説明

ゴルフクラブヘッド及びゴルフクラブ

【課題】ヘッドのすわりが良好であり、ソールの設計自由度が高いゴルフクラブヘッドの提供。
【解決手段】シャフト軸線Z1と上記ソール面18との交点がS1とされる。更に、ソール面18には、地点S2、地点S3及び地点S4が設定される。水平面上に載置された基準状態のヘッドにおいて、ヘッド重心を通り且つ上記水平面に対して垂直な直線と上記ソール面18との交点がG1とされる。更に、ソール面18には、地点R1、地点R2、地点R3及び地点R4が設定される。これらの地点に基づき、区域A1及び区域A2が設定される。シャフト軸線Z1と接地平面との成す角度がθ度とされる。このとき、区域A1に属する少なくとも1点と、区域A2に属する少なくとも1点とが上記接地平面に接するような上記角度θが存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブヘッド及びゴルフクラブに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブヘッドにおいて、様々なソールの形状が提案されている。
【0003】
特開2004−8303号公報は、トウ−ヒール方向及びフェース−バック方向に凸状曲面を有する球面ソールとなっているヘッドに関する発明を開示する。このヘッドでは、45°〜55°のアドレスライ角にしてヘッドをセットしたときに、球面ソールの一部が、基準面と接する平面若しくは凹面に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−8303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、ソール形状が複雑化したヘッドが知られている。この複雑化の要因として、ヘッド機能の多様化が挙げられる。例えば、ソールにウェイトが取り付けられる場合、ソール形状が複雑化しうる。このウェイトが着脱可能である場合、ソールの形状は更に複雑化する傾向にある。また、シャフトの着脱が可能なヘッドの場合、シャフト固定用ネジを挿通させるための孔がソールに設けられる場合がある。この孔は、ソール形状を複雑化しうる。また、接地抵抗の減少を考慮した結果、ソール形状が複雑となることがある。デザイン上の理由からも、ソール形状が複雑化しうる。
【0006】
一方、ソール形状により、アドレス時におけるヘッドの安定性は変化しうる。この安定性は、アドレスにおけるフェースの向きに関わる。フェースの向きが安定しないクラブは、アドレスしにくい。
【0007】
アドレス時におけるヘッドの安定性を高めるために、ソールの形状を単純化することが考えられる。しかしこの場合、ソール形状の設計自由度が低下する。
【0008】
本発明の目的は、ソール形状の設計自由度が高く、且つアドレス時におけるヘッドの安定性に優れるゴルフクラブの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のゴルフクラブヘッドは、ソール面を備えている。フェース−バック方向がX方向とされ、トウ−ヒール方向がY方向とされ、シャフト軸線と上記ソール面との交点がS1とされ、この交点S1からX方向フェース側に5mm隔てた上記ソール面上の地点がS2とされ、この地点S2からY方向ヒール側に5mm隔てた上記ソール面上の地点がS3とされ、上記交点S1からY方向ヒール側に5mm隔てた上記ソール面上の地点がS4とされ、水平面上に載置された基準状態のヘッドにおいて、ヘッド重心を通り且つ上記水平面に対して垂直な直線と上記ソール面との交点がG1とされ、X方向位置が上記交点G1と同じであり且つY方向位置が上記交点S1と同じである上記ソール面上の地点がR1とされ、この地点R1からX方向バック側に5mm隔てた上記ソール面上の地点がR2とされ、この地点R2からY方向ヒール側に5mm隔てた上記ソール面上の地点がR3とされ、上記地点R1からY方向ヒール側に5mm隔てた上記ソール面上の地点がR4とされ、上記交点S1、地点S2、地点S3及び地点S4を頂点とする四角形状の領域が区域A1とされ、上記地点R1、地点R2、地点R3及び地点R4を頂点とする四角形状の領域が区域A2とされ、シャフト軸線と接地平面との成す角度がθとされる。このとき、上記区域A1に属する少なくとも1点と、上記区域A2に属する少なくとも1点とが上記接地平面に接するような上記角度θ(二区画接触ライ角θ)が存在する。
【0010】
好ましくは、区域A1に属する少なくとも1本の線と、上記区域A2に属する少なくとも1本の線とが上記接地平面に接するような上記角度θ(二区画接触ライ角θ)が存在する。
【0011】
上記ソール面において、上記区域A2よりもX方向バック側の位置に凹みが存在していてもよい。
【0012】
好ましくは、上記凹みにウエイトポートが設けられている。このウエイトポートには、重量体が取りつけられうる。
【0013】
好ましくは、上記凹みと上記区域A2との最短距離D1が10mm以下である。
【0014】
上記区域A2内に凹みが存在していてもよい。
【0015】
本発明のゴルフクラブは、上記いずれかのヘッドと、シャフトと、グリップとを備えている。
【発明の効果】
【0016】
アドレス時におけるヘッドの安定性が良好であり、ソールの設計自由度が高いクラブが得られうる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の第一実施形態に係るゴルフクラブを示す。
【図2】図2は、本発明の第一実施形態に係るヘッドの正面図である。
【図3】図3は、図2のヘッドの底面図である。
【図4】図4は、図3のF4−F4線に沿った断面図である。
【図5】図5は、図3と同じ底面図である。図5には、区域を示す線が記載されている。
【図6】図6は、点及び区域を説明するための拡大図である。
【図7】図7は、本発明の第二実施形態に係るヘッドの底面図である。図7には、区域を示す線が記載されている。
【図8】図8は、本発明の第三実施形態に係るヘッドの底面図である。図8には、区域を示す線が記載されている。
【図9】図9は、本発明の第四実施形態に係るヘッドの底面図である。図9には、区域を示す線が記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0019】
図1は、本発明の第1実施形態に係るゴルフクラブ2を示す。ゴルフクラブ2は、ヘッド4、シャフト6及びグリップ8を有する。
【0020】
図2は、ヘッド4の正面図である。図3は、ヘッド4の底面図である。図4は、図3のF4−F4線に沿った断面図である。図2及び図4において、フェースラインの記載が省略されている。
【0021】
ヘッド4は、フェース10、クラウン12、ソール14及びホーゼル16を有する。クラウン12は、フェース10の上縁からヘッド後方に向かって延びている。ソール14は、フェース10の下縁からヘッド後方に向かって延びている。ヘッド4は、中空構造を有する。ヘッド4は、ウッド型のゴルフクラブヘッドである。ホーゼル16は、ホーゼル孔(図示されない)を有する。ホーゼル孔は、中心軸線Z1を有する。この中心軸線Z1は、シャフト軸線Z1とも称される。
【0022】
ソール14は、ソール面18を有する。ソール面18は、ソール14の外面である。
【0023】
本願では、基準垂直面、基準中央面C1、フェース−バック方向及びトウ−ヒール方向が定義される。上記シャフト軸線Z1が水平面Hに対して垂直な平面P1に含まれ、且つ所定のライ角α及びリアルロフト角βで水平面H上にヘッドが載置された状態が、基準状態とされる。上記平面P1が、基準垂直面とされる。なお、市販品のクラブでは、通常、所定のライ角α及びリアルロフト角βは、製品カタログに掲載されているか、又はゴルフクラブのいずれかの箇所に表示されている。所定のライ角αは、後述されるアドレスライ角θと区別される。
【0024】
上記平面P1に対して垂直であり且つヘッド重心Gを含む平面が、基準中央面C1である。
【0025】
本願においてトウ−ヒール方向とは、上記基準垂直面と上記水平面Hとの交線の方向である。本願では、このトウ−ヒール方向がY方向とも称される。
【0026】
本願においてフェース−バック方向とは、上記トウ−ヒール方向に対して垂直であり且つ上記水平面Hに対して平行な方向である。本願では、このフェース−バック方向がX方向とも称される。
【0027】
本発明では、ソール面内において、以下の地点が定義される。図5は、図3の底面図にこれらの地点が書き加えられた図である。図6は、地点及び区域を示す拡大図である。
【0028】
[交点S1]
シャフト軸線Z1と上記ソール面18との交点がS1とされる。
【0029】
[地点S2]
交点S1からX方向フェース側に5mm隔てたソール面18上の地点がS2である。
【0030】
[地点S3]
地点S2からY方向ヒール側に5mm隔てたソール面18上の地点がS3である。
【0031】
[地点S4]
交点S1からY方向ヒール側に5mm隔てた上記ソール面上の地点がS4である。
【0032】
[地点S5]
ソール面18と基準中央面C1との交線に含まれており、且つ、X方向位置が地点S3と同じである地点が、S5である。
【0033】
[地点S6]
地点S5からY方向トウ側にd1(mm)隔てたソール面18上の地点が、S6である。ただし、地点S3と地点S5との間のY方向距離がd1(mm)とされる。
【0034】
[地点S7]
ソール面18と基準中央面C1との交線に含まれており、且つ、X方向位置が交点S1と同じである地点が、S7である。
【0035】
[交点G1]
水平面H上に載置された上記基準状態のヘッドにおいて、ヘッド重心Gを通り且つ上記水平面Hに対して垂直な直線と上記ソール面との交点がG1である。ヘッド重心Gと交点G1とを結ぶ直線L1(図2参照)は、基準中央面C1に含まれている。
【0036】
[地点R1]
X方向位置が上記交点G1と同じであり且つY方向位置が上記交点S1と同じであるソール面18上の地点がR1である。
【0037】
[地点R2]
地点R1からX方向バック側に5mm隔てたソール面18上の地点がR2である。
【0038】
[地点R3]
地点R2からY方向ヒール側に5mm隔てたソール面18上の地点がR3である。
【0039】
[地点R4]
地点R1からY方向ヒール側に5mm隔てた上記ソール面上の地点がR4である。
【0040】
[地点R5]
ソール面18と基準中央面C1との交線に含まれており、且つ、X方向位置が地点R3と同じである地点が、R5である。
【0041】
[地点R6]
地点R5からY方向トウ側にd1(mm)隔てたソール面18上の地点が、R6である。
【0042】
これらの地点に基づき、本願では、以下の区域が定義される。図6では、これらの区域のそれぞれがハッチングで示されている。
【0043】
[区域A1]
交点S1、地点S2、地点S3及び地点S4を頂点とする四角形状の領域が区域A1である。区域A1の輪郭線は、交点S1と地点S2とを結ぶ最短線、地点S2と地点S3とを結ぶ最短線、地点S3と地点S4とを結ぶ最短線及び地点S4と交点S1とを結ぶ最短線である。最短線とは、2つの点を結ぶソール面18上の線のうち最も短い線である。「直線」でなく「最短線」とした理由は、ソール面18が平面ではない場合を考慮したからである。本願における他の四角形状の領域も、区域A1と同様に、複数の最短線によって区画される。
【0044】
[区域A2]
地点R1、地点R2、地点R3及び地点R4を頂点とする四角形状の領域が区域A2である。
【0045】
[区域A3]
交点S1、地点S2、地点S5及び地点S7を頂点とする四角形状の領域が区域A3である。
【0046】
[区域A4]
地点R1、地点R2、地点R5及び交点G1を頂点とする四角形状の領域が区域A4である。
【0047】
[区域A5]
交点S1、地点S4、地点R4及び地点R1を頂点とする四角形状の領域が区域A5である。
【0048】
[区域A6]
交点S1、地点R1、交点G1及び地点S7を頂点とする四角形状の領域が区域A6である。
【0049】
[区域A7]
地点S5、地点R5、地点R6及び地点S6を頂点とする四角形状の領域が区域A7である。
【0050】
[区域A8]
地点R6、地点S6、地点S3及び地点R3を頂点とする四角形状の領域が区域A8である。換言すれば、区域A1からA7が合体された区域が、区域A8である。
【0051】
図3及び図4が示すように、ソール面18は、凹み22を有する。凹み22には、ネジ孔24が設けられている。このネジ孔24は、ウエイトポートである。ウエイトポートには、図示されないウエイトが取りつけられうる。このウエイトの重量を変更することで、ヘッド4の重心位置が変更されうる。
【0052】
なお、本願における凹みとは、段差によって囲まれていなくてもよい(図4参照)。本願における凹みは、溝であってもよい。文字、マーク等を示す溝も、凹みに含まれる。
【0053】
図5が示すように、ヘッド4のソール面18では、区域A1からA7のいずれにも、凹みは存在しない。換言すれば、区域A8に、凹みは存在しない。また、区域A1からA7のいずれにも、凸部は存在しない。換言すれば、区域A8に、凸部は存在しない。
【0054】
トウ−ヒール方向(Y方向)に沿った断面において、区域A8は、全体として、下側にむかって凸の曲面である(図2参照)。フェース−バック方向(X方向)に沿った断面において、区域A8は、平坦である。
【0055】
シャフト軸線Z1と接地平面との成す角度がθ度とされる。このとき、ヘッド4では、区域A1に属する少なくとも1点と、区域A2に属する少なくとも1点とが上記接地平面に接するような上記角度θ(二区画接触ライ角θ)が存在する。この角度θは、好ましくは、実際に使用される際のライ角度である。ヘッド4は、いわゆる一番ウッドのヘッド(ドライバーヘッド)である。
【0056】
上記接地平面とは、アドレスの際の地面が想定されている。ただし、本願における上記接地平面は、完全な平面を意味する。
【0057】
アドレスにおいて、ヘッド重心Gには、重力が作用する。この重力は、アドレスで接地したヘッドに、回転モーメントを付与しうる。この回転モーメントは、アドレスにおけるヘッドの姿勢を不安定としうる。アドレスにおけるヘッドの安定性は、「すわり」とも称される。アドレスにおいてヘッドが不安定であることがは、「すわりが悪い」とも称される。すわりが悪い場合、アドレスにおけるフェースの向きが不安定となる。すわりが悪い場合、アドレスしにくい。
【0058】
上記区域A1及びA2が同時に接地することによって、接地エリアが限定的であっても、ヘッドの姿勢が安定しうることが判明した。区域A2は交点G1よりもX方向バック側に位置し、区域A1は交点S1よりもX方向フェース側に位置する。更に、区域A1及び区域A2は、交点S1よりもY方向ヒール側に位置する。これらの位置関係に起因して、ヘッド重心Gに作用する重力に起因するヘッドの回転が、効果的に抑制される。よって、アドレスにおけるヘッドの姿勢が安定しうる。
【0059】
ヘッド重心Gに作用する重力に起因して、シャフト軸線Z1回りの回転モーメントが生じうる。この回転モーメントは、アドレスにおけるヘッドを不安定としうる。シャフト軸線Z1上の点S1は、区域A1と区域A2との間に位置する。この位置関係に起因して、シャフト軸線Z1回りの回転モーメントが効果的に抑制されうる。
【0060】
限られた区域での接地でヘッドの姿勢が安定することは、ソール面18の設計自由度を向上させうる。上記区域A1及びA2での接地を確保しつつ、他の区域に凹部等を設けることで、ソール面18の設計自由度とすわりの良さとが両立される。例えば、上記区域A1及びA2での接地を確保しつつ、以下の(a1)から(a11)に示すような凹みを設けることが出来る。よって、設計自由度の高いソール面18が実現されうる。
(a1)区域A3、A4、A5、A6及びA7から選択される少なくとも1の区域に、凹みを設ける。
(a2)区域A3、A4、A5及びA6から選択される少なくとも1の区域に、凹みを設ける。
(a3)区域A3、A4及びA5から選択される少なくとも1の区域に、凹みを設ける。
(a4)区域A3及び/又は区域A4に、凹みを設ける。
(a5)区域A5に、凹みを設ける。
(a6)区域A6に、凹みを設ける。
(a7)区域A3、A4、A5、A6及びA7から選択される少なくとも2の区域に、凹みを設ける。
(a8)区域A3、A4、A5及びA6から選択される少なくとも2の区域に、凹みを設ける。
(a9)区域A3、A4及びA5から選択される少なくとも2の区域に、凹みを設ける。
(a10)区域A3、A4、A5、A6及びA7から選択される少なくとも3の区域に、凹みを設ける。
(a11)区域A3、A4、A5及びA6から選択される少なくとも3の区域に、凹みを設ける。
【0061】
更に、区域A1及び/又は区域A2に、凹みが設けられてもよい。上記区域A1及び区域A2での接地が確保される限り、区域A1及び/又は区域A2の一部に凹みが設けられてもよい。
【0062】
また例えば、上記区域A1及び区域A2での接地を確保しつつ、以下の(b1)から(b11)に示すような凸部を設けることが出来る。よって、設計自由度の高いソール面18が実現されうる。
(b1)区域A3、A4、A5、A6及びA7から選択される少なくとも1の区域に、凸部を設ける。
(b2)区域A3、A4、A5及びA6から選択される少なくとも1の区域に、凸部を設ける。
(b3)区域A3、A4及びA5から選択される少なくとも1の区域に、凸部を設ける。
(b4)区域A3及び/又は区域A4に、凸部を設ける。
(b5)区域A5に、凸部を設ける。
(b6)区域A6に、凸部を設ける。
(b7)区域A3、A4、A5、A6及びA7から選択される少なくとも2の区域に、凸部を設ける。
(b8)区域A3、A4、A5及びA6から選択される少なくとも2の区域に、凸部を設ける。
(b9)区域A3、A4及びA5から選択される少なくとも2の区域に、凸部を設ける。
(b10)区域A3、A4、A5、A6及びA7から選択される少なくとも3の区域に、凸部を設ける。
(b11)区域A3、A4、A5及びA6から選択される少なくとも3の区域に、凸部を設ける。
【0063】
更に、区域A1及び/又は区域A2に、凸部が設けられてもよい。上記区域A1及び区域A2での接地が確保される限り、区域A1及び/又は区域A2の一部に凸部が設けられてもよい。
【0064】
アドレスにおけるヘッドの姿勢をより安定させる観点から、上記点接触に代えて、線接触が採用されうる。即ち好ましくは、区域A1に属する少なくとも1本の線と、上記区域A2に属する少なくとも1本の線とが上記接地平面に接するような上記角度θ(二区画接触ライ角θ)が存在する。
【0065】
アドレスにおけるヘッドの姿勢をより安定させる観点から、上記線接触の線は、区域A1を横断しているのが好ましい。アドレスにおけるヘッドの姿勢をより安定させる観点から、上記線接触の線は、区域A2を横断しているのが好ましい。
【0066】
更に、上記線接触に代えて、面接触が採用されてもよい。即ち区域A1の少なくとも一部を構成する面と、上記区域A2を構成する少なくとも一部の面とが上記接地平面に接するような上記角度θ(二区画接触ライ角θ)が存在するのが好ましい。
【0067】
図5が示すように、ソール面18は、上記区域A2よりもX方向バック側の位置に凹み22を有している。この凹み22は、上記区域A1及び区域A2における接地を阻害しない。この凹み22は、ヘッドのすわりを阻害しない。
【0068】
図5において両矢印D1で示されるのは、凹み22と区域A2との最短距離である。本実施形態における最短距離D1は、地点R3と最短点N1との距離である。最短点N1は、凹み22において区域A2に最も近い点である。本実施形態では、限定された区域による接地ですわりが良好となるため、凹み22が区域A2に近い場合でも、すわりが阻害されない。この観点から、最短距離D1は、10mm以下が好ましく、7mm以下がより好ましく、5mm以下が更に好ましい。
【0069】
前述したように、上記凹み22にウエイトポートが設けられている。よって、ヘッドのすわりを阻害することなく、ウエイトポートが設けられうる。また、ウエイトポートの配置の自由度は高い。なお、ウエイトポートの構造は限定されない。ウエイトの着脱を可能とするウエイトポートが好ましい。
【0070】
ウエイトポートが区域A2よりもX方向バック側に位置する一方、交点G1は区域A2のX方向フェース側の端に位置する。この配置は、区域A2での接地点回りのモーメントに関して、釣り合いを生じさせる。即ち、ウエイトポートに設けられたウエイトの重力に起因するモーメントと、ヘッド重心Gに作用するヘッドの重力に起因するモーメントとが、互いに打ち消し合う。よって、回転モーメントが減少し、ヘッドの姿勢が安定しやすい。
【0071】
図7は、第二実施形態に係るヘッド30の底面図である。ヘッド30はソール面32を有する。ソール面32は、前述された区域A1からA8を有する(図6及び図7参照)。区域A1及び区域A2はハッチングで示されている。
【0072】
このヘッド30では、区域A1に属する少なくとも1点と、区域A2に属する少なくとも1点とが上記接地平面に接するような上記角度θ(二区画接触ライ角θ)が存在する。この角度θは、好ましくは、実際に使用される際のライ角度である。ヘッド30は、いわゆる三番ウッドのヘッドである。
【0073】
ソール面32は、凹み34を有する。この凹み34は、ウエイトポート36を有する。
ヘッド30では、上記最短距離D1(図示されず)が2mm以下である。しかし、凹み34は、区域A1及び区域A2における接地を阻害しない。凹み34は、ヘッドのすわりを阻害しない。
【0074】
図7が示すように、ソール面32は、区域A7に凹み38を有する。この凹み38は、区域A1及び区域A2における接地を阻害しない。凹み38は、ヘッドのすわりを阻害しない。
【0075】
図8は、第三実施形態に係るヘッド40の底面図である。ヘッド40はソール面42を有する。ソール面42は、前述された区域A1からA8を有する(図6及び図8参照)。区域A1及び区域A2はハッチングで示されている。
【0076】
このヘッド40では、区域A1に属する少なくとも1点と、区域A2に属する少なくとも1点とが上記接地平面に接するような上記角度θ(二区画接触ライ角θ)が存在する。この角度θは、好ましくは、実際に使用される際のライ角度である。
【0077】
ソール面42は、凹み44を有する。この凹み44は、ウエイトポート46を有する。ヘッド40では、区域A2内に凹み44が存在している。しかし、凹み44は、区域A1及び区域A2における接地を阻害しない。凹み44は、ヘッドのすわりを阻害しない。
【0078】
なお、区域A2内に凹み44が存在しているヘッド40では、上記最短距離D1は0mmである。
【0079】
更に、ヘッド40では、区域A4内に凹み44が存在している。しかし、凹み44は、区域A1及び区域A2における接地を阻害しない。
【0080】
図9は、第四実施形態に係るヘッド50の底面図である。ヘッド50はソール面52を有する。ソール面52は、前述された区域A1からA8を有する(図6及び図9参照)。区域A1及び区域A2はハッチングで示されている。
【0081】
このヘッド50では、区域A1に属する少なくとも1点と、区域A2に属する少なくとも1点とが上記接地平面に接するような上記角度θ(二区画接触ライ角θ)が存在する。この角度θは、好ましくは、実際に使用される際のライ角度である。
【0082】
ソール面52は、凹み54を有する。この凹み54は、ウエイトポート56を有する。ヘッド50では、上記最短距離D1が2mm以下である。この凹み54は、区域A1及び区域A2での上記接地を阻害しない。
【0083】
[角度θ(二区画接触ライ角θ)]
角度θ(二区画接触ライ角θ)は、好ましくは、実際に使用される際のライ角度である。実際に使用される際のライ角度が、アドレスライ角とも称される。アドレスライ角は、ゴルファーによって異なる。多くのゴルファーのアドレスライ角を考慮して、角度θが決定されるのが好ましい。
【0084】
一番ウッド(ドライバー)のクラブ長さは、通常、43.5インチより大きく47インチ以下である。43.5インチより大きく47インチ以下のクラブの場合、アドレスライ角は、50°以上60°以下であることが多い。この観点から、43.5インチを超えて47インチ以下のクラブの場合、上記角度θ(二区画接触ライ角θ)は、50°以上60°以下であるのが好ましい。
【0085】
アドレスライ角を決定する主な要因は、クラブ長さである。クラブ長さに基づいて、好ましい上記角度θが決定されうる。好ましい角度θとクラブ長さとの関係は、以下の通りである。
【0086】
40.0インチ以上47インチ以下のクラブの場合、上記角度θ(二区画接触ライ角θ)は、50°以上63°以下であるのが好ましく、50°以上60°以下であるのがより好ましい。
【0087】
43.5インチを超えて47インチ以下のクラブの場合、上記角度θ(二区画接触ライ角θ)は、50°以上60°以下が好ましく、50°以上57°以下であるのがより好ましい。
【0088】
43.0インチを超えて43.5インチ以下のクラブの場合、上記角度θ(二区画接触ライ角θ)は、50°以上60°以下であるのが好ましく、50°以上57°以下であるのがより好ましい。
【0089】
42.5インチを超えて43.0インチ以下のクラブの場合、上記角度θ(二区画接触ライ角θ)は、51°以上61°以下であるのが好ましく、51°以上58°以下であるのがより好ましい。
【0090】
42.0インチを超えて42.5インチ以下のクラブの場合、上記角度θ(二区画接触ライ角θ)は、52°以上62°以下であるのが好ましく、52°以上59°以下であるのがより好ましい。
【0091】
41.5インチを超えて42.0インチ以下のクラブの場合、上記角度θ(二区画接触ライ角θ)は、53°以上63°以下であるのが好ましく、53°以上60°以下であるのがより好ましい。
【0092】
41.0インチを超えて41.5インチ以下のクラブの場合、上記角度θ(二区画接触ライ角θ)は、54°以上63°以下であるのが好ましく、54°以上60°以下であるのがより好ましい。
【0093】
40.5インチを超えて41.0インチ以下のクラブの場合、上記角度θ(二区画接触ライ角θ)は、55°以上63°以下であるのが好ましく、55°以上60°以下であるのがより好ましい。
【0094】
40.0インチ以上40.5インチ以下のクラブの場合、上記角度θ(二区画接触ライ角θ)は、56°以上63°以下であるのが好ましく、56°以上60°以下であるのがより好ましい。
【0095】
ヘッド体積は限定されない。すわりが問題となるのは、体積が比較的大きく、ソール面積が広いヘッドである。この観点から、ヘッド体積は、100cc以上が好ましく、110cc以上がより好ましく、120cc以上が更に好ましい。ゴルフルールの観点から、ヘッド体積は470cc以下が好ましい。
【0096】
ヘッドの材質は限定されない。ヘッドの材質として、金属、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)等が例示される。ヘッドに用いられる上記金属として、純チタン、チタン合金、ステンレス鋼、マレージング鋼、アルミニウム合金、マグネシウム合金及びタングステン−ニッケル合金から選ばれる一種以上の金属が例示される。ステンレス鋼として、SUS630及びSUS304が例示される。ステンレス鋼の具体例として、CUSTOM450(カーペンター社製)が例示される。チタン合金として、6−4チタン(Ti−6Al−4V)、Ti−15V−3Cr−3Sn−3Al、Ti−8Al−1V−1Mo、Ti−8Al−2V等が挙げられる。ヘッド体積が300cc以上の場合、強度及び反発性能の観点から、チタン合金が好ましい。
【0097】
ヘッドの製造方法は限定されない。通常、中空のヘッドは、2個以上の部材が接合されることにより製造される。ヘッドを構成する部材の製造方法は限定されず、鋳造、鍛造及びプレスフォーミングが例示される。フェース部材の形状は、例えば、プレート状であってもよいし、カップ状であってもよい。
【0098】
ヘッドの構造として、それぞれ一体成形された2個の部材が接合された2ピース構造、それぞれ一体成形された3個の部材が接合された3ピース構造、それぞれ一体成形された4個の部材が接合された4ピース構造等が挙げられる。各部材同士を接合する方法として、溶接、ロウ付け、接着、圧入及びカシメが例示される。
【実施例】
【0099】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0100】
[実施例1]
ヘッド本体とフェース部材とを溶接して、図8に示されるウッド型のヘッドを得た。ヘッド本体の材質はTi−6Al−4Vとされた。ヘッド本体の製法は、ロストワックス精密鋳造法とされた。フェース部材の材質はTi−6Al−4Vとされた。フェース部材は、Ti−6Al−4Vの圧延板をプレス加工して得た。このヘッドは、5番ウッドであった。このヘッドに、シャフト及びグリップを取り付けて、クラブ長さが42インチであるゴルフクラブを得た。このヘッドのソール面は、図8で示されるヘッド40と同じとされた。
【0101】
凹みの部分を除き、区域A8のフェース−バック方向断面は、直線であった。一方、区域A8のトウ−ヒール方向断面は、凹みの部分を除き、全体として外側に凸の曲線であった。
【0102】
実施例1では、ウエイトポートを有する凹みが、区域A2に存在していた。しかし、この実施例1では、区域A1に属する1本の直線と、区域A2に属する1本の直線とが上記接地平面に接するような上記角度θ(二区画接触ライ角θ)が存在した。この角度θの範囲は、56°以上61°以下の範囲であった。
【0103】
[実施例2]
区域A5に凹みが追加された他は実施例1と同様にして、実施例2に係るゴルフクラブを得た。
【0104】
実施例2では、ウエイトポートを有する凹みが区域A2に存在し、更に区域A5に凹みが存在していた。しかし、この実施例2では、区域A1に属する1本の直線と、区域A2に属する1本の直線とが上記接地平面に接するような上記角度θ(二区画接触ライ角θ)が存在した。この角度θの範囲は、実施例1と同じであった。
【0105】
[比較例1]
凹みの部分を除き、区域A8の全体に三次元的な丸みが付与された。この丸みは、トウ−ヒール方向に付与され、且つ、フェース−バック方向にも付与された。区域A8は、略球面状とされた。この丸みは、ヘッドの外側に向かって凸であった。全てのトウ−ヒール方向位置において、フェース−バック方向に沿った区域A8の断面は、丸みを有していた。その他は実施例1と同様にして、比較例1のゴルフクラブを得た。
【0106】
上記丸みに起因して、比較例1では、シャフト軸線Z1と接地平面との成す角度がθ度である状態でソール面を接地平面に当接させたとき、あらゆる角度θにおいて、区域A1に属する点と、区域A2に属する点とが、上記接地平面に同時に接しなかった。
【0107】
[比較例2]
区域A2の全体が凹みとされた。この凹みは、ウエイトポートを有する凹み(図8の凹み44)と連続していた。その他は実施例1と同様にして、比較例2のゴルフクラブを得た。
【0108】
上記凹みに起因して、比較例2では、シャフト軸線Z1と接地平面との成す角度がθ度である状態でソール面を接地平面に当接させたとき、あらゆる角度θにおいて、区域A1に属する点と、区域A2に属する点とは、上記接地平面に同時に接しなかった。
【0109】
[実施例3]
上記比較例1において、区域A5の全体が、凹みとされた。その他は比較例1と同様にして、実施例3のゴルフクラブを得た。
【0110】
実施例3では、区域A5の上記凹みにより、区域A1と区域A2とが同時に接地することができた。即ちこの実施例2では、区域A1に属する1点と、区域A2に属する1点とが上記接地平面に接するような上記角度θ(二区画接触ライ角θ)が存在した。この角度θの範囲は、実施例1と同じであった。
【0111】
これらの実施例及び比較例について、アドレスのしやすさが評価された。
【0112】
[評価]
10名のアベレージゴルファーが各クラブを使用して、アドレスのしやすさを評価した。10名のうち、アドレスしやすいと評価した人数は、実施例1が7名、実施例2が7名、実施例3が6名、比較例1が1名、比較例2が4名であった。
【0113】
このように、実施例は、比較例に比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0114】
以上説明された発明は、あらゆるゴルフクラブヘッドに適用されうる。例えば、本発明は、ドライバー、フェアウエイウッド、ユーティリティーヘッド、ハイブリッドヘッド、中空アイアン型ヘッド等に適用されうる。
【符号の説明】
【0115】
2・・・ゴルフクラブ
4・・・ヘッド
6・・・シャフト
8・・・グリップ
10・・・フェース
12・・・クラウン
14・・・ソール
18・・・ソール面
C1・・・基準中央面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソール面を備えたゴルフクラブヘッドであって、
フェース−バック方向がX方向とされ、
トウ−ヒール方向がY方向とされ、
シャフト軸線と上記ソール面との交点がS1とされ、
この交点S1からX方向フェース側に5mm隔てた上記ソール面上の地点がS2とされ、
この地点S2からY方向ヒール側に5mm隔てた上記ソール面上の地点がS3とされ、
上記交点S1からY方向ヒール側に5mm隔てた上記ソール面上の地点がS4とされ、
水平面上に載置された基準状態のヘッドにおいて、ヘッド重心を通り且つ上記水平面に対して垂直な直線と上記ソール面との交点がG1とされ、
X方向位置が上記交点G1と同じであり且つY方向位置が上記交点S1と同じである上記ソール面上の地点がR1とされ、
この地点R1からX方向バック側に5mm隔てた上記ソール面上の地点がR2とされ、
この地点R2からY方向ヒール側に5mm隔てた上記ソール面上の地点がR3とされ、
上記地点R1からY方向ヒール側に5mm隔てた上記ソール面上の地点がR4とされ、
上記交点S1、地点S2、地点S3及び地点S4を頂点とする四角形状の領域が区域A1とされ、
上記地点R1、地点R2、地点R3及び地点R4を頂点とする四角形状の領域が区域A2とされ、
シャフト軸線と接地平面との成す角度がθとされるとき、
上記区域A1に属する少なくとも1点と、上記区域A2に属する少なくとも1点とが上記接地平面に接するような上記角度θが存在するゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
区域A1に属する少なくとも1本の線と、上記区域A2に属する少なくとも1本の線とが上記接地平面に接するような上記角度θが存在する請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
上記ソール面において、上記区域A2よりもX方向バック側の位置に凹みが存在している請求項1又は2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
上記凹みにウエイトポートが設けられており、このウエイトポートに重量体が取りつけられうる請求項3に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
上記凹みと上記区域A2との最短距離D1が10mm以下である請求項3又は4に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
上記区域A2内に凹みが存在している請求項1から5のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のヘッドと、シャフトと、グリップとを備えたゴルフクラブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−228293(P2012−228293A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96882(P2011−96882)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(504017809)ダンロップスポーツ株式会社 (701)
【Fターム(参考)】