説明

ゴルフボールにおいて使用するための直鎖状および分岐鎖状の、ネオジム−触媒を用いて製造したゴム処方物のブレンド

【課題】ゴルフボールにおいて使用するゴム組成物、より詳しくは改善された諸特性および加工特性を持つ、ポリブタジエンゴムのブレンドを含む組成物を提供する。
【解決手段】コアおよびカバーを含むゴルフボールであって、該コアが、以下の成分:約30〜約100なる範囲内にある第一のムーニー粘度を持つ、ネオジム触媒を用いて形成された直鎖状ポリブタジエン;および約20〜約90なる範囲内にある第二のムーニー粘度を持つ、ネオジム触媒を用いて形成された分岐鎖状ポリブタジエンを含むブレンドから形成されており、該第二のムーニー粘度が、該第一のムーニー粘度よりも低いことを特徴とする、前記ゴルフボール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフボールにおいて使用するゴム組成物に関し、より詳しくは改善された諸特性および加工特性を持つ、ポリブタジエンゴムのブレンドを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
中実(solid)または糸巻き式の従来のゴルフボールは、典型的には少なくとも一つのコア層と少なくとも一つのカバー層とを有している。中実構造を持つツーピースボールは、ゴルファーに好評である。というのは、これらが、長い飛距離をもたらす高い初期速度を持つ、極めて耐久性の高いボールを与えるからである。しかし、使用された材料の剛性のために、該ボールは、クラブで打った場合に「硬い」感触を持ち、また特により短距離のアプローチショットの際のコントロールを困難にする、比較的低いスピン速度を持つ。
糸巻き式ボール、即ち張力を掛けた弾性の糸を巻付けた、球形の中実ゴムまたは液状中心は、そのよりソフトな感触およびグリーンおよびその周辺におけるより良好なコントロールを可能とする高いスピン性能のために、幾分かのゴルファーによって好まれている。しかし、糸巻きボールは、典型的に、ツーピースボールと比較して、クラブで打った場合に、より短い距離を飛翔する。その上、そのより複雑な構造の結果として、糸巻きボールは、一般的に製造に長期間を要し、また公知のツーピースボールよりも、製造に要する費用がより高い。
【0003】
糸巻き式または中実ゴルフボールにおいて使用される中実のコアは、一般的にポリブタジエン組成物で作られている。ワン-ピースコアに加えて、中実コアは、二重コアゴルフボールにおけるように、多数の外側層をも含むことができる。中実または糸巻きボールのカバーは、一般にイオノマー樹脂、バラタ、ポリウレア、またはポリウレタンで作られ、また単一の層からなっていても、あるいは1またはそれ以上の層、例えば内側および外側カバー層を備えた二重カバーを含むこともでき、また場合によっては該コアの近傍に設けられた、少なくとも一つの中間層を含むこともできる。
該中実ゴルフボールのコアは、該ボールの「エンジン」であり、良好な飛距離を達成するのに必要な速度を与える。しかし、極度に硬いコアは、貧弱な感触をもたらすゴルフボールを与える恐れがある。製造業者は、感触および飛距離両者を最適化するために、様々なコア組成物および構成について常に実験を行っている。多くの公知の中実コアは、ポリブタジエンゴムまたはそれを多少改良したものを含んでおり、これは、該ゴルフボールレジリエンス(弾力性)の主な源を与える。
【0004】
ポリブタジエンゴムコア組成物は、依然としてそのレジリエンスにおいて改良の余地があり、該レジリエンスは、反発係数(「COR」)によって決まる。ゴルフボール製造の当業者には理解されるであろう如く、弾道角度(即ち、発射角)およびクラブヘッド速度と共にCORは、ゴルフクラブで打った場合に進む、ゴルフボールの飛距離を決定する。該CORを測定する一つの方法は、硬く、大きな物体の表面に向けて、与えられた速度にてゴルフボールを推進させ、その入射および出射速度を測定することである。このCORは、該出射速度対該入射速度の比であり、また0と1との間の少数として表される。米国ゴルフ協会(United States Golf Association)による、ゴルフボールのこのCORに関する制限はないが、ゴルフボールの初期速度は、250±5フィート/秒(約76.25m±約1.525m/秒)を越えることはできない。結果として、初期速度に関する当産業界の目標は、255フィート/秒(約77.78m/秒)であり、また当業界は、この限界を越えることなしに該CORを最適化すべく努力している。
【0005】
一般に、高分子量(高いムーニー粘度)を持つポリブタジエンゴムは、低分子量(低いムーニー粘度)をもつポリブタジエンゴムよりも良好なレジリエンスを有している。しかし、分子量が増大するにつれて、該ポリブタジエンゴムの粉砕および加工特性が劣化する。ランタニド系列の元素、例えばネオジムで触媒されたポリブタジエンゴムは、線形であり、また多分散性において狭い(1.0に近い値)ものとなる傾向を示す。この線形性及び狭い多分散性は、高分子量のネオジム-触媒により製造されたポリブタジエンゴム(Nd-BR)に、改善されたレジリエンスを与え得るが、ダイスウェル(die swell)等の押出し加工上の問題および低温流れ(cold flow)等の保存の困難さの問題を引起す。Nd-BRと比較すると、コバルトおよび/またはニッケル触媒を用いて製造したポリブタジエンゴム(Co-BR、Ni-BR)は、典型的に分岐度が高く、より広い多分散性(1.0とはかけ離れた値)を持つ。しかし、この分岐した特徴は加工を容易にするものの、該広い多分散性は、一般的に低いレジリエンスを与える。
コア組成物において、ポリブタジエンゴムの様々なブレンドを使用することによって、ゴルフボールのCORを改善する試みは、特に以下の文献に含まれている:米国特許第4,683,257号、同第4,931,376号、同第4,955,613号、同第4,984,803号、同第5,082,285号、同第6,139,447号、同第6,277,920号、同第6,315,684号、および同第6,774,187号。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
進歩がなされたが、当ゴルフボール製造技術分野においては、ゴルフボール成分、およびより詳しくは、ゴルフボールコア成分において有用な、改善された諸特性および加工性を持つ組成物提供の必要性が残されている。有利なことに、本発明の組成物は、得られるゴルフボールのレジリエンスを犠牲にすることなしに、高い加工特性をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、コアおよびカバーを含むゴルフボールに向けられており、ここで該コアは、以下の成分:約30〜約100なる範囲内にある第一のムーニー粘度を持つ、ネオジム触媒を用いて形成された直鎖状ポリブタジエン;および約20〜約90なる範囲内にある第二のムーニー粘度を持つ、ネオジム触媒を用いて形成された分岐鎖状ポリブタジエンを含むブレンドから形成されており、ここで該第二のムーニー粘度は、該第一のムーニー粘度よりも低い。一態様において、該直鎖状ポリブタジエンは、該分岐鎖状ポリブタジエンよりも高いムーニー応力緩和を有する。他の態様において、該直鎖状ポリブタジエンは、約40〜約80なる範囲内のムーニー粘度を持つ。
本発明のこの局面において、該分岐鎖状ポリブタジエンは、約30〜約75なる範囲内にあるムーニー粘度を持つことができる。更に、該分岐鎖状ポリブタジエンは、約4またはそれよりも小さい溶液粘度(solution viscosity)対ムーニー粘度比を持つことができ、また該直鎖状ポリブタジエンは、約5を越える、溶液粘度対ムーニー粘度比を持つことができる。一態様において、該直鎖状ポリブタジエンの該溶液粘度対ムーニー粘度比は、該分岐鎖状ポリブタジエンの該溶液粘度対ムーニー粘度比よりも、少なくとも約2倍大きい。他の態様において、該直鎖状ポリブタジエンは、第一の多分散性を持ち、かつ該分岐鎖状ポリブタジエンは、該第一の多分散性よりも大きな第二の多分散性を持つ。
【0008】
該ゴルフボールは、また、該カバーと該コアとの間に配置された1またはそれ以上の層をも含むことができる。例えば、一態様において、該ボールは、該カバーと該コアとの間に設けられた中間層を含む。
本発明は、また、コアとカバーとを含むゴルフボールであって、該ゴルフボールの一部が、以下の成分:第一の多分散性を持つ、ネオジム触媒を用いて形成された直鎖状ポリブタジエン;および該第一の多分散性よりも大きな第二の多分散性を持つ、ネオジム触媒を用いて形成された分岐鎖状ポリブタジエンを含むブレンドから形成されており、ここで該第二多分散性が、約2を越える値である、前記ゴルフボールにも関する。
一態様において、該直鎖状ポリブタジエンは、第一のムーニー応力緩和を有し、かつ該分岐鎖状ポリブタジエンは、第二のムーニー応力緩和を有し、またここで該第二のムーニー応力緩和は、該第一のムーニー応力緩和よりも低い。他の態様において、該第一の多分散性は、約3未満である。更に別の態様において、該直鎖状ポリブタジエンは、該分岐鎖状ポリブタジエンの溶液粘度対ムーニー粘度比よりも少なくとも2倍大きな、溶液粘度対ムーニー粘度比を持つ。更に別の態様において、該コアは、中心および少なくとも一つの外側コア層を含み、しかも該中心または該外側コアの少なくとも一方は、上記ブレンドを含む。
【0009】
本発明は、また、コアとカバーとを含むゴルフボールに向けられており、ここで該コアは、以下の成分:第一の多分散性および第一の溶液粘度対ムーニー粘度比を持つ、ネオジム触媒を用いて形成された直鎖状ポリブタジエン;および該第一の多分散性よりも大きな第二の多分散性および該第一の溶液粘度対ムーニー粘度比よりも小さな第二の溶液粘度対ムーニー粘度比を持つ、ネオジム触媒を用いて形成された分岐鎖状ポリブタジエンを含有するブレンドを含む。
本発明のこの局面において、該カバーは熱硬化性材料をも含むことができる。他の態様において、該ボールは、熱可塑性材料から形成された中間層をも含むことができる。
一態様において、該第二の多分散性は約2を越える。他の態様において、該第二の溶液粘度対ムーニー粘度比は、約4またはそれよりも小さく、かつ該第一の溶液粘度対ムーニー粘度比は、約5またはそれよりも大きい。例えば、該第二の溶液粘度対ムーニー粘度比は、約2〜約4なる範囲内であり得、かつ該第一の溶液粘度対ムーニー粘度比は、約5〜約12なる範囲内にある。
本発明の更なる特徴並びに利点は、以下のような添付図面との関連で与えられる、以下の詳細な説明から確かめることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明に従う、カバーとコアとを持つ、ツーピースゴルフボールの断面図である。
【図2】図2は、本発明に従う、カバーと中心との間に中間層を持つ、ゴルフボールの断面図である。
【図3】図3は、本発明に従う、大きなコアと二重カバー層を持つ、ゴルフボールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここで使用する用語「約」とは、1またはそれよりも大きい数または数値範囲との関連で使用され、ある範囲内の全ての数値を含む、このような数値の全てを指定するものと理解すべきである。
本発明は、ゴルフボール成分において使用できる、分岐鎖状Nd-BRと直鎖状Nd-BRとのブレンドに向けられている。様々なゴルフボール構造、即ちワン-ピース、ツー-ピース、または多層ボールを、本発明において使用することが可能である。ここで使用する用語「多層」とは、少なくとも2層を持つゴルフボールを意味し、該ゴルフボールは、糸巻きボール並びに多数のコア、中間層およびカバー層を持つボールを包含する。
本発明の組成物は、何れもランタニド系列の触媒を使用して形成された、2またはそれ以上のポリブタジエンゴム(BR)成分のブレンドを含む。特に、ネオジム(Nd)触媒は、これら両ポリブタジエンにとって好ましい、ランタニド系列の触媒である。例えば、該ブレンドは、ネオジム触媒を用いて形成した長鎖の分岐鎖状ポリブタジエンゴム(分岐鎖状Nd-BR)およびネオジム触媒を用いて形成した直鎖状ポリブタジエンゴム(直鎖状Nd-BR)を含むことができる。これらの直鎖状および分岐鎖状ゴムNd-BR両者は、好ましくは少なくとも約95%なるcis-1,4含有率を持つ。一態様において、該直鎖状および分岐鎖状Nd-BRゴムの一方は、少なくとも約96%なるcis-1,4含有率を持つ。更に別の態様において、該直鎖状および分岐鎖状Nd-BRゴムの一方は、少なくとも約98%なるcis-1,4含有率を持つ。該ブレンドは、場合によってコバルト、リチウム、チタン、またはニッケル触媒を用いて形成されたポリブタジエンを含むことができる。
【0012】
当業者には理解されるであろうように、ポリブタジエン等のポリマーは、様々な分子量の定義に従って特徴付けることができる。この点に関連して、該分岐鎖状Nd-BRは、約200〜約600なる範囲にある、重量平均分子量(Mw)を持つことができる。一態様において、該分岐鎖状Nd-BRのMwは、約250〜約450なる範囲内にある。他の態様では、該分岐鎖状Nd-BRのMwは、約300〜約400なる範囲内にある。該分岐鎖状Nd-BRの数平均分子量(Mn)は、約50〜約400なる範囲、好ましくは約80〜約300なる範囲、およびより好ましくは約85〜約200なる範囲内にある。
ポリマーの分子量分布の程度を表す共通した指標は、重量平均分子量(Mw)対数平均分子量(Mn)の比として定義される、該ポリマーの多分散性である。多分散性は、該ポリマー鎖が同一の重合度を持つ程度を表す指標をも与える。該多分散性が1.0である場合、全てのポリマー鎖は、同一の重合度を持たなければならない。Mwは、常にMnに等しいかこれを越えるものであるから、定義によれば、多分散性は1.0に等しいかこれを越えるものである。直鎖状ポリマーは、1.0に近い多分散性を持つ傾向にある。これとは対照的に、分岐鎖状ポリマーは、1よりもかなり大きな多分散性を持つことができる。
【0013】
例えば、該直鎖状Nd-BRの多分散性は、約3未満であり得る。一態様において、該直鎖状Nd-BRは、約1.5〜約2.8なる範囲内の多分散性を持つ。他の態様では、該直鎖状Nd-BRの多分散性は、約1.7〜約2.5なる範囲内にある。更に別の態様において、該直鎖状Nd-BRの多分散性は、約1.8〜約2.3なる範囲内にある。これとは対照的に、該分岐鎖状Nd-BRの多分散性は、約2を越えるものであり得る。一態様において、該分岐鎖状Nd-BRの多分散性は、約3よりも大きい。他の態様において、該分岐鎖状Nd-BRは、約3.5またはそれより大きく、好ましくは約3.5またはそれよりも大きい多分散性を持つ。更に別の態様において、該分岐鎖状Nd-BRは、約4またはそれより大きく、好ましくは約4.25またはそれよりも大きい多分散性を持つ。他の態様において、該分岐鎖状Nd-BRの多分散性は、約5よりも大きい。
如何なる特定の理論にも拘泥するものではないが、広い多分散性は、一般に低いレジリエンスを与えるものと考えられている。上で論じた如く、ポリマーのレジリエンスを表すための便利な方法は、反発係数(COR)による方法である。本発明のNd-BRブレンドは、約0.78を越えるCOR値を持つゴルフボール成分を与える。好ましくは、該ゴルフボール成分のCOR値は、約0.79を越えるものである。一態様において、ゴルフボール成分は、約8.0またはそれより大きいCOR値を持つ。
【0014】
上で論じた如く、ムーニー粘度は、ポリマーの分子量と関連している。例えば、分子量の増大に伴って、該ムーニー粘度は増大する。ムーニー粘度の測定は、ASTM D-1646に従って規定されている。本発明のポリブタジエンは、好ましくは約100未満なるムーニー粘度を持つ。一態様において、該直鎖状Nd-BRは、約30〜約100なる範囲内のムーニー粘度を持つ。好ましくは、該直鎖状Nd-BRは、約40〜約80なる範囲内のムーニー粘度を持つ。より好ましくは、該直鎖状Nd-BRのムーニー粘度は、約45〜約60なる範囲内にある。該分岐鎖状Nd-BRは、好ましくは該直鎖状ポリブタジエンよりも小さなムーニー粘度を持つ。一態様において、該分岐鎖状Nd-BRは、約20〜約90なる範囲内のムーニー粘度を持つ。好ましくは、該分岐鎖状Nd-BRは、約30〜約75なる範囲内のムーニー粘度を持つ。より好ましくは、該分岐鎖状Nd-BRは、約35〜約50なる範囲内のムーニー粘度を持つ。
当業者には理解されるであろう如く、該ムーニー粘度(MV)に対して高い溶液粘度(SV)を持つポリマーは、低温流れ(コールドフロー)の問題を被り、また加工性における欠点を持つ。従って、加工の観点から、溶液粘度対ムーニー粘度の比(SV/MV)を減じることが望ましいことであり得る。直鎖状ポリマーは、高いSV/MV比を持つ可能性があり、このことは、前に述べた如く、加工性の問題の一因となる恐れがある。例えば、該直鎖状Nd-BRは、約5と約15の間の、溶液粘度対ムーニー粘度の比を持つことができる。一態様において、該直鎖状Nd-BRに対する該SV/MV比は、約5と約12の間にある。他の態様において、該直鎖状Nd-BRは、約5〜約10なる範囲内のSV/MV比を持つ。更に別の態様において、該直鎖状Nd-BRのSV/MV比は、約5〜約7なる範囲内にある。
【0015】
対照してみると、該分岐鎖状Nd-BRは、約4またはそれより小さいSV/MV比を持つことができる。一態様において、該分岐鎖状Nd-BRのSV/MV比は、約4未満である。例えば、該分岐鎖状Nd-BRは、約3.75またはそれより小さい、好ましくは約3.5またはそれより小さいSV/MV比を持つことができる。他の態様において、該分岐鎖状Nd-BRのSV/MV比は、約3またはそれより小さくてもよい。他の態様において、該分岐鎖状Nd-BRのSV/MV比は、約1.8〜約4なる範囲、好ましくは約2〜約4なる範囲内にある。
特に、以下の表1に示すように、本発明の上記ブレンドに含まれている、該直鎖状および分岐鎖状Nd-BR両者は、コバルト触媒を用いて製造した分岐鎖状ポリブタジエンのSV/MV比よりも大きなSV/MV比の値を持つ。
【0016】
【表1】

【0017】
表1に示したように、分岐鎖状Nd-BRは、直鎖状Nd-BRのSV/MV比よりも低いSV/MV比を有している。しかし、上で論じた如く、直鎖状Nd-BRは、分岐鎖状Nd-BRよりも比較的低い多分散性を持つので、分岐鎖状および直鎖状Nd-BRのブレンドは、該直鎖状Nd-BRのレジリエンスと組合された、該分岐鎖状Nd-BRの加工性を与える。
一態様において、該直鎖状Nd-BRのSV/MV比は、該分岐鎖状Nd-BRのSV/MV比よりも少なくとも約2倍大きい。他の態様において、該直鎖状Nd-BRのSV/MV比は、該分岐鎖状Nd-BRのSV/MV比よりも少なくとも約2.5倍大きい。更に別の態様において、該直鎖状Nd-BRのSV/MV比は、該分岐鎖状Nd-BRのSV/MV比よりも少なくとも約3倍大きい。
ポリマーの加工性を決定するためのもう一つの方法は、ムーニー応力緩和(MSR)を測定することである。高いMSRは、ダイスウェル(die swell)および押出物または圧延シートの収縮等の加工上の問題をもたらす恐れがある。該直鎖状Nd-BRのMSRは、約0.45〜約0.75なる範囲、好ましくは約0.50〜約0.70なる範囲内の値であり得る。該分岐鎖状Nd-BRのMSRは、約0.45〜約0.75なる範囲、好ましくは約0.45〜約0.70なる範囲内の値であり得る。以下の表2は、幾つかの直鎖状Nd-BRおよび分岐鎖状Nd-BR並びに分岐鎖状Co-BRに関する該MSRの値を明らかにしている。
【0018】
【表2】

【0019】
上記データに示されているように、該直鎖状Nd-BRは、該分岐鎖状Nd-BRよりも高いMSRを持つが、これら両者は、ネオジム触媒を用いて形成される直鎖状ポリブタジエンとのブレンドにおいて一般的に使用されている、短鎖の分岐鎖状コバルトグレードのポリブタジエンゴムよりも高いMSRを持つ。この点に関連して、本発明の該ブレンドは、直鎖状ポリブタジエンと、コバルト触媒を用いて形成された短鎖の分岐鎖状ポリブタジエンとの公知のブレンドよりも良好なレジリエンス、粉砕性、押出し容易性、および耐低温流れ性のバランスを達成しているものと考えられる。
一態様において、該直鎖状Nd-BRのMSR対該分岐鎖状Nd-BRのMSRの比は、1.0よりも大きい。例えば、該直鎖状Nd-BRのMSR対該分岐鎖状Nd-BRのMSRの比は、約1.0〜約1.2なる範囲内にある。他の態様において、該直鎖状Nd-BRのMSR対該分岐鎖状Nd-BRのMSRの比は、約1.01〜約1.15なる範囲内にある。
本発明の一局面によれば、該ブレンドにおける該分岐鎖状Nd-BR対該直鎖状Nd-BRの質量%の比は、好ましくは少なくとも約51:49、より好ましくは少なくとも約60:40、および最も好ましくは少なくとも約75:25である。
別の態様において、該ブレンドは、より多量の直鎖状Nd-BRおよびより少量の分岐鎖状Nd-BRを含む。一態様において、該直鎖状Nd-BR対該分岐鎖状Nd-BRの質量%に基く比は、好ましくは少なくとも約51:49、より好ましくは少なくとも約60:40、および最も好ましくは少なくとも約75:25である。
【0020】
直鎖状Nd-BRの製法は、当分野において公知であり、また米国特許第6,774,187号に記載されている。該米国特許の内容全体を、参考としてここに組入れる。特に、ランタニド系列の触媒によって触媒作用を受けるポリブタジエンは、ランタニド系列の元素および化合物、即ち有機アルミニウム化合物、ルイス塩基、および場合によりルイス酸を含む触媒の存在下で、ブタジエンモノマーを重合することにより製造できる。この点に関連して、該ランタニド系列の元素は、ネオジムであることが好ましい。該ルイス塩基は、該ランタニド系列の元素を錯体に転化するのに役立ち、またアセチルアセトンおよびケトンアルコール等を、この目的で使用することができる。Nd-BRの合成において、該Nd触媒は、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、トルエン、キシレン、ベンゼン等の適当な溶媒中の溶液として用いることができ、あるいは、シリカ、マグネシア、および塩化マグネシウム等の適当な担体に担持させて使用することができる。その重合温度は、典型的に、約-30℃〜約150℃なる範囲、好ましくは約10℃〜約80℃なる範囲内にある。その重合圧力は、他の条件に応じて変えることができる。該直鎖状Nd-BRの製造において使用するための市販品として入手できるNd-BRの例は、ランクセス社(Lanxess Corporation)から入手できる、ブナ(BunaTM) CB21、CB22およびCB23;カルボケム(Karbochem)社から入手できる、ネオデン(Neodene) 40およびネオデン(Neodene) 45;並びにJSR社(JSR Corporation)から入手できるBR51、T700およびBR730を含むが、これらに限定されない。
任意の特定の理論に拘泥することはないが、長鎖分岐鎖状Nd-BRは、「分子量ジャンピング反応(Molecular Weight Jumping Reaction)」としても知られる、「ムーニージャンプ反応(Mooney Jump Reaction)」によって製造することができる。「ムーニージャンプ反応」は、ポリマーの分岐度を高めるための周知の方法であり、この方法は、分子量の増加をもたらす。「ムーニージャンプ反応」の非-限定例を以下に記載する:
【0021】
【化1】

【0022】
本発明において使用するのに適した、市販品として入手することのできる分岐鎖状Nd-BRの非-限定例の一つは、ランクセス社(Lanxess Corporation)から入手できる、ブナ(BunaTM) CB25である。
本発明のブレンドに加えて、本発明の組成物は、他の種のブタジエンゴム、並びに天然ゴム、バラタ(balata)、グッタ-ペルカ(gutta-percha)、合成イソプレン、スチレン-ブタジエンゴム、スチレン-プロピレン-ジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマーおよびこれらの混合物を含むことができる。特に、また更に、本発明の組成物から形成された該ゴルフボール成分の該COR値は、ある種の型のゴムを、該ブレンドに添加することにより減じることができる。例えば、スチレン-ブタジエンゴム、天然ゴム、ポリイソプレン、ブチルまたはハロゲン化ブチルゴム、cis-含有率の低いブタジエンゴム、高trans-含有率または高ビニル含有率を持つブタジエンゴム、および同様なゴムを、必要により該混合物に添加して、該COR値を調節することができる。
【0023】
架橋剤:
該ブレンドに対する公知の添加剤の一つは、該ゴムを架橋する(即ち、加硫する)、反応性の補助薬剤である。該コアに対する水の吸収を防止し、かつ得られる該ゴルフボールの耐久性を高めるために、該補助薬剤の量は、好ましくは該ブレンド100質量部当たり、約10質量部(phr)未満、より好ましくは約5phr未満、および最も好ましくは約0phr(補助薬剤なし)まで最小化する。
あるいはまた、該BRブレンドの質量基準で、約10phrと約50phrの間の量で該補助薬剤を用いることによって、適度に硬い成分を得ることができる。更に、少なくとも約50phrなる該補助薬剤が該コアに配合された場合には、該コアは、極めて硬質かつ高密度のものであり得る。該補助薬剤は、好ましくは約3〜8個の炭素原子を持つ不飽和カルボン酸の塩;不飽和ビニル化合物;多官能性モノマー;フェニレンビスマレイミド;またはこれらの混合物である。
【0024】
本発明の一局面においては、該ブレンドに、少なくとも1種の反応性補助薬剤をも配合して、その硬さを高める。この局面において使用するのに適した補助薬剤は、不飽和カルボン酸、好ましくは、約3〜8個の炭素原子を持つα,β-エチレン性不飽和カルボン酸、例えばメタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、ソルビン酸、桂皮酸およびクロトン酸から形成されていてもよい。適当な対イオンは、四級ホスホニウムまたはアンモニウムのカチオン、例えばテトラアルキルホスホニウムカチオン、および金属カチオン、例えばナトリウム、リチウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、アルミニウム、スズ、ジルコニウム、ニッケルおよびカドミウムを含むが、これらに限定されない。亜鉛、マグネシウムおよびカドミウムが、該金属カチオンとして好ましい。
【0025】
他の補助薬剤は、制限なしにN,N'-m-フェニレンジマレイミド(R.T.バンダービルト(Vanderbilt)社から、バナックス(VanaxTM) MBMとして入手できる);トリメチロールプロパントリメタクリレート(サルトマー(Sartomer)社から入手できるサルトマー(SartomerTM) SR-350);トリアリルトリメリテート(ワコーケミカルズ(Wako Chemicals)社から入手できるトリアム(TriamTM) 705);トリアリルイソシアヌレート(日本化成化学(Nippon Kasei Chemical)社から入手できるタイック(TaicTM));アクリレート末端を持つ液状ポリブタジエン(エルフアトケムN.A.(Elf Atochem N.A.)社から入手できるポリBD(PolyBDTM) 300);およびこれらの混合物を包含する、不飽和ビニル化合物を含むことができる。更に、多官能性モノマー、フェニレンビスマレイミドおよび硫黄をも、該補助薬剤として使用することができる。
【0026】
一態様において、該補助薬剤は、モノ-(メタ)アクリル酸またはジ-(メタ)アクリル酸の金属塩であり、ここで該カチオンは亜鉛、マグネシウム、カルシウム、またはこれらの混合物である。ここで使用する用語「(メタ)アクリル」とは、メタクリルおよびアクリル両者を含む。例えば、該補助薬剤は、亜鉛ジアクリレート(ZDA)、亜鉛ジメタクリレート(ZDMA)、またはこれらの混合物であり得る。これらの一般的なアクリレート架橋剤として、ZDAは、一般にZDMAよりも高い初期速度を持つゴルフボールを生成することが見出され、従って特定の初期速度を達成するためには、前者が好ましいものであり得る。該ZDAは、様々なグレードの純度を持つものであり得る。本発明の目的にとって、該ZDA中に存在するステアリン酸亜鉛の量が少なければ少ないほど、該ZDAの純度は高くなる。従って、約10%未満のステアリン酸亜鉛を含むZDAが好ましい。一態様において、約4%と約8%の間のステアリン酸亜鉛を含むZDAを使用する。該補助薬剤は、該ブレンドの質量基準で、約0phr〜約50phrなる範囲の量で存在することができる。
【0027】
フリーラジカル源:
従来から、上記反応性補助薬剤と上記ポリブタジエンゴムとの間の架橋反応を促進するために、フリーラジカル開始剤が使用されている。本発明の上記コア組成物中に含まれる該フリーラジカル開始剤は、該硬化サイクル中に、フリーラジカルを生成する、任意の公知の重合開始剤であり得る。適当な開始剤は、パーオキシド、過流酸塩、アゾ化合物およびヒドラジドを含む。
本発明の目的のための該パーオキシドの例は、ジクミルパーオキシド、n-ブチル-4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)-バレレート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、α,α'-ビス(t-ブチルパーオキシ)-ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキシド、ジ-t-アミルパーオキシド、ジ-(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンパーオキシド、ラウリルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t-ブチルヒドロパーオキシド、およびこれらの混合物を含む。
【0028】
好ましくは、該パーオキシド開始剤は、約40%と約100%の間の活性を持つジクミルパーオキシドである。該開始剤は、該ブレンド中に、その質量基準で約0.05phrと約15phrの間の量で存在し得る。例えば、一態様において、該開始剤の量は、約0.1phrと約5phrの間、および最も好ましくは約0.25phrと約1.5phrの間にある。当業者は、使用する該開始剤の合計量が、所望する特定の最終生成物および使用する特定の開始剤に依存して変動することを理解するであろう。
あるいはまた、米国特許第6,695,718号に記載されているように、随意の促進剤と共に硫黄を主成分とする硬化剤を、上記パーオキシド開始剤と組合せて、または上記パーオキシド開始剤の代わりに使用して、上記BRを架橋することができる。該米国特許の内容全体を、参考としてここに組入れる。他の有用な開始剤は、当業者には容易に明らかとなろう。代替的にまたは付加的に、該開始剤は、電子ビーム、γ線、赤外線、紫外線、X-線、またはフリーラジカルを生成し得る任意の他の高-エネルギー輻射源の1種以上であってもよい。更に、加熱処理が、しばしばフリーラジカル生成の開始を容易にすることをも理解すべきである。
【0029】
フィラー:
フィラーを、該ゴルフボールの1または2以上の部分に添加することができる。一態様において、少なくとも1種のフィラーを、該ブレンドに添加する。フィラーは、典型的にレオロジーおよび混合特性、比重(即ち、密度-改善フィラー)、モジュラス、引裂強さ、強化等に影響を及ぼす、加工助剤または化合物を包含する。該フィラーは、一般に無機物であり、また適当なフィラーは、多くの金属、金属酸化物および塩、例えば酸化亜鉛および酸化スズ、並びに硫酸バリウム、硫酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、クレー、タングステン、炭化タングステン、一群のシリカ、リグラインド(regrind)(典型的には、約30メッシュなる粒径まで粉砕されたリサイクルコア材料)、高ムーニー粘度のゴムリグラインド、およびこれらの混合物を含む。
フィラーは、また当業者が容易に選択することのできる、様々な発泡剤または起泡剤をも含むことができる。発泡ポリマーブレンドは、当業者には周知の如く、起泡剤とポリマー材料とを混合することにより形成してもよい。ポリマー、セラミックス、金属、またはガラス微小球、もしくはこれらの組合せを使用して、所定の層の密度または他の特性を調節することができ、またこのような微小球は、中実または中空であり得、また充填されていても、充填されていなくてもよい。また、フィラーを、典型的に該ゴルフボールの1または2以上の部分に添加して、均一性を求めるゴルフボールの基準と合致するように、該ボールの密度を変更する。フィラーは、また該ボール中心の、または特別なボールに関する少なくとも一つの付随的な層の質量を変更するために使用することもでき、例えばスイング速度の低い競技者には、低質量のボールが好まれている。
【0030】
本発明の組成物は、付随的に任意の他の適当な、かつ相溶性の改質成分を含むこともでき、該成分は、金属酸化物、脂肪酸およびジイソシアネートを含むが、これらに限定されない。例えば、酸化亜鉛および/または酸化マグネシウム等の金属酸化物は、上記BRに対する活性化剤として添加することができる。脂肪酸、またはステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸およびリノール酸等の脂肪酸の金属塩は、成形適性改善および加工性改善用添加剤として含めることができる。また、ポリマー型のジイソシアネート、例えば4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネートおよび他の多官能性イソシアネートも、水分掃去剤として該ゴム組成物に配合することができる。
安定なフリーラジカル、フリーラジカル掃去剤、スコーチ防止剤、cis-対-trans触媒、密度調節フィラー、ナノフィラー、分散剤、発泡剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、安定剤、加工助剤、プロセスオイル、可塑剤、染料および顔料、並びに当業者には周知の他の添加剤等を包含する、上記コア組成物に適したその他の添加剤を、これらが典型的に使用される目的を達するのに十分な量で、本発明において使用することも可能である。
【0031】
酸化防止剤:
上記ゴム組成物は、場合により1または2以上の酸化防止剤を含む。酸化防止剤は、該ゴムの酸化による劣化を阻止または防止することのできる化合物である。幾つかの酸化防止剤は、またフリーラジカル掃去剤として作用し、その結果酸化防止剤が該ゴム組成物中に含まれる場合には、使用される開始剤の量が、本明細書に記載した量と同程度またはそれよりも多くなる可能性がある。適当な酸化防止剤は、例えばジヒドロキノリン酸化防止剤、アミン型の酸化防止剤、およびフェノール型の酸化防止剤を含む。
ゴルフボールの構造:
上で簡単に論じた如く、本発明の組成物は、ゴルフボールの望ましい性能の型に依存する、ワン-ピース、ツー-ピース、スリー-ピース、およびフォー-ピース設計のボール、二重コア、二重カバー、中間層、多層コア、および/または多層カバーを持つボール構造を含むが、これらに限定されないあらゆるタイプのボール構造で使用することができる。即ち、本発明の組成物は、ゴルフボールのコア、中間層、および/またはカバーにおいて使用でき、これら各々は、単一の層または複数の層を持つことができる。一態様において、本発明の組成物は、成型してコア層とされる。
【0032】
ここで使用する用語「多層」とは、少なくとも2つの層を意味する。例えば、該コアは、ワン-ピースコアまたは多層コア、即ち最も内側の成分と、その上に設けられた付随的な一つのコア層または付随的な複数のコア層を持つコアであり得る。ここで使用する用語「コア」および「中心」とは、該ゴルフボールの最も内側の成分を意味するように、一般的には互換的に使用される。しかし、幾つかの態様において、複数のコア層が存在する場合には、即ち中心と外側コア層とが存在する場合には、該用語「中心」を使用する。
本発明のゴルフボールが、一を越える層数の層を持つことのできる、中間層を含む場合に、この中間層は、単一または複数のカバー、単一のまたはマルチ-ピースコアと共に、あるいは単一層のカバーおよび単一層のコアと共に、あるいは多層カバーおよび多層コアと共に、該ボールに組込むことができる。該中間層は、また内側カバー層または外側カバー層と呼び、あるいはゴルフボールの内側コアと外側カバーとの間に配置される任意の他の層と呼ぶこともできる。
【0033】
図1を参照すると、本発明のゴルフボール2は、中心4および該中心4を包囲するカバー6を含むことができる。図2を参照すると、本発明のゴルフボール8は、中心10、カバー14、および少なくとも1層の、該カバーと該中心との間に設けられた中間層12を含むことができる。一態様において、該コア4および/または14は、本発明の組成物から製造することができる。図1および2に示された各層は、1を越える層数の層を含むことができ、即ち該ゴルフボールは、公知のスリー-ピース糸巻きボール、ツー-ピースボール、多層コアおよび1または複数の中間層を持つボール等であり得る。また、図3は本発明のゴルフボール16を示したものであり、このボールは、大きなコア18、カバー22、および内側カバー層20を含む。一態様において、該コア18は、中心および外側コア層を含む。該コア18は、本発明の組成物から形成することができる。一態様において、該カバー22は、ポリウレタンまたはポリウレア材料から形成することができる。
【0034】
ゴルフボールコア層:
1または複数の該コア層は、本発明の組成物から形成することができる。例えば、本発明の組成物から形成されたコアは、注型性熱硬化性物質または射出成形性熱可塑性物質または以下において論じる他のカバー材料を用いて覆うことができる。該コアは、約3.81cm(約1.5インチ)〜約4.11cm(約1.62インチ)なる範囲の径を持つことができ、また該カバー層の厚みは、約0.762mm(約0.03インチ)〜約1.52mm(約0.06インチ)なる範囲内の値であり得る。該コアの圧縮荷重は、好ましくは約30〜約120Attiなる範囲にあり、また該ボール全体としての圧縮荷重は、約50〜約110Attiなる範囲にある。
本発明の組成物から形成されていない場合、当業者には公知の任意のコア材料が、本発明のゴルフボールにおいて使用するのに適している。特にコアは、中実、半-中実、中空、流体-充填または粉末-充填、ワン-ピースまたは多成分コアであり得る。ここで使用するような、該用語「流体」とは、液体、ペースト、ゲル、ガス、またはこれらの任意の組合せを含み、該用語「流体-充填」とは、中空の中心またはコアを含み、また該用語「半-中実」とは、ペースト、ゲル等を意味する。
【0035】
適当なコア材料は、熱硬化性物質、例えばゴム、スチレンブタジエン、ポリブタジエン、イソプレン、ポリイソプレン、trans-イソプレン、並びに熱可塑性物質、例えばイオノマー樹脂、ポリアミドまたはポリエステル、および熱可塑性かつ熱硬化性ポリウレタンエラストマーを含む。例えば、未硬化状態においては、典型的に約20を越える、好ましくは約30を越える、およびより好ましくは約40を越えるムーニー粘度(ASTM D1646-99に従って測定)を持つブタジエンゴムは、本発明に従って製造されるゴルフボールの1又は複数のコア層において使用できる。更に、本発明の組成物は、該コアに配合し得る。
ゴルフボールの中間層:
中間層、例えば外側コア層または内側カバー層、即ちゴルフボールの内側コア層と外側カバー層との間に設けられる任意の層は、本発明の組成物から形成され得る。このような中間層は、該ゴルフボールの層間の幾つかの差異、例えば硬さ、圧縮荷重、厚み等における差異によって、コアまたはカバーとは区別し得る。中間層は、必要ならば多層カバーまたは多層コアと共に、あるいは多層カバーおよび多層コア両者と共に使用できる。該コアと同様に、該中間層も複数の層を含むことができる。
【0036】
一態様において、該中間層は、少なくとも部分的には、本発明の組成物から形成される。例えば、約0.381mm(約0.015インチ)〜約1.52mm(約0.06インチ)なる範囲内の厚みを持つ、中間層または内側カバー層をコアの回りに配置することができる。本発明のこの局面において、約3.81cm(約1.5インチ)〜約4.04cm(約1.59インチ)なる範囲の径を持つ該コアも、本発明の組成物から形成されていてよく、あるいは他の局面では、公知のゴム組成物から形成されていてもよい。該内側ボールは、注型性の熱硬化性物質または射出成形性の熱可塑性物質または以下において論じる他のカバー材料の何れかによって覆うことができる。本発明のこの局面において、該カバーは、約0.508mm(約0.02インチ)〜約1.14mm(約0.045インチ)なる範囲、好ましくは約0.635mm(約0.025インチ)〜約1.016mm(約0.04インチ)なる範囲内の厚みを持つことができる。該コアの圧縮荷重は、約30〜約110Attiなる範囲、好ましくは約50〜約100Attiなる範囲にあり、また全体としての該ボールの圧縮荷重は、好ましくは約50〜約100Attiなる範囲内にある。
【0037】
もう一つの態様において、該中間層は、内側カバー層で覆われ、これら各々は、本発明の組成物または所望の性能上の結果を与える他の材料で、夫々独立に製造することができる。例えば、本発明のボールは、約1.27cm(約0.5インチ)〜約3.30cm(約1.30インチ)なる範囲内の径および約30〜約110Attiなる範囲、好ましくは約50〜約100Attiなる範囲の圧縮荷重を持つ中心を含むことができる。該中心は、本発明の組成物または前に論じた他のコア材料の何れかから製造することができる。該コアを、外側コア層で覆って、コアを形成することができ、該コアは、また本発明の組成物、上で論じたコア材料の何れか、または注型性の熱硬化性物質または射出成形性の熱可塑性物質から製造することができる。該外側コア層は、約3.175mm(約0.125インチ)〜約12.7mm(約0.500インチ)なる範囲内の厚みを持つことができる。次いで、該コアは、約0.381mm(約0.015インチ)〜約1.52mm(約0.06インチ)なる範囲内の厚みを持ち、本発明の組成物または注型性の熱硬化性物質または射出成形性の熱可塑性物質から製造した、外皮(casing)層で覆うことができる。好ましくは約0.508mm(約0.02インチ)〜約1.14mm(約0.045インチ)なる範囲の厚みを持つ、該外側カバー層は、注型性の熱硬化性物質または射出成形性の熱可塑性物質または以下において論じられ、また当分野において公知の他の適当なカバー材料から製造することができる。
【0038】
本発明の組成物で作られていない場合、該中間層は、また少なくとも部分的には、1または複数のホモポリマーまたはコポリマー材料、例えばイオノマー、主としてまたは完全に非-イオノマー型の熱可塑性材料、ビニル樹脂、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリウレア、例えば米国特許第5,484,870号に記載されているもの、ポリアミド、アクリル樹脂およびそのブレンド、オレフィン系熱可塑性ゴム、スチレンとブタジエンとのブロックコポリマー、イソプレンまたはエチレン-ブチレンゴム、コポリ(エーテル-アミド)、例えばPA州、フィラデルフィアのアルケマ(Arkema)社により市販されているペバックス(PEBAX)、ポリフェニレンオキシド樹脂またはそのブレンド、および熱可塑性ポリエステルから作成することも可能である。
例えば、該中間層は、低酸性イオノマー、例えば米国特許第6,506,130号および同第6,503,156号に記載されているもの、高酸性イオノマー、高度に中和されたポリマー、例えば米国特許出願公開第2001/0018375および同第2001/0019971号に記載されているもの、またはこれらの混合物で作られたものであり得る。該中間層は、また米国特許第5,688,191号に記載されているような組成物から製造することも可能である。これら特許および特許公開の開示事項全体を、本発明の参考としてここに組入れる。
【0039】
該中間層は、また張力を掛けた糸材料から製造した糸巻き層を含んでいてもよい。この糸は、単層糸であり得、あるいは2またはそれ以上の層を含んでいてもよい。適当な糸材料は、繊維、ガラス、炭素、ポリエーテルウレア、ポリエーテルブロックコポリマー、ポリエステルウレア、ポリエステルブロックコポリマー、シンジオタクチックまたはアイソタクチックポリ(プロピレン)、ポリエチレン、ポリアミド、ポリ(オキシメチレン)、ポリケトン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)、ポリアクリロニトリル)、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ドデカンジカルボン酸、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン-ブタジエンコポリマー、スチレン-プロピレン-ジエンコポリマー、他の合成ゴム、あるいはブロック、グラフト、ランダム、交互、ブラシ型、マルチ-アームスター型、分岐鎖状、または樹枝状のコポリマー、またはこれらの組合せを含むが、これらに限定されない。当業者は、本発明と共に使用するための糸材料を製造するための方法を心得ている。
【0040】
ゴルフボールカバー層:
該カバーは、該ボールとクラブとの間に界面を与える。該カバーについて望ましい諸特性は、特に良好な成形適性、高い耐水性、高い耐摩耗性、高い耐衝撃性、高い引裂強さ、高いレジリエンス、および良好な離型性である。該カバー層は、少なくとも部分的には、本発明の組成物から製造することができる。しかし、本発明の組成物から製造されていない場合には、該カバーは、該中間層との関連で上記章において論じられたような、1または複数のホモポリマーまたはコポリマー材料から製造することができる。本発明によるゴルフボールは、米国特許第6,835,794号において論じられているポリウレタン、ポリウレア、およびポリブタジエン材料製のカバーを持つように製造することもできる。
層の形成:
本発明のゴルフボールは、様々な適用技術、例えば圧縮成型、フリップ成形、射出成型、格納式ピン射出成型、反応式射出成型(RIM)、液体射出成型(LIM)、注型、真空成型、粉末塗布、フローコーティング、スピンコーティング、浸漬、噴霧等の技術を利用して製造することができる。従来は、圧縮成型および射出成型法が、熱可塑性物質に対して適用され、一方でRIM、液体射出成型および注型法が、熱硬化性物質に対して利用されている。これらのおよび他の製法は、米国特許第6,207,784号および同第5,484,870号に記載されている。これら特許の開示事項全体を、参考としてここに組入れる。
【0041】
本発明のコアは、当業者には公知の任意の適当な方法で製造することができる。該コアを、熱硬化性物質から作成する場合、圧縮成型法が、該コアを製造するのに特に適した方法である。他方、熱可塑性コアを持つ態様において、該コアは、射出成形することができる。更に、米国特許第6,180,040号および同第6,180,722号は、二重コアを持つゴルフボールの製法を開示している。これら特許の開示事項全体を、参考としてここに組入れる。
該中間層および/またはカバー層は、また当業者にとって公知の任意の適当な方法を用いて製造することも可能である。例えば、中間層は、ブロー成型によって製造し、また射出成型、圧縮成型、注型、真空成型、粉末塗布法等によって形成される、ディンプルを備えたカバー層で覆うことができる。
ゴルフボールの後処理:
本発明のゴルフボールは、更なる利益を得るために、塗装し、被覆し、または表面処理に付すことができる。例えば、ゴルフボールは、極めて平滑で非-粘着性の表面を得るために、ウレタン、ウレタンハイブリッド、ウレア、ウレアハイブリッド、エポキシ樹脂、ポリエステル、アクリル樹脂、あるいはこれらの組合せで被覆することができる。所望ならば、1層を越える被覆層を使用することもできる。該被覆層は、当業者には公知の任意の適当な方法によって適用することができる。一態様において、該被覆層は、例えば米国特許第5,849,168号に記載されているような、金型内塗布工程により、上記ゴルフボールカバーに適用される。該米国特許の内容全体を、参考としてここに組入れる。
【0042】
該ゴルフボールの層の何れも、吹付け処理、機械的研磨処理、コロナ放電処理、プラズマ処理等、およびこれらの組合せを含む公知の方法により表面処理に付すことができる。事実、低表面エネルギー、または低表面張力を持つことは、ポリシロキサンの重要な特徴であるので、本発明の組成物から形成された層を、米国特許公開第2003/0199337号に記載の方法に従って、表面処理することができる。該米国特許公開の内容全体を、参考としてここに組入れる。
ゴルフボールの諸特性:
コア径、中間層およびカバー層の厚み、硬さ、および圧縮荷重等の諸特性は、また競技特性、例えば本発明のゴルフボールの持つスピン、初期速度および感触等に影響を及ぼすべく、変更することができる。
【0043】
構成部品の寸法:
ゴルフボール構成部品の寸法、即ちその厚みおよび径は、該ボールの所望の特性に応じて変えることができる。本発明の目的にとっては、任意の層の厚みを使用することができる。例えば、本発明は、あらゆるサイズを持つゴルフボールに係るが、該ゴルフボールは、好ましくはそのサイズおよび質量に関するUSGAの基準を満たす。該USGAによる「ゴルフに関する規則(The Rules of Golf)」は、競技用ゴルフボールのサイズを、その径において約4.267cm(1.680インチ)を越えるべきものと制限しているが、レジャー用ゴルフ競技に関しては、任意サイズのゴルフボールを使用することができる。該ゴルフボールの好ましい径は、約4.267cm(約1.680インチ)〜約4.572cm(約1.800インチ)なる範囲内にある。該ゴルフボールのより好ましい径は、約4.267cm(約1.680インチ)〜約4.470cm(約1.760インチ)なる範囲内にある。43mm(約1.680インチ)〜44mm(約1.740インチ)なる範囲内にある径が、最も好ましいが、約4.32cm(1.700インチ)〜約4.95cm(約1.950インチ)なる範囲内の何れかにある径を使用することができる。
【0044】
好ましくは、該コアおよび全中間層の全体的な径は、完成された該ボールの全径の約80%〜約98%なる範囲内にある。該コアは、約0.229cm(約0.09インチ)〜約4.19cm(約1.65インチ)なる範囲の径を持つことができる。一態様において、本発明によるゴルフボールのコア径は、約3.05cm(約1.2インチ)〜約4.14cm(約1.630インチ)なる範囲にある。例えば、コアが、本発明によるツー-ピースボールの一部である場合、該コアは、約3.81cm(約1.5インチ)〜約4.11cm(約1.62インチ)なる範囲の直径である。他の態様において、該コアの径は、約3.30cm(約1.3インチ)〜約4.06cm(約1.6インチ)なる範囲、好ましくは約3.53cm(約1.39インチ)〜約4.06cm(約1.6インチ)なる範囲、より好ましくは約3.81cm(約1.5インチ)〜約4.06cm(約1.6インチ)なる範囲の直径であってよい。更に別の態様において、該コアは、約3.94cm(約1.55インチ)〜約4.19cm(約1.65インチ)なる範囲、好ましくは約3.94cm(約1.55インチ)〜約4.06cm(約1.60インチ)なる範囲の径を持つ。一態様において、該コアの径は、約4.04cm(約1.59インチ)またはそれ以上である。他の態様において、該コアの径は、約4.17cm(約1.64インチ)またはそれ以下である。
【0045】
該カバーは、典型的には、十分な強度、良好な性能特性および耐久性を与える、厚みを持つ。一態様において、該カバーの厚みは、約0.51mm(約0.02インチ)〜約3.05mm(約0.12インチ)なる範囲、好ましくは約2.54mm(約0.1インチ)またはそれ以下である。例えば、該カバーが本発明によるツー-ピースボールの一部である場合、これは、約0.762mm(約0.03インチ)〜約2.286mm(約0.09インチ)なる範囲の厚みを持つことができる。他の態様において、該カバーは、約1.27mm(約0.05インチ)またはそれ以下、好ましくは約0.51mm(約0.02インチ)〜約1.27mm(約0.05インチ)なる範囲、およびより好ましくは約0.51mm(約0.02インチ)〜約1.14mm(約0.045インチ)なる範囲内にある。
ゴルフボールの中間層に係る厚みの上記範囲は、中間層、即ち外側コア層、内側カバー層、糸巻き層、水分/蒸気遮断層(防湿層)等を使用する場合には、多大な可能性の故に大きい。該中間層を本発明のゴルフボールにおいて使用する場合、該中間層、または内側カバー層は、約0.762cm(約0.3インチ)またはそれ以下の厚みを持つことができる。一態様において、該中間層の厚みは、約0.051mm(約0.002インチ)〜約2.54mm(約0.1インチ)なる範囲、および好ましくは約0.254mm(約0.01インチ)またはそれ以上である。例えば、該中間層が、本発明のスリー-ピースボールまたは多層ボールの一部である場合、該中間層および/または内側カバー層は、約0.381mm(約0.015インチ)〜約1.52mm(約0.06インチ)なる範囲内の厚みを持つことができる。他の態様において、該中間層の厚みは、約1.27mm(約0.05インチ) またはそれ以下、より好ましくは約0.254mm(約0.01インチ)〜約1.14mm(約0.045インチ)なる範囲内にある。
【0046】
硬さ:
本発明の組成物で作成した中実球状コアは、好ましくは約20〜65ショアDなる範囲、好ましくは約30ショアDを越える、およびより一層好ましくは約40ショアDを越える硬さを持つ。例えば、一態様において、本発明の組成物で作成した中実球は、約52〜約65ショアDなる範囲の硬さを持つ。
それ故、追加のゴルフボール層が、該組成物製である場合には、これらの層は、またこの範囲の硬さを持つことが好ましい。例えば、本発明の組成物で作成したゴルフボール層は、約55ショアDを越える硬さを持つことができる。一態様において、該硬さは、約60ショアDまたはそれ以上である。他の態様において、追加のゴルフボール層は、約35ショアD〜約50ショアDなる範囲、好ましくは約40ショアD〜約50ショアDなる範囲の硬さを持つ別の組成物で作成される。本発明の組成物は、ゴルフボールの任意の層において使用できるので、該ゴルフボールの構造、物性、および得られるその性能は、本発明の組成物を含有する、該ボールの層に依存して大幅に変動し得る。
【0047】
本発明のゴルフボールの該中間層は、またその硬さにおいて、該ボールの特定の構造に依存して変動し得る。一態様において、該中間層の硬さは、約30ショアDまたはそれ以上である。もう一つの態様において、該中間層の硬さは、約90ショアDまたはそれ以下、好ましくは約80ショアDまたはそれ以下、およびより好ましくは約70ショアDまたはそれ以下である。例えば、中間層が、本発明の組成物で作成された場合、該中間層の硬さは、約55ショアDまたはそれ以上、好ましくは約55ショアD〜約65ショアDなる範囲であり得る。更に別の態様において、該中間層の硬さは、約50ショアDまたはそれ以下、好ましくは約35ショアD〜約55ショアDなる範囲にある。該中間層の硬さは、また約65ショアDまたはそれ以上であってもよい。例えば、本発明のゴルフボールは、約60ショアD〜約75ショアDなる範囲の硬さを持つイオノマーから製造することができる。
上記コアおよび中間層と同様に、上記カバーの硬さは、該ゴルフボールの構造およびその所望の諸特性に応じて変動し得る。カバーの硬さ対内側ボールの硬さの比は、ボールの空力的特性および、特にボールのスピン特性を調節するのに使用される主な変数である。一般に、該内側ボールが硬いほど、ドライバースピンが大きく、また該カバーが柔軟であるほど、該ドライバースピンが大きい。
【0048】
例えば、該中間層が該ボールの最も硬い点となるようにしたい場合、例えば約60ショアD〜約75ショアDなる範囲の硬さとしたい場合、該カバー材料は、スラブについて測定した値として、約20ショアDまたはそれ以上、好ましくは約25ショアDまたはそれ以上、およびより好ましくは約30ショアDまたはそれ以上の硬さを持つことができる。他の態様において、該カバー自体は、約30ショアDまたはそれ以上の硬さを持つ。特に、該カバーの硬さは、約30ショアD〜約70ショアDなる範囲内であり得る。一態様において、該カバーは、約40ショアD〜約65ショアDなる範囲内の硬さを持ち、また他の態様においては、約40ショアD〜約55ショアDなる範囲内の硬さを持つ。本発明の他の局面において、該カバーは、約45ショアD未満、好ましくは約40ショアD未満、より好ましくは約25ショアD〜約40ショアDなる範囲内の硬さを持つ。一態様において、該カバーは、約30ショアD〜約40ショアDなる範囲内の硬さを持つ。
圧縮荷重:
圧縮荷重は、ゴルフボールの設計における重要なファクタの一つである。例えば、該コアの圧縮荷重は、ドライバーを離れる該ボールのスピン速度および感触に影響を与える可能性がある。事実、本発明の組成物および方法は、最終的に、全体としてより硬いボールを与える、剛性内側ボールをもたらす。該全体的なボールが硬いほど、打撃を受けた際に受ける変形量が少なく、より早くゴルフクラブからボールが離れる。
【0049】
あらゆる他の名称によるジェフダルトンの圧縮荷重、サイエンス&ゴルフIV、ゴルフに関する世界科学会議会報(Jeff Dalton's Compression by Any Other Name, Science and Golf IV, Proceedings of the World Scientific Congress of Golf)[エリックタイン(Eric Thain)編、ロートレッジ(Routledge), 2002]に記載されているように、幾つかの異なる方法が、圧縮荷重を測定するのに使用でき、該圧縮荷重の例は、Atti圧縮荷重、リエール(Riehle)圧縮荷重、様々な固定負荷の印加時点およびこれを解除した際の、負荷/撓み測定、および有効モジュラスを含む。本発明の目的にとって、「圧縮荷重」とは、Atti圧縮荷重を意味し、またAtti圧縮荷重テストデバイスを使用して、公知の手順に従って測定され、該デバイスでは、ピストンを使用してボールをバネに押付ける。該ピストンの移動を固定し、また該バネの撓みを測定する。該バネの撓みの測定は、これが該ボールと接触した状態で開始するのではなく、寧ろ該バネの撓みの最初の約1.25mm(0.05インチ)なる偏りがある。極めて低い剛性を持つコアは、1.25mmを越えて該バネに撓みを生じることはなく、従ってゼロなる圧縮荷重の測定値を持つことになる。該Atti圧縮荷重テスターは、42.7mm(1.68インチ)なる径を持つ対象を測定するように設計されており、従ってより小型の対象、例えばゴルフボールコアは、正確な読みを得るために、全高さが42.7mmとなるように、詰め物(クサビ)を使用する必要がある。Atti圧縮荷重からリエール(コア)、リエール(ボール)、100kg撓み、130-10kg撓みまたは有効モジュラスへの転化は、J. Daltonの文献に与えられている式に従って行うことができる。
【0050】
本発明に従って製造したゴルフボールのコアまたは該コアの部分の該Atti圧縮荷重は、約60〜約120atti、好ましくは約65〜約115Atti、および最も好ましくは70〜110Attiなる範囲内であり得る。一態様において、該コアの圧縮荷重は、約80Atti未満、好ましくは約75Atti未満である。
反発係数:
ゴルフボールの反発係数またはCORは、2つの物体が衝突した際に失われるエネルギーの量の測定である。ゴルフボールのCORは、その跳ね返る能力を意味し、また衝突した後の該ボールのバネ-様の感触を説明するものである。ここで使用する用語「反発係数」(COR)は、ゴルフボールが空気銃から撃ち出された際の入射速度により、ゴルフボールの跳ね返る速度を割ることにより計算される。このCORテストは、ある範囲の入射速度に渡り行われ、またその値は、約38.13m/秒(125ft/秒)なる帰還速度において決定される。
【0051】
本発明は、約38.13m/秒(約125ft/秒)なる帰還速度において、約0.700〜約0.850なる範囲のCORを持つゴルフボールを意図する。一態様において、該CORは、約0.750またはそれ以上、好ましくは約0.780またはそれ以上である。もう一つの態様において、該ボールは、約0.800またはそれ以上のCORを持つ。更に別の態様において、本発明の該ボールのCORは、約0.800〜約0.815なる範囲にある。
本発明の組成物で作成した中実球(約3.94cm(1.55インチ))は、少なくとも約0.790、好ましくは少なくとも約0.800なるCORを持っていてもよい。例えば、本発明の組成物で作成した中実球のCORは、約0.810〜約830なる範囲にある。一態様において、本発明の組成物で作成した中実球は、約0.800〜約0.825なる範囲のCORを持つ。他の態様において、該中実球のCORは、約0.805〜約0.815なる範囲にある。
【実施例】
【0052】
以下の非-限定的な実施例は、単に本発明の好ましい態様を例示するものであり、また本発明を何ら限定するものと解釈すべきではなく、本発明の範囲は、添付した特許請求の範囲により規定される。
実施例1:
本発明のゴルフボールは、ある組成物から製造されるコアまたは内側層を用いて製造することができ、該組成物は、約5.5〜約7.0なる範囲のSV/MV比をもつ直鎖状Nd-BRと、約2.0〜約4.0なる範囲のSV/MV比をもつ分岐鎖状Nd-BRとのブレンドを含む。該内側ボールは、熱可塑性または熱硬化性材料で作られたカバーで覆うことができる。
本発明の広い範囲を示す上記数値範囲およびパラメータは、凡そのものであるにも拘らず、具体的な実施例において示された数値は、できる限り正確に報告されている。しかし、任意の数値は、本質的に、各テストの測定値において見られる標準偏差から必然的に生じる誤差を含む。その上、変動する範囲の数値範囲がここに示された場合、それは、列挙された値を含むこれら数値のあらゆる組合せが、使用可能であることを意図している。
【0053】
本明細書に記載され、また特許請求された本発明は、ここに記載された具体的態様によって、その範囲が限定されるものではない。というのは、これらの態様は、本発明の幾つかの局面を例示することを意図したものであるからである。あらゆる等価な態様は、本発明の範囲内に入るものとする。例えば、本発明の組成物は、またゴルフ器具、例えばパター挿入物、ゴルフクラブヘッドおよびその一部、ゴルフシューズの一部、およびゴルフバッグの一部において使用することもできる。実際に、ここに示され、また説明された事項に加えて、本発明の様々な改良が、上記説明から、当業者には明らかとなるであろう。このような改良も、また添付した特許請求の範囲内に入るものとする。本明細書において引用したあらゆる特許および特許出願の全内容は、特に参考としてここに組入れるものとする。
【符号の説明】
【0054】
2、8、16・・ゴルフボール;
4、10・・中心;
6、14、22・・カバー;
12・・中間層;
18・・大きなコア;
20・・内側カバー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアおよびカバーを含むゴルフボールであって、該コアが、以下の成分:
約30〜約100なる範囲内にある第一のムーニー粘度を持つ、ネオジム触媒を用いて形成された直鎖状ポリブタジエン;および
約20〜約90なる範囲内にある第二のムーニー粘度を持つ、ネオジム触媒を用いて形成された分岐鎖状ポリブタジエン
を含むブレンドから形成されており、該第二のムーニー粘度が、該第一のムーニー粘度よりも低いことを特徴とする、前記ゴルフボール。
【請求項2】
前記直鎖状ポリブタジエンが、前記分岐鎖状ポリブタジエンよりも高いムーニー応力緩和を持つ、請求項1記載のゴルフボール。
【請求項3】
前記直鎖状ポリブタジエンが、約40〜約80なる範囲内のムーニー粘度を持つ、請求項1記載のゴルフボール。
【請求項4】
前記分岐鎖状ポリブタジエンが、約30〜約75なる範囲内のムーニー粘度を持つ、請求項1記載のゴルフボール。
【請求項5】
前記分岐鎖状ポリブタジエンが、約4またはそれ以下の、溶液粘度対ムーニー粘度比を持つ、請求項1記載のゴルフボール。
【請求項6】
前記直鎖状ポリブタジエンが、約5を越える、溶液粘度対ムーニー粘度比を持つ、請求項1記載のゴルフボール。
【請求項7】
前記直鎖状ポリブタジエンの前記溶液粘度対ムーニー粘度比が、前記分岐鎖状ポリブタジエンの前記溶液粘度対ムーニー粘度比よりも、少なくとも約2倍大きい、請求項1記載のゴルフボール。
【請求項8】
前記直鎖状ポリブタジエンが、第一の多分散性を持ち、かつ前記分岐鎖状ポリブタジエンが、該第一の多分散性よりも大きな第二の多分散性を持つ、請求項1記載のゴルフボール。
【請求項9】
更に、前記カバーと前記コアとの間に配置された中間層をも含む、請求項1記載のゴルフボール。
【請求項10】
コアとカバーとを含むゴルフボールであって、該ゴルフボールの一部が、以下の成分:
第一の多分散性を持つ、ネオジム触媒を用いて形成された直鎖状ポリブタジエン;および
該第一の多分散性よりも大きな第二の多分散性を持つ、ネオジム触媒を用いて形成された分岐鎖状ポリブタジエン
を含むブレンドから形成され、該第二多分散性が、約2よりも大きいことを特徴とする、前記ゴルフボール。
【請求項11】
前記直鎖状ポリブタジエンが、第一のムーニー応力緩和を有し、前記分岐鎖状ポリブタジエンが、第二のムーニー応力緩和を有し、且つ該第二のムーニー応力緩和が、該第一のムーニー応力緩和よりも低い、請求項10記載のゴルフボール。
【請求項12】
前記第一の多分散性が、約3未満である、請求項10記載のゴルフボール。
【請求項13】
前記直鎖状ポリブタジエンが、前記分岐鎖状ポリブタジエンの溶液粘度対ムーニー粘度比よりも少なくとも2倍大きな、溶液粘度対ムーニー粘度比を持つ、請求項12記載のゴルフボール。
【請求項14】
前記コアが、中心および少なくとも一つの外側コア層を含み、且つ該中心または該外側コアの少なくとも一方が、前記ブレンドを含む、請求項10記載のゴルフボール。
【請求項15】
コアとカバーとを含むゴルフボールであって、該コアが、以下の成分:
第一の多分散性および第一の溶液粘度対ムーニー粘度比を持つ、ネオジム触媒を用いて形成された直鎖状ポリブタジエン;および
該第一の多分散性よりも大きな第二の多分散性および該第一の溶液粘度対ムーニー粘度比よりも小さな第二の溶液粘度対ムーニー粘度比を持つ、ネオジム触媒を用いて形成された分岐鎖状ポリブタジエンを含有する
ブレンドを含むことを特徴とする、前記ゴルフボール。
【請求項16】
前記カバーが、熱硬化性材料を含む、請求項15記載のゴルフボール。
【請求項17】
更に、熱可塑性材料から形成された中間層をも含む、請求項16記載のゴルフボール。
【請求項18】
前記第二の多分散性が、約2を越える、請求項15記載のゴルフボール。
【請求項19】
前記第二の溶液粘度対ムーニー粘度比が約4またはそれより小さく、かつ前記第一の溶液粘度対ムーニー粘度比が約5またはそれより大きい、請求項15記載のゴルフボール。
【請求項20】
前記第二の溶液粘度対ムーニー粘度比が約2〜約4なる範囲内にあり、かつ前記第一の溶液粘度対ムーニー粘度比が約5〜約12なる範囲内にある、請求項19記載のゴルフボール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−90980(P2012−90980A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230398(P2011−230398)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(390023593)アクシュネット カンパニー (155)
【氏名又は名称原語表記】ACUSHNET COMPANY