設し、処理胴42から出力される動力をリターンコンベア90に伝達するための動力伝達手段70を、処理胴軸49の後端部とコンベア軸91の後端部との間に設けたものである。
【0061】
このように構成することにより、処理胴42の処理胴軸49に伝達された動力は、動力伝達手段70を介して、リターンコンベア90のコンベア軸91に伝達される。ここで、動力伝達手段70は脱穀部4の後方外側に配置される。そのため、作業者は動力伝達手段70の取外又は装着作業を機体後方で行うことが可能となる。したがって、作業者は、動力伝達手段70の取外又は装着作業を動力伝達手段70に相当する動力伝達手段を処理胴42の前方に配置する場合に比べて楽な姿勢で容易に行うことができ、ひいては動力伝達手段の組み立て及びメンテナンスを容易に行うことができる。
【0062】
また、動力伝達手段70が脱穀部4において処理室45の後方外側に配置されることになる。したがって、動力伝達手段70に相当する動力伝達手段を処理胴42の前方に配置する場合に比べて、処理室45の前方に空間を確保し、処理室45の前側方にある扱室46内の空間を拡大することができる。その結果、扱室46内の清掃や穀稈の詰まりの除去、受網の清掃や交換を容易に行うことができる。
【0063】
また、コンバイン1においては、脱穀部4にて脱穀処理した穀稈を排藁として処理する排藁処理部7、詳しくはその排藁切断装置88を被覆して支持する後部カバー89を、脱穀部4の後方に機体に対して開閉可能に備え、動力伝達手段70を、脱穀部4と、排藁処理部7との間に配置したものである。
【0064】
このように構成することにより、動力伝達手段70の取外又は装着作業時には、グレンタンク17を機体に対して開閉させずとも、排藁処理部7の後部カバー89を機体に対して開閉させるだけで、脱穀部4の後面側にある動力伝達手段70が後方外側に露出して取外又は装着可能な状態となる。したがって、動力伝達手段70の組み立て及びメンテナンスを容易に行うことができる。
【0065】
また、コンバイン1は処理胴42及びリターンコンベア90を脱穀部4(処理室45)から機体後方へ引き抜いて取り外し、脱穀部4に機体前方へ向けて押し入れ装着するように構成されている。これにより、グレンタンク17を機体に対して開閉させずとも、排藁処理部7の後部カバー89を機体に対して開閉させるだけで、動力伝達手段70と同時に、処理胴42及びリターンコンベア90の取外又は装着作業を機体後方で行うことが可能となる。したがって、処理胴42及びリターンコンベア90の取外又は装着作業が行いやすくなり、処理胴42及びリターンコンベア90の組み立て及びメンテナンスを容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0066】
1 コンバイン
4 脱穀部
7 排藁処理部
41 扱胴
42 処理胴
49 処理胴軸
70 動力伝達手段
90 リターンコンベア(搬送装置)
91 コンベア軸(駆動軸)
99 脱穀後板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取後の穀稈を脱穀する扱胴と、前記扱胴の後側方に配置されて前記扱胴からの未処理物を処理する処理胴と、前記処理胴の下方に配置されて当該処理胴で処理した後の処理物を前記扱胴側へ戻す搬送装置と、を有する脱穀部を備えたコンバインであって、
前記処理胴の処理胴軸と前記搬送装置の駆動軸とを、前記脱穀部の後部に設けられる脱穀後板よりも後方に延設し、前記処理胴から出力される動力を前記搬送装置に伝達するための動力伝達手段を、前記処理胴軸の後端部と前記駆動軸の後端部との間に設けたコンバイン。
【請求項2】
前記脱穀部にて脱穀処理した穀稈を排藁として処理する排藁処理部を、前記脱穀部の後方に機体に対して開閉可能に備え、
前記動力伝達手段を、前記脱穀部と前記排藁処理部との間に配置した請求項1に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−160723(P2011−160723A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27038(P2010−27038)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】