説明

コンバイン

【課題】運転キャビンの前壁がフロント運転パネルの上方に位置する運転キャビンを採用することで運転室を形成するのに、操作具を取り扱いやすくできるように、かつ運転キャビンの前壁とフロント運転パネルの間のシールを構造簡単にできるようにする。
【解決手段】運転キャビンの前壁22の下端部22dがフロント運転パネル31の上端部31aの前方にフロント運転パネル31の上端部31aと機体前後方向に重なって位置するように運転キャビンを構成してある。運転キャビンの前壁22の下端部22dから機体下方向きに延出し、延出端部がフロント運転パネル31の前側に位置するフロントカバー70を設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転座席の前方に機体上下向き姿勢で設けるとともに操作具を備えたフロント運転パネルと、前記フロント運転パネルの上方に位置する前壁を備えて運転室を形成する運転キャビンとを備えたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示されるように、フロント運転パネル、及び運転キャビンとしてのキャビンが備えられたコンバインがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−238793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
運転座席の前方に機体上下向き姿勢で設けたフロント運転パネルが装備された運転部を有したコンバインにおいて、運転キャビンの前壁がフロント運転パネルの上方に位置する運転キャビンを採用することによって運転室を形成する場合、フロント運転パネルに設けた操作具とこれの前方に位置することになる運転キャビンの前壁との間隔が狭くなると、操作具を取り扱いにくくなる。また、運転キャビンの前壁の下端がフロント運転パネルの上端部付近に位置することになるから、運転キャビンの前壁とフロント運転パネルの間から雨水が浸入することなどの回避を図る必要がある。
【0005】
本発明の目的は、運転キャビンの前壁がフロント運転パネルの上方に位置する運転キャビンを採用することで運転室を形成するものでありながら、操作具を取り扱いやすくできるとともに運転キャビンの前壁とフロント運転パネルの間のシールを構造簡単にできるコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本第1発明は、運転座席の前方に機体上下向き姿勢で設けるとともに操作具を備えたフロント運転パネルと、前記フロント運転パネルの上方に位置する前壁を備えて運転室を形成する運転キャビンとを備えたコンバインにおいて、
前記運転キャビンの前壁の下端部が前記フロント運転パネルの上端部の前方に前記フロント運転パネルの上端部と機体前後方向に重なって位置するように前記運転キャビンを構成し、
前記運転キャビンの前壁の下端部から機体下方向きに延出し、延出端部が前記フロント運転パネルの前側に位置するフロントカバーを設けてある。
【0007】
本第1発明の構成によると、運転キャビンの前壁の下端部がフロント運転パネルにおける上端部の前方に位置することにより、運転キャビンの前壁と操作具との間隔を極力広く確保することができ、その広い間隔によって操作具の取り扱いが容易となる。
フロント運転パネルにおける上端部と運転キャビンにおける前壁の間に隙間が発生しても、運転キャビンの前壁がフロント運転パネルの上端部に対して機体前後方向に重なっていて、その隙間に雨水などが入り込みにくくなる。さらにフロント運転パネルと運転キャビンの隙間をフロントカバーによって覆うことができ、全体として、運転キャビンの前壁とフロント運転パネルの間からの雨水浸入などを回避しやすい。
【0008】
従って、操作具を取り扱いやすくて作業部や機体の操作や操縦などを行ないやすい。それでありながら、フロント運転パネルと運転キャビンの前壁との重なりやフロントカバーを設ける簡単な構造で雨水浸入などを回避できて経済面などで有利に得ることができる。
【0009】
本第2発明は、前記前壁と前記フロント運転パネルとの間をシールするシール部材を前記フロントカバーの裏側に配置し、前記シール部材を保持するシール保持部材を、前記前壁側又は前記フロントカバー側に備えてある。
【0010】
本第2発明の構成によると、フロントカバーの裏側で運転キャビンの前壁とフロント運転パネルの間をシール部材によってシールすることができる。フロントカバーに製作誤差や組付け誤差が発生することがあっても、運転キャビンおける前壁の下端部のフロント運転パネルに対する重なりを利用して運転キャビンの前壁とフロント運転パネルの相対的な位置調節を行なうことで製作誤差や組付け誤差を吸収させてシール部材を精度よく作用させることができる。
【0011】
従って、フロント運転パネルと運転キャビンの前壁の間からの雨水浸入などを良好に防止して運転室を軽快に運転できるよう良好な環境のものにできる。
【0012】
本第3発明は、前記フロントカバーの延出端部にシール部材を前記フロント運転パネルの前面に当て付けられる状態で取付けてある。
【0013】
本第3発明の構成によると、運転キャビンの前壁のフロント運転パネルに重なる部分から下方にフロントカバーによって外れた箇所であって、シール部材の設置スペースを広く確保できる箇所にシール部材を配置することができ、シール部材を比較的大きなものにしてフロント運転パネルの前面の広い範囲にわたって当接せることができる。
【0014】
従って、シール部材によるシールを良好に行なわせて運転室を軽快に運転できるよう良好な環境のものにできる。
【0015】
本第4発明は、前記フロント運転パネルを、互いに連結し合って左右に並ぶ主運転パネルと副運転パネルとを備えて構成してある。
【0016】
本第4発明の構成によると、フロント運転パネルを一挙に製作するのではなく、フロント運転パネル全体に比して小型となる主運転パネルと副運転パネルとに分けて製作し、主運転パネルと副運転パネルを別々に機体に組み付けてフロント運転パネルの全体を完成するという製作及び組み付け方法を採用することができる。
【0017】
従って、フロント運転パネルを主運転パネルと副運転パネルとに分けて容易に製作するとともに組み付けて安価に得ることができる。
【0018】
本第5発明は、前記副運転パネルの端部を前記主運転パネルの前方又は後方に重ね配置してある。
【0019】
本第5発明の構成によると、副運転パネルと主運転パネルの重ね配置によって両パネル間からの雨水浸入などを回避しやすい。
【0020】
従って、フロント運転パネルを主運転パネルと副運転パネルとに分けて製作するとともに組み付けて安価に得ることができるものでありながら、両パネル間からの雨水侵入などを回避しやすい高品質な状態で得ることができる。
【0021】
本第6発明は、前記フロントカバーが前記主運転パネル及び前記副運転パネルの前側に位置するように設けられている。
【0022】
本第6発明の構成によると、主運転パネルと副運転パネルが連結し合う部位の前側をフロントカバーによって覆うことができ、両運転パネルの間に隙間が発生しても雨水浸入などが生じにくいように隙間をフロントカバーによって覆うことができる。
【0023】
従って、フロント運転パネルを主運転パネルと副運転パネルとに分けて製作するとともに組み付けて安価に得ることができるものでありながら、主運転パネルと副運転パネルの間に隙間が発生することがあってもその隙間からの雨水浸入などを構造簡単に回避できてこの面からの安価に得ることができる。
【0024】
本第7発明は、前記副運転パネルの端部を前記主運転パネルの前方に重ね配置してあり、
前記フロントカバーの横端部が、前記主運転パネルの前記副運転パネルに重なる部位と前記副運転パネルの前記主運転パネルに重なる部位との間に入り込んでいる。
【0025】
本第7発明の構成によると、フロントカバーの横端部を副運転パネルと主運転パネルの間に入り込ませて外部に露出しないようにできる。
【0026】
従って、運転キャビンの前壁とフロント運転パネルの隙間を雨水などが浸入しにくいようにフロントカバーによって覆うものを、フロントカバーの横端部が外部に露出しなくて洗車作業などの障害にならない状態で得ることができる。
【0027】
本第8発明は、前記主運転パネルと前記副運転パネルとが連結し合う部位にシール部材を設けてある。
【0028】
本第8発明の構成によると、主運転パネルと副運転パネルが連結し合う部位での両パネル間をシール部材によって良好にシールすることができる。
【0029】
従って、フロント運転パネルを主運転パネルと副運転パネルとに分けて製作するとともに組み付けて安価に得ることができるものでありながら、両パネル間からの雨水侵入などを良好に防止できる高品質な状態で得ることができる。
【0030】
本第9発明は、前記副運転パネルを前記主運転パネルより機体横外側に配置し、前記副運転パネルに方向指示器を取付けてある。
【0031】
本第9発明の構成によると、主運転パネルを機体に取り付けたままにしても、副運転パネルを取り外すことによって方向指示器やこれの配線の取り出しや引出しを行なえるようにできる。
【0032】
従って、方向指示器やこれの配線の点検や修理などを行なうのに、副運転パネルを取り外すだけで方向指示器や配線を取り出すとか引出すとかして能率よく作業を行なえるものにできる。
【0033】
本第10発明は、前記副運転パネルを、これの後端部が前記運転キャビンの出入り口の機体前方側縁に沿って位置するように形成し、前記副運転パネルの後端部が前記主運転パネルの後端部よりも機体前後方向に於いて前方に位置している。
【0034】
本第10発明の構成によると、副運転パネルの機体後方側に位置する箇所であって、主運転パネルの横側に位置する箇所に支柱設置スペースを確保して、この支柱設置スペースに運転キャビンの支柱を設置して支柱を極力機体前方側に位置させ、運転キャビンの出入り口の機体前方側縁を極力前方側に設置して運転キャビンの出入り口の横幅を広くすることできる。
【0035】
従って、運転室に対する乗り降りを横幅が広い出入り口によって楽にできる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】コンバインの全体を示す側面図である。
【図2】コンバインの全体を示す平面図である。
【図3】運転部及び原動部を示す側面図である。
【図4】運転部及び原動部を示す平面図である。
【図5】運転部を示す正面図である。
【図6】フロント運転パネルの分解状態での斜視図である。
【図7】フロントカバー及びシール部材の配設部を示す縦断側面図である。
【図8】(a)は、図5のVIIIa―VIIIa断面矢視図、(b)は、図5のVIIIb―VIIIb断面矢視図、(c)は、図5のVIIIc―VIIIc断面矢視図である。
【図9】運転キャビンを装備しない機種での運転部及び原動部を示す側面図である。
【図10】運転キャビンを装備しない機種での運転部及び原動部を示す平面図である。
【図11】運転キャビンを装備しない機種での運転部及び原動部を示す正面図である。
【図12】第1の別実施構造を備えたコンバインのフロントカバー及びシール部材を配設した部位を示す側面図である。
【図13】(a)は、第2の別実施構造を備えたコンバインの運転部を示す正面図、(b)は、図13(a)のXIIIb―XIIIb断面矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例に係るコンバインの全体を示す側面図である。図2は、本発明の実施例に係るコンバインの全体を示す側面図である。これらの図に示すように、本発明の実施例に係るコンバインは、左右一対のクローラ式走行装置1,1によって自走するように構成され、かつ機体前端側の横一端部に設けられた運転部2及び原動部3を有した走行機体と、この走行機体の機体フレーム4の前端部に連結された刈取り部5と、機体フレーム4の後部側に刈取り部5の後方に配置して設けられた脱穀装置6と、機体フレーム4の後部側に脱穀装置6の横側に配置して設けられた穀粒タンク7と、脱穀装置6の後部に連結された排ワラ処理装置8とを備えて構成されており、稲、麦などの収穫作業を行なう。
【0038】
すなわち、刈取り部5は、機体フレーム4の運転部2の横側方に位置する箇所から機体前方向きに上下揺動自在に延出された刈取り部フレーム5aを備え、この刈取り部フレーム5aが油圧シリンダ(図示せず)によって上下揺動操作されることにより、刈取り部5の前端部に設けてある分草具5bが地面近くに下降した下降作業位置と、分草具5bが地面から高く上昇した上昇非作業位置とに昇降操作される。
【0039】
刈取り部5を下降作業位置に下降させて走行機体を走行させると、刈取り部5は、刈取り対象の植立穀稈を分草具5bによって引起し装置5cに導入して引き起こしながらバリカン形の刈取り装置5dによって刈取り、刈取り穀稈を供給装置5eによって脱穀装置6に供給する。脱穀装置6は、供給された刈取り穀稈の穂先側を扱室(図示せず)に供給して脱穀処理し、脱穀排ワラを排ワラ処理装置8に供給する。排ワラ処理装置8は、供給された脱穀排ワラを長ワラ状態のままで機体後方に放出するか、あるいは供給された脱穀排ワラを稈身方向に細断処理して細断ワラを機体後方に放出する。穀粒タンク7は、脱穀装置6から搬送された脱穀粒を回収して貯留し、貯留した脱穀粒をスクリューコンベヤで成るオーガ9によって搬出する。
【0040】
原動部3について説明する。
図1,3,4に示すように、原動部3には、運転キャビン20の後部の下側に配置して機体フレーム4に支持させたエンジンボンネット11が備えられ、このエンジンボンネット11とエンジンボンネット11の機体横外側に設けた横側壁12とによって形成されるエンジンルームに設けたエンジン13が備えられている。
【0041】
横側壁12に板状の除塵材14が設けられ、除塵材14が備える貫通孔を介してエンジンボンネット11の外部から内部にエンジン冷却用空気を吸引してエンジン13の冷却を行なうよう構成されている。エンジンボンネット11の後部上側に上部構造体16を設けて形成したエヤクリーナ室にエヤクリーナ17が設けられ、運転キャビン20における天井部21の後側近くにプレエヤクリーナ18が設けられ、プレエヤクリーナ18とエヤクリーナ17とは、吸気管19を介して連通されており、エンジンボンネット11の外部からプレエヤクリーナ18及びエヤクリーナ17を介してエンジン13に燃焼用空気を供給するよう構成されている。
【0042】
運転部2について説明する。
図1,3,4に示すように、運転部2は、エンジンボンネット11の天板上に設けられた運転座席30と、運転座席30の前方に機体上下向き姿勢で設けたフロント運転パネル31と、運転座席30の刈取り部側の横側方にエヤクリーナ室形成の上部構造体16の横側からフロント運転パネル31の横端部にわたって設けたサイド運転パネル38と、運転キャビン20とを備えて構成してある。
【0043】
図3,4,5,6に示すように、フロント運転パネル31は、機体フレーム4に備えられた運転フレーム部4aから機体上方向きに突設されたパネルフレーム(図示せず)と、フロント運転パネル31の前面Fを形成する前縦板32と、フロント運転パネル31の左右一対の横側面を形成する左右一対の横縦板33,34と、フロント運転パネル31の上面を形成する天板35とを備えて構成してある。フロント運転パネル31には、天板35における運転キャビン出入口側の端部から機体上方向きに突設したレバー型の操作具40を備えてある。
【0044】
操作具40は、機体前後方向及び機体横方向に揺動操作自在に支持されている。この操作具40は、機体前後方向に揺動操作されることによって刈取り部5を昇降操作するように、刈取り部5を昇降操作する油圧シリンダの操作部に連係されている。操作具40は、機体横方向に揺動操作されることによって走行機体を旋回操作するように、左右一対のクローラ式走行装置1,1を各別に駆動、停止操作する左右一対の操向クラッチ(図示せず)の操作部に連係されている。
【0045】
サイド運転パネル38を構成する天板38aの前端部に主変速レバー41と副変速レバー42を機体横方向に並べて備え、天板38aの前後方向での中間部に脱穀クラッチレバー43と刈取クラッチレバー44を機体横方向に並べて設け、天板38aの後端部に排出レバー45、唐箕変速レバー46及び排ワラ処理レバー47を機体横方向に並べて設けてある。
【0046】
主変速レバー41は、エンジン13の出力を変速して左右一対のクローラ走行装置1,1に伝達する静油圧式無段変速装置(図示せず)を変速操作するものである。副変速レバー42は、エンジン13の出力を変速して左右一対のクローラ走行装置1,1に伝達する副変速装置(図示せず)を変速操作するものである。脱穀クラッチレバー43は、エンジン13から脱穀装置6への伝動を入り状態と切り状態に切り換え操作するものである。刈取クラッチレバー43は、エンジン13から刈取り部5への伝動を入り状態と切り状態に切り換え操作するものである。排出レバー45は、オーガ9を駆動及び停止操作するものである。唐箕変速レバー46は、脱穀装置6の選別部に選別風を供給するよう設けられた唐箕(図示せず)の駆動速度を変更するものである。排ワラ処理レバー47は、排ワラ処理装置8による脱穀排ワラの処理形態を長ワラ放出と細断放出とに切り換えるものである。
【0047】
図3,4に示すように、運転キャビン20は、フロント運転パネル31の上方に位置する前壁22と、運転座席30の左横側方であって、サイド運転パネル38の上方に位置する左横壁23と、運転座席30の右横側方に位置する右横壁24と、エアクリーナ室を形成する上部構造体16の上方に位置する後壁25と、天井壁21とを備えて構成してあり、運転座席30を収容しかつフロント運転パネル31及びサイド運転パネル38に設けられたレバー40〜47を収容する運転室Rを形成する。
【0048】
右横壁24には、運転キャビン20の出入り口26aがエンジンルーム形成の横側壁12とフロント運転パネル31を構成する副運転パネル51との間に配置して形成され、かつ出入り口26aのためのドア26が備えられている。ドア26は、出入り口26aの機体前方側に位置する右前支柱61に上下一対のヒンジ61a,61aを介して支持されており、機体上下向きの開閉軸芯まわりに揺動開閉する。
【0049】
運転キャビン20が備えるキャビンフレーム27は、右横壁24の前後二箇所に位置する右前支柱61と右後支柱62、及び左横壁23の前後二箇所に位置する左前支柱63と左後支柱64の計四本の支柱を備えて構成されており、運転キャビン20は、四本の支柱61〜64によって走行機体に固定されている。右前支柱61と右後支柱62とは、出入り口26aの前後側に分散するよう配置されている。右前支柱61と左前支柱63とは、両支柱61,63の機体前後方向での位置が同じになるように配置されている。右後支柱62と左後支柱64とは、両支柱62,64の機体前後方向での位置が同じになるように配置されている。右前支柱61は、機体フレーム4が備える運転フレーム部4aに連結されている。右後支柱62は、エンジンルーム形成の横側壁12を構成する横側壁フレームに設けられた支持部12a(図1参照)に連結されている。左前支柱63及び左後支柱64は、サイド運転パネル38を支持するよう機体フレーム4に設けられたパネルフレーム(図示せず)に連結されている。
【0050】
運転キャビン20の前壁22は、キャビンフレーム27に備えられた上前壁枠部22a及び下前壁枠部22bと、上前壁枠部22aと下前壁枠部22bにわたって装着された透明のガラス板22cとを備えて構成してある。
【0051】
図7,8に示すように、運転キャビン20は、下前壁枠部22b及びガラス板22cの下端側部分で成る下端部22dがフロント運転パネル31の上端部31aの前方にフロント運転パネル31の上端部31aに対して隙間Dを持って機体前後方向に重なって位置する組み付け姿勢で組みつけてある。運転キャビン20の前壁22における下端部22dの運転キャビン内側に下前壁枠部22bに一体形成した帯板体で成る支持部材28を設け、この支持部材28からフロントカバー70を機体下方向きに延出するとともに、フロントカバー70の延出端70cをフロント運転パネル31の前面Fに近接配置してある。フロントカバー70の運転キャビン出入り口26a側(機体右側)に位置する端部70bは、フロント運転パネル32を構成する副運転パネル51の横端側部51Eの上端部51aの裏側に入り込んでいる。フロントカバー70の運転キャビン出入り口26a側とは反対側(機体左側)に位置する端部70aは、機体後方向きに曲げ形成されて、運転キャビン20の左横壁23の下方であって、フロント運転パネル31の左側の横縦板33の表側に回り込んでいる。フロントカバー70は、全体にわたって合成樹脂材で成形してある。
【0052】
つまり、運転キャビン20の前壁22の下端部22dとフロント運転パネル31の上端部31aとが隙間Dを隔てて機体前後方向に重なり合うことで、操作具40と前壁22との間隔が操作具40を取り扱いやすい広い間隔になる構成になっている。運転キャビン20の前壁22の下端部22dとフロント運転パネル31の上端部31aとの間に発生する隙間Dをフロントカバー70によって覆って、運転キャビン20の前壁22とフロント運転パネル31の隙間から雨水が浸入することなどを回避する構成になっている。
【0053】
図7,8に示すように、フロントカバー71の裏側に、運転キャビン20の前壁22とフロント運転パネル31との間のシールを行うシール部材75を前壁22側に保持させて設けてある。シール部材75は、シール部材75の機体上下方向でのほぼ全長にわたるシール面75aを備え、このシール面75aがフロント運転パネル31の前面Fに当て付けられる状態で支持されている。シール部材75は、運転キャビン20における前壁22のフロント運転パネル31と重なり合っている下端部22dの下方に配置されている。シール部材75は、フロント運転パネル31を構成する主運転パネル50の前面のほぼ全幅にわたって沿う他、左側の横縦板33にも沿って位置するように細長い帯状に形成されている。シール部材75は、シール部材75の全長にわたって設けられた帯板状の取付け体76を備え、この取付け体76を介して前壁22の下端部22dに保持部材28で成るシール保持部材28に支持されている。
【0054】
フロント運転パネル31は、フロント運転パネル31の機体横内側部分(運転キャビン出入り口26a側とは反対側に位置する部分)を構成する主運転パネル50と、フロント運転パネル31のうちの機体横外側部分(運転キャビン出入り口26a側に位置する部分)を構成する副運転パネル51とを備えて構成してある。主運転パネル50と副運転パネル51とは、主運転パネル50の機体横外側端部と副運転パネル51の機体横内側端部とで連結し合っている。したがって、副運転パネル31は、主運転パネル50より機体横外側に位置する。
【0055】
主運転パネル50は、フロント運転パネル31全体しての前縦板32を運転キャビン出入口26a側とは反対側に位置する分割前縦板32a(以下、左分割前縦板32aと呼称する。)と運転キャビン出入り口26a側に位置する分割前縦板32b(以下、右分割前縦板32bと呼称する。)とに分割した二つの分割前縦板32a,32bのうちの左分割前縦板32aと、左側の横縦板33と、天板35と、機体フレーム4における運転フレーム部4aに固定されたパネルフレームとを備えている。左分割前縦板32aと左側の横縦板33とは、合成樹脂材で一体形成されている。副運転パネル51は、右分割前縦板32bと右側の横縦板34とを備えている。右分割前縦板32bと右側の横縦板34とは、合成樹脂材で一体形成されている。左分割前縦板32aは、フロント運転パネル31全体としての前面Fのうちの左側部分を形成し、右分割前縦板32bは、フロント運転パネル31全体としての前面Fのうちの右側部分を形成している。
【0056】
図4〜8に示すように、主運転パネル50と副運転パネル51とは、別々に形成して連結してある。
すなわち、副運転パネル51における右分割前縦板32bでの横端側部51Eが副運転パネル51の上下方向での全長にわたって主運転パネル50の左分割前縦板32aの前方に機体前後方向に重なる配置で副運転パネル51と主運転パネル50とを機体横方向に並べてある。主運転パネル50は、機体フレーム4の運転部フレーム4aに立設のパネルフレームに連結して運転部フレーム4aに支持されている。副運転パネル51は、右側の横縦板34で運転キャビン20の右前支柱61に連結ボルトで連結して運転部フレーム4aに支持されている。
【0057】
副運転パネル51の横端側部51Eにおける上端部51aと主運転パネル50の左分割前縦板部32aとは隙間を持った状態で重なり合っており、主運転パネル50の副運転パネル51に重なる部位と、副運転パネル51の主運転パネル50に重なる部位とに間にフロントカバー70の横端部70bが入り込んでいる。
【0058】
副運転パネル51と主運転パネル50とは、フロントカバー70の横端部70bが入り込んでいる部位より機体下方側に位置する部位においては、副運転パネル51と主運転パネル50の間に設けたシール部材52を介して連結し合っている。
【0059】
図1,3,4,6に示すように、副運転パネル51の後端部としての横縦板34の後端部51rは、機体上下向きの直線状となって運転キャビン20の出入り口26aの機体前方側縁に沿って位置するように形成してある。副運転パネル51は、これの後端部51rが主運転パネル50の後端部としての天板35の後端部50rよりも機体前後方向に於いて前方に位置する組付け状態になっている。
つまり、副運転パネル51の機体後方側であって、主運転パネル50の横側に位置する箇所に支柱設置スペースを確保してこの支柱設置スペースに右前支柱61を設置し、右前支柱61を極力機体前方側に設置して運転キャビン20の出入り口26aの機体前方側縁を極力前側に位置させ、出入り口26aの横幅(機体前後方向での長さ)を大にするよう構成してある。
【0060】
副運転パネル51にこれの機体横外側端部に設けた指示器取付け凹部を備えさせ、この指示器取付け凹部に方向指示器54を取付けてある。
【0061】
図4に示すように、運転キャビン20の前壁22と左横壁23とによってキャビン内側に形成される隅角部における隙間部分であって、フロント運転パネル31の左角部31Kの外側に位置する隙間部分を閉じる三角形状の蓋体80を、前壁22を構成する下前壁枠部22bと左横壁23を構成する下左横枠部とに支持される状態で設け、隙間部分に対する防塵を蓋体80によって行なうよう構成してある。
【0062】
図5に示すように、運転キャビン20の左横壁23の下方に左横壁23に沿って位置する走行機体側のフレーム4bにシール部材78を保持させ、このシール部材78によって左横壁23とフレーム4bの間のシールを行うよう構成してある。
【0063】
運転キャビン20を前壁22の下端部22dがフロント運転パネル31の上端部31aの前方に重なる状態で組み付けるように、かつ運転キャビン20の前壁22とフロント運転パネル31との隙間をフロントカバー70によって覆うように構成することで、運転キャビン20を設ける機種にフロント運転パネル31を構成するよう装備する主運転パネル50が、運転キャビン20を設けない機種に副運転パネル51を備えないでフロント運転パネル31を構成するよう装備するものと共用のものになっている。
【0064】
図9は、運転キャビン20が設けられない機種における運転部及び原動部3を示す側面図である。図10は、運転キャビン20が設けられない機種における運転部及び原動部3を示す平面図である。図11は、運転キャビン20が設けられない機種における運転部を示す正面図である。これらの図に示すように、運転キャビン20を設ける機種に装備するべき主運転パネル50は、運転キャビン20を設けない機種に対しては副運転パネル51を備えない単独の状態で装備されて、運転キャビン20を設けない機種におけるフロント運転パネル31の全体を構成する。
【0065】
尚、運転キャビン20が設けられない機種の場合、エヤクリーナ室が形成されず、エアクリーナ17がエンジンボンネット11の後端部上の運転座席30の後方に位置する箇所に露出状態で設置され、プレエヤクリーナ18とエヤクリーナ17とを連通させる吸気管19がエヤクリーナ17から機体上方向きに直線状に立設される。また、フロント運転パネル31の横側部に設けられた固定ハンドル81に方向指支器54が取り付けられる。
【0066】
〔別実施形態〕
図12は、第1の別実施構造を備えたコンバインにおけるシール手段を示す縦断側面図である。第1の別実施構造を備えたコンバインでは、運転キャビン20の前壁22の下端部22dからフロントカバー70を機体下方向きに延出し、フロントカバー70のフロント運転パネル31の前面Fに近接して位置する延出端部にシール部材77を取付けてある。シール部材77は、フロントカバー70が備える弾性操作力によってフロント運転パネル31の前面Fに当て付けられて、フロントカバー70とフロント運転パネル31の間のシールを行なう。
【0067】
図13(a)は、第2の別実施構造を備えたコンバインにおける運転部20を示す正面図である。図13(a)及び図13(b)に示すように、第2の別実施構造を備えたコンバインでは、副運転パネル51を構成する右分割前縦板32bの横端側部分51Eが主運転パネル50を構成する左分割前縦板32aの横端部の後方に機体前後方向に重なる状態で主運転パネル50と副運転パネル51とを機体横方向に並べて備えてフロント運転パネル31を構成している。
【0068】
運転キャビン20の前壁22の下端部22dから機体下方向きに延出するフロントカバー70は、副運転パネル51及び主運転パネル50の前方に位置してフロント運転パネル31と運転キャビン20の前壁22との隙間を覆うように設けられている。フロントカバー70の機体横方向での両端部は、機体後方向きに曲げ成形されて、フロント運転パネル得る31の左側の横縦板33及び右側の横縦板34の側方に回り込んでいる。
【0069】
フロント運転パネル31と運転キャビン20の前壁22の間に対するシール部材75がフロントカバー70の裏側に設けられている。
【0070】
〔別実施例〕
【0071】
(1)上記した実施例では、フロント運転パネル31を主運転パネル50と副運転パネル51とを備えて構成する例を示したが、フロント運転パネル31を一つの構造体で構成して実施してもよい。
【0072】
(2)上記した実施例では、フロント運転パネル31に設ける操作具40を揺動レバー式に構成し、かつ刈取り部5の昇降操作及び走行機体の操向操作を行なう構成にした例を示したが、回転式など揺動式と異なる操作構成にして実施してもよく、また刈取り部5の昇降操作と走行機体の操向操作のいずれか一方だけを行なう構成にして実施してもよい。刈取り部5の昇降操作を行なう操作具と、走行機体の操向操作を行なう操作具とを別々に設けて実施してもよい。
【0073】
(3)上記した実施例では、フロントカバー70を合成樹脂材で構成した例を示したが、鉄やアルミ合金材など各種の素材で構成して実施してもよい。
【0074】
(4)上記した実施例では、シール部材75を保持するシール保持部材28を運転キャビン20の前壁側に備えた例を示したが、シール保持部材28をフロント運転パネル側に備えて実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0075】
刈取り穀稈の穂先側を扱室に供給して脱穀する脱穀装置を備えるコンバインの他、刈取り穀稈の株元から穂先までの全体を扱室に供給して脱穀する全稈投入型の脱穀装置を備えるコンバインに利用できる。
【符号の説明】
【0076】
20 運転キャビン
22 前壁
22d 前壁の下端部
26a 運転キャビンの出入り口
28 シール保持部材
30 運転座席
31 フロント運転パネル
31a フロント運転パネルの上端部
40 操作具
50 主運転パネル
50r 主運転パネルの後端部
51 副運転パネル
51E 副運転パネルの端部
51r 副運転パネルの後端部
52 シール部材
54 方向指示器
70 フロントカバー
70b フロントカバーの横端部
75 シール部材
77 シール部材
F 前面
R 運転室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転座席の前方に機体上下向き姿勢で設けるとともに操作具を備えたフロント運転パネルと、前記フロント運転パネルの上方に位置する前壁を備えて運転室を形成する運転キャビンとを備えたコンバインであって、
前記運転キャビンの前壁の下端部が前記フロント運転パネルの上端部の前方に前記フロント運転パネルの上端部と機体前後方向に重なって位置するように前記運転キャビンを構成し、
前記運転キャビンの前壁の下端部から機体下方向きに延出し、延出端部が前記フロント運転パネルの前側に位置するフロントカバーを設けてあるコンバイン。
【請求項2】
前記前壁と前記フロント運転パネルとの間をシールするシール部材を前記フロントカバーの裏側に配置し、前記シール部材を保持するシール保持部材を、前記前壁側又は前記フロントカバー側に備えた請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記フロントカバーの延出端部にシール部材を前記フロント運転パネルの前面に当て付けられる状態で取付けてある請求項1記載のコンバイン。
【請求項4】
前記フロント運転パネルを、互いに連結し合って左右に並ぶ主運転パネルと副運転パネルとを備えて構成してある請求項1〜3のいずれか一項に記載のコンバイン。
【請求項5】
前記副運転パネルの端部を前記主運転パネルの前方又は後方に重ね配置してある請求項4記載のコンバイン。
【請求項6】
前記フロントカバーが前記主運転パネル及び前記副運転パネルの前側に位置するように設けられている請求項4又は5記載のコンバイン。
【請求項7】
前記副運転パネルの端部を前記主運転パネルの前方に重ね配置してあり、
前記フロントカバーの横端部が、前記主運転パネルの前記副運転パネルに重なる部位と前記副運転パネルの前記主運転パネルに重なる部位との間に入り込んでいる請求項4記載のコンバイン。
【請求項8】
前記主運転パネルと前記副運転パネルとが連結し合う部位にシール部材を設けてある請求項4〜7のいずれか一項に記載のコンバイン。
【請求項9】
前記副運転パネルを前記主運転パネルより機体横外側に配置し、前記副運転パネルに方向指示器を取付けてある請求項4〜8のいずれか一項に記載にコンバイン。
【請求項10】
前記副運転パネルを、これの後端部が前記運転キャビンの出入り口の機体前方側縁に沿って位置するように形成し、前記副運転パネルの後端部が前記主運転パネルの後端部よりも機体前後方向に於いて前方に位置している請求項4〜9のいずれか一項に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−13331(P2013−13331A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146236(P2011−146236)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】