説明

コンバイン

【課題】変速レバーと刈取クラッチレバーとの互いの操作を牽制する牽制機構を比較的低い精度で小さなスペースに配置できるように構成する。
【解決手段】刈取クラッチレバー16を、基端部16Aと主レバー部16Bとが屈曲して連なる形状に形成し、刈取クラッチレバー16を切り位置「切」に設定した状態で、副変速レバー15を高速位置「H」に操作した場合には、ガイドプレート30の下面の牽制部材31が刈取クラッチレバー16の基端部16Aの上側に挿入され、この状態で刈取クラッチレバー16の入り位置「入」側への操作を牽制部材31が阻止するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の走行速度を設定する揺動操作型の変速レバーと、刈取部への駆動力の断続を行う揺動操作型の刈取クラッチレバーとを備え、前記刈取クラッチレバーが入り位置にある状態で前記変速レバーの高速位置側への操作を牽制する牽制機構を備えているコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成されたコンバインとして特許文献1には、変速レバー(文献では副変速レバー)と刈取クラッチレバーとが前後位置に配置され、これらが牽制機構(文献では牽制装置)によって連係された構成が示されている。牽制機構は、刈取クラッチレバーの第2アームに連結する牽制ロッドと、変速レバーの第2アームに形成したピンとを有し、牽制ロッドに形成された長孔に対してピンを挿通することで、変速レバーと刈取クラッチレバーとの操作量を牽制する構成を有している。
【0003】
この特許文献1では、牽制機構を備えることで、変速レバーが高速位置にある場合には刈取クラッチレバーの入り位置への操作を不能にし、また、刈取クラッチレバーが入り位置にある場合には副変速レバーの高速位置への操作を不能にしている。また、変速レバーが高速位置にある場合に刈取クラッチレバーをクラッチ入り位置に操作すると、変速レバーを標準走行位置に移動させる構成も有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010‐124764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コンバインで刈取作業を行う際には、刈取クラッチを入り位置に設定して走行機体を走行させるものであるが、走行機体が高速で走行する状態での作業を回避する目的から、特許文献1にも記載される牽制機構が備えられている。
【0006】
特許文献1に記載される構成の牽制機構では、変速レバーと刈取クラッチレバーとの下側に牽制機構を備えているため、これらのレバーの下側に牽制ロッドを備える空間を必要とするだけではなく、牽制ロッドの端部に形成した長孔に挿通したピンが長孔の端部に当接することで、変速レバーと刈取クラッチレバーとの操作限界を決める構成であるため、長孔とピンとの相対的な位置の調節を必要とする。
【0007】
このように特許文献1に示される構成では、牽制機構を構成する部材の配置空間を必要とし、牽制機構を適正に作動させるために所定の精度も必要とすることからスペースの点及び組み立て精度の点において改善の余地がある。
【0008】
本発明の目的は、変速レバーと刈取クラッチレバーとの互いの操作を牽制する牽制機構を比較的低い精度で作動可能で、かつ、小さなスペースに配置可能に構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の特徴は、走行機体の走行速度を設定する揺動操作型の変速レバーと、刈取部への駆動力の断続を行う揺動操作型の刈取クラッチレバーとを備え、前記刈取クラッチレバーが入り位置にある状態で前記変速レバーの高速位置側への操作を牽制する牽制機構を備えているコンバインであって、前記変速レバーの高速位置への操作方向と、前記刈取クラッチレバーの切り位置への操作方向とが同じ方向に設定され、前記変速レバーの高速位置への操作方向の延長領域に前記刈取クラッチレバーが配置され、前記刈取クラッチレバーが、切り位置にある状態で揺動軸芯を基準にして前記変速レバーから離間する方向へ延びる基端部と、この基端部の延出方向に対し交差する方向に基端部の延出端から延びる主レバー部とを有し、前記牽制機構が、前記変速レバーの操作に伴い移動する牽制部材を備えており、この牽制部材は、前記刈取クラッチレバーが切り位置にある状態で前記変速レバーが高速位置側に操作された場合に、前記刈取クラッチレバーの前記基端部の延出方向に沿って移動することで前記変速レバーの高速位置への操作を許容すると共に、前記刈取クラッチレバーが入り位置にある状態で前記変速レバーが高速位置側に操作された場合に、前記牽制部材が前記基端部に当接することで、前記変速レバーの高速位置への操作を牽制するように前記基端部との相対的な位置関係が設定されている点にある。
【0010】
この構成によると、刈取クラッチレバーが切り位置にある状態で変速レバーを高速位置に操作した場合には、変速レバーの操作に伴い牽制部材が刈取クラッチレバーの基端部の延出方向に沿って移動し、変速レバーの高速位置への操作が許される。また、刈取クラッチが入り位置にある状態で変速レバーを高速位置側に操作しようとした場合には、牽制部材が刈取クラッチレバーの基端部に接触するため、変速レバーの高速位置への操作は牽制される。
特に、この構成では、牽制部材が変速レバーの操作に伴い移動するものであるため、大きい配置スペースを必要とせず、牽制部材と刈取クラッチレバーの基端部との当接によって牽制を行うため牽制部材と基端部とに高い精度が要求されるものでもない。
従って、変速レバーと刈取クラッチレバーとの互いの操作を牽制する牽制機構を比較的低い精度で作動可能で、かつ、小さなスペースに配置可能に構成された。
【0011】
本発明は、前記変速レバーが高速位置に操作された状態で、前記刈取クラッチレバーが切り位置から入り位置側に操作された場合に、前記牽制部材の移動方向に沿う姿勢の所定面と、前記刈取クラッチレバーの前記基端部の一側面とが互いに沿う姿勢で当接し、前記刈取クラッチレバーの入り位置への操作が牽制されても良い。
【0012】
これによると、変速レバーが高速位置に操作されている状態において刈取クラッチを入り位置に操作しようとした場合には、牽制部材の所定面と刈取クラッチレバーの基端部の一側面とが互いに沿う姿勢で当接するため、変速レバーを低速位置側に移動させる分力を発生させず、変速レバーを高速位置に保持したまま刈取クラッチレバーを切り位置に保持できる。
【0013】
本発明は、前記変速レバーが上下方向に貫通する変速レバーガイド孔と、前記刈取クラッチレバーが上下方向に貫通する刈取クラッチレバーガイド孔とが形成された水平姿勢のガイドプレートを備え、前記牽制部材が前記ガイドプレートの下側で、前記ガイドプレートに沿って移動自在、かつ、上方への変位を阻止する状態で支持され、前記刈取クラッチレバーが切り位置にある状態で、前記基端部が前記ガイドプレートの下側で水平方向に延びる姿勢で形成され、前記主レバー部が基端部の延出端から上方に延びる姿勢で形成され、この刈取クラッチレバーが切り位置にある状態で前記変速レバーが高速位置に操作された場合には、前記基端部とガイドプレートとの間に前記牽制部材が挿入されても良い。
【0014】
これによると、変速レバーが高速位置に操作されている状態で刈取クラッチレバーを入り位置側に操作した場合には、刈取クラッチレバーの基端部がガイドプレートに接近する方向に変位することになるが、この基端部とガイドプレートとの間に牽制部材が挿入されているので、牽制部材が基端部の上方への変位を牽制することになり、刈取クラッチレバーの入り位置への操作が牽制される。又、牽制部材をガイドプレートの下面に配置することで、この牽制部材の上方への変位をガイドプレートが阻止できることになり、ガイドプレートをガイド部材に兼用でき部品点数の低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】コンバインの全体側面図である。
【図2】運転部の平面図である。
【図3】操作パネルを示す平面図である。
【図4】副変速レバーと刈取クラッチレバーとの操作系を示す側面図である。
【図5】刈取クラッチレバーと牽制部材との位置関係を示す側面図である。
【図6】牽制部材の平面図である。
【図7】コンバインの伝動系を模式的に示す図である。
【図8】ブレーキペダルとロックプレートとを示す側面図である。
【図9】切換レバーと保持プレートとを示す正面図である。
【図10】切換レバーと保持プレートとを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔コンバインの全体構成〕
図1に示すように、左右一対のクローラ走行装置1によって走行する走行機体Aの前端に昇降シリンダ10の作動により昇降自在に刈取部Bを備えると共に、走行機体Aの前部に運転者が搭乗する運転部Cを備え、走行機体Aに対して刈取部Bから刈取穀稈が供給される脱穀装置Dと、この脱穀装置Dで選別された穀粒を貯留する穀粒タンクEとを備えて自脱型のコンバインが構成されている。
【0017】
このコンバインは、収穫作業時に刈取部Bと脱穀装置Dとを駆動した状態で走行機体Aを前進させることにより刈取部Bで穀稈の株元を切断して穀稈の刈り取りを行い、刈り取った穀稈を脱穀装置Dに搬送して脱穀処理を行い、この脱穀装置Dの脱穀処理により得られた穀粒を穀粒タンクEに貯留する処理が行われる。
【0018】
図2に示すように、運転部Cには、運転者が搭乗するステップ11と、運転者が着座する運転座席12とが備えられると共に、運転座席12の前方位置に運転者が操作する操縦レバー13が備えられ、運転座席12の側方位置に主変速レバー14と、副変速レバー15と、刈取クラッチレバー16と、脱穀クラッチレバー17とが備えられ、ステップ11にはブレーキペダル18が備えられている。
【0019】
このコンバインは、左右のクローラ走行装置1をアクチュエータの作動により独立して昇降させる駆動機構(図示せず)と、この駆動機構を制御するローリング制御装置とを備えている。また、刈取部Bには、刈り取った穀稈(刈取穀稈)を搬送する穀稈搬送機構8を備えており、この穀稈搬送機構8の穀稈の搬送経路中に刈取穀稈の挟持位置を変更する扱深調節機構8Aを備えている。この扱深調節機構8Aは、穀稈搬送機構8で搬送される穀稈の挟持位置の変更により、フィードチェーンFCでの刈取穀稈の挟持位置を変更して脱穀装置Dでの穂先側の挿入量を調節する扱深制御を実現する。このようにローリング制御の人為的な設定と、扱深制御の人為的な設定とを行うための操作パネル21が運転座席12の前方左側に備えられている。
【0020】
操作パネル21の左側部には、図3に示すように、扱深制御の起動と停止とを押し操作によって選択する扱深制御スイッチ22と、ローリング制御の起動と停止とを押し操作によって選択するローリング制御スイッチ23とが備えられている。このローリング制御スイッチ23でローリング制御を起動させた場合には、走行機体Aを水平姿勢に維持するように左右のクローラ走行装置1を昇降する制御がローリング実行され、更に、操作パネル21には、基準選択スイッチ24と、傾斜角設定スイッチ25と、昇降量設定スイッチ26とが備えられている。
【0021】
基準選択スイッチ24は、左右方向への操作でON位置に設定することにより、ローリング制御における制御基準(走行機体Aの対地高さ)を高レベルに設定にする「上げ基準制御」と、OFF位置に設定することでローリング制御における制御基準を低レベルに設定する「下げ基準制御」との選択を行うトグルスイッチ型に構成されている。傾斜角設定スイッチ25は、非操作状態で水平姿勢を維持し、右側又は左側の押し操作が可能な構造のものが使用され、右側を押し操作した場合にはローリング制御に優先して走行機体Aの右側を下降させ、左側を押し操作した場合にはローリング制御に優先して走行機体Aの左側を下降させる制御を実現する。昇降量設定スイッチ26は、非操作状態で水平姿勢を維持し、上側又は下側の押し操作が可能な構造のものが使用され、上側を押し操作した場合には走行機体Aを水平姿勢で下降させ、下側を押し操作した場合には走行機体Aを水平姿勢で上昇させるようにクローラ走行装置1の両方を同時に等しく作動させる制御を実現する。
【0022】
尚、この操作パネル21では、基準選択スイッチ24として、前後方向に操作するトグルスイッチ型に構成されたものを用いて良く、扱深制御スイッチ22と、ローリング制御スイッチ23と、基準選択スイッチ24と、傾斜角設定スイッチ25と、昇降量設定スイッチ26との配置を図面に示すもの以外の配置にしても良い。
【0023】
運転座席12の下部位置にはエンジン2が備えられ、走行機体Aの前部位置で左右方向での中央位置には左右のクローラ走行装置1に駆動力を伝える伝動ケース3が配置され、図7に示すように、伝動ケース3の上部には静油圧式の無段変速装置4(HST)が連結されている。エンジン2と無段変速装置4との間の伝動系には駆動力を断続する主ベルト伝動機構5が備えられ、伝動ケース3からの動力を刈取部Bに駆動力を伝える伝動系にはベルトテンション式の刈取クラッチ6が備えられ、エンジン2からの駆動力を脱穀装置Dに伝える伝動系にはベルトテンション式の脱穀クラッチ7が備えられている。
【0024】
伝動ケース3には無段変速装置4から伝えられる駆動力を高低2段に変速するギヤ式の副変速機構3Tを内蔵しており、この副変速機構3Tで変速された駆動力を左右の駆動スプロケット3Sから左右のクローラ走行装置1に伝える走行駆動系が伝動ケース3に内蔵されている。また、伝動ケース3には、左右の駆動スプロケット3Sに伝える駆動力を独立して断続する操向クラッチ機構3Aと、左右の駆動スプロケット3Sに同時に制動力を作用させるブレーキ機構3Bとを内蔵している。図面には示していないが左右の操向クラッチ機構3Aは、油圧式に作動する左右の操向シリンダによって操作される。
【0025】
操縦レバー13は、非操作状態で中立姿勢を維持すると共に、左右方向の何れかに操作された場合には操向制御弁(図示せず)を操作して、左右の操向クラッチ機構3Aのうち操作に対応したもの(例えば、右側に操作した場合には右側の操向クラッチ機構3A)に操向制御弁から作動油を供給して動力を遮断し走行機体Aの操向を実現する。また、この操縦レバー13が前後方向へ操作された場合には昇降制御弁(図示せず)を操作して昇降シリンダ10に対する作動油の給排を行い刈取部Bの昇降を実現する。
【0026】
主変速レバー14は、走行機体Aを停車させる中立位置Nと、この中立位置Nから前方側の前進位置Fとの間の前進変速域と、中立位置Nから後方側の後進位置Rとの間の後進変速域とにおいて操作自在に構成され、この主変速レバー14と無段変速装置4とがロッドやワイヤ等で連動連係することで、主変速レバー14の操作による無段階での変速操作が実現する。副変速レバー15は、高速位置「H」と低速位置「L」とに操作自在に構成され、この副変速レバー15と副変速機構3Tが変速ロッド41(図4を参照)によって連動連係することで、副変速レバー15の操作によって高速走行と低速走行との切換が実現する。
【0027】
刈取クラッチレバー16は、図4に示すように、揺動操作により入り位置「入」と切り位置「切」とに切換操作自在に構成され、この刈取クラッチレバー16と刈取クラッチ6とがクラッチロッド44によって連動連結することで、刈取クラッチレバー16の操作により刈取クラッチ6の入り切りが実現する。脱穀クラッチレバー17は、揺動操作により入り位置「入」と切り位置「切」との切換操作自在に構成され、この脱穀クラッチレバー17と脱穀クラッチ7とが操作ワイヤ49によって連動連結することで、脱穀クラッチレバー17の操作により脱穀クラッチ7の入り切りが実現する。
【0028】
ブレーキペダル18は、伝動ケース3に内蔵されたブレーキ機構3Bと連動連係することで、ブレーキペダル18の踏み込み操作に連係して左右のクローラ走行装置1に制動力を作用させる。
【0029】
図2に示すように、運転座席12の左側部に、側部操縦塔としてのサイドパネルと、このサイドパネルの上面を構成する水平姿勢のガイドプレート30が配置され、このガイドプレート30には主変速レバー14が上下に貫通する主変速ガイド孔G14と、副変速レバー15が上下に貫通する副変速ガイド孔G15と、刈取クラッチレバー16が上下に貫通する刈取クラッチガイド孔G16と、脱穀クラッチレバー17が上下に貫通する脱穀クラッチガイド孔G17とが形成されている。また、主変速レバー14と副変速レバー15とは左右に並列配置され、この後部位置に刈取クラッチレバー16と脱穀クラッチレバー17とが左右に並列配置されている。
【0030】
〔副変速レバーと刈取クラッチレバー〕
このコンバインでは、図4〜図6に示すように、刈取クラッチレバー16が切り位置「切」にある場合には副変速レバー15の高速位置「H」への操作を許容し、刈取クラッチレバー16が入り位置「入」にある場合には副変速レバーの高速位置「H」への操作を牽制する牽制機構としてプレート状の牽制部材31を備えている。
【0031】
副変速レバー15の高速位置「H」への操作方向と、刈取クラッチレバー16の切り位置「切」への操作方向とが同じ方向に設定され、副変速レバー15の高速位置「H」への操作方向の延長領域に刈取クラッチレバー16が配置されている。副変速レバー15は、横向き姿勢の第1揺動軸芯X1を中心にして前後方向に揺動自在に走行機体Aの支持フレーム35に支持され、刈取クラッチレバー16は横向き姿勢の第2揺動軸芯X2を中心にして前後方向にガイドプレート30の下面側のガイドフレーム36に揺動自在に支持されている。
【0032】
尚、刈取クラッチレバー16は、横向き姿勢の第2揺動軸芯X2を中心にして前後方向に揺動自在に支持されるものの他に、例えば、第2揺動軸芯X2を斜め向き姿勢や縦向き姿勢にすることで、刈取クラッチレバー16を傾斜する仮想平面上で操作できるように構成することや、水平姿勢の仮想平面上で操作できるように構成しても良い。この場合、副変速レバー15を支持する第1揺動軸芯X1の姿勢は第2揺動軸芯X2の姿勢と平行であることが望ましいが、非平行状態であっても良い。
【0033】
副変速レバー15と一体的に揺動する作動アーム15Aが、この副変速レバー15の下端位置に備えられ、この作動アーム15Aの揺動端と副変速機構3Tの変速操作部材(図示せず)とが変速ロッド41を介して連動連結している。
【0034】
刈取クラッチレバー16の揺動操作時に第2揺動軸芯X2を中心にして回転する作動軸42の軸端に作動アーム43の基端部が連結し、この作動アーム43の揺動端にクラッチロッド44の上端が支持され、このクラッチロッド44の下端にコイルバネ45が連結し、このクラッチロッド44とコイルバネ45とを介して作動アーム43と刈取クラッチ6とが連動連結している。
【0035】
作動軸42に回転自在に外嵌する筒状軸46に対して前述した脱穀クラッチレバー17の基端部が連結しており、筒状軸46に対して操作アーム47の基端部が連結し、この操作アーム47の揺動端に円弧状の操作リンク48の一端が揺動自在に連結し、この操作リンク48の他端と脱穀クラッチ7とが操作ワイヤ49によって連動連結している。
【0036】
図面には示していないが、刈取クラッチレバー16と脱穀クラッチレバー17とが切り位置「切」にある状態で、刈取クラッチレバー16を入り位置「入」に操作した場合には、この操作と連係して脱穀クラッチレバー17も入り位置「入」に作動させる機械式の連動機構を備えている。この連動機構は、刈取クラッチレバー16と脱穀クラッチレバー17とが入り位置「入」にある状態で刈取クラッチレバー16を切り位置「切」に操作した場合には、脱穀クラッチレバー17を入り位置「入」に維持したまま刈取クラッチ6の切り操作を実現する。また、この連動機構は、刈取クラッチレバー16と脱穀クラッチレバー17とが切り位置「切」にある状態で、脱穀クラッチレバー17が入り位置「入」へ操作された場合には、刈取クラッチレバー16を切り位置「切」に維持したまま脱穀クラッチ7のみを入り操作できるように構成されている。
【0037】
〔牽制部材〕
牽制部材31は、ガイドプレート30の下面側に配置され、副変速レバー15に対して連係ピン32により連係すると共に、この牽制部材31に形成された長孔31Aに挿通するガイドピン33により刈取クラッチレバー16の方向に対して接近する作動と離間する作動とを行えるようにスライド移動自在に支持されている。また、ガイドピン33は、ガイドプレート30の上面から下面に貫通する状態で備えられ、このガイドピン33のうちガイドプレート30の下面から突出する突出部分が牽制部材31の長孔31Aに挿通し、この突出部分で牽制部材31より下側位置にワッシャ34が備えられている。この構成により、ガイドピン33が牽制部材31の移動方向を設定し、ワッシャ34が牽制部材31の下方への変位(脱落)を阻止することになる。
【0038】
尚、ガイドプレート30とワッシャ34とは、牽制部材31の上方への持ち上がりを阻止しながら、牽制部材31のスライド移動を許すガイド部材として機能するものであり、このガイド部材として、牽制部材31の上下方向への変位を規制しながらスライド移動を許すレール状等の部材等を用いても良い。
【0039】
副変速レバー15は高速位置「H」と低速位置「L」との中間に中立位置(N)が存在するが、中立位置(N)に副変速レバー15を保持できないように構成されている。また、刈取クラッチレバー16が入り位置「入」に操作されている場合に、副変速レバー15は低速位置「L」から中立位置(N)に亘る領域での操作は可能であるが、この中立位置(N)を超えて高速位置「H」の方向に操作できないように牽制部材31による牽制形態が設定されている。
【0040】
刈取クラッチレバー16は、切り位置「切」にある状態で第2揺動軸芯X2を基準にして副変速レバー15から離間する方向へ延びる基端部16Aと、この基端部16Aの延出端から上方(延出方向に対して交差する方向の一例)に延びる主レバー部16Bとを有し、この主レバー部16Bの突出端にグリップが形成されている。特に、刈取クラッチレバー16が切り位置「切」に設定された場合に基端部16Aが、ガイドプレート30より下側でガイドプレート30と平行する姿勢となり、入り位置「入」に設定された場合に基端部16Aの一部がガイドプレート30より上側に露出するように、この基端部16Aとガイドプレート30との位置関係が設定されている。
【0041】
次に、牽制部材31の具体的な作動形態を説明する。図5(a)に示すように、刈取クラッチレバー16が切り位置「切」にある状態で副変速レバー15が高速位置「H」側に操作された場合には、刈取クラッチレバー16の基端部16Aの延出方向に沿って牽制部材31が移動し、基端部16Aの上方でガイドプレート30の下側の空間に牽制部材31が挿入される。つまり、副変速レバー15の高速位置「H」への操作が許容される。また、図5(b)に示すように、刈取クラッチレバー16が入り位置「入」にある状態で副変速レバー15が高速位置「H」側に操作された場合には、牽制部材31の端部31Bが刈取クラッチレバー16の基端部16Aに当接し、副変速レバー15の高速位置「H」への操作が牽制される。
【0042】
特に、図5(a)に示すように、副変速レバー15が高速位置「H」に操作された状態で、刈取クラッチレバー16が切り位置「切」から入り位置「入」側に操作された場合には、同図に仮想線で示すように牽制部材31の底面(移動方向に沿う姿勢の所定面の一例)と、刈取クラッチレバー16の基端部16Aの上面(一側面の一例)とが互いに沿う姿勢(平行に近い姿勢)で当接し、刈取クラッチレバー16の入り位置「入」への操作が牽制されるように構成されている。
【0043】
この構成では、牽制部材31の底面と、刈取クラッチレバー16の基端部16Aの上面とが当接することにより、牽制部材31の持ち上がりをガイドプレート30が阻止して刈取クラッチレバー16の入り位置「入」への操作を阻止するだけではなく、牽制部材31の底面と、刈取クラッチレバー16の基端部16Aの上面とが互いに沿う姿勢(平行に近い姿勢)で当接するため、刈取クラッチレバー16を強く操作した場合でも、この操作力から牽制部材31を移動させる分力を発生させることがなく、この操作力によって副変速レバー15を低速位置「L」に戻す作動が行われることもない。
【0044】
また、刈取クラッチレバー16が入り位置「入」にある状態で副変速レバー15が高速位置「H」側に操作された場合には、牽制部材31の端部31Bが刈取クラッチレバー16の基端部16Aに当接することで、この副変速レバー15の操作が牽制されるものであるが、この操作に限り、副変速レバー15を強く高速位置「H」側に操作することで、牽制部材31の端部31Bからの操作力を強く作用させ刈取クラッチレバー16を切り位置「切」に作動させ、結果として副変速レバー15の高速位置「H」への操作を可能にするようにも構成されている。
【0045】
〔ブレーキペダル〕
ブレーキペダル18は、図8(a)において仮想線で示す非操作位置から、同図において実線で示す制動位置を超える領域まで踏み込み操作自在に構成され、踏み込み操作されることにより伝動ケース3に内蔵したブレーキ機構3Bを制動操作して左右のクローラ走行装置1に制動力を作用させる。
【0046】
図8に示すように、ステップ11の下面側の機体フレーム51に横向き姿勢の支持軸芯Yと同軸芯上に支軸52が備えられ、この支軸52に外嵌する状態で回動自在に筒状軸部53が備えられ、この筒状軸部53にブレーキペダル18のペダルアーム18Aが連結している。このペダルアーム18Aのうち支軸52より後端側には、ブレーキペダル18を非操作位置に復帰させる付勢力を得る復帰バネ54の一端が連結し、筒状軸部53に連結した揺動アーム55の揺動端とブレーキ機構3Bとがブレーキロッド56を介して連動連結している。
【0047】
また、ブレーキペダル18の踏み込み状態を維持することで、ブレーキ機構3Bを駐車ブレーキとして機能させるロックプレート58がブレーキペダル18の近傍に備えられている。このロックプレート58は、機体フレーム51に対し横向き姿勢の軸体59を介して揺動自在に支持され、上端側がブレーキペダル18に近接するようにバネ60によって付勢され、このバネ60の付勢力による揺動限界を決めるストッパー61が機体フレーム51に突設されている。また、ロックプレート58の上端には上方に伸びる姿勢で切換レバー62が連結している。
【0048】
ブレーキペダル18のペダルアーム18Aの上端近くには側方に突出する係合ピン63が設けられ、ブレーキペダル18を制動位置を超えて操作した場合に係合ピン63に係合する係合凹部58Aがロックプレート58に形成され、このロックプレート58の上端側には、ブレーキペダル18の踏み込み操作時に係合ピン63が当接することでロックプレート58の上端を前方側に揺動させる傾斜姿勢のガイド面58Bが形成されている。また、図8〜図10に示すように、運転部Cの側壁部分には、このブレーキペダル18の非操作位置への復帰を阻止するように切換レバー62を係合保持する保持プレート64が備えられている。
【0049】
切換レバー62は、弾性的に撓み変形可能な素材が用いられ、この切換レバー62を前方に操作した状態で、保持プレート64に係合保持することにより、ロックプレート58が、その係合凹部58Aに係合ピン63が係合しない非作用姿勢に設定される。これとは逆に、切換レバー62を保持プレート64に係合保持しない場合いは、ロックプレート58が、その係合凹部58Aに対して係合ピン63が係合可能な作用姿勢に設定される。
【0050】
このような構成のため、収穫作業時や路上走行時のように一時的なブレーキ操作が行われる状況では、図8(b)、図9、図10に示すように、切換レバー62を保持プレート64に係合保持し、ロックプレート58を非作用姿勢に設定することにより、ブレーキペダル18を踏み込み操作した場合にだけブレーキ機構3Bを操作して左右のクローラ走行装置1に制動力を作用させることが可能となる。
【0051】
これとは逆に、車庫等に長期間停車させておく場合には、図8(a)に示すように、切換レバー62を自由状態(保持プレート64に保持しない状態)に設定してロックプレート58を作用姿勢に設定することにより、ブレーキペダル18を踏み込み操作した場合には、係合ピン63がバネ60の付勢力に抗してロックプレート58のガイド面58Bに当接してロックプレート58の上端を前方側に揺動させ、この後に、係合ピン63がロックプレート58の係合凹部58Aに係合し、バネ60の付勢力により係合状態が維持される。これにより、復帰バネ54の付勢力に抗してブレーキ機構3Bを制動状態に維持し、ブレーキ機構3Bを駐車ブレーキとして使用できるのである。
【0052】
〔実施形態の作用・効果〕
このように、刈取クラッチレバー16が切り位置「切」にある状態で副変速レバー15を高速位置「H」に操作した場合には、副変速レバー15の操作に伴い牽制部材31が刈取クラッチレバー16の基端部16Aの上方で、ガイドプレート30の下側に挿入される。この状態で刈取クラッチレバー16を入り位置「入」側に操作しようとした場合には、刈取クラッチレバー16の基端部16Aの上面と牽制部材31の下面とが互いに沿う姿勢で、牽制部材31の下面側に基端部16Aが当接する。この当接では牽制部材31を押し戻す分力を発生させることがなく、刈取クラッチレバー16を強く操作した場合にも、この操作が確実に阻止され、刈取クラッチ6の入り位置「入」への操作が牽制される。
【0053】
また、刈取クラッチレバー16が入り位置「入」にある状態で副変速レバー15を高速位置「H」側に操作しようとした場合には、牽制部材31が刈取クラッチレバー16の基端部16Aに接触するため、副変速レバー15の高速位置「H」への操作は牽制される。このような牽制状態において、副変速レバー15を強く操作した場合には、牽制部材31から刈取クラッチレバー16に対して切り位置「切」の方向に操作させる力が作用することから、この副変速レバー15の操作による刈取クラッチレバー16の切り位置「切」への操作が許される。
【0054】
特に、この構成では、牽制部材31として、プレート状の部材を用い、ガイドプレート30の下面側にスライド移動自在に支持するものであるため、牽制部材31を小さいスペースに配置して省スペースで牽制機構を構成できるだけではなく、単純な作動形態で刈取クラッチレバー16と副変速レバー15との牽制を実現するため高精度に構成する必要はなく、牽制部材31も少ない部品点数で安価に製造できる。
【0055】
また、踏み込み操作でブレーキ機構3Bを操作するブレーキペダル18を踏み込み位置で保持するロックプレート58を備え、切換レバー62と保持プレート64とによってロックプレート58の姿勢の切換を可能に構成しているので、ロックプレート58を非作用姿勢に設定しておくことで、走行時にブレーキ機構3Bを一時的に操作して制動力を作用させることが可能となり、ロックプレート58を作用姿勢に設定しておくことで、ブレーキ機構3Bを駐車ブレーキとして使用することも可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、普通型のコンバインにも利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
15 変速レバー(副変速レバー)
16 刈取クラッチレバー
16A 基端部
16B 主レバー部
30 ガイドプレート
31 牽制機構・牽制部材
A 走行機体
B 刈取部
G15 変速レバーガイド孔(副変速ガイド孔)
G16 刈取クラッチレバーガイド孔(刈取クラッチガイド孔)
H 高速位置
X2 揺動軸芯(第2揺動軸芯)
切 切り位置
入 入り位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の走行速度を設定する揺動操作型の変速レバーと、刈取部への駆動力の断続を行う揺動操作型の刈取クラッチレバーとを備え、前記刈取クラッチレバーが入り位置にある状態で前記変速レバーの高速位置側への操作を牽制する牽制機構を備えているコンバインであって、
前記変速レバーの高速位置への操作方向と、前記刈取クラッチレバーの切り位置への操作方向とが同じ方向に設定され、前記変速レバーの高速位置への操作方向の延長領域に前記刈取クラッチレバーが配置され、
前記刈取クラッチレバーが、切り位置にある状態で揺動軸芯を基準にして前記変速レバーから離間する方向へ延びる基端部と、この基端部の延出方向に対し交差する方向に基端部の延出端から延びる主レバー部とを有し、
前記牽制機構が、前記変速レバーの操作に伴い移動する牽制部材を備えており、この牽制部材は、前記刈取クラッチレバーが切り位置にある状態で前記変速レバーが高速位置側に操作された場合に、前記刈取クラッチレバーの前記基端部の延出方向に沿って移動することで前記変速レバーの高速位置への操作を許容すると共に、前記刈取クラッチレバーが入り位置にある状態で前記変速レバーが高速位置側に操作された場合に、前記牽制部材が前記基端部に当接することで、前記変速レバーの高速位置への操作を牽制するように前記基端部との相対的な位置関係が設定されているコンバイン。
【請求項2】
前記変速レバーが高速位置に操作された状態で、前記刈取クラッチレバーが切り位置から入り位置側に操作された場合に、前記牽制部材の移動方向に沿う姿勢の所定面と、前記刈取クラッチレバーの前記基端部の一側面とが互いに沿う姿勢で当接し、前記刈取クラッチレバーの入り位置への操作が牽制される請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記変速レバーが上下方向に貫通する変速レバーガイド孔と、前記刈取クラッチレバーが上下方向に貫通する刈取クラッチレバーガイド孔とが形成された水平姿勢のガイドプレートを備え、
前記牽制部材が前記ガイドプレートの下側で、前記ガイドプレートに沿って移動自在、かつ、上方への変位を阻止する状態で支持され、
前記刈取クラッチレバーが切り位置にある状態で、前記基端部が前記ガイドプレートの下側で水平方向に延びる姿勢で形成され、前記主レバー部が基端部の延出端から上方に延びる姿勢で形成され、この刈取クラッチレバーが切り位置にある状態で前記変速レバーが高速位置に操作された場合には、前記基端部とガイドプレートとの間に前記牽制部材が挿入される請求項1又は2記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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