説明

コン穴キャップ及びコン穴埋め方法

【課題】 簡単にコン穴埋め作業ができ、しかも、長期にわたって防水性を確保できるコン穴キャップ及びコン穴埋め方法を提供する。
【解決手段】 セパレータ103によって連結された型枠板110の間にコンクリートを流し込む方式のコンクリート施工に際して、型枠板110を取り外した後にコンクリートの壁面に残るコン穴101を埋めるために用いられるコン穴キャップ10であって、コン穴101に適合する形状に成形されるとともに、コン穴101の内部から突出するセパレータ103の端部105を受容する逃げ穴22が形成されているキャップ本体20と、前記逃げ穴22内に設けられるとともに、この逃げ穴22内に挿入されたセパレータ103の抜けを防止し、前記コン穴101からのキャップ本体20の脱落を防止する脱落防止部材40と、を備えるコン穴キャップ10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型枠板を取り外した後にコンクリートの壁面に残るコン穴を埋めるために用いられるコン穴キャップ、及び、コン穴埋め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートの施工方法の一つに、得ようとする躯体コンクリートの厚みに相当する長さを有するセパレータを介して型枠板を連結するとともに、このセパレータによって連結された型枠板の間にコンクリートを流し込んで、コンクリートが硬化した後に、型枠板を取り外す方法がある。
この方法では、図1に示すように、セパレータ103の端部105にはネジ山が形成されており、このネジ山に対して円錐台形状をした「Pコン」などと呼ばれるプラスチック製の固定部材108が装着される。この固定部材108によって、セパレータ103によって連結される型枠板110は躯体コンクリート100の厚みに相当する間隔で並列に固定される。コンクリートが硬化した後に型枠板110を取り外す際には、型枠板110とともに固定部材108も取り外される。このとき、躯体コンクリート100の表面には、固定部材108が取り外された後の痕跡である円錐台形状のコン穴101が残る。このコン穴101は、そのままにしておくと美観を損ねるだけでなく、セパレータ103と躯体コンクリート100との間を通って水が侵入する入口ともなるためにこれを塞ぐ必要がある。そこで従来、コン穴101を塞ぐ方法としては、手練りのモルタル団子を指で穴詰めするなどの方法が採られていた。
【0003】
しかしながら、モルタルは硬化によって収縮するためひびが入りやすく、十分な防水性や耐久性が得られにくい。また、手作業でモルタルをコン穴に詰める方法は作業能率が悪い。このため、これらを解消できるコン穴埋め技術として、予めモルタルあるいは樹脂などを成形してコン穴埋め部材を作成しておき、ゴム、有機接着材などによってコン穴に固定する方法が提案されている(特許文献1〜4参照)。例えば、特許文献1には、コン穴に適合する大きさの円錐台状であって、セパレータの端部を受容できる凹部を備えるコン穴埋め部材を予めモルタルによって成形しておき、この外周に樹脂接着材を付与して、コン穴に押し込んで固定する方法が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平7−42363号公報
【特許文献2】実公平2−47130号公報
【特許文献3】実公平2−27046号公報
【特許文献4】特開平10−220003号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1を始めとするコン穴埋め部材(以下、「コン穴キャップ」ともいう。)を用いるコン穴埋め方法では、コン穴埋めの作業そのものは単純化される。しかしながら、例えば、特許文献1では、コン穴キャップの外周に付与される接着材の表面を施工前までプラスチックシートで被覆しておかなければならないように、接着材やゴムの使用前の保管、保護などが必要である。この結果、コン穴キャップの管理が煩雑となっており、保管、保護用の部品や基材が必要となって、廃棄物が増えることもある。また、コン穴キャップの固定にゴム材料を使用する方法では、コン穴へのコン穴キャップの押し込み作業における摩擦抵抗が大きく、力仕事となったり押し込み用の特殊工具が必要となったりする。
【0006】
また、コン穴キャップの固定に有機系の接着材を用いる場合には、コン穴の内面に水分やホコリなどの異物が付着していると、コン穴に対するコン穴キャップの接着強度が十分ではなくなる場合があるだけではなく、無機系に比して有機系の接着材は一般的に耐候性が低いので、コン穴を埋めた後の防水性が長期にわたって維持されなくなるおそれもある。
また、特許文献1などに開示されているコン穴キャップによれば、接着材によってコン穴キャップを接合する場合に、接着材が乾くまでの間、コン穴の内面に対してコン穴キャップを圧着させておくことができないために、十分な接合強度が得られない場合があるので問題であった。
【0007】
そこで、本発明では、簡単且つ確実にコン穴埋め作業ができるとともに、長期にわたって防水性を確保できるコン穴キャップ及びコン穴埋め方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための手段は、以下の(1)〜(7)の発明である。
(1)セパレータによって連結された型枠板の間にコンクリートを流し込む方式のコンクリート施工に際して、型枠板を取り外した後にコンクリートの壁面に残るコン穴を埋めるために用いられるコン穴キャップであって、前記コン穴に適合する形状に成形されるとともに、前記コン穴の内部から突出するセパレータの端部を受容する逃げ穴が形成されているキャップ本体と、前記逃げ穴内に設けられるとともに、この逃げ穴内に挿入されたセパレータの抜けを防止し、前記コン穴からのキャップ本体の脱落を防止する脱落防止部材と、を備えることを特徴とするコン穴キャップ。
(2)上記(1)に記載のコン穴キャップであって、前記脱落防止部材は、セパレータの端部に形成されているネジ山に係合する係合爪を備えている、コン穴キャップ。
(3)上記(1)または(2)に記載のコン穴キャップであって、前記脱落防止部材は、円筒状に形成されており、その内周面及び/又は外周面には、複数の箇所にリブが形成されている、コン穴キャップ。
(4)上記(1)から(3)のうちいずれかに記載のコン穴キャップをコン穴に入れて、前記コン穴の内面と前記キャップ本体の外面とを無機系接着材により接合することを特徴とする、コン穴埋め方法。
(5)前記無機系接着材は、無収縮性あるいは膨張性のセメントである、上記(4)に記載のコン穴埋め方法。
(6)セパレータによって連結された型枠板の間にコンクリートを流し込む方式のコンクリート施工に際して、型枠板を取り外した後にコンクリートの壁面に残るコン穴を埋めるための方法であって、前記コン穴に適合する形状に成形されたキャップ本体を前記コン穴に入れるとともに、前記コン穴の内面と前記キャップ本体の外面とを無機系接着材により接合することを特徴とする、コン穴埋め方法。
(7)前記無機系接着材は、無収縮性あるいは膨張性のセメントである、上記(6)に記載のコン穴埋め方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コン穴埋め作業の作業効率を向上させるとともに、コンクリート構造物の防水性をより長く良好に維持することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて説明する。
本発明に係るコン穴キャップは10、既に図1を用いて説明したように、セパレータ103を介して連結された型枠板110の間にコンクリートを流し込む方式のコンクリート施工に際して、型枠板110を取り外した後、躯体コンクリート100の壁面に残される固定部材108(Pコン)の痕跡であるコン穴101を塞ぐために用いられる部材である。
【0011】
図2は、本発明に係るコン穴キャップ10の外観を示す斜視図である。コン穴キャップ10は、モルタルによりコン穴101に適合する形状に成形されているキャップ本体20と、キャップ本体20のコン穴101からの脱落を防止するために、当該キャップ本体20の逃げ穴22の内部に設けられる脱落防止部材40を備える。図2(a)は、キャップ本体20に対して脱落防止部材40を取付ける前の状態を示している。図2(b)は、キャップ本体20に対して脱落防止部材40を取付けた後の状態を示している。
【0012】
図2(a)に示すように、キャップ本体20は、コン穴101に適合するように円錐台形状に成形されている。このキャップ本体20には、コン穴101の内部から突出しているセパレータ103の端部を受容する逃げ穴22が凹状に形成されている。この逃げ穴22の内部には、逃げ穴22の内部に挿入されたセパレータ103の端部の抜けを防止し、これによってコン穴101からのキャップ本体20の脱落を防止する脱落防止部材40が設けられる。
【0013】
キャップ本体20の成形材料としては、公知のセメント系材料を使用することができる。例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、白色セメントなどを単独で、またはこれらのうち2種以上を混合して用いることができる。あるいは、これらのセメント系材料と砂とを混合したモルタル材料を使用することができる。またあるいは、これらのセメント系材料と細骨材などを混合した材料を使用することができる。
また、キャップ本体20の成形材料としては、セメントと水と他の材料とを混合した材料を使用することもできる。例えば、フライアッシュ、ガラスや炭素などの無機系繊維質材料、高炉スラグ微粉末、都市ゴミや下水汚泥の燃焼灰、などをセメント及び水とともに混合した材料を使用することができる。
【0014】
脱落防止部材40について図3〜図6を参照しながら詳細に説明する。ここで、図3は脱落防止部材40の正面図であり、図4は脱落防止部材40の断面図である。また、図5は脱落防止部材40の上面図であり、図6は脱落防止部材40の下面図である。
図3〜図6に示すように、脱落防止部材40は、合成樹脂(例えば、ポリプロピレンなどの熱可塑性合成樹脂)により略円筒型に成形された部材である。セパレータ103の端部が挿入される側の端部(図3において上側の端部)には、他の部分よりも大径のフランジ部41が形成されている。そのフランジ部41の反対側の端部(図3において下側の端部)には、合計6箇所に係合爪42が形成されている。脱落防止部材40の外周面には、合計6箇所に外側リブ43が形成されている(図6参照)。また、脱落防止部材40の内周面には、合計12箇所に内側リブ44が形成されている(図5参照)。これら外側リブ43及び内側リブ44は、脱落防止部材40の中心軸に沿ってほぼ平行に延びるように形成されている。また、脱落防止部材40には、合計6箇所に細溝状のスリット45が形成されている。これらのスリット45によって区切られた部分には、係合爪42が1箇所ずつ形成されるとともに、円周方向ほぼ中央部には外側リブ43が1箇所ずつ形成され、円周方向の両端部にそれぞれ内側リブ44が形成されている(図5、6参照)。
【0015】
脱落防止部材40は、接着、嵌合、圧入などによってキャップ本体20の逃げ穴22の内部に固定することができる。例えば、逃げ穴22の内部に脱落防止部材40を圧入し、逃げ穴22の内面と脱落防止部材40の外周に設けられた外側リブ43との摩擦力によって、逃げ穴22の内部に脱落防止部材40を固定することができる。あるいは、セメント系材料によって成形されたキャップ本体20が完全に硬化するまでの間に、逃げ穴22の内部に脱落防止部材40を配置してこれらを互いに接合することも可能である。
【0016】
次に、本実施の形態に係るコン穴キャップ10の作用効果について、躯体コンクリート100の表面に残されたコン穴101を埋める場合を例にとって説明する。なお、コン穴キャップ10を使ってコン穴101を埋める場合には、指を使ってコン穴キャップ10をコン穴101に押し込む、あるいは、木槌などの工具を使ってコン穴キャップ10をコン穴101打ち込む、またあるいは、圧縮空気を用いてコン穴キャップ10をコン穴101に押し込むなど、公知の方法により行うことができる。この中では、指により押し込む方法が最も簡単で作業効率がよい。
【0017】
図7は、コン穴101の内部にコン穴キャップ10を押し込む前の状態を示している。
図7に示すように、コン穴101の内部にコン穴キャップ10を押し込む前の状態では、コン穴101の内部からはセパレータ103の端部105が突出している。このセパレータ103の端部105には、型枠板110を固定するための「Pコン」などと呼ばれる固定部材108を装着するために使用したネジ山112が形成されている。
【0018】
図8は、コン穴101の内部にコン穴キャップ10を押し込んだ後の状態を示している。
図8に示すように、コン穴101の内部にコン穴キャップ10を押し込んだ後の状態では、逃げ穴22の内部にセパレータ103の端部105が挿入された状態となる。また、逃げ穴22とセパレータ103との間には、脱落防止部材40が介在した状態となる。この状態では、脱落防止部材40に設けられた6つの係合爪42がネジ山112に係合しており、これによってセパレータ103の端部105が逃げ穴22から抜け出てしまうことが防止されている。また、脱落防止部材40の外周面に設けられた6つの外側リブ43によって、脱落防止部材40と逃げ穴22の内壁面との摩擦抵抗が高められている。さらに、脱落防止部材40の内周面に設けられた12つの内側リブ44によって、脱落防止部材40の内周面とセパレータ103の端部105の外周面との摩擦抵抗が高められている。つまり、係合爪42、外側リブ43、及び内側リブ44の協働的な作用によって、セパレータ103の端部105が逃げ穴22の内部から抜け出てしまうことが防止されるとともに、コン穴101からのコン穴キャップ10の脱落が防止されている。
【0019】
コン穴キャップ10を使用してコン穴101を埋めるときは、図8に示すように、コン穴101の内部にコン穴キャップ10を入れるとともに、キャップ本体20の外面とコン穴101の内面とを接着材50により接合する。これにより、コン穴101の内部にコン穴キャップ10がより強固に固定される。本実施の形態において、コン穴キャップ10を固定するための接着材50としては、無機系接着材を使用することができる。
【0020】
無機系接着材とは、シリカやカルシウムなどの無機化合物を主体とする接着材のことである。この無機系接着材の具体例としては、例えば、セメントを挙げることができる。接着材50として使用するセメントの具体例としては、例えば、無収縮性セメント、及び膨張性セメントを挙げることができる。
【0021】
無収縮性セメントとは、セメントと無収縮性混和材とを含むセメント材料を意味する。ここで、セメントとしては、公知のセメントを使用することができ、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、白色セメントなどを単独で、またはこれらのうち2種以上を混合して用いることができる。さらに、都市ゴミ、焼却灰、下水汚泥などの廃棄物を原料とする粉体や他の混和材、例えば、高炉スラグ微粉末やフライアッシュ、あるいは無機系繊維質材料を含んでいても良い。
【0022】
無収縮性混和材は、セメント材料を水とともに練り混ぜた後の硬化収縮や乾燥収縮を抑制するための混和材であり、典型的には膨張材である。膨張材は、公知の膨張材を用いることができ、JISA6202などで定義されるセメント及び水とともに練り混ぜた後、水和反応によってエトリンガイト、水酸化カルシウムなどを生成し、コンクリート又はモルタルを膨張させる混和材である。このような膨張材の例としては、例えば、商品名「デンカCSA」(電気化学工業(株)製)を挙げることができる。また、予めセメント及び無収縮性混和材を混合した材料として、例えば、商品名「デンカタスコンセメント」(電気化学工業(株)製)や、商品名「太平洋ユーロックスセメント」(太平洋マテリアル(株)製)を挙げることができる。
【0023】
接着材50は、無収縮セメントを含む粉体に適宜量の水を加えて練り混ぜて、ペースト状に調製したものを使用することができる。例えば、ポゾラン系セメントペースト着剤(液体ノロ状)を使用することができる。ペースト状の接着材50は、さらに、公知のコンクリート混和剤を含んでいても良い。この接着材50は、所定期間放置することにより硬化して、既に硬化しているコンクリートやモルタルを互いに接合する。
【0024】
接着材50は、キャップ本体20の外面、及び、コン穴101の内面のうち、少なくとも一方の面に付与すればよい。接着材50の付与方法は、特に限定されるものではない。例えば、コン穴キャップ10をコン穴101に押し込んだ後、キャップ本体20とコン穴101との間に注入など公知の方法で接着材50を充填しても良い。あるいは、予めコン穴101の内面、及び、キャップ本体20の外面のうち、少なくとも一方の面に接着材50を塗布してから、コン穴キャップ10をコン穴101に押し込んでも良い。いずれの方法による場合であっても、キャップ本体20とコン穴101とが全周において密着するように接着材50を塗布するのが好ましい。
【0025】
コン穴101にコン穴キャップ10を押し込んだ後、接着材50が乾くまでの間は、躯体コンクリート100を防水シートで覆うなどして養生させるのが好ましい。
【0026】
本実施の形態に係るコン穴埋め方法では、躯体コンクリート100、接着材50、及びキャップ本体20が、全てセメント系の材料であり、これら3つの構造材料が組織的に一体化する。このため、より確実に止水又は防水してコン穴101を塞ぐことができる。特に、接着材50として無収縮性あるいは膨張性のセメントを使用することにより、この接着材50の硬化収縮や乾燥収縮を抑制することができる。この結果、コン穴101とキャップ本体20との間でひび割れ等が発生しにくく、コン穴101に対してコン穴キャップ10をより強固に固定して躯体コンクリート100の防水性を高めることができる。
【0027】
特に、脱落防止部材40を備えるコン穴キャップ10では、コン穴101の内部にコン穴キャップ10を押し込むだけでよいので、コン穴101にコン穴キャップ10を固定する作業が極めて簡単になる。のみならず、接着材50が硬化するまでの間は、コン穴キャップ10をコン穴101の内面に圧着させておくことができる。このため、コン穴キャップ10の位置ずれや緩みを防ぐことができるので、接着材50が硬化するまでに長時間を要する場合であっても、キャップ本体20とコン穴101との間に隙間ができることを防いで、より確実なコン穴埋め作業が可能となる。
【0028】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、コン穴キャップの形状、キャップ本体の形状、逃げ穴の形状、脱落防止部材の形状、係合爪の形状、係合爪の個数などは、コン穴の形状やセパレータの突出長などに合わせて、適宜変更し得るものである。例えば、実施の形態では、係合爪が6つ形成されている場合を示したが、セパレータの端部に形成されたネジ山に係合してセパレータの抜けを防止できるのであれば、5つ以下であってもよい。
【0029】
また、脱落防止部材40に係合爪42が設けられておらず、脱落防止部材40に外側リブ43あるいは内側リブ44だけが設けられている場合であっても、本発明の範囲に含まれる。また、脱落防止部材40に係合爪42、外側リブ43、及び内側リブ44がすべて設けられていない場合であっても、本発明の範囲に含まれる。脱落防止部材40は、要するに、キャップ本体20の逃げ穴22の内部に設けられることによって、コン穴101からのコン穴キャップ10の脱落を防止できる部材であればよい。
【0030】
脱落防止部材40がポリプロピレンなどの熱可塑性合成樹脂で形成されている例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。脱落防止部材40の材質は、例えば、鉄、鋼、ステンレス、銅、アルミ、チタンなど種々の金属又はこれらの少なくとも一種を含む合金であってもよい。あるいは、天然ゴム、合成ゴム、エラストマー、樹脂などによって成形することができる。好ましくは、成形性が良い樹脂である。樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、アクリロニトリル・ブタジエンスチレン共重合体(ABS)、メタクリル樹脂(PMMA)などポリ(メタ)アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート等の熱硬化性樹脂などを用いることができる。より好ましくは、ポリオレフィンであり、ポリプロピレンが特に好ましい。
【0031】
上記の実施の形態では、脱落防止部材40の外周面に外側リブ43が設けられ、脱落防止部材40の内周面に内側リブ44が設けられる例を示したが、このような態様に限定するものではない。本発明に係るコン穴キャップ10は、外側リブ43及び内側リブ44のうち少なくとも一方のみが設けられてもよい。また、外側リブ43及び内側リブ44が両方とも設けられていない場合であっても、コン穴101へのコン穴キャップ10の取付けが簡単になるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】セパレータ及び型枠板を用いたコンクリート施工方法の説明図である。
【図2】コン穴キャップの外観を示す斜視図である。
【図3】脱落防止部材の正面図である。
【図4】脱落防止部材の断面図である。
【図5】脱落防止部材の上面図である。
【図6】脱落防止部材の下面図である。
【図7】コン穴の内部にコン穴キャップを押し込む前の状態を示す図である。
【図8】コン穴の内部にコン穴キャップを押し込んだ後の状態を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
10 コン穴キャップ
20 キャップ本体
22 逃げ穴
40 脱落防止部材
42 係合爪
43 外側リブ
44 内側リブ
45 スリット
50 接着材
100 躯体コンクリート
101 コン穴
103 セパレータ
108 固定部材
110 型枠板
112 ネジ山


【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータによって連結された型枠板の間にコンクリートを流し込む方式のコンクリート施工に際して、型枠板を取り外した後にコンクリートの壁面に残るコン穴を埋めるために用いられるコン穴キャップであって、
前記コン穴に適合する形状に成形されるとともに、前記コン穴の内部から突出するセパレータの端部を受容する逃げ穴が形成されているキャップ本体と、
前記逃げ穴内に設けられるとともに、この逃げ穴内に挿入されたセパレータの抜けを防止し、前記コン穴からのキャップ本体の脱落を防止する脱落防止部材と、を備えることを特徴とするコン穴キャップ。
【請求項2】
請求項1に記載のコン穴キャップであって、
前記脱落防止部材は、セパレータの端部に形成されているネジ山に係合する係合爪を備えている、コン穴キャップ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のコン穴キャップであって、
前記脱落防止部材は、円筒状に形成されており、その内周面及び/又は外周面には、複数の箇所にリブが形成されている、コン穴キャップ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載のコン穴キャップをコン穴に入れて、前記コン穴の内面と前記キャップ本体の外面とを無機系接着材により接合することを特徴とする、コン穴埋め方法。
【請求項5】
前記無機系接着材は、無収縮性あるいは膨張性のセメントである、請求項4に記載のコン穴埋め方法。
【請求項6】
セパレータによって連結された型枠板の間にコンクリートを流し込む方式のコンクリート施工に際して、型枠板を取り外した後にコンクリートの壁面に残るコン穴を埋めるための方法であって、
前記コン穴に適合する形状に成形されたキャップ本体を前記コン穴に入れるとともに、前記コン穴の内面と前記キャップ本体の外面とを無機系接着材により接合することを特徴とする、コン穴埋め方法。
【請求項7】
前記無機系接着材は、無収縮性あるいは膨張性のセメントである、請求項6に記載のコン穴埋め方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−249908(P2006−249908A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−145474(P2005−145474)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【出願人】(503360791)株式会社浜島物産 (1)
【出願人】(591135691)日本コンクリート株式会社 (5)
【Fターム(参考)】