説明

コンバイン

【課題】機体停止時の刈取処理装置の駆動を操作遅れなく操作し易い掻き込み操作手段を備えたコンバインを提供する。
【解決手段】操縦部パネル30として、操縦座席20の横側方に位置させたサイドパネル31と、操縦座席20の前方側に位置させたフロントパネル32とを備え、サイドパネル31上に走行変速レバー21を配備し、フロントパネル32にステアリングレバー22を配備し、走行変速レバー21が配備された箇所よりも前方側で、かつステアリングレバー22が配備された箇所よりも走行変速レバー21が配備された箇所寄りの操縦部パネル30上に、機体停止状態で刈取クラッチを入り操作するための掻き込み指令用の押し操作具27を配設してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体停止状態で刈取クラッチを入り操作するための掻き込み操作手段を備えたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にコンバインでは、機体走行速度に同調させて刈取搬送作業を行うものであるため、機体を停止させると刈取搬送作業を行う刈取処理装置の駆動が止められるように制御されている。しかしながら、機体停止とともに刈取処理装置の駆動を止めると、刈取直後の搬送途中の穀稈が脱落してしまう等の搬送姿勢の乱れを生じることがある。このため機体停止時にも刈取処理装置の駆動を行えるように何らかの掻き込み操作手段を備えさせている。
上記のように、機体停止状態で刈取クラッチを入り操作するための掻き込み操作手段を備えたコンバインとしては、従来より下記[1]に記載のものが知られている。
【0003】
[1] 操縦座席の横側方に位置するサイドパネルに設けてある走行変速レバーの握り部に、掻き込み操作手段としての手動強制掻き込みスイッチを設け、手動強制掻き込みスイッチが操作されると刈取処理装置を所定時間駆動して、搬送途中の穀稈を脱穀装置に送り込むように構成されたもの(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−265019号公報(段落「0012」、「0013」、図8、図10参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記[1]に記載の構造のものでは、手動強制掻き込みスイッチが走行変速レバーの握り部に設けてあるため、走行変速の操作中に手動強制掻き込みスイッチの操作を行う際には便利に用いることはできるが、例えば、走行変速レバーから手を離した状態から手動強制掻き込みスイッチの操作を行おうとした場合には、走行変速レバーが操作されてどの位置に移動しているかを常に感覚的に把握することは困難である。したがって、横側方の走行変速レバーを目視で探してから手動強制掻き込みスイッチの操作を行わなければならない。手動強制掻き込みスイッチの操作は、機体の停止に伴って刈取処理装置の駆動が停止する前にすばやく行いたいものであるが、手動強制掻き込みスイッチの位置の確認にとまどっていると、刈取処理装置の駆動が遅れて穀稈の搬送姿勢が乱れてしまう虞がある。
【0006】
本発明の目的は、機体停止時の刈取処理装置の駆動を操作遅れなく操作し易い掻き込み操作手段を備えたコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために講じた本発明におけるコンバインの技術手段は、次の点に構成上の特徴、及び作用効果がある。
〔解決手段1〕
操縦部パネルとして、操縦座席の横側方に位置させたサイドパネルと、操縦座席の前方側に位置させたフロントパネルとを備え、
前記サイドパネル上に走行変速レバーを配備し、前記フロントパネルにステアリングレバーを配備するとともに、
前記走行変速レバーが配備された箇所よりも前方側で、かつ前記ステアリングレバーが配備された箇所よりも前記走行変速レバーが配備された箇所寄りの操縦部パネル上に、機体停止状態で刈取クラッチを入り操作するための掻き込み指令用の押し操作具を配設してある。
【0008】
〔解決手段1にかかる発明の作用及び効果〕
上記解決手段1で示した構成によると、機体停止状態で刈取クラッチを入り操作するための掻き込み操作手段として掻き込み指令用の押し操作具が、走行変速レバーが配備された箇所よりも前方側で、かつステアリングレバーが配備された箇所よりも前記走行変速レバーが配備された箇所寄りの操縦部パネル上という、操縦座席に搭座した運転者が前方を向いた運転姿勢での視野に入りやすい位置に配備されている。
そして、その位置にある掻き込み指令用の押し操作具は、走行変速などによって位置が変化しない一定の位置に配備されているので、操作の必要時に迅速に操作し易いという利点がある。
【0009】
〔解決手段2〕
上記課題を解決するために講じた本発明におけるコンバインの他の技術手段は、操縦部パネルとして、操縦座席の横側方に位置させたサイドパネルを備え、前記サイドパネル上に走行変速レバーを配備し、操縦座席の前方側にステアリングハンドルを配備するとともに、前記走行変速レバーが配備された箇所よりも前方側で、かつ前記ステアリングハンドルが配備された箇所よりも前記走行変速レバーが配備された箇所寄りの操縦部パネル上に、機体停止状態で刈取クラッチを入り操作するための掻き込み指令用の押し操作具を配設してあることを特徴とする。
【0010】
〔解決手段2にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段2で示した構成によると、機体停止状態で刈取クラッチを入り操作するための掻き込み操作手段として掻き込み指令用の押し操作具が、走行変速レバーが配備された箇所よりも前方側で、かつステアリングハンドルが配備された箇所よりも前記走行変速レバーが配備された箇所寄りの操縦部パネル上という、操縦座席に搭座した運転者が前方を向いた運転姿勢での視野に入りやすい位置に配備されている。
そして、その位置にある掻き込み指令用の押し操作具は、走行変速などによって位置が変化しない一定の位置に配備されているので、操作の必要時に迅速に操作し易いという利点がある。
【0011】
〔解決手段3〕
上記課題を解決するために講じた本発明におけるコンバインの他の技術手段は、操縦部パネルとして、操縦座席の横側方に位置させたサイドパネルを備え、前記サイドパネル上に走行変速レバーを配備し、操縦座席の前方側にステアリングハンドルを配備するとともに、前記ステアリングハンドルに、機体停止状態で刈取クラッチを入り操作するための掻き込み指令用の押し操作具を配設してあることを特徴とする。
【0012】
〔解決手段3にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段3で示した構成によると、機体停止状態で刈取クラッチを入り操作するための掻き込み操作手段として掻き込み指令用の押し操作具が、操縦座席の前方側に配備されたステアリングハンドル上という、操縦座席に搭座した運転者が前方を向いた運転姿勢での視野に入りやすい位置に配備されている。
そして、そのステアリングハンドルに位置する掻き込み指令用の押し操作具は、ステアリングハンドルの回動中心部分などの、ステアリングハンドルの操作状態によっても位置が変化しない箇所に設ければ、前述した各解決手段によるものと同様に、一定の位置に配備されているので、操作の必要時に迅速に操作し易いという利点がある。
また、ステアリングハンドル上に位置する掻き込み指令用の押し操作具を、ステアリングハンドルの外周ループ部分などの、ステアリングハンドルの操作状態によって絶対的な位置が変化する箇所に設けることも考えられる。この場合には、ステアリングハンドルの操作状態によっては絶対的な位置は変化するが、ステアリングハンドル上の位置は一定であり、ステアリング操作されても、掻き込み指令用の押し操作具とステアリングハンドルとの相対的な位置関係は変化しない。そして、ステアリングハンドルは操縦操作中に握って操作するものであるから、その握り操作位置と掻き込み指令用の押し操作具との位置の変化はほとんどなく、掻き込み指令用の押し操作具が現在どの位置に存在しているのかが操縦者には把握し易い関係にある。
したがって、この場合にも、掻き込み指令用の押し操作具を操作の必要時に迅速に操作し易いという利点がある。
【0013】
〔解決手段4〕
上記課題を解決するために講じた本発明におけるコンバインの他の技術手段は、エンジンから走行装置へ動力を伝達する走行駆動系に走行変速用の静油圧式無段変速装置を介装し、この静油圧式無段変速装置のポンプ軸に入力された動力をモータ軸から走行ミッションケース内の伝動機構を介して走行装置に伝達するように構成してあるとともに、刈取処理装置への駆動力を、前記静油圧式無段変速装置のポンプ軸から取り出すように構成してあることを特徴とする。
【0014】
〔解決手段4にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段4で示した構成によると、刈取処理装置への駆動力を、エンジンから走行装置へ動力を伝達する走行駆動系に設けた走行変速用の静油圧式無段変速装置のポンプ軸から取り出すように構成してあるので、静油圧式無段変速装置の油圧モータを中立位置に操作して走行装置を停止させても、エンジン動力が伝達されて一定回転しているポンプ軸の回転動力を利用して刈取処理装置の駆動を行うことができる。
したがって、走行装置を停止させた際における刈取処理装置の駆動力を、走行駆動用の伝動系とは別系統から伝達するように構成する必要はなく、構造の簡素化を図ることができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】コンバインの全体側面図である。
【図2】コンバインの全体平面図である。
【図3】動力伝達系を示すブロック図である。
【図4】制御系を示すブロック図である。
【図5】操縦部パネル部分を示す平面図である。
【図6】搭乗運転部を示す正面図である。
【図7】前照灯部分を示し、(a)は斜視図、(b)は図6におけるVII-VII線断面図である。
【図8】電動モータの制御系を示すタイムチャートである。
【図9】電動モータの制御系を示すフローチャートである。
【図10】電動モータの制御系を示すフローチャートである。
【図11】電動モータの制御系を示すフローチャートである。
【図12】電動モータの制御系を示すフローチャートである。
【図13】電動モータの制御系を示すフローチャートである。
【図14】電動モータの制御系を示すフローチャートである。
【図15】別実施形態の搭乗運転部を示す概略平面図である。
【図16】別実施形態の搭乗運転部を示す概略平面図である。
【図17】別実施形態の搭乗運転部を示す概略平面図である。
【図18】別実施形態の搭乗運転部を示す概略平面図である。
【図19】別実施形態の搭乗運転部を示す概略平面図である。
【図20】別実施形態の搭乗運転部を示す概略平面図である。
【図21】コンバインの作業状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るコンバインに関して、図面に基づいて説明する。
〔コンバインの全体構造〕
図1にコンバインの全体側面が示されている。このコンバインは、左右一対のクローラ式の走行装置1L、1Rを機体フレーム10の下部に備え、前記走行装置1L、1Rの駆動により走行機体1が走行自在に構成されている。
前記走行機体1の前部に、昇降操作自在でかつ圃場の植立穀稈を刈り取り、刈り取った穀稈を後方に搬送する3枠4条刈りの刈取処理装置3が設けられ、機体フレーム10上に、前記刈取処理装置3で刈り取られた穀稈を受け取って脱穀および選別処理する脱穀装置4と、脱穀装置4で脱穀および選別処理することにより得られた穀粒を貯留する穀粒タンク5とが搭載されるとともに、穀粒タンク5の前方箇所の走行機体1上に搭乗運転部2が形成されている。
【0017】
刈取処理装置3は、刈取り部フレーム3aが昇降用の油圧シリンダ17によって走行機体1に対して上下に揺動操作されることにより、刈取処理装置3の前端部に位置する複数の分草具3bが地面付近に下降した下降作業状態と、分草具3bが地面から上昇した上昇非作業状態とに昇降作動するように構成されている。そして、刈取処理装置3を下降作業状態にして走行機体1を走行させると、刈取処理装置3が、刈り取り対象の複数の植付け条に位置する植立穀稈を対応する分草具3bによって隣接する植付け条の植立穀稈と分草し、各分草具3bからの植立穀稈を対応した引起し装置3cによって引起し処理するとともに、バリカン形の刈取り装置3dによって刈取り処理し、刈取り装置3dからの刈取り穀稈を搬送装置3eによって後方に搬送して脱穀装置4の脱穀フィードチェーン4Aの始端部に供給するように構成されている。
【0018】
脱穀装置4は、脱穀フィードチェーン4Aによって刈取り穀稈の株元側を挟持して後方に搬送しながら穂先側を扱室(図示せず)に供給し、刈取り穀稈を回動する扱胴(図示せず)によって脱穀処理するように構成されている。又、脱穀装置4から搬出された脱穀粒を穀粒タンク5に回収して貯留し、穀粒タンク5に貯留された脱穀粒はスクリューコンベア式の穀粒排出装置5aによって外部に排出するように構成されている。又、脱穀処理されたあとの排ワラは機体後方に搬送されて排ワラ処理装置6により細断処理された後に機体後方から排出される。
【0019】
前記脱穀装置4の脱穀フィードチェーン4Aの搬送始端側には、刈取り穀稈を前記脱穀フィードチェーン4Aの搬送始端部から浮かせて受け止め支持する状態と、刈取処理装置3から送り込まれる刈取り穀稈が前記脱穀フィードチェーン4Aの搬送始端部に供給されるように引退した状態とに姿勢切換自在に構成された穀稈受け止め体18を設けてある。
この穀稈受け止め体18は、上端縁が刈取り穀稈を下側から受け止め支持するように配設された板状体によって構成してあり、前記受け止め支持する状態に切り換えると、機体の走行停止状態で、穀稈受け止め体18の上端縁に搭載した穀稈を手動で脱穀フィードチェーン4Aに対して送り込む枕扱ぎ作業を行うことができる。機体を走行させての通常の刈取脱穀作業を行う際には、この穀稈受け止め体18は脱穀フィードチェーン4Aの搬送始端部よりも下方側へ引退した状態に切換えておく。
【0020】
〔伝動系の構造〕
次に、このコンバインの伝動構造について説明する。
図3及び図4に示すように、エンジンEの動力が伝動ベルト14及び伝動プーリ15を介して走行変速用の静油圧式無段変速装置7(走行変速装置に相当する)に伝達され、この静油圧式無段変速装置7からの変速出力は、ミッションケース9内の図示しない変速機構を経由して、走行装置1R、1Lの夫々に伝達されている。
エンジンEの動力は、脱穀クラッチ11を介して脱穀装置4に伝達され、脱穀クラッチ11には、その入り切り状態を検出する脱穀センサ11aが付設されている。
又、刈取処理装置3に対しては、前記静油圧式無段変速装置7の入力軸を兼ねる伝動軸16からの動力が伝達されるように、伝動ベルト13、及び刈取クラッチ12を介して刈取処理装置3に伝達され、刈取クラッチ12には、その入り切りを検出する刈取センサ12aが付設されている。
【0021】
静油圧式無段変速装置7は、コンバインの走行機体1に搭載されているエンジンEからの動力によって駆動される可変油圧ポンプ7A(図4参照)と、その可変油圧ポンプ7Aからの供給油で回転駆動される油圧モータ7B(図4参照)との対で構成された周知構造の静油圧式無段変速装置(HST)によって構成されている。前記エンジンEの動力は、伝動ベルト14及び伝動プーリ15を介して可変油圧ポンプ7Aのポンプ軸であるところの前記伝動軸16に伝達される。
【0022】
前記ミッションケース9は、その内部に、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7Bからの出力軸(図示せず)が内装され、この出力軸からの変速出力が左右一対の走行装置1R、1Lに伝達される構成となっている。前記刈取処理装置3には、前記静油圧式無段変速装置7からの変速出力ではなく、静油圧式無段変速装置7に対して入力される前記伝動軸16の回転動力がそのまま伝達される。
また、前記ミッションケース9の内部には、前記静油圧式無段変速装置7の出力軸(図示せず)からの変速出力を、高低変速操作して走行装置1R、1Lに伝達するためのギヤ変速機構で構成される副変速装置(図外)も配備されている。
【0023】
前記静油圧式無段変速装置7を高低変速操作する主変速レバー21(走行変速レバーに相当する)、及び旋回操作用のステアリングレバー22は、前記搭乗運転部2の操縦部パネル30上に露出させて設けてある。
前記主変速レバー21による変速操作は、図4に示すように、主変速レバー21の操作によって静油圧式無段変速装置7のポンプ斜板角を変更して静油圧式無段変速装置7からの出力を変速操作するように構成してあり、ステアリングレバー22による操向操作は、ステアリングレバー22の右旋回操作及び左旋回操作をポテンショメータ22aで検出して、ミッションケース9の変速機構内に備えられた図示しない旋回操作機構により、左右の走行装置1L,1Rを各別に制御して機体操向操作を行えるように構成してある。
【0024】
〔搭乗運転部の構造〕
図5及び図6に示すように、搭乗運転部2には、運転部フロア2a上で操縦者が搭座する操縦座席20を備えるとともに、その操縦座席20の左横側部に位置する側部操縦塔41と前記操縦座席20の前方側に立設してある前部操縦搭42とで構成される操縦塔40を備えてある。
前記操縦搭40の上面側には、前記操縦座席20の前方及び左横側部にわたる操縦部パネル30を設けてあり、この操縦部パネル30は、前記側部操縦塔41の上面に設けたサイドパネル31と、前記前部操縦塔42の上面に設けたフロントパネル32とを備えて構成されている。
【0025】
前記サイドパネル31には、前記静油圧式無段変速装置7を高低変速操作する主変速レバー21の操作領域が、前記操縦座席20の横側部で、操縦座席20に搭座する操縦者が無理なく左手で把持して操作し易い位置であるように、前後方向で操縦座席20の前縁近くから前方側に向けて配備されている。
前記主変速レバー21の操作領域に対して前記操縦座席20から遠い側の横側部に相当する箇所には、前記ミッションケース9内のギヤ変速機構で構成される副変速装置(図外)を高低変速操作するための副変速レバー23が設けられている。前記主変速レバー21及び副変速レバー23よりも後方側には、エンジン回転数を人為的に高低変更するためのアクセルレバー24を設けてある。また、このサイドパネル31の前記主変速レバー21及び副変速レバー23よりも後方側で、前記アクセルレバー24よりも前記操縦座席20から遠い側には、オートクラッチボタン25が設けられている。
【0026】
前記オートクラッチボタン25は、刈取処理装置3の所定高さ以上の昇降動作に連係して刈取クラッチ12が入り切り操作されるオートクラッチ制御モードと、その連係を断って刈取クラッチ12の入り切りが刈取処理装置3の所定高さ以上の昇降動作に連係しないオートクラッチ解除モードとに、後述するマイクロコンピュータからなる制御装置100のモータ制御手段102での制御状態を切換操作するものであり、押し操作の度にオン・オフ状態が交互に切り換えられるプッシュオン・プッシュオフ形式の押しボタンスイッチを用いて構成されている。
前記オートクラッチ制御モードでは、走行機体1の走行中における通常の刈取作業状態で刈取クラッチ12が入り状態であるときに、刈取処理装置3が所定高さ以上に上昇すると、その動作に連係して刈取クラッチ12が切り操作される。逆に、その状態から刈取処理装置3が所定高さよりも低い高さにまで下降操作されると、その動作に連係して刈取クラッチ12が再び入り操作される。前記刈取処理装置3が所定高さ以上に上昇したか否かは、走行機体1に対する刈取り部フレーム3aの昇降揺動角度を、ポテンショメータで構成された高さ検出センサ38によって検出し、その検出信号に基づいて後述する制御装置100で判断するように構成されている。
前記オートクラッチ解除モードでは、刈取処理装置3の昇降動作と刈取クラッチ12の入り切り操作との連係関係が絶たれるので、刈取クラッチ12の入り切り作動は、刈取処理装置3の所定高さ以上の昇降動作に関係しなくなる。
【0027】
また、このサイドパネル31には、前記主変速レバー21が配置された箇所よりも前方側で、操縦座席20に搭座する操縦者が見やすい位置に、統合スイッチ26や液晶表示装置28が設けられている。
前記統合スイッチ26は、前記刈取クラッチ12と脱穀クラッチ11とを、機体を走行させながらの通常の刈取脱穀作業を行うに適した作動形態と、機体を停止させての枕扱ぎ作業を行うに適した作動形態とに、ワンタッチ操作で切り換えることができるようにするためのものであり、ワンタッチでの押し操作の度にオン・オフ状態が交互に切り換えられるプッシュオン・プッシュオフ形式の押しボタンスイッチを用いて構成してある。押し操作されて入り状態であることが検出されると、図4に示すマイクロコンピュータからなる制御装置100のモータ制御手段102に制御開始信号を入力するものである。
前記液晶表示装置28は、エンジン回転数や燃料残量など、各種の情報を表示するためのものである。
【0028】
前記フロントパネル32は前記サイドパネル31の前端部近くから右横方向に延設してあり、このフロントパネル32には、フロントパネル32の右端部近くに配置した旋回操作用のステアリングレバー22を設けてあり、そのステアリングレバー22よりもサイドパネル31が存在する側に寄った位置に、掻き込み操作手段としての掻き込みボタン27(掻き込み指令用の押し操作具に相当する)を備えてある。
この掻き込みボタン27は、操縦座席20の左右中心の直前方で、かつ操縦座席20に搭座した状態で後述する門形の手摺り43の下から見える位置のフロントパネル32の左右中央部における後部に配設してあり、ステアリングレバー22を握った手とは反対側の手で後述する門形の手摺り43の下側で操作し易い位置に設けられている。
この掻き込みボタン27は、機体停止状態でも刈取クラッチ12の入り操作を可能にして、刈取クラッチ12による刈取穀稈の刈取搬送と、脱穀クラッチ11の入り状態での脱穀駆動を可能にするためのものであり、ワンタッチでの押し操作の度にオン・オフ状態が交互に切り換えられるプッシュオン・プッシュオフ形式の押しボタンスイッチを用いて構成してある。
この掻き込みボタン27が押し操作されて入り状態であることが検出されると、後述するマイクロコンピュータからなる制御装置100のモータ制御手段102に対して強制掻き込み開始信号を入力し、再度押し操作されて切り状態であることが検出されると強制掻き込み終了信号を入力するものである。
【0029】
図6に示すように、前記前部操縦塔42は、その上部にアームレストとして機能する門形の手摺り43を一体に備えているとともに、前面側には、機体進行方向の前方を照射するための前照灯45が装備されている。
この前照灯45は、図6及び図7に示すように、前部操縦塔42の前壁を構成する前面パネル44に形成された上下一対の凹部46と、その各凹部46の夫々に嵌め込み状態に装着された一対の光源ランプ47とを備えて構成されている。
前記凹部46には、同一仕様に構成されている各光源ランプ47への導電用ハーネス47aを通すための透孔46aが内奥側の上半部に形成されているとともに、各光源ランプ47を凹部46内に固定するように、光源ランプ47の上部側に備えられている取付対象箇所を左右両側から挟み込んだ状態で前面パネル44の裏側からビス48により取付固定するための止着部46bが備えられている。
【0030】
上記の前面パネル44に形成される凹部46は、上方側の凹部46が機体の右端部側寄り(図6では左側寄り)に位置し、下方側の凹部46が上方側の凹部46よりも機体の左側寄り(図6では右側寄り)に位置するように形成されている。
そして、各光源ランプ47は個々に凹部46内の止着部46bに取付固定されることにより、個別に水平面に対する光軸L1,L2の上下方向角度を変更可能である。したがって、例えば図7に示すように、上側の光源ランプ47の光軸L1よりも下側の光源ランプ47の光軸L2が下を向くように設定して取り付けて、上側の光源ランプ47は機体進行方向の遠くを照らし、下側の光源ランプ47は機体進行方向の直前箇所を照らすようにすることができる。
このように、下側の光源ランプ47の光軸L2を下方へ向けて機体進行方向の直前箇所を照らすようにすることで、この下側の光源ランプ47を、圃場の刈取対象茎稈の株元側を明るく照射して刈取作業を行い易くするための作業灯としての役割を兼ねさせることができる。
【0031】
〔制御系の説明〕
図4はコンバインの制御系を示している。
制御装置100は、前記刈取クラッチ12や脱穀クラッチ11の入り切り作動、及び穀稈受け止め体18の作用姿勢と作用解除姿勢との切換操作を行うための、作業切換装置36を操作するように構成されている。その作業切換装置36は、電動モータ35の正逆転作動に伴って駆動されるカム体(図示せず)やカムフォロワ(図示せず)を備え、そのカム体で操作されるカムフォロワを、前記刈取クラッチ12と脱穀クラッチ11、及び穀稈受け止め体18と連結策で連結し、前記刈取クラッチ12と脱穀クラッチ11の入り切り作動、ならびに穀稈受け止め体18の上げ下げ操作が前記電動モータ35によるカム体の回転操作で行われるように構成してある。
【0032】
上記の作業切換装置36による刈取クラッチ12と脱穀クラッチ11、及び穀稈受け止め体18の夫々の作動は、図8に示すように電動モータ35の正逆転作動と関連づけて行われる。
つまり、図8は、作業切換装置36による脱穀クラッチ11と刈取クラッチ12との入り切り作動、穀稈受け止め体18の位置変更操作に関するそれぞれの動作順をタイムチャートで表示している。図中左側の端部箇所が、作業切換装置36に備えられたカム体を非作業位置T1に操作している状態を示す。
この非作業位置T1では、脱穀クラッチ11と刈取クラッチ12とが共に切り状態にあり、穀稈受け止め体18は上端縁が刈取り穀稈を下側から受け止めて、脱穀フィードチェーン4Aの搬送始端部から浮かせて受け止め支持する作用位置に操作されている。
【0033】
この非作業位置T1から、電動モータ35の駆動力によってカム体を正転方向に回転させると、回転作動範囲の途中に設定された枕扱ぎ位置T2に到達する前に脱穀クラッチ11が入り状態に切り替わり、刈取クラッチ12は未だ切り状態に維持され、穀稈受け止め体18は作用位置に位置したままである。この箇所が枕扱ぎ位置T2として用いられる。
【0034】
上記枕扱ぎ位置T2を越えてさらにカム体を正転方向に回転させると、作用位置に位置していた穀稈受け止め体18が、脱穀フィードチェーン4Aの搬送始端部よりも下方側へ引退して、脱穀フィードチェーン4Aの搬送始端部による穀稈搬送が可能な解除位置側に切り替え操作され、カム体の正転方向でのストロークエンドとなる作業位置T3に到達する前に刈取クラッチ12も入り状態に切り替えられて、作業位置T3では、脱穀クラッチ11と刈取クラッチ12とが共に入り状態に操作され、穀稈受け止め体18は解除位置に操作された状態となる。
【0035】
次に、上記の作業位置T3からカム体を逆転方向に回転させると、回転作動範囲の途中に設定された枕扱ぎ位置T2に到達する前に刈取クラッチ12が切り状態に切り替わり、脱穀クラッチ11は未だ入り状態に維持され、穀稈受け止め体18は解除位置から作用位置に位置変更される。この箇所は枕扱ぎ位置T2として用いられる。
【0036】
上記枕扱ぎ位置T2を越えてさらにカム体を逆転方向に回転させると、脱穀クラッチ11が切り状態に切り替わり、刈取クラッチ12は切り状態のままに維持され、穀稈受け止め体18は作用位置に位置したままで非作業位置T1に復帰する。
【0037】
〔制御作動〕
次に、制御装置100による制御作動を説明する。
前記制御装置100には、エンジン回転数を検出するエンジン回転計51の検出信号、及び燃料計52の検出信号等が入力されて、その入力された信号に基づいて所定の表示状態を得られるように液晶表示装置28に表示信号を出力するための制御プログラムが予め不揮発性メモリーに記憶された走行制御手段101として備えられている。
また、上記走行制御手段101とは別に、前記作業切換装置36の電動モータ35を正転方向あるいは逆転方向に回転駆動して、前記刈取クラッチ12と脱穀クラッチ11、及び穀稈受け止め体18を所定の作動状態となるように制御するための制御プログラムが予め不揮発性メモリーに記憶されたモータ制御手段102を備えている。
このモータ制御手段102には、静油圧式無段変速装置7を高低変速操作する主変速レバー21の操作位置を判別するポテンショメータ21aの検出信号、前記作業切換装置36の作動を開始させるための統合スイッチ26の操作信号、及び作業切換装置36に備えられたカム体を駆動するための回転駆動軸の回転角度を検出するポテンショメータ37の検出信号、オートクラッチボタン25の操作信号、掻き込みボタン27の操作信号、刈取処理装置3が所定高さ以上に上昇したか否かを、走行機体1に対する刈取り部フレーム3aの昇降揺動角度を検出するポテンショメータで構成された高さ検出センサ38による検出信号の夫々が入力されるように構成してあり、それらの入力される各信号に基づいて前記作業切換装置36の電動モータ35の作動を制御するように構成されている。
【0038】
〔メインルーチン〕
図9に示すように、キースイッチなどによる電源投入で制御装置100のメインルーチンが起動すると、ステップ#1に示すように、イニシャルセットで、調速機構(図示せず)をアイドリング状態にし、脱穀クラッチ11及び刈取クラッチ12が切り操作状態とされ、穀稈受け止め体18は作用姿勢にされ、オートクラッチボタン25は入り状態に設定され、統合スイッチ26ならびに掻き込みボタン27は切り状態に設定される。
【0039】
ステップ#2では、エンジン回転数を検出する回転計51の検出信号や燃料計52の検出信号に基づくエンジン回転数の制御や表示等の走行制御手段101による制御が行われ、ステップ#3では統合スイッチ26が入り操作されたか否かを検出し、統合スイッチ26が入り操作されたことが検出されるとステップ#4のモータ制御手段102による制御が開始される。統合スイッチ26が入り操作されていないことが検出されると、ステップ#5に移行し、キースイッチが切られたか否かを検出して、キースイッチが切り操作されていなければステップ#2の走行制御が実行され、キースイッチが切り操作されると制御装置100による制御を終了する。
【0040】
〔モータ制御手段〕
図10乃至図14は、前記ステップ#4でのモータ制御手段102によるモータ制御の状態を示すものである。
このモータ制御手段102による電動モータ35の制御は、次のようにして行われる。
すなわち、統合スイッチ26が押し操作されると、制御装置100が備えるメインルーチンの一部にサブルーチンとして備えられたモータ制御手段102が呼び出され、図10に示すように、まず、主変速レバー21が前進位置Fにあるか否かが判断され、前進位置Fであれば、次に刈取処理装置3の高さ位置を検出する高さ検出センサ38で、刈取処理装置3の高さを検出する。
刈取処理装置3の高さが予め設定されている所定高さ以上であれば後述するオートクラッチ制御が行われ、所定高さよりも低い場合には、作業切換装置36のポテンショメータ37により、カム体の位置を判別する(ステップ#10、#11、#12、及び#19)。
【0041】
ステップ#12では、ポテンショメータ37により、カム体の位置が脱穀クラッチ11や刈取クラッチ12を切り状態に操作し、穀稈受け止め体18を作用位置にした、刈取脱穀作業を行わない位置であるところの非作業位置T1であると判別された場合には、電動モータ35を図8における正転方向に回転駆動する(ステップ#12、及びステップ#14)。そして、ポテンショメータ37により、カム体が脱穀クラッチ11や刈取クラッチ12を共に入り状態に操作し、穀稈受け止め体18を解除位置にした、機体走行を伴って刈取脱穀作業を行う位置であるところの作業位置T3であると判別された場合には、電動モータ35における正転方向の回転駆動を停止する(ステップ#15、及びステップ#16)。
【0042】
前記ステップ#12で前記ポテンショメータ37により、カム体の位置が非作業位置T1でないと判別された場合にはステップ#13に進む。
ステップ#13で、カム体の位置が、脱穀クラッチ11が入りで、刈取クラッチ12が切り状態に操作され、かつ穀稈受け止め体18が作用位置にあって枕扱ぎ脱穀作業を行う位置であるところの枕扱ぎ位置T2であると判別された場合には、前記カム体の位置が脱穀クラッチ11や刈取クラッチ12を切り状態に操作し、穀稈受け止め体18を作用位置にした、非作業位置T1であると判別された場合と同様に、電動モータ35を図8における正転方向に回転駆動する(ステップ#12、ステップ#13、及びステップ#14)。 そして、ポテンショメータ37により、カム体が、脱穀クラッチ11や刈取クラッチ12を共に入り状態に操作し、穀稈受け止め体18を解除位置にした、作業位置T3であると判別されると、電動モータ35における正転方向の回転駆動を停止する(ステップ#15、及びステップ#16)。
前記ステップ#13で、カム体の位置が、枕扱ぎ位置T2ではないと判別された場合には、カム体の位置は、脱穀クラッチ11や刈取クラッチ12が共に入り状態で、穀稈受け止め体18は解除位置にある作業位置T3であるから、そのままの状態を維持する。
【0043】
前記ステップ#10で主変速レバー21が前進位置Fにあるか否かが判断され、前進位置Fではない(後進位置Rまたは中立位置N)と判断された場合には、ステップ#20に示すように、主変速レバー21が中立位置Nであるか否かを判断する。主変速レバー21が中立位置Nにあると判断された場合には、次に刈取処理装置3の高さ位置を検出する高さ検出センサ38で刈取処理装置3の高さを検出する(ステップ#20、#21)。
刈取処理装置3の高さが予め設定されている所定高さ以上であれば後述するオートクラッチ制御が行われ、所定高さよりも低い場合には、作業切換装置36のポテンショメータ37により、カム体の位置を判別する(ステップ#21、#22、及び#29)。
【0044】
ステップ#22では、ポテンショメータ37により、カム体の位置が脱穀クラッチ11や刈取クラッチ12を切り状態に操作し、穀稈受け止め体18を作用位置にした、刈取脱穀作業を行わない位置であるところの非作業位置T1であると判別された場合には、次に掻き込みボタン27が押されて入り操作されたか否かを検出する(ステップ#22、#23)。
掻き込みボタン27が入り操作されたことを検出すると、電動モータ35を図8における正転方向に回転駆動し、ポテンショメータ37により、カム体が脱穀クラッチ11や刈取クラッチ12を共に入り状態に操作し、穀稈受け止め体18を解除位置にした位置であるところの作業位置T3であると判別されると、電動モータ35における正転方向の回転駆動を停止する(ステップ#23、#24、#26、及び#28)。
前記掻き込みボタン27が入り操作されていないことを検出した場合には、電動モータ35を図8における正転方向に回転駆動し、ポテンショメータ37により、カム体が脱穀クラッチ11は入りで、刈取クラッチ12が切り状態に操作され、かつ穀稈受け止め体18が作用位置にある、枕扱ぎ脱穀作業を行う位置であるところの枕扱ぎ位置T2であると判別された位置で、電動モータ35における正転方向の回転駆動を停止する(ステップ#23、#25、#27、及び#28)。
【0045】
前記ステップ#22で、ポテンショメータ37により、カム体の位置が非作業位置T1ではないと判別された場合には、次にポテンショメータ37により、カム体の位置が脱穀クラッチ11は入りで、刈取クラッチ12が切り状態に操作された位置であるところの枕扱ぎ位置T2であるか否かを判断する(ステップ#22、#30)。
カム体の位置が枕扱ぎ位置T2であると判断された場合には、次に掻き込みボタン27が押されて入り操作されたか否かを検出し、掻き込みボタン27が入り操作されていると電動モータ35を図8における正転方向に駆動する。そして、ポテンショメータ37により、カム体が脱穀クラッチ11や刈取クラッチ12を共に入り状態に操作し、穀稈受け止め体18を解除位置にした位置であるところの作業位置T3に達すると電動モータ35における正転方向の回転駆動を停止する(ステップ#31、#32、#33、及び#34)。
掻き込みボタン27が入り操作されていなければ電動モータ35を駆動せず停止状態のままとする(ステップ#31、#34)。
【0046】
前記ステップ#30で、ポテンショメータ37により、カム体の位置が枕扱ぎ位置T2でないと判別された場合には、次に掻き込みボタン27が押されて入り操作されたか否かを検出する(ステップ#30、#35)。
このときのカム体の位置は、脱穀クラッチ11と刈取クラッチ12とが共に入り状態に操作され、穀稈受け止め体18が解除位置であるところの作業位置T3であるから、掻き込みボタン27が入り操作された場合に、そのままの状態を維持すればよいので、電動モータ35は駆動せず停止状態のままとする(ステップ#35、#38)。
掻き込みボタン27が入り操作されていないと判断された場合には、電動モータ35を図8における逆転方向に駆動し、ポテンショメータ37により、カム体が脱穀クラッチ11は入りで、刈取クラッチ12が切り状態に操作され、かつ穀稈受け止め体18が作用位置にある、枕扱ぎ脱穀作業を行う位置であるところの枕扱ぎ位置T2であると判別された位置で、電動モータ35における逆転方向の回転駆動を停止する(ステップ#35、#36、#37、及び#38)。
【0047】
前記ステップ#20で主変速レバー21が中立位置Nにあるか否かが判断され、中立位置Nではない(後進位置R)と判断された場合には、ステップ#40に示すように、作業切換装置36のポテンショメータ37により、カム体の位置が脱穀クラッチ11や刈取クラッチ12を切り状態に操作し、穀稈受け止め体18を作用位置にした、刈取脱穀作業を行わない位置であるところの非作業位置T1であるか否かを判別する(ステップ#20、#40)。
次に、非作業位置T1であると判別された場合には、電動モータ35を図8における正転方向に回転駆動し、ポテンショメータ37により、カム体が脱穀クラッチ11は入りで、刈取クラッチ12が切り状態に操作され、かつ穀稈受け止め体18が作用位置にある、枕扱ぎ脱穀作業を行う位置であるところの枕扱ぎ位置T2であると判別された位置で、電動モータ35における正転方向の回転駆動を停止する(ステップ#40、#41、#42、及び#43)。
【0048】
前記ステップ#40で非作業位置T1ではないと判別された場合には、ポテンショメータ37により、カム体が脱穀クラッチ11や刈取クラッチ12を共に入り状態に操作し、穀稈受け止め体18を解除位置にした位置であるところの作業位置T3であるか否かを判別する(ステップ#40、#44)。
カム体の位置が作業位置T3であると判別された場合には、電動モータ35を図8における逆転方向に回転駆動し、ポテンショメータ37により、カム体が脱穀クラッチ11は入りで、刈取クラッチ12が切り状態に操作され、かつ穀稈受け止め体18が作用位置にある、枕扱ぎ脱穀作業を行う位置であるところの枕扱ぎ位置T2であると判別された位置で、電動モータ35における逆転方向の回転駆動を停止する(ステップ#44、#45、#46、及び#43)。
カム体の位置が作業位置T3ではないと判別された場合には、このときのカム体の位置は、脱穀クラッチ11は入りで、刈取クラッチ12が切り状態に操作され、かつ穀稈受け止め体18が作用位置にある枕扱ぎ位置T2であるから、そのままの状態を維持すればよいので、電動モータ35は駆動せず停止状態のままとする(ステップ#44、#43)。
【0049】
前記ステップ#16、ステップ#28、ステップ#34、ステップ#38、ステップ#43での電動モータ35の停止操作の後、及びステップ#19、ステップ#29でのオートクラッチ制御が行われた後、掻き込みボタン27の操作をリセット(切り操作)する。
次に統合スイッチ26が再び押し操作されてモータ制御手段102による制御を停止する切り信号が出力されたか否かを判別し、統合スイッチ26が切り操作されていなければ、このモータ制御手段102での制御を繰り返し、統合スイッチ26が切り操作されたことが判別されると上位のメインルーチンへ戻る(ステップ#17、#18)。
【0050】
〔オートクラッチ制御〕
次に下位のサブルーチンであるオートクラッチ制御について説明する。
図14に示すように、まず、オートクラッチボタン25が切り操作されていないかを判別し、切り操作されていると判別された場合は、このオートクラッチ制御のサブルーチンを脱出して上位ルーチンへ戻る(ステップ#50)。
オートクラッチボタン25が切り操作されていないと判断されると、ポテンショメータ37により、カム体が脱穀クラッチ11や刈取クラッチ12を共に入り状態に操作し、穀稈受け止め体18を解除位置にした位置であるところの作業位置T3であるか否かを判別する(ステップ#50、#51)。
【0051】
カム体の位置が作業位置T3であると判別された場合には、次に掻き込みボタン27が押されて入り操作されたか否かを検出する。このときのカム体の位置は、脱穀クラッチ11と刈取クラッチ12とが共に入り状態に操作され、穀稈受け止め体18が解除位置であるところの作業位置T3であるから、掻き込みボタン27が入り操作された場合に、そのままの状態を維持すればよいので、電動モータ35は駆動せず停止状態のままとする(ステップ#52、#55)。
掻き込みボタン27が入り操作されていないと判断された場合には、電動モータ35を図8における逆転方向に駆動し、ポテンショメータ37により、カム体の位置が脱穀クラッチ11は入りで、刈取クラッチ12は切り状態に操作され、かつ穀稈受け止め体18が作用位置にあって、枕扱ぎ脱穀作業を行う位置であるところの枕扱ぎ位置T2であると判別された位置で、電動モータ35における逆転方向の回転駆動を停止する(ステップ#52、#53、#54、及び#55)。
【0052】
ステップ#51において、カム体の位置が作業位置T3でないと判別された場合には、次にポテンショメータ37により、カム体の位置が脱穀クラッチ11は入りで、刈取クラッチ12が切り状態に操作され、かつ穀稈受け止め体18が作用位置にあるところの枕扱ぎ位置T2であるか否かを判別する(ステップ#51、#56)。
カム体の位置が枕扱ぎ位置T2であると判別された場合には、次に掻き込みボタン27が押されて入り操作されたか否かを検出し、掻き込みボタン27が入り操作されていると、電動モータ35を図8における正転方向に駆動し、ポテンショメータ37により、カム体が脱穀クラッチ11や刈取クラッチ12を共に入り状態に操作し、穀稈受け止め体18を解除位置にした位置であるところの作業位置T3に達すると電動モータ35における正転方向の回転駆動を停止する(ステップ#57、#58、#59、及び#60)。
掻き込みボタン27が入り操作されていなければ、そのままの状態を維持すればよいので、電動モータ35を駆動せず停止状態のままとする(ステップ#57、#60)。この状態では、カム体は枕扱ぎ位置T2に位置している。
【0053】
ステップ#56において、カム体の位置が枕扱ぎ位置T2でないと判断された場合には、次に掻き込みボタン27が押されて入り操作されたか否かを検出し、掻き込みボタン27が入り操作されていると、電動モータ35を図8における正転方向に駆動し、ポテンショメータ37により、カム体が脱穀クラッチ11や刈取クラッチ12を共に入り状態に操作し、穀稈受け止め体18を解除位置にした位置であるところの作業位置T3に達すると電動モータ35における正転方向の回転駆動を停止する(ステップ#61、#58、#59、及び#60)。
掻き込みボタン27が入り操作されていなければ、そのままの状態を維持すればよいので、電動モータ35を駆動せず停止状態のままとする(ステップ#61、#60)。この状態では、カム体は非作業位置T1に位置している。
【0054】
上記のように制御されるので、掻き込みボタン27の作動は、主変速レバー21が前進位置Fで統合スイッチ26が入り操作されると、カム体は自動的に作業位置T3に操作されるので、この機体走行状態での刈取作業が行われている状態では掻き込みボタン27を押しても意味がないので掻き込みボタン27の入り切り操作は検出しない。
主変速レバー21が前進位置Fで統合スイッチ26が入り操作されている状態でも、刈取処理装置3が上昇されてオートクラッチ制御が働き、刈取クラッチ12が切り操作された状態では、掻き込みボタン27の入り操作に伴って刈取クラッチ12が入り操作される。
統合スイッチ26が入り操作されている状態において、主変速レバー21が中立位置Nに位置しているときには、掻き込みボタン27の入り操作に伴って刈取クラッチ12の入り操作が行われるように制御される。主変速レバー21が後進位置Rに位置しているときには、刈取作業自体を行わないので掻き込みボタン27を押しても掻き込みボタン27の入り切り操作は検出しない。
【0055】
〔その他〕
図21は、コンバインによる作業形態の一例を示している。
通常、掻き込みボタン26は走行機体1が停止している状態で入り操作することにより、刈取クラッチ12を入り操作して、機体停止状態での刈取脱穀作業が可能な状態とするものであるが、次のような使い方もできる。
この図21のように、コンバインが畦側から傾斜面を降りながら圃場端近くの稲を刈り取るような場合、走行機体1に対して刈取処理装置3を相対的に上昇させると、オートクラッチ制御が働くことによって、刈取クラッチ12が切り作動してしまうが、このときに掻き込みボタン27を入り操作することで刈取脱穀作業を続行することができる。
【0056】
〔別実施形態の1〕
操縦座席20周りでの走行変速レバーとしての主変速レバー21と、操縦操作具としてのステアリングレバー22と、掻き込みボタン27との配置関係としては、実施の形態で説明した構造に限らず、次のように構成することもできる。
図15に示すように、操縦部パネル30として、操縦座席20の横側方に位置させたサイドパネル31と、操縦座席20の前方側に位置させたフロントパネル32とを備え、
サイドパネル31上で操縦座席20に搭座する操縦者が把持し易い位置に主変速レバー21を配備し、フロントパネル32の右側端部にステアリングレバー22を配備してある。
そして、掻き込みボタン27は、前述した実施形態のようにフロントパネル32上にではなく、サイドパネル31上で、前記主変速レバー21よりも前方側に配備されている。
【0057】
〔別実施形態の2〕
操縦座席20周りでの走行変速レバーとしての主変速レバー21と、操縦操作具としてのステアリングハンドル29と、掻き込みボタン27との配置関係としては、次のように構成することもできる。
図16に示すように、操縦部パネル30として、操縦座席20の横側方に位置させたサイドパネル31を備え、操縦座席20の前方側には、運転部フロア2a側から立設させたステアリングハンドル29が設けられている。
この構造で、サイドパネル31上で操縦座席20に搭座する操縦者が把持し易い位置に主変速レバー21を配備し、掻き込みボタン27は、サイドパネル31上で、前記主変速レバー21よりも前方側に配備されている。
【0058】
〔別実施形態の3〕
操縦座席20周りでの走行変速レバーとしての主変速レバー21と、操縦操作具としてのステアリングハンドル29と、掻き込みボタン27との配置関係としては、次のように構成することもできる。
図17に示すように、操縦部パネル30として、操縦座席20の横側方に位置させたサイドパネル31と、前記サイドパネル31から連続して操縦座席20の前方側の一部に張り出すように位置させた短いフロントパネル32とを備え、その短いフロントパネル32の右側に、運転部フロア2a側から立設させたステアリングハンドル29が設けられている。
この構造で、サイドパネル31上で操縦座席20に搭座する操縦者が把持し易い位置に主変速レバー21を配備し、掻き込みボタン27は、前記ステアリングハンドル29よりもサイドパネル31に近い側に位置する短いフロントパネル32上に配備されている。
【0059】
〔別実施形態の4〕
操縦座席20周りでの走行変速レバーとしての主変速レバー21と、操縦操作具としてのステアリングハンドル29と、掻き込みボタン27との配置関係としては、次のように構成することもできる。
図18に示すように、操縦部パネル30として、操縦座席20の横側方に位置させたサイドパネル31を備え、操縦座席20の前方側には、運転部フロア2a側から立設させたステアリングハンドル29が設けられ、ステアリングハンドル29のハンドルポスト部分の左右横側方に部分的なフロントパネル32が備えられている。
この構造で、サイドパネル31上で操縦座席20に搭座する操縦者が把持し易い位置に主変速レバー21を配備し、掻き込みボタン27は、前記ステアリングハンドル29よりもサイドパネル31側寄り箇所のフロントパネル32上に配備されている。
このとき、フロントパネル32上で掻き込みボタン27が設けられている箇所は、ステアリングハンドル29の外周縁よりもサイドパネル31側へ外れた位置であるのが望ましい。
【0060】
〔別実施形態の5〕
操縦座席20周りでの走行変速レバーとしての主変速レバー21と、操縦操作具としてのステアリングハンドル29と、掻き込みボタン27との配置関係としては、次のように構成することもできる。
図19に示すように、操縦部パネル30として、操縦座席20の横側方に位置させたサイドパネル31を備え、操縦座席20の前方側には、運転部フロア2a側から立設させたステアリングハンドル29が設けられている。
この構造で、サイドパネル31上で操縦座席20に搭座する操縦者が把持し易い位置に主変速レバー21を配備し、掻き込みボタン27は、前記ステアリングハンドル29のハンドル軸心上に設けられている。
したがって、ステアリングハンドル29を旋回操作しても掻き込みボタン27の位置は変化しない。これによって、例えば左手でステアリングハンドル29を握りながら、右手でステアリングハンドル29の上側からハンドル軸心上の掻き込みボタン27を押すなどの操作が簡便に行える。
【0061】
〔別実施形態の6〕
操縦座席20周りでの走行変速レバーとしての主変速レバー21と、操縦操作具としてのステアリングハンドル29と、掻き込みボタン27との配置関係としては、次のように構成することもできる。
図20に示すように、操縦部パネル30として、操縦座席20の横側方に位置させたサイドパネル31を備え、操縦座席20の前方側には、運転部フロア2a側から立設させたステアリングハンドル29が設けられている。
この構造で、サイドパネル31上で操縦座席20に搭座する操縦者が把持し易い位置に主変速レバー21を配備し、掻き込みボタン27は、前記ステアリングハンドル29のホイール部分に設けられている。
この場合、ステアリングハンドル29を旋回操作すると掻き込みボタン27の位置は変化するが、掻き込みボタン27の位置を、走行機体1の直進走行時に操縦者が把持し易いホイール上の位置の近くに設定することで、操縦者がステアリングハンドル29を把持したままの手指により操作することが可能となる。
【0062】
〔別実施形態の7〕
掻き込み指令用の操作具としては、上述した各実施形態で示したような、ワンタッチでの押し操作の度にオン・オフ状態が交互に切り換えられるプッシュオン・プッシュオフ形式の押しボタンスイッチからなる掻き込みボタン27に限らず、例えば、トグル式に2位置を切換え可能なボタンスイッチや、タッチパネルへの接触によってスイッチの入り切りが行われる構造のものなど、ワンタッチでの操作で操作可能な適宜の構造のものを採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、実施形態で示したような自脱型のコンバインに限らず、普通型のコンバインにも適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1L,1R 走行装置
2 搭乗運転部
3 刈取処理装置
4 脱穀装置
7 静油圧式無段変速装置
9 ミッションケース
11 脱穀クラッチ
12 刈取クラッチ
16 ポンプ軸
18 穀稈受け止め体
20 操縦座席
21 走行変速レバー(主変速レバー)
22 ステアリングレバー
29 ステアリングハンドル
27 掻き込み指令用の押し操作具(掻き込みボタン)
30 操縦部パネル
31 サイドパネル
32 フロントパネル
E エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操縦部パネルとして、操縦座席の横側方に位置させたサイドパネルと、操縦座席の前方側に位置させたフロントパネルとを備え、
前記サイドパネル上に走行変速レバーを配備し、前記フロントパネルにステアリングレバーを配備するとともに、
前記走行変速レバーが配備された箇所よりも前方側で、かつ前記ステアリングレバーが配備された箇所よりも前記走行変速レバーが配備された箇所寄りの操縦部パネル上に、機体停止状態で刈取クラッチを入り操作するための掻き込み指令用の押し操作具を配設してあるコンバイン。
【請求項2】
操縦部パネルとして、操縦座席の横側方に位置させたサイドパネルを備え、
前記サイドパネル上に走行変速レバーを配備し、操縦座席の前方側にステアリングハンドルを配備するとともに、
前記走行変速レバーが配備された箇所よりも前方側で、かつ前記ステアリングハンドルが配備された箇所よりも前記走行変速レバーが配備された箇所寄りの操縦部パネル上に、機体停止状態で刈取クラッチを入り操作するための掻き込み指令用の押し操作具を配設してあるコンバイン。
【請求項3】
操縦部パネルとして、操縦座席の横側方に位置させたサイドパネルを備え、
前記サイドパネル上に走行変速レバーを配備し、操縦座席の前方側にステアリングハンドルを配備するとともに、
前記ステアリングハンドルに、機体停止状態で刈取クラッチを入り操作するための掻き込み指令用の押し操作具を配設してあるコンバイン。
【請求項4】
エンジンから走行装置へ動力を伝達する走行駆動系に走行変速用の静油圧式無段変速装置を介装し、この静油圧式無段変速装置のポンプ軸に入力された動力をモータ軸から走行ミッションケース内の伝動機構を介して走行装置に伝達するように構成してあるとともに、
刈取処理装置への駆動力を、前記静油圧式無段変速装置のポンプ軸から取り出すように構成してある請求項1〜3のいずれか1項記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−60936(P2012−60936A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208282(P2010−208282)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】