説明

サッシ枠の施工方法および下枠吊り冶具

【課題】 縦枠のないサッシ枠を障子の収まりに適した状態に配設できるサッシ枠の施工方法および下枠吊り冶具を提供することにある。
【解決手段】 間口部に上枠を取り付け、上下枠間の寸法と略一致する長さを有する複数の下枠吊り冶具により上枠から下枠を吊り下げて下枠の周りにコンクリートを打ち、コンクリートの硬化後に上枠と下枠から下枠吊り冶具を取り外すことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦枠がなく上枠と下枠のみを有するサッシ枠の施工方法と、本施工方法に使用する下枠吊り冶具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上枠と下枠のみを有するサッシ枠の場合は、縦枠がないことから、戸(障子)をスムーズに開け閉めできるように、上枠と下枠の取付位置を正確に合わせて取り付けることは容易なことではなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は以上に述べたような実情に鑑み、縦枠のないサッシ枠を障子の収まりに適した状態に配設できるサッシ枠の施工方法および本施工方法に使用する下枠吊り冶具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のうち請求項1記載の発明は、間口部に上枠を取り付け、上下枠間の寸法と略一致する長さを有する複数の下枠吊り冶具により上枠から下枠を吊り下げて下枠の周りにコンクリートを打ち、コンクリートの硬化後に上枠と下枠から下枠吊り冶具を取り外すことを特徴とする。
【0005】
本発明のうち請求項2記載の発明では、上枠は、上向きに突出したガイドレールを有するものであり、下枠吊り冶具は、ガイドレールに係脱自在に係止することを特徴とする。
【0006】
本発明のうち請求項3記載の発明は、棒材と上枠係止具と下枠取付具とを備え、上下枠間の寸法と略一致する長さを有しており、棒材は、上端を上枠係止具に、下端を下枠取付具に着脱自在であり、上枠係止具は、上枠に係脱自在であり、下枠取付具は、下枠に着脱自在であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の施工方法および下枠吊り冶具によれば、上枠から下枠を吊り下げることにより、縦枠のないサッシ枠の場合でも容易に施工できる。また本発明の下枠吊り冶具によれば、棒材の上端に取り付けた上枠係止具を上枠に係脱自在に係止し、棒材の下端に取り付けた下枠取付具を下枠に着脱自在に取り付けるものであるから、施工時には上下枠間に取り付けやすく、施工後には上下枠間から下枠吊り冶具を簡単に取り外すことができる。また、施工現場の高さに合わせて棒材のみを交換すれば、上枠係止具と下枠取付具は共通のものを使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明のサッシ枠の施工方法の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明のサッシ枠の施工方法における下枠吊り冶具5を使用したときの全体を示す斜視図であり、図2(a)(b)(c)(d)(e)は、本発明のサッシ枠の施工方法の手順を示す説明図であり、図3(a)は、本発明の施工方法により完成したサッシ枠(上吊り戸を収めた状態)の横断面図、図3(b)は縦断面図であり、図4(a)(b)は、下枠吊り冶具5を下枠3に取り付ける他の例を示すものである。本施工方法では、図3(a)(b)のように、開口部Rに、上枠1と下枠3のみを有する縦枠のないサッシ枠を取り付けるものであり、このような縦枠のないサッシ枠であっても、上枠1と下枠3の高さ方向および出入り方向の位置関係をとり、上枠1のガイドレール2に上吊り戸4a,4b,4c上端のローラー20を走行する一方、下枠3のレール溝15に上吊り戸4a,4b,4c下端のピポット21の摺動をガイドして、上吊り戸4a,4b,4cを上下枠1,3間に垂直な状態で取り付ける必要がある。本施工方法では、上枠係止具6と棒材7と下枠取付具8とからなる下枠吊り冶具5を使用するものであり、まず開口部Rに上枠1を取り付け、上枠1の垂直状のガイドレール2における平面視した四隅位置から4本の下枠吊り冶具5により下枠3を水平な状態で吊り下げ、下枠3の脚部22にコンクリート28を打って硬化した後、上枠1と下枠3から下枠吊り冶具5を取り外して施工を完了するものである。
【0009】
下枠吊り冶具5は図1のように、棒材7の長手方向の一方側と他方側に、上枠係止具6と下枠取付具8を取り付けて上下枠1,3間の寸法と略一致する長さに形成するものである。棒材7は、断面形状が方形筒型をなす型材を用いており、棒材7の長手方向の一方側の端部側周壁と他方側の端部側周壁には、取付用ネジ孔24と横長孔25が垂直方向に間隔をあけて配設してあり、取付用ネジ孔24は、取付用ネジ13aを水平方向に通して下枠取付具8を棒材7にネジ止めするためのものであり、横長孔25は、上枠1に下枠吊り冶具5を係止して下枠3を吊り下げた状態にあるときには、水平方向に長く形成するものであり、横長孔25には、後で説明する上枠係止具6の係止爪10a,10aを係止して、上枠係止具6を着脱可能に取り付けることができる。取付用ネジ孔24と横長孔25は、棒材7の長手方向の一方側端部と他方側端部に対称な位置関係となるように配設してあり、これにより棒材7の上下どちらを上側・下側にしても使用できる。尚、横長孔25は、係止爪10a,10bを係合できるものであればよいから、必ずしも本実施形態のように貫通していなくてもよい。
【0010】
上枠係止具6は、上枠1の上向きに突出した垂直状のガイドレール2に対して、上側から引っ掛けることのできる下向きの凹部Pを有した鉤状をなす係止部9を有しており、上枠係止具6の下部10は、棒材7の長手方向一方側の端部側周壁を外側から挟むことのできる下向きコ字型をなしており、棒材7の端部側周壁と対面する上枠係止具下部10の垂下片には、棒材7の横長孔25,25に係止できる係止爪10a,10aを向き合わせて突出している。
【0011】
下枠取付具8は、棒材7の下側の筒孔内に差込み可能な板状をなす垂直な着脱部11と、着脱部11の下縁部から水平方向に屈曲した板状をなす下枠3との当接部12とを有しており、全体を略L字型に形成するものである。着脱部11は、垂直方向に間隔をあけた二箇所に調整用ネジ孔23a,23bを有しており、上側の調整用ネジ孔23aは、当接部12をレール溝15の底部Uに取り付けるときに使用するものであり、下側の調整用ネジ孔23bは、下枠3のレール溝15の底部Uに錠座14が取り付けてある場合に使用するものであり、下枠3に取り付ける部品や下枠3の形状に合わせて、上側と下側の調整用ネジ孔23a,23bのいずれかと棒材7の取付用ネジ孔24とを一致して取付用ネジ13aをネジ止めし、下枠取付具8と棒材7とを着脱自在に取り付けるものである。当接部12は、下枠3のレール溝15の底部Uに対して垂直方向に対面して面状に当接するとともに、底部Uに当接したときのレール溝15の上吊り戸4a,4b,4cの走行方向側の一端側には切欠部26を有しており、下枠取付具8を切欠部26にて下枠3に錠座固定用ネジ13bまたは固定用ネジ13cでネジ止めしている。切欠部26は、錠座固定用ネジ13bおよび固定用ネジ13cのネジ部の径よりも僅かに切欠幅を広く設けてあり、これにより、当接部12を底部Uに沿ってスライドして切欠部26により固定用ネジ13cのネジ部を挟むことができるので、当接部12が下枠3に取り付け易くなっている。本発明の下枠吊り冶具5は、棒材7に上枠係止具6と下枠取付具8を着脱できるものであるから、現場の高さに合わせて下枠吊り冶具5の棒材7のみを取り替えることで、上枠係止具6や下枠取付具8は共通のものを使用することもできる。
【0012】
本発明のサッシ枠の施工方法における作業の手順を図2(a)(b)(c)(d)(e)に基づいて以下に説明する。
尚、ここでは三枚建て用のサッシ枠を例として挙げるものである。
まず第1の工程として、開口部Rに上枠1を取り付ける手順ついて説明すると、図2(a)および図4(b)のように、開口部Rの上部Jに墨入れ線を引くとともに、ネジ止め用の下孔をあけ、上枠1と開口部Rの上部Jとの間にスペーサー29を挟んで水平となるように調整し、上枠固定用のネジ17により墨入れ線および下孔にあわせて上枠固定用の金具16を取り付け、上枠固定用の金具16から下方に垂下するボルト18に、上枠1を下方から差し込んでナット19で締め付けることにより、開口部Rへの上枠1の取り付けが完了する。
【0013】
次に第2工程として、下枠吊り冶具5を下枠3に取り付ける手順について説明すると、図1および図2(b)のように、下枠3の平面視した四隅に4本の下枠吊り冶具5を取り付けるが(図1参照)、下枠3に上吊り戸4a,4b,4cが収まったときの戸先や戸尻の位置する箇所には、上吊り戸4a,4b,4cの錠受けとなる錠座14を設ける場合があり、図1のように、錠座14を取り付けるときには、棒材7の取付用ネジ孔24に下枠取付具8の下側の調整用ネジ孔23bを一致して取付用ネジ13aでネジ止めし、下枠取付具8の当接部12を錠座14の上端部に当接するとともに、切欠部26にて錠座固定用ネジ13bにより錠座14と一緒にレール溝15の底部Uにネジ止めする。一方錠座14のない箇所に下枠吊り冶具5を取り付けるときには、下枠取付具8の上側の調整用ネジ孔23aを棒材7の取付用ネジ孔24と一致して取付用ネジ13aでネジ止めし、下枠取付具8の当接部12を下枠3のレール溝15の底部Uに当接して固定用ネジ13cでネジ止めする。
【0014】
次に第3工程として、下枠3を取り付けた下枠吊り冶具5を上枠1に取り付ける手順について説明すると図2(c)のように、4本(図中では2本のみ示す)の下枠吊り冶具5を引き上げて下枠3を土間Gから持ち上げるとともに、上枠係止具6の係止部9をガイドレール2の上方に位置した後、下枠3を降ろして係止部9を上枠1の垂直状に起立するガイドレール2に対し、係止部9の下向きの凹部Pで上方から引っ掛けるようにして係止し、下枠吊り冶具5により上枠1から下枠3を吊り下げた状態とする。このときにガイドレール2の位置とレール溝15の高さ方向の位置関係は、高さ方向の同一直線Q上にあり(図3(b)参照)、上枠1から下枠3を下枠吊り冶具5により吊り下げれば、上枠1と下枠3の取付位置の調整をほとんど要せずに、上吊り戸4a,4b,4cを垂直に収めることができるようになっている。
【0015】
次に第4工程として図2(d)のように、下枠3の脚部22の周りにモルタル27を盛って位置決めした後、下枠3の下部全体にコンクリート28を打ち、暫くの放置後にコンクリート28が硬化したら、第5工程として図2(e)のように、下枠3と下枠吊り冶具5から錠座固定用ネジ13bおよび固定用ネジ13cを外すとともに、ガイドレール2に係止する上枠係止具6を持ち上げて下枠吊り冶具5を上枠1と下枠3から取り外すことで、開口部Rへの上枠1と下枠3の取り付けが完了する。尚、錠座固定用ネジ13bは、錠座14の下枠3への固定をするものであるから、下枠吊り冶具5を外すときに錠座14を下枠3に固定した状態を保ちながら一旦緩めた状態とし、下枠吊り冶具5を下枠3から外した後に再び締め込むこともできる。
【0016】
ここで本施工手順に使用する下枠吊り冶具5の本数については、2本や3本であってもよい。下枠吊り冶具5の上枠1への取付箇所についても本実施形態では、上枠1の平面視した四隅から下枠3を吊り下げているが、例えば同一のガイドレール2の長手方向に間隔をあけた二箇所のみであったり、並列する複数のガイドレール2,2間(ガイドレール2と直交する位置、対角の位置)から下枠3を吊り下げても下枠3を安定して吊り下げることができる。上枠1のガイドレール2の本数については、本実施形態では3枚建て用上吊り戸として3本のものを示しているが、例えば1本や2本あるいは4本であってもよく、
下枠3のレール溝15の本数についても同様に、収める上吊り戸の枚数に対応したものとなり、例えば1本や2本あるいは4本のものでもよい。
【0017】
上枠係止具6の垂直方向あるいは下枠取付具8の垂直方向に複数の貫通孔を設け、一方棒材7の上端部と下端部における垂直方向においても複数の貫通孔を設けることで、棒材7と上枠係止具6、下枠取付具8の貫通孔同士を一致してネジ止めすれば、下枠吊り冶具5の長さを微調整することもできる。
【0018】
上枠係止具6は、ガイドレール2を着脱自在に係止できる態様であれば、例えば係止部9を逆L字型に形成して屈曲部分によりガイドレール2に引っ掛けるものや、あるいは係止部9をT字型に形成して、両側に張り出した水平な部位を上枠1の2本のガイドレール2,2間に掛け渡すようなものであってもよい。またガイドレール2に係止するものの他、上枠係止具6はガイドレール2に対してネジ止めするものでもよい。また上枠係止具6と棒材7との取り付けについては、ネジ止めしてもよく、さらに、下枠取付具8を本実施形態の上枠係止具6の係止爪10a,10bに相当する爪状部にて棒材7に係止するものであってもよく、このことから着脱が可能なものであれば本実施形態に限るものではない。
【0019】
本実施形態では、施工現場にて棒材7と下枠取付具8を取付用ネジ13aでネジ止めしているが、例えば図4(a)(b)のように、あらかじめ棒材7に上枠係止具6と下枠取付具8を取り付けたものを用意しておき、下枠3の錠座14およびレール溝15の底部Uに、若干ヘッドを浮かして締め込みきらない状態にした錠座固定用ネジ13bと固定用ネジ13cを取り付けておき(図4(a)参照)、下枠取付具8の切欠部26をスライドして錠座固定用ネジ13b,固定用ネジ13cのヘッドに取り付けるような手順によっても本施工を進めることが可能である(図4(b)参照)。また下枠3の脚部22は、コンクリート28を打ったときに下枠3の定着を容易にできるものであればよく、例えば、下枠3の下部からボルトを下方に向けて突出したような簡単なものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のサッシの施工方法の途中の状態を示す斜視図である。
【図2】(a)(b)(c)(d)(e)は、本発明の上枠の取り付けから下枠の取り付けまでの施工手順を示す縦断面図である。
【図3】(a)は、本発明の施工方法により完成したサッシ枠において上吊り戸が収まった状態を示す横断面図、(b)は縦断面図である。
【図4】(a)(b)は、下枠吊り冶具を下枠に取り付けるときの他の実施例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 上枠
2 ガイドレール
3 下枠
5 下枠吊り冶具
6 上枠係止具
7 棒材
8 下枠取付具
28 コンクリート
R 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間口部に上枠を取り付け、上下枠間の寸法と略一致する長さを有する複数の下枠吊り冶具により上枠から下枠を吊り下げて下枠の周りにコンクリートを打ち、コンクリートの硬化後に上枠と下枠から下枠吊り冶具を取り外すことを特徴とするサッシ枠の施工方法。
【請求項2】
上枠は、上向きに突出したガイドレールを有するものであり、下枠吊り冶具は、ガイドレールに係脱自在に係止することを特徴とする請求項1記載のサッシ枠の施工方法。
【請求項3】
棒材と上枠係止具と下枠取付具とを備え、上下枠間の寸法と略一致する長さを有しており、棒材は、上端を上枠係止具に、下端を下枠取付具に着脱自在であり、上枠係止具は、上枠に係脱自在であり、下枠取付具は、下枠に着脱自在であることを特徴とする下枠吊り冶具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−8046(P2008−8046A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−179933(P2006−179933)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(000175560)三協立山アルミ株式会社 (529)
【出願人】(000112185)ビニフレーム工業株式会社 (53)
【Fターム(参考)】