ゴムストッパ
【課題】取り付けに好適な形状に設定しつつ、所望のストッパ特性に設定することのできるゴムストッパの提供。
【解決手段】一方の部材にボルト締結する保持金具3を設ける。他方の部材に当接するゴム部4を保持金具3で保持する。保持金具3に仕切壁8を形成して、ボルト孔7の周縁部とゴム部4を保持する保持部9とを仕切る。ゴム部4のゴム側当接面12を仕切壁8の頂部よりも突出させる。ゴム部4の仕切壁8の近傍にすぐり部13を形成する。すぐり部13がゴム部4の耐久性を向上させる。ゴムストッパ1を適宜小型化する。
【解決手段】一方の部材にボルト締結する保持金具3を設ける。他方の部材に当接するゴム部4を保持金具3で保持する。保持金具3に仕切壁8を形成して、ボルト孔7の周縁部とゴム部4を保持する保持部9とを仕切る。ゴム部4のゴム側当接面12を仕切壁8の頂部よりも突出させる。ゴム部4の仕切壁8の近傍にすぐり部13を形成する。すぐり部13がゴム部4の耐久性を向上させる。ゴムストッパ1を適宜小型化する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鉄道車両の台車側にボルト締結され、台車側と車体側とを連結するリンク棒に当接して車体側の左右の動きを制限するゴムストッパに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、鉄道車両は、その台車が空気ばねなどを介して車体を上下方向に支持した構造とされ、さらに、例えば台車側と車体側とを駆動力やブレーキ力などの前後力を伝達するリンク棒で連結している。
【0003】
また、図24に示すように、台車側にゴムストッパ101を設けて、車体側の左右方向への変位が大きくなったとき、車体側の変位に伴って傾斜するリンク棒102の中央部にゴムストッパ101が当接するようにしている。ゴムストッパ101がリンク棒102に当接することにより、車体側の左右の動きが制限され、鉄道車両の水平方向の剛性が確保される。
【0004】
このようなゴムストッパとしては、例えば特許文献1に、粘性体を封入して減衰性能を高め、乗り心地を改善するようにしたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−208468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1のゴムストッパは、減衰効果が期待できるものの、その形状が減衰性能の他、ばね定数や耐久性などの種々のストッパ特性に与える影響が大きくなりやすいため、台車側への取り付けに好適な形状に設定しつつ、所望のストッパ特性に設定するのが難しくなりやすい。
【0007】
本発明は、取り付けに好適な形状に設定しつつ、所望のストッパ特性に設定することのできるゴムストッパの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るゴムストッパは、複数の部材の相対的な変位を制限するためのものであり、複数の部材のうちの一方の部材にボルト締結される保持金具と、この保持金具に保持されて複数の部材のうちの他方の部材に当接するゴム部とを備え、その保持金具に、締結ボルトを挿通するボルト孔の周縁部とゴム部を保持する保持部とを仕切る仕切壁を形成したものである。さらに、ゴム部は、他方の部材に当接するゴム側当接面を仕切壁の頂部よりも突出させて設けると共に、仕切壁の近傍にすぐり部を形成したものである。
【0009】
上記構成によれば、ゴム部のうち、保持金具の仕切壁の近傍にすぐり部を形成するので、仕切壁の近傍の局部応力を抑えてゴム部の耐久性を高めることができ、その分、ゴムストッパを適宜小型化することができる。しかも、ゴム部が他方の部材に強く当接することによってすぐり部が閉じられるので、ゴムストッパの大きさに応じてゴムの物性を適宜選択することにより、その強度特性やばね特性をすぐり部のないゴムストッパと同等の特性に設定することができる。これにより、ゴムストッパをその取り付けに好適な形状に設定して、取付ピッチの変更などを容易にしつつ、所望のストッパ特性に設定することができる。
【0010】
また、ゴム側当接面を、他方の部材のうち、このゴム側当接面が当接する部位と面接触する形状に形成した構成も採用可能である。この構成によれば、ゴム側当接面を例えば曲面状に形成して他方の部材に面接触させるので、両者を線接触又は点接触させる場合よりも、応力の分散を図ってゴム部の強度及び耐久性を向上させることができる。
【0011】
また、保持金具に、他方の部材に当接してゴム部の変形を制限する金具側当接面を形成し、この金具側当接面を、他方の部材のうち、この金具側当接面が当接する部位と面接触する形状に形成した構成も採用可能である。この構成によれば、金具側当接面を例えば曲面状に形成して他方の部材に面接触させるので、両者を線接触又は点接触させる場合よりも、応力の分散を図って保持金具の強度及び耐久性を向上させることができる。
【0012】
また、上記のゴムストッパは、その取付箇所を特に限定されるものではないが、鉄道車両の台車側と車体側とを連結して前後方向力を伝達するリンク棒にゴム側当接面を当接させ、台車側に対するリンク棒の相対的な左右の動きを制限して車体側の左右の動きを制限するよう、台車側にボルト締結するものを例示することができる。このような台車側にボルト締結するゴムストッパは、その設置スペースが狭くなりやすく、しかも、ゴム側当接面にリンク棒が強くかつ繰り返し当接するので、本発明の構成を採用するのが特に好適である。
【発明の効果】
【0013】
以上のとおり、本発明によると、ゴム部のうちの仕切壁の近傍にすぐり部を形成してゴム部の耐久性を高めるので、ゴムストッパを適宜小型化して、ゴムストッパをその取り付けに好適な形状に設定することができ、ゴムストッパの取付ピッチの変更などを容易にすることができる。しかも、ゴムストッパの大きさに応じてゴムの物性を適宜選択することにより、すぐり部のないゴムストッパと同等の所望のストッパ特性に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るゴムストッパの斜視図
【図2】ゴムストッパの側面図
【図3】ゴムストッパの正面図
【図4】ゴムストッパの平面図
【図5】ゴムストッパの底面図
【図6】保持金具の斜視図
【図7】保持金具の側面図
【図8】保持金具の正面図
【図9】保持金具の平面図
【図10】保持金具の底面図
【図11】ゴム部の斜視図
【図12】ゴム部の側面図
【図13】ゴム部の正面図
【図14】ゴム部の平面図
【図15】ゴム部の底面図
【図16】すぐり部のないゴムストッパの斜視図
【図17】すぐり部のないゴムストッパの側面図
【図18】すぐり部のないゴムストッパの正面図
【図19】すぐり部のないゴムストッパの保持金具の斜視図
【図20】すぐり部のないゴムストッパのゴム部の斜視図
【図21】ゴムストッパの変形状態を示す図
【図22】すぐり部のないゴムストッパの変形状態を示す図
【図23】ゴムストッパのばね特性を示す図
【図24】鉄道車両の台車構造の模式図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るゴムストッパを実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0016】
図1〜図5に示すように、ゴムストッパ1は、例えば、鉄道車両の台車側と車体側とを連結して前後方向力を伝達するリンク棒2に当接して、台車側に対するリンク棒2の相対的な左右の動きを制限して車体側の左右の動きを制限するためのものであり、台車側にボルト締結される保持金具3と、保持金具3に保持されてリンク棒2に当接するゴム部4とを備えている。
【0017】
図6〜図10に示すように、保持金具3は、例えば鋼製で、長方形の底板5の幅方向両側縁から側板6を立ち上げてなるU字形とされ、その底板5の幅方向中央部に、締結ボルトを挿通する二つのボルト孔7がボルト間隔(P)をあけて形成されている。
【0018】
底板5の上面には、各ボルト孔7を長手方向中央側及び幅方向両側から囲むU字形の二つの仕切壁8が形成され、これらの仕切壁8がボルト孔7の周縁部と、底板5の上面のうちのゴム部4を保持する保持部9とを仕切るようになっている。
【0019】
側板6の上縁は、リンク棒2に当接して、このリンク棒2によるさらなる押圧を阻止してゴム部4の変形を制限する金具側当接面10とされ、その中央部が凹状かつ円弧状に形成されている。金具側当接面10の曲率半径は、断面円形のリンク棒2の外周面の曲率半径と略同一に設定され、金具側当接面10がリンク棒2に面接触するようになっている。また、金具側当接面10の中央の底部分は、仕切壁8の頂部よりも高く設定され、リンク棒2が仕切壁8に当接するのを阻止する。
【0020】
図11〜図15に示すように、ゴム部4は、略四角錐台のゴム体とされ、その底面が保持金具3の底板5と略同一形状とされている。ゴム部4の長手方向両側の中央部には、仕切壁8と干渉するのを避けるようU字形の切欠11が形成され、この切欠11の底部付近が仕切壁8の頂部外縁側を覆うように、保持金具3の保持部9にゴム部4が配置される。
【0021】
ゴム部4の上面は、金具側当接面10よりも突出する高さに形成されて、リンク棒2に当接してリンク棒2の相対的な動きを制限するゴム側当接面12とされる。ゴム側当接面12は、凹状かつ曲面状に形成されると共に、その曲率半径が断面円形のリンク棒2の外周面の曲率半径と略同一に設定されて、ゴム側当接面12がリンク棒2に面接触するようになっている。
【0022】
ゴム側当接面12のうち、仕切壁8の近傍には、例えばゴム側当接面12を略半楕円状に凹設してなるすぐり部13が形成され、ゴム部4の変形が仕切壁8で拘束されることによって生じるゴム部4の局部応力を緩和するようになっている。すぐり部13は、その底部が仕切壁8の頂部よりも高くなる深さ(D)に設定されると共に、仕切壁8よりも幅狭となる最大幅(B)に設定され、さらに、ゴム側当接面12のうちの両側のすぐり部13の間に残る部分の長さ(a)が例えばすぐり部13と同程度の長さに設定される。
【0023】
次に、ゴムストッパ1にリンク棒2を当接させたときの挙動をすぐり部のないゴムストッパ14と比較して説明する。
【0024】
まず、すぐり部のないゴムストッパ14の構成について説明する。図16〜図20に示すように、ゴムストッパ14は、本発明に係るゴムストッパ1とほぼ同じ構成であるが、ゴム部15にすぐり部を形成することなく、仕切壁8の近傍を含む全範囲にゴム側当接面16が形成されている。
【0025】
図21は、ゴムストッパ1のゴム側当接面12にリンク棒2を押し付けたときのゴム部4の変形状態を図示したものであり、そのゴム部4の変形を1/4モデルのFEM解析により求めたものである。また、図22は、ゴムストッパ14のゴム側当接面16にリンク棒2を押し付けたときのゴム部15の変形状態を図示したものであり、そのゴム部15の変形を1/4モデルのFEM解析により求めたものである。
【0026】
図21に示すように、ゴムストッパ1は、すぐり部13を形成したことにより、ゴム部4のうちの仕切壁8の近傍部分の上下方向への圧縮が抑えられ、その分、長さ方向に伸びる変形も抑えられて、局部応力が例えば約2MPa程度に抑えられている。
【0027】
これに対して、図22に示すように、ゴムストッパ14は、ゴム部15のうちの仕切壁8の近傍部分が上下方向に強く圧縮されるのに伴って、長さ方向に大きく伸ばされると共に、仕切壁8を乗り越えてボルト側に食い込むように変形し、例えば約20MPa程度の局部応力が発生している。
【0028】
上記構成によれば、ゴム側当接面12のうちの仕切壁8の近傍に、略半楕円状のすぐり部13を形成している。これにより、リンク棒2がゴム側当接面12に当接したとき、まず、すぐり部13を除く部位にリンク棒2が接触し、その後、リンク棒2がより強く当接するにしたがって、すぐり部13を仕切壁8から離れた部位から徐々に閉じるようにゴム部4が変形する。このように、すぐり部13が、仕切壁8の近傍部分へのリンク棒2の接触を遅らせると共に、ゴムの変形を逃がす逃げ代となるので、ゴム部4が仕切壁8で拘束されることによる局部応力を低減して、ゴム部4の耐久性を向上させることができる。
【0029】
ゴム部4の耐久性が向上することにより、ゴム側当接面12の面積を適宜小さくすることができ、その分、ボルト間隔(P)の選択範囲を広くして、その広い範囲内でボルト間隔(P)を適宜設定することができる。例えば、すぐり部のないゴムストッパ14のボルト間隔(P)を170mm〜200mm程度の範囲で設定するのに対し、すぐり部13を形成したゴムストッパ1では、ボルト間隔(P)を100mm〜200mm程度の範囲で設定することができる。
【0030】
また、リンク棒2を強く押し付けられることによって、すぐり部13が閉じられるので、リンク棒2が強く当接したときのゴムストッパ1のばね特性をすぐり部のないゴムストッパ14と同程度に設定することができる。なお、ゴム側当接面12の面積を小さくすることによって、ゴム部4のばね定数が小さくなるが、この場合、ゴム側当接面12の面積に応じて、ゴムの硬さを例えばA50〜A80(タイプAデュロメータ)の範囲で適宜設定することにより、すぐり部のないゴムストッパ14と同程度のばね特性に設定することができる。
【0031】
例えば、図23において、すぐり部13を設けたゴムストッパ1のばね特性17と、すぐり部のないゴムストッパ14のばね特性18とは、ほぼ同じ特性を示している。ここで、図23における縦軸はゴムストッパに加えた荷重の大きさを示し、横軸は各荷重に対応するゴムストッパの変位量を示す。
【0032】
また、ゴム側当接面12をリンク棒2と同程度の曲率半径に設定して面接触させるので、ゴム側当接面12の全体に応力を分散させて、ゴム部4の強度及び耐久性を向上させることができる。
【0033】
また、保持金具3の側板6に金具側当接面10を形成するので、この金具側当接面10を想定外の高負荷がかかった場合の最終ストッパとして機能させ、安全性をより高めることができる。しかも、金具側当接面10をリンク棒2と同程度の曲率半径に設定して面接触させるので、金具側当接面10の全体に応力を分散させて、最終ストッパとしての強度を向上させることができる。
【0034】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、適宜変更を加えることができる。例えば、すぐり部13の形状は、略半楕円状のものに限らず、球面状やテーパー状、直状のものなど、適宜設定することができる。
【0035】
また、リンク棒2が円形でない場合であっても、その外周面と面接触するように金具側当接面10及びゴム側当接面12の形状を設定すればよく、さらに、リンク棒2と金具側当接面10及びゴム側当接面12とを線接触又は点接触させるものであってもよい。また、ストッパゴム1は、複数の部材の相対的な変位を制限するものであればよく、鉄道車両の台車側に装着してリンク棒2に当接させるものに限らず、他の用途に用いることもできる。
【符号の説明】
【0036】
1 ゴムストッパ
2 リンク棒
3 保持金具
4 ゴム部
5 底板
6 側板
7 ボルト孔
8 仕切壁
9 保持部
10 金具側当接面
11 切欠
12 ゴム側当接面
13 すぐり部
14 ゴムストッパ
15 ゴム部
16 ゴム側当接面
17 ゴムストッパ1のばね特性
18 ゴムストッパ14のばね特性
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鉄道車両の台車側にボルト締結され、台車側と車体側とを連結するリンク棒に当接して車体側の左右の動きを制限するゴムストッパに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、鉄道車両は、その台車が空気ばねなどを介して車体を上下方向に支持した構造とされ、さらに、例えば台車側と車体側とを駆動力やブレーキ力などの前後力を伝達するリンク棒で連結している。
【0003】
また、図24に示すように、台車側にゴムストッパ101を設けて、車体側の左右方向への変位が大きくなったとき、車体側の変位に伴って傾斜するリンク棒102の中央部にゴムストッパ101が当接するようにしている。ゴムストッパ101がリンク棒102に当接することにより、車体側の左右の動きが制限され、鉄道車両の水平方向の剛性が確保される。
【0004】
このようなゴムストッパとしては、例えば特許文献1に、粘性体を封入して減衰性能を高め、乗り心地を改善するようにしたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−208468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1のゴムストッパは、減衰効果が期待できるものの、その形状が減衰性能の他、ばね定数や耐久性などの種々のストッパ特性に与える影響が大きくなりやすいため、台車側への取り付けに好適な形状に設定しつつ、所望のストッパ特性に設定するのが難しくなりやすい。
【0007】
本発明は、取り付けに好適な形状に設定しつつ、所望のストッパ特性に設定することのできるゴムストッパの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るゴムストッパは、複数の部材の相対的な変位を制限するためのものであり、複数の部材のうちの一方の部材にボルト締結される保持金具と、この保持金具に保持されて複数の部材のうちの他方の部材に当接するゴム部とを備え、その保持金具に、締結ボルトを挿通するボルト孔の周縁部とゴム部を保持する保持部とを仕切る仕切壁を形成したものである。さらに、ゴム部は、他方の部材に当接するゴム側当接面を仕切壁の頂部よりも突出させて設けると共に、仕切壁の近傍にすぐり部を形成したものである。
【0009】
上記構成によれば、ゴム部のうち、保持金具の仕切壁の近傍にすぐり部を形成するので、仕切壁の近傍の局部応力を抑えてゴム部の耐久性を高めることができ、その分、ゴムストッパを適宜小型化することができる。しかも、ゴム部が他方の部材に強く当接することによってすぐり部が閉じられるので、ゴムストッパの大きさに応じてゴムの物性を適宜選択することにより、その強度特性やばね特性をすぐり部のないゴムストッパと同等の特性に設定することができる。これにより、ゴムストッパをその取り付けに好適な形状に設定して、取付ピッチの変更などを容易にしつつ、所望のストッパ特性に設定することができる。
【0010】
また、ゴム側当接面を、他方の部材のうち、このゴム側当接面が当接する部位と面接触する形状に形成した構成も採用可能である。この構成によれば、ゴム側当接面を例えば曲面状に形成して他方の部材に面接触させるので、両者を線接触又は点接触させる場合よりも、応力の分散を図ってゴム部の強度及び耐久性を向上させることができる。
【0011】
また、保持金具に、他方の部材に当接してゴム部の変形を制限する金具側当接面を形成し、この金具側当接面を、他方の部材のうち、この金具側当接面が当接する部位と面接触する形状に形成した構成も採用可能である。この構成によれば、金具側当接面を例えば曲面状に形成して他方の部材に面接触させるので、両者を線接触又は点接触させる場合よりも、応力の分散を図って保持金具の強度及び耐久性を向上させることができる。
【0012】
また、上記のゴムストッパは、その取付箇所を特に限定されるものではないが、鉄道車両の台車側と車体側とを連結して前後方向力を伝達するリンク棒にゴム側当接面を当接させ、台車側に対するリンク棒の相対的な左右の動きを制限して車体側の左右の動きを制限するよう、台車側にボルト締結するものを例示することができる。このような台車側にボルト締結するゴムストッパは、その設置スペースが狭くなりやすく、しかも、ゴム側当接面にリンク棒が強くかつ繰り返し当接するので、本発明の構成を採用するのが特に好適である。
【発明の効果】
【0013】
以上のとおり、本発明によると、ゴム部のうちの仕切壁の近傍にすぐり部を形成してゴム部の耐久性を高めるので、ゴムストッパを適宜小型化して、ゴムストッパをその取り付けに好適な形状に設定することができ、ゴムストッパの取付ピッチの変更などを容易にすることができる。しかも、ゴムストッパの大きさに応じてゴムの物性を適宜選択することにより、すぐり部のないゴムストッパと同等の所望のストッパ特性に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るゴムストッパの斜視図
【図2】ゴムストッパの側面図
【図3】ゴムストッパの正面図
【図4】ゴムストッパの平面図
【図5】ゴムストッパの底面図
【図6】保持金具の斜視図
【図7】保持金具の側面図
【図8】保持金具の正面図
【図9】保持金具の平面図
【図10】保持金具の底面図
【図11】ゴム部の斜視図
【図12】ゴム部の側面図
【図13】ゴム部の正面図
【図14】ゴム部の平面図
【図15】ゴム部の底面図
【図16】すぐり部のないゴムストッパの斜視図
【図17】すぐり部のないゴムストッパの側面図
【図18】すぐり部のないゴムストッパの正面図
【図19】すぐり部のないゴムストッパの保持金具の斜視図
【図20】すぐり部のないゴムストッパのゴム部の斜視図
【図21】ゴムストッパの変形状態を示す図
【図22】すぐり部のないゴムストッパの変形状態を示す図
【図23】ゴムストッパのばね特性を示す図
【図24】鉄道車両の台車構造の模式図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るゴムストッパを実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0016】
図1〜図5に示すように、ゴムストッパ1は、例えば、鉄道車両の台車側と車体側とを連結して前後方向力を伝達するリンク棒2に当接して、台車側に対するリンク棒2の相対的な左右の動きを制限して車体側の左右の動きを制限するためのものであり、台車側にボルト締結される保持金具3と、保持金具3に保持されてリンク棒2に当接するゴム部4とを備えている。
【0017】
図6〜図10に示すように、保持金具3は、例えば鋼製で、長方形の底板5の幅方向両側縁から側板6を立ち上げてなるU字形とされ、その底板5の幅方向中央部に、締結ボルトを挿通する二つのボルト孔7がボルト間隔(P)をあけて形成されている。
【0018】
底板5の上面には、各ボルト孔7を長手方向中央側及び幅方向両側から囲むU字形の二つの仕切壁8が形成され、これらの仕切壁8がボルト孔7の周縁部と、底板5の上面のうちのゴム部4を保持する保持部9とを仕切るようになっている。
【0019】
側板6の上縁は、リンク棒2に当接して、このリンク棒2によるさらなる押圧を阻止してゴム部4の変形を制限する金具側当接面10とされ、その中央部が凹状かつ円弧状に形成されている。金具側当接面10の曲率半径は、断面円形のリンク棒2の外周面の曲率半径と略同一に設定され、金具側当接面10がリンク棒2に面接触するようになっている。また、金具側当接面10の中央の底部分は、仕切壁8の頂部よりも高く設定され、リンク棒2が仕切壁8に当接するのを阻止する。
【0020】
図11〜図15に示すように、ゴム部4は、略四角錐台のゴム体とされ、その底面が保持金具3の底板5と略同一形状とされている。ゴム部4の長手方向両側の中央部には、仕切壁8と干渉するのを避けるようU字形の切欠11が形成され、この切欠11の底部付近が仕切壁8の頂部外縁側を覆うように、保持金具3の保持部9にゴム部4が配置される。
【0021】
ゴム部4の上面は、金具側当接面10よりも突出する高さに形成されて、リンク棒2に当接してリンク棒2の相対的な動きを制限するゴム側当接面12とされる。ゴム側当接面12は、凹状かつ曲面状に形成されると共に、その曲率半径が断面円形のリンク棒2の外周面の曲率半径と略同一に設定されて、ゴム側当接面12がリンク棒2に面接触するようになっている。
【0022】
ゴム側当接面12のうち、仕切壁8の近傍には、例えばゴム側当接面12を略半楕円状に凹設してなるすぐり部13が形成され、ゴム部4の変形が仕切壁8で拘束されることによって生じるゴム部4の局部応力を緩和するようになっている。すぐり部13は、その底部が仕切壁8の頂部よりも高くなる深さ(D)に設定されると共に、仕切壁8よりも幅狭となる最大幅(B)に設定され、さらに、ゴム側当接面12のうちの両側のすぐり部13の間に残る部分の長さ(a)が例えばすぐり部13と同程度の長さに設定される。
【0023】
次に、ゴムストッパ1にリンク棒2を当接させたときの挙動をすぐり部のないゴムストッパ14と比較して説明する。
【0024】
まず、すぐり部のないゴムストッパ14の構成について説明する。図16〜図20に示すように、ゴムストッパ14は、本発明に係るゴムストッパ1とほぼ同じ構成であるが、ゴム部15にすぐり部を形成することなく、仕切壁8の近傍を含む全範囲にゴム側当接面16が形成されている。
【0025】
図21は、ゴムストッパ1のゴム側当接面12にリンク棒2を押し付けたときのゴム部4の変形状態を図示したものであり、そのゴム部4の変形を1/4モデルのFEM解析により求めたものである。また、図22は、ゴムストッパ14のゴム側当接面16にリンク棒2を押し付けたときのゴム部15の変形状態を図示したものであり、そのゴム部15の変形を1/4モデルのFEM解析により求めたものである。
【0026】
図21に示すように、ゴムストッパ1は、すぐり部13を形成したことにより、ゴム部4のうちの仕切壁8の近傍部分の上下方向への圧縮が抑えられ、その分、長さ方向に伸びる変形も抑えられて、局部応力が例えば約2MPa程度に抑えられている。
【0027】
これに対して、図22に示すように、ゴムストッパ14は、ゴム部15のうちの仕切壁8の近傍部分が上下方向に強く圧縮されるのに伴って、長さ方向に大きく伸ばされると共に、仕切壁8を乗り越えてボルト側に食い込むように変形し、例えば約20MPa程度の局部応力が発生している。
【0028】
上記構成によれば、ゴム側当接面12のうちの仕切壁8の近傍に、略半楕円状のすぐり部13を形成している。これにより、リンク棒2がゴム側当接面12に当接したとき、まず、すぐり部13を除く部位にリンク棒2が接触し、その後、リンク棒2がより強く当接するにしたがって、すぐり部13を仕切壁8から離れた部位から徐々に閉じるようにゴム部4が変形する。このように、すぐり部13が、仕切壁8の近傍部分へのリンク棒2の接触を遅らせると共に、ゴムの変形を逃がす逃げ代となるので、ゴム部4が仕切壁8で拘束されることによる局部応力を低減して、ゴム部4の耐久性を向上させることができる。
【0029】
ゴム部4の耐久性が向上することにより、ゴム側当接面12の面積を適宜小さくすることができ、その分、ボルト間隔(P)の選択範囲を広くして、その広い範囲内でボルト間隔(P)を適宜設定することができる。例えば、すぐり部のないゴムストッパ14のボルト間隔(P)を170mm〜200mm程度の範囲で設定するのに対し、すぐり部13を形成したゴムストッパ1では、ボルト間隔(P)を100mm〜200mm程度の範囲で設定することができる。
【0030】
また、リンク棒2を強く押し付けられることによって、すぐり部13が閉じられるので、リンク棒2が強く当接したときのゴムストッパ1のばね特性をすぐり部のないゴムストッパ14と同程度に設定することができる。なお、ゴム側当接面12の面積を小さくすることによって、ゴム部4のばね定数が小さくなるが、この場合、ゴム側当接面12の面積に応じて、ゴムの硬さを例えばA50〜A80(タイプAデュロメータ)の範囲で適宜設定することにより、すぐり部のないゴムストッパ14と同程度のばね特性に設定することができる。
【0031】
例えば、図23において、すぐり部13を設けたゴムストッパ1のばね特性17と、すぐり部のないゴムストッパ14のばね特性18とは、ほぼ同じ特性を示している。ここで、図23における縦軸はゴムストッパに加えた荷重の大きさを示し、横軸は各荷重に対応するゴムストッパの変位量を示す。
【0032】
また、ゴム側当接面12をリンク棒2と同程度の曲率半径に設定して面接触させるので、ゴム側当接面12の全体に応力を分散させて、ゴム部4の強度及び耐久性を向上させることができる。
【0033】
また、保持金具3の側板6に金具側当接面10を形成するので、この金具側当接面10を想定外の高負荷がかかった場合の最終ストッパとして機能させ、安全性をより高めることができる。しかも、金具側当接面10をリンク棒2と同程度の曲率半径に設定して面接触させるので、金具側当接面10の全体に応力を分散させて、最終ストッパとしての強度を向上させることができる。
【0034】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、適宜変更を加えることができる。例えば、すぐり部13の形状は、略半楕円状のものに限らず、球面状やテーパー状、直状のものなど、適宜設定することができる。
【0035】
また、リンク棒2が円形でない場合であっても、その外周面と面接触するように金具側当接面10及びゴム側当接面12の形状を設定すればよく、さらに、リンク棒2と金具側当接面10及びゴム側当接面12とを線接触又は点接触させるものであってもよい。また、ストッパゴム1は、複数の部材の相対的な変位を制限するものであればよく、鉄道車両の台車側に装着してリンク棒2に当接させるものに限らず、他の用途に用いることもできる。
【符号の説明】
【0036】
1 ゴムストッパ
2 リンク棒
3 保持金具
4 ゴム部
5 底板
6 側板
7 ボルト孔
8 仕切壁
9 保持部
10 金具側当接面
11 切欠
12 ゴム側当接面
13 すぐり部
14 ゴムストッパ
15 ゴム部
16 ゴム側当接面
17 ゴムストッパ1のばね特性
18 ゴムストッパ14のばね特性
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部材の相対的な変位を制限するゴムストッパであって、前記複数の部材のうちの一方の部材にボルト締結される保持金具と、該保持金具に保持されて前記複数の部材のうちの他方の部材に当接するゴム部とを備え、前記保持金具に、締結ボルトを挿通するボルト孔の周縁部と前記ゴム部を保持する保持部とを仕切る仕切壁が形成され、前記ゴム部は、前記他方の部材に当接するゴム側当接面が前記仕切壁の頂部よりも突出して設けられると共に、前記仕切壁の近傍にすぐり部が形成されたことを特徴とするゴムストッパ。
【請求項2】
前記ゴム側当接面は、前記他方の部材のうちの当該ゴム側当接面が当接する部位と面接触する形状に形成されたことを特徴とする請求項1に記載のゴムストッパ。
【請求項3】
前記保持金具に、前記他方の部材に当接してゴム部の変形を制限する金具側当接面が形成され、該金具側当接面は、他方の部材のうちの当該金具側当接面が当接する部位と面接触する形状に形成されたことを特徴とする請求項1に記載のゴムストッパ。
【請求項4】
鉄道車両の台車側と車体側とを連結して前後方向力を伝達するリンク棒に前記ゴム側当接面を当接させ、台車側に対する前記リンク棒の相対的な左右の動きを制限して車体側の左右の動きを制限するよう、前記台車側にボルト締結されることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のゴムストッパ。
【請求項1】
複数の部材の相対的な変位を制限するゴムストッパであって、前記複数の部材のうちの一方の部材にボルト締結される保持金具と、該保持金具に保持されて前記複数の部材のうちの他方の部材に当接するゴム部とを備え、前記保持金具に、締結ボルトを挿通するボルト孔の周縁部と前記ゴム部を保持する保持部とを仕切る仕切壁が形成され、前記ゴム部は、前記他方の部材に当接するゴム側当接面が前記仕切壁の頂部よりも突出して設けられると共に、前記仕切壁の近傍にすぐり部が形成されたことを特徴とするゴムストッパ。
【請求項2】
前記ゴム側当接面は、前記他方の部材のうちの当該ゴム側当接面が当接する部位と面接触する形状に形成されたことを特徴とする請求項1に記載のゴムストッパ。
【請求項3】
前記保持金具に、前記他方の部材に当接してゴム部の変形を制限する金具側当接面が形成され、該金具側当接面は、他方の部材のうちの当該金具側当接面が当接する部位と面接触する形状に形成されたことを特徴とする請求項1に記載のゴムストッパ。
【請求項4】
鉄道車両の台車側と車体側とを連結して前後方向力を伝達するリンク棒に前記ゴム側当接面を当接させ、台車側に対する前記リンク棒の相対的な左右の動きを制限して車体側の左右の動きを制限するよう、前記台車側にボルト締結されることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のゴムストッパ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
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【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2012−189127(P2012−189127A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52384(P2011−52384)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】
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